(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190282
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
H05B6/12 317
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098537
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 良平
(72)【発明者】
【氏名】河野 悠平
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA82
3K151BA83
3K151BA84
3K151CA48
(57)【要約】
【課題】冷却ファンを変更した際にも、風路変更の設計が容易な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】トッププレートと基板カバーと基板台を高さ方向に配置し、トッププレートと基板カバーの間に複数の加熱コイルを配置し、基板カバーと基板台の間に制御基板を配置し、ファン装置により、制御基板を冷却する誘導加熱調理器であって、ファン装置は、モータにより駆動される冷却ファンの周囲を略円弧状の側部ケーシングで囲み、側部ケーシングで囲まれていない部分を吹出口として複数の制御基板に冷却風を送るとともに、複数の制御基板に分流した冷却風を送るための風路を形成する部材の吹出口側端部は、冷却ファンの回転中心から側部ケーシングの吹出口側端部に至る径のうち、長径で定まる円に対して前記冷却ファンの回転中心に近い位置とされていることを特徴とする。
【選択図】
図7b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トッププレートと基板カバーと基板台を高さ方向に配置し、トッププレートと基板カバーの間に複数の加熱コイルを配置し、基板カバーと基板台の間に制御基板を配置し、ファン装置により、複数の制御基板を冷却する誘導加熱調理器であって、
前記ファン装置は、モータにより駆動される冷却ファンの周囲を略円弧状の側部ケーシングで囲み、側部ケーシングで囲まれていない部分を吹出口として前記制御基板に冷却風を送るとともに、
前記制御基板に分流した冷却風を送るための風路を形成する部材の前記吹出口側端部は、前記冷却ファンの回転中心から前記側部ケーシングの吹出口側端部に至る径のうち、長径で定まる円に対して前記冷却ファンの回転中心に近い位置とされていることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御基板は、前記加熱コイルを制御するための制御回路を含み、制御回路内の発熱素子に向けて冷却風を送るための風路を形成することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御基板を冷却した後の冷却風は、前記トッププレートと前記基板カバーの間に導かれて、前記加熱コイルを冷却してから排気されることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御基板に冷却風を送るための風路を形成するための部材は、前記基板カバーの前記基板台に対抗する側に設けられていることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器であって、
前記制御基板に分流した冷却風を送るための風路を形成する部材は、前記基板台の前記基板カバーに対抗する側に設けられていることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器であって、
前記ファン装置は、前記基板カバーと前記基板台の間に配置され、その下部から吸気してその吹出口から前記基板カバーと前記基板台で構成される空間に分流して送風することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器であって、
複数の加熱コイルごとに制御回路を有して、各制御回路によりそれぞれの加熱コイルを制御し、制御回路内の発熱素子に向けて冷却風を送るための風路と、前記制御回路に電力を供給する電力回路の発熱素子に向けて冷却風を送るための風路を形成することを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器であって、
前記冷却ファンは遠心ファンであり、前記冷却ファンの羽根角度は80度以上90度以下であることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器であって、
前記冷却ファンは遠心ファンであり、前記冷却ファンの羽根枚数は40枚以上50枚以下であることを特徴とする誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器は、加熱コイル、制御基板と、ファン装置等を備え、加熱コイルより発生する磁束によって被加熱物に渦電流を発生させて加熱を行う際、部品の発熱や、加熱の影響によって本体内部が温度上昇する。これに対し、ファン装置より吹出される冷却風により、加熱コイルや制御基板等を冷却する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ファン装置より吹出される冷却風を、加熱コイルや制御基板のいずれか一つあるいは複数に案内するように切替可能とする風路切替ガイド板が設けられた誘導加熱調理器が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、制御基板とファン装置の吹出口を同一平面に配置するため、従来は制御基板を分割しL字型に配置することで、システムキッチンに設置可能な大きさ内で区画を分け制御基板とファン装置を配置した誘導加熱調理器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-217814号公報
