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特開2022-190304車両を用いた鳥獣追い払い方法及びそのためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190304
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】車両を用いた鳥獣追い払い方法及びそのためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/00 20110101AFI20221219BHJP
【FI】
A01M29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098569
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】篠田 祥尚
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121AA07
2B121DA33
2B121DA51
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA13
(57)【要約】
【課題】 農地等に侵入した鳥獣を威嚇し追い払う方法及びシステムに於いて、鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知すると共に、検知された鳥獣をより的確に威嚇するようにする。
【解決手段】 車両10を用いて監視領域に侵入した鳥獣aを威嚇して追い払う方法及びシステムでは、視野が監視領域を網羅するように設置された定置式カメラ2により鳥獣の侵入を監視し、定置式カメラにより監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに鳥獣の位置情報を車両の通信端末12へ送信し、車両を鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づけ、車両に搭載された周辺検知手段14により鳥獣を検知し、周辺検知手段により検知された鳥獣に対して所定の威嚇操作16を実行する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を用いて監視領域に侵入した鳥獣を威嚇して追い払う方法であって、
視野が前記監視領域を網羅するように設置された定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を監視する第一の過程と、
前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに、検知された前記鳥獣の位置情報を前記車両の通信端末へ送信する第二の過程と、
前記車両を前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づける第三の過程と、
前記車両に搭載された周辺検知手段により前記鳥獣を検知する第四の過程と、
前記周辺検知手段により検知された前記鳥獣に対して所定の威嚇操作を実行する第五の過程と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記車両が自動運転車両である方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法であって、前記第一の過程に於いて、前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに前記鳥獣の種別が認識され、前記第二の過程に於いて、前記認識された前記鳥獣の種別の情報が前記鳥獣の位置情報と共に前記車両の端末へ送信され、前記第五の過程に於いて、前記認識された前記鳥獣の種別に基づき、前記威嚇操作の内容が決定される方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの方法であって、前記第四の過程に於いて、前記鳥獣の種別が認識され、前記認識された前記鳥獣の種別に基づき、前記威嚇操作の内容が決定される方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの方法であって、前記第三の過程により、前記車両を前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づけた後に、前記車両に搭載された周辺検知手段により前記鳥獣が検知されなかったときには、前記第五の過程を実行しない方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかの方法であって、前記第三の過程により、前記車両を前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づけた後に、前記車両に搭載された周辺検知手段により前記鳥獣が検知されなかったときには、前記第四の過程に於いて前記車両を移動しながら、前記周辺検知手段により前記鳥獣を探索し、前記鳥獣を検知すると、前記第五の過程を実行する方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの方法であって、前記第三の過程に於いて、前記車両を前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ到達する前に前記鳥獣を検知したときには、そこに於いて、前記第五の過程を実行する方法。
【請求項8】
車両を用いて監視領域に侵入した鳥獣を威嚇して追い払うシステムであって、
視野が前記監視領域を網羅するように設置され前記監視領域への鳥獣の侵入を監視する定置式カメラと、
周辺検知手段と通信端末とを搭載した車両と
を含み、
前記定置式カメラが前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに、検知された前記鳥獣の位置情報を前記車両の通信端末へ送信する通信手段を有し、
前記車両が、前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ前記車両を移動させる車両制御手段と、前記周辺検知手段により検知された前記鳥獣に対して所定の威嚇操作を実行する威嚇手段とを有し、
前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに、前記鳥獣の位置へ前記車両を移動し、前記車両の前記周辺検知手段により前記鳥獣を検知して、その検知された前記鳥獣に対して前記所定の威嚇操作を実行するよう構成されたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農地や牧場、住宅街などに侵入した鳥獣を威嚇し追い払う方法及びそのためのシステムに係り、より詳細には、そのような鳥獣の威嚇及び追い払いを車両を用いて行うシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
近年農作物の鳥獣被害が増加しており、鳥獣に対する定置式の威嚇装置を設置して、対応している農家が増えている。そのような鳥獣の威嚇装置としては、例えば、特許文献1に於いては、レーザ光を用いて鳥獣を傷つけることなく確実に追い払うことのできる鳥獣追い払い機として、光源で発生した可視光レーザ光を集束させながらその投射形状を調節しつつ、レーザ光の投射先を上下左右方向または回転方向に移動させる光駆動部を備えた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-162
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如き定置式の装置から光や音を出して鳥獣を威嚇する構成の場合、その使用と共に光や音に鳥獣が慣れてしまい、威嚇効果が低減してしまうことがある。そこで、定置式の装置から単に光や音を発するだけではなく、車両が動いて、鳥獣に近づき、光や音などで威嚇して、より確実に、鳥獣を追い払えるようにすることが考えられる。この点に関し、車両が鳥獣に威嚇のために近づくために、カメラやミリ波レーダなどの周辺検知装置を用いて監視領域(鳥獣の追い払いが要求される領域)に侵入した鳥獣を検知し、その鳥獣の検知された位置に車両を移動することが考えられるところ、車両に搭載されるカメラ或いはミリ波レーダは、視野内の物体の検出確度は高いが視野が比較的狭く、鳥獣の侵入を見逃す可能性がある。そこで、電柱や壁などの固定物や建物に広角の定置式カメラを設置し、そのカメラで監視領域全体を網羅するように鳥獣の侵入を監視し、鳥獣が検知されたときには、その位置へ車両を移動させるようにすれば、監視領域への鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知できると考えられる。ただし、広角のカメラは、物体の検出確度が比較的低く、また、侵入した鳥獣の種別或いはその正確な位置の検出精度も低いので、威嚇するべき鳥獣の正確な種別や正確な位置の検出は、定置式カメラで検出された鳥獣の位置に車両を近づける際に、その車両に搭載の周辺検知装置を用いて行うことで、検知された鳥獣をより的確に威嚇することが可能となるであろう。
【0005】
