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特開2022-190302ブッシング、ガラス繊維製造装置、及びガラス繊維製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190302
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ブッシング、ガラス繊維製造装置、及びガラス繊維製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/083 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
C03B37/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098566
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021MA01
(57)【要約】
【課題】所望の形状のガラス繊維を多数にかつ安定して製造することを課題とする。
【解決手段】所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域を具備するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第1の領域に配置された複数の第1のノズルと、前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第2の領域に配置された複数の第2のノズルと、を備えるブッシングであって、前記冷却領域と前記第1の領域間の平均距離は、前記冷却領域と前記第2の領域間の平均距離よりも短く、前記第1のノズルの平均長さは、前記第2のノズルの平均長さよりも短いことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域を具備するベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第1の領域に配置された複数の第1のノズルと、
前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第2の領域に配置された複数の第2のノズルと、
を備えるブッシングであって、
前記冷却領域と前記第1の領域間の平均距離は、前記冷却領域と前記第2の領域間の平均距離よりも短く、
前記第1のノズルの平均長さは、前記第2のノズルの平均長さよりも短いブッシング。
【請求項2】
前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第3の領域に配置された複数の第3のノズルを更に備え、
前記冷却領域と前記第2の領域間の平均距離は、前記冷却領域と前記第3の領域間の平均距離よりも短く、
前記第2のノズルの平均長さは、前記第3のノズルの平均長さよりも短い請求項1に記載のブッシング。
【請求項3】
前記第1のノズル及び前記第2のノズルは、前記溶融ガラスが流出する先端部において、扁平形状をなすノズル孔を備える請求項1または2に記載のブッシング。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のブッシングと、
前記冷却領域に設けられた冷却部材とを備えるガラス繊維製造装置。
【請求項5】
前記冷却部材の、前記ベースプレートからの長さは、前記第1のノズル及び前記第2のノズルよりも長い請求項4に記載のガラス繊維製造装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のガラス繊維製造装置を用いてガラス繊維を製造するガラス繊維製造方法。
【請求項7】
前記溶融ガラスがEガラスであることを特徴とする請求項6に記載のガラス繊維製造方法。
【請求項8】
成形温度において、前記溶融ガラスは、102.0~103・5dPa・sの粘度を有することを特徴とする請求項6または7に記載のガラス繊維製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の製造技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断面が真円である円形断面ガラス繊維や、断面が長円形や楕円形のような扁平形状などの非円形断面を有する異形断面ガラス繊維は、樹脂と混合して複合化した場合に高い補強効果を実現できることから、さまざまな分野で利用されている。
【0003】
この種のガラス繊維は、ブッシングのノズルから溶融ガラスを引き出しながら冷却することにより製造されるのが一般的である。この際、製造されるガラス繊維の断面形状は、ノズル先端部のノズル孔の形状に加えて、溶融ガラスの冷却状態に依存する。
【0004】
