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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190310
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】波長変換部材および発光装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
G03B21/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098575
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋平
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA54
2K203FA62
2K203FB03
2K203GA20
2K203HA28
2K203LA12
2K203LA37
2K203MA12
(57)【要約】
【課題】蛍光体部の底面だけでなく側面から放熱させることができる波長変換部材を提供する。
【解決手段】波長変換部材23は蛍光体部62と、蛍光体部62の底面62a及び側面62bに設けられた金属接合層63と、蛍光体部62の底面62aと、側面62bの少なくとも一部と、を覆って、蛍光体部62を埋没させて収容する凹部61cを備えた金属放熱保持部61と、金属接合層63と金属放熱保持部61との間に設けられた金属多孔質接合材64と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体部と、
前記蛍光体部の底面及び側面に設けられた金属接合層と、
前記蛍光体部の前記底面と、前記側面の少なくとも一部と、を覆って、前記蛍光体部を埋没させて収容する凹部を備えた金属放熱保持部と、
前記金属接合層と前記金属放熱保持部との間に設けられた金属多孔質接合材と、を備えることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
請求項1に記載の波長変換部材であって、
前記側面の全体が前記金属多孔質接合材で覆われ、且つ、前記側面の全体が前記凹部に埋没されていることを特徴とする波長変換部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長変換部材であって、
前記金属放熱保持部の線膨張係数が15~18×10-6/℃であって、前記金属接合層の線膨張係数が14.7~24.7×10-6/℃であることを特徴とする波長変換部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波長変換部材であって、
前記金属多孔質接合材における単位体積を金属が占める割合が60%以上70%以下であることを特徴とする波長変換部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の波長変換部材、を備えることを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材および発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青色レーザー光を照射して黄色の光を反射する波長変換部材がプロジェクターに用いられる。波長変換部材は温度が高くなると変換効率が低下する。特許文献1に開示されている波長変換部材は放熱する金属放熱保持部としての放熱保持部を備える。青色レーザー光を照射された波長変換部材は放熱保持部に熱を伝導して、温度が上昇することを抑制する。
【0003】
蛍光体部はYAG(Yttrium Alminum Garnet)粉末を用いて作成されたセラミック素地を焼結して得られるセラミック蛍光体である。放熱保持部の材質はGaNやAlNである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-223869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