かくして、本発明の一つの課題は、農地や牧場、住宅街などに侵入した鳥獣を威嚇し追い払う方法及びそのためのシステムに於いて、鳥獣の威嚇をより効果的に実行すべく、検知された鳥獣に車両を近づけて、その車両から威嚇を行う構成を提供することである。
【0006】
また、本発明のもう一つの課題は、上記の如き鳥獣の追い払い方法及びシステムに於いて、監視領域への鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知すると共に、検知された鳥獣をより的確に威嚇できるようにする構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題は、車両を用いて監視領域に侵入した鳥獣を威嚇して追い払う方法であって、
視野が前記監視領域を網羅するように設置された定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を監視する第一の過程と、
前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに、検知された前記鳥獣の位置情報を前記車両の通信端末へ送信する第二の過程と、
前記車両を前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づける第三の過程と、
前記車両に搭載された周辺検知手段により前記鳥獣を検知する第四の過程と、
前記周辺検知手段により検知された前記鳥獣に対して所定の威嚇操作を実行する第五の過程と
を含む方法
によって達成される。
【0008】
上記の構成に於いて、「監視領域」とは、既に触れた如く、鳥獣の追い払いが要求される領域を意味し、具体的には、農地や牧場の他、住宅街、商業地域、工業地域など、任意の地域であってよい。「鳥獣」は、鳥、シカ、イノシシ、サル、アライグマ、ハクビシン、タヌキなどの、監視領域に侵入したときに追い払いが要求される任意の動物であってよい。「定置式カメラ」は、屋外の状況を撮像することが可能な任意のカメラであってよく、電柱、街灯柱、支柱、壁、建物などの任意の固定物に設置されてよい。また、定置式カメラは、その視野が固定された状態で監視領域の広い範囲、好ましくは、略全域を撮像できるようになっていてもよく、視野が、移動することにより、監視領域の広い範囲、好ましくは、略全域を撮像できるようになっていてもよい。なお、定置式カメラにて監視可能な領域の範囲が監視領域とされてもよい。また、定置式カメラは、複数台設置され、それらで監視領域を網羅するようになっていてもよい。定置式カメラの画像に於ける鳥獣の像の検知は、任意の物体認識アルゴリズム(例えば、YOLOなど)を用いて達成されてよい。「鳥獣の位置情報」とは、監視領域に於ける鳥獣の位置を表わす情報である。なお、定置式カメラに於いて、画像内の位置と画角内の監視領域上の位置とは、一対一に対応しているので、鳥獣の像が捉えられたときには、その鳥獣の画像内の位置から監視領域に於ける位置は決定可能である。定置式カメラから車両の通信端末への鳥獣の位置情報の送信は、任意の通信方式にて達成されてよい。「車両に搭載された周辺検知手段」は、カメラ、ミリ波レーダ、ライダ(LiDAR)などを用いた車両の周囲の状況を検出可能な任意の手段であってよい。かかる周辺検知手段に於ける鳥獣の像の検知も、任意の物体認識アルゴリズム(例えば、YOLOなど)を用いて達成されてよい。鳥獣に対する所定の威嚇操作とは、当業者に於いて適宜選択されてよい光や音により、鳥獣を威嚇し、追い払うための任意の操作であってよい。本発明の方法に使用される車両は、典型的には、自動運転車両であってよいが、人が定置式カメラから鳥獣の位置情報に従って運転する車両であってもよい。
【0009】
上記の本発明の方法に於いては、監視領域への鳥獣の侵入の監視は、電柱等に設置された定置式カメラにて行い、鳥獣の侵入が検知された後には、その検知された位置に車両を近づけると共に、車載の周辺検知手段により侵入した鳥獣の位置を検知して、鳥獣に対して威嚇が実施される。かかる構成によれば、広角で、監視可能な範囲の広範なカメラを定置式カメラに用い、これにより、監視領域への鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知できるようにする一方、鳥獣の侵入の検知後は、物体の認識精度及び位置の検出精度の高いカメラ、ミリ波レーダ、ライダなどを車載の周辺検知手段に用い、これにより、車両で鳥獣に近づきながら、より近距離から鳥獣の位置をより正確に把握でき、的確な鳥獣の威嚇が達成できることとなる。即ち、本発明の方法によれば、監視領域への鳥獣の侵入をできるだけ見逃させずに、且つ、鳥獣の位置を正確に捉え、威嚇及び追い払いを有効に達成可能となることが期待される。