例えば、異形断面ガラス繊維を製造するために、扁平状のノズル孔を有するノズルを使用したとしても、ノズルから引き出される溶融ガラスの粘度が低すぎれば、ノズル先端部の直下で表面張力により溶融ガラスの断面が丸くなるように形成されやすく、所望の異形断面ガラス繊維を製造することができなくなる。また、円形断面ガラス繊維を製造する場合においても、溶融ガラスを適切に冷却することにより、ガラス繊維が切れてしまうことを抑制できる。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1のガラス繊維製造装置は、溶融ガラスの冷却部材として、内層材が熱伝導率100W・m-1・k-1以上の材料よりなり、最外層材がニッケル及び/又はクロムを含有する材料よりなる中空状長尺体及び/ 又は中実状長尺体を有している。これにより、効率的に溶融ガラスを冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-184858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、1つのブッシングから引き出されるガラス繊維を増やすことにより、生産性を向上させることや、大きな番手のストランドを製造することが検討されている。そのため、ブッシングに備えられている冷却部材の個数を減らし、その領域にノズルを設けることが検討されている。
【0008】
特許文献1に記載の冷却部材を用いることにより、ノズルから引き出される溶融ガラスの冷却効率は良くなるものの、冷却部材を減らすことで、1個の冷却部材が冷却する範囲が広がるため、全てのノズルから引き出される溶融ガラスを適切に冷却できないことがあった。
【0009】
以上の実情に鑑み、本発明は、所望の形状のガラス繊維を多数にかつ安定して製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るブッシングは、所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域を具備するベースプレートと、前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第1の領域に配置された複数の第1のノズルと、前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第2の領域に配置された複数の第2のノズルと、を備えるブッシングであって、前記冷却領域と前記第1の領域間の平均距離は、前記冷却領域と前記第2の領域間の平均距離よりも短く、前記第1のノズルの平均長さは、前記第2のノズルの平均長さよりも短いことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、冷却部材の間に、ノズル領域が複数列配されるため、従来と比較してより多くのノズルを配置することができる。そのため、ガラス繊維の生産性を向上させることができるとともに、一度に多数のガラス繊維を得ることができるため、大きな番手のストランドを製造することができる。
また、冷却領域から離れた位置の第2のノズルを、第1のノズルよりも長くしているため、冷却部材からの距離が異なることに起因する溶融ガラスの冷却効率のばらつきを減らすことができる。従って、成形時の溶融ガラスの粘度を適正に調整し、ガラス繊維を安定的に成形することができる。
【0012】
本発明においては、前記ベースプレートに設けられてなり、前記冷却領域に沿った領域である第3の領域に配置された複数の第3のノズルを更に備え、前記冷却領域と前記第2の領域間の平均距離は、前記冷却領域と前記第3の領域間の平均距離よりも短く、前記第2のノズルの平均長さは、前記第3のノズルの平均長さよりも短いことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、より多くのノズルを配置した場合でも、溶融ガラスの冷却効率のばらつきを減らすことができる。
【0014】
本発明においては、前記第1のノズル及び前記第2のノズルは、前記溶融ガラスが流出する先端部において、扁平形状をなすノズル孔を備えることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、番手の大きい異形断面ガラス繊維を容易に製造することができる。
【0016】
本発明に係るガラス繊維製造装置は、上述のブッシングと、前記冷却領域に設けられた冷却部材とを備えることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、既に述べた構成と同様の効果を得ることができる。
【0018】
本発明においては、前記冷却部材の、前記ベースプレートからの長さは、前記第1のノズル及び前記第2のノズルよりも長いことが好ましい。
【0019】
これにより、第2ノズルから引き出される溶融ガラスも効率的に冷却可能となる。
【0020】
本発明に係るガラス繊維製造方法ガラス繊維製造装置を用いてガラス繊維を製造することを特徴としている。このような構成によれば、既に述べた構成と同様の効果を得ることができる。
【0021】
本発明においては、前記溶融ガラスがEガラスであることが好ましい。
【0022】
Eガラスは失透しにくいガラスであるため、ガラス繊維の生産性が向上する。
【0023】
本発明においては、成形温度において、溶融ガラスは、102.0~103・5dPa・sの粘度を有することが好ましい。
