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特開2022-190318緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置
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  • 特開-緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置 図1
  • 特開-緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置 図2
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  • 特開-緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置 図9A
  • 特開-緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置 図9B
  • 特開-緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置 図9C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190318
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/08 20060101AFI20221219BHJP
   G21F 5/10 20060101ALI20221219BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G21F5/08
G21F5/10 N
G21C19/32 110
G21C19/32 100
G21C19/32 060
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098584
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翼
(72)【発明者】
【氏名】北田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】三井 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】會田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】野末 貴大
(72)【発明者】
【氏名】中河 良太
(57)【要約】
【課題】緩衝体の本体に使用される緩衝材の温度上昇を簡易的に抑制する。
【解決手段】緩衝体は、架台に設置可能な放射性物質収納容器に取り付けられ、本体と、第1異方性伝熱材とを備える。本体は、放射性物質収納容器の端部に係合可能な凹部を有する。第1異方性伝熱材は、本体の凹部の少なくとも一部を覆うように設けられ、面内方向の熱伝導率が面外方向の熱伝導率より大きく構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に設置可能な放射性物質収納容器に取り付けられる緩衝体であって、
前記放射性物質収納容器の端部に係合可能な凹部を有する本体と、
前記凹部の少なくとも一部を覆うように設けられ、面内方向の熱伝導率が面外方向の熱伝導率より大きい第1異方性伝熱材と、
を備える、緩衝体。
【請求項2】
前記第1異方性伝熱材は、前記凹部から前記本体のうち前記凹部に係合する前記放射性物質収納容器の前記端部とは対向しない放熱部に至るまで延在する、請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記本体は、外殻によって囲まれる緩衝材を有し、
前記第1異方性伝熱材は、面内方向における熱伝導率が前記外殻の熱伝導率より大きい、請求項1又は2に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記第1異方性伝熱材は、前記放熱部において、前記外殻と面接触するように構成される、請求項3に記載の緩衝体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の緩衝体と、
前記緩衝体が取り付けられた放射性物質収納容器を設置可能な架台と、
を備える、放射性物質収納容器の貯蔵装置。
【請求項6】
面外方向における熱伝導率が面内方向における熱伝導率より大きく、前記架台に搭載された前記放射性物質収納容器の外表面を少なくとも部分的に覆う第2異方性伝熱材を備える、請求項5に記載の放射性物質収納容器の貯蔵装置。
【請求項7】