【特許文献2】特開2017-41334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ハーネスを削減し、組立の簡易化・コスト削減を図るため、制御基板を1枚の大型基板へと集約する流れがあるが、ビルトイン型の誘導加熱調理器は、システムキッチンの規格に従う必要があり、誘導加熱調理器の大きさを自由に変更することができない。
【0007】
よって、分割していた基板を基板1枚化により長方形の大型基板に集約することで、基板の総面積は減少するが、同一平面内での制御基板とファン装置の区画分けが難しくなる。結果として、基板が占める前後方向の幅が増加し、ファン装置は前後方向の幅を減少させ配置する必要がある。
【0008】
一般に、冷却ファンとケーシング間のクリアランス(距離)が減少すると、ファン運転音が増大するため、ケーシング小型化のみでファン装置の前後方向の幅を減少させることは難しい。ケーシングを小型化し、かつ、ファン運転音を減少させる方法の1つとして、冷却ファンの種類を変更する方法がある。
【0009】
しかし、冷却ファンを変更するたびに、高発熱素子の必要風量に合わせ風路の変更を行った場合、開発に時間とコストがかかる。この点に関して、特許文献1に記載の風路切替ガイド板の特性を活かせば、必要風量に合わせ動的に分流配分を変更でき、ファンの変更も容易であると考えられるが、部品点数の増加により、組立の複雑化・コスト増加といった課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、冷却ファンを変更した際にも、風路変更の設計が容易な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る誘導加熱調理器は、トッププレートと基板カバーと基板台を高さ方向に配置し、トッププレートと基板カバーの間に複数の加熱コイルを配置し、基板カバーと基板台の間に複数の制御基板を配置し、ファン装置により、制御基板を冷却する誘導加熱調理器であって、ファン装置は、モータにより駆動される冷却ファンの周囲を略円弧状の側部ケーシングで囲み、側部ケーシングで囲まれていない部分を吹出口として制御基板に冷却風を送るとともに、複数の制御基板に分流した冷却風を送るための風路を形成する部材の吹出口側端部は、冷却ファンの回転中心から側部ケーシングの吹出口側端部に至る径のうち、長径で定まる円に対して前記冷却ファンの回転中心に近い位置とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却ファンを変更した際にも、風路変更の設計が容易な誘導加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る誘導加熱調理器の斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る誘導加熱調理器のトッププレートを取り外した状態の平面図。
【
図3】第1実施形態に係る誘導加熱調理器の分解斜視図。
【
図4a】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備えるファン装置の分解斜視図。
【
図4b】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備えるファン装置インペラの正面図。
【
図4c】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備えるファン装置の吹出風量を示す図。
【
図4d】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備えるファン装置の運転音を示す図。
【
図4e】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備えるファン装置から吹出され、中インバータ素子へ向かう風量を示す図。
【
図5】第1実施形態に係る誘導加熱調理器を、
図1のV-V線で切断した場合の縦断面図。
【
図6】第1実施形態に係る誘導加熱調理器を、
図1のVI-VI線で切断した場合の縦断面図。
【
図7a】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備えるファン装置、左右基板、及び中基板を含む平面図。
【
図8】第1実施形態に係る誘導加熱調理器の回路図。
【
図9】第1実施形態に係る誘導加熱調理器の左右基板等を、
図7aのIX-IX線で切断した場合の縦断面図。
【
図10】第1実施形態に係る誘導加熱調理器が備える基板カバーの底面図。
【
図11】第2実施形態に係る誘導加熱調理器のトッププレートを取り外した状態の平面図。
【
図12】第2実施形態に係る誘導加熱調理器が備える左右基板やファン装置を含む平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施形態について説明する。
【0015】
以下の第1実施形態に係る誘導加熱調理器では、一例として、グリル庫4(
図1参照)を備えるビルトイン型のIH(Induction Heating)クッキングヒータとして構成された誘導加熱調理器100(
図1参照)について説明し、第2実施形態に係る誘導加熱調理器では第1実施形態で説明した中加熱コイル8(
図2参照)に代えて、ラジエントヒータ40(
図11参照)が設けられた構成について説明する。なお、本発明はこれら以外の構成の誘導加熱調理器100であっても、本発明の主旨を生かすことにより応用、適用が可能である。
【実施例0016】
図1は、第1実施形態に係る誘導加熱調理器100の斜視図である。なお、
図1に示すように、誘導加熱調理器100の前面パネル5が設けられている面を正面(前面)として、前後・左右・上下を定義する。
【0017】
図1に示す誘導加熱調理器100は、金属製の被調理鍋(図示せず)の鍋底に渦電流を発生させ、この渦電流によるジュール熱で被調理鍋そのものを発熱させる機器である。前記した渦電流は、
図2を参照して後記するところの右加熱コイル6や左加熱コイル7の他、中加熱コイル8に所定の高周波電流を流して、磁束を時間的に変化させることで発生する。
【0018】