【0010】
上記の本発明の構成に於いて、鳥獣に対する威嚇の効果をより高めるために、威嚇の具体的な内容は、侵入してきた鳥獣の種別によって異なっていてよい。例えば、シカ、イノシシに対しては、赤色又は黄色の光を照射したり、犬の鳴き声を鳴らすなどの威嚇が与えられるなど、動物のそれぞれの種類や大きさ、頭数に応じて、的確に、追い払いのできる威嚇内容が選択できることが好ましい。そこで、上記の鳥獣の検知に於いては、鳥獣の種別や数が認識され、威嚇内容の選択時に参照されてよい。その場合、一つの態様に於いては、第一の過程に於いて、定置式カメラにより監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに鳥獣の種別が認識され、第二の過程に於いて、認識された鳥獣の種別の情報が鳥獣の位置情報と共に車両の端末へ送信され、第五の過程に於いて、認識された鳥獣の種別に基づき、威嚇操作の内容が決定されてよい。或いは、定置式カメラから検知される鳥獣までの距離は、比較的長いことが多く、鳥獣の種別を正確に認識できない場合もあるので、第四の過程に於いて、車載の周辺検知手段により鳥獣を検知する際に、鳥獣の種別が認識され、認識された鳥獣の種別に基づき、威嚇操作の内容が決定されてよい。その場合、定置式カメラにより認識された鳥獣の種別と車載の周辺検知手段により認識された鳥獣の種別とが異なるときには、通常、鳥獣をより近距離にて認識する車載の周辺検知手段による結果がより正確なので、その車載の周辺検知手段による結果を優先して威嚇操作の内容が決定されてよい。
【0011】
本発明の構成に於いては、上記の如く、定置式カメラにて鳥獣の侵入を検知した後に、その位置に車両を近づけると共に、車載の周辺検知手段により鳥獣の位置をより正確に把握して、威嚇操作が実施される。この点に関し、第三の過程により、車両を通信端末にて受信した鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づけた後に、車両に搭載された周辺検知手段により鳥獣が検知されなかったとき、鳥獣がいなくなったか又は定置式カメラの誤認識として判断される場合には、第五の過程による威嚇操作が実施されなくてよい。これにより、無用に威嚇操作が実施されることが回避される。また、別の態様として、第三の過程により、車両を通信端末にて受信した鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づけた後に、車両に搭載された周辺検知手段により鳥獣が検知されなかったときには、監視領域の別の場所に鳥獣が移動したか又は定置式カメラの誤認識である可能性もあるので、第四の過程に於いて車両を移動しながら、周辺検知手段により鳥獣を探索し、鳥獣を検知すると、第五の過程による威嚇操作を実行するようになっていてもよい。この場合、或る程度にて探索しても鳥獣が検知されないときには、鳥獣がいなくなったと判断して第五の過程による威嚇操作が実施されなくてよい。更に、第三の過程に於いて、車両の移動中に周辺検知手段が作動されてもよく、その場合に、車両を通信端末にて受信した鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ到達する前に鳥獣を検知したときには、そこに於いて、第五の過程による威嚇操作が実行されてもよい。
【0012】
上記の本発明の方法の一連の構成は、次のシステムにより達成可能である。かくして、本発明のもう一つの態様に於いて、上記の本発明の課題は、車両を用いて監視領域に侵入した鳥獣を威嚇して追い払うシステムであって、
視野が前記監視領域を網羅するように設置され前記監視領域への鳥獣の侵入を監視する定置式カメラと、
周辺検知手段と通信端末とを搭載した車両と
を含み、
前記定置式カメラが前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに、検知された前記鳥獣の位置情報を前記車両の通信端末へ送信する通信手段を有し、
前記車両が、前記通信端末にて受信した前記鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ前記車両を移動させる車両制御手段と、前記周辺検知手段により検知された前記鳥獣に対して所定の威嚇操作を実行する威嚇手段とを有し、
前記定置式カメラにより前記監視領域への鳥獣の侵入を検知したときに、前記鳥獣の位置へ前記車両を移動し、前記車両の前記周辺検知手段により前記鳥獣を検知して、その検知された前記鳥獣に対して前記所定の威嚇操作を実行するよう構成されたシステム
によって達成される。
【0013】
