(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190315
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】媒体供給装置および記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
B65H3/06 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098580
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 貴典
(72)【発明者】
【氏名】山谷 啓介
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB04
3F343FC17
3F343GA03
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JA05
3F343JA07
3F343JA12
3F343KB04
3F343LA04
3F343LA15
3F343LA16
3F343LC11
(57)【要約】
【課題】ローラー痕の発生を抑える媒体供給装置および記録装置を提供すること。
【解決手段】媒体供給装置100は、単票紙SPが積層されて載置される単票紙収容部110と、載置された単票紙SPの上面に接触して回転することにより単票紙SPを給送する給送ローラー132と、を備え、給送ローラー132は、回転方向R1において単票紙SPに対して接触する接触部At,Bt,Ctと、接触しない非接触部Ah,Bh,Chと、を有し、接触部At,Bt,Ctと非接触部Ah,Bh,Chとは、X方向に沿って複数設けられ、X方向において隣り合う接触部At,Bt,Ctは、回転方向R1における位相がずれている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が積層されて載置される積載部と、
載置された前記媒体の上面に接触して回転することにより前記媒体を給送する給送ローラーと、を備え、
前記給送ローラーは、回転方向において前記媒体に対して接触する接触部と、接触しない非接触部と、を有し、
前記接触部と前記非接触部とは、前記給送ローラーの回転軸の延在方向である第1方向に沿って複数設けられ、
前記第1方向において隣り合う前記接触部は、前記回転方向における位相がずれていることを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
前記給送ローラーが1回転する間に、前記第1方向に沿って配置される複数の前記接触部のいずれかが前記媒体に給送力を付与することを特徴とする、請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項3】
前記給送ローラーは、前記積載部に載置された前記媒体の前記第1方向における中央部に配置され、
前記給送ローラーの前記第1方向における中心位置を含み、前記第1方向と直交する面に対して、複数の前記接触部は面対称に配置されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の媒体供給装置。
【請求項4】
前記給送ローラーは、前記中心位置に設けられる第1の接触部、および前記第1の接触部の両方の外側に、少なくとも1組の第2の接触部を有し、
前記第1の接触部の前記第1方向における幅は、前記1組の前記第2の接触部の前記第1方向における幅の和に等しいことを特徴とする、請求項3に記載の媒体供給装置。
【請求項5】
前記給送ローラーは、前記第1方向に沿って配置される複数の分割給送ローラーから成り、
前記第1方向において隣り合う前記分割給送ローラーでは、前記接触部の位相が互いにずれていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の媒体供給装置。
【請求項6】
前記給送ローラーは、前記回転方向に沿う複数の前記接触部と、複数の前記非接触部と、を有し、
前記回転方向において、前記接触部と前記非接触部とは交互に配置されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の媒体供給装置。
【請求項7】
前記給送ローラーの下流側に分離ローラーが配置され、前記分離ローラーの下流側に搬送ローラーが配置され、
前記給送ローラーによる前記媒体の給送に応じて、前記搬送ローラーによる前記媒体の搬送が開始されると、前記給送ローラーは、前記媒体と接触した状態から離間した状態へと変位することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の媒体供給装置。
【請求項8】
媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部に向けて前記媒体を供給する媒体供給部と、
前記媒体を前記媒体供給部から前記記録部に搬送する搬送経路と、を備え、
前記媒体供給部は、
前記媒体が載置される積載部と、
積載された前記媒体の上面に接触して回転することで前記媒体を給送する給送ローラーと、を有し、
前記給送ローラーは、回転方向において前記媒体に対して接触する接触部と、接触しない非接触部と、を有し、
前記接触部と前記非接触部とは、前記給送ローラーの回転軸の延在方向である第1方向に沿って複数設けられ、
前記第1方向において隣り合う前記接触部は、前記回転方向における位相がずれていることを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体供給装置および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層された紙などの媒体を1枚ずつ給送する給送ローラーを備えた媒体供給装置が知られていた。例えば、特許文献1には、紙を取り出すピックアップローラーと、最も上の紙を分離して搬送路に繰り出すセパレートローラーと、を備えた自動原稿搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、ピックアップローラーのローラー痕が媒体に発生し易いという課題があった。詳しくは、上記装置は、給送ローラーとして寸胴な略円柱形のピックアップローラーを採用する。このような寸胴のピックアップローラーの場合、ピックアップローラーの回転軸の延在方向における両端部位置が強く媒体を押圧する傾向にある。
