(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190277
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】失禁用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/47 20060101AFI20221219BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61F13/47 100
A61F13/511 300
A61F13/512 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098529
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】鶴永 華帆
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA05
3B200BA06
3B200BA13
3B200BB05
3B200BB09
3B200BB17
3B200CA11
3B200DA13
3B200DA14
3B200DC01
3B200DC02
3B200DC04
3B200DC07
3B200DC09
(57)【要約】
【課題】肌触りが柔らかく、体液拡散性に優れ、複数回の吸収でも吸収速度が高水準に維持される失禁用吸収性物品の提供。
【解決手段】液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、これらの間に配置される吸収体20とを備え、吸収体20は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有し、トップシート10は、着用者の肌側に位置する肌側表面層11と、着用者の非肌側に位置する非肌側表面層12とを含み、肌側表面層11は天然綿繊維からなるコットン層であり、非肌側表面層12は合成セルロース繊維を含み、トップシート10の肌側表面が撥水処理されている、失禁用吸収性物品50。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートは、着用者の肌側に位置する肌側表面層と、着用者の非肌側に位置する非肌側表面層と、を含み、
前記肌側表面層は天然綿繊維からなるコットン層であり、前記非肌側表面層は合成セルロース繊維を含み、
前記トップシートの肌側表面が撥水処理されている、失禁用吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートをMD方向に対して垂直方向に曲げたときの平均曲げ剛性Bが0.04gf・cm2/cm以下であり、かつ前記トップシートの平均曲げヒステリシス2HBが0.04gf・cm/cm以下である、請求項1に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートの圧縮硬さLCが0.5以下である、請求項1又は請求項2に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項4】
前記撥水処理が、前記トップシートの肌側表面に撥水剤を塗布することにより行われる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項5】
前記撥水剤が、パラフィン系撥水剤、及びシリコン系撥水剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項4に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシートの全重量を100重量部としたとき、前記撥水剤の塗布量はトップシート100重量部に対して0.2重量部以上0.4重量部以下である、請求項4又は請求項5に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項7】
前記トップシートと前記吸収体との間に配置され、一方の表面から他方の表面に貫通する複数の開孔を有する開孔フィルムをさらに有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項8】
前記トップシートと、前記開孔フィルムとの間に配置され、体液を拡散させつつ、前記吸収性物品にクッション性を付与するセカンドシートをさらに有する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の失禁用吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の失禁用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないように構成されている。吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の着用感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、トップシート、吸収体及びバックシートを備え、トップシートは、肌側に配設されてセルロース系繊維からなる非熱融着層と、非肌側に配設されて熱融着性繊維からなり、非熱融着層に交絡接合された熱融着層とからなり、トップシートの非肌側に配設されて熱融着性繊維からなるセカンドシート、及びセカンドシートの非肌側表面に設けられ肌側に窪んだ複数の圧搾部を有し、該圧搾部はセカンドシートの非肌側から圧搾してセカンドシートとトップシートの熱融着層とを一体的に固着したものであり、固着後のトップシートの肌側表面が平坦である吸収性物品が開示されている(請求項1、
