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特開2022-190306ファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法
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  • 特開-ファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190306
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221219BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20221219BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B6/03 F
A61B6/03 373
G01T7/00 C
G01T1/17 E
G01T1/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098571
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 一磨
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188BB15
2G188DD05
2G188DD28
2G188EE12
2G188FF30
4C093AA22
4C093CA01
4C093EA07
4C093GA01
(57)【要約】
【課題】大きな照射野であっても較正データの取得に要する時間を短縮可能なファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法を提供する。
【解決手段】入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器の較正データを取得するときに用いられるファントムであって、既知の物質である第1基底物質と第2基底物質とを含み、前記第1基底物質は、前記第2基底物質よりも前記放射線に対する減弱係数が小さく、前記放射線の照射野と直交する方向において段階的に厚さが変化し、各段では前記光子計数型検出器の検出素子が配列される方向において前記照射野の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなることを特徴とする。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器の較正データを取得するときに用いられるファントムであって、
既知の物質である第1基底物質と第2基底物質とを含み、
前記第1基底物質は、前記第2基底物質よりも前記放射線に対する減弱係数が小さく、前記放射線の照射野と直交する方向において段階的に厚さが変化し、各段では前記光子計数型検出器の検出素子が配列される方向において前記照射野の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなることを特徴とするファントム。
【請求項2】
請求項1に記載のファントムであって、
前記照射野での前記第1基底物質の断面形状は、前記照射野の中心を通る放射線に沿う短軸を有する楕円であり、
前記短軸の長さは、前記照射野と直交する方向における段毎に異なり、
前記楕円の長軸の長さは、前記照射野と直交する方向における全ての段において等しいことを特徴とするファントム。
【請求項3】
請求項2に記載のファントムであって、
Nが前記照射野と直交する方向における段の数であるとき、前記照射野と直交する方向の一方の端部からi番目の楕円の短軸の長さが長軸の長さのi/N倍であることを特徴とするファントム。
【請求項4】
請求項1に記載のファントムであって、
Nが前記照射野と直交する方向における段の数であるとき、前記照射野と直交する方向の一方の端部からi番目の段では、前記放射線が前記第1基底物質を透過する方向における前記第1基底物質の厚さが、前記放射線が前記照射野を透過する長さのi/N倍であることを特徴とするファントム。
【請求項5】
請求項4に記載のファントムであって、
前記放射線が前記第1基底物質を透過する方向における前記第1基底物質の厚さの中心は、前記放射線の焦点を通る前記照射野の接線と前記照射野との接点を通り、前記焦点を中心とする円弧を形成することを特徴とするファントム。
【請求項6】
請求項1に記載のファントムであって、
前記第1基底物質と前記第2基底物質とは、前記照射野と直交する方向に個別に移動させられることを特徴とするファントム。
【請求項7】
入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器を備える放射線撮像装置であって、
請求項1に記載のファントムを用いて取得される較正データを記憶する記憶部を備えることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器の較正方法であって、
既知の物質である第1基底物質と第2基底物質とを含み、
