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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190319
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】家畜用衣服
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20221219BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A01K13/00 J
A41D13/005 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098588
(22)【出願日】2021-06-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】503277710
【氏名又は名称】寿ニット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 克己
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA04
3B011AB01
3B011AC11
3B011AC13
(57)【要約】
【課題】保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を提供すること。
【解決手段】本発明に係る家畜用衣服1は、家畜の体表を覆う被覆部2と、被覆部2を家畜に固定する固定部4,10とを備える。被覆部2は、家畜の体表に接触する熱反射膜19を有し、ニット生地からなる内層16と、内層16に積層された防風フィルム17と、防風フィルム17に対して内層16と反対側に積層され、蓄熱保温材20を含むニット生地からなる外層18と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の体表を覆うシート状の被覆部と、前記被覆部を前記家畜に固定する固定部とを備えた家畜用衣服であって、
前記被覆部は、
前記家畜の体表に接触する熱反射膜を有し、ニット生地からなる内層と、
前記内層に積層された防風フィルムと、
前記防風フィルムに対して前記内層と反対側に積層され、蓄熱保温材を含むニット生地からなる外層と、
を含む、家畜用衣服。
【請求項2】
前記被覆部は、対向する2辺に接続部を備え、
前記対向する2辺の中央を延びる第1仮想直線と、
前記対向する2辺の各々と前記第1仮想直線との中央をそれぞれ延びる2本の第2仮想直線と、を有し、
前記被覆部において、前記2本の第2仮想直線同士の間に、前記家畜の前肢を挿通可能な穴部が形成される、
請求項1に記載の家畜用衣服。
【請求項3】
前記被覆部は、対向する2辺の一部が連続した円筒状に形成され、
前記対向する2辺のうち互いに連続しない部分に設けられた接続部と、
前記対向する2辺の中央を延びる第1仮想直線と、
前記対向する2辺の各々と前記第1仮想直線との中央をそれぞれ延びる2本の第2仮想直線と、を有し、
前記被覆部において、前記2本の第2仮想直線同士の間に、前記家畜の前肢を挿通可能な穴部が形成される、
請求項1に記載の家畜用衣服。
【請求項4】
前記穴部は、前記家畜の両前肢を挿通可能である、請求項2又は請求項3に記載の家畜用衣服。
【請求項5】
前記固定部は、第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記被覆部に固定され、前記第2端部が前記被覆部に着脱可能に取り付けられるベルトからなり、
さらに、前記被覆部の外表面に、前記被覆部に取り付けられた前記固定部の第2端部を覆うカバーが設けられる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の家畜用衣服。
【請求項6】
前記カバーは、少なくとも一部が前記被覆部の外表面に着脱可能に取り付けられるシートからなる、請求項5に記載の家畜用衣服。
【請求項7】
前記カバーは、前記被覆部の外表面に固定され、前記被覆部の外表面との間に前記固定部の第2端部を挿入可能な開口部を形成するシートからなる、請求項5又は請求項6に記載の家畜用衣服。
【請求項8】
前記防風フィルムは、伸縮性を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の家畜用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜に着用させる衣服に関し、特に畜牛に着用させる衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜は、暑熱及び寒冷によって体調を崩しやすい。例えば、仔牛では、寒冷期に肺炎及び下痢症等が頻発し、死廃数が増加する傾向が見られる。家畜に対する寒冷対策として、例えば、家畜舎に暖房設備を設置し、舎内の温度を高めることが行われているが、設備費及び維持費が莫大であるという問題がある。これに対して、個々の家畜に衣服を着用させて保温する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、獣類に着用させるジャケットが開示されている。ジャケットに使用される素材は、表生地と、裏生地と、表生地と裏生地との間に挟持された断熱材とによって構成された積層構造を有する。さらに、ジャケットには、獣類を温めるための発熱体(例えば、カイロ等)を保持可能なポケットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-211933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のジャケットは、発泡ポリウレタン等で形成された断熱材を備えるので、獣類に被せることはできるものの、獣類の体表の凹凸に沿うほどの柔軟性を有してはいない。そのため、ジャケットと獣類の体表との間に冷気及び風が侵入して、獣類に対する保温性が低下という問題がある。
【0006】
さらに、発熱体によって獣類を温めて保温する方法では、定期的に発熱体を交換するなど、保温性を維持するための作業を行わなければならないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る家畜用衣服は、
家畜の体表を覆うシート状の被覆部と、前記被覆部を前記家畜に固定する固定部とを備え、
前記被覆部は、
前記家畜の体表に接触する熱反射膜を有し、ニット生地からなる内層と、
前記内層に積層された防風フィルムと、
前記防風フィルムに対して前記内層と反対側に積層され、蓄熱保温材を含むニット生地からなる外層と、