図4)。特許文献1によれば、コットンの柔らかい肌触り感を低下させずに、トップシートに吸収された体液が非肌側に移行できる吸収性物品が提供されると記載されている(段落0023)。
【0004】
また、液戻りの防止や吸収速度等の吸収性能の向上等を目的として、吸収性物品の所定の位置に開孔フィルムを配置する提案がなされている。特許文献2には、トップシート、吸収体及びバックシートを備え、トップシートは、熱可塑性樹脂からなる開孔フィルムである肌当接面層と、その非肌側に積層一体化され、嵩高性のセルロース繊維を含む非肌当接面層と、を含む吸収性物品が開示されている(請求項1)。特許文献2によれば、体液がトップシート上を液流れしたり液残りしたりすることがなく吸収体に導かれ、吸収性能が高く、ベタツキが少ない吸収性物品が提供されると記載されている(段落0014)。
【0005】
特許文献3には、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)、フラッフパルプ等を含む吸収体と、耐水性、高通気性の合成樹脂製開孔フィルムからなる吸収体被覆層とを備え、開孔フィルムは、頭頂部の開孔が小さく、底部の開孔が大きい漏斗状構造の多数の突起部を有し、その突起部の頭頂部が吸収体に接するように配置されている吸収性物品が開示されている(請求項1、8)。特許文献3によれば、吸収体被覆層が外に漏れ出た体液を吸収体に再吸収させることから、大量の体液が短時間に排出されても体液漏れが生じ難く、吸収体の通気性が良好であることから、使用感覚に優れた吸収性物品になると記載されている(段落0058)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-162415号公報
【特許文献2】特開平8-66425号公報
【特許文献3】特開2002-355271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、トップシートの肌側表面に設けられる、セルロース系繊維からなる非熱融着層の好ましい実施形態として、柔らかい肌触りを得る等の観点から、コットン繊維100重量%からなるスパンレース不織布が挙げられている(段落0036)。しかしながら、コットン繊維100重量%の不織布は、着用者には固さが感じられる。また、特許文献1では、トップシートとセカンドシートとを圧搾により一体化するため、非熱融着層の前述の固さがさらに高まり、吸収性物品の着用感が低下し易くなる。
【0008】
特許文献2では、トップシートとして、熱可塑性樹脂製の開孔フィルムである肌側層と嵩高性のセルロース繊維を含む非肌側層との積層一体化物を用いることで、液戻り防止性や吸収速度等の向上を図っている。しかしながら、特許文献2に記載の吸収性物品は、体液拡散性の向上に効果があるものとはいえず、吸収体の吸収性能を十分に発揮できていない。
【0009】
特許文献3では、開孔フィルムは、吸収体成分の吸収体からの離脱を防止し、吸収体の形態安定性を保持するために用いられている(請求項1)。また、開孔フィルムは、開孔径が相対的に小さい頭頂部が吸収体に接するように設けられているものの、外に漏出した体液を吸収体に再吸収させるような作用は発現しにくく、更に、吸収体内の体液拡散性の向上には貢献していない。
【0010】
本発明の目的は、肌触りが柔らかく、体液拡散性に優れ、複数回の吸収でも吸収速度が高水準に維持される失禁用吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、肌側層と非肌側層とを有し、肌側層が天然綿繊維からなり、非肌側層が合成セルロース繊維を含むトップシートを用い、トップシートの肌側表面を撥水処理し、かつ、トップシートと吸収体との間に必要に応じて開孔フィルムを配置し、トップシートの非肌側面と開孔フィルムとが近接するように構成することで、目的に叶う失禁用吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記の失禁用吸収性物品を提供する。
【0012】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートは、着用者の肌側に位置する肌側表面層と、着用者の非肌側に位置する非肌側表面層と、を含み、
前記肌側表面層は天然綿繊維からなるコットン層であり、前記非肌側表面層は合成セルロース繊維を含み、
前記トップシートの肌側表面が撥水処理されている、失禁用吸収性物品。
(2)前記トップシートをMD方向に対して垂直方向に曲げたときの平均曲げ剛性Bが0.04gf・cm2/cm以下であり、かつ前記トップシートの平均曲げヒステリシス2HBが0.04gf・cm/cm以下である、上記(1)の失禁用吸収性物品。
(3)前記トップシートの圧縮硬さLCが0.5以下である、上記(1)又は(2)の失禁用吸収性物品。
(4)前記撥水処理が、前記トップシートの肌側表面に撥水剤を塗布することにより行われる、上記(1)乃至(3)のいずれかの失禁用吸収性物品。
