(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190269
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】液体残量推定装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20221219BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20221219BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20221219BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20221219BHJP
G01F 23/296 20220101ALI20221219BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221219BHJP
B01J 29/064 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/18 C
F02M37/00 301R
B60K15/03 A
G01F23/296 B
B01D53/94 222
B01D53/94 400
B01J29/064 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098512
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 良祐
【テーマコード(参考)】
2F014
3D038
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
2F014AA06
2F014FB01
3D038CA31
3D038CB01
3G091AA02
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
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3G091BA07
3G091CA17
3G091EA00
3G091EA01
3G091EA07
3G091EA39
3G091GB09W
3G091GB17X
3G091HA09
3G091HA15
4D148AA06
4D148AA08
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB09
4D148AC03
4D148BA11Y
4D148CC32
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4D148DA01
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4D148DA20
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA13A
4G169BC31A
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
(57)【要約】
【課題】車両に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を精度よく求める。
【解決手段】車両1の停車時、尿素タンク40内の尿素水の停車時水位hmtと、前後加速度Gxと、横加速度Gyを検出し(S11)、検出した、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyを用いて尿素水量算出マップから尿素水量を算出し(S12)、尿素水タンク40内の尿素水の残量を推定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を推定する液体残量推定装置であって、
前記タンク内の液体の液位を取得する液位取得手段と、
前記タンクの傾斜角を取得する傾斜角取得手段と、
前記タンク内の液体の残量を推定する残量推定手段と、を備え、
前記残量推定手段は、前記液位取得手段が前記車両の停車時に取得した停車時液位と、前記傾斜角とに基づいて、前記液体の残量を算出する、液体残量推定装置。
【請求項2】
前記傾斜角取得手段は、前記車両の前後方向の傾きである前後タンク傾斜角と、前記車両の左右方向の傾きである左右タンク傾斜角とを取得し、
前記残量推定手段は、前記停車時液位と、前記前後タンク傾斜角と、前記左右タンク傾斜角とに基づいて、前記液体の残量を算出する、請求項1に記載の液体残量推定装置。
【請求項3】
前記車両の前後方向の加速度である前後加速度を検出する前後加速度センサと、