【0005】
該ピックアップローラーは、積層された紙を押圧しながら、自身が接する最も上の紙である1枚目の紙を給送する。このとき、1枚目の紙と1枚目の紙の下にある2枚目の紙とがピックアップローラーに押圧されて、特に端部位置が強く擦れる。1枚目の紙は押圧されながらも搬送されるのに対して、2枚目の紙は搬送されずに留まる。そのため、2枚目の紙の押圧された端部位置にローラー痕が発生し易かった。すなわち、給送ローラーによるローラー痕の発生を抑える媒体供給装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
媒体供給装置は、媒体が積層されて載置される積載部と、載置された前記媒体の上面に接触して回転することにより前記媒体を給送する給送ローラーと、を備え、前記給送ローラーは、回転方向において前記媒体に対して接触する接触部と、接触しない非接触部と、を有し、前記接触部と前記非接触部とは、前記給送ローラーの回転軸の延在方向である第1方向に沿って複数設けられ、前記第1方向において隣り合う前記接触部は、前記回転方向における位相がずれていることを特徴とする。
【0007】
記録装置は、媒体に記録を行う記録部と、前記記録部に向けて前記媒体を供給する媒体供給部と、前記媒体を前記媒体供給部から前記記録部に搬送する搬送経路と、を備え、前記媒体供給部は、前記媒体が載置される積載部と、積載された前記媒体の上面に接触して回転することで前記媒体を給送する給送ローラーと、を有し、前記給送ローラーは、回転方向において前記媒体に対して接触する接触部と、接触しない非接触部と、を有し、前記接触部と前記非接触部とは、前記給送ローラーの回転軸の延在方向である第1方向に沿って複数設けられ、前記第1方向において隣り合う前記接触部は、前記回転方向における位相がずれていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る媒体供給装置を含む記録装置の外観を示す斜視図。
【
図2】前方が開放された状態の記録装置の外観を示す斜視図。
【
図3】媒体供給装置および記録装置の内部構成を示す模式断面図。
【
図4】媒体供給装置および搬送経路を含む筐体の外観を示す斜視図。
【
図5】第2カバーが解放された状態の筐体の外観を示す斜視図。
【
図6】第2カバーの開放によって露出する内部の構成を示す拡大図。
【
図8】
図7における線分A-Aを含み、YZ平面に沿う断面図。
【
図9】第1カバーの開放によって露出する内部の構成を示す拡大図。
【
図10】第1ローラーユニットの構成を示す斜視図。
【
図13】分割給送ローラーの別の形態を示す側面図。
【
図15】給送ローラーと単票紙収容部に載置される単票紙との配置を示す模式図。
【
図16】紙戻しレバーおよび第2搬送経路部材の配置を示す斜視図。
【
図17】トレーセット時の紙戻しレバーの状態を示す模式図。
【
図18】トレー引き出し途上における紙戻しレバーの状態を示す模式図。
【
図20】給送ローラー退避時の配置を示す模式側面図。
【
図21】給送ローラー給送時の配置を示す模式側面図。
【
図23】第1ローラーユニットの脱着に係る作動を示す模式図。
【
図24】第1ローラーユニットが取り外された状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、単票紙を供給する媒体供給装置を例示する。該媒体供給装置は、例えば、ロール紙および単票紙の媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録装置であるインクジェット式のプリンターに含まれる。以下、本実施形態に係る媒体供給装置100、および媒体供給装置100を含む記録装置11の構成について図面を参照して説明する。
【0010】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Y軸は記録装置11の前後方向に沿い、記録装置11の+Y方向を前方とする。X軸は記録装置11の左右方向に沿い、記録装置11の+X方向を右方とする。また、X軸に沿う方向である+X方向および-X方向を総称して、単にX方向ということもある。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって記録装置11の+Z方向を下方とする。
【0011】
1.記録装置
図1から
図3に示すように、記録装置11は、媒体供給部としての媒体供給装置100、記録部20、および搬送経路109を備える。媒体供給装置100は、記録部20に向けて媒体である単票紙SPを供給する。搬送経路109は、媒体供給装置100から記録部20に単票紙SPを搬送する。記録部20は、ロール紙RPおよび単票紙SPの両方に対して記録を行う。
【0012】
なお、単票紙SPが本発明の媒体の一例であるが、以降の説明ではロール紙RPも含めて媒体ということもある。単票紙SPおよびロール紙RPは、紙であることに限定されず、例えば、紙の表面にコート層を設けたものや樹脂フィルムなどであってもよい。
【0013】
媒体供給装置100は、積載部としての単票紙収容部110を有する。単票紙収容部110には、単票紙SPが積層されて載置される。媒体供給装置100は記録装置11の下方に位置する。
【0014】
記録装置11は、直方体状の筐体12、および記録装置11の各部を支持する本体フレーム16を有する。筐体12の内部には、ロール紙収容部40および記録部20が配置される。ロール紙収容部40にはロール紙RPが収容される。ロール紙収容部40は、記録部20の下方に位置する。ここで、ロール紙収容部40または単票紙収容部110に対して、遠ざかる方向を下流、近付く方向を上流ということもある。
【0015】
記録部20は、媒体に向かってインクを吐出するノズル23を有するヘッド22と、ヘッド22を搭載するキャリッジ21と、X軸に沿って配置されたガイドレール24とを備える。記録部20は、キャリッジ21をガイドレール24に沿って往復移動させる移動機構を備える。