前記第2異方性伝熱材は、前記放射性物質収納容器の外表面の全体を覆う、請求項6に記載の放射性物質収納容器の貯蔵装置。
【請求項8】
前記第2異方性伝熱材は、前記放射性物質収納容器の外表面のうち前記緩衝体が取り付けられた前記端部を含む領域に部分的に設けられる、請求項6に記載の放射性物質収納容器の貯蔵装置。
【請求項9】
前記放射性物質収納容器と前記架台との間に設けられた放熱部材を更に備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の放射性物質収納容器の貯蔵装置。
【請求項10】
前記放熱部材は、発泡金属を含む、請求項9に記載の放射性物質収納容器の貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉などで取り扱われる放射性物質(例えば使用済核燃料など)を収納するための容器として、いわゆるキャスクと称される放射性物質収納容器が知られている。放射性物質収納容器は、放射性物質を外部に対して良好な遮蔽性を有するために重厚な本体胴を有する。このような放射性物質収納容器は重量物であるため、移動の際には、例えば、本体胴の外側に突出する円筒形状の構造物(例えばトラニオン)にクレーンなどの搬送装置を係合することで吊下げ搬送がなされる。
【0003】
放射性物質収納容器は、搬送時の落下や外部との接触等により衝撃を受けた場合に、衝撃を緩和するための緩衝体が容器本体に取り付けられることがある。この種の緩衝体は、例えば木材のような緩衝性を有する材料を含んで構成される。例えば特許文献1には、緩衝体の一例として多孔質材料から構成された緩衝体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-4831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の緩衝体は、主に搬送時の衝撃を緩和するために容器本体に取り付けられるため、従来、搬送が完了して貯蔵位置に設置される際には容器本体から取り外されることが多い。これに対して、貯蔵中の地震時における落下や転倒、外部との接触等による衝撃を緩和するため、緩衝体を容器本体に取り付けた状態で貯蔵を行いたいというニーズがある。この場合、長期にわたって容器本体に緩衝体が取り付けられるため、容器に収納された放射性物質で発生した熱が緩衝体に伝わり、緩衝体を構成する緩衝材の強度が低下してしまうおそれがある。このような緩衝材の強度低下を防止するためには、緩衝体への伝熱を抑制することが考えられるが、放射性物質収納容器から緩衝体への伝熱を抑制すると、放射性物質収納容器からの放熱を妨げることとなり、放射性物質収納容器や収納する放射性物質(使用済核燃料など)の温度上昇をもたらしてしまう。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、緩衝体の本体に使用される緩衝材の温度上昇を簡易的に抑制可能な緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る緩衝体は、上記課題を解決するために、
架台に設置可能な放射性物質収納容器に取り付けられる緩衝体であって、
前記放射性物質収納容器の端部に係合可能な凹部を有する本体と、
前記凹部の少なくとも一部を覆うように設けられ、面内方向の熱伝導率が面外方向の熱伝導率より大きい第1異方性伝熱材と、
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る放射性物質収納容器の貯蔵装置は、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る緩衝体と、
前記緩衝体が取り付けられた放射性物質収納容器を設置可能な架台と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、緩衝体の本体に使用される緩衝材の温度上昇を簡易的に抑制可能な緩衝体、及び、放射性物質収納容器の貯蔵装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の少なくとも一実施形態に係る緩衝体が取り付けられる放射性物質収納容器の縦断面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】一実施形態に係る貯蔵装置を放射性物質収納容器とともに側方から示す模式図である。
図4図3の貯蔵装置を放射性物質収納容器の軸方向から透過的に示す模式図である。
図5図3の緩衝体の近傍の拡大図である。
図6図3の他の実施形態を示す図である。
図7図3の他の実施形態を示す図である。
図8図3の他の実施形態を示す図である。
図9A図8の放熱部材の他の態様である。
図9B図8の放熱部材の他の態様である。
