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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190245
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20221219BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221219BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20221219BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M7/48 Z
H03K17/16 H
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098483
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】神谷 和伸
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5H740PP02
5H740PP03
5H740PP05
5H770BA01
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA08
5H770QA21
5J055AX25
5J055AX55
5J055AX56
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX20
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY05
5J055EY12
5J055EY21
5J055FX05
5J055FX13
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】逆起電圧を精度良く伝送することが可能な電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、制御端子に電圧が印加されることによって主電流Idが流れる電圧駆動素子11WLと、電圧駆動素子11WLに電気的に接続され、主電流Idが流れることによって逆起電圧を発生するインダクタンス部13WLと、電圧駆動素子11WL及びインダクタンス部13WLが実装された基板31と、制御端子に印加される電圧を生成する駆動回路14WLと、駆動回路14WLが実装された基板51と、基板31から基板51に跨って延び、主電流Idが流れる導電部材66と、を備え、導電部材66は、逆起電圧を駆動回路14WLに伝送する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子を有し、前記制御端子に電圧が印加されることによって主電流が流れる電圧駆動素子と、
前記電圧駆動素子に電気的に接続され、前記主電流が流れることによって逆起電圧を発生するインダクタンス部と、
前記電圧駆動素子及び前記インダクタンス部が実装された第1基板と、
前記制御端子に印加される電圧を生成する駆動回路と、
前記駆動回路が実装された第2基板と、
前記第1基板から前記第2基板に跨って延び、前記主電流が流れる導電部材と、
を備え、
前記駆動回路は、前記逆起電圧に基づくフィードバック電圧を出力するフィードバック回路と、外部指令電圧と前記フィードバック電圧とを加算することによって加算電圧を生成する加算回路と、を備え、前記加算電圧に基づいて前記制御端子に印加される電圧を変化させ、
前記導電部材は、前記逆起電圧を前記駆動回路に伝送する、電力変換装置。
【請求項2】
前記第1基板は、前記電圧駆動素子が実装された第1面を有し、
前記第2基板は、前記駆動回路が実装された第2面を有し、
前記第1基板と前記第2基板とは、前記第1面と前記第2面とが一方向から見て重なり合うように、前記一方向において互いに離間して配置され、
前記導電部材は、前記一方向に延びるとともに、前記第1面及び前記第2面と交差している、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記導電部材は、前記第1基板と前記第2基板とを支持する柱状部材である、請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
素子のスイッチング速度を制御することにより、損失を低減するアクティブゲート制御が知られている。例えば、非特許文献1に記載された回路では、素子に流れる電流によって素子に接続されたインダクタのインダクタンス成分において誘起される逆起電圧が、基準電圧にフィードバックされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】野下裕市,“ソース電流帰還型ゲートドライバを用いた大容量SiC-MOSFET モジュールのスイッチング特性検証”,一般社団法人電気学会,産業応用2019 1-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記フィードバックを行うために専用の伝送経路が用いられる。専用の伝送経路は、逆起電圧を送るためだけに用いられるので、通常細い配線材によって実現される。しかしながら、このような配線材のインダクタンス成分は大きいので、当該配線材に流れる電流により誘起されたノイズ電圧によって、逆起電圧が影響を受けるおそれがある。