図1に示すように、誘導加熱調理器100は、その外観を見ると本体1と、トッププレート2と、排気カバー3と、グリル庫4と、前面パネル5と、を備えている。本体1は、誘導加熱調理器100の外郭を構成する筐体であり、
図3を参照して後記するように上側が開口した箱状(凹状)を呈している。
【0019】
トッププレート2は、被調理鍋(図示せず)が載置される板状ガラス2aと、この板状ガラス2aの四辺を保持する枠部2bと、を備え、本体1の上側の開口を塞ぐように設置されている。さらに、トッププレート2は、右加熱コイル6(
図2参照)、左加熱コイル7(
図2参照)、及び中加熱コイル8(
図2参照)のそれぞれの設置位置に対応した三口の鍋載置部2c(2c6、2c7、2c8)と、被調理鍋の加熱具合の調整に用いられる操作パネル2dと、を備えている。なお、
図1では、操作パネル2dがトッププレート2に設けられる例を示しているが、操作パネル2dの一部又は全部が前面パネル5に設けられるようにしてもよい。
【0020】
排気カバー3は、トッププレート2の後端部に設けられる薄板状の金属板である。排気カバー3には、ファン装置9(
図2参照)から吹き出される空気を排気するための排気口として、複数の孔3hが設けられている。なお、排気カバー3が汚れた場合に洗浄できるように、排気カバー3は着脱可能になっている。
【0021】
グリル庫4(ロースタやオーブンともいう)は、後記する上ヒータ4b(
図6参照)や下ヒータ4c(
図6参照)で被調理物を加熱するものである。
図1の例では、本体1の正面左側にグリル庫4が設けられ、前後方向にスライド可能になっている。
【0022】
前面パネル5は、本体1において、グリル庫4の前面に左右方向で隣り合うように設けられている。また、本体1には、配線コードCを介してプラグPが接続されている。
【0023】
図2は、誘導加熱調理器100のトッププレート2を取り外した状態の平面図である。
図3を用いて後記するように、誘導加熱調理器100は高さ方向に複数の層を構成しており、この最上部がトッププレート2であり、2番目の層が基板カバー12による層である。
【0024】
図2に示すように、誘導加熱調理器100は、トッププレート2と基板カバー12の間に右加熱コイル6(第1加熱コイル)と、左加熱コイル7(第2加熱コイル)と、中加熱コイル8(第3加熱コイル)と、ファン装置9と、を備えている。
【0025】
右加熱コイル6、左加熱コイル7、及び中加熱コイル8は、それぞれ、所定の高周波電流が流されるコイルであり、トッププレート2(
図1参照)の三口の鍋載置部2c6、2c7、2c8の下側に設けられている。
図2の例では、平面視において本体1の右側領域に右加熱コイル6が設けられ、また、本体1の左側領域に左加熱コイル7が設けられている。また、平面視において本体1の中央奥側に中加熱コイル8が設けられている。
【0026】
ファン装置9は、後記する左右基板15(
図3参照)や中基板16(
図3参照)に実装される電子部品の他、右加熱コイル6、左加熱コイル7、及び中加熱コイル8を放熱させるための冷却風を吹き出す装置である。なお、
図2に示す基板カバー12や左右基板15、中基板16については後記する。
【0027】
図3は、誘導加熱調理器100の分解斜視図である。先にも一部述べたが、高さ方向に上から、トッププレート2、基板カバー12、基板台13、底部1aによる4層構造とされており、それぞれの層、あるいは層間に適宜の機器を配置している。
【0028】
誘導加熱調理器100は、前記した構成の他に、
図3に示すコイルベース10と、温度センサ11と、基板カバー12と、基板台13、14と、左右基板15と、中基板16と、を備えている。
【0029】
トッププレート2と基板カバー12の間に配置されるコイルベース10は、右加熱コイル6、左加熱コイル7、及び中加熱コイル8のそれぞれが載置される部材であり、バネ等の支持部20(
図5参照)によって3箇所で支持されている。この支持部20からコイルベース10に上向きの付勢力が与えられることで、トッププレート2の下面(裏面)に右加熱コイル6等が押し付けられ、被調理鍋(図示せず)と右加熱コイル6等との間の距離が所定に保たれるようになっている。
【0030】
温度センサ11は、被調理鍋(図示せず)の鍋底の温度を検出するセンサであり、右加熱コイル6、左加熱コイル7、及び中加熱コイル8のそれぞれの中心付近にひとつずつ設けられている。
【0031】
基板カバー12は、左右基板15や中基板16と、各加熱コイル(右加熱コイル6・左加熱コイル7・中加熱コイル8)と、の間を上下方向で仕切るものである。また、基板カバー12は、ファン装置9から吹き出される冷却風を所定に導く風路を形成する機能も有している。
【0032】
基板カバー12は、左右基板15(第1基板)を覆うとともに、中基板16(第2基板)の少なくとも一部を覆うように設置されている。そして、右加熱コイル6、左加熱コイル7、及び中加熱コイル8が、基板カバー12の上側に設置されている。基板カバー12には、ファン装置9の上側のケーシング9dが略一体で設けられている。
【0033】
基板台13は、左右基板15が載置される樹脂製の絶縁部材であり、平面視で左右基板15に対応した矩形状を呈している。他方の基板台14は、中基板16が載置される絶縁部材であり、平面視で中基板16に対応した矩形状を呈している。これらの基板台13、14は、それぞれの板面が略面一となるように、また、前後方向で所定に隣り合うように、相互に固定されている。そして、これらの基板台13、14を上から覆うように、基板カバー12が設置される。
【0034】
基板カバー12は、その上部面の大部分はトッププレート2に対応する床面を形成しているが、下面(裏側)には基板カバー12が基板台13上に載置されたときに、左右基板15(第1基板)及び中基板16にファン装置9からの冷却風を導くための仕切りを形成している。これにより、ファン装置9からの冷却風は、基板カバー12と基板台13の間に設置された左右基板15及び中基板16に導かれてこれを冷却したのちに、トッププレート2と基板カバー12の間に設置された右加熱コイル6、左加熱コイル7、及び中加熱コイル8を冷却し、排気カバー3の排気口である複数の孔3hから排気される経路が形成される。