を含むように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る家畜用衣服の展開状態を示す平面図である。
図2図1の家畜用衣服の着用状態を示す側面図である。
図3図1の家畜用衣服に設けられたベルト装着部を示す部分拡大図である。
図4図1の家畜用衣服の着用状態を示す正面図である。
図5図1の家畜用衣服に設けられたベルト装着部を示す部分拡大図である。
図6図1の家畜用衣服における被覆部の断面図である。
図7図1の家畜用衣服の展開状態を示す平面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る家畜用衣服を示す平面図である。
図9図8の家畜用衣服における被覆部の凹部を示す部分拡大図である。
図10図8の家畜用衣服における被覆部の接触面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様に係る家畜用衣服は、
家畜の体表を覆うシート状の被覆部と、前記被覆部を前記家畜に固定する固定部とを備え、
前記被覆部は、
前記家畜の体表に接触する熱反射膜を有し、ニット生地からなる内層と、
前記内層に積層された防風フィルムと、
前記防風フィルムに対して前記内層と反対側に積層され、蓄熱保温材を含むニット生地からなる外層と、
を含むように構成されている。
【0012】
この構成によれば、内層及び外層がニット生地からなるので、被覆部は、家畜の体表に凹凸に沿って接触する。このことにより、被覆部と家畜の体表との間に冷気及び風が侵入することによる保温性の低下を抑制することができる。また、被覆部が防風フィルムを有するので、家畜の体表に風が当たることによる家畜の体温低下を抑制することができる。
【0013】
また、この構成によれば、蓄熱保温材から生じた熱によって、家畜を温めて保温することができる。さらに、家畜の体表から輻射された熱を、熱反射膜によって家畜の体表に反射することにより、家畜の体表から失われる熱量を減少させることができる。よって、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を実現することができる。
【0014】
また、前記被覆部は、対向する2辺に接続部を備え、前記対向する2辺の中央を延びる第1仮想直線と、前記対向する2辺の各々と前記第1仮想直線との中央をそれぞれ延びる2本の第2仮想直線と、を有していてもよい。前記被覆部において、前記2本の第2仮想直線同士の間に、前記家畜の前肢を挿通可能な穴部が形成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、接続部は、家畜用衣服の着用状態において、家畜の背側で互いに接続される。つまり、冷気や風が侵入し得る被覆部の継ぎ目は、家畜の内臓が偏在する腹側ではなく、背側に配置される。このことにより、被覆部の継ぎ目から冷気や風が侵入して家畜の腹部に対する保温性が低下することを抑制することができる。
【0016】
また、前記被覆部は、対向する2辺の一部が連続した円筒状に形成され、前記対向する2辺の連続しない部分に設けられた接続部と、前記対向する2辺の中央を延びる第1仮想直線と、前記対向する2辺の各々と前記第1仮想直線との中央をそれぞれ延びる2本の第2仮想直線と、を有していてもよい。前記被覆部において、前記2本の第2仮想直線同士の間に、前記家畜の前肢を挿通可能な穴部が形成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、接続部は、家畜用衣服の着用状態において、家畜の背側で互いに接続される。つまり、冷気や風が侵入し得る被覆部の継ぎ目は、家畜の内臓が偏在する腹側ではなく、背側に配置される。このことにより、被覆部の継ぎ目から冷気や風が侵入して家畜の腹部に対する保温性が低下することを抑制することができる。
【0018】
また、この構成によれば、被覆部の対向する2辺の一部が連続しているので、家畜用衣服を着用させるときに、接続部が互いに接続されていない状態であっても、被覆部の対向する2辺の一部を家畜の背側で保持することができる。したがって、被覆部の対向する2辺が連続していない構成と比較して、家畜用衣服の着用作業を容易にすることができる。
【0019】
また、前記穴部は、前記家畜の両前肢を挿通可能であってもよい。
【0020】
この構成によれば、前肢を1本ずつ2つの穴部に挿通させる場合と比較して、家畜用衣服を容易に着用させることができる。
【0021】
また、前記固定部は、第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記被覆部に固定され、前記第2端部が前記被覆部に着脱可能に取り付けられるベルトからなっていてもよい。さらに、前記被覆部の外表面に、前記被覆部に取り付けられた状態の前記固定部の第2端部を覆うカバーが設けられていてもよい。
【0022】
この構成によれば、被覆部に取り付けられた状態の固定部の第2端部は、カバーによって覆われる。このことにより、固定部の第2端部が被覆部から外れてしまう可能性を低減することができる。よって、固定部の取り付け直し等の保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を実現することができる。
【0023】
また、前記カバーは、少なくとも一部が前記被覆部の外表面に着脱可能に取り付けられるシートからなっていてもよい。
【0024】
この構成によれば、固定部の第2端部を被覆部に着脱するときに、カバーの少なくとも一部を被覆部の外表面から取り外して、被覆部における固定部の取付部分を露出させることができる。よって、カバーが被覆部の外表面に固定される構成と比較して、固定部の着脱を容易に行うことができる。
【0025】
また、前記カバーは、前記被覆部の外表面に固定され、前記被覆部の外表面との間に前記固定部の第2端部を挿入可能な開口部を形成するシートからなっていてもよい。
【0026】
この構成によれば、被覆部における固定部の取付部分は、開口部のみを介してカバーの外部と連通する。このことにより、固定部の第2端部が被覆部から外れてしまう可能性を更に低減することができる。よって、固定部の取り付け直し等の保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を実現することができる。
【0027】
また、前記防風フィルムは、伸縮性を有していてもよい。
【0028】
この構成によれば、防風フィルムを伸縮性を有する内層及び外層の少なくとも一方に固定することができる。このことにより、防風フィルムが内層及び外層に固定されない構成と比較して、内層、防風フィルム、及び外層を含む被覆部の積層構造をより確実に維持することができる。よって、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服を実現することができる。
