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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190296
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電池スタックおよび拘束フープ部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/264 20210101AFI20221219BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20221219BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221219BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20221219BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20221219BHJP
【FI】
H01M50/264
H01M50/262 S
H01M50/262 E
H01M50/204
H01G11/10
H01G11/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098560
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 甲一朗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健太
(72)【発明者】
【氏名】石川 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達彦
【テーマコード(参考)】
5E078
5H040
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078HA21
5E078HA22
5E078JA02
5H040AA03
5H040AA07
5H040AT02
5H040AY06
5H040CC23
5H040CC34
5H040CC38
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】拘束フープ部材の応力集中を抑制できる電池スタックを提供する。
【解決手段】電池スタックは、配列方向に配列された複数の単電池と、複数の単電池を拘束する拘束機構とを備えている。拘束機構は、複数の単電池の配列方向の両端に配置された一対のエンドプレートと、環状の拘束フープ部材40とを含んでいる。複数の単電池と一対のエンドプレートとは、拘束フープ部材40の環の内部に配置されている。拘束フープ部材40は、拘束フープ部材40の環の周方向の変形を部分的に容易にした易変形部50を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列方向に配列された複数の単電池と、
前記複数の単電池を拘束する拘束機構とを備え、
前記拘束機構は、前記複数の単電池の前記配列方向の両端に配置された一対のエンドプレートと、環状の拘束フープ部材とを含み、
前記複数の単電池と前記一対のエンドプレートとは、前記拘束フープ部材の環の内部に配置されており、
前記拘束フープ部材は、前記拘束フープ部材の環の周方向の変形を部分的に容易にした易変形部を有する、電池スタック。
【請求項2】
前記易変形部は、前記易変形部以外よりも前記拘束フープ部材の厚さが小さい部分を有している、請求項1に記載の電池スタック。
【請求項3】
前記易変形部には、前記拘束フープ部材を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている、請求項2に記載の電池スタック。
【請求項4】
前記易変形部は、前記易変形部以外よりも前記拘束フープ部材の幅が小さい部分を有している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池スタック。
【請求項5】
前記一対のエンドプレートは、前記単電池に対向する第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有し、
前記易変形部は前記第2面に接触する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池スタック。
【請求項6】
前記第2面は、前記拘束フープ部材の環の周方向の両方の縁部に曲面状の面取り部を有し、一対の前記面取り部の間に平面部を有し、
前記易変形部は、前記平面部に接触する、請求項5に記載の電池スタック。
【請求項7】
前記拘束フープ部材の環の周方向における前記易変形部の全体が前記平面部に接触する、請求項6に記載の電池スタック。
【請求項8】
配列方向に配列された複数の単電池と、前記複数の単電池の前記配列方向の両端に配置された一対のエンドプレートとを、前記配列方向に拘束する環状の拘束フープ部材であって、
