IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図1
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図2
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図3
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図4
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図5
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図6
  • 特開-削孔機及び注入材注入機構 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190329
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】削孔機及び注入材注入機構
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098601
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】捻金 宏太
(72)【発明者】
【氏名】金光 桂
(72)【発明者】
【氏名】上田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小谷 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】大川 光雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 陽平
(72)【発明者】
【氏名】大西 直宏
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040CB03
2D040DC02
2D040FA01
(57)【要約】
【課題】掘削深度や注入材の注入深度を機械的に把握できる削孔機又は注入材注入機構を提供する。
【解決手段】注入材注入機構10は、地盤Gへ挿入される注入管20と、注入管20へ挿入され所定の注入深度で注入管20内に注入材を吐出して、注入管20の周壁から地盤Gへ注入材を注入する注入ホース30と、注入材の注入時間と、注入材の注入量及び注入圧力の少なくとも一方と、を記録する記録装置60と、注入ホース30の外周面に設けられた識別子40と、地上に設置され、識別子40を検知して注入深度を検出する検出装置50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤へ挿入される削孔ロッドと、
前記削孔ロッドの外周面に設けられた識別子と、
地上に設置され、前記識別子を検知して掘削深度を検出する検出装置と、
を備えた削孔機。
【請求項2】
地盤へ挿入され、所定の注入深度で前記地盤へ注入材を注入する注入ホースと、
前記注入材の注入時間と、前記注入材の注入量及び注入圧力の少なくとも一方と、を記録する記録装置と、
前記注入ホースの外周面に設けられた識別子と、
地上に設置され、前記識別子を検知して前記注入深度を検出する検出装置と、
を備えた注入材注入機構。
【請求項3】
前記識別子は、前記注入ホースの外周面の全周に亘って面状に形成されたカラーマーカーであり、
前記検出装置は前記カラーマーカーの色を読み取り可能な装置である、
請求項2に記載の注入材注入機構。
【請求項4】
前記カラーマーカーは、
第一色で塗布された第一塗布部と、
前記第一塗布部と隣接する下方又は上方の何れか一方に設けられ第二色で塗布された第二塗布部と、
を備えている、
請求項3に記載の注入材注入機構。
【請求項5】
前記注入ホースには、前記識別子に付着した付着物を除去する除去機構が備えられている、請求項2~4の何れか1項に記載の注入材注入機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔機及び注入材注入機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、対象地盤中に注入する薬液の注入圧力又は注入速度を制御する薬液注入工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-330805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の薬液注入工法では、薬液の注入圧力を連続的に増減変化させる、鋸刃状に設定した範囲内で注入圧力の増減を繰り返す、又は、パルス状に漸増する、等の方法によって、薬液の注入圧力を動的に制御する。
【0005】
この薬液注入工法は、止水工、地盤補強工、アンカー工等に適用できる工法とされている。このような工法においては、薬液注入範囲を上下方向に拡張するために、薬液等の注入材を注入するための注入ホースを上下方向へ動かして、異なる深度において注入材を注入する場合がある。
【0006】
このように注入ホースを上下方向へ動かす場合は、深度毎に、注入材の注入圧力や注入量を把握することが求められている。しかしながら、注入材の注入圧力や注入量と深度とを紐づけて管理する機構は、従来提供されていない。