青色レーザー光の照射を間欠的に行うとき、蛍光体部の温度が変化する。特許文献1の波長変換部材では蛍光体部の熱膨張と放熱保持部の熱膨張とに差があることから、蛍光体部と側面と放熱保持部との間に隙間ができる。このため、蛍光体部の側面と放熱保持部との間が空くので熱が伝導され難い。蛍光体部の底面と放熱保持部とが接触して熱が伝導される。蛍光体部の底面からの放熱だけでは蛍光体部の冷却が不十分であり、蛍光体部の温度が上昇して、蛍光体部の波長変換効率が低下する。このため、蛍光体部の底面だけでなく側面から放熱させることができる波長変換部材が望まれていた。さらに、蛍光体部と放熱保持部とは線膨張係数が異なる為、温度変化により放熱保持部と蛍光体部とが相対的に伸縮して、放熱保持部と蛍光体部の底面との間に亀裂が生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
波長変換部材は、蛍光体部と、前記蛍光体部の底面及び側面に設けられた金属接合層と、前記蛍光体部の前記底面と、前記側面の少なくとも一部と、を覆って、前記蛍光体部を埋没させて収容する凹部を備えた金属放熱保持部と、前記金属接合層と前記金属放熱保持部との間に設けられた金属多孔質接合材と、を備える。
【0007】
発光装置は、上記に記載の波長変換部材、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態にかかわるプロジェクターの光学系を示す構成図。
図2】波長変換装置の構成を示す概略斜視図。
図3】波長変換装置の模式側断面図。
図4】波長変換装置の性能を説明するための図。
図5】第2実施形態にかかわる波長変換装置の模式側断面図。
図6】比較例にかかわる波長変換部材の模式側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1実施形態
本実施形態では、プロジェクターと、このプロジェクターに用いられる波長変換装置との特徴的な例について、図に従って説明する。プロジェクターはスクリーン上にカラー映像を表示する投写型画像表示装置である。
【0010】
図1は、プロジェクターの光学系を示す構成図である。図1に示すように、プロジェクター1は、発光装置としての第1照明装置2、第2照明装置3、色分離導光光学系4、赤色光変調装置5、緑色光変調装置6、青色光変調装置7、クロスダイクロイックプリズム8及び投写光学装置9を備える。赤色光変調装置5、緑色光変調装置6、青色光変調装置7はそれぞれ赤色光、緑色光、青色光の各色光に対応する光変調装置である。
【0011】
第1照明装置2は、第1光源11、コリメート光学系14、第1ダイクロイックミラー17、集光光学系18、波長変換装置22、第1レンズアレイ39、第2レンズアレイ41、偏光変換素子42及び重畳レンズ43を備える。
【0012】
第1光源11は半導体レーザーを備える。第1光源11は第1青色光12を射出する。第1青色光12は青色光のレーザー光であり、第1の波長を示す発光強度のピークの波長は約445nmである。尚、第1青色光12の波長は445nmに限らず、例えば、460nmでも良い。
【0013】
第1光源11の光軸を第1光軸11aとする。第1照明装置2が射出する第1青色光12の光軸を照明光軸13とする。第1光軸11aは照明光軸13と直交する。第1光源11が射出する第1青色光12はコリメート光学系14を照射する。コリメート光学系14は第1レンズ15及び第2レンズ16を備える。コリメート光学系14は第1青色光12を略平行にする。第1レンズ15及び第2レンズ16は凸レンズである。
【0014】
コリメート光学系14を通過する第1青色光12は第1ダイクロイックミラー17を照射する。第1ダイクロイックミラー17は第1光軸11a及び照明光軸13に対して45°の角度で交わる。第1ダイクロイックミラー17は第1青色光12を反射し、赤色光及び緑色光を含む黄色の蛍光を通過させる。
【0015】
第1ダイクロイックミラー17にて反射する第1青色光12は集光光学系18を照射する。集光光学系18は第3レンズ19及び第4レンズ21を備える。第3レンズ19及び第4レンズ21は凸レンズである。第1青色光12は集光光学系18を通過して波長変換装置22を照射する。
【0016】
波長変換装置22は波長変換部材23及びヒートシンク24を備える。波長変換部材23はヒートシンク24と接続される。ヒートシンク24は波長変換部材23を冷却する。