【0024】
103・5dPa・s以下であれば、溶融ガラスの粘度が高くなりすぎないため、ガラス繊維の成形性を良好に維持することができる。また、102.0dPa・s以上であれば、溶融ガラスの粘度が低くなりすぎないため、異形断面ガラス繊維を製造する際において、溶融ガラスが表面表力によって円形断面に戻ろうとする力が弱められ、ガラス繊維の扁平比(長径寸法/短径寸法)を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、 所望の形状のガラス繊維を多数にかつ安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係るガラス繊維製造装置を示す断面図である。
図2図2は、図1のブッシングのノズル周辺を拡大して示す断面図である。
図3図3は、図1のブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
図4図4は、本発明の第二実施形態に係るガラス繊維製造装置のブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
図5図5は、本発明の第三実施形態に係るガラス繊維製造装置のブッシングのノズル周辺を拡大して示す断面図である。
図6図6は、本発明の第三実施形態に係るガラス繊維製造装置のブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
図7図7は、本発明の第四実施形態に係るガラス繊維製造装置のブッシングのノズル周辺を拡大して示す断面図である。
図8図8は、本発明の第四実施形態に係るガラス繊維製造装置のブッシングのノズル周辺を拡大して示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0028】
(ガラス繊維の製造装置及び製造方法の第一実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係るガラス繊維製造装置10は、円形断面ガラス繊維の製造装置であり、ガラス溶融炉1と、ガラス溶融炉1に接続されたフォアハース2と、フォアハース2に接続されたフィーダー3とを備えている。ここで、図1に示すXYZからなる直交座標系において、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向が鉛直方向である(以下、同様)。
【0029】
溶融ガラスGは、ガラス溶融炉1からフォアハース2を通じてフィーダー3に供給されると共に、フィーダー3内に貯留される。図1では1つのガラス溶融炉1が1つのフィーダー3と接続した例を図示しているが、ガラス溶融炉1には複数のフィーダー3が接続されていてもよい。また、ガラス溶融炉1とフォアハース2との間に清澄炉を設けてもよい。
【0030】
この実施形態では、溶融ガラスGはEガラスからなるが、Dガラス、Sガラス、ARガラス、Cガラス等の他のガラス材質であってもよい。
【0031】
フィーダー3の底部に、ブッシング4が配置されている。ブッシング4は、ブッシングブロック等を介してフィーダー3に取り付けつけられている。ブッシング4の底部は、図2に示すようにベースプレート41により構成されており、ベースプレート41には、複数のノズル5が設けられている。また、ベースプレート41には、所定の一方向であるY方向に延び、冷却管6を配置可能な複数の冷却領域Sが設けられている。そして、冷却領域Sには、冷却部材としての冷却管6が設けられている。
【0032】
ブッシング4のベースプレート41に設けられた複数のノズル5からフィーダー3内に貯留された溶融ガラスGが下方に引き出され、ガラス繊維(モノフィラメント)Gmが製造される。この際、成形温度における溶融ガラスGの粘度は、102.0~103・5dPa・s(好ましくは102.5~103・3dPa・s)の範囲内に設定される。なお、成形温度における溶融ガラスGの粘度は、ノズル5に流入する位置における溶融ガラスGの粘度とする。ガラス繊維Gmの表面には、図示しないアプリケータにより集束剤が塗布されるとともに、100~10000本が1本のストランドGsに紡糸される。なお、ストランドGsの番手は、紡糸されるガラス繊維Gmに依存し、ガラス繊維Gmの本数が多いほど、ストランドGsの番手が大きくなる。紡糸されたストランドGsは、巻き取り装置のコレット7に繊維束Grとして巻き取られる。ストランドGsは、例えば、1~20mm程度の所定長に切断され、チョップドストランドとして利用される。
【0033】
ガラス溶融炉1、フォアハース2、フィーダー3、ブッシング4、ノズル5及び冷却管6は、少なくとも一部が、高価な材料である白金又は白金合金(例えば、白金ロジウム合金)により形成されている。
【0034】
溶融ガラスGの粘度を調整するために、フォアハース2、フィーダー3およびブッシング4の中から選ばれた一又は複数の要素を通電加熱などで加熱してもよい。
【0035】