(5)前記撥水剤が、パラフィン系撥水剤、及びシリコン系撥水剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記(4)の失禁用吸収性物品。
(6)前記トップシートの全重量を100重量部としたとき、前記撥水剤の塗布量はトップシート100重量部に対して0.2重量部以上0.4重量部以下である、上記(4)又は(5)の失禁用吸収性物品。
(7)前記トップシートと前記吸収体との間に配置され、一方の表面から他方の表面に貫通する複数の開孔を有する開孔フィルムをさらに有する、上記(1)乃至(6)のいずれかの失禁用吸収性物品。
(8)前記トップシートと、前記開孔フィルムとの間に配置され、体液を拡散させつつ、前記吸収性物品にクッション性を付与するセカンドシートをさらに有する、上記(1)乃至(7)のいずれかの失禁用吸収性物品。
(9)前記吸収体は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体である、上記(1)乃至(8)のいずれかの失禁用吸収性物品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、肌触りが柔らかく、体液拡散性に優れ、複数回の吸収でも吸収速度が高水準に維持される失禁用吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る失禁用吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すX-X切断線による幅方向の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、失禁用吸収性物品50の着用とは、体液吸収の前後を問わず、着用者の身体に装着した状態をいう。失禁用吸収性物品50の、長手方向とは、失禁用吸収性物品50を着用したときに着用者の股間部を介して前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して略直交する、図中Xで示す方向であり、厚さ方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。失禁用吸収性物品50及びその各構成部材の肌側表面とは着用者の肌に当接する表面又は該肌を臨む表面であり、非肌側表面とは着用者の衣類に当接する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0016】
<失禁用吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る失禁用吸収性物品50(以下単に「吸収性物品50」ともいう)について説明する。
図1乃至
図2は、吸収性物品50を示す。各図は、吸収性物品50及び各構成部材の形状や、寸法の大小関係等を規定するものではない。
【0017】
本実施形態の吸収性物品50は、尿や軟便中の水分の吸収を目的とするものであり、ベビー用、成人用及び高齢者用の種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿吸収パッド等のパッド製品(ただし、生理用ナプキンを除く)、パンツタイプ紙おむつ、テープ止めタイプ紙おむつ等の紙おむつ製品等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法L
50(
図1)、及び幅方向の寸法W
50(
図1)はいずれも特に限定されないが、例えば、L
50が100mm以上800mm以下の範囲、及びW
50が50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整すると、種々の形態の吸収性物品が容易に得られる。
【0018】
図1及び
図2に示す吸収性物品50は、肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向配置され、非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置される吸収体20と、トップシート10と吸収体20との間に、肌側から順に配置されるセカンドシート60及び開孔フィルム70と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20は、フラッフパルプ等の吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有するフラッフ吸収体である。また、トップシート10は、綿繊維からなるコットン層である肌側表面層11と、合成セルロース繊維を含む非肌側表面層と、の2層構造である。
【0019】
本実施形態によれば、トップシート10の肌側及び非肌側に、それぞれ、天然綿繊維からなる肌側表面層11、及び合成セルロース繊維を含む非肌側表面層12を設け、肌側表面層11を非肌側表面層12で裏打ちすることで、肌側表面層11を厚さ20μm以上400μm以下程度の薄層に形成することが可能になり、柔らかでありつつ、着用者が固さを感じにくい良好な肌触りになり、また、肌側表面層11から非肌側表面層12への体液の受け渡しが円滑に行なわれ、トップシート10(肌側表面層11)の肌側表面が撥水処理されていることから、該肌側表面に体液に由来するべとつき等が生じることはなく、着用感の良好な吸収性物品50が得られる。