【0016】
ヘッド22と対向して、媒体を支持する支持部25が設けられる。ヘッド22は、キャリッジ21と共に、媒体の紙幅方向であるX軸に沿う方向に往復移動しならインクを吐出して、支持部25に支持された媒体に記録を行う。本実施形態では、記録部20として、ヘッド22が紙幅方向に往復移動するシリアルヘッド方式を例示するが、これに限定されない。記録部20は、ヘッドが紙幅方向に延在して固定配列されたラインヘッド方式であってもよい。
【0017】
筐体12内の上部には、媒体が搬送される媒体搬送路30と、記録部20で記録された媒体を切断可能な切断部27とが設けられる。媒体搬送路30は、支持部25よりも上流に設けられる供給路30aおよび反転路30bと、支持部25よりも下流に設けられる排出路30cとを有する。供給路30aは、ロール紙RPが供給されるロール紙供給路30Rと、単票紙SPが供給される単票紙供給路30Sとを有する。
【0018】
供給路30aは、ロール紙供給路30Rから支持部25までを結ぶ経路である。供給路30aの上流には、ロール紙供給路30Rと合流するロール紙合流点P2が設けられる。供給路30aの下流には、媒体を下流から上流に搬送させる際に供給路30aから反転路30bに分岐する分岐点P1が設けられる。反転路30bは、分岐点P1からロール紙合流点P2までを結ぶ経路である。供給路30aにおけるロール紙合流点P2と分岐点P1との間には、単票紙供給路30Sと合流する単票紙合流点P3が設けられる。
【0019】
筐体12の前面には、記録された媒体が排出される排出口14が設けられる。なお、筐体12の前面とは、筐体12の前方に面する面である。排出路30cは、支持部25から排出口14までを結ぶ経路である。排出路30cの途中には、記録部20で記録された媒体を切断する切断部27が設けられる。
【0020】
切断部27は、可動刃28および固定刃29を有する。可動刃28は、媒体の紙幅方向であるX軸に沿う方向に往復移動する。固定刃29は、紙幅方向に延在して固定される。可動刃28は排出路30cの上方に設けられ、固定刃29は排出路30cの下方に設けられる。可動刃28が固定刃29に対して当接しながら紙幅方向に移動することにより、例えば、ロール状態から巻き解かれたロール紙RPや余白部などが切断される。切断部27の下方には切断屑収容部80が配置される。切断屑収容部80は、切断部27による媒体の切断で生じる切断屑を収容する。
【0021】
媒体搬送路30には、媒体搬送路30に供給される媒体を搬送する搬送部31が設けられる。搬送部31は、供給路30aに上流から順に、中間ローラー32、中間ローラー32の外周に複数設けられる従動ローラー33、および上流搬送ローラー対34を有する。従動ローラー33は、回転自在に設けられ、中間ローラー32との間に媒体を挟んで従動回転する。搬送部31は、排出路30cに上流から順に、下流搬送ローラー対35、第1ローラー対36、および第2ローラー対37を有する。第1ローラー対36は切断部27の上流に位置し、第2ローラー対37は切断部27の下流に位置する。
【0022】
中間ローラー32、従動ローラー33、上流搬送ローラー対34、下流搬送ローラー対35、第1ローラー対36、および第2ローラー対37は、媒体を挟んだ状態で回転することにより媒体を搬送する。搬送部31が正回転駆動されることにより、媒体が上流から下流へ搬送される。搬送部31が逆回転駆動されることにより、媒体が下流から上流へ搬送される。
【0023】
記録装置11は、搬送部31を正回転駆動して媒体を上流から下流に搬送しつつ、支持部25に位置する媒体に対して記録部20からインクを吐出して媒体の第1面に記録する。記録装置11は、媒体の第1面の裏面である第2面にも記録が可能である。
【0024】
記録装置11は、搬送部31を逆回転駆動して第1面に記録された後の媒体を下流から上流に搬送する。媒体は、分岐点P1から反転路30bを経由し供給路30aの上流に達する。記録装置11が再び搬送部31を正回転駆動して、媒体が中間ローラー32の外周を1回転することにより、媒体の表裏が反転する。記録装置11は、媒体を上流から下流に搬送しつつ、支持部25に位置する媒体に対して記録部20からインクを吐出して媒体の第2面に記録を行う。これにより、媒体の両面に記録が実行される。媒体がロール状態から巻き解かれたロール紙RPである場合には、表面に記録された後、切断部27で単票紙に切断されてから裏面の記録が実行される。
【0025】
図3に示すように、筐体12内において、記録部20の下方には、ロール紙収容部40が設けられる。ロール紙収容部40は本体フレーム16に支持される。ロール紙収容部40では、X軸に沿って配置される支軸41によって、ロール紙RPが回転可能に支持される。すなわち、ロール紙RPは、ロール紙収容部40により、支軸41とともに支軸41を回転中心として回転可能に支持される。ロール紙収容部40には、ロール状態から巻き解かれるロール紙RPをロール紙供給路30Rに向かって搬送するロール紙搬送路50が設けられる。
【0026】
ロール紙搬送路50では、ロール紙RPが、支軸41に支持されたロール紙RP本体の前側から下方に向かって巻き解かれて引き出される。そして、引き出されたロール紙RPは、後方に屈曲されて、ロール紙RP本体の下側および後側を回り込み、ロール紙RP本体よりも上方のロール紙供給路30Rまで搬送される。
【0027】
ロール紙搬送路50は、ロール紙RP本体の前斜め下方に、ほぼ直角に曲がる屈曲部50aを有する。ロール紙搬送路50における屈曲部50aの直ぐ下流側には、ロール紙RPの曲がり癖を矯正するデカール機構51が設けられる。
【0028】
デカール機構51は、第1デカールローラー52、第2デカールローラー53、固定曲面部54、および第1デカールローラー52を移動させる移動装置55を備える。ロール紙RPは、第1デカールローラー52と固定曲面部54との間、および第1デカールローラー52と第2デカールローラー53との間を通って下流側へ搬送される。
【0029】