【0017】
第1ダイクロイックミラー17で反射した第1青色光12を集光光学系18が集光して波長変換部材23を照射する。波長変換装置22には第1青色光12が入射される。波長変換部材23は第1青色光12を黄色光27に変換して射出する。波長変換部材23が射出する黄色光27は集光光学系18を照射する。集光光学系18は黄色光27を略平行にする。このように、第1照明装置2は第1光源11、集光光学系18及び波長変換装置22を備える。
【0018】
集光光学系18及び第1ダイクロイックミラー17は照明光軸13に沿って配置される。黄色光27は集光光学系18及び第1ダイクロイックミラー17を通過する。
【0019】
第2照明装置3は図中第1照明装置2の右側に配置される。第2照明装置3は第2光源28、集光光学系29、散乱板31及びコリメート光学系32を備える。
【0020】
第2光源28は第1光源11と同じ半導体レーザーを備える。第2光源28は第2青色光33を射出する。第2光源28の光軸を第2光軸28aとする。第2青色光33は第2光軸28aに沿って集光光学系29、散乱板31及びコリメート光学系32をこの順に通過する。集光光学系29は第2青色光33を散乱板31付近に集光する。集光光学系29は第5レンズ34及び第6レンズ35を備える。第5レンズ34及び第6レンズ35は凸レンズである。
【0021】
散乱板31は第2青色光33を散乱する。散乱板31は第2青色光33の配光分布を波長変換部材23から射出される黄色光27の配光分布に似た配光分布にする。散乱板31には、例えば、光学ガラスからなる磨りガラスが用いられる。
【0022】
コリメート光学系32は散乱板31からの光を略平行化する。コリメート光学系32は第7レンズ36及び第8レンズ37を備える。第7レンズ36及び第8レンズ37は凸レンズからなる。
【0023】
コリメート光学系32を通過する第2青色光33は第1ダイクロイックミラー17で反射する。第2青色光33は第1ダイクロイックミラー17を透過した黄色光27と合成されて白色光38となる。
【0024】
照明光軸13に沿って第1レンズアレイ39、第2レンズアレイ41、偏光変換素子42及び重畳レンズ43がこの順に配置される。第1ダイクロイックミラー17で合成された白色光38は第1レンズアレイ39、第2レンズアレイ41、偏光変換素子42、重畳レンズ43の順に通過する。
【0025】
第1レンズアレイ39は白色光38を複数の部分光束に分割する。第1レンズアレイ39は複数の第1小レンズ39aを有する。複数の第1小レンズ39aは照明光軸13と直交する面内にマトリックス状に配列される。
【0026】
第2レンズアレイ41及び重畳レンズ43は第1レンズアレイ39の各第1小レンズ39aが形成する像を赤色光変調装置5、緑色光変調装置6、青色光変調装置7の画像形成領域近傍に結像させる。第2レンズアレイ41は複数の第2小レンズ41aを有する。複数の第2小レンズ41aは照明光軸13に直交する面内にマトリックス状に配列されている。複数の第2小レンズ41aは複数の第1小レンズ39aに対応して配置される。
【0027】
第1レンズアレイ39により分割された各部分光束を偏光変換素子42が直線偏光光に変換する。偏光変換素子42は偏光分離層、反射層及び位相差板を有する。偏光分離層は白色光38を構成する黄色光27に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分をそのまま透過させるとともに他方の直線偏光成分を反射層に向けて反射させる。反射層は偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸13と平行な方向に反射する。位相差板は反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する。
【0028】
重畳レンズ43は、偏光変換素子42からの各部分光束を集光して赤色光変調装置5、緑色光変調装置6及び青色光変調装置7の画像形成領域近傍で互いに重畳させる。第1レンズアレイ39、第2レンズアレイ41及び重畳レンズ43は、白色光38を構成する黄色光27の面内光強度分布を均一にするインテグレーター光学系を構成する。重畳レンズ43を通過した白色光38は色分離導光光学系4に入力される。