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態は、本発明を限定するものではない。また、図面において実質的に同一の部品については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0030】
<第1実施形態>
図1~7を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る家畜用衣服1について説明する。本実施形態において、家畜用衣服1は、畜牛に着用される衣服である。
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、全体が1で表される家畜用衣服の展開状態を示す平面図である。図1に示すように、家畜用衣服1は、略矩形の被覆部2を含む。被覆部2は、シート状であり、家畜用衣服1の着用状態(図2参照)において家畜の体表に接触する接触面2aと、接触面2aと反対側の外表面2bとを有する。図1には、被覆部2の外表面2bが表されている。
【0032】
被覆部2は、対向する2つの辺を含む第1縁部2c,2dを有する。本実施形態では、2つの第1縁部2c,2dは、平行に延びている。各第1縁部2c,2dには、互いに接続及び解除可能な接続部3が設けられている。接続部3は、例えば、面ファスナ、スナップボタン等の点ファスナ、ホック等の留め具、バックル等である。本実施形態では、接続部3は、線ファスナである。接続部3を構成する線ファスナは、各第1縁部2c,2dの一端部から他端部まで延びている。
【0033】
第1縁部2cの端と第1縁部2dの端とは、2つの第2縁部2e,2fによってそれぞれ接続されている。
【0034】
図2は、図1の家畜用衣服1の着用状態を示す側面図である。図2に示すように、家畜用衣服1は、被覆部2を畜牛の腹側から被せ、接続部3同士を畜牛の背側で接続することにより、着用される。このとき、被覆部2は、畜牛の胴回りを囲むように配置され、畜牛の体表を覆う。
【0035】
以下の説明では、家畜用衣服1の方向を示すために、「第1方向D1」及び「第2方向D2」という用語を用いる。第1方向D1は、家畜用衣服1の着用状態における畜牛の胴回り方向に対応する。第2方向D2は、家畜用衣服1の着用状態における畜牛の体長方向、すなわち、畜牛の頭部と尾部とを結ぶ方向に対応する。第1方向D1と第2方向D2とは、家畜用衣服1の展開状態(図1参照)において、被覆部2の広がる面で直交する。
【0036】
被覆部2の第1縁部2c,2dは、家畜用衣服1の着用状態において、第2方向D2に沿って延びている。第2縁部2eは、第2方向D2において畜牛の頭部側に配置される。第2縁部2fは、第2方向D2において畜牛の尾部側に配置される。
【0037】
図1に示すように、被覆部2には、第2縁部2eから第2方向D2に沿って尾部側に向かって凹んだ凹部21が形成されている。被覆部2のうち、第2方向D2において凹部21の底部よりも頭部側の部分は、被覆部2の頸被覆部22a,22bを構成する。頸被覆部22aは、第1方向D1において凹部21よりも第1縁部2c側の部分を構成する。頸被覆部22bは、第1方向D1において凹部21よりも第1縁部2d側の部分を構成する。
【0038】
家畜用衣服1は、被覆部2を畜牛の頸に固定するための頸固定部4を備えている。頸固定部4は、帯部5と取付部6とが接続されたベルトからなる。本実施形態では、帯部5は、ポリエステルからなり、頸固定部4が延びる方向に沿った弾性を有する。取付部6は、被覆部2の頸被覆部22bに設けられたベルト装着部7(後述)に対して着脱可能に構成される。本実施形態では、取付部6は、帯状の面ファスナであり、家畜用衣服1の着用状態において被覆部2の外表面2bに対向する面に配置された複数のフックを有する。
【0039】
頸固定部4は、被覆部2の頸被覆部22aに固定された第1端部4aと、第1端部4aと反対側の第2端部4bとを有する。すなわち、第1端部4aは、頸固定部4の帯部5側の端部である。また、第2端部4bは、頸固定部4の取付部6側の端部である。本実施形態では、頸固定部4の第1端部4aは、被覆部2の頸被覆部22aに縫い合わされている。
【0040】
被覆部2の頸被覆部22bには、頸固定部4の第2端部4bが着脱可能に取り付けられるベルト装着部7が設けられている。ベルト装着部7は、被覆部2の外表面2bに配置されている。本実施形態では、ベルト装着部7は、帯状の面ファスナであり、被覆部2の外表面2bに接触する面と反対側の面に配置された複数のループを有する。当該複数のループは、頸固定部4の取付部6に設けられた複数のフックに接続する。
【0041】
家畜用衣服1を着用した畜牛が地面に横たわった場合、ベルト装着部7は、地面に接触する。このとき、面ファスナからなるベルト装着部7に牧草等の異物が付着すると、ベルト装着部7に対する取付強度が低下するおそれがある。ここで、ベルト装着部7がループを有する構成では、ベルト装着部7がフックを有する構成と比較して、ベルト装着部7に対する異物の付着を抑制することができる。よって、ベルト装着部7に対する取付強度の低下を抑制することができる。
【0042】
図3は、ベルト装着部7を示す部分拡大図であり、頸固定部4の第2端部4bが取り付けられた状態のベルト装着部7が表されている。図3に示すように、ベルト装着部7の一部及び頸固定部4の第2端部4bは、シート状のカバー8によって覆われている。カバー8は、被覆部2の頸被覆部22bにおける外表面2bに設けられている。本実施形態では、カバー8は、第2方向D2に沿って延びる帯状の面ファスナからなり、ベルト装着部7及び頸固定部4と交差している。カバー8を構成する面ファスナは、被覆部2の外表面2bに対向する面に配置された複数のフックを有する。
【0043】
カバー8は、第2方向D2における頭部側の固定縁部8aと、固定縁部8aと反対側の着脱縁部8bとを有する。カバー8の固定縁部8aは、ベルト装着部7よりも第2方向D2における頭部側で、被覆部2に固定されている。本実施形態では、カバー8の固定縁部8aは、被覆部2に縫い合わされている。
【0044】