ロール紙搬送路50において、デカール機構51よりも下流側には、ロール紙RPに搬送力を付与する複数のロール紙搬送ローラー対56が設けられる。ロール紙搬送ローラー対56が回転駆動されると、ロール紙RPがロール紙供給路30Rに搬送される。なお、搬送力とは、媒体を下流へ搬送する力をいう。
【0030】
図2に示すように、ロール紙収容部40は、ロール紙RPの収容または交換の際に、筐体12の前面に形成された開口部13を通じて記録装置11の前方に開放される。ロール紙収容部40は、図示しない本体フレーム16に対して、記録装置11の前方に引き出し式に移動可能である。
【0031】
切断屑収容部80は、ロール紙収容部40の前方に位置し、本体フレーム16に着脱可能に設けられる。切断屑収容部80の下側には、引き出し式のロール紙収容部40の前板部42が露出する。切断屑収容部80は、筐体12への取り付け時に開口部13を覆う外壁81を有する。
【0032】
2.媒体供給装置
図2および
図3に示すように、媒体供給装置100および搬送経路109は、-X方向からの側面視にて略L字状の筐体102に収容される。筐体102は、媒体供給装置100および搬送経路109の各部を支持する給送フレーム106を有する。媒体供給装置100の下流側に搬送経路109が設けられる。
【0033】
媒体供給装置100は、積載部である単票紙収容部110、給送ローラー132、分離ローラー133、およびリタードローラー143を有する。給送ローラー132は、単票紙収容部110に載置された最も上方の単票紙SPの上面に接触して、回転することにより単票紙SPを給送する。
【0034】
給送ローラー132の下流側に、分離ローラー133およびリタードローラー143が配置される。分離ローラー133およびリタードローラー143の下流側には、搬送ローラーである単票紙駆動ローラー123,125を含む搬送経路109が配置される。単票紙駆動ローラー123,125は、1つずつ対を成し、複数の対が設けられる。
【0035】
単票紙収容部110に積載された単票紙SPは、単票紙駆動ローラー123,125によって単票紙供給路30Sに向けて搬送される。単票紙収容部110はロール紙収容部40の下方に位置し、搬送経路109はロール紙収容部40の前後方向における後方に位置する。
【0036】
単票紙収容部110は、前面に筐体102の一部をなす前板部112を備える。単票紙収容部110は、単票紙SPが収容されるボックス状のトレー111を有する。トレー111は、1対のエッジガイド115、ストッパー114、およびホッパー113を備える。1対のエッジガイド115は単票紙SPを幅方向に位置決めする。ストッパー114は単票紙SPを前後方向に位置決めする。ホッパー113は、トレー111に収容された単票紙SPの下流側の端部を給送ローラー132に付勢する。
【0037】
単票紙収容部110は給送フレーム106に支持される。単票紙収容部110は、単票紙SPを収容する際に、筐体102に形成された開口部103を通じて記録装置11の前方に開放される。単票紙収容部110は、給送フレーム106に対して、記録装置11の前方に引き出されるように移動が可能である。
【0038】
媒体供給装置100は、単票紙SPを搬送する給送ローラー132、リタードローラー143、および分離ローラー133を有する。
【0039】
給送ローラー132は、単票紙収容部110に収容された単票紙SPの下流側端部の上方に位置する。給送ローラー132は、積層された単票紙SPのうち、最も上方の単票紙SPの上面に接触した状態で回転する。これにより、最も上方の単票紙SPが取り出されて給送される。リタードローラー143および分離ローラー133は、給送ローラー132の下流にあって、上下方向に対向して設けられる。リタードローラー143および分離ローラー133は、給送ローラー132によって単票紙収容部110から送り出された単票紙SPを挟み込んだ状態で回転する。これによって、単票紙SPが搬送経路109に向かって送り出される。
【0040】
分離ローラー133は、単票紙SPに対して、給送ローラー132が接触する面と同一の上面に接触する。リタードローラー143は、該上面の反対側の下面に接触する。リタードローラー143は、分離ローラー133の下方に位置する。リタードローラー143は、分離ローラー133に向けて押圧され、分離ローラー133の回転に伴って従動回転する。リタードローラー143は、単票紙SPに対する摩擦係数が分離ローラー133よりも大きい。そして、分離ローラー133およびリタードローラー143は、上記摩擦係数の差によって単票紙SPを一枚ずつに分離して搬送する。
【0041】
搬送経路109は、単票紙収容部110から後方に搬送された単票紙SPを上方に向かって屈曲させる屈曲搬送経路109aを有する。屈曲搬送経路109aは、第1搬送経路部材107と第2搬送経路部材108との間に設けられる。第1搬送経路部材107と第2搬送経路部材108とは対向して配置される。第2搬送経路部材108は単票紙SPの下面を支持する。
【0042】
図4および
図5に示すように、媒体供給装置100は、筐体102の背面を覆う第2カバー120を備える。第2カバー120は、図示を省略するが、下端にX軸に沿った回転軸を有し、該回転軸によって筐体102の下部に回動可能に接続される。第2カバー120が閉じられた状態において、第2カバー120の外壁121は、筐体102の一部を成し、第2カバー120の内壁122に沿って搬送経路109が構成される。
【0043】
第2カバー120が開かれた状態では、搬送経路109が開放される。内壁122に沿う搬送経路109には、それぞれ複数の単票紙駆動ローラー123,125が配置される。複数の単票紙駆動ローラー125の各々に1つの単票紙駆動ローラー123が対応し、単票紙駆動ローラー125と単票紙駆動ローラー123とは対を成す。本実施形態では、搬送経路109に5対の単票紙駆動ローラー123,125が配置される。
【0044】
単票紙駆動ローラー125は、単票紙SPに搬送力を付与する。単票紙駆動ローラー123は、単票紙駆動ローラー125に対して、単票紙SPを介して従動回転する。単票紙駆動ローラー123および単票紙駆動ローラー125の対は、搬送経路109に適宜間隔を置いて設けられる。単票紙駆動ローラー125が回転駆動されることにより、単票紙SPが下方から上方に向かって搬送される。
【0045】
