(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190286
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】道路構造体および道路構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 5/06 20060101AFI20221219BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20221219BHJP
E01C 9/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E01C5/06
E02D29/05 F
E01C9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098543
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松畑 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石野 実
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩明
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】大場 誠道
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克也
(72)【発明者】
【氏名】中谷 浩之
【テーマコード(参考)】
2D051
2D147
【Fターム(参考)】
2D051AH01
2D051CA02
2D051DA02
2D051DA11
2D051DA16
2D147AA05
2D147AB08
2D147CA04
(57)【要約】
【課題】路面の地下に空間を有する簡易で空間利用効率のよい道路構造体を提供する。
【解決手段】道路構造体10は、地盤16内に2列に配列された鋼板製のシートパイル18によりそれぞれ形成された互いに対向する側壁28と、互いに対向する側壁28間に架設され、両端においてシートパイルと結合したプレキャストコンクリート版24を含む路面版12と、互いに対向する側壁28間を掘り下げて形成された地下空間20の底面に形成されたコンクリート製の地下床版22とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に2列に配列された鋼板製のシートパイルによりそれぞれ形成された互いに対向する側壁と、
前記互いに対向する側壁間に架設され、両端において前記シートパイルと結合したプレキャストコンクリート版を含む路面版と、
前記互いに対向する側壁間を掘り下げて形成された空間の底面に形成されたコンクリート製の地下床版と、
を備えた、道路構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の道路構造体であって、
前記側壁の上縁に、当該上縁に沿って延び、かつ前記シートパイルと結合したコンクリート製のコーピングが形成されており、
前記コーピングには、アンカーボルトが埋め込まれており、
前記プレキャストコンクリート版には、ジベル孔が形成されており、
前記アンカーボルトが挿入された前記ジベル孔が充填材で埋められて、前記シートパイルと前記プレキャストコンクリート版が結合されている、
道路構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の道路構造体であって、
前記シートパイルの上端には上部ジベルが結合されており、
前記プレキャストコンクリート版にはジベル孔が形成されており、
前記上部ジベルが挿入された前記ジベル孔が充填材で埋められて、前記シートパイルと前記プレキャストコンクリート版が結合されている、
道路構造体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の道路構造体であって、
前記シートパイルの側面には側部ジベルが結合され、
前記地下床版は、少なくとも前記シートパイルに隣接する部分がコンクリートを打設して形成され、当該打設されたコンクリートに前記側部ジベルが埋め込まれて、前記シートパイルと前記地下床版が結合されている、
道路構造体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の道路構造体であって、前記路面版は、前記プレキャストコンクリート版上に設置された舗装版を含む、道路構造体。
【請求項6】
地盤に鋼板製のシートパイルを2列に打ち込む第1のステップと、
2列の前記シートパイルの間を掘り下げて空間を形成する第2のステップと、
前記空間の底面にコンクリート製の地下床版を形成する第3のステップと、
2列の前記シートパイルの上端にプレキャストコンクリート版を架設する第4のステップと、
前記プレキャストコンクリート版の両端と2列の前記シートパイルをそれぞれ結合する第5のステップと、