被覆部2の頸被覆部22bには、カバー装着部9が設けられている。カバー装着部9は、被覆部2の外表面2bにおいて、ベルト装着部7よりも第2方向D2における尾部側に配置されている。つまり、カバー装着部9は、ベルト装着部7を介して、カバー8の固定縁部8aが固定された部分と反対側に配置されている。カバー装着部9には、カバー8の着脱縁部8bが着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、カバー装着部9は、ベルト装着部7に沿って第1方向D1に延びる帯状の面ファスナである。カバー装着部9を構成する面ファスナは、被覆部2の外表面2bに接触する面と反対側の面に配置された複数のループを有する。当該複数のループは、カバー8に設けられた複数のフックに接続する。このことにより、カバー8の着脱縁部8bは、被覆部2の外表面2bに着脱可能に取り付けられる。
【0045】
図2に示すように、家畜用衣服1の着用状態において、頸被覆部22aと頸被覆部22bとは、畜牛の背側で接続部3を介して接続される。このことにより、頸被覆部22a,22bは、畜牛の頸の背部及び側部を覆う。
【0046】
畜牛を含む家畜の頸には、頸動脈等の太い血管が通っている。被覆部2の頸被覆部22a,22bを畜牛の頸の体表に接触させることにより、当該血管を通過する血液を温めて保温することができる。当該血液が畜牛の全身を巡ることにより、畜牛の身体が効果的に保温される。
【0047】
頸固定部4は、畜牛の頸に沿って畜牛の腹側を延び、取付部6を介してベルト装着部7に取り付けられる。このことにより、被覆部2は、畜牛の頸に固定される。また、被覆部2の頸被覆部22a,22bは、畜牛の体表に押し付けられて、体表の凹凸に沿って接触する。
【0048】
本実施形態では、頸固定部4の帯部5は、弾性を有する。そのため、頸固定部4の帯部5を引き延ばした状態で、頸固定部4の第2端部4bをベルト装着部7に取り付けることができる。この場合、頸固定部4の帯部5が弾性を有していない構成と比較して、被覆部2は、畜牛の頸に対してより確実に固定される。また、被覆部2の頸被覆部22a,22bは、畜牛の体表により強く押し付けられる。さらに、頸周りの長さが様々な畜牛に対して、家畜用衣服1を着用させることが可能になる。
【0049】
図1に示すように、被覆部2は、1本の第1仮想直線L1と、2本の第2仮想直線L2とを有する。第1仮想直線L1は、第1方向D1における第1縁部2cと第1縁部2dとの中央を延びる。各第2仮想直線L2は、第1方向D1における第1仮想直線L1と各第1縁部2c,2dとの中央を延びる。本実施形態では、第1縁部2c、第1縁部2d、第1仮想直線L1、及び2本の第2仮想直線L2は、第2方向D2に沿って延び、互いに平行である。
【0050】
被覆部2には、2本の第2仮想直線L2の間に穴部23が形成されている。穴部23は、第2方向D2において凹部21の近傍に形成されている。穴部23には、家畜用衣服1の着用状態において、家畜の両前肢のうち少なくとも1本を挿通可能である。本実施形態では、図4に示すように、1つの穴部23に畜牛の両前肢が挿通される。
【0051】
図1に示すように、被覆部2において、凹部21と穴部23との間は、第1方向D1に沿って延びる胸被覆部24からなる。胸被覆部24の両端部は、被覆部2の穴部23の縁部にそれぞれ固定されている。本実施形態では、胸被覆部24は、当該縁部に縫い合わされている。本実施形態では、胸被覆部24は、ポリエステルからなり、第1方向D1に沿った弾性を有する。
【0052】
被覆部2には、第2縁部2fから第2方向D2に沿って頭部側に向かって凹んだ凹部25が形成されている。凹部25は、家畜用衣服1の着用状態(図2参照)において、家畜の排泄器を被覆部2から露出させるために形成されている。凹部25が形成されることにより、被覆部2が排泄物によって汚染されることを抑制することができる。
【0053】
被覆部2の第2縁部2fには、被覆部2を畜牛の各後肢に固定するための2つの後肢固定部10が設けられている。2つの後肢固定部10のうち一方は、第1縁部2cと第1仮想直線L1との間に固定されている。他方の後肢固定部10は、第1縁部2dと第1仮想直線L1との間に固定されている。本実施形態では、2つの後肢固定部10は、第1仮想直線L1に対して線対称の位置に固定されている。
【0054】
後肢固定部10は、帯部11と取付部12とが接続されたベルトからなる。本実施形態では、帯部11は、ポリエステルからなり、後肢固定部10が延びる方向に沿った弾性を有する。取付部12は、被覆部2の外表面2bに設けられた2つのベルト装着部13(後述)に対してそれぞれ着脱可能に構成される。本実施形態では、取付部12は、帯状の面ファスナであり、家畜用衣服1の着用状態において被覆部2の外表面2bに対向する面に配置された複数のフックを有する。
【0055】
後肢固定部10は、被覆部2の第2縁部2fに固定された第1端部10aと、第1端部10aと反対側の第2端部10bとを有する。すなわち、第1端部10aは、後肢固定部10の帯部11側の端部である。また、第2端部10bは、後肢固定部10の取付部12側の端部である。本実施形態では、後肢固定部10の第1端部10bは、被覆部2の第2縁部2fに縫い合わされている。
【0056】
被覆部2の外表面2bには、各後肢固定部10の第2端部10bが着脱可能に取り付けられる2つのベルト装着部13が設けられている。2つのベルト装着部13は、第1方向D1において凹部25を介して対向する位置に配置されている。本実施形態では、ベルト装着部13は、矩形状の面ファスナであり、被覆部2の外表面2bに接触する面と反対側の面に配置された複数のループを有する。当該複数のループは、後肢固定部10の取付部12に設けられた複数のフックに接続する。
【0057】
図5は、ベルト装着部13を示す部分拡大図であり、後肢固定部10の第2端部10bが取り付けられた状態のベルト装着部13が表されている。図5に示すように、ベルト装着部13及び後肢固定部10の第2端部10bは、シート状のカバー14によって覆われている。より詳細には、カバー14は、ベルト装着部13の全面を覆っている。カバー14がベルト装着部13を覆うことにより、ベルト装着部13に対する異物の付着が抑制される。
【0058】
カバー14は、対向する2つの第1縁部14aを有する。各第1縁部14aは、第1方向D1に沿って延びる。2つの第1縁部14aの端同士は、互いに対向する2つの第2縁部14bによってそれぞれ接続されている。カバー14は、2つの第1縁部14aにおいて、被覆部2の外表面2bに固定されている。本実施形態では、カバー14の第1縁部14aは、被覆部2に縫い合わされている。
【0059】
一方、カバー14の第2縁部14bは、被覆部2の外表面2bに固定されていない。そのため、カバー14の第2縁部14bと被覆部2の外表面2bとの間には、開口部15がそれぞれ形成されている。各開口部15には、後肢固定部10の第2端部10bを挿通可能である。
【0060】
図2に示すように、後肢固定部10は、家畜用衣服1の着用状態において、畜牛の両後肢の間を畜牛の体表に沿って延び、取付部12を介してベルト装着部13に着脱可能に取り付けられる。このことにより、被覆部2は、畜牛の両後肢に固定される。