【0005】
本開示は、逆起電圧を精度良く伝送することが可能な電力変換装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、制御端子を有し、制御端子に電圧が印加されることによって主電流が流れる電圧駆動素子と、電圧駆動素子に電気的に接続され、主電流が流れることによって逆起電圧を発生するインダクタンス部と、電圧駆動素子及びインダクタンス部が実装された第1基板と、制御端子に印加される電圧を生成する駆動回路と、駆動回路が実装された第2基板と、第1基板から第2基板に跨って延び、主電流が流れる導電部材と、を備える。駆動回路は、逆起電圧に基づくフィードバック電圧を出力するフィードバック回路と、外部指令電圧とフィードバック電圧とを加算することによって加算電圧を生成する加算回路と、を備え、加算電圧に基づいて制御端子に印加される電圧を変化させる。導電部材は、逆起電圧を駆動回路に伝送する。
【0007】
この電力変換装置では、電圧駆動素子の制御端子に電圧が印加されることによって主電流が流れ、主電流によってインダクタンス部において発生した逆起電圧が、第1基板から第2基板に跨って延びる導電部材を介して駆動回路に伝送され、外部指令電圧と逆起電圧に基づくフィードバック電圧とに基づいて制御端子に印加される電圧が変更される。導電部材には大きい電流量を有する主電流が流れるので、信号用の配線材よりも太い部材が導電部材として用いられる。したがって、導電部材のインダクタンス成分は、信号用の配線材のインダクタンス成分よりも小さいので、逆起電圧が伝送される伝送経路のインダクタンス成分に起因するノイズ電圧を低減することができる。その結果、逆起電圧を精度良く伝送することが可能となる。
【0008】
第1基板は、電圧駆動素子が実装された第1面を有してもよい。第2基板は、駆動回路が実装された第2面を有してもよい。第1基板と第2基板とは、第1面と第2面とが一方向から見て重なり合うように、一方向において互いに離間して配置されてもよい。導電部材は、一方向に延びるとともに、第1面及び第2面と交差しててもよい。基板31の第1面に実装される電圧駆動素子に接続される配線は、第1面に沿って延設されるので、当該配線に電流が流れることによって発生する磁束線が、導電部材を貫く数を減らすことができる。すなわち、導電部材の磁束鎖交数を減らすことができる。したがって、磁束に起因するノイズ電圧を低減することができる。その結果、逆起電圧を一層精度良く伝送することが可能となる。
【0009】
導電部材は、第1基板と第2基板とを支持する柱状部材であってもよい。この場合、専用の支持部材を用いることなく第1基板と第2基板とを支持することができる。したがって、電力変換装置の構成を簡易化することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、逆起電圧を精度良く伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図2図2は、出力電流の波形を示す図である。
図3図3は、図1に示される電力変換装置の分解斜視図である。
図4図4は、図3に示される電力変換装置の一部を模式的に示す断面図である。
図5図5は、逆起電圧の伝送経路において生じるノイズ電圧を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態に係る電力変換装置を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0013】
図1及び図2を参照しながら、一実施形態に係る電力変換装置の回路構成を説明する。図1は、一実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。図2は、主電流としての出力電流の波形を示す図である。図1に示される電力変換装置1は、電力を変換するための装置である。本実施形態では、電力変換装置1は、インバータ装置である。電力変換装置1は、コンバータ装置であってもよい。電力変換装置1は、外部電源2から入力電力の供給を受ける。入力電力は、直流電力である。外部電源2は、直流電源であって、例えば蓄電池(バッテリ)である。電力変換装置1は、モータ3に主電流としての出力電流Iu,Iv,Iwを出力し、モータ3は、出力電流Iu,Iv,Iwが流れることにより駆動する。出力電流Iu,Iv,Iwのそれぞれは、交流電流である。なお、図1には、出力電流Iu,Iv,Iwがモータ3に向かって流れるように示されているが、出力電流Iu,Iv,Iwのそれぞれの向きは電力変換装置1の動作に応じて変わり得る。
【0014】