を有する、道路構造体の施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の道路構造体の施工方法であって、前記第5のステップは、前記側壁の上縁に、当該上縁に沿って延び、かつ前記シートパイルと結合したコンクリート製のコーピングを形成するステップと、前記コーピングを形成する過程で当該コーピングにアンカーボルトを埋め込むステップとを含み、前記第5のステップにおいて、前記アンカーボルトを、前記プレキャストコンクリート版にあらかじめ形成されているジベル孔に挿入し、当該ジベル孔を充填材で埋めて、前記シートパイルと前記プレキャストコンクリート版を結合する、道路構造体の施工方法。
【請求項8】
請求項6に記載の道路構造体の施工方法であって、前記第5のステップは、前記シートパイルの上端にジベルを結合するステップを含み、前記第5のステップにおいて、前記シートパイルの上端に結合された前記ジベルを、前記プレキャストコンクリート版にあらかじめ形成されているジベル孔に挿入し、当該ジベル孔を充填材で埋めて、前記シートパイルと前記プレキャストコンクリート版を結合する、道路構造体の施工方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の道路構造体の施工方法であって、前記第3のステップは、前記シートパイルの側面にジベルを結合するステップを含み、前記第3のステップにおいて、前記シートパイルの側面に結合された前記ジベルが埋め込まれるように、少なくとも前記シートパイルに隣接する部分にコンクリートを打設して、前記シートパイルと地下床版を結合する、道路構造体の施工方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の道路構造体の施工方法であって、さらに、前記プレキャストコンクリート版上に舗装版を設置する第6のステップを含む道路構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路構造体に関し、特に路面の地下に空間を有する道路構造体およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路面の地下に空間が形成された道路構造体が知られている。下記特許文献1には、地表から掘り下げられた路体(2)に碁盤目状に杭(3)を立設し、この杭(3)上にプレキャストコンクリート版(1)を載置固定し、プレキャストコンクリート版(1)の下方に空間(14)が形成された道路の構造が開示されている。
【0003】
下記特許文献2には、2列に配置された鋼管矢板(90)にH形鋼(74)を架設し、H形鋼(74)の上にコンクリート(84)が打設された橋梁が開示されている。コンクリート(84)の下方は、河川が流れる空間となっている。
【0004】
なお、上記の( )内の符号は、該当する下記特許文献で用いられた符号であり、本願実施形態の説明で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-76307号公報
【特許文献2】特開2007-23713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、杭を碁盤目状に配置するため、杭が地下空間の利用の妨げになる場合がある。また、上記特許文献2では、鋼管矢板の構造が複雑であり、側壁が厚く、また施工に時間を要する。
【0007】
本発明は、路面の地下に空間を有する簡易な構成で空間利用効率の良い道路構造体およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る道路構造体は、地盤内に2列に配列された鋼板製のシートパイルによりそれぞれ形成された互いに対向する側壁と、互いに対向する側壁間に架設され、側壁を形成するシートパイルと結合したプレキャストコンクリート版を含む路面版と、互いに対向する側壁間を掘り下げて形成された空間の底面に形成されたコンクリート製の地下床版と、を備えている。
【0009】
鋼板製のシートパイル自体を地下空間の側壁とすることで、狭いスペースでの設置が可能になる。また、側壁間に架設されたプレキャストコンクリート版とシートパイルを結合することにより、対向配置されたシートパイルに加わる地盤からの力を相殺することができる。さらに、プレキャストコンクリート版を側壁間に架設することにより、側壁間の杭が不要となる。
【0010】
また、シートパイルとプレキャストコンクリート版は、側壁の上縁に、当該上縁に沿って延び、かつシートパイルと結合したコンクリート製のコーピングに埋め込まれたアンカーボルトを、プレキャストコンクリート版に形成されたジベル孔に挿入し、ジベル孔を充填材で埋めて結合されたものとすることができる。
【0011】
また、シートパイルとプレキャストコンクリート版は、シートパイルの上端に結合されたジベルを、プレキャストコンクリート版に形成されたジベル孔に挿入し、ジベル孔を充填材で埋めて結合されたものとすることができる。
【0012】
さらにまた、シートパイルと地下床版は、シートパイルの側面に結合されたジベルを、少なくとも前記シートパイルに隣接する部分にコンクリートを打設して地下床版を形成する際、打設されたコンクリートに埋め込むことにより結合されたものとすることができる。
【0013】