図9C図8の放熱部材の他の態様である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
図1は、本開示の少なくとも一実施形態に係る緩衝体が取り付けられる放射性物質収納容器200の縦断面図であり、図2図1のA-A線断面図である。
【0013】
放射性物質収納容器200は、放射性物質(例えば、使用済燃料集合体)を収納可能な本体胴210を有する。本体胴210は、上部に開口部212を有するとともに、下部に底部(閉塞部)214が形成された有底円筒形状を有する。本体胴210は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製、合金鋼製の鍛造品で形成されるが、ステンレス鋼を用いてもよいし、球状黒鉛鋳鉄や炭素鋼鋳鋼などの鋳造品を用いてもよい。
【0014】
本体胴210の内部に設けられたキャビティ216には、バスケット218が配置されている。バスケット218は、図2に示されるように、板状部材を格子状に組み合わせることにより、複数の放射性物質を個々に収納するための複数のセルである放射性物質収納部218Aを区画形成している。
尚、キャビティ216の内周面とバスケット218の外周との間に生じた隙間には、熱伝達が可能な中空のスペーサ(不図示)が配置されている。
【0015】
本体胴210の開口部212は、そのフランジ面に蓋部219が取り付けられることにより閉塞されている。蓋部219は、γ線を遮蔽するステンレス鋼又は炭素鋼からなる円盤形状を有しており、その内部にはレジン(中性子遮蔽体)が封入されていてもよい。
【0016】
蓋部219は、例えばステンレス鋼製又は炭素鋼製のボルト(不図示)によって本体胴210の上端部に着脱自在に取付けられている。この場合、蓋部219と本体胴210との間には、それぞれ不図示の金属ガスケットが介装され、内部の密封性が確保されている。
【0017】
本体胴210の外周側には所定の隙間を介して外筒220が配設されている。本体胴210の外周面と外筒220の内周面との間には、図2に示されるように、熱伝達を行うための銅製の伝熱フィン222が所定間隔をおいて複数設けられている。そして本体胴210、外筒220及び伝熱フィン222によって区画された空間には、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するボロン又はボロン化合物を含有するレジン(中性子遮蔽体)224が流動状態で不図示のホース等を介して注入され、固化されている。
【0018】
また本体胴210には、外部に向けて突出するように形成されたトラニオン230が設けられている。トラニオン230は、本体胴210の外周に固定されており、外筒220を貫通して外側に至るまで突出するように設けられている。各トラニオン230の先端は、搬送時に用いられるクレーン等の搬送装置と係合可能な形状を有している。このようなトラニオン230は、蓋部219側の相反する方向に突出する2箇所に設けられるとともに、底部214側の相反する方向に突出する2箇所にそれぞれ設けられている。
尚、トラニオン230は、蓋部219側に周方向に沿って略90度ピッチ間隔の4箇所に設けられていてもよく、底部214側も同様に周方向に沿って略90度ピッチ間隔の4箇所にそれぞれ設けられていてもよい。
【0019】
続いて上記構成を有する放射性物質収納容器200を貯蔵するための貯蔵装置100について説明する。図3は一実施形態に係る貯蔵装置100を放射性物質収納容器200とともに側方から示す模式図であり、図4図3の貯蔵装置100を放射性物質収納容器200の軸方向から透過的に示す模式図である。
【0020】
貯蔵装置100は、放射性物質収納容器200を架台上に設置した状態で貯蔵可能に構成される。架台111は、貯蔵時には、略水平な貯蔵施設(不図示)の載置面10上に載置される。架台111は、例えば金属材から形成されており、載置面10に対して固定してもよい。架台111は、載置面10から上方に向けてそれぞれ立設される一対の第1支持部110と、一対の第2支持部120とを有する。
【0021】
一対の第1支持部110は、架台111に設置された放射性物質収納容器200のうち底部214側のトラニオン230に対応する位置に設けられ、一対の第2支持部120は架台111に設置された放射性物質収納容器200を支持可能な位置に設けられる。尚、図3では、一対の第2支持部120は放射性物質収納容器200のうち蓋部219側の2つのトラニオン230に対応する位置に設けられている場合を例示しているが、放射性物質収納容器200の外筒220に接触して支持可能である限りにおいて構成は限定されない。
【0022】