前記第1基底物質は、前記第2基底物質よりも前記放射線に対する減弱係数が小さく、前記放射線の照射野と直交する方向において段階的に厚さが変化し、各段では前記光子計数型検出器の検出素子が配列される方向において前記照射野の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなるファントムを用いて前記光子計数型検出器の較正データを取得することを特徴とする較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光子計数型検出器を備える放射線撮像装置に係り、光子計数型検出器の較正に用いられるファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトンカウンティング方式を採用する検出器である光子計数型検出器を備えるPCCT(Photon Counting Computed Tomography)装置の開発が進められている。光子計数型検出器は入射する放射線光子のエネルギーである光子エネルギーを計測できるので、PCCT装置では組成の異なる物質が弁別された医用画像、例えば血管造影に用いられるヨード造影剤と血管中の石灰化プラークとが弁別された医用画像が得られる。なお物質が弁別された医用画像を得るには、組成や厚さが既知の物質である複数の基底物質の組み合わせで構成されるファントムを光子計数型検出器で計測したときの出力と光子エネルギーとの関係を較正データとして検出器素子毎に予め取得する必要がある。
【0003】
非特許文献1には、2.54cm厚さの0~4個のアクリル平板と、0.635cm厚さの0~4個のアルミニウム平板とで構成される階段状ファントムを用いて、25種類の較正データを取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Taly Gilat Schmidt et al. "A Spectral CT method to directly estimate basis material maps from experimental photon-counting data", in IEEE Transactions on Medical Imaging, vol. 36, no. 6, pp. 1808-1819, September 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら非特許文献1は、13cm程度の小さな照射野に用いられるファントムを開示しているに過ぎない。非特許文献1の階段状ファントムを50cm程度の大きな照射野に拡張した場合、取り扱いが困難な重量を有するファントムとなり、光子計数型検出器の較正データの取得に時間を要する。
【0006】
そこで、本発明は、大きな照射野であっても較正データの取得に要する時間を短縮可能なファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器の較正データを取得するときに用いられるファントムであって、既知の物質である第1基底物質と第2基底物質とを含み、前記第1基底物質は、前記第2基底物質よりも前記放射線に対する減弱係数が小さく、前記放射線の照射野と直交する方向において段階的に厚さが変化し、各段では前記光子計数型検出器の検出素子が配列される方向において前記照射野の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器を備える放射線撮像装置であって、前記ファントムを用いて取得される較正データを記憶する記憶部を備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、入射する放射線の光子エネルギーに対応する電気信号を出力する光子計数型検出器の較正方法であって、既知の物質である第1基底物質と第2基底物質とを含み、前記第1基底物質は、前記第2基底物質よりも前記放射線に対する減弱係数が小さく、前記放射線の照射野と直交する方向において段階的に厚さが変化し、各段では前記光子計数型検出器の検出素子が配列される方向において前記照射野の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなるファントムを用いて前記光子計数型検出器の較正データを取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大きな照射野であっても較正データの取得に要する時間を短縮可能なファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】PCCT装置の全体構成を示す図である。
図2】光子計数型検出器の較正について説明する図である。
図3】従来の階段状ファントムについて説明する図である。
図4】従来の階段状ファントムとガントリの開口部との関係を示す図である。
図5A】実施例1の楕円連結ファントムを示す斜視図である。
図5B】実施例1の楕円連結ファントムを示す側面図である。
図5C】実施例1の楕円連結ファントムとガントリの開口部との関係を示す図である。
図6】実施例1の楕円連結ファントムの透過長をチャネル毎に示すグラフである。
図7A】照射野におけるX線透過長を説明する図である。
図7B】実施例2の第1分配体について説明する図である。
図7C】実施例2の第2分配体について説明する図である。
図7D】実施例2の第3分配体について説明する図である。
図8】実施例2の分配体連結ファントムの透過長をチャネル毎に示すグラフである。
図9】ファントムの駆動について説明する図である。