前記複数の単電池と前記一対のエンドプレートとは、前記拘束フープ部材の環の内部に配置され、
前記拘束フープ部材の環の周方向の変形を部分的に容易にした易変形部を備える、拘束フープ部材。
【請求項9】
組電池拘束用の環状のフープ部材であって、前記フープ部材の環の周方向の変形を部分的に容易にした易変形部を、前記周方向の2箇所に等間隔で備える、フープ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池スタックおよび拘束フープ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-125444号公報(特許文献1)には、複数の単電池を拘束する拘束機構が環状の拘束フープ部を含むことが開示されている。拘束フープ部は、複数の単電池に対して、単電池の配列方向に沿って圧縮する方向に所定の拘束圧を加える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-125444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拘束フープ部により単電池を拘束する場合に、部品製造時のばらつきにより、エンドプレートと拘束フープ部との間に隙間ができることがある。隙間ができると、拘束フープ部の湾曲の終端に応力が集中してしまうことを、発明者らは見出した。
【0005】
本開示では、拘束フープ部材の応力集中を抑制できる電池スタック、および、応力集中を抑制できる拘束フープ部材が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、配列方向に配列された複数の単電池と、複数の単電池を拘束する拘束機構とを備える、電池スタックが提案される。拘束機構は、複数の単電池の配列方向の両端に配置された一対のエンドプレートと、環状の拘束フープ部材とを含んでいる。複数の単電池と一対のエンドプレートとは、拘束フープ部材の環の内部に配置されている。拘束フープ部材は、拘束フープ部材の環の周方向の変形を部分的に容易にした易変形部を有している。
【0007】
拘束フープ部材が易変形部を有していることで、拘束フープ部材が環の周方向に大きく弾性変形可能とされている。電池スタックの製造時に拘束フープ部材を大きく弾性変形させることにより、組み付け後の電池スタックにおいて、エンドプレートと拘束フープ部材との間に隙間が発生することを抑制できる。エンドプレートと拘束フープ部材との間に隙間をつくらないことで、拘束フープ部材の湾曲の終端に応力が集中することを抑制することができる。
【0008】
上記の電池スタックにおいて、易変形部は、易変形部以外よりも拘束フープ部材の厚さが小さい部分を有していてもよい。拘束フープ部材の厚さを部分的に小さくすることで、その厚さの小さい部分を易変形部として形成することができる。
【0009】
上記の電池スタックにおいて、易変形部には、拘束フープ部材を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されていてもよい。拘束フープ部材の一部分に貫通孔を形成することで、その貫通孔の周辺を易変形部として形成することができる。
【0010】
上記の電池スタックにおいて、易変形部は、易変形部以外よりも拘束フープ部材の幅が小さい部分を有していてもよい。拘束フープ部材の幅を部分的に小さくすることで、その幅の小さい部分を易変形部として形成することができる。
【0011】
上記の電池スタックにおいて、一対のエンドプレートは、単電池に対向する第1面と第1面と反対側の第2面とを有し、易変形部は第2面に接触してもよい。これにより、易変形部に応力が集中することを回避できる。
【0012】
上記の電池スタックにおいて、エンドプレートの第2面は、拘束フープ部材の環の周方向の両方の縁部に曲面状の面取り部を有し、一対の面取り部の間に平面部を有し、易変形部は、平面部に接触してもよい。このような配置にすることで、拘束フープ部材は単電池に対して高荷重の拘束力を負荷し続けることができる。
【0013】
上記の電池スタックにおいて、拘束フープ部材の環の周方向における易変形部の全体が平面部に接触してもよい。このような配置にすることで、拘束フープ部材は単電池に対して高荷重の拘束力を負荷し続けることができる。
【0014】
本開示のある局面に従うと、配列方向に配列された複数の単電池と、複数の単電池の配列方向の両端に配置された一対のエンドプレートとを、配列方向に拘束する環状の拘束フープ部材が提案される。複数の単電池と一対のエンドプレートとは、拘束フープ部材の環の内部に配置される。拘束フープ部材は、拘束フープ部材の環の周方向の変形を部分的に容易にした易変形部を備えている。
【0015】