前記車両の左右方向の加速度である横加速度を検出する横加速度センサと、をさらに備え、
前記傾斜角取得手段は、
前記車両の停車時に、前記前後加速度センサで検出した前記前後加速度に基づいて前記前後タンク傾斜角を取得し、前記車両の停車時に、前記横加速度センサで検出した前記横加速度に基づいて前記左右タンク傾斜角を取得する、請求項2に記載の液体残量推定装置。
【請求項4】
前記残量推定手段は、前記停車時液位、前記前後加速度、および前記横加速度をパラメータとしたマップから、前記液体の残量を算出する、請求項3に記載の液体残量推定装置。
【請求項5】
前記タンクは、尿素水を蓄える尿素水タンクであり、
前記残量推定手段は、前記尿素水の残量を算出し、
前記車両に搭載された内燃機関の排気通路へ前記尿素水を噴射する添加弁と、
前記残量推定手段で算出した前記尿素水の残量が所定値以下になったとき、警報を行う警報手段と、をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体残量推定装置。
【請求項6】
前記残量推定手段は、前記車両の走行時、前記停車時液位に基づいて算出した前記尿素水の残量から、前記排気通路へ供給した前記尿素水の供給量を減算して、前記尿素水の残量を算出する、請求項5に記載の液体残量推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体残量推定装置に関し、特に、車両に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を推定する液体残量推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、種々の液体を蓄えるタンク(容器)が搭載されている。たとえば、内燃機関の燃料を蓄える燃料タンク、ウィンドウォッシャー液を蓄えるウォッシャー液タンク、内燃機関の排気通路に設けた選択還元触媒へ供給する尿素水を蓄えた尿素水タンク、等が車両に搭載されている。
【0003】
これらのタンク内の液体の残量が少なくなった場合、タンク内に液体を補充することが必要である。このため、タンク内の液体の残量を検出することが望ましい。たとえば、特開2008-14267号公報(特許文献1)には、液体に没して先端部から液面位置までの没する長さを検出する棒状の液面検出部材を斜め下方に且つ放射状に燃料タンク内に複数配置し、各液面検出部材が検出する液面位置までの長さに基づいて燃料タンク内の燃料残量を求める、燃料残量検出装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の燃料残量検出装置では、液面位置までの長さを求めることができた液面検出部材が3つ以上ある場合、これら液面検出部材の液面位置までの長さに基づいて燃料タンク内の燃料残量を求め、液面位置までの長さを求めることができた液面検出部材が2つ以下の場合、この2つ以下の液面検出部材が検出する液面位置までの長さと、加速度センサが検出する加速度とに基づいて燃料残量を求めることにより、加減速時や旋回時あるいは登坂時に燃料が大きく偏っても、燃料残量を確実に求めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された燃料残量検出装置では、棒状の液面検出部材を放射状に配置する必要があり、その構造が複雑になる。また、車両の走行時、2つ以下の液面検出部材が検出する液面位置までの長さと加速度とに基づいて燃料残量を求める場合には、車両の振動等による液面の揺れによって、燃料残量の検出精度が悪化する懸念がある。
【0007】
本開示の目的は、車両に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を精度よく求めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の液体残量推定装置は、車両に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を推定する液体残量推定装置である。液体残量推定装置は、タンク内の液体の液位を取得する液位取得手段と、タンクの傾斜角を取得する傾斜角取得手段と、タンク内の液体の残量を推定する残量推定手段と、を備える。残量推定手段は、液位取得手段が車両の停車時に取得した停車時液位と、タンクの傾斜角とに基づいて、液体の残量を算出する。
【0009】
タンクの形状は予め判明している。したがって、液位とタンク内の液体の体積の関係を予め求めておくことにより、液位からタンク内の液体の残量を算出することができる。しかし、タンクが、液位と体積の関係を予め求めた状態から傾斜すると、液位と体積の関係が変化するので、液位から求めた残量の算出精度が悪化する。また、車両の走行時に加わる加速度や振動によって液面が大きく揺れると、液位から求めた残量の算出精度が悪化する。
