(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190301
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】リペア用テープ、そのリペア用テープの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20221219BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20221219BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221219BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C09J7/38
H01L33/48
G09F9/00 338
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098565
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】大倉 直也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004EA05
4J004FA08
4J040JB09
4J040NA17
5F142AA51
5F142AA58
5F142BA32
5F142CA11
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5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC09
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】LEDチップの修復を容易に実施可能とする。
【解決手段】リペア用テープは、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープであって、LEDチップ3と粘着する粘着剤層22を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材2と、上記第1テープ材2の粘着剤層22よりも粘着力が強い粘着剤層42を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材4と、上記第1テープ材2と上記第2テープ材4との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されるLEDチップ3と、を備え、上記LEDチップ3の電極面が上記第1テープ材の粘着剤層と粘着し、上記LEDチップ3の光放出面が上記第2テープ材4の粘着剤層42と粘着しているものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープであって、
前記LEDチップと粘着する粘着剤層を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材と、
前記第1テープ材の粘着剤層よりも粘着力が強い粘着剤層を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材と、
前記第1テープ材と前記第2テープ材との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されるLEDチップと、を備え、
前記LEDチップの電極面が前記第1テープ材の粘着剤層と粘着し、前記LEDチップの光放出面が前記第2テープ材の粘着剤層と粘着していることを特徴とするリペア用テープ。
【請求項2】
前記第1テープ材は、前記第2テープ材よりも幅が広いことを特徴とする請求項1に記載のリペア用テープ。
【請求項3】
前記第1テープ材及び前記第2テープ材の側縁部には、長手方向に沿って、テープ送り用の孔が予め定められた間隔で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリペア用テープ。
【請求項4】
マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープの製造装置であって、
前記LEDチップと粘着する粘着剤層を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材を加工位置に順次送り出す送出部と、
一方の面に予め定められた配列で配置されたLEDチップを有する光透過性の基板を保持して、前記送出部から送り出される前記第1テープ材に転写する前記LEDチップの位置決めを行なうステージ部と、
転写対象のLEDチップと前記第1テープ材とを加圧して転写するタイミングを検出し、レーザリフトオフにより、前記転写対象のLEDチップを前記基板から剥離して、該転写対象のLEDチップを前記第1テープ材に転写する転写部と、
前記第1テープ材の粘着剤層よりも粘着力が強く、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材を、前記LEDチップを転写した前記第1テープ材に貼り付けた状態で巻取る巻取り部と、
前記転写部の処理に応じて、前記送出部、前記転写部及び前記巻取り部を一体的に昇降させる昇降部と、
前記送出部、前記ステージ部、前記転写部、前記巻取り部及び前記昇降部を統括して制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするリペア用テープの製造装置。
【請求項5】
前記転写部は、荷重変換センサを内蔵した加圧部材を備え、前記昇降部の上昇に伴って前記加圧部材が前記転写対象のLEDチップと前記第1テープ材とを加圧して、前記荷重変換センサの値が予め定めた閾値に達したときに前記タイミングを検出することを特徴とする請求項4に記載のリペア用テープの製造装置。
【請求項6】
前記巻取り部は、前記第1テープ材に転写された前記LEDチップを撮像するための観察光学系を備え、
前記制御部は、前記観察光学系で撮像された画像に基づいて、転写された前記LEDチップの個数をカウントすることを特徴とする請求項4に記載のリペア用テープの製造装置。
【請求項7】
マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープの製造方法であって、
ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材を加工位置に順次送り出す工程と、
一方の面に予め定められた配列で配置されたLEDチップを有する光透過性の基板を保持して、送り出される前記第1テープ材に転写する前記LEDチップの位置決めをする工程と、
転写対象のLEDチップと前記第1テープ材とを加圧して、転写するタイミングを検出する工程と、
前記タイミングが検出されると、レーザリフトオフにより、前記転写対象のLEDチップを前記基板から剥離して、該転写対象のLEDチップを前記第1テープ材に転写する工程と、
前記第1テープ材よりも粘着力が強く、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材を、前記LEDチップを転写した第1テープ材に貼り付けた状態で巻取る工程と、を実行し、
前記第1テープ材を前記加工位置に順次送り出す工程から前記巻取る工程までの処理を繰り返すことにより、前記第1テープ材と前記第2テープ材との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されているLEDチップを有するリペア用テープを製造することを特徴とするリペア用テープの製造方法。
【請求項8】
前記転写するタイミングを検出する工程では、前記転写対象のLEDチップと前記第1テープ材とを加圧して、前記荷重変換センサの値が予め定めた閾値に達したときに前記タイミングを検出することを特徴とする請求項7に記載のリペア用テープの製造方法。
【請求項9】
前記巻取る工程では、前記第1テープ材に前記第2テープ材を貼り付ける前に、前記第1テープ材に転写された前記LEDチップを撮像し、撮像した画像に基づいて、転写された前記LEDチップの個数をカウントすることをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のリペア用テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップに欠陥(欠損を含む)が発生した場合の修復技術に関し、特に、LEDチップに欠陥が発生した場合の修復を容易に実施可能とするためのリペア用テープ、そのリペア用テープの製造装置及び製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDディスプレイの製造工程において、転写技術を用いて複数のLEDを基板上に並べて実装したLED基板を作製する際、欠陥箇所(LEDの未実装箇所)に対して、LEDを選択的に再転写する修復方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の修復方法では、LEDがマイクロLEDのような微小な素子である場合、LED基板に対するLEDの接触面積が狭くなり、LED基板との接触が不安定になるという問題があった。