図示を省略するが、複数の単票紙駆動ローラー125には増速機構が備わる。該増速機構では、単票紙SPの搬送速度が下流に向かって増速される。これにより、単票紙SPが下流側へ引かれ気味に搬送されるため、媒体詰まりの発生を抑えることができる。増速機構としては、複数の単票紙駆動ローラー125において、駆動されるギアの比の変更、ローラー径の変更などが挙げられる。
【0046】
具体的には、ギア比の変更では、例えば、1つの駆動源から複数の単票紙駆動ローラー125を順次駆動させる構成として、各単票紙駆動ローラー125が駆動されるギアの比を下流側に向かって小さくする。また、単票紙駆動ローラー125のローラー径を下流側に向かって小さくする。
【0047】
図6から
図8に示すように、第2搬送経路部材108には、第2ローラーユニット140が着脱可能に取り付けられる。第2ローラーユニット140は、リタードローラー143と、リタードローラー143を保持する第2保持部としての第1カバー141とを有する。第1カバー141は、リタードローラー143を支持する枠部142を備える。
【0048】
第1カバー141は、第2カバー120に覆われ、第2カバー120が開かれた状態で筐体102の後方に開放される。第1カバー141は、第2ローラーユニット140が第2搬送経路部材108に取り付けられると、第2搬送経路部材108と一体になって屈曲搬送経路109aを形成する。第1カバー141のX軸に沿う方向の両側には、第2搬送経路部材108と係合する係合部145が設けられる。係合部145の係合が解除されると、第1カバー141が開かれた状態となる。
【0049】
本実施形態において、第1カバー141が開かれた状態は、リタードローラー143を保持する第1カバー141が第2搬送経路部材108に対して取り外された状態でもある。具体的には、第2ローラーユニット140は、係合部145の係合が解除された状態で、第2搬送経路部材108から取り外される。これにより、第2搬送経路部材108に対して、第2ローラーユニット140に含まれる第1カバー141およびリタードローラー143を取り外すことが可能となる。
【0050】
枠部142は、第2搬送経路部材108に取り付けられた状態において上方に開放される枠状部材である。枠部142は、リタードローラー143のX軸に沿う回転軸143aの両端を回転可能に支持する。枠部142はX軸に沿う回動軸142aを有する。回動軸142aの両端は、第1カバー141に回動可能に保持される。
【0051】
また、枠部142は、下方に付勢する付勢部材144を介して第1カバー141に接続される。-X方向からの側面視にて、リタードローラー143の回転軸143aは枠部142の回動軸142aよりも+Y方向に位置し、付勢部材144の接続位置は枠部142の回動軸142aよりも-Y方向に位置する。これにより、リタードローラー143は、第1カバー141が閉じられた状態において、リタードローラー143上方の分離ローラー133に向けて押圧される。
【0052】
図9に示すように、第1搬送経路部材107には、第1ローラーユニット130が着脱可能に取り付けられる。第1ローラーユニット130は、第1搬送経路部材107に設けられた操作部154を操作することにより取り外しが可能になる。操作部154は、第1搬送経路部材107の第1ローラーユニット130上方に配置される。第1ローラーユニット130の脱着については後述する。
【0053】
図10に示すように、第1ローラーユニット130は、給送ローラー132、分離ローラー133、および第1保持部131を有する。第1保持部131は、給送ローラー132および分離ローラー133を保持する。
【0054】
第1保持部131は、第1搬送経路部材107に取り付けられた状態において、下方に開放する枠状部材である。第1保持部131は、給送ローラー132のX軸に沿う回転軸132xの両端を回転可能に保持する。回転軸132xは、給送ローラー132に駆動力を伝達する第2歯車132gを備える。
【0055】
第1保持部131は、分離ローラー133のX軸に沿う回転軸133xの両端を回転可能に保持する。回転軸133xは、分離ローラー133に駆動力を伝達する第3歯車133bを備える。分離ローラー133は、給送ローラー132に対して-Y方向に配置される。本実施形態では、第1ローラーユニット130が、給送ローラー132の前方および分離ローラー133の後方に2つの補助ローラー134を備えた構成を例示する。
【0056】
第1保持部131は、第2歯車132gおよび第3歯車133bと噛み合う第1歯車135を備える。第3歯車133bの回転中心には、給送ローラー132および分離ローラー133を回転させる駆動力を受ける凹部133aが設けられる。第3歯車133bが回転することにより分離ローラー133が回転駆動される。また、第3歯車133bの回転は、第1歯車135を介して第2歯車132gへ伝達され、第2歯車132gおよび回転軸132xを介して給送ローラー132が回転駆動される。
【0057】
単票紙SPが給送される際に、給送ローラー132は回転方向R1へ正回転する。給送ローラー132が回転方向R1に回転することによって、上述した単票紙収容部110に載置された単票紙SPに給送力が付与されて、単票紙SPが下流へ給送される。ここで、給送力とは、単票紙SPを単票紙収容部110から下流へ送り出す力をいう。
【0058】
給送ローラー132の正回転に対応して、第3歯車133bを介して分離ローラー133も回転駆動される。第1保持部131の-Y方向の後端には、図示しない係合部が設けられる。該係合部は、第1ローラーユニット130が第1搬送経路部材107に装着される際に、第1搬送経路部材107と係合する。
【0059】
図11に示すように、給送ローラー132は、複数の分割給送ローラー132c1,132b1,132a,132b2,132c2がこの順番にて、第1方向である+X方向に沿って配置されて成る。給送ローラー132は、回転方向R1において、図示しない単票紙SPに対して接触する接触部At,Bt,Ctと、接触しない非接触部Ah,Bh,Chと、を有する。接触部Atおよび非接触部Ahは分割給送ローラー132aに含まれる。接触部Btおよび非接触部Bhは、分割給送ローラー132b1,132b2の各々に含まれる。接触部Ctおよび非接触部Chは、分割給送ローラー132c1,132c2の各々に含まれる。