【0010】
上記の構成によれば、残量推定手段は、液位取得手段が車両の停車時に取得した停車時液位と、タンクの傾斜角とに基づいて、液体の残量を算出する。停車時液位は、車両の走行時に加わる加速度や振動による液面の揺れが少ない、車両の停車時に取得される。そして、停車時液位とタンクの傾斜角に基づいて液体の残量を算出するので、タンクの傾斜角を反映した残量を算出でき、タンクが液位と体積の関係を予め求めた状態から傾斜していても、液体の残量を精度よく算出することができる。
【0011】
好ましくは、傾斜角取得手段は、車両の前後方向の傾きである前後タンク傾斜角と、車両の左右方向の傾きである左右タンク傾斜角とを取得し、残量推定手段は、停車時水位と、前後タンク傾斜角と、左右タンク傾斜角とに基づいて、液体の残量を算出するようにしえてもよい。
【0012】
この構成によれば、タンクの傾斜角として、前後タンク傾斜角と左右タンク傾斜角を取得し、前後タンク傾斜角および左右タンク傾斜角を用いて、液体の残量を算出する。したがって、タンクの傾斜角として、前後タンク傾斜角あるいは左右タンク傾斜角のいずれか一方を用いて、液体の残量を算出する場合に比較して、液体の残量を精度よく算出することができる。
【0013】
好ましくは、車両の前後方向の加速度である前後加速度を検出する前後加速度センサと、車両の左右方向の加速度である横加速度を検出する横加速度センサと、をさらに備え、傾斜角取得手段は、車両の停車時に、前後加速度センサで検出した前後加速度に基づいて前後タンク傾斜角を取得し、車両の停車時に、横加速度センサで検出した横加速度に基づいて左右タンク傾斜角を取得するようにしてもよい。
【0014】
この構成によれば、たとえば、車両運動制御等のために、既に車両に搭載されている前後加速度センサと横加速度センサを用いて、タンクの傾斜角を取得することができるので、新たにセンサを設けることなく、タンクの傾斜角を取得することができる。
【0015】
車両に搭載されるタンクは、尿素水を蓄える尿素水タンクであってよく、この場合、残量推定手段は尿素水の残量を算出する。尿素水タンクに蓄えられた尿素水は、添加弁から内燃機関の排気通路へ噴射される。
【0016】
添加弁から噴射する尿素水が枯渇すると、内燃機関のエミッションが悪化するので、残量推定手段で算出した尿素水の残量が所定値以下になったとき、警報を行う警報手段を設け、尿素水の補充を促すことが好ましい。
【0017】
残量推定手段は、車両の走行時、停車時液位に基づいて算出した尿素水の残量から、排気通路へ供給した尿素水の供給量を減算して、尿素水の残量を算出するようにすることが、好ましい。この構成によれば、車両の走行中に、尿素水の残量が所定値以下になった場合でも、警報を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、車両に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に係る液体残量推定装置を搭載した車両の全体構成図である。
【
図2】(A)および(B)は、尿素水タンク40内の尿素水の液面Lwの状態を示した図である。
【
図3】E/G-ECU100で実行される尿素水量推定制御の処理を示すフローチャートである。
【
図4】(A)および(B)は、尿素水量Uを算出するための尿素水量算出マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る液体残量推定装置を搭載した車両の全体構成図である。
図1において、車両1は、内燃機関10と、トルクコンバータ付き自動変速機3と、ディファレンシャルギヤ5と、駆動輪7とを備える。内燃機関10は、圧縮自己着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、内燃機関本体のシリンダ(気筒)に形成された燃焼室に、燃料噴射弁(インジェクター)から燃料を噴射し、圧縮自己着火を行う内燃機関である。内燃機関10から出力された動力は、自動変速機3およびディファレンシャルギヤ5を介して駆動輪7に伝達される。
【0022】
内燃機関10の燃焼室から排出される排気(排気ガス)は、排気マニホールドに集められ、排気通路20を介して、外気に放出される。排気通路20には、上流側から、酸化触媒22、DPF(Diesel Particulate Filter)24、SCR触媒26、酸化触媒28が設けられている。酸化触媒22は、排気中の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に酸化し、排気中の炭化水素(HC)を水(H2O)とCO2に酸化する。また、排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化する。これは、窒素酸化物(NOx)の還元反応は、NOとNO2が1:1の比率のとき、反応速度が速いため、ディーゼル内燃機関の排気中にはNOが多く含まれているため、排気中のNOをNO2に酸化して、NOとNO2の比を1:1に近づけるためである。