尚、図3に示す放射性物質収納容器200が設置された状態は、例えば、不図示のクレーンなどの搬送装置によって、底部214を下方に蓋部219を上下にした状態で放射性物質収納容器200を吊り下げ搬送し、まず底部214側のトラニオン230を一対の第1支持部110に係合させた後、底部214側のトラニオン230を支持しながら一対の第1支持部110を中心に放射性物質収納容器200を回転させて、蓋部219側を第2支持部120に支持させることで実現される。
【0023】
貯蔵装置100において上記のように架台111に設置された放射性物質収納容器200には、本開示の少なくとも一実施形態に係る緩衝体1A、1Bが取り付けられる。本実施形態では、放射性物質収納容器200の底部214側の端部に取り付けられた1Aと、放射性物質収納容器200の蓋部219側の端部に取り付けられた1Bとが示されているが、以下、両者を総称する場合には、単に「緩衝体1」と称する。尚、以下の説明では、特段の記載がない限りにおいて、緩衝体1Aと緩衝体1Bとは同様の構成を有する。
【0024】
図5図3の緩衝体1の近傍の拡大図である。緩衝体1は、放射性物質収納容器200の端部に取り付けられることにより、放射性物質収納容器200が搬送される際、及び、その後、架台111に設置されて貯蔵される際に外部からの衝撃を緩和するための構成である。このような機能を達成するため、緩衝体1は、緩衝材2を含む本体4を有する。緩衝材2は、例えば木材、樹脂材、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)のような緩衝性を有する材料を含んで構成される。
【0025】
本体4は、前述の緩衝材2が外殻6によって囲まれた構成を有する。外殻6は例えばステンレス鋼や炭素鋼、アルミ合金のような金属材料を含む板状部材から構成されており、緩衝材2を囲むことにより緩衝体1の補強を行う。
【0026】
このような構成を有する本体4は、放射性物質収納容器200の端部に対応する凹部8を有することにより、放射性物質収納容器200の端部に係合可能である。ここで凹部8において、仮に本体4が放射性物質収納容器200に直接接触すると、放射性物質収納容器200に収納された放射性物質で発生する熱が本体4に伝わり、緩衝体1を構成する緩衝材2の強度が低下してしまうおそれがある。
【0027】
このような課題を解決するために、緩衝体1は、凹部8の少なくとも一部を覆うように設けられた第1異方性伝熱材12を有する。第1異方性伝熱材12は、面内方向の熱伝導率σ1が面外方向の熱伝導率σ2より大きく構成される。このような第1異方性伝熱材12は例えばグラフェンシートなどの材料により構成される。グラフェンシートの面内方向の熱伝導率σ1は700~1950[W/m・K]であり、外殻6に用いられる材料の一例であるSUS304の熱伝導率16.7[W/m・K]に比べて高い(尚、グラフェンシートの面外方向の熱伝導率σ2は、SUS304と同程度である)。
【0028】
本実施形態では、第1異方性伝熱材12は、凹部8の全体を覆うように、凹部8の表面に沿って、凹部8の外側に至るように設けられる。凹部8では、第1異方性伝熱材12が放射性物質収納容器200の端部に接触することで、放射性物質収納容器200からの熱は、第1異方性伝熱材12によって面内方向に沿って凹部8の外側に伝えられ放熱される。これにより、放射性物質収納容器200から緩衝体1の緩衝材2への伝熱を抑制し、熱による緩衝材2の強度低下を効果的に防止できる。
【0029】
第1異方性伝熱材12は、凹部8から、本体4のうち凹部8に係合する放射性物質収納容器200の端部とは対向しない放熱部14に至るまで延在する。放熱部14は、本体4と接触しないため外気に対して開放されている。そのため、第1異方性伝熱材12の面内方向に沿って凹部8から伝達された熱は、放熱部14において外気と熱交換することで良好に冷却される。本実施形態では、放熱部14は、本体4の周縁部に至るように設けられることで、良好な冷却作業が得られる。
【0030】
また第1異方性伝熱材12は、面内方向における熱伝導率σ1が外殻6の熱伝導率より大きい。これにより、凹部8では、第1異方性伝熱材12の面内方向に伝達される熱量が、外殻6を介して緩衝材2に伝わる熱量より大きくなるため、緩衝材2の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0031】
尚、図3等に示す実施形態では、放射性物質収納容器200を横置状態で貯蔵する場合を例示しているが、放射性物質収納容器200は縦置状態で貯蔵されてもよい。この場合は、縦置状態にある放射性物質収納容器200の上側(例えば蓋部219側)のみに緩衝体1を取り付ける場合もあり、このような緩衝体1にも、本願の各実施形態に係る構成を適用可能である。
【0032】