拘束フープ部材が易変形部を有していることで、拘束フープ部材が環の周方向に大きく弾性変形可能とされている。電池スタックの製造時に拘束フープ部材を大きく弾性変形させることにより、組み付け後の電池スタックにおいて、エンドプレートと拘束フープ部材との間に隙間が発生することを抑制できる。エンドプレートと拘束フープ部材との間に隙間をつくらないことで、拘束フープ部材の湾曲の終端に応力が集中することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示に従うと、拘束フープ部材の応力集中を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電池スタックの模式図である。
図2】拘束フープ部材を前面視した模式図である。
図3図1中の領域IIIを拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、電池スタック1の模式図である。電池スタック1は、複数の単電池10と、拘束機構とを備えている。複数の単電池10は、所定の配列方向(図1においては図中の左右方向)に配列されている。以下では、複数の単電池10の配列方向を、単に配列方向とも称する。拘束機構は、複数の単電池10を拘束して1組の電池として使えるようにするための機構である。
【0020】
単電池10は、典型的には繰り返し充放電が可能な二次電池、たとえば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタなどである。単電池10は、電池ケース12と、外部端子14とを有している。電池ケース12は、正極活物質層と負極活物質層との間に固体電解質を層状に配置した発電要素を、その内部に収容する。外部端子14は、電池ケース12の上面から上方に突き出るように配設されている。隣り合う単電池10の外部端子14同士が図示しないバスバーで電気的に接続されて、電池スタック1が形成されている。
【0021】
拘束機構は、一対のエンドプレート、すなわち第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とを含んでいる。第1のエンドプレート20および第2のエンドプレート30は、単電池10の発電要素に対して拘束圧を均等に加えるための板状の部材である。一対のエンドプレートは、複数の単電池10の配列方向の両端に配置されている。一対のエンドプレートは、配列された複数の単電池10を配列方向に挟むように、配列された複数の単電池10の両端に配置されている。第1のエンドプレート20は、配列された単電池10の配列方向の一方の端部に配置されている。第2のエンドプレート30は、配列された単電池10の配列方向の他方の端部に配置されている。
【0022】
第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とは、単電池10の寸法よりも一回り大きく構成されている。単電池10の電池ケース12から外部端子14が突き出る方向を上方向とし、上方向と反対方向を下方向とすると、第1のエンドプレート20の上端は、外部端子14の先端よりも上方に配置されている。第2のエンドプレート30の上端は、外部端子14の先端よりも上方に配置されている。第1のエンドプレート20の下端は、電池ケース12の下面(底面)よりも下方に配置されている。第2のエンドプレート30の下端は、電池ケース12の下面よりも下方に配置されている。
【0023】
単電池10の外部端子14が電池ケース12から突き出る方向における、第1のエンドプレート20および第2のエンドプレート30の寸法は、当該方向における単電池10の寸法よりも、大きくされている。外部端子14の先端から電池ケース12の底面までを最短距離で結ぶ線分が延びる方向における、単電池10の寸法よりも、当該方向における第1のエンドプレート20および第2のエンドプレート30の寸法が、より大きくされている。
【0024】
第1のエンドプレート20は、単電池10に対向する第1面21と、第1面21と反対側の第2面22とを有している。第1面21は平面形状を有している。第1のエンドプレート20は、第1面21が単電池10の配列方向に対して直交するように配置されている。
【0025】
第1のエンドプレート20の第2面22は、上方の縁部に曲面状の面取り部23を有している。第2面22は、下方の縁部に曲面状の面取り部24を有している。第2面22は、一対の面取り部23,24の間に、平面形状の平面部25を有している。第1のエンドプレート20は、図1の左方から見て、上下の角部に丸く曲面化された部分を有している。
【0026】
第2のエンドプレート30は、単電池10に対向する第1面31と、第1面31と反対側の第2面32とを有している。第1面31は平面形状を有している。第2のエンドプレート30は、第1面31が単電池10の配列方向に対して直交するように配置されている。第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とは、第1のエンドプレート20の第1面21と第2のエンドプレート30の第1面31とが互いに平行になるように配置されている。
【0027】