【0035】
本体1は、前記したように、上側が開口した箱状(凹状)を呈している。具体的には、本体1は、平面視で矩形状を呈する仕切板1a(本体1の底板)と、この仕切板1aの縁部から上側に延びる側板1bと、を含んで構成されている。そして、本体1の仕切板1aに基板台13、14が固定されるようになっている。なお、仕切板1aには、外部からの空気をファン装置9の吸気口91h(
図5参照)に導くための吸気開口部1hが設けられている。その他、本体1には、誘導加熱調理器100の状態を所定に表示するための表示部17が設けられている。
【0036】
左右基板15(第1基板)は、所定の電子部品が実装されるプリント基板であり、本体1に設置されている。このような電子部品として、右加熱コイル6に接続される右インバータ素子S1、S2(
図7a参照)や、左加熱コイル7に接続される左インバータ素子S3、S4(
図7a参照)の他、ダイオードブリッジ21(
図7a参照)や集積回路、コンデンサ、抵抗器等が含まれる。
【0037】
中基板16(第2基板)は、所定の電子部品が実装されるプリント基板であり、本体1に設置されている。このような電子部品として、中加熱コイル8に接続される中インバータ素子S5、S6(
図7a参照)の他、コンデンサや抵抗器等が含まれる。前記した左右基板15と中基板16とは、電力線や通信線を介して、電気的に接続されている。
【0038】
図3に示す水受部18は、排気カバー3の孔3h(
図1参照)を介して滴り落ちる液滴を受けるものであり、排気カバー3の下側において、ファン装置9の後側に設けられている。また、水受部18には、ファン装置9との間を仕切るように、格子状の仕切り18aが設けられている。このような仕切り18aを設けることで、ファン装置9側に液滴が入り込まないようにしている。
【0039】
図4aは、誘導加熱調理器が備えるファン装置9の分解斜視図である。
【0040】
図4aに示すファン装置9は、モータ9aと、インペラ9bと、ケーシング9c、9dと、を備える遠心ファンである。モータ9aは、ファン装置9の駆動源であり、固定子(図示せず)及び回転子(図示せず)の他、この回転子と一体で回転する回転軸91aを備えている。インペラ9bは、モータ9aの駆動に伴う回転によって空気を送り出す羽根車である。
【0041】
図4bは、インペラ9bの正面図であり、
図4aのインペラ9bを下方向から見上げた時の構成である。羽根200は、羽根200の延長線201aと、外径の接線201bとの成す角201cが80度であり、インペラ9bは50枚の羽根200を有する。
【0042】
以下、角201cと、羽根200の枚数について、
図4c、
図4d及び
図4eを用いて説明する。
図4cは、タグチメソッドを用いて推定した、羽根200の枚数が40、50枚それぞれの条件において、角201cを70度~110度まで変化させた場合の、ファン装置9から吹出される冷却風量である。従来機種は約1.20m^3/minであることから、冷却風の目標風量は同等以上とすると、羽根200の枚数が40枚の場合、角201cは70~100度であればよい。羽根200の枚数が50枚の場合、角201cが80度のときは風量が1.2m^3/min、角201cが90度のときは風量が1.40m^3/minである。よって、角201cは80~90度であればよい。
【0043】
図4dは、タグチメソッドを用いて推定した、羽根200の枚数が40、50枚それぞれの条件において、角201cを70度~110度まで変化させた場合の、誘導加熱調理器100に組み込まれたファン装置9から発するファン運転音の騒音値である。従来機種の騒音値が42dBであることから、騒音値の目標は従来同等の42dB以下とすると、羽根200の枚数は40枚以上であれば、角201cは70~110のいずれの角度でもよい。また、羽枚数の増加に伴い、騒音値が低減していることが分かる。
【0044】
また、羽根200の枚数が40、50枚それぞれの条件において、角201cを70度~110度まで変化させた場合のファン装置9より吹出される冷却風のおおまかな特徴として、右インバータ素子S1、S2(
図7a参照)のヒートシンクH1、H2に導く風路W1を通流する冷却風と比較して、中インバータ素子S5、S6(
図7a参照)のヒートシンクH5、H6に導く風路W4(
図7a参照)を通流する冷却風の風量が小さい、という特徴があった。そこで、中インバータ素子S5、S6(
図7a参照)のヒートシンクH5、H6に導く風路W4(
図7a参照)を通流する冷却風量についても同様に推定を行った。
【0045】
図4eは、タグチメソッドを用いて推定した、羽根200の枚数が40、50枚それぞれの条件において、角201cを70度~110度まで変化させた場合の、ファン装置9からの冷却風を中インバータ素子S5、S6(
図7a参照)のヒートシンクH5、H6に導く風路W4(
図7a参照)を通流する冷却風量である。従来機種は約0.10m^3/minであることから、分岐部の調整も加味し風路W4を通過する冷却風の目標風量を0.09m^3/min以上とする。角201cが80度かつ羽根200の枚数が40枚または50枚の場合、風量は0.09m^3/minである。角201cが90度かつ羽根200の枚数が40枚または50枚の場合、風量は0.10m^3/minである。羽根200の枚数が40枚、50枚のいずれにおいても、角201cは80~90度であればよい。
【0046】
したがって、角201cは約80度~90度、羽根200の枚数は約40枚~50枚の範囲であれば上記の風量・騒音値の目標を満足する。
【0047】
再び、
図4aに戻って説明を続ける。ケーシング9c、9dは、モータ9aやインペラ9bを収容するものである。
図4aに示すように、下側のケーシング9cは、底部91cと、側部92cと、一対の舌部93c、94cと、が一体成型された構成になっている。ケーシング9cの底部91cにおいて、インペラ9bの中心付近には吸気口91hが設けられている。ケーシング9cの側部92cは、底部91cの縁から上側に延びており、平面視でC字状(