電力変換装置1は、制御端子を有する電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WL、ダイオード12UH,12UL,12VH,12VL,12WH,12WL、及びインダクタンス部13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WLから構成されるインバータ回路と、制御端子に印加する電圧を生成する駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLと、コンデンサ15と、制御回路16と、を備えている。
【0015】
電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLのそれぞれは、制御端子、第1電流端子、及び第2電流端子を有する。本実施形態では、電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLとして、nチャネル型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が例示される。この場合、制御端子はゲートであり、第1電流端子はソースであり、第2電流端子はドレインである。電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLは、pチャネル型のMOSFETであってもよい。電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。この場合、制御端子はゲートであり、第1電流端子はエミッタであり、第2電流端子はコレクタである。
【0016】
電圧駆動素子11UHは、U相の上アームのスイッチング素子である。電圧駆動素子11ULは、U相の下アームのスイッチング素子である。電圧駆動素子11VHは、V相の上アームのスイッチング素子である。電圧駆動素子11VLは、V相の下アームのスイッチング素子である。電圧駆動素子11WHは、W相の上アームのスイッチング素子である。電圧駆動素子11WLは、W相の下アームのスイッチング素子である。
【0017】
電圧駆動素子11UHのドレインは、外部電源2の正極端子に電気的に接続されている。電圧駆動素子11UHのソースは、インダクタンス部13UHを介して電圧駆動素子11ULのドレインに電気的に接続されている。電圧駆動素子11UHのソースとインダクタンス部13UHの一端との接続点は、基準電位COM1に電気的に接続されている。インダクタンス部13UHの他端と電圧駆動素子11ULのドレインとの接続点Puは、モータ3のU端子に電気的に接続されており、接続点Puとモータ3のU端子との間には出力電流Iuが流れる。電圧駆動素子11ULのソースは、インダクタンス部13ULを介して外部電源2の負極端子に電気的に接続されている。電圧駆動素子11ULのソースとインダクタンス部13ULの一端との接続点は、接地電位GNDに電気的に接続されている。
【0018】
電圧駆動素子11VHのドレインは、外部電源2の正極端子に電気的に接続されている。電圧駆動素子11VHのソースは、インダクタンス部13VHを介して電圧駆動素子11VLのドレインに電気的に接続されている。電圧駆動素子11VHのソースとインダクタンス部13VHの一端との接続点は、基準電位COM2に電気的に接続されている。インダクタンス部13VHと電圧駆動素子11VLのドレインとの接続点Pvは、モータ3のV端子に電気的に接続されており、接続点Pvとモータ3のV端子との間には出力電流Ivが流れる。電圧駆動素子11VLのソースは、インダクタンス部13VLを介して外部電源2の負極端子に電気的に接続されている。電圧駆動素子11VLのソースとインダクタンス部13VLの一端との接続点は、接地電位GNDに電気的に接続されている。
【0019】
電圧駆動素子11WHのドレインは、外部電源2の正極端子に電気的に接続されている。電圧駆動素子11WHのソースは、インダクタンス部13WHを介して電圧駆動素子11WLのドレインに電気的に接続されている。電圧駆動素子11WHのソースとインダクタンス部13WHの一端との接続点は、基準電位COM3に電気的に接続されている。インダクタンス部13WHと電圧駆動素子11WLのドレインとの接続点Pwは、モータ3のW端子に電気的に接続されており、接続点Pwとモータ3のW端子との間には出力電流Iwが流れる。電圧駆動素子11WLのソースは、インダクタンス部13WLを介して外部電源2の負極端子に電気的に接続されている。電圧駆動素子11WLのソースとインダクタンス部13WLの一端との接続点は、接地電位GNDに電気的に接続されている。
【0020】
電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLのゲートには、駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLからそれぞれ電圧(ゲート電圧)Vgが印加される。各ゲートに供給される電圧Vgは、互いに異なる電圧値を有し得るが、便宜上、「電圧Vg」として説明する。電圧Vgが印加されることにより、各電圧駆動素子には、ドレインとソースとの間に主電流(ドレイン電流)Idが流れる。具体的には、ゲート・ソース間電圧Vgsが電圧駆動素子の閾値電圧Vthよりも大きくなった場合に、電圧駆動素子がオンとなり、ゲート・ソース間電圧Vgsと閾値電圧Vthとの差分に応じた主電流Idがドレインとソースとの間に流れる。