図10】第2基底物質ファントムの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。本発明は、放射線源と光子計数型検出器とを備える放射線撮像装置に適用される。以降の説明では、放射線がX線であり、放射線撮像装置がX線CT装置である例について述べる。
【実施例0013】
図1に本実施例のX線CT装置101の全体構成図を示す。なお、紙面の横方向をX軸、縦方向をY軸、XY面に直交する方向をZ軸とする。X線CT装置101は、ガントリ102、X線管103、ボウタイフィルタ104、寝台105、検出器パネル107、演算装置108、入力装置109、表示装置110を備える。
【0014】
被検体106は寝台105に載せられ、ガントリ102に設けられる開口部112の中に配置される。X線管103から放射されたX線111は、ボウタイフィルタ104により被検体106の大きさに適したビーム形状に成形されて被検体106に照射され、被検体106を透過したのち検出器パネル107に検出される。X線管103と検出器パネル107は、被検体106を挟んで対向配置されるようにガントリ102に取り付けられ、ガントリ102の回転駆動部により被検体106の周りを回転させられる。X線管103からのX線照射と検出器パネル107でのX線計測が両者の回転とともに繰り返されることにより、様々な投影角度での投影データが取得される。
【0015】
取得された投影データが演算装置108にて画像再構成処理されることにより、被検体106の断層画像が生成され、表示装置110に表示される。また被検体106を載せた寝台105とガントリ102とがZ軸方向に相対的に移動しながら投影データが取得されると、被検体106のボリューム画像が生成される。なお、X線管103から照射されるX線量や、ガントリ102の回転速度、ガントリ102と寝台105との相対移動速度は、入力装置109を介して操作者が入力するスキャン条件に基づいて設定される。また演算装置108は一般的なコンピュータ装置と同様のハードウェア構成であり、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等を備え、投影データ等に対する補正処理や各部の制御を行う。
【0016】
検出器パネル107は、複数の検出素子PがX線管103のX線焦点を中心とした円弧形状に配置されることより構成される。検出素子Pは、入射するX線光子のエネルギーである光子エネルギーを計測する光子計数型検出器であり、光子エネルギーに応じた出力をする。
【0017】
光子計数型検出器を備えるX線CT装置101では、被検体106の投影データに関する光子エネルギースペクトルが取得できるので、組成の異なる物質が弁別された医用画像や複数のエネルギー成分に分けられた医用画像を生成できる。なお組成の異なる物質が弁別された医用画像等を得るには、組成や厚さが既知の物質である複数の基底物質の組み合わせを光子計数型検出器で計測したときの出力と光子エネルギーとの関係を検出器素子毎に予め較正する必要がある。
【0018】
図2を用いて、光子計数型検出器の較正について説明する。光子計数型検出器の較正には、組成や厚さが既知の複数の基底物質、例えば第1基底物質202と第2基底物質203との二つの基底物質の組み合わせ201が用いられる。基底物質の組み合わせ201には、基底物質毎に複数の異なる厚さの板が用いられても良い。例えば第1基底物質202の厚さがJ種類、第2基底物質203の厚さがK種類であれば、J×K種類の基底物質の組み合わせ201が用いられ、各組み合わせについて光子エネルギースペクトルが検出器素子毎に取得される。図2ではJ=3、K=3であるので、9種類の光子エネルギースペクトルが較正データ204として示される。取得された較正データ204は、演算装置108の記憶部に記憶され、被検体106の投影データの較正に用いられる。
【0019】
図3を用いて、非特許文献1に例示される従来の階段状ファントム301について説明する。階段状ファントム301は第1基底物質202と第2基底物質203とを含み、第1基底物質202にはアクリルが、第2基底物質203にはX線に対する減弱係数がアクリルよりも大きいアルミニウムが用いられる。また第1基底物質202は4段の階段を形成し、第1基底物質202の各段には4段の階段を形成する第2基底物質203が載せられる。すなわち、厚さゼロを含む5種類の厚さの第1基底物質202と第2基底物質203とがZ軸方向に並ぶ階段状ファントム301により、25種類の基底物質の組み合わせが形成される。なお検出器パネル107に入射するX線111が同じ厚さの基底物質を透過するように、第2基底物質203の各段のZ軸方向の長さは、検出器パネル107に入射するX線111のZ軸方向の長さよりも長く設定される。
【0020】
階段状ファントム301は、駆動部402を介して台車401に搭載され、駆動部402によってZ軸方向に移動させられる。階段状ファントム301のZ軸方向への移動により、所定の基底物質の組み合わせがX線111の照射野404に配置される。一般的な被検者の断層画像を生成するために、照射野404は50cm程度の径を有するので、第1基底物質202も同程度の最大厚さを要する。また第2基底物質203は、最大厚さの第1基底物質202と同程度にX線を減弱させる厚さを要する。最大厚さ50cm程度の第1基底物質202を含む階段状ファントム301は、100kgを超える重量となり取り扱いが困難になり、較正データの取得に時間を要する。