図4aでは、左右が逆のC字状)を呈している。
【0048】
一対の舌部93c、94cは、平面視で側部92cの一端・他端から外側に反り返るように形成されている。
【0049】
そして、モータ9aの回転軸91aに連結されたインペラ9bがケーシング9cに設置され、さらに、ケーシング9cに対して上から蓋をするように別のケーシング9dが固定される。この状態においてインペラ9bは、ケーシング9c、9dに接触しないように、モータ9aの回転軸91aで回転可能に支持されている。
【0050】
図4aに示す吹出口92h、吹出口93h及び吹出口94hは、ファン装置9から空気が吹き出される開口部であり、上下方向において、左右基板15(第1基板:
図3参照)と基板カバー12(
図3参照)との間に設けられる。
【0051】
なお、吹出口92hは、ケーシング9cの底部91c(一部)、一方の舌部93cの他、分岐部Rx(舌部93cに対向している部分)などの基板カバー12(
図3参照)の一部を含んで構成されている。また、吹出口93hは、ケーシング9cの底部91c(一部)の他、分岐部Rx、分岐部Ryなどの基板カバー12(
図3参照)の一部を含んで構成されている。また、吹出口94hは、ケーシング9cの底部91c(一部)、他方の舌部94cの他、分岐部Ry(舌部94cに対向している部分)などの基板カバー12(
図3参照)の一部を含んで構成されている。
【0052】
なお
図4aにおいて、分岐部Rx、分岐部Ryは、基板台13に形成されて冷却風の風路を形成するための仕切りであるが、この仕切りは基板カバー12の裏面(下側)に固定して設置されるものであってもよい。後記する
図10では基板カバー12の裏面(下側)に設置する例を示している。
【0053】
そして、モータ9aの駆動に伴ってインペラ9bが回転すると、吸気口91hを介してケーシング9c、9d内に導かれた空気が、吹出口92h、吹出口93h及び吹出口94hへと分流して吹き出されるようになっている。
【0054】
なお、ファン装置9は、本体1(
図3参照)の内部の通風抵抗(例えば、100[Pa]~200[Pa])に対して十分な裕度(余裕)のある圧力-風量特性を有していることが望ましい。これによって、低速回転でも冷却に必要な風量(例えば、1.0~1.5[m
3/min])が得られるため、左右基板15(
図3参照)や中基板16(
図3参照)の各電子部品の他、各加熱コイルを効率よく冷却し、また、誘導加熱時の低騒音化を図ることができる。
【0055】
本発明は、
図4aに示す分岐部Rx、分岐部Ryをこの位置に配置した点に特徴を有しているが、この点については
図7bを用いて詳細に後記する。
【0056】
図5は、誘導加熱調理器100を、
図1のV-V線で切断した場合の縦断面図である。
【0057】
なお、
図5における白抜き矢印は、空気の流れを示している。
図5に示すように、本体1の背面には、外部から本体1内に空気を取り込むための吸気開口部1hが設けられている。また、本体1の後部の空間には、ダクト19が設けられている。ダクト19は、本体1の吸気開口部1hを介して流入する空気を、ファン装置9の吸気口91hに導くものである。
【0058】
ファン装置9の駆動に伴い、吸気開口部1h及びダクト19を順次に介して通流した空気は、吸気口91hを介してファン装置9に導かれる。そして、ファン装置9で昇圧された空気は、吹出口92h(
図4a参照)、吹出口93h(
図4a参照)及び吹出口94h(
図4a参照)を介して三方向に分流する。
図5では、前記した三方向のうち、吹出口92hを介して吹出された空気の流れを白抜き矢印で示している。
【0059】
ファン装置9の吹出口92hを介して吹き出された空気は、左右基板15と基板カバー12との間の空間F1を概ね前向きに通流する。これによって、左右基板15に実装された各電子部品Eの放熱が促進される。そして、左右基板15と基板カバー12との間の空間F1を通流した空気は、基板カバー12の上部吹出口12hを介して、基板カバー12とトッププレート2との間の空間F2に導かれる。この空間F2を空気が通流する過程で、右加熱コイル6等が適度に冷却される。そして、空間F2を通流した空気は、排気カバー3に設けられた孔3hを介して、外部に排気される。
【0060】
図6は、誘導加熱調理器100を、
図1のVI-VI線で切断した場合の縦断面図である。
【0061】
図6に示すように、グリル庫4の内部には、仕切板4aで仕切られた空間として、加熱室4kが設けられている。加熱室4kには、熱源である上ヒータ4b・下ヒータ4cが設けられている他、魚等が載置される焼網4dや、この焼網4dの下側に配置される受け皿4eが設けられている。受け皿4eは、焼網4dとともに前後方向でスライド可能になっている。
【0062】
なお、加熱室4kの被調理物を熱する際の熱源は、電熱ヒータに限らず、マイクロ波、水蒸気、又はこれらの組合せであってもよい。また、温度調節器(図示せず)を用いて、グリル庫4の庫内温度を調節しつつ、オーブン加熱を所定に行うようにしてもよい。
図6に示すフェライト3fは、左右基板15への電磁的な影響を抑制するための高透磁率材料であり、中加熱コイル8等の下側に設置されている。
【0063】
ファン装置9の吹出口94hを介して吹き出された空気は、左右基板15と基板カバー12との間の空間F1を介して概ね左向きに通流し、左右基板15に実装された各電子部品Eを冷却するようになっている。そして、空間F1を通流した空気は、上部吹出口12h(
図5参照)を介して、トッププレート2と基板カバー12との間の空間F2に導かれる。
【0064】
図7aは、誘導加熱調理器100が備えるファン装置9、左右基板15、及び中基板16を含む平面図である。
【0065】
図7aは、
図3において基板カバー12側から基板台13を俯瞰した時の図示であり、この時に本来は多数の電子部品などが配置されているが、ここでは発明の要点をわかりやすく説明するために、これらの電子部品の記述を割愛している。これにより、冷却風により冷却すべき発熱素子とファン装置9から発熱素子に至る風路の関係を明確に示している。ここでの風路は、基板カバー12側の裏側(下側)に形成された仕切り部材により形成されている。