【0023】
DPF24は、排気中の微粒子を捕集し、捕集した微粒子を適宜燃焼除去することにより、浄化する。SCR触媒26は、排気中のNOxを還元浄化する。SCR触媒26は、たとえば、セラミック担体に銅(Cu)イオン交換ゼオライトを触媒として担持したものであり、アンモニア(NH3)を還元剤として用いることにより、高い浄化率を示すものである。還元剤として利用するアンモニアは、SCR触媒26の上流の排気通路20に供給した尿素水を加水分解することにより生成する。SCR触媒26の上流の排気通路には、尿素添加弁(尿素水噴射インジェクター)30が設けられ、尿素水タンク40からポンプ42によって圧送される尿素水を、尿素添加弁30から、SCR触媒26の上流の排気通路20に噴射する。酸化触媒28は、SCR触媒26から排出された(スリップした)アンモニアを酸化して浄化する。
【0024】
本実施の形態において、尿素水タンク40が、本開示の「車両に搭載されたタンク」に相当し、尿素水タンク40内に蓄えられた尿素水が「液体」に相当する。尿素水タンク40内の尿素水は、ポンプ42によって、供給通路41を介して尿素添加弁30に圧送される。
【0025】
ポンプ42は、尿素水タンク40内に設けられており、図示しない電動モータによって駆動される電動ポンプである。ポンプ42は、吸入口から吸入した尿素水を吐出口から供給通路41に圧送する。そして、尿素添加弁30が開弁することにより、尿素水がSCR触媒26の上流の排気通路20に噴射される。
【0026】
水位センサ43は、たとえば、尿素水タンク40の底面に設けられており、超音波を水面(液面)Lwに向かって照射し、水面Lwで反射した反射波の伝搬時間を用いて、尿素水タンク40に貯留された尿素水の水位hwを検出する。なお、水位hwが、本開示の「液位」に相当し、水位センサ43が、本開示の「液位取得手段」に相当する。
【0027】
車両1は、E/G-ECU(Electronic Control Unit)100、および、VDIM-ECU200を備える。E/G-ECU100とVDIM-ECU200とは、たとえば、CAN(Controller Area Network)通信により、相互に通信可能にされている。E/G-ECU100は、CPU(Central Processing Unit)101、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等からなるメモリ102、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)等を含み、メモリ102に記憶された情報、各種センサ、および、VDIM-ECU200からの情報等に基づいて、所定の演算処理を実行する。E/G-ECU100は、演算処理の結果に基づいて、尿素添加弁30、ポンプ42、および内燃機関10等を制御する。なお、E/G-ECU100には、各種センサとして、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度APを検出するアクセル開度センサ151、および、内燃機関10の回転速度であるエンジン回転速度NEを検出するエンジン回転速度センサ152が接続されている。
【0028】
VDIM-ECU200は、E/G-ECU100と同様に、CPU、メモリ、入出力ポート(いずれも図示せず)等を含み、メモリに記憶された情報、各種センサからの情報等に基づいて、所定の演算処理を実行し、制動装置や操舵装置(いずれも図示せず)等を制御して、車両1の車両運動(車両姿勢)の制御を行うものである。VDIM-ECU200には、車両姿勢を制御するため、車両1の車速SPDを検出する車速センサ153、車両1の前後加速度(前後G)Gxを検出する前後加速度センサ154、車両1の横加速度(横G)Gyを検出する横加速度センサ155が接続されている。E/G-ECU100は、VDIM-ECU200に入力された、車速SPD、前後加速度Gx、および、横加速度Gyを、CAN通信により取得する。
【0029】
HMI装置50は、車両1の運転を支援するための情報をユーザに提供する装置である。HMI装置50は、代表的には、車室内に設けられたディスプレイであり、スピーカ等も含む。HMI装置50は、視覚情報(図形情報、文字情報)や聴覚情報(音声情報、音情報)等を出力することによって様々な情報をユーザに提供する。
【0030】