第2のエンドプレート30の第2面32は、上方の縁部に曲面状の面取り部33を有している。第2面32は、下方の縁部に曲面状の面取り部34を有している。第2面32は、一対の面取り部33,34の間に、平面形状の平面部35を有している。第2のエンドプレート30は、図1の右方から見て、上下の角部に丸く曲面化された部分を有している。
【0028】
拘束機構は、拘束フープ部材40を含んでいる。拘束フープ部材40は、環状の形状を有している。拘束フープ部材40は、平ベルト状の形状を有している。拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20の第2面22に沿って配置される第1支持部41を有している。拘束フープ部材40は、第2のエンドプレート30の第2面32に沿って配置される第2支持部42を有している。拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20の上端から第2のエンドプレート30の上端に至るように、単電池10の配列方向に沿って第1支持部41と第2支持部42とを連続的に繋ぐ連結部43を有している。拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20の下端から第2のエンドプレート30の下端に至るように、単電池10の配列方向に沿って第1支持部41と第2支持部42とを連続的に繋ぐ連結部44を有している。
【0029】
拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20と、配列された複数個の単電池10と、第2のエンドプレート30とからなるスタックを、その外周に沿って環状に取り囲んでいる。複数の単電池10と、第1のエンドプレート20と、第2のエンドプレート30とは、拘束フープ部材40の環の内部に配置されている。拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20の第2面22に接触している。拘束フープ部材40は、第2のエンドプレート30の第2面32に接触している。
【0030】
拘束フープ部材40は、環状に閉じられていることにより、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30との間の距離を規制する。拘束フープ部材40の連結部43,44の配列方向の寸法が、配列された状態で拘束されている複数の単電池10の配列方向の寸法に等しくなる。拘束フープ部材40は、単電池10に付与する拘束圧が所定の大きさとなるように、連結部43,44の配列方向の寸法が決定されている。拘束フープ部材40は、連結部43,44の配列方向の寸法が、拘束されていない状態の複数の単電池10の配列方向の寸法よりも小さいように、構成されている。
【0031】
拘束フープ部材40が、第1のエンドプレート20、複数の単電池10および第2のエンドプレート30の周囲に組み付けられた状態で、拘束フープ部材40には、拘束フープ部材40の環の周方向の引張応力が作用している。拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とに対して、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30との距離を小さくする向きの力を加える。これにより拘束フープ部材40は、単電池10に対する拘束圧を発生させて、複数の単電池10を拘束する。
【0032】
単電池10の上下方向における単電池10の寸法よりも第1のエンドプレート20および第2のエンドプレート30の寸法の方が大きいことで、図1に示されるように、拘束フープ部材40の連結部43と外部端子14の間に隙間が形成され、連結部44と電池ケース12との間に隙間が形成されている。第1のエンドプレート20、複数の単電池10および第2のエンドプレート30の周囲に組み付けられた拘束フープ部材40は、単電池10から離れて配置されており、拘束フープ部材40と単電池10との干渉が回避されている。これにより拘束フープ部材40は、単電池10を配列方向にしっかりと拘束することが可能になっている。
【0033】
拘束フープ部材40の形成材料は、たとえば、金属材料、樹脂材料、無機材料または複合材料であってもよい。拘束フープ部材40は、単一の材料からなる継ぎ目のない環状構造を有していてもよい。または拘束フープ部材40は、継ぎ目のある環状構造を有していてもよく、たとえば半環状の2つの部材の端部を互いに重ねて接合することで形成されてもよい。
【0034】
拘束機構は、拘束フープ部材40を1つのみ含んでもよい。拘束機構は、拘束フープ部材40を2つ以上含んでもよい。拘束機構が拘束フープ部材40を1つのみ含む場合に、拘束フープ部材40は、拘束機構が拘束フープ部材40を2つ以上含む場合と比較して、より幅広に形成されてもよい。
【0035】