【0005】
また、特許文献1に記載の修復方法では、マイクロLEDディスプレイの製造段階において、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップ(例えば、μmのサイズのマイクロLED)の修復方法について、想定されていない。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いる交換用のLEDチップを複数備え、LEDチップの修復を容易に実施可能とするためのリペア用テープ、そのリペア用テープの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明によるリペア用テープは、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープであって、上記LEDチップと粘着する粘着剤層を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材と、上記第1テープ材の粘着剤層よりも粘着力が強い粘着剤層を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材と、上記第1テープ材と上記第2テープ材との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されるLEDチップと、を備え、上記LEDチップの電極面が上記第1テープ材の粘着剤層と粘着し、上記LEDチップの光放出面が上記第2テープ材の粘着剤層と粘着しているものである。
【0008】
上記目的を達成するために、第2の発明によるリペア用テープの製造装置は、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープの製造装置であって、上記LEDチップと粘着する粘着剤層を一方の面に有し、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材を加工位置に順次送り出す送出部と、一方の面に予め定められた配列で配置されたLEDチップを有する光透過性の基板を保持して、上記送出部から送り出される上記第1テープ材に転写する上記LEDチップの位置決めを行なうステージ部と、転写対象のLEDチップと上記第1テープ材とを加圧して転写するタイミングを検出し、レーザリフトオフにより、上記転写対象のLEDチップを上記基板から剥離して、該転写対象のLEDチップを上記第1テープ材に転写する転写部と、上記第1テープ材の粘着剤層よりも粘着力が強く、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材を、上記LEDチップを転写した上記第1テープ材に貼り付けた状態で巻取る巻取り部と、上記転写部の処理に応じて、上記送出部、上記転写部及び上記巻取り部を一体的に昇降させる昇降部と、上記送出部、上記ステージ部、上記転写部、上記巻取り部及び上記昇降部を統括して制御する制御部と、を備えたものである。
【0009】
上記目的を達成するために、第3の発明によるリペア用テープの製造方法は、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるリペア用テープの製造方法であって、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材を加工位置に順次送り出す工程と、一方の面に予め定められた配列で配置されたLEDチップを有する光透過性の基板を保持して、送り出される上記第1テープ材に転写する上記LEDチップの位置決めをする工程と、転写対象のLEDチップと上記第1テープ材とを加圧して、転写するタイミングを検出する工程と、上記タイミングが検出されると、レーザリフトオフにより、上記転写対象のLEDチップを上記基板から剥離して、該転写対象のLEDチップを上記第1テープ材に転写する工程と、上記第1テープ材よりも粘着力が強く、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材を、上記LEDチップを転写した第1テープ材に貼り付けた状態で巻取る工程と、を実行し、上記第1テープ材を上記加工位置に順次送り出す工程から上記巻取る工程までの処理を繰り返すことにより、上記第1テープ材と上記第2テープ材との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されているLEDチップを有するリペア用テープを製造する。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によるリペア用テープによれば、上記構成のリペア用テープを提供することができる。これにより、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップに欠陥が発生した場合であっても、予め製造しておいた第1の発明によるリペア用テープを使用して、例えば、LEDチップの欠陥箇所に交換用のLEDチップを転写すれば、LEDチップを容易に修復できる。
【0011】
また、第2の発明によるリペア用テープの製造装置によれば、上記構成により、第1の発明によるリペア用テープを容易に製造する装置を提供できる。
【0012】
さらに、第3の発明によるリペア用テープの製造方法によれば、上記工程により、第1の発明によるリペア用テープを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の発明によるリペア用テープの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図1におけるリペア用テープの要部を示す拡大模式図である。
【
図3】
図1におけるLEDチップを示す拡大図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】
図1におけるリペア用テープの一実施形態を示す平面図である。
【
図5】第2の発明によるリペア用テープの製造装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】LEDチップが形成された基板を示す説明図である。
【
図8】
図5における送出部、転写部及び巻取り部の構成を示す説明図である。
【
図9】昇降部、筐体及び基板の第1の位置関係を示す説明図である。
【
図10】昇降部、筐体及び基板の第2の位置関係を示す説明図である。
【
図11】
図5における制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】リペア用テープの製造装置の構成とレーザリフトオフ用のレーザユニットの構成とを組み合わせた状態を示すブロック図である。
【
図13】第3の発明によるリペア用テープの製造方法の概要を示す工程図である。
【
図14】第3の発明によるリペア用テープの製造方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図14に示すフローチャートの転写処理の前処理を示すサブルーチンである。
【
図16】
図14に示すフローチャートの転写処理の後処理を示すサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、第1の発明によるリペア用テープの一実施形態を示す模式図である。
図2は、
図1におけるリペア用テープの要部を示す拡大模式図である。具体的には、
図2では、
図1に示すR1で囲まれた領域の拡大模式図を示している。第1の発明によるリペア用テープは、マイクロLEDディスプレイに組み込まれるLEDチップの修復に用いるものである。
【0015】
図1において、リペア用テープ1は、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材2と、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材4と、第1テープ材2と第2テープ材4との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されているLEDチップ3と、を備える。
【0016】
但し、