【0061】
本実施形態では、図5に示すように、2つの開口部15が形成されている。そのため、一方の開口部15に挿入した後肢固定部10の第2端部10bを、他方の開口部15を介してカバー14の外部に延在させることもできる。このことにより、家畜用衣服1を仔牛等の体格の小さい畜牛に着用させる場合にも、後肢固定部10を畜牛の体表に沿わせた状態でベルト装着部13に取り付けることができる。
【0062】
本実施形態では、後肢固定部10の帯部11は、弾性を有する。そのため、後肢固定部10の帯部11を引き延ばした状態で、後肢固定部10の第2端部10bをベルト装着部13に取り付けることができる。この場合、後肢固定部10の帯部11が弾性を有しない構成と比較して、被覆部2は、畜牛の後肢に対してより確実に固定される。また、被覆部2は、畜牛の体表に対してより強く押し付けられる。さらに、様々な体格を有する畜牛に家畜用衣服1を着用させることができる。
【0063】
図6は、図1の家畜用衣服1における被覆部2の断面図である。図6に示すように、被覆部2は、内層16と、防風フィルム17と、外層18と、熱反射膜19とを有する。図6では、内層16、防風フィルム17、外層18、及び熱反射膜19の厚さは、誇張して示されている。
【0064】
内層16は、家畜用衣服1の着用状態において、畜牛の体表に対向する対向面16aを有する。内層16の面のうち、対向面16aと反対側の面には、防風フィルム17が積層されている。防風フィルム17の面のうち、内層16に対向する面と反対側の面には、外層18が積層されている。内層16の対向面16aには、熱反射膜19が配置されている。本実施形態では、内層16、防風フィルム17、及び外層18は、被覆部2の第1縁部2c,2d及び第2縁部2e,2f(図1参照)で縫い合わされている。
【0065】
なお、内層16、防風フィルム17、及び外層18は、家畜用衣服1の着用状態において積層状態に維持されていればよく、例えば、接着材等を介して互いに接着されていてもよい。また、内層16及び外層18のみが、第1縁部2c,2d及び第2縁部2e,2fで縫い合わされていてもよい。この場合、防風フィルム17は、内層16及び外層18に対して固定されずに、内層16と外層18との間に挟持されていてもよい。
【0066】
内層16は、伸縮性を有するニット生地からなる。ニット生地は、糸を編むことにより形成される。内層16を構成するニット生地は、例えば、例えば、綿、レーヨン、ナイロン、アクリル等、及びこれらの組合せからなる群から選ばれた材料で形成される。本実施形態では、内層16は、ポリエステル糸及びポリウレタン糸で形成されたニット生地である。当該ニット生地は、ポリエステルを95%、ポリウレタンを5%の混率で有する。本実施形態では、内層16の対向面16aには、起毛処理が施されている。また、内層16の第1方向D1における伸縮性は、内層16の第2方向D2における伸縮性よりも大きい。
【0067】
防風フィルム17は、被覆部2の外表面2bに吹き付けられた風が畜牛の体表に到達することを抑制する。防風フィルム17は、例えば、ポリエステル、シリコーン、ポリビニルアルコール等、及びこれらの組合せからなる群から選ばれた材料で形成される。本実施形態では、防風フィルム17は、ポリウレタンで形成された厚さ10μmのフィルムである。本実施形態では、防風フィルム17の厚さは、内層16の厚さ及び外層18の厚さよりも薄い。
【0068】
本実施形態では、防風フィルム17は、ポリウレタンで形成されているので、第1方向D1及び第2方向D2に沿って伸縮性を有する。このことにより、防風フィルム17は、内層16及び外層18と共に伸縮可能である。
【0069】
外層18は、伸縮性を有するニット生地からなる。当該ニット生地を構成する糸の少なくとも一部は、蓄熱保温材20を含有する。例えば、蓄熱保温材20は、当該糸を構成する繊維の芯部に錬りこまれている。蓄熱保温材20は、太陽光及び照明光の少なくとも一方に含まれる特定波長の光を吸収し、高効率で熱エネルギに変換する物質である。蓄熱保温材20の材料には、例えば、ジルコニウム及びブラックシリカ等が挙げられる。蓄熱保温材20を含有する繊維として、例えば、ユニチカ株式会社のサーモトロン(登録商標)、及び、クラレ株式会社のマイクロウォーム(登録商標)等が挙げられる。
【0070】
本実施形態では、外層18は、ポリエステル糸、蓄熱保温材20を含有するポリエステル糸、及びポリウレタン糸で形成されたニット生地である。当該ニット生地は、ポリエステル糸を60.2%、蓄熱保温材20を含有するポリエステル糸を34.1%、ポリウレタン糸を5.7%の混率で有する。外層18の第1方向D1における伸縮性は、外層18の第2方向D2における伸縮性よりも大きい。なお、図6では、ポリエステル糸に含有された蓄熱保温材20を模式的に示している。
【0071】
内層16の対向面16aには、熱反射膜19が設けられている。熱反射膜19は、家畜用衣服1の着用状態において畜牛の体表に接触し、畜牛の体表から輻射された熱を反射する。熱反射膜19は、例えば、金、銀、銅等の材料で形成される。本実施形態では、熱反射膜19は、内層16の対向面16aにプリントされたアルミニウム薄膜である。
【0072】
図7は、図1の家畜用衣服1の展開状態を示す平面図であり、被覆部2の接触面2aが表されている。図7に示すように、熱反射膜19は、内層16の対向面16aの全面に亘って配置されている。本実施形態では、複数の円形の熱反射膜19が、内層16の対向面16aの全面に亘って敷き詰められるように配置されている。複数の熱反射膜19は、内層16を対向面16aに交差する方向から見て、互いに離れている。熱反射膜19の面積は、内層16の対向面16aのうち熱反射膜19が設けられていない部分の面積よりも大きい。
【0073】
複数の互いに離れた熱反射膜19を内面16の対向面16aの全面に亘って配置することにより、熱反射膜19同士の隙間において、被覆部2を伸縮させることができる。
【0074】
図6に示すように、外層18の面のうち、防風フィルム17に対向する面と反対側の面は、被覆部2の外表面2bを構成する。熱反射膜19の表面、及び、内層16の対向面16aのうち熱反射膜19が配置されていない部分は、被覆部2の接触面2aを構成する。家畜用衣服1の着用状態において、被覆部2の接触面2aは、畜牛の体表に接触する。
【0075】
家畜用衣服1の着用時には、まず、畜牛の両前肢が穴部23に挿通される。次いで、被覆部2の第1縁部2c,2dが畜牛の背側に配置される。次いで、接続部3が畜牛の背側において互いに接続される。次いで、頸固定部4の取付部6がベルト取付部7に取り付けられる。最後に、後肢固定部10が畜牛の両後肢の間に通され、取付部12を介してベルト装着部13に取り付けられる。