さらにまた、路面版は、プレキャストコンクリート版上に設置された舗装版を含むものとすることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る道路構造体の施工方法は、地盤に鋼板製のシートパイルを2列に打ち込む第1のステップと、2列のシートパイルの間を掘り下げて空間を形成する第2のステップと、空間の底面にコンクリート製の地下床版を形成する第3のステップと、2列のシートパイルの上端にプレキャストコンクリート版を架設する第4のステップと、プレキャストコンクリート版の両端と2列の前記シートパイルをそれぞれ結合する第5のステップと、を有する。
【0015】
上記道路構造体の施工方法において、第5のステップは、側壁の上縁に沿って延び、かつシートパイルと結合したコンクリート製のコーピングを形成するステップと、コーピングを形成する過程で当該コーピングにアンカーボルトを埋め込むステップとを含み、アンカーボルトを、プレキャストコンクリート版にあらかじめ形成されているジベル孔に挿入し、当該ジベル孔を充填材で埋めて、シートパイルとプレキャストコンクリート版を結合するものとすることができる。
【0016】
上記道路構造体の施工方法において、第5のステップは、シートパイルの上端にスタッドジベルを結合するステップを含み、第5のステップにおいて、シートパイルの上端に結合されたジベルを、プレキャストコンクリート版にあらかじめ形成されているジベル孔に挿入し、ジベル孔を充填材で埋めて、シートパイルとプレキャストコンクリート版を結合するものとすることができる。
【0017】
上記道路構造体の施工方法において、第3のステップは、シートパイルの側面にジベルを結合するステップを含み、第3のステップにおいて、シートパイルの側面に結合されたジベルが埋め込まれるように、少なくとも前記シートパイルに隣接する部分にコンクリートを打設して、シートパイルと地下床版を結合するものとすることができる。
【0018】
上記道路構造体の施工方法において、プレキャストコンクリート版上に舗装版を設置する第6のステップを含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
鋼板製のシートパイル自体を地下空間の側壁とすることで、側壁を別に形成する必要がなく狭いスペースに地下空間を設置することが可能になる。また、鋼板製のシートパイル自体が薄く、これも狭いスペースへの地下空間の設置の一助となる。さらに、側壁間に架設されたプレキャストコンクリート版とシートパイルを結合することにより、地盤からの力によるシートパイルの倒れを抑制することができる。さらに、プレキャストコンクリート版を側壁間に架設することにより、側壁間の杭が不要となり、地下空間利用の利便性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態の道路構造体の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の道路構造体の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】シートパイルとプレキャスト版の結合部分の詳細を示す断面図である。
【
図4】シートパイルとプレキャスト版の結合部分の他の態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は、道路構造体10の構造を示す斜視図であり、一部が透視された状態で示されている。
図2は、道路構造体10の、道路の延びる方向に対する直交断面を示す図である。道路構造体10は、地表に現れた路面版12と、路面版12の下方の地下に形成された地下構造14を含む。地下構造14は、地盤16に2列に打ち込まれた鋼板製のシートパイル18と、2列のシートパイル18のの間を掘り下げて形成された地下空間20の底面に形成されたコンクリート製の地下床版22を含む。路面版12は、2列のシートパイル18間に架設されたプレキャストコンクリート版(以下、プレキャスト版と記す。)24と、プレキャスト版24上に設置された舗装版26を含む。プレキャスト版は、現場で組立・設置を行うために、工場などで運搬可能な形や大きさにあらかじめ製造された板状のコンクリートである。
【0022】
シートパイル18は、所定の断面形状に形成された鋼板製の長尺部材である。シートパイル18の長手方向に直交する断面形状は、板が屈曲した形状であり、例えば、等脚台形の、平行な2辺のうち、長い方の辺を除いた3辺で形成される形状であってよい。シートパイル18を、その長手方向が鉛直方向となるように地盤16に打ち込み、これを道路の延びる方向に沿って並べて地下構造14の側壁28が形成される。屈曲した断面形状を有するシートパイル18を配列することにより、側壁28は、配列方向に沿って全体として波形状になる。地下空間20は、シートパイル18の下部が地盤16の中に残るように形成され、その底面に地下床版22が形成される。地下床版22は、コンクリートを現場打ちして形成されてよい。地下床版22は、2列のシートパイル18の間に打設され、両端面がシートパイル18の側面に接触するように設けられてよい。地下床版22が両側のシートパイル18の間に介在することにより、それぞれのシートパイル18が地盤16から受ける力を相手方に伝え、シートパイル18の倒れが抑制される。また、地下床版22は、プレキャスト版を地下空間20の底面に、シートパイル18から間隔を開けて設置し、プレキャスト版とシートパイル18の間にコンクリートを打設して形成されてもよい。