また、開孔フィルム70を含む本実施形態によれば、肌側表面層12を透過してきた体液が、非肌側表面層12の面方向、すなわち長手方向及び幅方向に拡がることから、非肌側表面層12と開孔フィルム70とが接するように配置するか、又は後述する実施形態においてトップシート10の非肌側表面層12と開孔フィルム70を、これらの間にセカンドシート60を配して、近接配置することで、非肌側表面層12を透過してきた体液が開孔フィルム70を通して吸収体20の面方向全域にほぼ均等に拡散することから、吸収体20中での体液拡散性が顕著に向上し、吸収体20全体の体液吸収能力を十分に活用でき、複数回の体液吸収を経ても体液吸収速度が速く、体液吸収能力に十分な余力がある吸収性物品50が得られる。
また、本実施形態によれば、前述のように、体液が吸収体20の肌側表面の面方向全体にほぼ均等に供給されるので、液戻り、横漏れ等の体液漏れが防止された吸収性物品50が得られる。
【0020】
本実施形態の吸収性物品50は、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を基本構成単位とし、例えば、前述のような立体ギャザー40の配設、トップシート10と吸収体20との間へのセカンドシート60やトランスファシート(不図示)の配置、キャリアシート(不図示)による吸収体20の被覆等の、公知の様々な改変を加えることができる。以下、本実施形態の吸収性物品50の構成部材について、トップシート10、セカンドシート60、吸収体20、バックシート30、及び立体ギャザー40の順で更に詳しく説明する。
【0021】
<トップシート>
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させて吸収体20の面方向に体液を拡散させる液透過性のシート状基材である。本実施形態のトップシート10は、肌側表面層11と非肌側表面層12とを合わせて重ねたものである。肌側表面層11は天然綿繊維からなり、好ましくは天然綿繊維の含有量が肌側表面層11全量の100重量%である。非肌側表面層12は合成パルプ繊維を含み、好ましくは合成パルプ繊維の含有量がトップシート10全量の1重量%以上60重量%以下の範囲、又は10重量%以上50重量%以下の範囲になるように、トップシート10の非肌側に形成される。非肌側表面層12は、合成パルプ繊維の他に、各種天然セルロース繊維、合成樹脂繊維等の1種又は2種以上を含むことができる。
【0022】
肌側表面層11には、柔らかな肌触り等の観点から、木綿由来の綿繊維が用いられる。綿繊維は、脱リグニン、漂白等の処理を施したものでもよい。肌側表面層11は、前述のように綿繊維100重量%からなることが好ましいが、綿繊維による利点を損なわない範囲で、綿繊維以外の天然セルロース繊維の1種を又は2種以上を含んでいてもよい。非肌表面層12に用いられる合成セルロース繊維としては特に限定されないが、例えば、レーヨン、リヨセル、キュプラ等が挙げられる。合成セルロース繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
本実施形態における肌側表面層11、及び非肌側表面層12の形態はシート状の形態であれば特に限定されず、例えば、織物、スパンレース不織布等が挙げられる。これらの中でも、例えば、肌側表面層11の固さが残らない、柔らかな感触又は肌当たりの柔らかさを得る観点から、スパンレース不織布が好ましい。スパンレース不織布は、例えば、原料繊維を解きほぐし、必要に応じて異物を除去して、シート状のラップを得る工程と、シート状のラップをカード機により梳綿してシートを得る工程と、を含む一般的な製造方法により作製することができる。非肌側表面層12も同様にして作製できる。その後、上層に綿繊維を配置し、下層に合成パルプ繊維等を配置して水流交絡処理し、肌側表面層11と非肌側表面層12とが厚さ方向に一体化したスパンレース不織布(トップシート10)とすることができる。
【0024】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。肌側表面層11と非肌側表面層12とを合わせた全体としてのトップシート10の坪量は、肌当たりの柔らかさ、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は20g/m2以上55g/m2以下である。また、肌側表面層11と非肌側表面層12とを合わせたトップシート10の厚さは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20に誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0025】
(撥水処理)
トップシート10の肌側表面、すなわち肌側表面層11の肌側表面には撥水処理が施されている。この撥水処理により、例えば、トップシート10(肌側表面層11)の肌側表面及び/又は内部に撥水剤の塗布層及び/又は付着層が形成され、トップシート10が着用者の体液を吸収したときに、肌側表面層11が水分を多く含んで濡れた状態になって着用感が低下するのを防ぐことができる。撥水処理としては、例えば、撥水剤又はその溶液を塗布する方法が挙げられる。撥水剤としては公知のものを使用でき、例えば、ミネラルオイル、ワセリン等のパラフィン系撥水剤、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、トリシロキサン等のシリコン系撥水剤等が挙げられる。これらの中でも、肌に刺激を与えない撥水剤が好ましい。塗布量はトップシート10の100重量部に対して、例えば、0.2重量部以上0.4重量部以下の範囲である。0.2重量部より少ないと、撥水剤の機能が十分に発現しない傾向があり、0.4重量部より多いと、撥水機能が高すぎて、体液がトップシート10から弾かれ、吸収体20への浸透量が低下する傾向がある。