図1では、リペア用テープ1を一部切り出した状態を例示している。LEDチップ3は、例えば、外形サイズが約20μm×30μm、厚みが約7~10μm程度のマイクロLEDである。なお、本実施形態では、必要に応じて、さらに大きなサイズのLEDチップを採用することが可能である。
【0017】
図2において、リペア用テープ1は、詳細には、LEDチップ3と粘着する粘着剤層22を一方の面に有する第1テープ材2と、第1テープ材2の粘着剤層22よりも粘着力が強い粘着剤層42を一方の面に有する第2テープ材4と、第1テープ材2と第2テープ4材との間に挟まれ、予め定められた配列に従って配置されるLEDチップ3と、を備える。そして、リペア用テープ1は、LEDチップ3の電極面31が第1テープ材2の粘着剤層22と粘着し、LEDチップ3の光放出面33が上記第2テープ材4の粘着剤層42と粘着している。
【0018】
第1テープ材2は、微粘着フィルムからなるテープであって、例えば、ソマタックWAシリーズ(ソマール株式会社製)のうちから選択されたものが用いられている。第1テープ材2の粘着力は、いわゆる180度剥離試験により、0.07(N/25mm)である。180度剥離試験に関しては、日本工業規格に定められた試験方法(JIS規格(JIS Z 0237))に基づいている。
【0019】
第2テープ材4は、加熱剥離型の熱発砲剥離粘着フィルムからなるテープであって、例えば、ソマタックTEシリーズ(ソマール株式会社製)のうちから選択されたものが用いられている。この熱発砲剥離粘着フィルムからなるテープは、加熱によって粘着剤内部の発砲粒子が膨張し、被着体との接触面積が小さくなることにより剥離しやすくなるものである。第2テープ材4の加熱前の粘着力は、180度剥離試験により、5.3(N/25mm)である。このように、第1テープ材2と第2テープ材4とを比較して、粘着力に差を設けているのは、最終的にマイクロLEDディスプレイの配線回路にLEDチップ3を実装する場合に、第2テープ材4よりも先に第1テープ材2をLEDチップ3から剥がす必要があるからである。さらに、リペア用テープ1がLEDチップ3の修復用の装置(図示省略)で使用される場合、第2テープ材4からLEDチップ3を剥離するときに、その第2テープ材4を加熱することにより、剥離を容易にすることができる。このようにして、リペア用テープ1は、第2テープ材4の加熱前の粘着力が第1テープ材2の粘着力よりも強いことを特徴としている。
【0020】
図2において、第1テープ材2は、ベース部材21と、そのベース部材21の一方の面上に積層された粘着剤層22と、を有する。ベース部材21は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂からなるものであり、厚みは50μmである。粘着剤層22は、そのベース部材21の一方の面上に積層された微粘着剤であり、厚みは5μmである。
【0021】
第2テープ材4は、ベース部材41と、そのベース部材41の一方の面上に積層された粘着剤層42と、を有する。ベース部材41は、例えば、ポリイミド(PI)等の樹脂からなるものであり、厚みは25μmである。粘着剤層42は、そのベース部材41の一方の面上に積層された熱発砲剥離粘着剤であり、厚みは45μmである。
【0022】
図3は、
図1におけるLEDチップ3を示す拡大図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。LEDチップ3は、
図3(a)に示すとおり、一対の電極部3a、3bと、LED本体部32と、を備える。一対の電極部3a、3bは、例えば、マイクロLEDディスプレイの配線回路からLEDチップ3へ通電を可能とする電極パッドであって、
図3(b)に示すとおり、電極面31を有し、電極部3aがn側電極パッド(カソード電極)、電極部3bがp側電極パッド(アノード電極)である。LEDチップ3は、光放出面33を有している。
【0023】
LEDチップ3は、LED本体部32が例えば窒化ガリウム(GaN)を主材料として製造されたものである。具体的には、LEDチップ3は、マイクロLEDとして、紫外光発光ダイオード(UV-LED)であっても青色光を発光するLEDであってもよい。本実施形態では、例えば、単色のマイクロLEDを使用して色変換を行なう方式のマイクロLEDディスプレイに使用されるRGB蛍光体の変換効率等を考慮して、例えばピーク波長が385nmに対応する光を発光する紫外光発光ダイオード(UV-LED)を選択してもよい。
【0024】
リペア用テープ1は、LEDチップ3を、予め定められた配列として、長手方向に等間隔の距離P(
図2参照)で並ぶように配置している。すなわち、リペア用テープ1は、複数のLEDチップ3を、1ピクセル単位で独立した状態で第1テープ材2上に等間隔に配置している。この距離Pは、LEDチップ3を効率良く修復可能とするために定められている。したがって、このような構造により、リペア用テープ1がLEDチップ3の修復用の装置で使用されると、LEDチップ3を効率良く修復することができる。
【0025】
図4は、
図1におけるリペア用テープ1の一実施形態を示す平面図である。
図4(a)は、LEDチップ3を粘着して配置した第1テープ材2の平面図、
図4(b)は、第2テープ材4の平面図、
図4(c)は、LEDチップ3を粘着して配置した第1テープ材2の上に第2テープ材4を貼り付けてなるリペア用テープ1の平面図である。なお、
図4では、リペア用テープ1を一部切り出した状態を例示している。
【0026】
図4(a)に示す第1テープ材2の片側の側縁部には、複数の孔2aが予め定められた間隔で設けられている。この孔2aは、テープ送り用のスプロケット孔である。但し、複数の孔2aは、第1テープ材2の両側の側縁部に予め定められた間隔で設けられる構成にしてもよい。
【0027】
また、
図4(b)に示すように、第2テープ材4にも、長手方向に孔4aが予め定められた間隔で設けられている。この孔4aも、テープ送り用のスプロケット孔である。但し、複数の孔4aは、第2テープ材4の両側の側縁部に予め定められた間隔で設けられる構成にしてもよい。
【0028】
図4(c)に示すリペア用テープ1は、第1テープ材2の幅W1が上記第2テープ材4の幅W2よりも広いので、剥がしやすい構成になっている。さらに、この第2テープ材4は、LEDチップ3を保護するテープとしての機能も有する。
【0029】
次に、このように構成されたリペア用テープ1を製造するために使用される第2の発明によるリペア用テープの製造装置について説明する。
【0030】
図5は、第2の発明によるリペア用テープの製造装置の構成を示すブロック図である。リペア用テープの製造装置は、第1の発明によるリペア用テープを製造するものである。詳細には、リペア用テープの製造装置は、
図5に示すとおり、転写用の光透過性の基板5の一方の面(表面)に形成された複数のLEDチップ3に対して、レーザリフトオフにより、LEDチップ3を第1テープ材2に転写して、リペア用テープ1を製造するものである。レーザリフトオフは、基板5の他方の面(裏面)からパルスのレーザ光(
図5に示すレーザビームL)を照射し、各々のLEDチップ3を基板5から剥離させる処理である。なお、レーザリフトオフを実行する場合には、後述する
図13(d)に示すとおり、転写対象のLEDチップ3とテープと第1テープ材2とが接触している。また、説明の便宜上、LEDチップ3を表面に形成している基板5を以下、「ワーク」ということがある。
【0031】
図5に示すリペア用テープの製造装置は、ステージ部10、送出部11、転写部12、巻取り部13、昇降部14、及び制御部15を備える。なお、送出部11、転写部12、及び巻取り部13は、筐体16内に一体的に設けられている。ステージ部10は、基板ホルダ10aとステージ機構10bとを有する。
【0032】
図6は、LEDチップ3が形成された基板5を示す説明図である。
図6に示すワーク6において、基板5は、光透過性のサファイア基板であり、円盤形状に形成されており、直径は例えば4インチである。なお、円盤形状については、一部がカットされた形状も含まれることとする。
【0033】
図6では、説明を分かりやすくするため、5行9列のLEDチップ3が基板5に形成されている場合について例示している。各LEDチップ3には、座標で位置が特定されるようにしている。座標(1,1)は、1行1列のLEDチップ3を示し、本実施形態では、例えば、このLEDチップ3が最初に第1テープ材2に転写される。また、座標(5,9)は、5行9列のLEDチップ3を示し、このLEDチップ3が1番最後に第1テープ材2に転写される。また、
図6では、一例として、LEDチップ3が転写される順番を矢印で示している。
【0034】
なお、基板5とLEDチップ3との境界には、レーザリフトオフ用の剥離層(図示省略)が設けられている。この剥離層にレーザ光の焦点位置を合わせることで、レーザアブレーションにより、例えば窒素ガスが発生する。そして、レーザリフトオフでは、その窒素ガスの圧力で、各々のLEDチップ3を基板5から剥離させることができる。ここで、剥離層は、犠牲層とも称される。