【0029】
色分離導光光学系4は、第2ダイクロイックミラー44、第3ダイクロイックミラー45、第1反射ミラー46、第2反射ミラー47、第3反射ミラー48、第1リレーレンズ49及び第2リレーレンズ51を備える。重畳レンズ43を通過した白色光38を色分離導光光学系4が赤色光52、緑色光53及び第3青色光54に分離する。色分離導光光学系4は赤色光52を赤色光変調装置5へ、緑色光53を緑色光変調装置6へ、第3青色光54を青色光変調装置7へそれぞれ導光する。
【0030】
色分離導光光学系4と赤色光変調装置5との間には第1フィールドレンズ55が配置される。色分離導光光学系4と緑色光変調装置6との間には第2フィールドレンズ56が配置される。色分離導光光学系4と青色光変調装置7との間には第3フィールドレンズ57が配置される。
【0031】
第2ダイクロイックミラー44は赤色光52を通過させ、緑色光53及び第3青色光54を反射するダイクロイックミラーである。第3ダイクロイックミラー45は緑色光53を反射して、第3青色光54を通過させるダイクロイックミラーである。第1反射ミラー46は赤色光52を反射する反射ミラーである。第2反射ミラー47及び第3反射ミラー48は第3青色光54を反射する反射ミラーである。
【0032】
第2ダイクロイックミラー44を通過した赤色光52は第1反射ミラー46で反射され、第1フィールドレンズ55を通過して赤色光52用の赤色光変調装置5の画像形成領域に入射する。
【0033】
第2ダイクロイックミラー44で反射された緑色光53は第3ダイクロイックミラー45でさらに反射され、第2フィールドレンズ56を通過して緑色光53用の緑色光変調装置6の画像形成領域に入射する。
【0034】
第2ダイクロイックミラー44で反射された第3青色光54は第3ダイクロイックミラー45を通過する。第3ダイクロイックミラー45を通過した第3青色光54は第1リレーレンズ49、第2反射ミラー47、第2リレーレンズ51、射出側の第3反射ミラー48、第3フィールドレンズ57を経て第3青色光54用の青色光変調装置7の画像形成領域に入射する。
【0035】
赤色光変調装置5、緑色光変調装置6及び青色光変調装置7は入射された各色光を画像情報に応じて変調して各色光に対応する画像光を形成する。赤色光変調装置5は波長変換装置22で波長変換された黄色光27に含まれる赤色光52を画像情報に応じて変調することにより画像光を形成する。緑色光変調装置6は波長変換装置22で波長変換された黄色光27に含まれる緑色光53を画像情報に応じて変調することにより画像光を形成する。青色光変調装置7は第2光源28から射出された第2青色光33に対応する第3青色光54を画像情報に応じて変調することにより画像光を形成する。
【0036】
尚、図示を省略したが、第1フィールドレンズ55と赤色光変調装置5との間には入射側偏光板が配置される。赤色光変調装置5とクロスダイクロイックプリズム8との間には射出側偏光板が配置される。同様に、第2フィールドレンズ56と緑色光変調装置6との間には入射側偏光板が配置される。緑色光変調装置6とクロスダイクロイックプリズム8との間には射出側偏光板が配置される。第3フィールドレンズ57と青色光変調装置7との間には入射側偏光板が配置される。青色光変調装置7とクロスダイクロイックプリズム8との間には射出側偏光板が配置される。
【0037】
クロスダイクロイックプリズム8は赤色光変調装置5、緑色光変調装置6及び青色光変調装置7から射出された各画像光を合成してカラーの画像光を形成する光学素子である。クロスダイクロイックプリズム8は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。
【0038】
赤色の画像光は赤色光変調装置5からクロスダイクロイックプリズム8へ進行する。緑色の画像光は緑色光変調装置6からクロスダイクロイックプリズム8へ進行する。青色の画像光は青色光変調装置7からクロスダイクロイックプリズム8へ進行する。各色の画像光はクロスダイクロイックプリズム8にて合成されてカラーの画像光になる。
【0039】
クロスダイクロイックプリズム8から射出されたカラーの画像光を投写光学装置9がスクリーン58に拡大投写する。スクリーン58上にはカラーの画像が形成される。
【0040】