【0026】
<平均曲げ剛性B、平均曲げヒステリシス2HB、圧縮硬さLC>
トップシート10の柔らかさは、平均曲げ剛性B、平均曲げヒステリシス2HB、及び圧縮硬さLCで表すことができる。
【0027】
(平均曲げ剛性B及び平均曲げヒステリシス2HB)
トップシート10は、MD方向に対して垂直方向に曲げたときの平均曲げ剛性B(以下単に「平均曲げ剛性B」という)が0.04gf・cm2/cm以下の範囲であり、MD方向に対して垂直方向に曲げたときの平均曲げヒステリシス2HB(以下単に「ヒステリシス2HB」という)が0.04gf・cm/cm以下である。平均曲げ剛性B及び平均曲げヒステリシス2HBが前述の範囲であれば、トップシート10は、硬さのない柔らかな感触を有している。なお、平均曲げ剛性Bは、数値が高いほど、硬い感触であることを示し、平均曲げヒステリシス2HBは、数値が高いほど、曲げた後に戻りにくく、曲げ回復性が悪いことを示す。
【0028】
トップシート10の平均曲げ剛性B及びヒステリシス2HBは、純曲げ試験機摩擦感テスター(商品名:KES-FB2、カトーテック(株)製)を使用し、100m×100mの試料をクランプ間隔10mmで装置に取り付け、曲率増加速度5mm/秒で測定される。
【0029】
(圧縮硬さLC)
トップシート10は、圧縮硬さLCが例えば0.5以下である。圧縮硬さLCは、厚さ方向に圧縮する力に対して、どの様に変形するかを示すものであり、圧縮硬さLCが0.5よりも高い値の場合、硬さが出てしまうため好ましくない。圧縮硬さLCは、ハンディ圧縮試験機(商品名:KES-G5、カトーテック(株)製)を用い、試験台に試料を置き、面積2cm2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.01cm/秒、最大圧縮応力20gf/cm2の条件で試料に押し込み圧縮することにより測定される。
【0030】
<セカンドシート>
本実施形態では、セカンドシート60を、トップシート10の非肌側、より詳しくはトップシート10と吸収体20との間に配置してもよい。セカンドシート60を配置することで、クッション性が増し、吸収性物品50の着用感とフィット感が向上するとともに、トップシート10を透過してきた体液を、開孔フィルム70による吸収体20への体液供給に合わせて、開孔フィルム70に向けて供給する。
【0031】
セカンドシート60の基材は、例えば、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収体20へ素早く拡散する嵩高な不織布である。該不織布としてはエアスルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。セカンドシート60の厚さは例えば0.1mm以上4mm以下の範囲であり、その坪量は例えば20g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は22g/m2以上37g/m2以下の範囲である。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が20g/m2未満もしくは60g/m2より大きいと、吸収体20の肌側表面全体への体液拡散が不十分になるとともに、吸収性物品50の着用感が低下する傾向がある。また、セカンドシート60の形状は、特に制限はないが、好ましい実施形態では、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状であればよい。
【0032】
<開孔フィルム>
開孔フィルム70は、厚さ方向に貫通する複数の開孔71(
図2)を有する樹脂製フィルムである。開孔フィルム70は、本実施形態ではセカンドシート60と吸収体20との間に配置してもよく、この位置に配置することで、例えば、セカンドシート60から供給された体液を面方向、すなわち長手方向及び幅方向に拡散させつつ、吸収体20の肌側表面のほぼ全域に体液を満遍なく供給する。なお、本実施形態に限定されず、セカンドシート60を介することなく、トップシート10と吸収体20との間に開孔フィルム70を配置してもよい。開孔フィルム70には、開孔ポリエチレンフィルム、開孔ポリプロピレンフィルム等がある。
【0033】
開孔フィルム70は、体液拡散性、強度及び加工性の点で、開孔径が例えば2mm以下の範囲、又は0.50mm以上0.65mm以下の範囲である。開孔径とは、開孔71の開孔フィルム70表面での径である。開孔径が0.50mmより小さい場合、体液透過性が低下する傾向があり、開孔径が0.65mmより大きい場合、開孔フィルム70の強度、加工性等が低下する傾向がある。本明細書において、開孔径は、開孔フィルム70の表面を、ワンショット3D形状測定機(商品名:VR-3100、(株)キーエンス製)で撮影し、任意に選んだ3つの開孔71の直径を測定した平均値である。開孔フィルム70の開孔径は、セカンドシート60側と吸収体20側とで同じであっても良いし、異なっても良い。
【0034】