【0021】
ダイオード12UH,12UL,12VH,12VL,12WH,12WLは、電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLにそれぞれ並列に接続された還流ダイオードである。各ダイオードのカソードは、対応する電圧駆動素子のドレインに電気的に接続されている。各ダイオードのアノードは、対応する電圧駆動素子のソースに電気的に接続されている。
【0022】
インダクタンス部13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WLは、主電流Idが流れることによって逆起電圧Vssを発生する回路要素である。インダクタンス部13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WLのそれぞれは、電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WL(のソース)にそれぞれ電気的に接続されている。後述のように、主電流Idは急峻に変化するので、各インダクタンス部において逆起電圧Vssが発生する。なお、各インダクタンス部において発生する逆起電圧Vssは互いに異なる電圧値を有し得るが、便宜上、「逆起電圧Vss」として説明する。インダクタンス部13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WLは、コイル等のインダクタであってもよく、導線(配線パターン)のインダクタンス成分(寄生インダクタンス)であってもよい。
【0023】
駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLのそれぞれは、アクティブゲート駆動回路であって、制御回路16から入力される外部指令電圧Vrefと逆起電圧Vssとに基づいて、電圧Vgを変化させる。各駆動回路は、フィードバック回路17と、加算回路18と、を含んでいる。
【0024】
フィードバック回路17は、逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbを出力する回路である。フィードバック回路17は、対応するインダクタンス部の他端に電気的に接続されており、当該インダクタンス部において発生した逆起電圧Vssを受け、フィードバック電圧Vfbを加算回路18に出力する。フィードバック回路17は、例えば、分圧回路、及び非反転増幅回路を含んでもよいし、配線のみであってもよい。フィードバック回路17が、配線のみで構成される場合、逆起電圧Vssとフィードバック電圧Vfbとは実質的に等しい値となる。すなわち、「逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbを出力する」ことは、逆起電圧Vssの電圧値を変えることなく、フィードバック電圧Vfbとして配線に伝送させ、加算回路18に出力することも含む。言い換えると、フィードバック電圧Vfbは、逆起電圧Vssに基づいてフィードバック回路17に印加される電圧である。
【0025】
加算回路18は、外部指令電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbとを加算することによって加算電圧を生成する回路である。外部指令電圧Vrefは、電圧駆動素子をオンオフ制御するための電圧である。加算回路18としては公知の回路構成が用いられるので、詳細な説明を省略する。
【0026】
各駆動回路は、加算電圧に基づいて電圧Vgを変化(調整)させる。加算電圧が電圧Vgとして用いられてもよい。
【0027】
コンデンサ15は、外部電源2によって充電され、電力変換装置1が動作する際に発生する電圧変動を抑制するために用いられる。コンデンサ15は、外部電源2と並列に接続されている。コンデンサ15としては、例えば、複数の電解コンデンサを含むコンデンサバンクが用いられる。
【0028】
制御回路16は、電力変換装置1を制御するための外部指令電圧Vrefを生成する回路である。制御回路16は、外部指令電圧Vrefを駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLに供給する。なお、各駆動回路に供給される外部指令電圧Vrefは、互いに異なる波形を有し得るが、便宜上、「外部指令電圧Vref」として説明する。外部指令電圧Vrefは、電力変換装置1が駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLを備えていない場合、電圧Vgを変化(調整)させたり、電圧Vgとして用いられる。
【0029】
電力変換装置1では、電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLのそれぞれがスイッチング動作を行うことにより、外部電源2から供給された直流の入力電流Iinを有する入力電力が交流の出力電流Iu,Iv,Iwを有する交流電力に変換される。モータ3は、交流の出力電流Iu,Iv,Iwが流れることによって駆動する。
【0030】