図2及び図3に示すように、ノズル5は、ノズル壁51と、ノズル壁により区画形成された真円状のノズル孔52とを備えている。ノズル壁51の厚さは0.1~10mmであり、ノズル孔52の直径は0.5~15mmの範囲である。ノズル孔5は、X方向及びYに沿って均等間隔で配置されている。ノズル孔52どうしの間隔は、例えば1~20mm程度である。
【0036】
ノズル5は、ベースプレート41に200~10000個配置されていることが好ましい。ノズル5を上記の個数配置することにより、番手の大きなストランドGsを得ることができる。なお、ノズル5は、ベースプレート41に1500個以上配置されていることが好ましい。
【0037】
冷却管6は、その内部に流体としての冷却水Fを循環させて冷却作用を及ぼすようになっている。冷却管6は、板状体であって、その板面が一定の方向(Y方向)に沿うように複数配置されている。なお、冷却管6は、この実施形態では、ベースプレート41の冷却領域Sとは別体的に設けられているが、ブッシング4の底部と一体として設けてもよい。また、冷却管6は、円管状体であってもよい。冷却管6の高さ位置は、溶融ガラスGの冷却条件に応じて適宜調整することができる。例えば、冷却管6は、ノズル5から引き出された溶融ガラスGに直接対面しないようにノズル5の先端よりも上方に配置されていてもよいし、ノズル5とノズル5から引き出された溶融ガラスGの双方に跨るように配置されていてもよい。冷却部材は、冷却管6に限らず、空気流を誘導して冷却作用を及ぼす冷却フィンなどであってもよい。
【0038】
ベースプレート41は、冷却管6が配置される、Y方向に亘って延びる冷却領域Sを複数有する。冷却領域Sは、X方向の所定間隔を置いて複数配置される。冷却領域Sは、冷却管6が配置可能となるように、平坦な状態となっている。そして、冷却領域Sの間に、複数のノズル5が配置される。
【0039】
冷却領域Sの間には、冷却領域Sに近い側から、第1の領域L1及び第2の領域L2を有する。第1の領域L1及び第2の領域L2には、同数のノズル5(第1の領域L1には第1のノズル5a、第2の領域L2には第2のノズル5b)が設けられている。第1のノズル5aは、ノズル壁51aにより構成され、第2のノズル5bは、ノズル壁51bにより構成されている。第1のノズル5aの長さH1は、第2のノズル5bの長さH2よりも短い。
【0040】
冷却管6に近い第1のノズル51aから引き出される溶融ガラスGは、冷却管6により冷却されやすい。その一方、冷却管6から遠い位置にある第2のノズル51bから引き出される溶融ガラスGは、冷却管6により冷却されにくい。本発明の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、第2のノズル51bから引き出される溶融ガラスGの温度を予め低くすることにより、冷却のばらつきを抑制できることを突き止めた。本発明の発明者は更なる検討を行った結果、溶融ガラスGがノズル孔51内を流れる時間が長いほど、溶融ガラスGの温度が低下することが分かった。そこで、ノズル5の長さの関係を上述に示した通りにすることにより、冷却効率のばらつきを減らすことができる。
【0041】
そのため、全てのノズル51の隣に冷却管6を配置する必要が無くなり、その結果、ベースプレート41に、より多くのノズル5を配置することが可能となる。
【0042】
第1のノズル5aの長さH1と、第2のノズル5bの長さH2の比(H2/H1)は、1.1~2.0とすることにより、冷却のばらつきを減らしつつ、ノズル5の製造コスト(白金の使用量)を下げることができる。
【0043】
また、冷却管6の、ベースプレート41からの長さH3は、第1のノズル5aの長さH1と、第2のノズル5bの長さH2よりも長い。このようにすることで、第1のノズル5a及び第2のノズル5bより引き出される溶融ガラスGを冷却管6により効率的に冷却することができる。
【0044】
(ガラス繊維の製造装置及び製造方法の第二実施形態)
第二実施形態に係るガラス繊維製造装置について、第一実施形態にかかるガラス繊維製造装置10と異なる点についてのみ説明する。
【0045】
図4に示すように、ブッシング14のベースプレート42には、第一実施形態のベースプレート41とは異なる配置でノズル5が配置されている。ノズル5は千鳥状に配置されている。このように配置されることにより、第2の領域L2に配置された第2のノズル5b1は冷却管6によりより効率的に冷却される。第一実施形態の場合、第1のノズル5a1により遮られ、第2のノズル5b1の冷却効率が僅かながら低下する場合がある。これに対して、本実施形態の場合、第2のノズル5b1は第1のノズル5a1により遮られないため、より効率的に冷却される。
【0046】
(ガラス繊維の製造装置及び製造方法の第三実施形態)
第三実施形態に係るガラス繊維製造装置について、第一実施形態にかかるガラス繊維製造装置10と異なる点についてのみ説明する。
【0047】