【0035】
図7は、ステージ部10の構成を示す説明図である。ステージ部10は、複数のLEDチップ3が表面にマトリクス状に配置した基板5(ワーク6)を保持して、送出部11から送り出される第1テープ材2に転写するLEDチップ3の位置決めを行なうものである。ステージ部10は、例えば、基板5の周辺部を吸着により保持し、XY方向への移動動作及びθ方向への回転動作を行なえるXYθステージである。なお、
図7では、ステージ部10の特徴的な構成を示しており、ステージ部10は、中空の基板ホルダ10a、第1ガイド部材X1、X2、第2ガイド部材Y1、Y2を有する。なお、これらの第1ガイド部材X1、X2、第2ガイド部材Y1、Y2は、
図5に示すステージ機構10bの構成要素に含まれるものである。基板ホルダ10aは、レーザリフトオフを容易に可能とするため、基板5を周囲で支持する構成になっている。
【0036】
ステージ機構10b(
図5参照)は、ステージ制御部(図示省略)を備え、制御部15からの制御信号に基づいて、ステージ制御部により、基板ホルダ10aに支持された基板5の移動や位置決めをするものである。ここで、
図7に示す基板ホルダ10aは、第2ガイド部材Y1、Y2上で往復可能に設置されている。これにより、ステージ機構10bは、第2ガイド部材Y1、Y2上で基板ホルダ10aをY方向に移動させることができる。また、第1ガイド部材X1、X2上に第2ガイド部材Y1、Y2が往復可能に設置されており、ステージ機構10bは、第2ガイド部材Y1、Y2をX方向に平行移動させることにより、基板ホルダ10aをX方向に移動させることができる。なお、ステージ機構10bは、公知の移動手段及び位置決め手段を適用することができる。また、ステージ部10は、真空チャック方式を採用し、基板5を保持するが、真空チャック方式に限られず、静電チャック方式、メカニカルチャック方式を採用してもよい。
【0037】
ステージ機構10bは、制御部15(
図5参照)からの指示により、基板ホルダ10aを水平面内で移動させることができる。これにより、ステージ部10は、順次送り出される第1テープ材2に対して、転写対象のLEDチップ3の位置決めを簡単にすることができる。
【0038】
図8は、
図5における送出部11、転写部12及び巻取り部13の構成を示す説明図である。但し、
図8では、説明の便宜上、ワーク6、基板ホルダ10aも図示している。
図8に示すとおり、送出部11は、第1テープ材2を転写部12の加工位置に順次送り出すものである。なお、加工位置は、第1テープ材2が転写部12に接している状態で、転写対象のLEDチップ3がレーザリフトオフにより第1テープ材2に転写される領域である。
【0039】
送出部11は、第1テープ材2を、一定方向に連続的又は断続的に送り出すものである。但し、送出部11は、後述する第1ピッチローラ13bが、
図4(a)に示す第1テープ材2の孔2aに嵌合して回転することにより、第1テープ材2を引っ張ることで、その第1テープ材2を送り出すようにしている。送出部11は、第1送出ローラ11a、第1分離ローラ11b、第1回収ローラ11c、及び第1テンションローラ11dを備える。
【0040】
第1送出ローラ11aは、第1ピッチローラ13bの回転に起因して第1テープ材2が引っ張られることにより回転し、巻取られている第1テープ材2を送り出すものである。なお、送出部11には、第1テープ材2の残量を確認するための第1センシング手段(図示省略)が設けられている。第1センシング手段は、例えば、第1テープ材2が巻き取られているロール状態において、そのロール状態のテープロールの厚み方向をレーザ変位計で計測する。そして、第1センシング手段は、計測したデータに基づいて、その厚みが予め定めた値以下になった場合に、アラーム情報として制御部15に送信する。制御部15は、アラーム情報に基づいて、予め定められた処理を実行する。詳細については、
図15に示すフローチャートの中で後述する。なお、第1センシング手段は、その厚みが予め定めた値以下になった場合に、アラームで作業者に知らせるようにしてもよい。
【0041】
また、第1テープ材2には、LEDチップ3が貼り付けられる粘着面上にフィルム状の保護テープF1が貼り付けられている。これは、埃等の付着物の混入を防ぐためである。この保護テープF1は、例えば、OPP(Oriented Poly Propylene)フィルムであって、厚みは30μmである。
【0042】
第1分離ローラ11bは、第1送出ローラ11aから送り出されて来る第1テープ材2から保護テープF1を分離する起点となるものである。第1回収ローラ11cは、第1分離ローラ11bを介して、保護テープF1を巻取るものである。第1回収ローラ11cは、トルクモータを有し、回転作用により保護テープF1を引っ張ることで、その保護テープF1を、機械的に第1テープ材2から剥離する。第1テンションローラ11dは、第1テープ材2が緩まないようにするものである。
【0043】
転写部12は、転写対象のLEDチップ3と第1テープ材2とを加圧して、レーザ光の射出のタイミングを検出し、レーザ光の射出に基づくレーザリフトオフにより、転写対象のLEDチップ3を基板5から剥離して、該転写対象のLEDチップ3を第1テープ材2に転写する。
【0044】
転写部12は、荷重を電気信号に変換する荷重変換センサ(ロードセル)12aを内蔵した加圧部材12bを備え、
図5に示す昇降部14が筐体16を上昇させることにより、加圧部材12bが、転写対象のLEDチップ3と第1テープ材2とを加圧して、荷重変換センサ12aの値が予め定めた閾値に達したときに上記タイミングを検出する。転写部12は、制御部15との間で通信する手段(図示省略)を備え、上記タイミングを検出すると、その情報を制御部15に送信する。加圧部材12bは、加圧により上記タイミングを検出できるものであって、第1テープ材2と接する面が摩擦により、その第1テープ材2の移動を妨げるものでなければ、素材は特に限定されない。
【0045】
巻取り部13は、
図8に示すとおり、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材4を、LEDチップ3を転写した第1テープ材2に貼り付けた状態で巻取るものである。換言すると、巻取り部13は、リペア用テープ1を一定方向に連続的に又は断続的に巻取るものである。但し、巻取り部13では、後述する第2ピッチローラ13gが、
図4(b)に示す第2テープ材4の孔4aに嵌合して回転することにより、第2送出ローラ13dに設けられている第2テープ材4を引っ張ることで、その第2テープ材4を送り出すようにしている。さらに、巻取り部13では、巻取りローラ13jが回転することにより、リペア用テープ1を巻取るようにしている。
【0046】
巻取り部13は、例えば、第2テンションローラ13a、第1ピッチローラ13b、第3テンションローラ13c、第2送出ローラ13d、第2分離ローラ13e、第2回収ローラ13f、第2ピッチローラ13g、第1圧着ローラ13h、第2圧着ローラ13i、及び巻取りローラ13jを備える。
【0047】
第2テンションローラ13aは、LEDチップ3が転写された後の第1テープ材2が緩まないようにするものである。第1ピッチローラ13bは、上述したとおり、第1テープ材2の孔2aに嵌合して回転することにより、第1テープ材2を引っ張ることで、その第1テープ材2を第1送出ローラ11aから送り出して、その第1テープ材2を第3テンションローラ13cへと導くものである。第1ピッチローラ13bは、例えば、スプロケットであって、円筒形外周面に突起を複数有する歯車の一種である。第3テンションローラ13cは、第1テープ材2が緩まないようにするものである。
【0048】
第2送出ローラ13dは、巻取られている第2テープ材4を送り出すものである。なお、巻取り部13には、第2テープ材4の残量を確認するための第2センシング手段(図示省略)が設けられている。第2センシング手段は、第1センシング手段と同様の構成であり、第2テープ材4の残量としての厚みが予め定めた値以下になった場合に、アラーム情報として、制御部15に送信する。制御部15は、アラーム情報に基づいて、予め定められた処理を実行する。詳細については、
図15に示すフローチャートの中で後述する。第2センシング手段は、第1センシング手段と同様、その厚みが予め定めた値以下になった場合に、アラームで作業者に知らせるようにしてもよい。
【0049】
また、第2テープ材4には、粘着面上にフィルム状の保護テープF2が貼り付けられている。これは、埃等の付着物の混入を防ぐためである。この保護テープF2は、例えば、シリコンポリエステル(Si-PET)フィルムであって、厚みは約40μmである。
【0050】