開孔フィルム70における開孔71の数は、液透過性等の観点から、例えば50個/cm2以上であり、上限は開孔71の開孔径に応じて、体液の面方向への広がりと開孔フィルム70の吸収体20への通液性とが高水準でバランス良く得られる範囲を適宜選択すればよい。開孔数が50個/cm2未満では、開孔フィルム70が硬くなり、かつ、液透過性が低下する傾向がある。また、液透過性等の観点から、開孔面積率は25%以上50%以の範囲、又は30%以上50%以下の範囲である。強度及び加工性の点から、開孔フィルム70の坪量は、例えば、20g/m2以上60g/m2以下の範囲、又は23g/m2以上30g/m2以下の範囲である。20g/m2より小さい場合、開孔フィルム70が破断し易い傾向があり、60g/m2よりも大きい場合、肌触りが硬くなる傾向がある。
【0035】
<吸収体>
吸収体20は、その長手方向の寸法(最大長さ)L
20(
図1)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法(最大幅)W
20(
図1)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する前部及び後部の幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する中央部の幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
吸収体20は、トップシート10又はセカンドシート60又は開孔フィルム70の非肌側に配置され、体液吸収成分として、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含有する。
【0036】
(吸収性繊維)
吸収性繊維としては、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。
【0037】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が体液を吸収した後に硬化することにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0039】
吸収体20は、例えば、各所定量の吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを混合し、例えば、シート状の形状に成形することにより作製することができる。吸収体20中の、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m2以上800g/m2以下の範囲又は180g/m2以上450g/m2以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。フラッフ吸収体20中の高吸収性ポリマーの坪量は、例えば50g/m2以上800g/m2以下の範囲、又は90g/m2以上400g/m2以下の範囲である。高吸収性ポリマーの坪量を前述の範囲から選択することで、開孔フィルム70によるほぼ均等な体液供給と相まって、吸収体20中でのゲルブロッキングを防止し、フラッフ吸収体20に体液を複数回吸収させることができる。
なお、吸収体20として、前述したフラッフ吸収体以外にも、2枚の親水性シートと、これらの間に設けられた高吸収性ポリマー層と、を含む吸収性シート及びその公知の変形例を用いてもよい。
【0040】
(キャリアシート)
本実施形態では、吸収体20をキャリアシート(不図示)で包んでいてもよい。キャリアシートは親水性シートであり、吸収体20を全体的に又は部分的に包む。例えば、キャリアシートの幅方向中央部に吸収体20を載置し、必要に応じてキャリアシートと吸収体20とをホットメルト接着剤等で接着した後、キャリアシートの幅方向両端部を吸収体20の肌側で重ね合わせて必要に応じてホットメルト接着剤等で接着することにより、キャリアシートでC折りした吸収体20が得られる。キャリアシートとしては、この分野で常用される親水性シートをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。また、キャリアシートの厚さは例えば0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は例えば5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0041】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が着用者の衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0042】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0043】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れ等を防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0044】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0045】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの坪量は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0046】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート10、セカンドシート60及び開孔フィルム70をこの順に重ね合わせる工程と、開孔フィルム70とバックシート30との間に吸収体20を収容する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を利用して固定する工程と、立体ギャザー40をバックシート30及びトップシート10の所定位置に設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。