【0007】
注入材の注入圧力や注入量と深度とを紐づけて管理するためには、注入材の注入深度を把握する必要がある。また、例えば地盤を掘削ロッドで掘削する際には、掘削深度を把握する必要がある。
【0008】
従来の掘削方法では、作業員の目視等によって掘削深度を管理する場合が多い。しかし、一般的に、掘削ロッドや注入ホースの外周面は、軸方向に沿って一様に形成されているため、作業員の目視等によって掘削深度や注入深度を管理すると、誤差が生じやすい。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮して、掘削深度や注入材の注入深度を機械的に把握できる削孔機又は注入材注入機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の削孔機は、地盤へ挿入される削孔ロッドと、前記削孔ロッドの外周面に設けられた識別子と、地上に設置され、前記識別子を検知して掘削深度を検出する検出装置と、を備えている。
【0011】
請求項1の削孔機では、削孔ロッドの外周面に、識別子が設けられている。この識別子は、地上に設置された検出装置で検知され、これにより掘削深度が検出される。すなわち、掘削深度を機械的に把握できる。
【0012】
請求項2の注入材注入機構は、地盤へ挿入され、所定の注入深度で前記地盤へ注入材を注入する注入ホースと、前記注入材の注入時間と、前記注入材の注入量及び注入圧力の少なくとも一方と、を記録する記録装置と、前記注入ホースの外周面に設けられた識別子と、地上に設置され、前記識別子を検知して前記注入深度を検出する検出装置と、を備えている。
【0013】
請求項2の注入材注入機構では、注入ホースの外周面に、識別子が設けられている。この識別子は、地上に設置された検出装置で検知され、注入材の注入深度が検出される。すなわち、注入材の注入深度を機械的に把握できる。
【0014】
また、注入深度毎に、注入材の注入時間と、注入量及び注入圧力の少なくとも一つと、を紐付けることができるため、注入材の注入計画に対する出来形の照合が容易である。
【0015】
請求項3の注入材注入機構は、請求項2に記載の注入材注入機構において、前記識別子は、前記注入ホースの外周面の全周に亘って面状に形成されたカラーマーカーであり、前記検出装置は前記カラーマーカーの色を読み取り可能な装置である。
【0016】
請求項3の注入材注入機構では、カラーマーカーが、注入ホースの外周面の全周に亘って形成されている。これにより、注入ホースが回転しても、検出装置が色を読み取り、注入区間の深度を検出することができる。
【0017】
また、カラーマーカーは面状に形成されている。このため、線状に形成した目盛りなどのマーカーと比較して、検知可能な範囲が広く、誤差が生じにくい。また、注入ホースの外周面が土等で汚れても読取り易い。
【0018】
請求項4の注入材注入機構は、請求項3に記載の注入材注入機構において、前記カラーマーカーは、第一色で塗布された第一塗布部と、前記第一塗布部と隣接する下方又は上方の何れか一方に設けられ第二色で塗布された第二塗布部と、を備えている。
【0019】
請求項4の注入材注入機構では、カラーマーカーが、第一色で塗布された第一塗布部と、第二色で塗布された第二塗布部と、を備えている。
【0020】
第二塗布部は、第一塗布部と隣接する下方又は上方の何れか一方に設けられている。これにより、注入ホースを上方向へ移動させた場合と下方向へ移動させた場合とで、検出装置が検出する色の順序が異なる。これにより、注入ホースの移動方向を機械的に把握できる。
【0021】
請求項5の注入材注入機構は、請求項2~4の何れか1項に記載の注入材注入機構において、前記注入ホースには、前記識別子に付着した付着物を除去する除去機構が備えられている。
【0022】
請求項5の注入材注入機構では、除去機構によって、識別子に付着した付着物を除去できる。これにより、注入ホースの外周面が土等で汚れても、当該土などを除去できるため、識別子を読取り易い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、掘削深度や注入材の注入深度を機械的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る注入材注入機構を示す断面図である。
図2】(A)は注入管内に注入ホースを挿入している状態を示す部分拡大断面図であり、(B)はパッカー材を膨らませている状態を示す部分拡大断面図であり、(C)は吐出口から注入材を吐出している状態を示す部分拡大断面図である。
図3】(A)は地盤へ注入材を注入して地盤改良している状態を示す断面図であり、(B)は(A)と隣接する区間を地盤改良している状態を示す断面図であり、(C)は(B)と隣接する区間を地盤改良している状態を示す断面図である。
図4】(A)は検出装置によって検出された色強度と時間との関係の一例を示すグラフであり、(B)は記録装置によって記録された注入材の注入時間と、注入材の注入量との関係を示すグラフであり、(C)は記録装置によって記録された注入材の注入時間と、注入材の注入圧との関係を示すグラフである。