第2分離ローラ13eは、第2送出ローラ13dから送り出されて来る第2テープ材4から保護テープF2を分離する起点となるものである。第2回収ローラ13fは、第2分離ローラ13eを介して、保護テープF2を巻取るものである。第2回収ローラ13fは、トルクモータを有し、回転作用により保護テープF2を引っ張ることで、その保護テープF2を、機械的に第2テープ材4から剥離する。第2ピッチローラ13gは、第1ピッチローラ13bと同様にスプロケットであって、上述したとおり、第2テープ材4の孔4aに嵌合して回転することにより、第2テープ材4を引っ張ることで、その第2テープ材4を第2送出ローラ13dから送り出す。
【0051】
第1圧着ローラ13h、第2圧着ローラ13iは、LEDチップ3が転写された第1テープ材2の粘着剤層22(
図2参照)に第2テープ材4を圧着させるものである。この場合、LEDチップ3については、例えば、1個当たり2N(ニュートン)で第2テープ材4の粘着剤層42に圧着される。そして、圧着により、LEDチップ3が転写された第1テープ材2の粘着剤層22と第2テープ材4の粘着剤層42とが貼り合わせられて、リペア用テープ1が形成される。巻取りローラ13jは、このリペア用テープ1を巻取るものである。
【0052】
ここで、
図8に示す第1回収ローラ11c、第2回収ローラ13f、巻取りローラ13j、第1ピッチローラ13b及び第2ピッチローラ13gは、図示省略の制御手段により回転の制御がなされることが可能である。そして、この制御手段は、制御部15の指示により動作する。ここで、第1回収ローラ11c、第2回収ローラ13f、及び巻取りローラ13jには、一定の速度及び張力で巻取りが可能なトルクモータが用いられている。また、第1送出ローラ11a及び第2送出ローラ13dには、一定のトルクで回転し、過負荷保護手段を有するトルクキーパーが採用されている。さらに、第1ピッチローラ13b及び第2ピッチローラ13gは、ステッピングモータにより回転するようにしている。
【0053】
また、巻取り部13内には、第1テープ材2に転写されたLEDチップ3を撮像するための観察光学系7が設けられている。観察光学系7は、微小なLEDチップ3を観察するための顕微鏡ユニットと、その顕微鏡ユニットを通して観察したLEDチップ3を撮像する撮像カメラと、を含む。観察光学系7で取得された画像は、画像データとして、例えば、制御部15のメモリ15cに転送される。制御部15は、転写直後のLEDチップ3の画像データを解析する画像処理により、LEDチップ3のエッジを検出して、LEDチップ3を特定することができる。そして、制御部15は、観察光学系7で撮像された画像に基づいて、転写されたLEDチップ3の個数をカウントすることができる。
【0054】
このように転写されたLEDチップ3の個数をカウントすることで、制御部15では、転写が成立しているか否かの判定が可能となる。また、制御部15では、リペア用テープ1に転写されたLEDチップ3の個数を正確に把握することができる。これにより、例えば、リペア用テープ1の製品には、何個のLEDチップ3が転写されているかの情報を提供することができる。
【0055】
筐体16は、送出部11、転写部12及び巻取り部13を内蔵したものである。但し、筐体16は、上部に開口部を有することにより、筐体16の上昇に応じて、転写部12上の第1テープ材2とLEDチップ3とが接触可能な構造になっている。
【0056】
図5に示す昇降部14は、転写部12の処理に応じて、送出部11、転写部12及び巻取り部13を一体的に昇降させる。具体的には、昇降部14は、転写部12の処理に応じて、送出部11、転写部12及び巻取り部13を内蔵した筐体16を昇降させる。この昇降部14は、筐体16を垂直方向に移動させるための電動型の垂直ステージである。なお、垂直ステージについては、公知技術であるので、以下において簡略化して説明する。
【0057】
図9は、昇降部14、筐体16及び基板5の第1の位置関係を示す説明図である。
図10は、昇降部14、筐体16及び基板5の第2の位置関係を示す説明図である。ここで、第1の位置関係は初期状態を示し、第2の位置関係は、昇降部14の上昇に伴い、筐体16の転写部12の上面に位置する第1テープ材2がLEDチップ3と接触している状態を示している。なお、基板5は基板ホルダ10aに保持されている状態を図示し、
図7に示す第1ガイド部材X1、X2、第2ガイド部材Y1、Y2については図示を省略している。但し、筐体16が上昇した際には、
図7に示す第1ガイド部材X1、X2、第2ガイド部材Y1、Y2が、筐体16及びその内部の部品に接触しないようになっている。
【0058】
図9、
図10において、筐体16の内部構成については、説明を分かりやすくするため、転写部12、荷重変換センサ12a、第1テンションローラ11d、第2テンションローラ13aのみを図示している。
【0059】
図9において、昇降部14は、基台141、くさび下部142、くさび上部143、及びステージ台144を備えたものである。ステージ台144上に筐体16が載置されている。くさび下部142は、基台141上に設けられ、図示省略の駆動機構により一軸方向に移動が可能な構成になっている。くさび上部143は、くさび下部142の上に設けられている。くさび下部142とくさび上部143とは、各々傾斜面で対向させて接触した状態にある。
【0060】
上記駆動機構は、例えば、パルスモータの回転を並進運動に変換して、くさび下部142を一軸方向(x軸方向)に移動させる手段を有する。上記駆動機構は、例えば、パルスモータを時計回りに回転させる。すると、くさび下部142は、パルスモータの回転に伴って、基台141の面上でx軸方向に沿って、例えば、
図10の矢印Aの向きで示すとおり、水平方向(左方向)に移動する。
【0061】
一方、くさび上部143は、くさび下部142の移動に伴って、くさび下部142の接触面で摺動することで、
図10の矢印Bの向きで示すとおり、垂直方向(z軸)に沿って、上昇する。すると、筐体16も上昇し、転写部12の上面に位置する第1テープ材2は、基板5に形成されているLEDチップ3と接触する。この状態で、転写部12に内蔵されている荷重変換センサ12aが、閾値を検出すると、上記駆動機構は、パルスモータの回転を停止させる。本実施形態では、閾値は、例えば、LEDチップ3について、1個当たり、0.001N(ニュートン)とする。この閾値の検出した時点が、転写対象のLEDチップ3を第1テープ材2に順番に転写するタイミングとなる。すると、後述する
図12に示す射出部17はパルスのレーザ光を射出し、レーザビームLが基板5と転写対象のLEDチップ3との境界面(剥離層)に集光され、レーザリフトオフが実行される。
【0062】
次に、昇降部14において、上記駆動機構は、例えば、パルスモータを反時計回りに回転させると、くさび下部142は、基台141の面上でx軸方向に沿って、
図10の矢印Aの向きとは反対の向き(右方向)に移動する。すると、くさび上部143は、くさび下部142の移動に伴って、くさび下部142の接触面で摺動することで、
図10の矢印Bと反対の向き(鉛直下向き)に下降する。これにより、昇降部14は、
図9に示すとおり、くさび上部143及びくさび下部142を元の位置に戻す。すなわち、昇降部14は、上記の第1の位置関係になるようにする。
【0063】
図11は、
図5における制御部15のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部15は、制御用のコンピュータであって、プロセッサ15a、ストレージ15b、メモリ15c、入力装置15d、通信インターフェース15e、表示装置15f及びバス15gを備える。プロセッサ15a、ストレージ15b、メモリ15c、入力装置15d、通信インターフェース15e及び表示装置15fは、バス15gを介して、互いに接続されている。なお、制御部15は、ステージ部10のステージ機構10b、送出部11、転写部12、巻取り部13及び昇降部14に例えば動作内容の指示を示す制御信号を送信するため、通信回線又は無線により接続されている。
【0064】
プロセッサ15aは、制御部15の制御を実行するものである。また、ストレージ15bは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置であり、プログラムや各種データが格納される。
【0065】
メモリ15cは、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置であり、例えば、プロセッサ15aで実行されるプログラムがロードされる。入力装置15dは、例えば、キーボード方式又はタッチパネル方式の入力デバイスである。通信インターフェース15eは、例えば、データ通信を行なうための通信インターフェースを具備する。表示装置15fは、例えば、液晶モニタであって、プロセッサ15aの指示に応じて、操作用のメニュー画面や出力結果を表示する。