上記のシステムに於いて、車両が自動運転車両であってよいが、これに限定されない。威嚇操作の内容は、上記と同様に、定置式カメラ又は車両の周辺検知手段により認識された鳥獣の種別によって決定されてよく、定置式カメラにて認識された鳥獣の種別の情報が車両の通信端末へ送信されるようになっていてよい。車両を通信端末にて受信した鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ近づけた後に、車両に搭載された周辺検知手段により鳥獣が検知されなかったとき、或いは、車両を通信端末にて受信した鳥獣の位置情報にて表わされた位置へ到達する前に鳥獣を検知したときの処理は、上記の方法の場合と同様であってよい。
【発明の効果】
【0014】
かくして、上記の本発明の方法及びそのためのシステムによれば、監視領域に侵入した鳥獣に対して、単に定置式の装置により威嚇するのではなく、車両で近づいて威嚇するので、その効果がより有効となることが期待される。また、本発明では、定置式カメラで監視領域を網羅するように鳥獣の侵入を監視するので、鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知可能となる一方、威嚇実行の際しては、車載の周辺検知手段により鳥獣の近距離から位置を把握するので、より的確に効果的に鳥獣に対する威嚇が実施され、より効果的に鳥獣の追い払いができることが期待される。本発明の方法及びシステムは、日本国内だけでなく、日本国外の種々の地域に於ける鳥獣の追い払いに利用されてよい。
【0015】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は、本実施形態による車両を用いた鳥獣追い払い方法を実施するシステムの概略構成を表わした模式図である。図1(B)は、本実施形態による鳥獣追い払いシステムの好ましい態様の一つに於けるシステムの構成をブロック図の形式にて表した図である。
図2図2は、本実施形態による鳥獣追い払い方法に於ける監視領域への鳥獣の侵入の検知から鳥獣の威嚇までの処理を模式的に説明する図である。(i)は、定置式カメラによる鳥獣の侵入の監視の様子を、(ii)は、鳥獣の検知とその情報の車両への送信の様子を、(iii)は、車両の移動の様子を、(iv)は、車載周辺検知装置による鳥獣の検知の様子を、(v)は、鳥獣への威嚇の様子を、それぞれ示している。
図3図3(A)は、本実施形態のシステムに於ける定置式カメラの処理をフローチャートの形式に表わした図であり、図3(B)は、本実施形態のシステムに於ける車両の処理をフローチャートの形式に表わした図である。
【符号の説明】
【0017】
1…支柱
2…定置式カメラ
10…車両
12…車載通信機
14…車載周辺検知装置(車載カメラ、ミリ波レーダ、ライダなど)
16…威嚇装置(発光器、発声器)
a…鳥獣
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
システムの構成
図1(A)を参照して、本実施形態の車両を用いた鳥獣追い払い方法を実施するシステムは、電柱などの支柱1、壁、その他の建築物などの任意の固定物に設置された定置式カメラ2と、自動車等の車両10とを含む。
【0019】
定置式カメラ2は、農地や牧場、住宅街、商業地域、工業地域などで鳥獣aが侵入した場合にはその追い払い要求される領域(監視領域)に於いて、鳥獣aの侵入を監視することが可能な任意のカメラであってよい。かかるカメラは、屋外にて、可視光にて撮像することができるだけでなく、暗闇でも撮像の可能な暗視カメラであってよい。定置式カメラ2の視野αは、好適には、監視領域全域を網羅できるようになっていることが好ましいところ、視野が固定された状態で監視領域の広い範囲、好適には全域、の撮像が可能な広角なものであってもよく、或いは、視野が移動されて監視領域の広い範囲、好適には全域、逐次的に撮像できるようになっていてもよい。また、定置式カメラ2は、その視野αをできるだけ広く取るために、支柱1等に於いて、高い位置から監視領域を監視できるように設置されていることが好ましい。更に、定置式カメラ2は、複数台設置され、それらで監視領域を網羅するようになっていてもよい。そして、定置式カメラ2の撮像画像は、図示していない画像処理装置に逐次与えられ、そこに於いて、鳥獣aの像の有無が判定される。かかる鳥獣aの像の認識は、例えば、YOLOなどの任意の画像内の物体像の認識アルゴリズムを用いて達成可能である。更に、既に触れた如く、画像内の位置と画角内の監視領域上の位置とは、一対一に対応しており、鳥獣の像の位置から監視領域に於ける位置は決定可能であるので、鳥獣aの像が検知されたときには、その像の画像内の画素位置から実際の監視領域上の位置が特定されてよい。典型的には、定置式カメラ2の監視する領域の範囲αは、概ね50m又は100mの距離までであってよく、特定される位置の精度(分解能)は、10m~20m程度又はそれ以下であってよい。なお、鳥獣の位置の特定と共に、鳥獣の種別も認識されてよい。また更に、定置式カメラ2には、情報通信装置が備えられ、画像内にて検出された鳥獣の位置の情報或いは更に鳥獣の種別、数の情報が情報通信装置を通じて、車両10の通信機(DCM等)12へ送信されるよう構成される。定置式カメラ2と車両10の通信機との通信は、モバイルデータ通信、近距離間データ通信、無線LAN、WiFiなどの任意の無線ネットワーク技術により達成されてよい。