【0023】
シートパイル18と、地下床版22を強固に結合するために、シートパイル18に結合、例えば溶接されたスタッドジベル30を利用することができる。地下床版22を打設する前に、シートパイル18の、地下床版22が形成される深さ位置の側面にスタッドジベル30を溶接する。このスタッドジベル30を、以降、側部スタッドジベル30と記す。この側部スタッドジベル30が埋め込まれるように、コンクリートを打設して地下床版22を形成する。スタッドジベルは、頭部が太い棒状の部材であり、これがコンクリート中に埋め込まれると、スタッドジベルが接合された部材とコンクリートが一体となって結合される。側部スタッドジベル30によってシートパイル18と地下床版22が結合される。シートパイル18と地下床版22の結合は、上述のスタッドジベル30に代えて、鉄筋ジベル、孔あき鋼板ジベルなど、他のずれ止め構造を採用することができる。
【0024】
図3は、シートパイル18とプレキャスト版24の結合部分の詳細を示す図である。シートパイル18によって形成された側壁28の上縁に沿ってコンクリート製のコーピング32が延設されている。コーピング32は、各シートパイル18の上端部を囲むように設けられ、配列された各シートパイル18同士を、その上端部において結合する。コーピング32には、アンカーボルト34が埋め込まれており、アンカーボルト34の上部は、コーピング32の上面から上方に向けて突出している。コーピング32の上面に、調整層35を介してプレキャスト版24が載置される。調整層35の厚さによってプレキャスト版24の載置面の高さを調節する。プレキャスト版24は、例えば幅2mの長尺板状の部材であり、1枚のプレキャスト版24の長手方向の両端部が、それぞれ2列のシートパイル18上に載置され、側壁28間に架設される。複数のプレキャスト版24が配列され、隣接するプレキャスト版24の間の目地37(
図1参照)に繊維補強コンクリート等が充填され、複数のプレキャスト版24が一体化される。配列され、一体化されたプレキャスト版24は、地下空間20を覆い、地表に道路が施設される。
【0025】
プレキャスト版24には、アンカーボルト34を受け入れるためのジベル孔36が形成されている。ジベル孔36は、プレキャスト版24を厚さ方向に貫通し、好ましくは、上部が広く、下部が狭いテーパ形状となっている。プレキャスト版24がコーピング32上に載置されるとき、ジベル孔36内にアンカーボルト34が挿入される。ジベル孔36の水平断面による形状は、シートパイル18の配列方向に長い長孔であってよく、1つのジベル孔36に複数の、例えば2つのアンカーボルト34が挿入されてよい。また、ジベル孔36は、1枚のプレキャスト版24の両端にそれぞれ1つ形成されてよい。ジベル孔36は、アンカーボルト34を受け入れた状態で、固化性の充填材38、例えば高強度コンクリートで埋められる。充填材38が固化することで、シートパイル18とプレキャスト版24が分離しないように、また一体となって結合される。また、この結合構造により、シートパイル18とプレキャスト版24が剛結合され、プレキャスト版24の中央部における曲げの抑制に貢献する。
【0026】
プレキャスト版24は、必要に応じて表面にアスファルト、コンクリート路版等の舗装版26を設置してよい。また、プレキャスト版24と舗装版26の間に防水層または防水兼調整層を設けてもよい。また、プレキャスト版24の上面は、雨水等の排水のための勾配をつけてもよい。
【0027】
道路構造体10の施工方法について説明する。まず、シートパイル18を2列に地盤16に打ち込む。2列のシートパイル18の間を掘り下げ、2列のシートパイル18の互いに対向する面の上部を露出させる。このシートパイル18の露出部分が地下空間20の側壁28となる。
【0028】
次に、シートパイル18の、地下床版22の設置する深さ位置に側部スタッドジベル30を溶接する。掘り下げられた地盤16の表面にコンクリートを打設して地下床版22を形成する。このとき、側部スタッドジベル30が打設するコンクリート内に埋め込まれるようにする。コンクリートが固化することで、側部スタッドジベル30を介して、シートパイル18と地下床版22が結合される。また、掘り下げられた地盤16の表面全体にコンクリートを打設するのではなく、両側の側壁28とは間隔を開けて、地盤16にプレキャスト版を載置し、このプレキャスト版と側壁28の間にコンクリートを打設して、地下床版22を形成してもよい。
【0029】
次に、側壁28の上縁に沿ってコーピング32を構築する。具体的には、配列されたシートパイル18の上端部に型枠を形成し、コンクリートを打設して、コーピング32を形成する。このとき、コーピング32にアンカーボルト34を埋め込み、アンカーボルト34をコーピング32と一体とする。
【0030】