さらに、インダクタンス部13UHには、電圧駆動素子11UH経由で主電流Idが流れ、インダクタンス部13ULには、電圧駆動素子11UL経由で主電流Idが流れる。同様に、インダクタンス部13VHには、電圧駆動素子11VH経由で主電流Idが流れ、インダクタンス部13VLには、電圧駆動素子11VL経由で主電流Idが流れる。同様に、インダクタンス部13WHには、電圧駆動素子11WH経由で主電流Idが流れ、インダクタンス部13WLには、電圧駆動素子11WL経由で主電流Idが流れる。図2に示されるように、主電流Idでは、急峻な電流値の変化が繰り返される。主電流Idのピーク電流値の包絡線は、出力電流Iu,Iv,Iwと同周期の交流波形を呈している。
【0031】
次に、図3及び図4を参照しながら、電力変換装置1の実装例を説明する。図3は、図1に示される電力変換装置の分解斜視図である。図4は、図3に示される電力変換装置の一部を模式的に示す断面図である。各図には、XYZ座標系が示される。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向と交差(ここでは、直交)する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と交差(ここでは、直交)する方向である。一例として、X軸方向は左右方向であり、Y軸方向は前後方向であり、Z軸方向は上下方向である。
【0032】
図3及び図4に示されるように、電力変換装置1は、ヒートシンク20と、主基板ユニット30と、コンデンサ基板ユニット40と、制御基板ユニット50と、導電部材61~66と、ケーブル67と、を備えている。ヒートシンク20、主基板ユニット30、コンデンサ基板ユニット40、及び制御基板ユニット50は、その順にZ軸方向(一方向)に配列されている。
【0033】
ヒートシンク20は、主基板ユニット30において発生した熱を電力変換装置1の外部に放出するための部材である。ヒートシンク20の上に、主基板ユニット30が設けられている。
【0034】
主基板ユニット30は、基板31(第1基板)と、電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WLと、ダイオード12UH,12UL,12VH,12VL,12WH,12WLと、インダクタンス部13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WLと、を含む。基板31は、面31a(第1面)と、面31aと反対側の面31bと、を有している。面31a,31bは、Z軸方向と交差(ここでは、直交)する面である。面31aには、電圧駆動素子11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WL、ダイオード12UH,12UL,12VH,12VL,12WH,12WL、及びインダクタンス部13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WLが実装されている。面31bの全面にわたって、ヒートシンク20が設けられている。
【0035】
コンデンサ基板ユニット40は、基板41と、コンデンサ15と、を含む。基板41は、Z軸方向から見て、基板31と実質的に同じ外径を有している。基板41は、面41aと、面41aと反対側の面41bと、を有している。面41a,41bは、Z軸方向と交差(ここでは、直交)する面である。面41aには、コンデンサ15が実装されている。本実施形態では、複数の電解コンデンサが面41aに実装されている。コンデンサ基板ユニット40は、Z軸方向において面41bが面31aと向かい合う(重なり合う)ように、主基板ユニット30の上に配置されている。基板41は、Z軸方向において基板31から離間している。
【0036】
制御基板ユニット50は、基板51(第2基板)と、駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLと、制御回路16と、を含む。基板51は、Z軸方向から見て、基板31及び基板41と実質的に同じ外径を有している。基板51は、面51a(第2面)と、面51aと反対側の面51bと、を有している。面51a,51bは、Z軸方向と交差(ここでは、直交)する面である。面51aには、駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WL及び制御回路16が実装されている。制御基板ユニット50は、Z軸方向において面51bが面41aと向かい合う(重なり合う)ように、コンデンサ基板ユニット40の上に配置されている。基板51は、Z軸方向において基板31及び基板41から離間している。
【0037】
導電部材61~66のそれぞれは、Z軸方向に延びる柱状部材である。本実施形態では、導電部材61~66のそれぞれは、円柱(円筒)状を呈している。導電部材61~66のそれぞれは、Z軸方向において基板41を貫通し、基板31から基板51に跨って延びている。導電部材61~66のそれぞれは、面31a,31b,41a,41b,51a,51bと交差(本実施形態では、直交)している。導電部材61~66のそれぞれは、基板31及び基板51を支持している。導電部材61~66は、その順にX軸方向に配列されている。
【0038】