【0076】
第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、内層16及び外層18は、ニット生地からなるので、布帛と比較して伸縮性に優れる。そのため、内層16及び外層18を有する被覆部2は、家畜用衣服1の着用状態において家畜の体表に凹凸に沿って接触する。このことにより、冷気や風が被覆部2と家畜の体表との間に侵入することによる家畜の体温低下を抑制することができる。
【0077】
また、被覆部2が防風フィルム17を有することにより、被覆部2の外表面2bに吹き付けられた風が家畜の体表に到達しにくい。そのため、家畜の体表に風が当たることによる家畜の体温低下を抑制することができる。
【0078】
被覆部2は、内層16、防風フィルム17、蓄熱保温材20を有する外層18、及び熱反射膜19を含む積層構造を有することにより、家畜を温めて保温することができる。太陽光や照明光が外層18に照射されると、その光が有する光エネルギの一部は、蓄熱保温材20によって熱エネルギに変換される。このことにより、外層18において熱が生じる。当該熱は、防風フィルム17及び内層16を介して家畜の体表に伝導する。ここで、被覆部2が家畜の体表に凹凸に沿って接触しているので、熱伝導における熱の損失が少ない。そのため、当該熱によって、高効率で家畜を温めることができる。なお、蓄熱保温材20は、自然資源である太陽光や、家畜舎内を照明するための照明光によって熱を生じるので、家畜を温めることを目的とした設備(例えば、暖房器具等)及び道具(例えば、カイロ等)は必要とされない。
【0079】
家畜が有する熱は、家畜の体表から輻射熱として常に失われ続けている。しかし、家畜用衣服1では、内層16の対向面16aに設けられた熱反射膜19が当該輻射熱を反射する。反射された熱は、家畜の体表に到達して、家畜を温める。このようにして、家畜から輻射熱として失われる熱量が減少することにより、家畜に対する保温性が高められる。
【0080】
前述のようにして、被覆部2に光が照射されているときには、家畜が温められる。また、熱反射膜19による高い保温性によって、家畜が温められた状態に維持される。さらに、例えば日没等によって被覆部2に光が照射されない状態に遷移した場合にも、家畜を長時間に亘って温められた状態に維持することができる。よって、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服1を実現することができる。
【0081】
また、第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、接続部3は、家畜用衣服1の着用状態において、家畜の背側で互いに接続される。つまり、冷気や風が侵入し得る被覆部2の継ぎ目は、家畜の内臓が偏在する腹側ではなく、背側に配置される。このことにより、被覆部2の継ぎ目から冷気や風が侵入して家畜の腹部に対する保温性が低下することを抑制することができる。
【0082】
また、接続部3が家畜の腹側に配置される場合、作業者は、家畜の腹部に近づき屈んだ状態で接続部3同士を接続する必要がある。このとき、作業者が家畜の四肢によって蹴られて受傷するおそれがある。一方、第1実施形態に係る家畜用衣服1では、接続部3が家畜の背側に配置されるので、作業者は、家畜の側方で立った状態で接続部3同士を接続することができる。このことにより、作業者が受傷する可能性を低減することができる。
【0083】
また、第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、前肢を1本ずつ2つの穴部23に挿通させる場合と比較して、家畜用衣服1を容易に着用させることができる。
【0084】
固定部4,10の第2端部4b,10bを被覆部2に対して着脱可能に構成する場合、家畜が被覆部2を地面等に擦り付けたり、別の家畜が固定部4,10の第2端部4b,10bを咥えて引っ張ったりすることにより、固定部4,10の第2端部4b,10bが被覆部2から取り外されてしまう可能性がある。一方、第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、被覆部2に取り付けられた状態の固定部4,10の第2端部4b,10bは、カバー8,14によって覆われる。このことにより、固定部4,10の第2端部4b,10bが被覆部2から外れてしまう可能性を低減することができる。よって、固定部4,10の取り付け直し等の保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服1を実現することができる。
【0085】
また、第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、カバー8の少なくとも一部が被覆部2の外表面2bに対して着脱可能である。このことにより、頸固定部4の第2端部4bをベルト装着部7に着脱するときに、カバー8の少なくとも一部を被覆部2の外表面2bから取り外して、被覆部2に設けられたベルト装着部7を露出させることができる。よって、カバー8が被覆部2の外表面2bに固定される構成と比較して、頸固定部4の着脱を容易に行うことができる。
【0086】
また、第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、被覆部2のベルト装着部13は、開口部15のみを介してカバー14の外部と連通する。このことにより、後肢固定部10の第2端部10bが被覆部2から外れてしまう可能性を更に低減することができる。よって、後肢固定部10の取り付け直し等の保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服1を実現することができる。
【0087】
また、第1実施形態に係る家畜用衣服1によれば、防風フィルム17を伸縮性を有する内層16及び外層18の少なくとも一方に固定することができる。このことにより、防風フィルム17が内層16及び外層18に固定されない構成と比較して、内層16、防風フィルム17、及び外層18からなる被覆部2の積層構造をより確実に維持することができる。よって、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくい家畜用衣服1を実現することができる。
【0088】
<第2実施形態>
図8~10を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る家畜用衣服1Aについて説明する。第2実施形態に係る家畜用衣服1Aが第1実施形態に係る家畜用衣服1と異なる点は、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとが第2方向D2における尾部側で連続し、被覆部2が円筒状に形成されている点である。また、被覆部2の胸被覆部24が設けられず、凹部21と穴部23とが一体になっている。また、後肢固定部10Aは、両端部において被覆部2に固定されている。