また第1異方性伝熱材12は、放熱部14において、外殻6と面接触するように構成される。すなわち、放熱部14では、外殻6を覆うように第1異方性伝熱材12が設けられることで、第1異方性伝熱材12と外殻6とがオーバーラップするように構成される。これにより、第1異方性伝熱材12によって伝達された熱量が、放熱部14において外気によって冷却されるとともに、外殻6にも放熱されることで、良好な冷却効果が得られる。
【0033】
図6図3の他の実施形態を示す図である。図6の実施形態に係る緩衝体1は、第2異方性伝熱材16を更に備える。第2異方性伝熱材16は、架台111に搭載された放射性物質収納容器200の外表面を少なくとも部分的に覆うように設けられる。また第2異方性伝熱材16は、面外方向における熱伝導率σ2が面内方向における熱伝導率σ1より大きく構成される。これにより、放射性物質収納容器200の外表面に接触する第2異方性伝熱材16によって放射性物質収納容器200から外気への伝熱量が増加し、外気への放熱が促進される。その結果、放射性物質収納容器200から緩衝体1への伝熱量が小さくなり、緩衝材2の強度低下をより効果的に防止できる。
【0034】
図6では、第2異方性伝熱材16は、放射性物質収納容器200の外表面の全体を覆うように構成される。これにより、放射性物質収納容器から外気への伝熱量が増加させ、外気への放熱をより促進することができる。
【0035】
また図7に示すように、第2異方性伝熱材16は放射性物質収納容器200の外表面を部分的に覆うように構成されてもよい。図7では、第2異方性伝熱材16は、放射性物質収納容器200の外表面のうち、緩衝体1が取り付けられた端部近傍に部分的に設けられている。この態様では、図6のように放射性物質収納容器200の外表面の全体に第2異方性伝熱材16が設けられる場合と比較して、中央部の放熱量は低下するものの、第2異方性伝熱材16の施工範囲を少なく抑えつつ、緩衝体1への伝熱量低減を達成できるため、コスト的に有利である。
【0036】
尚、図7では、第2異方性伝熱材16が設けられる領域が、放射性物質収納容器200の外表面のうち架台111に支持される第1支持部110、第2支持部120を含むように設定されている場合が例示されているが、当該領域は適宜設定可能である。
【0037】
このような第2異方性伝熱材16は、貯蔵対象である放射性物質収納容器200の外表面に対して予め設けておくことで、放射性物質収納容器200に対して緩衝体1の取付作業を実施する際の、作業工程を少なく抑えることができる。
【0038】
図8図3の他の実施形態を示す図である。図8の実施形態に係る貯蔵装置100は、架台111と、架台111に設置された放射性物質収納容器200との間に設けられた放熱部材20を更に備える。放熱部材20は、例えばアルミニウム等の発泡金属を含んで構成される。発泡金属は、内部に多くの空孔を有しており、外気との接触面積を多く確保することができる。本実施形態では、このような放熱部材20が、架台111と放射性物質収納容器200との間に介在することで、放射性物質収納容器200からの熱量を放熱部材20から周囲の雰囲気(大気)に放出し、放射性物質収納容器200の冷却に貢献する。これにより、放射性物質収納容器200の温度を低下させ、放射性物質収納容器200から緩衝体1に対する伝熱量を効果的に抑制できる。その結果、放射性物質収納容器200から緩衝体1に対する伝熱量を更に抑制でき、緩衝材2の強度低下をより効果的に防止できる。
【0039】
尚、放熱部材20のうち放射性物質収納容器200に接触する面21は、放射性物質収納容器200の外形状に対応するように曲面に構成される。これにより、放射性物質収納容器200と放熱部材20との接触面積を向上できるとともに、搬送時や貯蔵時に放射性物質収納容器200の良好な安定性が得られる。
【0040】
尚、放熱部材20の端部は、例えば、グレーチングのような外気を通過可能な構造体で囲むことで、放熱部材20が架台111より外側に至る場合であっても良好に保護しながら、上記作用を得ることができる。
【0041】
尚、図8では放熱部材20が発砲金属から構成される場合を例示しているが、放熱部材20は他の態様をとってもよい。例えば図9Aでは、放熱部材20が一方向に沿って延在する複数の金属パイプ20aと、複数の金属パイプ20aの間の空間を発泡金属からなる充填層20bとを備えて構成される態様が示されている。金属パイプ20aの延在方向は、例えば、架台111が設置される地面(又は床面)に対して略平行である。金属パイプ20aは、中空状の配管部材であり、内部を外気が通過することで、放熱部材20と外気との熱交換が促進され、良好な冷却作用が得られる。
【0042】
また図9Bでは、網目構造を有する金属から構成された放熱部材20が示されている。この態様もまた、網目構造のうち中空部を外気が通過することで放熱部材20と外気との熱交換が促進され、良好な冷却作用が得られる。尚、放熱部材20では、このような網目構造に代えてハニカム構造を採用してもよい。また放熱部材20には、例えば3Dプリンタで造形されたラティス材を用いてもよい。