【0066】
図7aでは、基板カバー12の裏側に一体で設けられたリブRa、Rb、Rc、Rdや基板カバー仕切りRs、Rtを破線で、基板カバー12(
図10も参照)の裏側に一体で設けられた分岐部Rx及びRyを太い実線にて示している。また、
図7aでは、空気の流れを白抜き矢印で示している。
【0067】
分岐部Rx及び分岐部Ryの詳細な位置について、
図7bを用いて説明する。
図7bは、
図7aのインペラ9b近傍を拡大した図である。接合部250aは、ケーシング9cの側部92cと舌部93cの接合部である。また、接合部250bは、ケーシング9cの側部92cと他方の舌部94cの接合部である。そして、インペラ9bの回転中心と接合部250aを結んだ直線が線分251a、インペラ9bの回転中心と接合部250bを結んだ直線が線分251bである。インペラ9bの回転中心を原点、線分251aまたは線分251bのうち、長い方の線分を半径として、描いた円が円252である。分岐部Rx及び分岐部Ryは、少なくとも一方の端が円252の内側に設けられている。また、分岐部Rx及び分岐部Ryは、インペラ9bの回転中心へと向かう方向に設けられている。これにより、分岐部Rx及び分岐部Ryの角度の変更により、設計時に分流を微調整することができる。
【0068】
この構成は、円弧状の側方を形成する側方ケーシングと上方ケーシングで構成されたケーシングの内部に回転ファンを備えて下方から吸気し、側方ケーシングによる開口部分から冷却風を送るとともに、回転ファンの中心から円弧状の側方ケーシングの端部に至る直線のうち長い方を半径とする円の内部に分岐部Rx及び分岐部Ryを設けたものである。
【0069】
再び、
図7aに戻って説明を続ける。
図7aに示すように、ファン装置9の前側に左右基板15が配置され、ファン装置9の吹出口92h及び吹出口93hを介して吹き出された空気が、左右基板15に導かれるようになっている。また、ファン装置9の左側に中基板16が設けられ、ファン装置9の吹出口94hを介して吹き出された空気が、中基板16に導かれるようになっている。
【0070】
中基板16は、前後方向において左右基板15の後側に配置され、接続部29を介して、左右基板15に電気的に接続されている。接続部29は、左右基板15と中基板16を基板台で直接固定する固定部29aと、電力線を通すフック29bからなる。また、中基板16の基板面(上面)は、左右基板15の基板面(上面)と略面一になっている。
図7aに示すように、左右基板15には、ダイオードブリッジ21の他、一対の右インバータ素子S1、S2や、一対の左インバータ素子S3、S4が実装されている。これらの各電子部品について、
図8を用いて説明する。
【0071】
【0072】
誘導加熱調理器100は、左右基板15(
図7a参照)に実装される電子部品として、ダイオードブリッジ21と、平滑コンデンサ22と、右インバータ回路23(第1インバータ回路)と、左インバータ回路24(第2インバータ回路)と、共振コンデンサ26、27と、を備えている。また、誘導加熱調理器100は、中基板16(
図7a参照)に実装される電子部品として、中インバータ回路25(第3インバータ回路)と、中加熱コイル8(第3加熱コイル)と、共振コンデンサ28と、を備えている。
【0073】
このうちダイオードブリッジ21は、交流電源Qから印加される交流電圧を全波整流して、直流電圧(脈流)に変換する回路であり、
図8の例では、ダイオードブリッジ21は、4つのダイオードD1~D4がブリッジ形に接続されている。
【0074】
右インバータ回路23、左インバータ回路24、及び中インバータ回路25は、基本的に同じ回路構成であるので、ここでは右インバータ回路23を代表例として説明する。右インバータ回路23は、平滑コンデンサ22から印加される直流電圧を高周波の所定電圧に変換する電力変換回路であり、右加熱コイル6に接続されている。
図8に示すように、右インバータ回路23は、一対の右インバータ素子S1、S2(第1インバータ素子)を備えている。このような右インバータ素子S1、S2として、例えば、IGBTが用いられる(左インバータ素子S3、S4や中インバータ素子S5、S6も同様)。
【0075】
図8の例では、一方の右インバータ素子S1のエミッタと、他方の右インバータ素子S2のコレクタと、が接続され、その中間接続点が右加熱コイル6の一端に接続されている。また、一方の右インバータ素子S1のコレクタが平滑コンデンサ22の正極に接続され、他方の右インバータ素子S2のエミッタが平滑コンデンサ22の負極に接続されている。一対の右インバータ素子S1、S2には、それぞれ、還流ダイオードDが逆並列に接続されている。
【0076】
また、一対の共振コンデンサ26、26が互いに直列接続され、その中間接続点が右加熱コイル6の他端に接続されている。そして、一対の右インバータ素子S1、S2のオン・オフが所定に制御されることで、右加熱コイル6に高周波電流が流れるようになっている。
【0077】
第1実施形態では、
図8に示すように、右インバータ回路23、左インバータ回路24、及び中インバータ回路25で一つのダイオードブリッジ21を共用(共通化)し、このダイオードブリッジ21を一枚の左右基板15(
図7a参照)に実装するようにしている。つまり、右インバータ回路23、左インバータ回路24、及び中インバータ回路25のそれぞれの直流側に、ダイオードブリッジ21が共通に接続されている。これによって、ダイオードブリッジ21の実装面積を小さくし、ひいては、左右基板15(
図7a参照)のコンパクト化を図ることができる。なお、
図8の回路図は一例であり、誘導加熱調理器100の回路構成はこれに限定されるものではない。
【0078】
図9は、誘導加熱調理器100の左右基板15等を、
図7aのIX-IX線で切断した場合の縦断面図である。
【0079】
図9に示すように、左右基板15には、右インバータ素子S1が設置される金属部材として、ヒートシンクH1(第1ヒートシンク)が設けられている。ヒートシンクH1は、右インバータ素子S1が設置される板状のベースHa1と、このベースHa1から垂直に延びる複数のフィンHb1と、を備えている。