導電部材61は、外部電源2の正極端子と、駆動回路14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WLと、コンデンサ15と、電圧駆動素子11UH,11VH,11WHのドレインと、電気的に接続されている。したがって、導電部材61には、主電流Idとしての入力電流Iinが流れる。
【0039】
導電部材62は、モータ3のU端子と、インダクタンス部13UHと、駆動回路14UHのフィードバック回路17と、電気的に接続されている。したがって、導電部材62には、電圧駆動素子11UHがオンした時、主電流Idとしての出力電流Iuが流れる。また、導電部材62は、インダクタンス部13UHに出力電流Iuが流れることによって発生した逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbをフィードバック回路17に伝送する。
【0040】
導電部材63は、駆動回路14ULのフィードバック回路17と、駆動回路14VLのフィードバック回路17と、インダクタンス部13ULと、インダクタンス部13VLと、電気的に接続されている。したがって、導電部材63は、インダクタンス部13ULに主電流Idが流れることによって発生した逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbを駆動回路14ULのフィードバック回路17に伝送する。また、導電部材63は、インダクタンス部13VLに主電流Idが流れることによって発生した逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbを駆動回路14VLのフィードバック回路17に伝送する。
【0041】
導電部材64は、モータ3のV端子と、インダクタンス部13VHと、駆動回路14VHのフィードバック回路17と、電気的に接続されている。したがって、導電部材64には、電圧駆動素子11VHがオンした時、主電流Idとしての出力電流Ivが流れる。また、導電部材64は、インダクタンス部13VHに出力電流Ivが流れることによって発生した逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbをフィードバック回路17に伝送する。
【0042】
導電部材65は、モータ3のW端子と、インダクタンス部13WHと、駆動回路14WHのフィードバック回路17と、電気的に接続されている。したがって、導電部材65には、電圧駆動素子11WHがオンした時、主電流Idとしての出力電流Iwが流れる。また、導電部材65は、インダクタンス部13WHに出力電流Iwが流れることによって発生した逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbをフィードバック回路17に伝送する。
【0043】
導電部材66は、外部電源2の負極端子と、駆動回路14WLのフィードバック回路17と、インダクタンス部13UL,13VL,13WLと、電気的に接続されている。したがって、導電部材66には、電圧駆動素子11WLがオンした時、主電流Idが流れる。また、導電部材66は、インダクタンス部13WLに主電流Idが流れることによって発生した逆起電圧Vssに基づくフィードバック電圧Vfbをフィードバック回路17に伝送する。
【0044】
ケーブル67は、基板31と基板51とを電気的に接続するための配線部材である。ケーブル67は、複数の配線材が平面状に束ねられたフレキシブルフラットケーブルである。ケーブル67は、駆動回路14UHから電圧駆動素子11UHのゲートに電圧Vgを供給するための配線材、駆動回路14ULから電圧駆動素子11ULのゲートに電圧Vgを供給するための配線材、駆動回路14VHから電圧駆動素子11VHのゲートに電圧Vgを供給するための配線材、駆動回路14VLから電圧駆動素子11VLのゲートに電圧Vgを供給するための配線材、駆動回路14WHから電圧駆動素子11WHのゲートに電圧Vgを供給するための配線材、及び駆動回路14WLから電圧駆動素子11WLのゲートに電圧Vgを供給するための配線材を含む。
【0045】
次に、図5を参照しながら、電力変換装置1の作用効果を説明する。図5は、逆起電圧の伝送経路において生じるノイズ電圧を説明するための図である。図5では、W相の下アームについて説明するが、他のアームにおいても同様のノイズ電圧が発生する。図5に示されるように、電圧駆動素子11WLのゲートに電圧Vgが印加されることによって主電流Idが流れ、主電流Idによってインダクタンス部13WLにおいて逆起電圧Vssが発生する。逆起電圧Vssをインダクタンス部13WLから駆動回路14WLに伝送するための伝送経路は、インダクタンス成分Lfbを有している。したがって、当該伝送経路に電流Ifbが流れることによってノイズ電圧Vn1が発生する。図2に示されるように、主電流Idの電流量は急峻に変化する。したがって、図5に示されるように、インダクタンス部13WLに主電流Idが流れるとき、磁束φが発生する。この磁束φによりノイズ電圧Vn2が発生する。実際にインダクタンス部13WLにおいて発生した逆起電圧Vssにノイズ電圧Vn1,Vn2が加えられた電圧が駆動回路14WLに伝送される。
【0046】