【0021】
図4を用いて、階段状ファントム301とガントリ102の開口部112との関係について説明する。階段状ファントム301を照射野404に合わせて拡げると、階段状ファントム301は開口部112よりも大きくなり、開口部112を通過できない。すなわち階段状ファントム301は、重量だけでなく、大きさの面でも取り扱いが困難である。そこで実施例1では、ファントムを軽量化したり、小型化したりすることにより、較正データの取得に要する時間を短縮する。
【0022】
図5A図5Cを用いて、実施例1のファントムである楕円連結ファントム501について説明する。なお図5Aは楕円連結ファントム501の斜視図であり、図5Bは側面図、図5Cは正面図であって楕円連結ファントム501と開口部112との関係を説明する図である。
【0023】
楕円連結ファントム501は、第2基底物質203よりもX線に対する減弱係数が小さい第1基底物質202で形成され、照射野404と直交する方向、すなわちZ軸方向において段階的に厚さが変化する。またZ軸方向における楕円連結ファントム501の各段では、検出器パネル107の検出素子Pが配列される方向において、照射野404の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなる。
【0024】
より具体的には、楕円連結ファントム501は、長軸の長さが等しく、短軸の長さが異なる複数の楕円柱がZ軸方向に連結して形成される。なお複数の楕円柱のうちの一つは短軸と長軸の長さが等しい円柱であることが好ましい。図5Cに例示されるように楕円連結ファントム501は照射野404に納まる大きさであるので、取り扱いが困難な重量を有しておらず、較正データの取得に要する時間を短縮できる。また楕円柱は被検体106の形状に類似するため、被検体106で生じる散乱線の影響が較正データに含まれる。
【0025】
なおNが楕円柱の数、すなわちZ軸方向における段の数であるとき、Z軸方向の一方の端部からi番目の楕円柱の短軸の長さは長軸の長さのi/N倍であることが好ましい。i番目の楕円柱の短軸と長軸との比がi/Nであることにより、Z軸方向に隣接する楕円柱の間でのX線透過長の差異が略均等になるので、取得される較正データの扱いが容易になる。
【0026】
図6は、検出器パネル107の各チャネルにおける楕円連結ファントム501のX線透過長を示すグラフの一例である。図6に例示されるグラフは縦軸が規格化されたX線透過長であり、横軸が検出器パネル107のチャネルである。なお、楕円連結ファントム501は4つの楕円柱が連結して形成され、各楕円柱の短径と長径との比は、1/4、2/4、3/4、4/4である。また検出器パネル107は左右対称であるので横軸の左端を照射野404の中心に対応させ、縦軸は短径と長径との比が4/4である円柱の最大厚さである直径によって規格化される。図6に示されるように、Z軸方向に隣接する楕円柱の間でのX線透過長の差異は、検出器パネル107のほとんどのチャネルにおいて略均等であるので、楕円連結ファントム501を用いて取得される較正データは容易に扱うことができる。
【0027】
以上説明したように実施例1の楕円連結ファントム501は、取り扱いが困難な重量を有しておらず、較正データの取得に要する時間を短縮できる。またZ軸方向の一方の端部からi番目の楕円柱の短軸の長さが長軸の長さのi/N倍であると、取得される較正データの扱いが容易になる。なお楕円連結ファントム501を用いて取得される較正データは演算装置108の記憶部に記憶され、被検体106の投影データの較正に用いられる。
【実施例0028】
実施例1では、複数の楕円柱がZ軸方向に連結して形成される楕円連結ファントム501について説明した。実施例2では、照射野404におけるX線透過長が分配された厚さ、すなわち1以下の係数が乗じられた厚さを有する分配体がZ軸方向に連結して形成される分配体連結ファントムについて説明する。
【0029】
分配体連結ファントムは、楕円連結ファントム501と同様に、第1基底物質202で形成され、照射野404と直交する方向、すなわちZ軸方向において段階的に厚さが変化する。またZ軸方向における分配体連結ファントムの各段では、検出器パネル107の検出素子Pが配列される方向において、照射野404の中心からの距離が長くなるに連れて厚さが薄くなる。
【0030】
図7A図7Dを用いて、分配体連結ファントムについて説明する。なお図7Aは照射野404におけるX線透過長を説明する図であり、図7Bは分配体連結ファントムの一部である第1分配体701を、図7Cは第2分配体702を、図7Dは第3分配体703をそれぞれ説明する図である。
【0031】
図7Aに示されるように、照射野404におけるX線透過長は、検出器パネル107の検出素子毎に異なり、照射野404の中心を通るL0が最も長く、L1、L2のように中心から離れるに連れて短くなる。図7B図7Dに示される第1分配体701、第2分配体702、第3分配体703は、照射野404におけるX線透過長に1以下の係数が乗じられた厚さを有する。すなわち分配体連結ファントムは、楕円連結ファントム501と同様に、照射野404に納まる大きさであるので、取り扱いが困難な重量を有しておらず、較正データの取得に要する時間を短縮できる。また各分配体は被検体106の形状に類似するため、被検体106で生じる散乱線の影響が較正データに含まれる。