図9の例では、左右基板15の基板面に対してベースHa1が垂直になるように、また、複数のフィンHb1がベースHa1から左側に延びるように、ヒートシンクH1が設置されている。なお、他方の右インバータ素子S2(
図7a参照)が設置されるヒートシンクH2(
図7a参照)についても同様である。
【0080】
また、左右基板15には、左インバータ素子S3が設置される金属部材として、ヒートシンクH3(第2ヒートシンク)が設けられている。ヒートシンクH3は、左インバータ素子S3が設置される板状のベースHa3と、このベースHa3から垂直に延びる複数のフィンHb3と、を備えている。
図9の例では、左右基板15の基板面に対してベースHa3が垂直になるように、また、複数のフィンHb3がベースHa3から右側に延びるように、ヒートシンクH3が設置されている。なお、他方の左インバータ素子S4(
図7a参照)が設置されるヒートシンクH4(
図7a参照)についても同様である。
【0081】
図9の例では、ヒートシンクH1のフィンHb1の先端と、ヒートシンクH3のフィンHb3の先端と、が所定の隙間を介して、左右方向で相互に対向している。この隙間には、前後方向に延びる基板カバー仕切りRs(
図7aも参照)が設けられている。基板カバー仕切りRsは、ヒートシンクH1、H3の各領域を仕切って、冷却風の風路を形成する部材であり、基板カバー12の裏面から下側に延びている。
【0082】
図7aに示すように、一対の右インバータ素子S1、S2(第1インバータ素子)には、それぞれ、ヒートシンクH1、H2(第1ヒートシンク)が個別に設置されている。また、一対のヒートシンクH1、H2は、冷却風の流れ方向(
図7aでは、前後方向)に沿って一列に並んで設けられている。
図7aの例では、一対のヒートシンクH1、H2のうち、冷却風の上流側のヒートシンクH1よりも、冷却風の下流側のヒートシンクH2の方が、冷却風の流れ方向に延在している長さが長くなっている。これによって、風下側のヒートシンクH2の冷却性能が、風上側のヒートシンクH1に対して相対的に高められる。
【0083】
例えば、風上側のヒートシンクH1の前後方向の長さL1が25[mm]であり、風下側のヒートシンクH2の前後方向の長さL2が35[mm]であってもよい。このようにヒートシンクH1、H2の前後方向の長さの大小関係が規定されることで、一方の右インバータ素子S1の放熱で冷却風の温度が上昇しても、風下側のヒートシンクH2を介した放熱によって、他方の右インバータ素子S2も適度に冷却される。
【0084】
同様に、一対の左インバータ素子S3、S4(第2インバータ素子)には、それぞれ、ヒートシンクH3、H4(第2ヒートシンク)が個別に設置されている。また、一対のヒートシンクH3、H4は、冷却風の流れ方向に沿って一列に並んで設けられている。そして、一対のヒートシンクH3、H4のうち、冷却風の上流側のヒートシンクH3よりも、冷却風の下流側のヒートシンクH4の方が、冷却風の流れ方向に延在している長さが長くなっている。これによって、風下側のヒートシンクH4の冷却性能が、風上側のヒートシンクH3に対して相対的に高められる。
【0085】
また、左右基板15には、ダイオードブリッジ21が設置される金属部材として、ヒートシンクHD(ダイオード用ヒートシンク)が設けられている。
図9に示すように、ヒートシンクHDは、ダイオードブリッジ21が設置される板状のベースHDaと、このベースHDaから垂直に延びる複数のフィンHDbと、を備えている。
図9の例では、左右基板15の基板面に対してベースHDaが垂直になるように、また、複数のフィンHDbがベースHDaから横方向に延びるように、ヒートシンクHDが設置されている。
【0086】
また、
図7aに示すように、ヒートシンクH1、H3(第1ヒートシンクと第2ヒートシンク)の間の左右方向の距離よりも、ヒートシンクH1、HD(第1ヒートシンクとダイオード用ヒートシンク)の間の左右方向の距離の方が長いことが好ましい。さらに、ヒートシンクH1、H3(第1ヒートシンクと第2ヒートシンク)の間の左右方向の距離よりも、ヒートシンクH3、HD(第2ヒートシンクとダイオード用ヒートシンク)の間の左右方向の距離の方が長いことが好ましい。このような構成によれば、右インバータ素子S1、S2、及びダイオードブリッジ21の一方から他方への熱伝達が抑制される。また、左インバータ素子S3、S4、及びダイオードブリッジ21の一方から他方への熱伝達も抑制される。したがって、右インバータ素子S1、S2、左インバータ素子S3、S4、及びダイオードブリッジ21が、それぞれ、冷却風との間の熱交換で効率よく冷却される。
【0087】
なお、
図9の例では、ヒートシンクH1、H3のフィンHb1、Hb3の枚数(12枚)が、ヒートシンクHDのフィンHDbの枚数(10枚)よりも多くなっている。これによって、ヒートシンクH1、H3の実装面積を小さくし、また、冷却風がヒートシンクH1、H3を通流する過程での圧力損失を減らして、冷却効率を高めるようにしている(ヒートシンクH2、H4についても同様)。なお、ヒートシンクH1~H4、HDの上下方向の長さの大小関係は、適宜に変更可能である。
【0088】
【0089】
図7aに示すように、左右基板15に設けられるヒートシンクH1~H4、HDの設置位置に着目すると、次のような配置になっている。すなわち、ヒートシンクH1、H2(第1ヒートシンク)、ヒートシンクH3、H4(第2ヒートシンク)、及びヒートシンクHD(ダイオード用ヒートシンク)を通流する冷却風の流れ方向(前後方向)に対して垂直な方向(左右方向)において、ヒートシンクH1、H2(第1ヒートシンク)、ヒートシンクH3、H4(第2ヒートシンク)、及びヒートシンクHD(ダイオード用ヒートシンク)が異なる位置に設けられている。そして、所定に形成された風路を介して、それぞれのヒートシンクH1~H4、HDに冷却風が通流し、高発熱素子である右インバータ素子S1、S2や左インバータ素子S3、S4の他、ダイオードブリッジ21の放熱が促進されるようになっている。
【0090】