【0060】
接触部At,Bt,Ctは、-X方向からの側面視にて、回転軸132xを中心とする放射方向において非接触部Ah,Bh,Chに対して突出する部位である。これにより、給送ローラー132が回転軸132xにおいて回転すると、接触部At,Bt,Ctが単票紙SPと接触して給送力が単票紙SPに付与される。接触部At,Bt,Ctおよび非接触部Ah,Bh,Chは、例えば、ゴムなどの弾性を有する材料から成る。
【0061】
なお、
図11では、図示の便宜上、分割給送ローラー132b1の接触部Btおよび非接触部Bhと、分割給送ローラー132c2の接触部Ctおよび非接触部Chの図示を省略している。
【0062】
給送ローラー132の回転軸132xの延在方向であるX方向に沿って、複数の接触部である接触部At,Bt,Ctと複数の非接触部である非接触部Ah,Bh,Chが設けられる。X方向において隣り合う接触部は、回転方向R1において位相がずれている。
【0063】
詳しくは、上述の隣り合う接触部とは、接触部Atと接触部Btとであり、接触部Btと接触部Ctとである。-X方向からの側面視にて、接触部Atと接触部Btと、接触部Btと接触部Ctと、は各々約60度の角度で位相がずれて配置される。なお、接触部Atと接触部Ctとは、X方向において隣り合わないが、-X方向からの側面視にて、約60度の角度で位相がずれて配置される。これにより、接触部At,Bt,Ctは、単票紙SPに対して同時に接触することなく、給送ローラー132の回転に応じて各々が個別に接触する。
【0064】
なお、分割給送ローラー132b1の接触部Btと、分割給送ローラー132b2の接触部Btとは、回転方向R1における位相が一致する。また、分割給送ローラー132c1の接触部Ctと、分割給送ローラー132c2の接触部Ctとは、回転方向R1における位相が一致する。
【0065】
回転方向R1において、接触部At,Bt,Ctの位相がずれて配置されるため、給送ローラー132が1回転する間に、X方向に沿って配置される複数の接触部At,Bt,Ctのいずれかが単票紙SPに接触して給送力が付与される。これにより、複数の接触部At,Bt,Ctが代わる代わる単票紙SPに給送力を付与するため、給送力のばらつきを低減することができる。
【0066】
給送ローラー132は、分割給送ローラー132a,132b1,132b2,132c1,132c2の各々の部材を組み立てて成る。そのため、X方向に沿う複数の接触部At,Bt,Ctが形成し易くなり、給送ローラー132を容易に製造することができる。また、複数の分割給送ローラー132a,132b1,132b2,132c1,132c2において、配置変更や位相の調整を行うことができる。
【0067】
図12に示すように、分割給送ローラー132aは、回転方向R1に沿う2個の接触部Atと、図示しない2個の非接触部Ahとを有する。分割給送ローラー132b1,132b2の各々は、2個の接触部Btと、図示しない2個の非接触部Bhとを有する。分割給送ローラー132c1,132c2の各々は、2個の接触部Ctと、2個の非接触部Chとを有する。回転方向R1において、接触部Atと非接触部Ahと、接触部Btと非接触部Bhと、および接触部Ctと非接触部Chとは、各々交互に配置される。
【0068】
これにより、給送ローラー132が1回転する間に、各接触部At,Bt,Ctが単票紙SPと2回ずつ接触する。そのため、少ない数の分割給送ローラーで効率よく単票紙SPに給送力を付与することができる。
【0069】
-X方向から側面視した場合に、回転方向R1において、接触部At,Bt,Ctの位相は互いに約60°ずれている。回転方向R1において、接触部Atと接触部Btとの間、接触部Btと接触部Ctとの間、および接触部Ctと接触部Atとの間には、各々間隙が存在する。これに対して、給送時の給送ローラー132には、上述したホッパー113によって単票紙SPが押圧される。また、給送ローラー132の接触部At,Bt,Ctは弾性部材によって形成されるため、押圧によって変形し易い。これらのことから、上記間隙が存在しても、給送ローラー132が単票紙SPと接触して給送力が途切れずに付与される。これに加えて、間隙が存在することによって、例えば、隣り合う接触部At,Btの双方が単票紙SPに当接する場合と、接触部At,Btとがそれぞれ単独で単票紙SPに当接する場合と、で発生する媒体への給送力の付与の状態の変化を抑えることができる。
【0070】
分割給送ローラー132a,132b1,132b2,132c1,132c2の側面形状は、上述した形態に限定されない。上記側面形状は、例えば、楕円形や接触部が1個のカム形であってもよい。また、分割給送ローラー132aの別の形態として、
図13の分割給送ローラー132sが例示できる。分割給送ローラー132sは、3個の接触部Stと3個の非接触部Shを有し、-X方向からの側面視にて、接触部Stと非接触部Shとが交互に配置される。分割給送ローラー132sを複数個含む給送ローラー132を用いても良い。
【0071】
このように、分割給送ローラー132a,132b1,132b2,132c1,132c2では、接触部および非接触部の数は上記に限定されない。なお、給送ローラー132は、5個の分割給送ローラー132a,132b1,132b2,132c1,132c2から成ることに限定されない。また、給送ローラー132は、上述した接触部At,Bt,Ctおよび非接触部Ah,Bh,Chを備えていれば一体に形成されてもよい。
【0072】
図11および
図14に示すように、給送ローラー132では、給送ローラー132のX方向における中心位置CPを含み、X方向と直交する面SFに対して、複数の接触部At,Bt,Ctは面対称に配置される。また、
図15に示すように、給送ローラー132は、媒体供給装置100において、図示しない単票紙収容部110に載置された単票紙SPのX方向における中央部、且つ-Y方向の端部に配置される。これにより、X方向において、単票紙SPに付与される給送力のばらつきを低減して、斜行搬送の発生を抑えることができる。
【0073】