このように、プロジェクター1は第1照明装置2、第2照明装置3、色分離導光光学系4、赤色光変調装置5、緑色光変調装置6、青色光変調装置7及び投写光学装置9を備える。
【0041】
図2に示しめすように、波長変換装置22のヒートシンク24には板状のフィン24aが複数配置される。波長変換部材23は金属放熱保持部61を備える。金属放熱保持部61は平面形状が長方形の板である。金属放熱保持部61のヒートシンク24側の面が裏面61bであり、裏面61bの逆側が表面61aである。裏面61bはヒートシンク24と密着しており、金属放熱保持部61の熱はヒートシンク24に伝導し易くなっている。金属放熱保持部61及びヒートシンク24は熱伝導性の良い材質であれば良く特に限定されない。本実施形態では、例えば、金属放熱保持部61に銅または銅合金を用いている。ヒートシンク24にはアルミニウムを用いている。
【0042】
波長変換部材23は金属放熱保持部61の表面61aの中央に蛍光体部62を備える。蛍光体部62は第1青色光12によって励起されて第2の波長帯の黄色光27を射出する。蛍光体部62に第1青色光12が入射する面は黄色光27が射出される射出面でもある。黄色光27は赤色光及び緑色光を含む黄色の光である。蛍光体部62は、例えば、YAG系蛍光体である(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ceを含有する。
【0043】
図3図2のAA線に沿う断面図である。図3に示すように、金属放熱保持部61は凹部61cを備える。凹部61cは蛍光体部62の底面62aと、側面62bの少なくとも一部と、を覆って、蛍光体部62を埋没させて収容する。図に示すように、凹部61cは蛍光体部62の側面62bをすべて埋没させても良い。凹部61cは蛍光体部62の側面62bの一部を埋没させても良い。
【0044】
蛍光体部62の底面62a及び側面62bには金属接合層63が設けられる。金属接合層63と金属放熱保持部61との間には金属多孔質接合材64が設けられる。金属接合層63は金属多孔質接合材64を蛍光体部62と接合させるために設けられる。金属多孔質接合材64は多孔質構造になっている。多孔質構造はポーラス構造ともいう。
【0045】
このため、金属多孔質接合材64は蛍光体部62と直接接合し難い。従って、蛍光体部62の底面62a及び側面62bに金属多孔質接合材64を設けるとき、金属多孔質接合材64と蛍光体部62とがはがれる可能性がある。金属接合層63と金属多孔質接合材64との配置を入れ替えることは好ましくない。
【0046】
金属接合層63は蛍光体部62と接合し易い材質が好ましい。金属接合層63及び金属多孔質接合材64は熱伝導性の良い材質であれば良い。本実施形態では、例えば、金属接合層63及び金属多孔質接合材64の主原料に銀を用いている。金属接合層63と金属多孔質接合材64との結合は金属結合になっている。
【0047】
蛍光体部62に第1青色光12が照射されるとき、蛍光体部62は発熱して熱源となる。蛍光体部62の熱は蛍光体部62の底面62a及び側面62bから金属接合層63及び金属多孔質接合材64を伝わって凹部61cに伝導する。金属放熱保持部61の熱はヒートシンク24に伝導する。ヒートシンク24に伝導した熱はフィン24aにより空冷される。
【0048】
この構成によれば、金属放熱保持部61と蛍光体部62に設けられた金属接合層63との間に多孔質構造を有する金属多孔質接合材64が設けられる。金属放熱保持部61と蛍光体部62とは線膨張係数が異なる。金属多孔質接合材64は変形し易い為、温度変化により金属放熱保持部61と蛍光体部62とが相対的に伸縮しても、金属放熱保持部61と蛍光体部62との間で亀裂が生じることを抑制できる。
【0049】
蛍光体部62の底面62a及び側面62bと金属放熱保持部61との間に金属多孔質接合材64が配置される。金属多孔質接合材64は熱伝導性が良い。従って、蛍光体部62の底面62aだけでなく側面62bから、蛍光体部62の熱を放熱させることができる。
【0050】
金属接合層63と金属多孔質接合材64とは金属結合されている。従って、金属接合層63と金属多孔質接合材64とが樹脂等の接着剤で接着するときに比べて、効率良く熱伝導させることができる。さらに、接着剤による接着固定に比べて、金属結合は強固に結合される。従って、金属接合層63と金属多孔質接合材64とがはがれることを抑制できる。