【0020】
車両10は、上記の如く、通信機12により、定置式カメラ2から鳥獣aの位置情報又は更に鳥獣aの種別、数の情報を受信し、これに応答して、鳥獣aの侵入位置又はその近傍まで移動し、鳥獣の位置又は更に種別をより正確に把握して、鳥獣を光や音などで威嚇し、これにより、鳥獣の監視領域からの追い払いが図られる。そのために、車両10に於いては、通信機12の他に、車両の周囲の物体の検知が可能な周辺検知装置14と、威嚇装置16とが設けられる。
【0021】
周囲検知装置14としては、車載カメラ、ミリ波レーダ、ライダ、又はそれらの組み合わせなど、車両の周囲βの状況の検知又は認識が可能な任意の装置が採用されてよい。この点に関し、周囲検知装置14の物体の検知可能な範囲(視野)βは、定置式カメラの視野αよりも狭いが、物体の位置の特定、種別の認識がより精度よく達成できる装置が採用されてよく、また、鳥獣に近接して鳥獣の像を捉えることができるので、より正確に、鳥獣の位置の特定、種別、数の認識が可能となることが期待される。周囲検知装置14の検知する領域の範囲βは、概ね30m又は50mの距離までであってよく、特定される位置の精度(分解能)は、数mから10m程度又はそれ以下であってよい。
【0022】
車両10に搭載される威嚇装置16は、典型的には、鳥獣の威嚇が可能な発光器や発声器であってよい。この点に関し、威嚇として有効な内容、即ち、光や音声の態様は、鳥獣の種別、数によって異なり得るので、監視領域に侵入することが想定される鳥獣に合わせた種類の威嚇装置が搭載されていることが好ましい。
【0023】
上記の車両10の鳥獣の位置又はその近傍までの移動は、典型的には、自動運転制御により達成されてよい。従って、車両10には、定置式カメラ2からの位置の指示に従って、自動的に車両を移動させるための任意の自動運転制御装置が搭載されてよい。しかしながら、車両10の移動は、運転者が定置式カメラ2からの位置の指示に従って運転することによって達成されてもよく、そのような場合も本実施形態の範囲に属することは理解されるべきである。
【0024】
定置式カメラ2に於けるカメラの作動、画像認識処理及び鳥獣の位置・種別の情報の送信、車両10に於ける鳥獣の位置・種別の情報の受信、周辺検知手段14の作動、及び、威嚇装置16の作動制御は、定置式カメラ2と車両10とのそれぞれに搭載されたコンピュータ装置の作動によって実現される。コンピュータ装置は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するコンピュータ及び駆動回路を含んでいてよい。後に説明される本実施形態の定置式カメラ2と車両10との各部の構成及び作動は、それぞれ、プログラムに従ったコンピュータ装置の作動により実現されてよい。
【0025】
図1(B)を参照して、本実施形態のシステムに於いて、定置式カメラ2は、カメラ本体と、鳥獣認識部と、車両指示部と、通信モジュールとを有していてよい。カメラ本体は、撮像装置であり、上記の如く、その視野が監視領域を網羅するように配置され、そこで撮像された画像が逐次的に鳥獣認識部へ送られる。鳥獣認識部は、上記の如き、任意の画像認識アルゴリズムに従って画像内の物体の像を認識する画像認識装置であってよく、本実施形態に於いては、鳥獣の像の認識、その像の位置の特定、又は更に、認識された鳥獣の種別の認識を実行するよう構成される。車両指示部は、鳥獣認識部にて鳥獣が検知され認識されると、車両へ送信する、認識された鳥獣の位置又は更に鳥獣の種別の情報を構成し、それらの情報は、通信モジュールを通じて、車両の端末装置(通信モジュール)へ送信されてよい。通信モジュールは、DCM(Data Communication Module)であってよい。
【0026】