【0043】
また図9Cに示すように、貯蔵装置100において、架台111上に横置設置された放射性物質収納容器200を上下から囲むように覆う放熱部材30を備えてもよい。この配置により、放熱部材30は、放射性物質収納容器200の放熱を促進することができる。図9Cに示す放熱部材30は、放射性物質収納容器200を上方から覆う第1部材30aと、放射性物質収納容器200を下方から覆う第2部材30bとが、ボルトや杭などの固定部材30cによって互いに固定されて構成される。第1部材30a及び第2部材30bは、前述の放熱部材20と同様に各種態様を取ることができる。貯蔵装置100は、このような放熱部材30で放射性物質収納容器200を囲むことで、放射性物質収納容器200からの放熱を促進し、緩衝体1への伝熱を効果的に抑制することができる。
【0044】
尚、このような放熱部材30は、架台111上に支持された放射性物質収納容器200に対して、放射性物質収納容器200の軸方向全体にわたって設けられていてもよい。この場合、放射性物質収納容器200から外気への伝熱量が増加させ、外気への放熱をより促進することができる。
【0045】
また放熱部材30は、架台111上に支持された放射性物質収納容器200に対して部分的に設けられていてもよい。この場合、放熱部材30は、例えば図7に示す第2異方性伝熱材16に倣って、放射性物質収納容器200に対して、放射性物質収納容器200の軸方向に沿った一部範囲(すなわち、緩衝体1が取り付けられた端部近傍)にのみ設けられていてもよい。この態様では、放射性物質収納容器200の軸方向全体に放熱部材30が設けられる場合と比較して、中央部の放熱量は低下するものの、放熱部材30の施工範囲を少なく抑えつつ、緩衝体1への伝熱量低減を達成できるため、コスト的に有利である。
【0046】
以上説明したように上述の各実施形態によれば、第1異方性伝熱材12は、凹部8の少なくとも一部を覆うように設けられる。凹部8では、第1異方性伝熱材12が放射性物質収納容器200の端部に接触することで、放射性物質収納容器200からの熱は、第1異方性伝熱材12によって面内方向に沿って凹部8の外側に伝えられ放熱される。これにより、放射性物質収納容器200から緩衝体1への伝熱を抑制し、熱による緩衝材2の強度低下を効果的に防止できる。
【0047】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0048】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0049】
(1)一態様に係る緩衝体は、
架台(例えば上記実施形態の架台111)に設置可能な放射性物質収納容器(例えば上記実施形態の放射性物質収納容器200)に取り付けられる緩衝体(例えば上記実施形態の緩衝体1)であって、
前記放射性物質収納容器の端部に係合可能な凹部(例えば上記実施形態の凹部8)を有する本体(例えば上記実施形態の本体4)と、
前記凹部の少なくとも一部を覆うように設けられ、面内方向の熱伝導率(例えば上記実施形態の熱伝導率σ1)が面外方向の熱伝導率(例えば上記実施形態の熱伝導率σ2)より大きい第1異方性伝熱材(例えば上記実施形態の第1異方性伝熱材12)と、
を備える。
【0050】
上記(1)の態様によれば、第1異方性伝熱材は、凹部の少なくとも一部を覆うように設けられる。凹部では、第1異方性伝熱材が放射性物質収納容器の端部に接触することで、放射性物質収納容器からの熱は、第1異方性伝熱材によって面内方向に沿って凹部の外側に伝えられ放熱される。これにより、放射性物質収納容器から緩衝体への伝熱を抑制し、熱による緩衝材の強度低下を効果的に防止できる。
【0051】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記第1異方性伝熱材は、前記凹部から前記本体のうち前記凹部に係合する前記放射性物質収納容器の前記端部とは対向しない放熱部(例えば上記実施形態の放熱部14)に至るまで延在する。
【0052】
上記(2)の態様によれば、第1異方性伝熱材は、凹部から、本体と接触しない放熱部に至るまで延在するため、第1異方性伝熱材の面内方向に沿って凹部から伝達された熱は、放熱部において外気と熱交換することで良好に冷却される。
【0053】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記本体は、外殻(例えば上記実施形態の外殻6)によって囲まれる緩衝材(例えば上記実施形態の緩衝材2)を有し、
前記第1異方性伝熱材は、面内方向における熱伝導率(例えば上記実施形態の熱伝導率σ1)が前記外殻の熱伝導率(例えば上記実施形態の熱伝導率σ3)より大きい。