逆起電圧Vssを伝送するために専用の配線材(信号用の配線材)が用いられることがある。専用の配線材は、逆起電圧Vssを送るためだけに用いられるので、専用の配線材としては通常細い配線材(ワイヤ)が用いられる。しかしながら、このような細い配線材のインダクタンス成分は大きいので、電流Ifbにより誘起されたノイズ電圧Vn1が大きくなる。したがって、駆動回路14WLに伝送される逆起電圧Vssの精度が低下する。
【0047】
一方、電力変換装置1では、基板31から基板51に跨って延びる導電部材66を介して逆起電圧Vssが駆動回路14WLに伝送される。導電部材66には大きい電流量を有する主電流Id及び入力電流Iinが流れるので、信号用の配線材よりも太い部材が導電部材66として用いられる。したがって、導電部材66のインダクタンス成分は、信号用の配線材のインダクタンス成分よりも小さいので、逆起電圧Vssの伝送経路のインダクタンス成分に起因するノイズ電圧Vn1を低減することができる。その結果、逆起電圧Vssを精度良く伝送することが可能となる。
【0048】
導電部材62には出力電流Iuが流れる。導電部材63には主電流Idが流れる。導電部材64には出力電流Ivが流れる。導電部材65には出力電流Iwが流れる。出力電流Iu,Iv,Iw及び主電流Idは、いずれも大きい電流量を有するので、信号用の配線材よりも太い部材が導電部材62~65として用いられる。したがって、導電部材62~65のインダクタンス成分は、信号用の配線材のインダクタンス成分よりも小さいので、逆起電圧Vssの伝送経路のインダクタンス成分に起因するノイズ電圧を低減することができる。その結果、U相の上アーム、U相の下アーム、V相の上アーム、V相の下アーム、及びW相の上アームにおいても、逆起電圧Vssを精度良く伝送することが可能となる。
【0049】
電力変換装置1では、面31aにインバータ回路が実装されており、面51aに駆動回路14WLが実装されている。基板31と基板51とは、面31aと面51aとがZ軸方向から見て重なり合うように、Z軸方向において互いに離間して配置されている。導電部材66は、Z軸方向に延びるとともに、面31a及び面51aと交差(直交)している。したがって、基板31の面31aに実装されるインバータ回路の配線は、面31aに沿って延設され、基板41の面41aに実装される配線は、面41aに沿って延設されるので、配線に電流が流れることによって発生する磁束線が、導電部材66を貫く数を減らすことができる。すなわち、導電部材66の磁束鎖交数を減らすことができる。また、基板31と基板51との間の距離が大きいので、インバータ回路の配線に電流が流れることによって発生する磁束φが、基板51に与える影響が小さくなる。よって、ノイズ電圧Vn2を低減することができる。その結果、逆起電圧Vssを一層精度良く伝送することが可能となる。U相の上アーム、U相の下アーム、V相の上アーム、V相の下アーム、及びW相の上アームにおいても、同様である。
【0050】
導電部材61~66のそれぞれは、基板31と基板51とを支持する柱状部材である。このため、専用の支持部材を用いることなく基板31と基板51とを支持することができる。したがって、電力変換装置1の構成を簡易化することが可能となる。導電部材61~66のそれぞれとしては、基板31と基板51とを支持するために太い柱状部材が用いられ得る。したがって、導電部材61~66のインダクタンス成分が低減されるので、逆起電圧Vssを精度良く伝送することが可能となる。
【0051】
以上、本開示の一実施形態について詳細に説明されたが、本開示に係る電力変換装置は上記実施形態に限定されない。
【0052】
上記実施形態では、インダクタンス部13UL,13VL,13WLの一端が接地電位GNDに電気的に接続され、インダクタンス部13UL,13VL,13WLの他端が駆動回路14UL,14VL,14WLにそれぞれに電気的に接続されている。この構成に代えて、インダクタンス部13UL,13VL,13WLの他端が接地電位GNDに電気的に接続され、インダクタンス部13UL,13VL,13WLの一端が駆動回路14UL,14VL,14WLに電気的に接続されてもよい。同様に、インダクタンス部13UH,13VH,13WHの他端が基準電位COM1,COM2,COM3にそれぞれ電気的に接続され、インダクタンス部13UH,13VH,13WHの一端が駆動回路14UH,14VH,14WHにそれぞれ電気的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…電力変換装置、2…外部電源、3…モータ、11UH,11UL,11VH,11VL,11WH,11WL…電圧駆動素子、13UH,13UL,13VH,13VL,13WH,13WL…インダクタンス部、14UH,14UL,14VH,14VL,14WH,14WL…駆動回路、15…コンデンサ、16…制御回路、17…フィードバック回路、18…加算回路、31…基板(第1基板)、31a…面(第1面)、31b…面、51…基板(第2基板)、51a…面(第2面)、51b…面、61~66…導電部材、Id…主電流、Vfb…フィードバック電圧、Vg…電圧、Vref…外部指令電圧、Vss…逆起電圧。
図1
図2
図3
図4
図5