一方、本実施形態のシステムに於ける車両10に於いては、周辺検知装置、走行制御部、威嚇制御部、威嚇装置、通信モジュールが設けられてよい。通信モジュールは、定置式カメラ2の通信モジュールからの、定置式カメラ2にて認識された鳥獣の位置又は更に鳥獣の種別、数などの情報を受信すると、それらの情報を走行制御部と、周辺検知装置とへ送信するよう構成される。走行制御部は、車両の駆動装置及び操舵装置(図示せず)を作動して、定置式カメラ2にて認識された鳥獣の位置情報にて表わされる位置又はその近傍まで、車両を移動させるよう機能する。周辺検知装置は、既に述べた如く、車載カメラ、ミリ波レーダ、ライダなどの物体像の検出器により、車両の周辺の物体の像を検知し、認識する装置であってよい。周辺検知装置は、通信モジュールが定置式カメラ2にて認識された鳥獣の位置又は更に鳥獣の種別の情報を受信したことに応答して、物体像の検出器を作動して、定置式カメラ2にて認識された鳥獣の検知を実行する。そして、周辺検知装置は、画像内にて鳥獣の像を認識することにより、鳥獣の存在を検知し、鳥獣の位置を特定し、又は更に、鳥獣の種別、数などを認識するよう機能する。威嚇制御部は、周辺検知装置に於ける鳥獣の検知に応答して、そこに於いて特定された位置に存在する鳥獣へ向けて、威嚇として光や音を発生するべく、威嚇装置を作動する。好適には、威嚇の内容は、周辺検知装置にて認識された鳥獣の種別、数に応じて、有効に鳥獣の追い払いが達成できるように選択されてよい。威嚇装置としては、発光器、発声器などが採用されてよい。発光器の発する光や発声器の発する音声は、周辺検知装置にて特定された鳥獣の位置へ指向されてよく、これにより、効果的に鳥獣の追い払いが可能となることが期待される。
【0027】
鳥獣追い払い方法
本実施形態に於ける鳥獣追い払い方法に於いては、端的に述べれば、定置式カメラ2を用いて、監視領域の広い範囲、好適には、略全域に於ける鳥獣の侵入が監視され、これにより、鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知され、また、鳥獣の侵入があったときには、その概ねの位置が特定され又は更にその種別、数などが認識される。そして、その侵入した鳥獣の位置情報又は更に種別、数の情報が車両10へ与えられ、車両10は、定置式カメラ2にて検知された鳥獣の位置又はその近傍まで移動し、そこに於いて、車載の周辺検知装置14を用いて、鳥獣の有無、位置、又は更に、種別、数をより正確に検知し、(鳥獣が検知されている場合には)、検知された鳥獣の追い払いが達成されるべく、より的確な内容の威嚇操作が実行される。
【0028】
具体的には、図2を参照して、まず、(i)の如く、定置式カメラ2により、視野αを逐次的に撮像することにより、監視領域に於ける鳥獣の侵入が監視される。定置式カメラ2の視野αは、既に述べた如く、監視領域の広い範囲、好適には、略全域を網羅するように設定される。そして、(ii)の如く、監視領域に鳥獣aが侵入すると、定置式カメラ2の視野αの画像内に、鳥獣aの像が現れるので、その像が定置式カメラ2の画像内にて認識されることで、鳥獣の侵入が検知される。また、鳥獣aの像が認識されると、その画像内に於ける鳥獣aの像の画素の位置から監視領域に於ける位置が特定されると共に、好適には、鳥獣aの種別と数などが認識される。かくして、鳥獣の侵入の検知、鳥獣aの位置の特定、鳥獣aの種別と数などの認識が為されると、鳥獣aの位置情報と種別と数などの情報が車両10へ通信機12を通じて送信され、車両10は、その情報に基づいて、(iii)の如く、定置式カメラ2により検知された鳥獣aの位置又はその近傍への移動を開始する。なお、その車両10の移動中に、車両10の周辺検知装置14が作動され、その視野β内の物体の検知が実行されてよい。その後、車両10が定置式カメラ2により検知された鳥獣aの位置又はその近傍まで移動すると、(iv)の如く、そこに於いて、周辺検知装置14の視野β内にて鳥獣aを検知し、その位置と種別をより正確に特定及び認識し、かくして、(v)の如く、威嚇装置16を作動して、検知された鳥獣の位置へ指向して光や音声などの刺激γが与えられ、鳥獣の追い払いが実行される。
【0029】
上記の構成に於いて理解されるべきことは、定置式カメラ2による鳥獣の検知は、侵入した鳥獣まで或る程度の距離があるために、鳥獣の存在の検知、位置の特定、種別、数の認識の精度に限界があるのに対し、車両10の周辺検知装置14による鳥獣の検知は、鳥獣に近接するので、鳥獣の存在の検知、位置の特定、種別、数の認識の精度がより高くなる。従って、上記の構成によれば、実際に鳥獣に対して威嚇を行うに際して、より的確に、鳥獣の位置に指向して、光や音声の刺激が与えられ、威嚇の正確性と追い払いの効果がより高くなることである。なお、認識された鳥獣の種別や数が、定置式カメラ2による場合と、車両10の周辺検知装置14による場合で異なるときには、後者の認識結果に基づいて、威嚇が実行されてよい。
【0030】