【0054】
上記(3)の態様によれば、凹部において、第1異方性伝熱材の面内方向に伝達される熱量が、外殻を介して緩衝材に伝わる熱量より大きくなるため、緩衝材の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0055】
(4)他の態様では、上記(3)の態様において、
前記第1異方性伝熱材は、前記放熱部において、前記外殻と面接触するように構成される。
【0056】
上記(4)の態様によれば、放熱部では、外殻を覆うように第1異方性伝熱材が設けられることで、第1異方性伝熱材と外殻とがオーバーラップするように構成される。これにより、第1異方性伝熱材によって伝達された熱量が、放熱部において外気によって冷却されるとともに、外殻にも放熱されることで、良好な冷却効果が得られる。
【0057】
(5)一態様に係る放射性物質収納容器の貯蔵装置は、
上記(1)から(4)のいずれか一態様に係る緩衝体(例えば上記実施形態の緩衝体1)と、
前記緩衝体が取り付けられた放射性物質収納容器を設置可能な架台(例えば上記実施形態の架台111)と、
を備える。
【0058】
上記(5)の態様によれば、放射性物質収納容器に取り付けられた緩衝体の本体に使用される緩衝材の温度上昇を簡易的に抑制しながら、長期的な貯蔵が可能となる。
【0059】
(6)他の態様では、上記(5)の態様において、
面外方向における熱伝導率が面内方向における熱伝導率より大きく、前記架台に搭載された前記放射性物質収納容器の外表面を少なくとも部分的に覆う第2異方性伝熱材(例えば上記実施形態の第2異方性伝熱材16)を備える。
【0060】
上記(6)の態様によれば、面外方向における熱伝導率が面内方向における熱伝導率より大きい第2異方性伝熱材が、架台に搭載された放射性物質収納容器の外表面を少なくとも部分的に覆うように設けられる。これにより、放射性物質収納容器の外表面に接触する第2異方性伝熱材によって放射性物質収納容器から外気への伝熱量が増加し、外気への放熱が促進される。その結果、放射性物質収納容器から緩衝体への伝熱量が小さくなり、緩衝材の強度低下をより効果的に防止できる。
【0061】
(7)他の態様では、上記(6)の態様において、
前記第2異方性伝熱材は、前記放射性物質収納容器の外表面の全体を覆う。
【0062】
上記(7)の態様によれば、放射性物質収納容器から外気への伝熱量が増加させ、外気への放熱をより促進することができる。
【0063】
(8)他の態様では、上記(6)の態様において、
前記第2異方性伝熱材は、前記放射性物質収納容器の外表面のうち前記緩衝体が取り付けられた前記端部を含む領域に部分的に設けられる。
【0064】
上記(8)の態様によれば、上記(7)の態様のように放射性物質収納容器の外表面の全体に第2異方性伝熱材が設けられる場合と比較して、放射性物質収納容器の中央部の放熱量は低下するものの、第2異方性伝熱材の施工範囲を少なく抑えつつ、緩衝体への伝熱量低減を達成できるため、コスト的に有利である。
【0065】
(9)他の態様では、上記(5)から(8)の少なくとも一態様において、
前記放射性物質収納容器と前記架台との間に設けられた放熱部材(例えば上記実施形態の放熱部材20)を更に備える。
【0066】
上記(9)の態様によれば、放熱部材が架台と放射性物質収納容器との間に介在することで、放射性物質収納容器からの熱量を放熱部材から周囲の雰囲気(例えば大気)に放出することで、放射性物質収納容器の冷却に貢献する。これにより、放射性物質収納容器から緩衝体に対する伝熱量を更に抑制でき、緩衝材の強度低下をより効果的に防止できる。
【0067】
(10)他の態様では、上記(9)の態様において、
前記放熱部材は、発泡金属を含む。
【0068】
上記(10)の態様によれば、放熱部材が発泡金属を含んで構成される。発泡金属は、内部に多くの空孔を有しており、外気との接触面積を多く確保することで、放熱部材から周囲の雰囲気(例えば大気)への放熱を促進し、放射性物質収納容器から伝達される熱を効果的に冷却できる。
【符号の説明】
【0069】
1,1A,1B 緩衝体
2 緩衝材
4 本体
6 外殻
8 凹部
10 置面
12 第1異方性伝熱材
14 放熱部
16 第2異方性伝熱材
20,30 放熱部材
20a 金属パイプ
20b 充填層
21 面
30a 第1部材
30b 第2部材
30c 固定部材
100 貯蔵装置
110 第1支持部
111 架台
120 第2支持部
200 放射性物質収納容器
210 本体胴
212 開口部
214 底部
216 キャビティ
218 バスケット
218A 放射性物質収納部
219 蓋部
220 外筒
222 伝熱フィン
230 トラニオン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C