第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とは、上下の角部の全体が曲面に形成されてもよい。または、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とは、上下の角部に溝形状を有し、拘束フープ部材40はその溝形状の内部に収容され、その溝形状の底面が曲面に形成されて面取り部を構成してもよい。後者の場合には、電池スタック1の幅方向(図1においては紙面垂直方向)における、拘束フープ部材40の位置ずれを抑制できる。
【0036】
図2は、拘束フープ部材40を前面視した模式図である。図2には、図1中の矢印II方向に見た拘束フープ部材40が図示されており、したがって、拘束フープ部材40のうち第1支持部41が図示されている。図2に示されるように、拘束フープ部材40は、環の周方向における一部分に、他の部分よりも環の周方向に変形が容易な易変形部50を有している。易変形部50は、拘束フープ部材40の環の周方向の変形を、他の部分よりも容易にした、拘束フープ部材40の一部分である。易変形部50は、拘束フープ部材40のうち易変形部50でない部分と比較して、拘束フープ部材40の環の周方向に容易に変形可能なように、構成されている。
【0037】
図2に示される境界線51は、第1のエンドプレート20の第2面22における、面取り部23と平面部25との境界に相当する位置を示している。図2に示される境界線52は、第1のエンドプレート20の第2面22における、面取り部24と平面部25との境界に相当する位置を示している。拘束フープ部材40の環の周方向において、易変形部50は、境界線51と境界線52との間に形成されている。
【0038】
図1を参照して説明した通り、拘束フープ部材40は、第1のエンドプレート20の第2面22に接触している。したがって図2に示される易変形部50は、第1のエンドプレート20の第2面22に接触している。易変形部50は、第1のエンドプレート20の第2面22の平面部25に接触している。拘束フープ部材40の環の周方向における易変形部50の全体が、第1のエンドプレート20の第2面22の平面部25に接触している。
【0039】
易変形部50は、幅減少部53を有している。平ベルト形状の拘束フープ部材40の幅が、幅減少部53において小さくなっている。易変形部50は、易変形部50以外の拘束フープ部材40よりも、拘束フープ部材40の幅が小さい部分を有している。図2に示される境界線51から幅減少部53に向かって拘束フープ部材40の幅が次第に減少し、境界線52から幅減少部53に向かって拘束フープ部材40の幅が次第に減少している。拘束フープ部材40の環の周方向における、易変形部50の中央部分に、幅減少部53が形成されている。幅減少部53において、拘束フープ部材40の幅が最も小さくなっている。
【0040】
幅減少部53が設けられることにより、拘束フープ部材40の環の周方向に直交する断面積が、易変形部50において小さくなっている。これにより、易変形部50の剛性が、易変形部50以外の拘束フープ部材40と比較して、小さくなっている。易変形部50が低剛性構造を有することにより、易変形部50における拘束フープ部材40の環の周方向の変形が、拘束フープ部材40の他の部分よりも容易にされている。
【0041】
易変形部50は、易変形部50以外の拘束フープ部材40よりも、拘束フープ部材40の厚さが小さい部分を有している。典型的には、易変形部50には、拘束フープ部材40を厚み方向に貫通する貫通孔54,55が形成されている。すなわち、貫通孔54,55においては、拘束フープ部材40の厚さがゼロになっている。拘束フープ部材40の環の周方向において、境界線51と幅減少部53との間に貫通孔54が形成されており、境界線52と幅減少部53との間に貫通孔55が形成されている。拘束フープ部材40に貫通孔54,55が形成されていることにより、貫通孔54,55の周辺に、幅の小さい細部56が形成されている。
【0042】
易変形部50において拘束フープ部材40の厚みを減少させる、典型的には拘束フープ部材40の厚みをゼロとした貫通孔54,55を形成することにより、拘束フープ部材40の環の周方向に直交する断面積が、易変形部50において小さくなっている。これにより、易変形部50の剛性が、易変形部50以外の拘束フープ部材40と比較して、小さくなっている。易変形部50が低剛性構造を有することにより、易変形部50における拘束フープ部材40の環の周方向の変形が、拘束フープ部材40の他の部分よりも容易にされている。
【0043】
以上説明した実施形態の拘束フープ部材40は、易変形部50を有していることにより、環の周方向の弾性変形が、易変形部50を有しない従来の拘束フープ部材と比較して容易にされている。実施形態の拘束フープ部材40は、環の周方向の寸法を増大させる変形をするときに、降伏点に到達するまでの弾性変形量が、易変形部50を有しない従来の拘束フープ部材と比較して大きくなっている。
【0044】