吸収性物品50には、必要に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。こうして得られた吸収性物品50を折り畳んで製品化される。
【0047】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0048】
以下に実施例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0049】
<実施例1~6及び比較例1~4>
(トップシートの作製)
実施例1~6、比較例2、3のトップシートは、3台のカード機を使用し、最下層(非肌面側)にコットン繊維と合成セルロース繊維(レーヨン又はリヨセル)とを含む非肌側表面層が配置されるように積層し、上層(肌面側)及び中層はコットン繊維のみからなる肌側表面層が配置されるように積層し、上中下層を水流交絡して厚さ方向に一体化してスパンレース不織布とした後、撥水剤としてシリコン系撥水剤の塗布量がトップシート100重量部に対して0.3重量部になるように、キスコーターにて上層(肌面側)に塗布し、実施例1~6、比較例2、3のトップシートを作製した。比較例1のトップシートは、コットン繊維のみを用いる以下性は前述の方法にてコットン繊維100重量%のシートを作製し、更に同様にしてシリコン系撥水剤を塗布して作製した。比較例4は、トップシートとしてシリコン系撥水剤を塗布しないスパンボンド不織布を使用した。
得られた各トップシートの平均曲げ剛性B、平均曲げヒステリシス2HB、圧縮硬さLCを前述の方法に従って測定し、結果を表1に示す。
【0050】
(吸収性物品の作製)
図1及び
図2に示す構成を有する吸収性物品を作製した。
トップシートとして表1に示すものを使用し、吸収体として、フラッフパルプ7.0g、高吸収性ポリマー6.0gからなる吸収体を使用し、開孔フィルムとして、表1に示す開孔径及び開孔数を有し、坪量26g/m
2であるものを使用し、セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m
2)を使用し、立体ギャザーとして、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布(坪量15g/m
2)を使用し、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m
2)をそれぞれ使用した。トップシート、バックシート、吸収体を一体化する際に、ホットメルト接着剤を用いてトップシートと吸収体上面とを接合し、表1に示す寸法を有する、実施例1~6及び比較例1~4の吸収性物品(製品)を作製した。
【0051】
実施例1~6及び比較例1~4の各吸収性物品を下記の評価に供した。結果を表1に示す。
<評価>
(液戻り量)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC(株)製 No.2ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cm2の錘を乗せ、30秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量とした。
(吸収速度3回法)
底面積16.8cm2の円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ20mlを投下し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測するとともに、1~3回の合計値を求めた。
(濡れ広がり性)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水100mlを吸収体の中心部に向かって注水し、吸収部位から製品長手方向に生理食塩水が20cm広がるまでの時間(秒)を計測し、濡れ広がり性を評価した。時間が短いほど、濡れ広がり性(体液拡散性)が良好である。
(トップシートの柔らかさ)
風合い改善効果を検討するために、20名のパネラーによる官能評価を行った。吸収性物品のトップシートを触り、「表面が柔らかく風合いが良いと感じた」評価者が16人以上20人以下のときを「○」、「表面が柔らかく風合いが良いと感じた」評価者が11人以上15人以下のときを「△」、「表面が柔らかく風合いが良いと感じた」評価者が10人以下のときを「×」とした。
【0052】
【0053】
表1の結果から、実施例1~6の吸収性物品は、トップシートがやわらかく、且つ、吸収性能も良いものと言える。一方、比較例1~4の吸収性物品は、トップシートのやわらかさと吸収性能の両立は得られていない。
よって、本実施形態によれば、天然セルロース繊維由来の肌触りの良さ、液戻りの良さの両立を示す吸収性物品を得ることができる。