【0051】
波長変換部材23では蛍光体部62の側面62bの全体が金属多孔質接合材64で覆われ、且つ、蛍光体部62の側面62bの全体が金属放熱保持部61の凹部61cに埋没されている。
【0052】
この構成によれば、蛍光体部62の側面62bの全体が金属多孔質接合材64で覆われている。従って、蛍光体部62の側面62bの全体から金属多孔質接合材64に熱を伝導させることができる。蛍光体部62の側面62bの全体が金属放熱保持部61の凹部61cに埋没されている。従って、金属放熱保持部61の凹部61cに埋没されていないときに比べて、金属多孔質接合材64から金属放熱保持部61に効率良く熱を伝導させることができる。
【0053】
金属放熱保持部61の線膨張係数が15~18×10-6/℃であって、金属接合層63の線膨張係数が14.7~24.7×10-6/℃である。この構成によれば、金属放熱保持部61の線膨張係数と金属接合層63の線膨張係数との差が小さい。従って、温度変化が生じても金属放熱保持部61と金属接合層63との間の応力が緩和され亀裂の発生を抑制できる。
【0054】
金属多孔質接合材64における単位体積を金属が占める割合が60%以上70%以下である。この構成によれば、金属多孔質接合材64における単位体積を金属が占める割合が60%以上であるので、金属多孔質接合材64は効率良く熱伝導することができる。さらに、強度不足により金属多孔質接合材64に亀裂が入ることを抑制できる。金属多孔質接合材64における単位体積を金属が占める割合が70%以下であるので、熱の変動があっても蛍光体部62と金属放熱保持部61との膨張差により生ずる応力を緩和することができる。
【0055】
第1照明装置2は波長変換部材23を備える。この構成によれば、第1照明装置2が備える波長変換部材23は蛍光体部62の底面62aだけでなく側面62bから、放熱させることができる。波長変換部材23は温度を低く維持することにより効率良く波長を変換できる。従って、第1照明装置2は効率良く波長を変換できる波長変換部材23を備えた装置とすることができる。波長変換部材23は金属放熱保持部61と蛍光体部62との間で亀裂が生じることを抑制できる。従って、第1照明装置2は長期信頼性の高い波長変換部材23を備える装置とすることができる。
【0056】
各部材の寸法は特に限定されない。本実施形態では、例えば、蛍光体部62の厚みが30μm~80μmである。金属接合層63の厚みは0.1μm~0.4μmである。金属多孔質接合材64の厚みは40μm~80μmである。金属放熱保持部61の厚みは2mm~5mmである。
【0057】
次に、波長変換部材23の製造方法を説明する。蛍光体部62の底面62a及び側面62bに金属接合層63が形成される。銀を蒸発材料として用い、蛍光体部62に銀を蒸着して金属接合層63が形成される。金属接合層63の成膜には真空蒸着装置が用いられる。他にも、金属接合層63の成膜にはスパッタ装置が用いられても良い。
【0058】
金属放熱保持部61に凹部61cが形成される。凹部61cはミーリング加工等の切削加工にて形成されても良い。他にも、凹部61cは放電加工にて形成されても良い。次に、凹部61cに銀粒子とワックス等のバインダーを混成した混成物が塗布される。次に、凹部61cに蛍光体部62が配置される。混成物は蛍光体部62の金属接合層63と金属放熱保持部61とに挟まれる。
【0059】
蛍光体部62が配置された金属放熱保持部61をオーブンにて加熱する。バインダーが除去され、銀粒子が焼結される。その結果、金属接合層63と金属放熱保持部61との間に金属多孔質接合材64が形成される。金属接合層63、金属多孔質接合材64及び金属放熱保持部61は金属結合により結合される。
【0060】