拘束フープ部材40を用いて電池スタック1を製造する際には、まず、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とを取り囲むように環状の拘束フープ部材40を配置する。続いて、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30とを相対移動させて、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30との距離を大きくする。このとき拘束フープ部材40は、環の周方向の寸法を増大するように弾性変形する。その状態で、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30との間に、複数の単電池10を配置する。その後、第1のエンドプレート20と第2のエンドプレート30との相対移動のために加えられた力を解除する。
【0045】
実施形態の拘束フープ部材40は、電池スタック1を製造する際に、従来の拘束フープ部材よりも大きく弾性変形することが可能である。単電池10を組み付けるために第1のエンドプレート20および/または第2のエンドプレート30に加えられた力を解除すると、拘束フープ部材40が環の周方向の寸法を減少するように弾性変形して、拘束フープ部材40から単電池10に、拘束圧が負荷される。
【0046】
このとき、環の周方向の寸法を減少する拘束フープ部材40の弾性変形量が大きいことで、拘束フープ部材40は、図3に示されるように、第1のエンドプレート20の第2面22の面取り部24の曲面に沿って配置される。拘束フープ部材40は面取り部24に面接触し、拘束フープ部材40と第1のエンドプレート20の第2面22との間に隙間は発生しない。なお図3は、図1中の領域IIIを拡大して示す模式図である。
【0047】
製造時のばらつきにより第1のエンドプレート20の寸法に変動が生じた場合でも、第1のエンドプレート20の実形状に拘束フープ部材40を良好に追従させて、第1のエンドプレート20との間に隙間なく拘束フープ部材40を配置することができる。第1のエンドプレート20と拘束フープ部材40との間に隙間をつくらないことで、拘束フープ部材40の湾曲の終端に応力が集中することを抑制することができる。
【0048】
図3を参照して、第1のエンドプレート20の下端部の面取り部24に沿う拘束フープ部材40の配置について代表的に説明したが、第1のエンドプレート20の上端部の面取り部23においても同様に、面取り部23との間に隙間なく拘束フープ部材40が配置される。第1のエンドプレート20と拘束フープ部材40との間に隙間ができない構成を、確実に実現することができる。
【0049】
拘束フープ部材40のうち第1支持部41に形成される易変形部50について説明したが、第2支持部42にも、同様の易変形部50を設けることができる。第2のエンドプレート30の面取り部33,34との間に隙間なく拘束フープ部材40を配置することで、拘束フープ部材40の湾曲の終端に応力が集中することを抑制することができる。拘束フープ部材40の環の周方向の複数箇所に易変形部50を設けることで、拘束フープ部材40の弾性変形量をより大きくすることができる。拘束フープ部材40が、易変形部50を、環の周方向の2箇所に等間隔で備える構成とすることで、拘束フープ部材40を環の周方向に確実に弾性変形させることができ、かつ拘束フープ部材40の応力集中を抑制することができる。
【0050】
第1のエンドプレート20の第2面22に接触する第1支持部41、および第2のエンドプレート30の第2面32に接触する第2支持部42に、易変形部50を形成して、易変形部50を第2面22,32に接触させる構成とされている。これにより、易変形部50が応力集中箇所となることを回避でき、拘束フープ部材40に応力集中を発生させない効果をより確実に得ることができる。
【0051】
拘束フープ部材40は、単電池10に拘束圧を負荷することで、反力を受ける。拘束フープ部材40のうち、第1のエンドプレート20の平面部25および第2のエンドプレート30の平面部35に接触する箇所が、反力によって拘束フープ部材40に作用する応力が最も小さくなる箇所になる。そこで、易変形部50を平面部25,35に接触させる、より典型的には易変形部50の全体を平面部25,35に接触させるように、第1のエンドプレート20および第2のエンドプレート30に対して拘束フープ部材40を配置する。このような配置にすることで、剛性の低い易変形部50が拘束フープ部材40の機能を低下させることを回避でき、拘束フープ部材40は単電池10に対して高荷重の拘束力を確実に負荷し続けることができる。
【0052】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 電池スタック、10 単電池、12 電池ケース、14 外部端子、20 第1のエンドプレート、21,31 第1面、22,32 第2面、23,24,33,34 面取り部、25,35 平面部、30 第2のエンドプレート、40 拘束フープ部材、41 第1支持部、42 第2支持部、43,44 連結部、50 易変形部、51,52 境界線、53 幅減少部、54,55 貫通孔、56 細部。
図1
図2
図3