図5】(A)は検出装置によって検出された色強度と時間との関係の別の一例を示すグラフであり、(B)は記録装置によって記録された注入材の注入時間と、注入材の注入量との関係を示すグラフであり、(C)は記録装置によって記録された注入材の注入時間と、注入材の注入圧との関係を示すグラフである。
図6】(A)は識別子を1色で形成した例を示す立面図であり、(B)は識別子毎に色を変えた例を示す立面図であり、(C)は識別子を目盛りによって形成した例を示す立面図であり、(D)は識別子を二次元コードによって形成した例を示す立面図である。
図7】本発明の実施形態に係る削孔機の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る削孔機及び注入材注入機構について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0026】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
<注入材注入機構>
本発明の実施形態に係る注入材注入機構10は、ダブルパッカー工法によって注入材を地盤Gへ注入して地盤改良を実施するための機構である。注入材注入機構10は、図1に示すように、注入管20、注入ホース30、識別子40、検出装置50及び記録装置60を備えている。
【0028】
注入材の種類は特に限定されるものではなく、水ガラス、セメントミルク及び増粘剤を添加した水等の液体の他、粉体の地盤改良材などを採用することができる。
【0029】
(注入管)
注入管20は、地盤Gに形成された削孔GHに挿入される鋼製の筒状体である。注入管20の周壁には、筒軸方向に沿って所定の間隔(間隔L1)で、後述する注入ホース30から吐出された注入材を、注入管20の外側へ吐出するための開口部である吐出口22が形成されている。
【0030】
吐出口22は、注入材の吐出時以外は、注入管20の外周を被覆するゴムスリーブ24によって塞がれている。
【0031】
(注入ホース)
注入ホース30は、注入管20に挿入される可撓性を有した管体であり、先端部の周壁に、吐出口32が形成されている。吐出口32の前後(注入ホース30における軸方向の前後)には、それぞれ2つのパッカー材34が配置されている(所謂ダブルパッカー)。
【0032】
吐出口32は、図示しない送液装置等から注入ホース30の内部へ送出された注入材を、注入ホース30の外部であって、かつ、注入管20の内部へ吐出する開口部である。
【0033】
パッカー材34は、水圧によって膨らむゴム風船である。パッカー材34の外径は、萎んだ状態では注入ホース30の内径より小さい。このため、パッカー材34が萎んだ状態では、図2(A)に示すように、注入ホース30を注入管20の内部で移動させることができる。
【0034】
また、パッカー材34の外径は、膨らんだ状態では注入管20の内径より大きい寸法に変形可能とされている。このため、図2(B)に示すように、パッカー材34を膨らませることで、パッカー材34を注入管20の内周壁に密着させることができる。これにより、注入管20の内部において、吐出口32が配置された空間V1が止水される。
【0035】
このため、図2(C)に矢印で示すように、吐出口32から吐出された注入材は、注入管20の内部において吐出口32が配置された空間「以外」の空間V2には吐出されずに、注入管20の吐出口22を介して、注入管20の外側へ吐出される。
【0036】
なお、この際、ゴムスリーブ24は、注入剤の吐出圧力によって弾性変形し、ゴムスリーブ24と注入管20の外周面との間に隙間が形成される。注入材は、この隙間を通って注入管20の外側へ吐出される。注入管20の外側へ吐出された注入材は、図3(A)~(C)の区間E1、E2、E3に示されるように、地盤Gへ注入され、地盤G内に浸透する。
【0037】
このように、注入ホース30から吐出された注入材は、注入管20の吐出口22を介して地盤Gへ注入される。注入管20の吐出口22は、所定の間隔L1で配置されているため、注入材は、間隔L1毎、又は間隔L1の倍数毎の間隔で、地盤Gへ注入することができる。
【0038】
(識別子)
図1に示すように、識別子40は、注入ホース30の軸方向に所定の間隔(間隔L2)で配置されたカラーマーカーである。
【0039】
識別子40は、注入ホース30の外周面の全周に亘って面状に形成されている。「全周に亘って形成されている」とは、注入ホース30の周方向の全領域に形成されていることを示している。これに対して、注入ホース30の周方向の半分の領域のみに形成されている識別子は、「全周に亘って形成されている」とは称さない。
【0040】
識別子40は、注入管20の外周面に塗料を塗布することで形成されている。また、識別子は第一色としての赤色の塗料が塗布された第一塗布部42と、第二色としての緑色の塗料が塗布された第二塗布部44と、を備えている。第二塗布部44は、第一塗布部42と隣接して、第一塗布部42の下方に配置され、かつ、第一塗布部42より軸方向に沿う幅が小さく形成されている。
【0041】
第一塗布部42及び第二塗布部44の色は特に限定されるものではないが、機械的に識別し易い色彩の組み合わせを選択することが好ましい。「機械的に識別し易い色の組み合わせ」とは、例えば赤と緑のように補色関係にある色の組み合わせである。又は、例えば白と黒のように明度差が大きい色の組み合わせである。