図11および
図14に戻り、給送ローラー132は、中心位置CPに設けられる第1の接触部である接触部At、および接触部Atの両方の外側に、1組の第2の接触部として1組の接触部Btを有する。さらに、接触部Btの両方の外側に、2組目の第2の接触部である1組の接触部Ctも有する。接触部AtのX方向における幅、すなわち分割給送ローラー132aの幅aは、1組の接触部BtのX方向における幅の和、すなわち分割給送ローラー132b1の幅b1と分割給送ローラー132b2の幅b2との和に等しい。また、分割給送ローラー132aの幅aは、1組の接触部CtのX方向における幅の和、すなわち分割給送ローラー132c1の幅c1と分割給送ローラー132c2の幅c2との和にも等しい。
【0074】
これによれば、単票紙SPに対して、接触部Atによる接触面積と、1組の接触部Btによる合計の接触面積、および1組の接触部Ctによる合計の接触面積と、が揃えられる。そのため、接触部Atによる給送力と、1組の接触部Btによる給送力、および1組の接触部Ctによる給送力と、が揃い、給送方向における給送力のばらつきを低減することができる。なお、第1の接触部である接触部Atの外側に設けられる1組の第2の接触部は、上述した2組であることに限定されない。第2の接触部は少なくとも1組設けられればよい。
【0075】
図2に示した通り、記録装置11では単票紙収容部110をトレー111ごと+Y方向に引き出すことが可能である。トレー111を引き出すことにより、単票紙収容部110に単票紙SPを補充することが可能となる。
【0076】
図16に示すように、記録装置11には紙戻しレバー211が備わる。紙戻しレバー211は、図示を省略するが、単票紙SPを単票紙収容部110に戻す機能を有する。紙戻しレバー211および後述する構成は、単票紙収容部110が前方に引き出されて解放される際に、第2搬送経路部材108上に残る単票紙SPを単票紙収容部110に戻す機能を有する。
【0077】
紙戻しレバー211は、リタードローラー143の-X方向に配置される。紙戻しレバー211に対応する第2搬送経路部材108には切り欠きが設けられる。
【0078】
図17に示すように、紙戻しレバー211は、上方の先端部211H、当接部211T、および下方の支点部211Sを備える。紙戻しレバー211は、X軸に沿う回転軸である支点部211Sにて、図示しない給送フレーム106に回動可能に支持される。紙戻しレバー211では、+X方向からの側面視にて、支点部211Sを回転中心として先端部211Hが反時計回りに弧を描いて作動する。
【0079】
紙戻しレバー211には、ねじりバネ212が接続される。ねじりバネ212は、紙戻しレバー211を略+Y方向に付勢する。トレー111が記録装置11にセットされると、トレー111の凸部111Tが紙戻しレバー211の当接部211Tに当接して、紙戻しレバー211が-Y方向に付勢される。このとき、凸部111Tによる付勢がねじりバネ212による付勢に勝るため、紙戻しレバー211は-Y方向へ倒れた状態となる。
【0080】
図18に示すように、トレー111が引き出されて前方である+Y方向に移動すると、凸部111Tと当接部211Tとが離れる。そのため、ねじりバネ212の付勢によって、紙戻しレバー211が+Y方向へ起き上がる。これにより、先端部211Hは、第2搬送経路部材108の上方に突出する弧を描いて反時計回りに運動する。このとき、第2搬送経路部材108に単票紙SPが存在すると、先端部211Hの運動によってトレー111の図示しない単票紙収容部110に単票紙SPが戻される。なお、
図18では、単票紙SPが戻される位置よりさらにトレー111が+Y方向に引き出された状態を示している。
【0081】
これらにより、トレー111の引き出しと連動して、第2搬送経路部材108に残存する単票紙SPが単票紙収容部110に戻される。そのため、トレー111の挿抜によって、第2搬送経路部材108の周辺での単票紙SPの詰まりや破損を防ぐことができる。
【0082】
媒体供給装置100は、給送ローラー132の退避機能を備える。該退避機能では、給送ローラー132による単票紙SPの給送に応じて、搬送ローラーである単票紙駆動ローラー123,125による単票紙SPの搬送が開始されると、給送ローラー132は、単票紙SPと接触した状態から離間した状態へと変位する。
【0083】
図19に示すように、給送ローラー132の退避機能は工程S11から工程S15を有する。給送ローラー132は、単票紙SPに対して、単票紙SPを給送する間のみ接触し、それ以外では離間して-Z方向である上方に退避する。給送ローラー132の退避状態の配置を
図20に示す。給送ローラー132の給送状態の配置を
図21に示す。
【0084】
工程S11では、情報機器などの印刷指示により単票紙SPの給送が開始される。単票紙SPの給送は、単票紙SPの有無をセンサーによって検出し、単票紙収容部110に単票紙SPがあることを条件に開始されてもよい。そして工程S12へ進む。
【0085】
工程S12では、単票紙SPが給送される。上記印刷指示により、給送ローラー132および分離ローラー133に正回転の駆動力が伝達されると、給送ローラー132は
図20の退避状態から
図21の給送状態へ移行する。つまり、給送ローラー132が+Z方向へ移動して単票紙SPと接触し、上述した回転方向R1へ正回転する。このとき、分離ローラー133、および図示しない単票紙駆動ローラー125も同方向へ正回転する。これにより、単票紙SPは、単票紙収容部110から下流へ送り出される。そして工程S13へ進む。
【0086】
工程S13では、上述した搬送経路109の最も上流側の単票紙駆動ローラー125へ、単票紙SPが到達したか否かが判定される。単票紙SPの到達は、搬送経路109に設けられるセンサーにて検知される。単票紙SPが到達した場合には工程S14へ進む。単票紙SPが到達しない場合には、工程S12へ戻って給送を継続する。
【0087】
工程S14では、給送完了処理が実施される。具体的には、給送ローラー132および分離ローラー133への駆動力の伝達が停止される。これに対して、単票紙駆動ローラー125は正回転を続けて単票紙SPを下流へ搬送し続ける。そして工程S15へ進む。