【0066】
また、制御部15は、プロセッサ15a、ストレージ15b及びメモリ15c等のハードウェアと、プログラムとが協働することにより、各種機能を実現する。このプログラムには、第1の発明によるリペア用テープ1の製造を実現するための制御プログラムが含まれる。
【0067】
具体的には、上記制御プログラムは、以下の第1ステップから第5ステップまでの処理を含む。第1ステップでは、ロール状に巻取り可能な細長状の第1テープ材2を加工位置に順次送り出す。第2ステップでは、一方の面に予め定められた配列で配置されたLEDチップ3を有する上記基板5を保持して、送り出される上記第1テープ材2に転写する上記LEDチップ3の位置決めをする。第3ステップでは、転写対象のLEDチップ3と上記第1テープ材2とを加圧して、転写するタイミングを検出する。第4ステップでは、上記タイミングが検出されると、レーザリフトオフにより、上記転写対象のLEDチップ3を上記基板5から剥離して、該転写対象のLEDチップ3を上記第1テープ材2に転写する。第5ステップでは、上記第1テープ材2よりも粘着力が強く、ロール状に巻取り可能な細長状の第2テープ材4を、上記LEDチップ3を転写した第1テープ材2に貼り付けた状態で巻取る。
【0068】
そして、上記制御プログラムは、上記第1ステップから上記第5ステップまでの処理を制御部15の制御の下で各部に割り当てて実行させるものである。そして、上記制御プログラムは、上記第1ステップから上記第5ステップまでの処理を繰り返すことにより、
図5に示すリペア用テープの製造装置は、リペア用テープ1を製造することが可能となる。
【0069】
ここで、このように構成されたリペア用テープの製造装置の動作には、レーザリフトオフ用のレーザユニットが用いられる。そこで、本実施形態では、
図5に示すリペア用テープの製造装置とレーザリフトオフ用のレーザユニットとを組み合わせた状態で、リペア用テープの製造方法について説明をする。
【0070】
図12は、リペア用テープの製造装置の構成とレーザリフトオフ用のレーザユニットの構成とを組み合わせた状態を示すブロック図である。レーザユニット19は、レーザリフトオフを実行するものであって、射出部17と光学系18とを備える。
【0071】
射出部17は、レーザ発振によるパルスのレーザ光を射出するものであって、レーザヘッド17aと、レーザ電源制御部17bとを備える。詳細には、射出部17は、基板5の一方の面上に複数配置されたLEDチップ3を、レーザリフトオフにより第1テープ材2に順番に転写するために、転写するタイミングでパルスのレーザ光を射出するものである。射出部17は、例えば、パルス幅がピコ秒であり、レーザリフトオフに適した波長として、266nm(第4高調波)のYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザを用いてレーザ光を射出する。但し、射出部17は、用途に応じて、355nm(第3高調波)のYAGレーザを用いてレーザ光を射出する構成にしてもよい。ここで、レーザ光による加工面のエネルギー密度は、例えば、約300mJ/cm2である。
【0072】
レーザヘッド17aは、例えばランプ励起型のYAGレーザ射出部である。レーザ電源制御部17bは、レーザ電源(図示省略)を制御し、制御部15からの制御信号を受信することにより、レーザ出力値を設定してレーザヘッド17aに対して電力を供給する。ここで、レーザ電源投入後において、レーザヘッド17aにおける共振器内でレーザ光は、パルス発振をしており、Qスイッチのオン/オフ切替えによるシャッタ制御により、射出タイミングを制御可能としている。そして、射出部17は、パルスジェネレータ(図示省略)からトリガ信号を受信することで、Qスイッチのオン/オフ切替えを行ない、レーザヘッド17aからパルスのレーザ光をレーザビームLとして射出可能な構成になっている。
【0073】
光学系18は、レーザ光を転写対象のLEDチップ3と基板5との境界面に結像させるものであって、均一光学系180、ミラー18d、マスク18e、照射光学系18fを備える。
【0074】
均一光学系180は、主に、レーザ光を均一な強度分布にするものであって、例えば、ビーム拡大レンズ18a、インテグレータレンズ18bと、シリンドリカルレンズ18c等の光学素子を備える。なお、均一光学系180の手前には光量調整用のアッテネータ(図示省略)が設けられている。ビーム拡大レンズ18aは、レーザ光のビームを拡大するものである。インテグレータレンズ18bは、レーザ光のビームプロファイルを制御する光学素子であって、ビームの中心の強度が高いガウシアン分布のビームプロファイルを均一な光強度分布のビームプロファイルに変換するものである。なお、インテグレータレンズ18bと同様の機能を有するホモジナイザレンズを採用してもよい。
【0075】
シリンドリカルレンズ18cは、例えば、インテグレータレンズ18bを透過したレーザ光を、基板5(
図6参照)の予め定められた領域に照射できるようにビームの断面を矩形に整形するものである。なお、シリンドリカルレンズ18cと同様の機能を有するコンデンサレンズを採用してもよい。
【0076】
シリンドリカルレンズ18cを透過したレーザ光は、ミラー18dにより、光路を変更し、マスク18eに入射する。マスク18eは、そのレーザ光を予め定められた形状にするスリットである。そして、マスク18eの透光領域を通過したレーザ光は、照射光学系18fを介して、基板5の照射領域に導かれる。
【0077】
照射光学系18fは、マスク18eを透過したレーザ光を基板5の加工面に焦点位置を合わせて集光するものであって、鏡筒18g、対物レンズ18hを備える。
【0078】
鏡筒18gは、マスク18eを透過したレーザ光を対物レンズ18hへと導くものである。対物レンズ18hは、レーザ光の光軸がレーザ照射位置に対して垂直となるように配置され、予め設定された倍率により、例えば、レーザ光のビーム断面積が転写対象のLEDチップ3の外形サイズと一致するように調節するものである。
【0079】
なお、光学系18は、転写対象のLEDチップ3が加工位置に位置決めされているか否かを確認するための確認用の光学系(図示省略)を備える。この確認用の光学系は、落射照明、対物レンズ、撮像カメラを含み、加工面に焦点位置が合った画像を撮像する。この画像は、対物レンズで所定の倍率に拡大されている。この画像の画像データは、制御部15に送信され、例えば、最初に転写するLEDチップ3の位置決めに利用される。
【0080】
制御部15は、ステージ部10、送出部11、転写部12、巻取り部13、昇降部14及びレーザユニット19を統括して制御する(
図12参照)。つまり、ステージ部10、送出部11、転写部12、巻取り部13、昇降部14、レーザユニット19は、制御部15からの指示により動作する。
【0081】
次に、リペア用テープの製造方法について説明する。先ず、
図13を用いて、リペア用テープの製造方法の概要を説明した後、
図14~
図16を用いて、リペア用テープの製造方法の詳細について説明する。
【0082】
図13は、第3の発明によるリペア用テープの製造方法の概要を示す工程図である。但し、
図13では、説明の便宜上、説明に必要な要部のみを抽出して図示している。
図13(a)~(e)では、基板ホルダ10aに保持されている基板5と転写部12との位置関係を示しながら、転写対象のLEDチップ3が第1テープ材2に転写されるまでの工程を示している。
図13(f)は、転写対象のLEDチップ3が第1テープ材2に転写された後に、第2テープ材4をその第1テープ材2に貼り付けた状態で巻取る工程を示している。
【0083】
図13(a)は、第1テープ材2を加工位置に順次送り出す工程を示す図である。具体的には、
図8に示す送出部11は、LEDチップ3を等間隔で第1テープ材2に転写するために、第1テープ材2をステップ移動させる。
【0084】
図13(b)は、位置決めする工程を示す図である。具体的には、
図12に示す制御部15は、基板5の表面に形成されているLEDチップ3を上記加工位置において第1テープ材2に転写するために、上記確認用の光学系の撮像カメラから送信されてくる画像データを解析して、上記基板5と上記第1テープ材2とを対向させた状態で、最初に転写する対象のLEDチップ3を位置決めする。そのため、制御部15は、
図13(a)に示す初期状態の位置から基板ホルダ10aを移動させることにより位置決めがなされる。但し、制御部15は、画像データに基づく画像を表示装置15fに表示して、作業者からの入力に基づいて、位置決めするようにしてもよい。
【0085】
図13(c)は、転写するタイミングを検出する工程を示す図である。具体的には、制御部15の指示により、