図6に示すように、ブッシング24のベースプレート43には、第一実施形態のベースプレート41とは異なる配置でノズル5が配置されている。冷却領域Sの間には、冷却領域Sに近い側から、第1の領域L1、第2の領域L2及び第3の領域L3を有する。第1の領域L1、第2の領域L2及び第3の領域L3には、同数のノズル5(第1の領域L1には第1のノズル5a、第2の領域L2には第2のノズル5b、第3の領域L3には第3のノズル5c)が設けられている。第1のノズル5aは、ノズル壁51aにより構成され、第2のノズル5bは、ノズル壁51bにより構成され、第3のノズル5cは、ノズル壁51cにより構成されている。図5に示すように第1のノズル5aの長さH1は、第2のノズル5bの長さH2よりも短く、第2のノズル5bの長さH2は、第3のノズル5cの長さH4よりも短い。
【0048】
このように、冷却領域Sから遠くなるにつれてノズル5の長さを長くすることにより、ノズル5から引き出される溶融ガラスGの冷却のばらつきを減らすことができる。
【0049】
なお、冷却管6の、ベースプレート43からの長さH3は、第1のノズル5aの長さH1と、第2のノズル5bの長さH2と、第3のノズル5cの長さH4よりも長い。このようにすることで、第1のノズル5a、第2のノズル5b及び第3のノズル5cより引き出される溶融ガラスGを冷却管6により効率的に冷却することができる。
【0050】
(ガラス繊維の製造装置及び製造方法の第四実施形態)
第四実施形態に係るガラス繊維製造装置について、第一実施形態にかかるガラス繊維製造装置10と異なる点についてのみ説明する。
【0051】
図7及び図8に示すように、ブッシング34のベースプレート44において、隣接する冷却領域Sの間に、複数のノズル領域L4,L5がX方向に間隔を置いて平行に配置されている。ノズル5は、扁平状(本実施形態では長円形)のノズル孔53を備えている。この実施形態では、ノズル孔53の長径方向はY方向と一致しており、ノズル孔53の短径方向はX方向と一致している。また、ノズル孔53の断面形状は、長円形以外にも、楕円形等の形状であってもよい。
【0052】
冷却領域Sの間には、冷却領域Sに近い側から、第1の領域L4及び第2の領域L5を有する。第1の領域L4及び第2の領域L5には、同数のノズル5(第1の領域L4には第1のノズル5d、第2の領域L5には第2のノズル5e)が設けられている。第1のノズル5dは、ノズル壁51dにより構成され、第2のノズル5eは、ノズル壁51eにより構成されている。第1のノズル5dの長さH5は、第2のノズル5eの長さH6よりも短い。
【0053】
扁平状(本実施形態では長円形)のノズル孔53を備えているブッシング34は、異形断面ガラス繊維の製造に用いられる。このような形状のノズル孔53から溶融ガラスGを引き出した場合でも、表面張力によりガラス繊維の断面が真円形となりやすい。そのため、従来は、冷却部材6の数を多くする必要があった。そこで、ノズル5の長さの関係を上述に示した通りにすることにより、第2の領域L5の第2のノズル5eも効率的に冷却できるため、冷却部材6の数を減らすことができる。
【0054】
第1のノズル5dの長さH5と、第2のノズル5eの長さH6の比(H6/H5)は、1.1~2.0とすることにより、冷却のばらつきを減らしつつ、ノズル5の製造コスト(白金の使用量)を下げることができる。
【0055】
また、冷却管6の、ベースプレート44からの長さH7は、第1のノズル5dの長さH5と、第2のノズル5eの長さH6よりも長い。このようにすることで、第1のノズル5d及び第2のノズル5eより引き出される溶融ガラスGを冷却管6により効率的に冷却することができる。
【0056】
なお、第1の領域L4及び第2の領域L5に含まれるノズル5の数は、10~100個以下であることが好ましい。また、ベースプレート44に配置されるノズル5の総数は、400~4000個以下であることが好ましい。
【0057】
以上のようにしてガラス繊維を製造する本実施形態によれば、以下に示すような作用効果が得られる。
【0058】
本実施形態では、所定の一方向に延び、溶融ガラスを冷却可能に構成された冷却部材を配置可能な複数の冷却領域を具備するベースプレートと、ベースプレートに設けられてなり、冷却領域に沿った領域である第1の領域に配置された複数の第1のノズルと、ベースプレートに設けられてなり、冷却領域に沿った領域である第2の領域に配置された複数の第2のノズルとを備え、冷却領域と第1の領域間の平均距離は、冷却領域と第2の領域間の平均距離よりも短く、第1のノズルの平均長さは、第2のノズルの平均長さよりも短い。第1のノズルと第2のノズルとの長さ関係をこのようにすることにより、所望の形状のガラス繊維を多数にかつ安定して製造することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態に係るガラス繊維の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々のバリエーションが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:ガラス溶融炉、
4,14,24,34:ブッシング
41,42,43,44:ベースプレート
5:ノズル
51:ノズル壁
52,53:ノズル孔
6:冷却管
10:ガラス繊維製造装置
S:冷却領域、
L1,L4:第1の領域
L2,L5:第2の領域
L3:第3の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8