次に、プレキャスト版24を2列のシートパイル18に架設されるように載置する。具体的には、調整層35を介してコーピング32上にプレキャスト版24を載置する。このとき、アンカーボルト34がプレキャスト版24にすでに開けられているジベル孔36に挿入されるようにする。ジベル孔36を充填材38で埋めて、充填材38を固化させる。これにより、コーピング32およびアンカーボルト34を介して、シートパイル18とプレキャスト版24が結合される。プレキャスト版24は、シートパイル18が配列する方向に沿って、つまり道路が延びる方向に沿って配列され、隣接するプレキャスト版24の間の目地37が埋められる。最後に、プレキャスト版24上に舗装版26を敷設する。
【0031】
上記の施工方法において、2列のシートパイルの間の地盤16を掘り下げ、地下床版22を形成した後、プレキャスト版24を架設したが、これとは逆に、プレキャスト版24を架設した後、地盤16を掘り下げ地下床版22を形成してもよい。
【0032】
図4は、シートパイル18とプレキャスト版24の結合部分の他の態様を示す図である。上述の構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。地盤16に打ち込まれたシートパイル18の上端には、支持板40が水平に接合、例えば溶接される。さらに、支持板40の上面には、シートパイル18の長手方向に沿って、スタッドジベル42が溶接される。前述の側部スタッドジベル30と区別するために、スタッドジベル42を、以降、上部スタッドジベル42と記す。さらに、支持板40上面にモルタルが打設されて調整層44が形成され、その上にプレキャスト版24が載置される。調整層44の厚さによって、プレキャスト版24の載置面の高さの調節を行う。
【0033】
プレキャスト版24には、上部スタッドジベル42を受け入れるためのジベル孔36が形成されている。ジベル孔36は、プレキャスト版24を厚さ方向に貫通し、好ましくは、上部が広く、下部が狭いテーパ形状となっている。プレキャスト版24が支持板40上に載置されるとき、ジベル孔36内に上部スタッドジベル42が挿入される。ジベル孔36は、上部スタッドジベル42を受け入れた状態で、固化性の充填材38、例えば高強度コンクリートで埋められる。充填材38が固化することで、シートパイル18とプレキャスト版24が分離しないように、また一体となって結合される。シートパイル18とプレキャスト版24の結合は、上述のスタッドジベルに代えて、鉄筋ジベル、孔あき鋼板ジベルなど、他の構造を採用することができる。
【0034】
施工過程において、支持板40は、打ち込まれたシートパイル18の上端に水平に溶接される。この支持板40上に上部スタッドジベル42が溶接して立設される。そして、支持板40上にモルタルを打設して調整層44を形成し、プレキャスト版24の載置面の高さの調整を行う。
【0035】
シートパイル18と一体となるように、その内側または外側にコンクリート壁を設けるようにしてもよい。これにより、鉛直荷重に対する座屈強度の向上、水平荷重に対する曲げ変形の抑制ならびに止水性および防食性の向上が期待できる。
【0036】
シートパイル18自体を地下空間20の側壁28としたことにより、道路下に空間効率良く地下空間を形成することができる。例えば、地盤中にボックスカルバートを設置する工法と比較すると、ボックスカルバートの壁厚と、ボックスカルバートと土留めのシートパイルの隙間の分だけ、より大きな地下空間を形成することができる。ボックスカルバートを埋めるために地盤を掘削する際には、ボックスカルバートの設置スペースの両側に土留めのシートパイルが打ち込まれる。ボックスカルバートは、掘り下げられた両側のシートパイルの間に挿入、または構築される。このとき、シートパイルとボックスカルバートの間に隙間を設ける必要がある。本実施形態による道路構造体10の施工方法によれば、このシートパイルとボックスカルバートの隙間およびボックスカルバートの壁厚の部分を地下空間として利用することが可能となる。
【0037】
また、地下空間でボックスカルバートを構築する場合、躯体のコンクリート打設は、底版、側壁、頂版と複数回に分けて行う必要があり、それぞれの打設ごとに養生期間を設ける必要がある。これに対して、上述の実施形態の施工方法によれば、コンクリートを打設して形成する部分が少なく、工期の短縮が可能となる。
【0038】
また、シートパイル18を地下空間の側壁28としたことにより、側壁を形成するコンクリートを削減することができ、コストの低減が可能となる。
【0039】
2列のシートパイル18が地下床版22とプレキャスト版24を介して結合されることにより、シートパイル18が地盤16から受ける力が互いに相殺されてシートパイル18の倒れが防止される。
【0040】
道路表面に舗装版26を設置することで、路面が損傷した際に、舗装版26を交換することで維持管理の作業を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 道路構造体、12 路面版、14 地下構造、16 地盤、18 シートパイル、20 地下空間、22 地下床版、24 プレキャストコンクリート版(プレキャスト版)、26 舗装版、28 側壁、30 側部スタッドジベル、32 コーピング、34 アンカーボルト、35,44 調整層、36 ジベル孔、37 目地、38 充填材、40 支持板、42 上部スタッドジベル。