尿素水タンク40内に蓄えられた尿素水が枯渇すると、SCR触媒26によるNOxの浄化が期待できなので、内燃機関10の排気エミッションが悪化する。このため、尿素水タンク40内の尿素水の残量を測定し、残量が少なくなったとき、尿素水の補充を促すことが望まれる。尿素水タンク40の形状は、予め判明しているので、尿素水タンク40が水平状態における尿素水の水位hmと尿素水タンク40内の尿素水の体積の関係を予め求めておくことにより、尿素水タンク40が水平状態における水位hmから尿素水の残量を算出することができる。
図2は、尿素水タンク40内の尿素水の液面Lwの状態を示した図である。
図2(A)は、車両1が平坦路に停車している場合の尿素水の液面Lwを示しており、
図2(B)は、車両1が坂道等の傾斜路に停車している場合の液面Lwを示している。
【0031】
図2(A)に示すように、車両1が平坦路に停車している場合、尿素水タンク40は水平状態であり、水位センサ43で検出した水位hmと尿素水の体積の関係は、予め求めておいた関係と整合しており、水位hmから尿素水の残量が精度よく算出できる。しかし、
図2(B)のように、車両1が傾斜路に停車している場合、尿素水タンク40が傾斜するので、尿素水の残量が
図2(A)と同じであっても、水位センサ43で検出した水位hmが増減する。
図2(B)の場合は、尿素水の残量が
図2(A)と同じであっても、水位hmが低下し、残量が少なく算出されてしまう。
【0032】
また、車両1が走行中の場合には、車両1の走行時に加わる加速度や振動によって液面(水面)Lwが大きく揺れる場合がある。この場合も、水位hmから尿素水の残量を精度よく算出することが、困難である。
【0033】
本実施の形態では、車両1の停車時に水位センサ43で検出した水位hmと、尿素水タンク40の傾斜角(水平状態に対する傾きの角度)とに基づいて、尿素水の残量を算出することにより、尿素水の残量を精度よく求める。
【0034】
図3は、E/G-ECU100で実行される尿素水量推定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、図示しないイグニッションスイッチがONになり内燃機関10が始動したあと、イグニッションスイッチがOFFになり内燃機関10の作動が停止するまでの間、所定期間毎に繰り返し処理される。この尿素水量推定制御が実行されることにより、尿素水タンク40内の尿素水の残量が推定される。
【0035】
ステップ10(以下、ステップを「S」と略す)では、車両1が停車してから所定時間が経過したか否かを判定する。たとえば、車速センサ153で検出した車速SPDが、車両1がほぼ停止状態であると判定できる所定値(たとえば、3km/h)以下になってから、所定時間(たとえば、5秒間)経過したとき、S10で肯定判定されS11へ進む。
【0036】
S11では、水位センサ43で、尿素水タンク40内の尿素水の水位hmを検出し、取得する。以下、S11において、車両1の停車時に取得した水位hmを、停車時水位hmtとも称する。また、車両1に停車時に、前後加速度センサ154で検出した前後加速度Gx、および横加速度センサ155で検出した横加速度Gyを、CAN通信により、VDIM-ECU200から取得する。S11の次はS12へ進む。
【0037】
S12において、S11で取得した、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyを用いて、尿素水量Uを算出する。
図4は、尿素水量Uを算出するための尿素水量算出マップの一例を示す図である。
図4(A)は、XYZ座標において、X軸のパラメータとして前後加速度Gx、Y軸のパラメータとして横加速度Gy、Z軸のパラメータとして停車時水位hmtを設定したマップである。車両1の前方に向かうベクトルの前後加速度Gxを正方向とした場合、前後加速度Gxが正の値であれば、尿素水タンク40は車両前方に傾斜しており、前後加速度Gxの値が大きいほど、前後方向の傾きである前後タンク傾斜角が大きくなる。また、前後加速度Gxが負の値であれば、尿素水タンク40は車両前方に傾斜しており、前後加速度Gxの値が大きいほど、前後タンク傾斜角が大きくなる。車両1の右方向に向かうベクトルの横加速度Gyを正方向とした場合、横加速度Gyが正の値であれば、尿素水タンク40は右方向に傾斜しており、横加速度Gyの値が大きいほど、左右方向の傾きである左右タンク傾斜角が大きくなる。また、横加速度Gyが負の値であれば、尿素水タンク40は左方向に傾斜しており、横加速度Gyの値が大きいほど、左右タンク傾斜角が大きくなる。
【0038】