図7aに示すように、中基板16には、一対の中インバータ素子S5、S6が設置される金属部材として、ヒートシンクH5、H6(第3ヒートシンク)が設けられている。
図7aの例では、冷却風の流れ方向(左右方向)に沿って、2つのヒートシンクH5、H6が設けられている。一方のヒートシンクH5には中インバータ素子S5が設置され、他方のヒートシンクH6には別の中インバータ素子S6が設置されている。
【0091】
前記したように、ファン装置9には、3つの吹出口として、吹出口92h、吹出口93h、及び吹出口94hと、が設けられている。これら3つの吹出口のうち、吹出口92hを介して吹き出された冷却風は、右インバータ素子S1、S2(第1インバータ素子)、及びダイオードブリッジ21のそれぞれに向けて分流する。また、吹出口93hを介して吹き出された冷却風は、左インバータ素子S3、S4(第2インバータ素子)に向けて分流する。また、吹出口94h(他方の吹出口)を介して吹き出された冷却風は、中インバータ素子S5、S6(第3インバータ素子)に導かれる。
【0092】
このように、ファン装置9から吹き出される冷却風を、右インバータ素子S1、S2(第1インバータ素子)、左インバータ素子S3、S4(第2インバータ素子)、中インバータ素子S5、S6(第3インバータ素子)、及びダイオードブリッジ21のそれぞれに向けて分流させるように導く風路が設けられている。このような風路について、
図10を用いて説明する。
【0093】
図10は、誘導加熱調理器100が備える基板カバー12の底面図である。
【0094】
なお、
図10は、基板カバー12の裏面を下から見上げた底面図であるため、
図7aとは左右が逆になっている。
【0095】
図10に示すように、基板カバー12には、その下面(裏面)から下側に延びるように、複数のリブRa、Rb、Rc、Rdや、基板カバー仕切Rs、Rt、分岐部Rx、Ryが設けられている。なお、ファン装置9からの冷却風を右インバータ素子S1、S2(
図7a参照)のヒートシンクH1、H2に導く風路W1は、基板カバー仕切Rt(ヒートシンクH1、H2の付近)と、分岐部Rxと、分岐部Rxと接続された基板カバー仕切Rsと、左右基板15(
図7a参照)の一部と、基板カバー12の一部と、を含んで構成されている。
【0096】
また、ファン装置9からの冷却風を左インバータ素子S3、S4(
図7a参照)のヒートシンクH3、H4に導く風路W2は、分岐部Rxと、分岐部Rxと接続された基板カバー仕切Rsと、リブRaと、左右基板15(
図7a参照)の一部と、基板カバー12の一部と、を含んで構成されている。
【0097】
また、ファン装置9からの冷却風をダイオードブリッジ21(
図7a参照)のヒートシンクHDに導く風路W3は、基板カバー仕切Rt(ヒートシンクHDの付近)と、リブRbと、左右基板15(
図7a参照)の一部と、基板カバー12の一部と、を含んで構成されている。
【0098】
前記したように、ダイオードブリッジ21(
図7a参照)は、右インバータ素子S1、S2(
図7a参照)や左インバータ素子S3、S4(
図7a参照)から比較的離れた位置に設けられている。したがって、温度の比較的低い冷却風がダイオードブリッジ21のヒートシンクHDに導かれため、ダイオードブリッジ21の放熱が促進される。
【0099】
また、ファン装置9からの冷却風を中インバータ素子S5、S6(
図7a参照)のヒートシンクH5、H6に導く風路W4は、分岐部Ryと、リブRc、Rdと、中基板16(
図7a参照)の一部と、基板カバー12の一部と、を含んで構成されている。これによって、中インバータ素子S5、S6のヒートシンクH5、H6にも、温度の比較的低い冷却風が導かれる。
【0100】
第1実施形態によれば、インペラ9bの回転中心と、ケーシング9cの側部92cと舌部94cとの接合部250bと、を結んだ線分251bを半径とする円252の内側に、分岐部Rx及び分岐部Ryを設けている。
【0101】
そのため、ファン装置9より吹出される冷却風の、ケーシング内での流速分布を把握し、分布に合わせて分岐部の位置により風路の断面積を変化させることで、右インバータ素子S1、S2、左インバータ素子S3、S4、中インバータ素子S5、S6それぞれに向けて分流された冷却風量を概算することができる。
【0102】
また、分岐部Rx及び分岐部Ryは、インペラ9bの回転中心へと向かう方向に設けられている。そのため、分岐部Rx及び分岐部Ryの角度の変更により、設計時に分流を微調整することができる。したがって、簡易的なモデルにより分流の設計が可能であり、微調整が可能であるため、ファンを変更した際にも、風路変更の設計を容易に行うことができる。
【0103】
なお、ファン変更以外にも、冷却風の分流を変更する場合、例えば、各発熱素子の発熱量が変更された場合など、であっても、同様に調整が可能であり、設計を容易にすることができる。
【0104】
また、各電子部品に向け適切に分流でき、調整可能であるため、冷却風の余剰分を削減し設計可能である。したがって、ファン装置9の小型化や騒音値の低減を図ることができる。
【0105】
また、例えば、中加熱コイル8に代えてラジエントヒータを用いる場合、基板台14(
図3参照)や中基板16(
図3参照)を省略した構成で、左右基板15をほとんどそのまま流用できる。したがって、誘導加熱調理器の機種が異なる場合でも、多くの部品を共通化できるため、その開発コストや製造コストを削減できる。
第2実施形態によれば、ラジエントヒータ40が設けられる構成でも、ファン装置より吹出される冷却風の、ケーシング内での流速分布を把握し、分布に合わせて分岐部の位置により風路の断面積を変化させることで、分岐右インバータ素子S1、S2、左インバータ素子S3、S4、中インバータ素子S5、S6それぞれに向けて分流された冷却風量を概算することができる。
また、分岐部Rx及び分岐部Ryは、インペラ9bの回転中心へと向かう方向に設けられているため、分岐部Rx及び分岐部Ryの角度の変更により、設計時に分流を微調整することができる。
したがって、簡易的なモデルにより分流の設計が可能であり、微調整が可能であるため、ファンを変更した際にも、風路変更の設計を容易に行うことができる。