図12に示す昇降部14は、筐体16を上昇させることにより、転写部12も上昇し、加圧部材12bが転写対象のLEDチップ3と第1テープ材2とを加圧して貼り合わせることで、転写するタイミングを検出する。
【0086】
図13(d)は、上記タイミングが検出されると、上記レーザ光(レーザビームL)の射出に基づくレーザリフトオフを実行している工程を示す図である。
【0087】
図13(e)は、転写する工程を示す図である。具体的には、転写する工程では、レーザリフトオフにより転写対象のLEDチップ3を基板5から剥離して、該転写対象のLEDチップ3を第1テープ材2に転写する。その後、制御部15の指示により、昇降部14は、筐体16を下降させて元の位置に戻す。
【0088】
図13(f)は、巻取る工程を示す図である。具体的には、巻取る工程では、粘着力が第1テープ材2よりも強い第2テープ材4を、LEDチップ3が転写された第1テープ材2に貼り付けた状態で巻取る。
【0089】
そして、第3の発明のリペア用テープの製造方法では、第1テープ材2を加工位置に順次送り出す工程から上記巻取る工程までの処理を繰り返すことにより、上記第1テープ材2と第2テープ材4との間に挟まれ、予め定められた配列に従って粘着されているLEDチップ3を有するリペア用テープ1を製造することができる。
【0090】
以下、フローチャートを用いて、第3の発明によるリペア用テープの製造方法の詳細について説明する。
【0091】
図14は、第3の発明によるリペア用テープの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、以下のフローチャートを実行する前に、予め、第1テープ材2と第2テープ材4とは、筐体16内に組み込まれている。
【0092】
また、ワーク6は、ステージ部10の中空の基板ホルダ10aに設置される(
図7参照)。この場合、基板5の表面が第1テープ材2と対向することになる。さらに、
図12に示すレーザユニット19において、射出部17は、上記転写するタイミングで、レーザヘッド17aからパルスのレーザ光をレーザビームLとして射出できるようにレディ状態に移行する。
【0093】
ステップS1:ワーク6の設定が行なわれる(
図13(a)参照)。ステージ部10の基板ホルダ10aは、ワーク6の位置ずれを防ぐため、真空チャック方式によりワーク6の周辺部を吸着により保持する。
【0094】
ステップS2:
図12に示す制御部15は、ワーク6の位置調整を行なう。具体的には、制御部15はステージ部10に指示を出すことにより、ステージ部10のステージ機構10bは、XY方向への移動動作及びθ方向への回転動作により、例えば、ワーク6の中心がレーザ光の光軸の直下に位置するように位置調整を行なう。
【0095】
ステップS3:制御部15は、レーザリフトオフ(LLO:Laser Lift-Off)の加工のため、最初に転写するLEDチップ3の位置決めを行なう。具体的には、制御部15は、上記確認用の光学系の撮像カメラからの送信されてくる画像データに基づく画像を表示装置15fに表示する。この場合、この画像は所定の倍率で拡大されている。作業者は、
図6に示す基板5の表面に形成されたLEDチップ3のうちで、1行1列のLEDチップ3(座標(1,1))がレーザ光の光軸の直下に位置するように、入力装置15dを介して指示入力を行なう。制御部15は、指示入力を受け付けて、ステージ部10に指示を出すことにより、ステージ部10のステージ機構10bは、1行1列のLEDチップ3(座標(1,1))がレーザ光の光軸の直下に位置するように、基板ホルダ10aを移動させる(
図13(b)参照)。その後の位置決めは、ステージ機構10bにより高精度に実行される。
【0096】
ステップS4:制御部15は、ユーザ入力による開始コマンドの受付処理を行なう。
【0097】
ステップS5:制御部15は、ユーザ入力による開始コマンドの受け付けると、転写対象のLEDチップ3を基板5から剥離して、該転写対象のLEDチップ3を第1テープ材2に転写する転写処理を実行する。具体的には、転写処理の詳細については、
図15、16を用いて説明する。この転写処理が終了すると、リペア用テープ1を製造することができる。
【0098】
図15は、
図14に示すフローチャートの転写処理の前処理を示すサブルーチンである。
図16は、
図14に示すフローチャートの転写処理の後処理を示すサブルーチンである。説明の便宜上、上記前処理は、現在の転写用のLEDチップ3の転写の一連の処理であり、上記後処理は、次の転写用のLEDチップ3の位置決めの処理である。
【0099】
ステップS101:制御部15は、加圧(Z軸上昇)の処理を実行する(
図13(c)参照)。具体的には、昇降部14は、制御部15からの指示を受け、筐体16を上昇させていく。荷重変換センサ12aの出力値は、筐体16の上昇に連動して制御部15に送信される。
【0100】
ステップS102:制御部15は、設定荷重(閾値)に到達したか否かの判定を行なう。設定荷重に到達しない場合(ステップS102:No)、制御部15は、ステップS102の処理を繰り返す。一方、設定荷重に到達した場合(ステップS102:Yes)、昇降部14は、筐体16の上昇を停止する。そして、ステップS103の処理に移行する。
【0101】
ステップS103:制御部15は、転写対象のLEDチップ3をレーザリフトオフにより転写するタイミングとして、射出部17にレーザショット信号を送信する。すなわち、制御部15は、荷重変換センサ12aの出力値が転写するタイミングの設定荷重(閾値)であると判定して、射出部17にレーザショット信号を送信する。
【0102】
ステップS104:制御部15からレーザショット信号を受信した射出部17は、レーザショット及びレーザリフトオフによる転写を実行する。そして、レーザリフトオフによる転写が実行される(
図13(d)参照)。具体的には、射出部17のレーザ電源制御部17bは、制御部15からの制御信号(レーザショット信号)を受信することにより、レーザヘッド17aは、上述したシャッタ制御により、パルスのレーザ光をレーザビームLとして射出する。
【0103】
レーザビームLは、転写対象のLEDチップ3と基板5との境界面に集光され、レーザリフトオフにより、転写対象のLEDチップ3を基板5から剥離して、該転写対象のLEDチップ3を第1テープ材2に転写する。ここで、最初の転写対象のLEDチップ3は、
図6に示すワーク6の場合、上述したとおり、座標(1,1)に存在するLEDチップ3となる。
【0104】
ステップS105:制御部15は、レーザショットの停止判定を行なう。レーザショットの完了を示す信号データを受信しない場合(ステップS105:No)、制御部15は、ステップS105の処理を繰り返す。一方、レーザショットの完了を示す信号データを受信した場合(ステップS105:Yes)、ステップS106の処理に移行する。
【0105】
ステップS106:制御部15は、Z軸下降の処理を実行する。具体的には、昇降部14は、制御部15からの指示を受け、筐体16を下降させていく。すなわち、昇降部14の駆動機構は、パルスモータを反時計回りに回転させることにより、筐体16は下降する。なお、本実施形態において、筐体16を固定して、ステージ部10の基板ホルダ10aを昇降させないのは、レーザ光の焦点位置を予め固定させて、レーザ光の集光を精度良く行なうためである。
【0106】
ステップS107:制御部15は、退避位置の停止判定を行なう。この退避位置は、
図9に示した第1の位置関係の状態を意味する。昇降部14の駆動機構は、第1の位置関係の状態になるとパルスモータの回転を停止し、退避位置に戻ったことを示す退避信号を制御部15に送信する。制御部15は、退避信号を受信することにより、退避位置に到達したか否かを判定することができる。したがって、退避位置に到達していない場合(ステップS107:No)、制御部15は、ステップS107の処理を繰り返す。一方、退避位置に到達した場合(ステップS107:Yes)、ステップS108の処理に移行する。
【0107】
ステップS108:制御部15は、テープ残量の有無の判定を行なう。具体的には、制御部15は、上述した第1センシング手段に基づくアラーム情報の有無により第1テープ材2のテープ残量の有無の判定を行なう。また、制御部15は、上述した第2センシング手段に基づくアラーム情報の有無により第2テープ材4のテープ残量の有無の判定を行なう。何れかのテープ残量が予め定めた長さに達して、テープ残量に余裕ない場合(ステップS108:No)、制御部15は、第1センシング手段と第2センシング手段との少なくとも一方からアラーム情報を受信し、ステップS111の処理に移行する。一方、テープ残量が残っている場合(ステップS108:Yes)、制御部15は、アラーム情報を受信しないため、ステップS109の処理に移行する。
【0108】
ステップS109:制御部15は、テープ送りを実行する。テープ送り量としては、