図4(A)のマップを用いて尿素水量Uを算出する場合、S11で取得した、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyを用いて、座標を算出する。たとえば、停車時水位hmtが「hwt1」であり、前後加速度Gxが「Gx1」であり、横加速度Gyが「Gy1」の場合、座標はP(Gx1、Gy1、hmt1)となる。また、停車時水位hmtが「hwt2」であり、前後加速度Gxが「-Gx2」であり、横加速度Gyが「-Gy2」の場合、座標はP(-Gx2、-Gy2、hmt2)となる。そして、算出した座標に対応して記憶されている尿素水量Uを読み出すことにより、S11で取得した、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyを用いて、マップから尿素水量Uを求める。なお、各座標に対応して記憶されている尿素水量Uは、予め実験等によって求め、メモリ102に書き込まれている。
【0039】
尿素水量Uを算出するためのマップは、
図4(B)に示すように、停車時水位hmt毎に記憶されたテーブルであってもよい。
図4(B)に示すように、停車時水位hmt毎に、尿素水量Uと前後加速度Gxおよび横加速度Gyの関係を表したテーブルが、メモリ102に記憶されており、S11で取得した停車時水位hmtに対応するテーブルから、前後加速度Gxおよび横加速度Gyを用いて、尿素水量Uを算出する。このテーブルも、予め実験等によって求め、メモリ102に書き込んでおく。なお、停車時水位hmt1と停車時水位hmt2の間の停車時水位等、テーブルに記憶されていない数値については、補間計算を行うことにより、S11で取得した、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyを用いて、尿素水量Uを算出してよい。
【0040】
S12において、尿素水量Uを算出するとS13へ進む。S13では、算出した尿素水量Uを、尿素水量の前回値U(pv)として、メモリ102に記憶する。なお、メモリ102において、尿素水量の前回値U(pv)が記憶される領域は、不揮発メモリである。
【0041】
車両1が停車してから所定時間が経過しておらず、S10で否定判定されるとS14へ進む。S14では、メモリ102から読み出した尿素水量の前回値U(pv)から、尿素水供給量Addを減算することにより、尿素水量Uを算出する。(尿素水量U=尿素水量の前回値U(pv)-尿素水供給量Add)尿素水供給量Addは、繰り返し処理される本ルーチンが、前回処理されてから今回処理されるまでの間に、尿素添加弁30から排気通路20に供給された尿素水の量である。
【0042】
尿素添加弁30から排気通路20内に供給(噴射)される尿素水の量(尿素水供給量)は、内燃機関10から排出されるNOx量に応じて設定される。たとえば、内燃機関10の燃料噴射量Fqと回転速度NEをパラメータとしたマップから、内燃機関10から排出されるNOx量(排出NOx量)を求め、排出NOx量に応じた、尿素水噴射量Quwを算出する。そして、尿素添加弁30から供給する尿素水の量が、尿素水噴射量Quwになるように、尿素添加弁30の開弁時間を制御する。この尿素水噴射量Quwを、本ルーチンの前回処理から今回処理まで積算することにより、尿素水供給量Addが求められる。S14の次は、S13に進んで、算出した尿素水量Uを、尿素水量の前回値U(pv)として、メモリ102に記憶する。
【0043】
S13に続くS15では、尿素水量Uが所定値α以下か否かを判定する。所定値αは、尿素水の残量が低下したとき、尿素水の補充を促すための閾値である。尿素水量Uが所定値αを上回る場合は、否定判定され今回のルーチンを終了する。尿素水量Uが所定値α以下の場合は、肯定判定されS16へ進む。
【0044】
S16では、尿素水の残量が低下したことを警報したあと、今回のルーチンを終了する。たとえば、HMI装置50のディスプレイに尿素水の残量低下を表示するとともに、スピーカから警報音を発するようにしてよい。
【0045】
本実施の形態では、S12において、S11で取得した、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyを用いて尿素水量Uを算出している。前後加速度Gxは、尿素水タンク40の前後タンク傾斜角と相関し、横加速度Gyは、尿素水タンク40の左右タンク傾斜角と相関する。停車時水位hmtは、車両1の走行時に加わる加速度や振動による液面の揺れが少ない、車両1の停車時に取得される。そして、停車時水位hmtと、尿素水タンク40の傾斜角と相関する前後加速度Gxおよび横加速度Gyとに基づいて尿素水量Uを算出するので、尿素水タンク40が水位hmと体積の関係を求めた状態(水平状態)から傾斜していても、尿素水量Uを精度よく算出することができる。また、尿素水タンク40の傾斜角として、尿素水タンク40の前後タンク傾斜角および左右タンク傾斜角の両方を用いて、尿素水量Uを算出するので、いずれか一方を用いて尿素水量Uを算出する場合に比較して、精度よく算出できる。なお、この場合、S12で算出した尿素水量Uが、本開示の「液体の残量」に相当し、前後加速度センサ154および横加速度センサ155が、本開示の「傾斜角取得手段」に相当し、S12の処理が、本開示の「残量推定手段」に相当する。