従来例の1つとして、熱伝導性のある粒子を焼成して形成した多孔質に熱硬化性樹脂を含侵させる方法がある。従来例の多孔質は金属多孔質接合材64に対応する。樹脂を含侵させた多孔質を蛍光体部62と凹部61cのない金属放熱保持部61とで挟んで加熱することにより、樹脂が硬化される。この方法により多孔質を蛍光体部62と凹部61cのない金属放熱保持部61とが挟む構造が形成される。多孔質と蛍光体部62との間に金属の反射層が設置されることもある。多孔質と金属放熱保持部61との間に金属の反射層が設置されることもある。しかし、従来例の構造の波長変換部材は本発明の金属接合層63、金属多孔質接合材64及び金属放熱保持部61が金属結合された波長変換部材23とは異なる構造である。熱硬化性樹脂により多孔質と蛍光体部62及び凹部61cのない金属放熱保持部61が接着される。従来例の構造は樹脂が介在するため、本実施形態の金属結合と比べて熱伝導が低く、結合強度も小さい。
【0061】
図6に示す比較例の波長変換部材65は比較例の金属放熱保持部66上に蛍光体部62を備える。蛍光体部62の底面62aに金属接合層63が形成される。金属接合層63と比較例の金属放熱保持部66との間に金属多孔質接合材64が設けられる。蛍光体部62の側面62bは空中に露出する。
【0062】
本実施形態の波長変換部材23の蛍光体部62及び比較例の波長変換部材65の蛍光体部62に300Wのレーザー光を照射するシミュレーションをしたときの蛍光体部62の温度を図4に示す。シミュレーションの設定条件は次の通りである。レーザー光の照射範囲は縦2.45mm、横2.45mmである。蛍光体部62の大きさは縦3.5mm、横3.5mm、高さ120μmである。金属接合層63の厚みは0.3μmである。金属多孔質接合材64の厚みは120μmである。金属放熱保持部61及び比較例の金属放熱保持部66の大きさは縦8mm、横8mm、厚み2mmである。
【0063】
シミュレーションのモデルでは金属放熱保持部61及び比較例の波長変換部材65の比較例の金属放熱保持部66とヒートシンク24との間にはそれぞれ図示しない銅板が配置される。銅板の大きさは縦30mm、横30mm、厚み3mmである。ヒートシンク24はアルミ板である。アルミ板の大きさは縦60mm、横60mm、厚み5mmである。
【0064】
図4に示すように、比較例の波長変換部材65の蛍光体部62は204.5℃となった。本実施形態の波長変換部材23の蛍光体部62は194.5℃となった。従って、本実施形態の波長変換部材23の構造にすることにより比較例と比べて蛍光体部62の温度を10℃下げることができた。
【0065】
比較例の波長変換部材65の発光効率は44%であった。本実施形態の波長変換部材23の発光効率は46.75%であった。従って、本実施形態の波長変換部材23の構造にすることにより比較例と比べて蛍光体部62の発光効率を2.75%向上させることができた。
【0066】
第2実施形態
本実施形態が第1実施形態と異なるところは、波長変換部材23がヒートシンク24に相当する部材に埋まっている点にある。尚、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0067】
図5に示すように、波長変換装置71はヒートシンク72を備える。ヒートシンク72は第1実施形態のヒートシンク24に相当する。ヒートシンク72は凹部72aを備える。凹部72aの大きさは金属放熱保持部61と略同じである。金属放熱保持部61はヒートシンク72の凹部72aに挿入される。
【0068】
金属放熱保持部61の裏面61bは凹部72aの底面72bと接触する。金属放熱保持部61が保有する熱の一部は金属放熱保持部61の裏面61bから凹部72aの底面72bを通ってヒートシンク72に伝導する。
【0069】
金属放熱保持部61の側面61dは凹部72aの側面72cと接触する。金属放熱保持部61が保有する熱の一部は金属放熱保持部61の側面61dから凹部72aの側面72cを通ってヒートシンク72に伝導する。従って、金属放熱保持部61の裏面61bだけがヒートシンク72と接触するときに比べて波長変換装置71は効率良く金属放熱保持部61からヒートシンク72へ熱伝導させることができる。ヒートシンク72の凹部72aと金属放熱保持部61との間の隙間には放熱用シリコン、ナノダイヤモンドグリス等の熱伝導の良いペーストを配置しても良い。さらに、効率良く放熱することができる。
【符号の説明】
【0070】
2…発光装置としての第1照明装置、23…波長変換部材、61…金属放熱保持部、61c…凹部、62…蛍光体部、62a…底面、62b…側面、63…金属接合層、64…金属多孔質接合材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6