【0088】
工程S15では、給送ローラー132の退避が実行される。詳しくは、給送ローラー132および分離ローラー133へ逆回転の駆動力が伝達される。分離ローラー133は逆回転の駆動力では駆動されない。給送ローラー132では、逆回転の駆動力により付属するトルクリミッターが作動する。そのため、給送ローラー132は、分離ローラー133の図示しない回転軸133xを回転軸として、+X方向からの側面視にて時計回りに移動する。これにより、給送ローラー132は、略上方へ退避移動して単票紙SPと離間する。このとき、単票紙駆動ローラー125は正回転を続ける。
【0089】
なお、給送ローラー132および分離ローラー133の駆動源と、単票紙駆動ローラー125の駆動源とを共用してもよい。この場合に、単票紙駆動ローラー125には、駆動源の回転方向によらず、常に正回転するデュアルワンウェイ機構を採用する。駆動源には電動モーターなどが採用される。
【0090】
このように、給送ローラー132は、必要に応じて単票紙SPと接触して給送力を付与する一方で、給送力が不要の場合には単票紙SPと接触しない。そのため、単票紙SPと給送ローラー132との接触時間が削減されて、給送ローラー132によるローラー痕の発生をさらに抑えることができる。
【0091】
図22に示すように、操作部154は、第1ローラーユニット130の上方に設けられる。操作部154は、-Y方向からの側面視にて略矩形の押しボタンである。操作部154は、後述する第1ローラーユニット130の脱着機構に含まれる。
【0092】
図23に示すように、第1ローラーユニット130の脱着機構は、操作部154、レバー部221、およびスライド部231を含む。図示を省略するが、操作部154は、バネ部材およびガイド部を介して、Y軸に沿う方向へ往復移動可能に給送フレーム106に支持される。該バネ部材は、操作部154が押し込まれた後に、押し込まれる前の位置に操作部154を戻すよう付勢する。上記ガイド部は、操作部154のY軸に沿う移動を案内する。操作部154は、給送フレーム106に対して、Y軸に沿う方向に上記押しボタンのストローク分の移動が可能である。操作部154は、+X方向に突出して設けられた突出部154aを有する。
【0093】
レバー部221は、回転軸221xにて約45°回動可能に、図示しない給送フレーム106に支持される。レバー部221は、アーム部221a,221bを有する。アーム部221aは、操作部154の突出部154aに対応して、-X方向に突出して設けられる。アーム部221bは、スライド部231に対応して、略+X方向に突出して設けられる。
【0094】
スライド部231は、給送フレーム106に対して、X軸に沿う方向に移動可能に支持される。スライド部231は、図示しないバネ部材によって-X方向に付勢されている。図示を省略するが、スライド部231は、駆動源から上述した凹部133aへ駆動力を伝達するクラッチ部に機械的に接続される。スライド部231が+X方向へ移動することにより、クラッチ部が凹部133aと離間する。
【0095】
第1ローラーユニット130を取り外す場合には、操作部154を+Y方向に押し込む。操作部154と共に突出部154aが+Y方向へ移動する。すると、突出部154aとアーム部221aとが当接して、レバー部221に+Y方向の力が掛る。上記+Y方向の力はレバー部221を時計回りに回動させる。レバー部221が回動することにより、アーム部221bとスライド部231とが当接して、スライド部231が押されて+X方向へ移動する。そして、クラッチ部と凹部133aとが離間して、第1ローラーユニット130が取り外し可能となる。これにより、
図24に示すように第1ローラーユニット130を取り外すことが可能となる。
【0096】
クラッチ部は、常に第1ローラーユニット130側に付勢されているため、第1ローラーユニット130を取り付けた際に、クラッチ部と凹部133aとの嵌合が不完全であっても、駆動源を回転駆動させることにより、クラッチ部と凹部133aとを自動的に嵌合させることができる。以上により、簡便な操作で第1ローラーユニット130を脱着、交換することができる。
【0097】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0098】
媒体である単票紙SPに対して、給送ローラー132によるローラー痕の発生を抑えることができる。詳しくは、給送ローラー132は、接触部At,Bt,Ctと非接触部Ah,Bh,Chとを有し、回転によって単票紙SPとの接触と非接触とを繰り返す。また複数の接触部At,Bt,Ctは、X方向に沿って回転方向R1における位相がずれた状態で配置される。そのため、給送ローラー132が回転すると、複数の接触部At,Bt,Ctのいずれかが単票紙SPと接触して給送が始まる。次いで、当該接触部と単票紙SPとが離間すると、他の接触部が単票紙SPと接触して給送が進行する。
【0099】
このように、単票紙SPの給送は、複数の接触部At,Bt,Ctが代わる代わる接触と離間とを繰り返して成される。したがって、ローラー痕が発生し易かった2枚目の単票紙SPにおいて、給送ローラー132の押圧が、例えば、給送ローラー132の回転軸132xの延在方向における両端部位置に集中せずに分散される。これと共に、押圧される領域が逐次変わってローラー痕の発生が抑制される。これにより、給送ローラー132によるローラー痕の発生を抑える媒体供給装置100および記録装置11を提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
11…記録装置、20…記録部、100…媒体供給部としての媒体供給装置、109…搬送経路、110…積載部としての単票紙収容部、125…搬送ローラーとしての単票紙駆動ローラー、132…給送ローラー、132a,132b1,132b2,132c1,132c2…分割給送ローラー、132x…給送ローラー132の回転軸、133…分離ローラー、a…第1の接触部の第1方向における幅、b1,b2…1組の第2の接触部の第1方向における幅、At,Bt,Ct…接触部、Ah,Bh,Ch…非接触部、CP…中心位置、R1…回転方向、SF…第1方向と直交する面、SP…媒体としての単票紙。