【0046】
本実施の形態では、車両運動制御を実行するために、VDIM-ECU200に接続されている前後加速度センサ154と横加速度センサ155を利用して、前後加速度Gxおよび横加速度Gyを取得している。したがって、既に車両1に搭載されている前後加速度センサ154と横加速度センサ155を用いて、尿素水タンク40の傾斜角を取得することができるので、新たにセンサを設けることなく、尿素水タンク40の傾斜角を取得することができる。
【0047】
本実施の形態では、車両1の走行時、S14において、S12で算出した尿素水量Uから、排気通路20へ供給した尿素水の供給量(尿素水供給量Add)を減算して、尿素水量Uを算出している。したがって、車両1の走行中にも、尿素水の残量を算出することができ、走行中に尿素水の残量が所定値以下になった場合でも、尿素水の補充を促す警報を行うことができる。
【0048】
上記実施の形態では、尿素水タンク40内に蓄えられた尿素水の残量を推定していたが、本開示は、燃料タンク内に蓄えられる燃料の残量等、車両1に搭載されたタンク内に蓄えられた液体の残量を推定するものに適用可能である。
【0049】
上記実施の形態では、水位センサ43として、超音波の反射波を利用する例を説明したが、フロートの位置に基づいて水位を検出する、フロートタイプの水位センサであってもよい。
【0050】
上記実施の形態では、
図4の尿素水量算出マップとして、停車時水位hmt、前後加速度Gx、および横加速度Gyをパラメータとしたマップを用いていた。しかし、尿素水量算出マップは、停車時水位hmt、左右タンク傾斜角(°)、および左右タンク傾斜角(°)をパラメータとしたマップであってもよい。この場合、前後加速度Gxから前後タンク傾斜角(°)を算出し、横加速度Gyから左右タンク傾斜角(°)を算出して、停車時水位hmt、左右タンク傾斜角(°)、および左右タンク傾斜角(°)を用いて、マップ検索を行うことにより、尿素水量Uを算出する。
【0051】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
1)車両(1)に搭載された内燃機関(10)の排気通路(20)へ尿素水を供給し、内燃機関(10)から排出されたNOxを浄化する排気浄化装置であって、尿素水を排気通路(20)へ噴射する尿素添加弁(30)と、尿素水を蓄える尿素水タンク(40)と、尿素水タンク(40)内の尿素水の水位を検出する水位センサ(43)と、制御装置(100)と、を備え、制御装置(100)は、尿素水タンク(40)の傾斜角を取得する傾斜角取得手段と、尿素水タンク(40)の尿素水の残量を推定する残量推定手段と、を含み、残量推定手段は、車両(1)の停車時に水位センサ(43)で検出した停車時水位と、尿素水タンク(40)の傾斜角に基づいて、尿素水の残量を算出する、内燃機関の排気浄化装置。
【0052】
2)1において、傾斜角取得手段は、車両(1)の停車時における前後加速度に基づいて、尿素水タンク(40)の車両前後の傾きである前後タンク傾斜角を取得し、車両(1)の停車時における横加速度に基づいて、尿素水タンク(40)の車両左右方向の傾きである左右タンク傾斜角を取得するとともに、残量推定手段は、停車時水位と、前後タンク傾斜角と、左右タンク傾斜角を用いて、尿素水の残量を算出する。
【0053】
3)2において、残量推定手段は、停車時水位、前後加速度、および横加速度をパラメータとする尿素水量算出マップを記憶しており、停車時水位、前後加速度、および横加速度を用いて、尿素水量算出マップから尿素水量を求め、尿素水の残量を算出する。
【0054】
4)3において、車両(1)の走行時、尿素水量算出マップから算出した尿素水の残量から、尿素添加弁(30)から排気通路へ供給した尿素水供給量を減算して、尿素水の残量を算出する。
【0055】
5)4において、尿素水の残量が所定値以下になったとき、警報を行う警報手段を、さらに備える。
【0056】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 車両、3 トルクコンバータ付き自動変速機、5 ディファレンシャルギヤ、7 駆動輪、10 内燃機関、20 排気通路、22 酸化触媒、24 DPF、26 SCR触媒、28 酸化触媒、30 尿素添加弁、40 尿素水タンク、41 供給通路、42 ポンプ、43 水位センサ、50 HMI装置、100 E/G-ECU、101 CPU。102 メモリ、151 アクセル開度センサ、152 エンジン回転速度センサ、153 車速センサ、154 前後加速度センサ、155 横加速度センサ、200 VDIM-ECU。