【0032】
なおNが分配体の数、すなわちZ軸方向における段の数であるとき、Z軸方向の一方の端部からi番目の分配体のX線透過長は照射野404におけるX線透過長のi/N倍であることが好ましい。例えば4つの分配体のうちの第1分配体701では照射野404の1/4倍のX線透過長、第2分配体702では2/4倍、第2分配体702では3/4倍が設定される。i番目の分配体のX線透過長と照射野404におけるX線透過長との比がi/Nであることにより、Z軸方向に隣接する分配体の間でのX線透過長の差異が検出器パネル107の全チャネルにおいて均等になるので、取得される較正データの扱いが容易になる。
【0033】
また各分配体のX線透過長は、X線の焦点710を通る照射野404の接線と照射野404との接点711を通る、X線の焦点710を中心とする円弧712を基準として設定されることが好ましい。より具体的には、円弧712の焦点710の側とその反対の側とのそれぞれに各分配体のX線透過長の半分の長さが設定されることが好ましい。各分配体のX線透過長が円弧712を基準として設定されることにより、各分配体のX線透過長がゼロになるチャネルが揃えられる。
【0034】
図8は、検出器パネル107の各チャネルにおける分配体連結ファントムのX線透過長を示すグラフの一例である。図8に例示されるグラフは、図6と同様に、縦軸が規格化されたX線透過長であり、横軸が検出器パネル107のチャネルである。なお、分配体連結ファントムは、第1分配体701、第2分配体702、第3分配体703と円柱が連結して形成され、各分配体のX線透過長は、照射野404の直径に等しい外径を有する円柱のX線透過長の1/4倍、2/4倍、3/4倍である。また検出器パネル107は左右対称であるので横軸の左端を照射野404の中心に対応させ、縦軸は円柱の最大厚さである直径によって規格化される。図8に示されるように、Z軸方向に隣接する各分配体の間でのX線透過長の差異は、検出器パネル107の全チャネルにおいて均等であり、X線透過長がゼロになるチャネルも揃えられる。その結果、分配体連結ファントムを用いて取得される較正データは容易に扱うことができる。
【0035】
以上説明したように実施例2の分配体連結ファントムは、取り扱いが困難な重量を有しておらず、較正データの取得に要する時間を短縮できる。またZ軸方向の一方の端部からi番目の分配体のX線透過長が照射野404のX線透過長のi/N倍であると、取得される較正データの扱いが容易になる。なお分配体連結ファントムを用いて取得される較正データは演算装置108の記憶部に記憶され、被検体106の投影データの較正に用いられる。
【0036】
実施例1の楕円連結ファントム501と実施例2の分配体連結ファントムは第1基底物質202で形成されるので、第2基底物質203で形成される第2基底物質ファントムと組み合わせられて、較正データの取得に用いられる。第1基底物質202と第2基底物質203が組み合わせて用いられるとき、両者は個別に駆動させられることが好ましい。
【0037】
図9を用いて、ファントムの駆動について説明する。図9では、第1基底物質202で形成される楕円連結ファントム501が支持部901を介して寝台105に取り付けられ、第2基底物質203で形成される第2基底物質ファントム902は駆動部402に取り付けられる。すなわち楕円連結ファントム501は寝台105の駆動により、また第2基底物質ファントム902は駆動部402の駆動により、個別にガントリ102の開口部112の中に移動させられて照射野404に配置される。楕円連結ファントム501と第2基底物質ファントム902が個別に移動させられることにより、階段状ファントム301に比べてZ軸方向の移動距離を短縮できる。
【0038】
図10を用いて、第2基底物質ファントム902の配置について説明する。第2基底物質203はX線に対する減弱係数が第1基底物質202よりも小さいので、楕円連結ファントム501よりも薄い厚さとなる。なお第2基底物質ファントム902は円柱を含まない分配体連結ファントムの形状であっても良い。第2基底物質ファントム902がX線管103により近づけられて配置される場合、X軸方向における第2基底物質ファントム902の大きさをより小さくすることができる。
【0039】
以上、本発明のファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法の実施例について説明した。なお、本発明のファントムおよび放射線撮像装置、光子計数型検出器の較正方法は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0040】
101:X線CT装置、102:ガントリ、103:X線管、104:ボウタイフィルタ、105:寝台、106:被検体、107:検出器パネル、108:演算装置、109:入力装置、110:表示装置、111:X線、112:開口部、201:基底物質の組み合わせ、202:第1基底物質、203:第2基底物質、204:較正データ、301:階段状ファントム、401:台車、402:駆動部、404:照射野、501:楕円連結ファントム、701:第1分配体、702:第2分配体、703:第3分配体、710:焦点、711:接点、712:円弧、901:支持部、902:第2基底物質ファントム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10