図2に示す距離Pである。この場合、第1テープ材2については、第1ピッチローラ13bの回転に応じて、第1送出ローラ11aが回転してテープ送りが実行される。また、第2テープ材4については、第2ピッチローラ13gの回転に応じて、第2送出ローラ13dが回転してテープ送りが実行される。
【0109】
さらに、観察光学系7は、第1テープ材2に第2テープ材4を貼り付ける前に、第1テープ材に転写されたLEDチップを撮像する。撮像された画像の画像データは、制御部15に送信される。制御部15は、観察光学系7で撮像された画像に基づいて、転写されたLEDチップ3の個数をカウントする。カウントされた個数は、メモリ15cに記憶される。
【0110】
ステップS110:制御部15は、テープ送りの完了の有無の判定を行なう。テープ送りが完了していない場合(ステップS110:No)、制御部15は、ステップS110の処理を繰り返す。一方、テープ送りが完了した場合(ステップS110:Yes)、
図16に示すステップS112の処理に移行する。
【0111】
ステップS111:制御部15は、テープ交換が必要となるため、転写処理を中断又は停止する。この場合、制御部15は、表示装置にテープ交換が必要である旨のメッセージを表示して、作業者に知らせるようにすることが好ましい。なお、テープ交換時においては、作業者の安全のため、モータの駆動を遮断する等のインターロックを設ける安全設計がなされることが望ましい。
【0112】
ステップS112:制御部15は、X方向のステップ回数が設定回数に達したか否かの判定を行なう。
図6に示すワーク6の場合、X方向のステップ回数の設定回数は、8回となる。ステップS112の判定処理において、例えば、1行目(座標(1,1)~座標(1,9))のLEDチップ3について、X方向のステップ回数が8回の場合、第1行目の9個のLEDチップ3が、既に第1テープ材2に転写(粘着)されたことになる。
【0113】
設定回数に達していない場合(ステップS112:No)、制御部15は、ステップS113の処理に移行する。一方、設定回数に達した場合(ステップS112:Yes)、ステップS115の処理に移行する。
【0114】
ステップS113:制御部15は、X方向のステップ移動を実行させる。具体的には、制御部15はステージ部10に指示を出すことにより、ステージ部10のステージ機構10bは、基板ホルダ10aをX方向にステップ移動させて、次に転写されるLEDチップ3を加工位置上に位置決めする。ここで、加工位置上に位置決めした状態が停止位置に相当する。
【0115】
ステップS114:制御部15は、停止位置に達したか否かを判定する。停止位置に達していない場合(ステップS114:No)、制御部15は、ステップS114の処理を繰り返す。一方、停止位置に達した場合(ステップS114:Yes)、ステップS101の処理に戻る。
【0116】
ステップS115:制御部15は、Y方向のステップ回数が設定回数に達したか否かの判定を行なう。
図6に示すワーク6の場合、Y方向のステップ回数の設定回数は、4回となる。ステップS115の判定処理において、例えば、Y方向のステップ回数が4回の場合、第5行目(座標(5,1)~座標(5,9))の9個のLEDチップ3が、既に第1テープ材2に転写(粘着)されたことになる。設定回数に達した場合(ステップS115:Yes)、制御部15は、
図13のステップS5の処理を戻り、このフローチャートの処理を終了する。
【0117】
一方、設定回数に達していない場合(ステップS115:No)、ステップS116の処理に移行する。
【0118】
ステップS116:制御部15は、Y方向のステップ移動を実行させる。具体的には、制御部15はステージ部10に指示を出すことにより、ステージ部10のステージ機構10bは、基板ホルダ10aをY方向にステップ移動させて、次に転写されるLEDチップ3を加工位置上に位置決めする。
【0119】
ステップS117:制御部15は、停止位置に達したか否かを判定する。停止位置に達していない場合(ステップS117:No)、制御部15は、ステップS117の処理を繰り返す。一方、停止位置に達した場合(ステップS117:Yes)、ステップS118の処理に移行する。
【0120】
ステップS118:制御部15は、X方向のステップ回数をリセットする。一例として、
図6に示すワーク6の場合、X方向のステップ回数は、8回から0回にリセットされることになる。
【0121】
ステップS119:制御部15は、X方向のステップ方向を反転し、ステップS101に戻る。一例として、
図6に示すワーク6の場合、1行目(座標(1,1)~座標(1,9))のLEDチップ3について、全て転写されると、2行目のLEDチップ3については、座標(2,9)のLEDチップ3から、座標(2,1)のLEDチップ3へと順番に転写されることになる。
【0122】
このようにして、転写処理のサブルーチンを実行することにより、基板5に形成されている全てのLEDチップ3が第1テープ材2に転写されたリペア用テープ1を製造することができる。
【0123】
以上より、本発明のリペア用テープの製造装置を用いて、本発明のリペア用テープの製造方法を実行することにより、本発明のリペア用テープを製造することが可能となる。
【0124】
上記の実施形態では、
図4に示す第1テープ材2及び第2テープ材4の側縁部には、上述したとおり、長手方向に沿って、テープ送り用のスプロケット孔が予め定められた間隔で設けられている。したがって、本発明のリペア用テープの製造装置で、リペア用テープを製造する際、第1テープ材2の孔2a及び第2テープ材4の孔2bが、スプロケットに嵌合することにより、テープ搬送の際にすべりが生じずに済む。よって、本発明のリペア用テープの製造装置では、テープ送りを精度良く行ないながら、本発明のリペア用テープを製造することができる。また、LEDチップの修復用の装置を用いて、LED基板へのLEDチップの修復に本発明のリペア用テープを使用する場合、同じ規格のスプロケットを用いてテープ送りを精度よく行なうことができる。これにより、テープ搬送の際にすべりが生じずに済む等の同様の効果が得られ、位置精度が高い状態で良好な修復ができるようになる。
【0125】
上記の実施形態において、転写部12は、上述したとおり、荷重変換センサ12aを内蔵した加圧部材12bを備える。この構成より、単に、転写部12の上昇量を距離で測って定める手段と比較して、LEDチップ3の粘着剤層22への沈み込み等を反映させ、LEDチップ3の第1テープ材2への転写条件のより精密な設定が可能となる。このような転写条件で転写する工程を組み入れることにより製造されたリペア用テープは以下の効果を有する。すなわち、本発明のリペア用テープをLEDチップの修復用の装置で使用した場合、上記転写条件のより精密な設定が反映されることにより、LED基板へのLEDチップのリペア転写に用いる際の転写ミスを減少させることが可能になる。
【0126】
上記の実施形態では、LEDチップ3として、紫外光発光ダイオード(UV-LED)を採用したが、本発明はこれに限られず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のマイクロLEDでフルカラー表示を行なう方式のマイクロLEDディスプレイにおいて、これに用いる赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のマイクロLEDにも適用可能である。この場合、本発明のリペア用テープの製造装置を用いて、本発明のリペア用テープの製造方法を実行することにより、赤色(R)のLEDチップを使用したリペア用テープ、緑色(G)のLEDチップを使用したリペア用テープ、青色(B)のLEDチップを使用したリペア用テープを各々製造することができる。
【0127】
また、上記の実施形態では、LEDチップ3を1個単位で転写したが、本発明のリペア用テープの製造装置を用いて、本発明のリペア用テープの製造方法を実行することにより、LEDチップ3を複数個単位で一列に転写するようにしてもよい。さらに、複数列単位で、LEDチップ3を1個単位で転写した後に、リペア用テープを長手方向に分断して、1度に複数個のリペア用テープを製造するようにしてもよい。
【0128】
本実施形態は、本発明が理解及び実施できる程度に概略的に示したものであり、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲を逸脱しない限り種々に変更及び修正をすることができる。
【符号の説明】
【0129】
1…リペア用テープ
2…第1テープ材
3…LEDチップ
4…第2テープ材
5…基板
10…ステージ部
11…送出部
12…転写部
12a…荷重変換センサ
13…巻取り部
14…昇降部
15…制御部
21…ベース部材
22…粘着剤層
31…電極面
33…光放出面
41…ベース部材
42…粘着剤層