【0089】
図8は、本発明の第2実施形態に係る家畜用衣服1Aを示す平面図である。図8では、熱反射膜19を省略する。家畜用衣服1Aにおいて、被覆部2は、第1縁部2cの一部と第1縁部2dの一部とが連続した円筒状である。本実施形態では、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとは、第2方向D2における尾部側の一部で連続している。すなわち、被覆部2には、第2縁部2eから第2方向D2に沿って延び、第2縁部2fに到達しない切込部が形成されている。当該切込部の両側は、被覆部2の第1縁部2c,2dをそれぞれ構成する。
【0090】
接続部3は、各第1縁部2c,2dの第2方向D2における頭部側の端部から、当該切込部の先端部まで延びている。すなわち、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとが連続する部分には、接続部3は設けられていない。本実施形態では、接続部3は、線ファスナである。
【0091】
図9は、図8の家畜用衣服1Aにおける被覆部2の凹部21Aを示す部分拡大図である。図9には、被覆部2の外表面2bが表されている。被覆部2には、第2縁部2eから第2方向D2に沿って尾部側に向かって凹んだ凹部21Aが形成されている。凹部21Aは、本発明における「穴部」に対応する。凹部21Aは、第1実施形態に係る家畜用衣服1における凹部21及び穴部23(図1参照)に対応する。被覆部2の胸被覆部24(図1参照)は、第2実施形態に係る家畜用衣服1Aには設けられていない。凹部21Aには、家畜用衣服1Aの着用状態において、畜牛の両前肢が挿通される。第2方向D2において、凹部21Aの底部から第2縁部2eまでの長さは、家畜用衣服1における穴部23の尾部側の縁部から第2縁部2eまでの長さに対応する。
【0092】
被覆部2の頸被覆部22a,22bは、被覆部2における凹部21Aを介した両側部分のうち、第2縁部2eの近傍部分からなる。
【0093】
頸固定部4は、帯部5と取付部6とを有する。本実施形態では、帯部5は、ナイロンからなり、弾性を有してはいない。また、取付部6は、ワンタッチバックルである。帯部5は、一端部がワンタッチバックルに形成された穴に挿通され、被覆部2の頸被覆部22aに向かって折り返された状態で保持される。このことにより、帯部5と取付部6とは、ベルトを構成する。帯部5において、ワンタッチバックルの穴の挿通する位置を変更することにより、頸固定部4の長さを調節することができる。このことにより、頸周りの長さが様々な畜牛に対して、家畜用衣服1Aを着用させることができる。
【0094】
頸固定部4は、被覆部2の頸被覆部22aに固定された第1端部4aと、第1端部4aと反対側の第2端部4bとを有する。すなわち、頸固定部4の第1端部4aは、帯部5の他端部である。また、頸固定部4の第2端部4bは、取付部6である。頸固定部4は、第1方向D1に対して頭部側に30度の角度で延びた状態で、被覆部2の頸固定部22aに固定されていることが好ましい。本実施形態では、頸固定部4の第1端部4aは、被覆部2の頸被覆部22aに縫い合わされている。
【0095】
ベルト装着部7は、本実施形態ではワンタッチバックルである。ベルト装着部7は、第1方向D1に対して頭部側に30度傾いた状態で、被覆部2の頸被覆部22bに固定されていることが好ましい。本実施形態では、ベルト装着部7は、短いベルトを介して、被覆部2の頸被覆部22bに縫い合わされている。
【0096】
図10は、図8の家畜用衣服1Aにおける被覆部2の接触面2aの一部を示す図である。図10では、熱反射膜19を省略する。
【0097】
被覆部2の接触面2aには、2つの帯状の後肢固定部10Aが設けられている。後肢固定部10Aは、被覆部2の凹部25を介した両側にそれぞれ配置され、第2方向D2に沿って延びている。後肢固定部10Aの両端部は、被覆部2に固定されている。本実施形態では、後肢固定部10Aの両端部は、被覆部2に縫い合わされている。本実施形態では、後肢固定部10Aは、ポリエステルからなり、後肢固定部10Aが延びる方向に沿った弾性を有する。家畜用衣服1Aの着用状態において、被覆部2の接触面2aと各後肢固定部10Aとの間に、各後肢が挿通される。
【0098】
家畜用衣服1Aの着用時には、まず、畜牛の各後肢が、被覆部2の接触面2aと各後肢固定部10との間に挿通される。次いで、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとの連続部が畜牛の背側に配置される。次いで、接続部3が畜牛の背側において互いに接続される。最後に、頸固定部4の取付部6が、畜牛の両前肢よりも前方でベルト取付部7に取り付けられる。すなわち、ベルト装着部7に取り付けられた頸固定部4と、凹部21Aの底部との間に、畜牛の両前肢が挿通される。
【0099】
第2実施形態に係る家畜用衣服1Aによれば、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとが一部で連続している。このことにより、家畜用衣服1Aを着用させるときに、接続部3が互いに接続されていない状態であっても、被覆部2の第1縁部2c及び第1縁部2dの一部を畜牛の背側で保持することができる。したがって、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとが連続していない構成と比較して、家畜用衣服1Aの着用作業を容易にすることができる。
【0100】
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、第1~2実施形態では、家畜用衣服1,1Aは、畜牛に着用されるものとしたが、これに限定されず、例えば、豚、馬、山羊、鹿等の種々の家畜に着用されてもよい。
【0101】
第1~2実施形態では、各固定部4,10が帯部5,11と取付部6,12とを有するものとしたが、これに限定されない。例えば、各固定部4,10は、帯状の面ファスナからなる取付部6,12のみで構成されたベルトであってもよい。
【0102】
第1~2実施形態では、頸固定部4、カバー8,14、後肢固定部10,10A、及び胸被覆部24の固定方法として、縫い合わせを例示したが、これに限定されない。固定方法は、例えば、接着材等を介した接着及び溶着等であってもよい。また、頸固定部4、カバー8、後肢固定部10、及び胸被覆部24は、被覆部2と一体に形成されていてもよい。