上記の構成に於いて、定置式カメラ2からの指示により、車両10を定置式カメラ2が鳥獣を検知した位置に移動したときに、車両10の周辺検知装置14により鳥獣が検知されない場合、一つの態様に於いては、鳥獣がいなくなったか、定置式カメラ2の誤認識であったとして、威嚇操作を行われなくてよい。また、別の態様としては、車両10を定置式カメラ2が鳥獣を検知した位置に移動したときに、車両10の周辺検知装置14により鳥獣が検知されない場合には、更に、或る程度の範囲にて、車両10が移動され、鳥獣の探索が実行され、もし周辺検知装置14により鳥獣が検知されれば、そこで、威嚇操作が実行されてよい。更に、車両10を定置式カメラ2が鳥獣を検知した位置まで移動する間に、車両10の周辺検知装置により鳥獣が検知された場合には、そこで、威嚇操作が実行されてもよい。
【0031】
既に触れた如く、鳥獣に対する威嚇の内容は、鳥獣の種別や数に応じて決定されてよい。具体的には、例えば、シカ、イノシシに対しては、赤色又は黄色の光を照射したり、犬の鳴き声を鳴らすなどの威嚇が有効であることが見出されている。また、鳥に対しては、音や光の発生が有効であることが見出されている。その他、サル、アライグマ、ハクビシン、タヌキなどに対して、それぞれ、追い払いに有効な威嚇内容が適宜選択されてよい。
【0032】
上記のシステムに於いて、車両10は、定置式カメラ2により鳥獣が検知される前は、任意に場所、例えば、所定の車庫、駐車スペースにて待機されてよい。また、鳥獣の検知後に、その近くまで移動し、威嚇が終了すると、元の場所に復帰するように移動されてよい。
【0033】
システムの処理過程
本実施形態のシステムに於ける定置式カメラ2と車両10に於ける処理過程は、それぞれ、図3(A)、(B)に例示されている如く、実施されてよい。まず、定置式カメラ2に於いては、監視領域内への鳥獣の侵入が逐次的に監視され、鳥獣の侵入が検知されると(ステップ1)、その検知された鳥獣の位置又は更に種別などの情報が車両10へ送信される(ステップ2)。
【0034】
車両10に於いては、定置式カメラ2から鳥獣の位置又は更に種別などの情報が受信されると(ステップ11)、車載の周辺検知装置が作動されるとともに(ステップ12)、定置式カメラ2で検知された鳥獣の位置へ車両の移動が開始される(ステップ13)。なお、定置式カメラ2で検知された鳥獣の位置に到着するまでの間に車載の周辺検知装置14にて鳥獣を検知した場合には(ステップ15)、その場で、威嚇操作が実行されてもよい(ステップ16)。そして、定置式カメラ2で検知された鳥獣の位置に到着して(ステップ14)、周辺検知装置14にて鳥獣を検知すると(ステップ20)、上記の如く、威嚇操作が実施される(ステップ16)。ここで、威嚇操作は、鳥獣が検知されなくなるまで実施されてよい(ステップ17)。かくして、威嚇操作により鳥獣が追い払われ、鳥獣が検知されなくなると、威嚇操作を終了し(ステップ18)、車両10は、移動前の位置(待機位置)に帰還されてよい(ステップ19)。なお、車両は、帰還しなくてもよい。
【0035】
一方、車両10が定置式カメラ2で検知された鳥獣の位置に到着したときに、周辺検知装置14にて鳥獣が検知されない場合には(ステップ20)、一つの態様に於いては、既に触れた如く、鳥獣が逃げたか、定置式カメラ2の誤認識であったものとして、威嚇操作を実施することなく、車両10は、移動前の位置(待機位置)に帰還されてよい(ステップ19)。また、ステップ20で鳥獣が検知されない場合の別の態様に於いては、車両10を更に或る程度の範囲にて移動して、鳥獣を探索してもよい(ステップ21)。その場合、鳥獣が検知されれば(ステップ22)、威嚇操作が実施されてよい(ステップ16)。しかしながら、車両10を任意に設定されてよい距離まで移動させる間に鳥獣が検知されない場合には(ステップ23)、鳥獣が逃げたか、定置式カメラ2の誤認識であったものとして、威嚇操作を実施することなく、車両10は、移動前の位置(待機位置)に帰還されてよい(ステップ19)。
【0036】
以上の如く、上記の本実施形態の方法及びそのためのシステムによれば、監視領域に侵入した鳥獣に対し、車両で近づいて威嚇するので、その効果がより有効となることが期待される。また、定置式カメラで監視領域を網羅するように鳥獣の侵入を監視するので、鳥獣の侵入をできるだけ見逃すことがなく検知可能となる一方、威嚇実行の際しては、車載の周辺検知手段により鳥獣の近距離から位置を把握するので、より的確に効果的に鳥獣に対する威嚇が実施され、より効果的に鳥獣の追い払いができることが期待される。
【0037】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3