【0103】
第1~2実施形態では、頸固定部4、カバー8、及び後肢固定部10の着脱可能な取付方法として、面ファスナ及びワンタッチバックルを例示したが、これに限定されない。着脱可能な取付方法は、例えば、線ファスナ、スナップボタン等の点ファスナ、ホック等の留め具、バックル等であってもよい。
【0104】
第1~2実施形態では、熱反射膜19が内層16の対向面16aの全面に亘って配置されるものとしたが、これに限定されない。熱反射膜19は、内層16の対向面16aの一部のみに配置されていてもよい。熱反射膜19は、内層16を対向面16aに直交する方向から見て、1つであっても、複数であってもよい。また、熱反射膜19の形状は、前記の円形に限らず、楕円形及び多角形等であってもよい。
【0105】
第1実施形態において、被覆部2には、凹部21が形成されていなくてもよい。この場合、被覆部2の頸被覆部22aと頸被覆部22bとは、家畜用衣服1の着用状態における家畜の腹側で連続する。
【0106】
第1実施形態では、カバー8は、家畜用衣服1の着用状態において、ベルト装着部7の一部を覆うものとしたが、これに限定されず、ベルト装着部7の全面を覆っていてもよい。
【0107】
第1実施形態では、穴部23は、家畜用衣服1の着用状態において、畜牛の両前肢を挿通可能であるものとしたが、これに限定されない。例えば、畜牛の両前肢のうち一方のみを挿通可能な穴部23が、被覆部2における第2仮想直線L2同士の間に2つ形成されていてもよい。
【0108】
第1実施形態では、カバー14は、家畜用衣服1の着用状態において、ベルト装着部13の全面を覆うものとしたが、これに限定されず、ベルト装着部7の一部のみを覆っていてもよい。
【0109】
本明細書及び特許請求の範囲において、「シート」及び「フィルム」という用語は、その部品の厚さを特定の範囲に限定することを意図するものではない。
【0110】
なお、前述の様々な実施形態から任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0111】
本発明は、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとって、種々の変形や修正は明白である。このような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る家畜用衣服は、保温性を維持するための作業を必要とせず、かつ、保温性が低下しにくいので、家畜の飼養等に有用である。
【符号の説明】
【0113】
1,1A 家畜用衣服
2 被覆部
2a 接触面
2b 外表面
2c,2d 第1縁部
3 接続部
4 頸固定部
4a 第1端部
4b 第2端部
8 カバー
10,10A 後肢固定部
10a 第1端部
10b 第2端部
14 カバー
15 開口部
16 内層
16a 対向面
17 防風フィルム
18 外層
19 熱反射膜
20 蓄熱保温材
23 穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の体表を覆うシート状の被覆部と、前記被覆部を前記家畜に固定する固定部とを備えた家畜用衣服であって、
前記被覆部は、
前記家畜の体表に接触する熱反射膜を有し、ニット生地からなる内層と、
前記内層に積層された防風フィルムと、
前記防風フィルムに対して前記内層と反対側に積層され、蓄熱保温材を含むニット生地からなる外層と、
を含む、家畜用衣服。
【請求項2】
前記被覆部は、対向する2辺に接続部を備え
記被覆部において、前記対向する2辺の中央を延びる第1仮想直線と前記対向する2辺の各々との中央を延びる2本の第2仮想直線同士の間に、前記家畜の前肢を挿通可能な穴部が形成される、
請求項1に記載の家畜用衣服。
【請求項3】
前記被覆部は、対向する2辺の一部が連続した円筒状に形成され、前記対向する2辺のうち互いに連続しない部分に設けられた接続部を有し、
前記被覆部において、前記対向する2辺の中央を延びる第1仮想直線と前記対向する2辺の各々との中央を延びる2本の第2仮想直線同士の間に、前記家畜の前肢を挿通可能な穴部が形成される、
請求項1に記載の家畜用衣服。
【請求項4】
前記穴部は、前記家畜の両前肢を挿通可能である、請求項2又は請求項3に記載の家畜用衣服。
【請求項5】
前記固定部は、第1端部と第2端部とを有し、前記第1端部が前記被覆部に固定され、前記第2端部が前記被覆部に着脱可能に取り付けられるベルトからなり、
さらに、前記被覆部の外表面に、前記被覆部に取り付けられた前記固定部の第2端部を覆うカバーが設けられる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の家畜用衣服。
【請求項6】
前記カバーは、少なくとも一部が前記被覆部の外表面に着脱可能に取り付けられるシートからなる、請求項5に記載の家畜用衣服。
【請求項7】
前記カバーは、前記被覆部の外表面に固定され、前記被覆部の外表面との間に前記固定部の第2端部を挿入可能な開口部を形成するシートからなる、請求項5又は請求項6に記載の家畜用衣服。
【請求項8】
前記防風フィルムは、伸縮性を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の家畜用衣服。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
図9は、図8の家畜用衣服1Aにおける被覆部2の凹部21Aを示す部分拡大図である。図9には、被覆部2の外表面2bが表されている。被覆部2には、第2縁部2eから第2方向D2に沿って尾部側に向かって凹んだ凹部21Aが形成されている。凹部21Aは、第1実施形態に係る家畜用衣服1における凹部21及び穴部23(図1参照)に対応する。被覆部2の胸被覆部24(図1参照)は、第2実施形態に係る家畜用衣服1Aには設けられていない。凹部21Aには、家畜用衣服1Aの着用状態において、畜牛の両前肢が挿通される。第2方向D2において、凹部21Aの底部から第2縁部2eまでの長さは、家畜用衣服1における穴部23の尾部側の縁部から第2縁部2eまでの長さに対応する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
家畜用衣服1Aの着用時には、まず、畜牛の各後肢が、被覆部2の接触面2aと各後肢固定部10との間に挿通される。次いで、被覆部2の第1縁部2cと第1縁部2dとの連続部が畜牛の背側に配置される。次いで、接続部3が畜牛の背側において互いに接続される。最後に、頸固定部4の取付部6が、畜牛の両前肢よりも前方でベルト取付部7に取り付けられる。すなわち、ベルト装着部7に取り付けられた頸固定部4と、凹部21Aとによって形成される穴部に、畜牛の両前肢が挿通される。