【0042】
識別子40の間隔L2としては、様々な寸法を採用できる。例えば1[m]毎、2[m]といったメートル法に準拠した所定の寸法を採用できる。又は、注入管20の吐出口22の間隔L1と等しい寸法を採用してもよい。本実施形態においては、間隔L2は間隔L1と等しいものとする。
【0043】
(検出装置)
検出装置50は、地盤Gの外側である地上に設置され、識別子40を検知して注入材の注入深度を検出する。検出装置50は、例えばビデオカメラなどの撮像部を含んで形成され、この撮像部が、注入ホース30の外周面を撮像する。
【0044】
また、検出装置50は、CPU等の分析部を備えている。分析部は、撮像装置が撮像した画像の色を検知可能とされている。そして、この分析部が、撮像装置が撮像した画像から、識別子40の有無、色相及び明度を検知可能とされている。また、詳しくは後述するが、分析部は、画像の経時変化から、注入材の注入深度を検出する。さらに、分析部は、撮像画像が記録された時間を記録する。
【0045】
(記録装置)
記録装置60は、注入材の注入時間と、注入材の注入量及び注入圧力を記録するロガーである。注入材の注入量及び注入圧力は、注入ホース30の内部へ注入材を送出する図示しない送液装置等から、記録装置60へ送信される。
【0046】
なお、注入材注入機構10は、検出装置50及び記録装置60に加えて、検出装置50による識別子40の検知結果や、記録装置60による記録結果を作業者に知らせるモニタなどの表示手段を備えていてもよい。
【0047】
<地盤改良方法>
注入材注入機構10を用いて地盤Gを改良する方法の一例について説明する。地盤Gを改良するためには、図1に示すように、地盤Gに形成した削孔GHに注入管20を挿入する。
【0048】
なお、図3(A)に示すように、先端の吐出口である吐出口22Aから地盤Gへ注入される注入材が、地盤改良したい領域E0の下端部に達するように、注入管20を地盤Gへ挿入することが好ましい。
【0049】
換言すると、先端の吐出口である吐出口22Aから地盤Gへ注入される注入材が、地盤改良したい領域E0の下端部に達するように、注入材の注入圧や注入量を管理することが好ましい。
【0050】
次に、図3(A)に示すように、注入管20の内部に注入ホース30を挿入する。このとき、注入ホース30における2つのパッカー材34の間に、吐出口22Aが配置されるように、注入ホース30の挿入深さを調整する。
【0051】
注入ホース30の挿入深さは、識別子40によって把握する。識別子40によって注入ホース30の挿入深さを把握するためには、一例として、まず、吐出口22Aと検出装置50との距離が寸法L3とされている場合に、吐出口32からの距離が寸法L3の部分に、予め識別子40Aを形成しておく。識別子40Aは、注入ホース30における最も上流側の識別子とする。また、識別子40Aから下方に、上述した間隔L2(=間隔L1)毎に、識別子40B、40Cを形成しておく。
【0052】
そして、検出装置50が識別子40Aを検知している状態にすることで、注入ホース30における2つのパッカー材34の間に、吐出口22Aが配置されている状態とすることができる。すなわち、吐出口22Aの位置を、注入材の注入深度とすることができる。なお、ここで検知されるのは、識別子40Aにおける第一塗布部42とする。
【0053】
注入ホース30の挿入深さを調整後、注入ホース30の吐出口32から注入材を吐出して、吐出口22Aを介して地盤Gへ注入材を注入する。なお、図3(A)には、吐出口22Aから吐出された注入材によって地盤改良される区間を、区間E1として破線で示している。
【0054】
次に、図3(B)に示すように、注入ホース30を引き上げて、注入ホース30の挿入深さを調整する。この際、検出装置50が識別子40Aと隣り合う識別子40Bを検知している状態にすることで、注入ホース30における2つのパッカー材34の間に、吐出口22Aと隣り合う吐出口22Bが配置されている状態とすることができる。すなわち、吐出口22Bの位置を、注入材の注入深度とすることができる。
【0055】
なお、注入ホース30を引き上げるタイミングは、吐出口22Aから地盤Gへ注入された注入材が、地盤改良したい領域E0の下端部に達したと見込まれるタイミングが好ましい。このタイミングを決定するためには、注入材の注入圧や注入量を把握したうえで、注入時間を管理することが好ましく、さらに、上述した表示装置を用いて注入材の注入圧、注入量及び注入時間を確認することがさらに好ましい。
【0056】
注入ホース30の挿入深さが調整されたら、吐出口22Bを介して地盤Gへ注入材を注入する。図3(B)には、吐出口22Bから吐出された注入材によって地盤改良される区間を、区間E2として破線で示している。
【0057】
次に、図3(C)に示すように、注入ホース30を引き上げて、注入ホース30の挿入深さを調整する。この際、検出装置50が識別子40Bと隣り合う識別子40Cを検知している状態にすることで、注入ホース30における2つのパッカー材34の間に、吐出口22Bと隣り合う吐出口22Cが配置されている状態とすることができる。すなわち、吐出口22Cの位置を、注入材の注入深度とすることができる。
【0058】
注入ホース30の挿入深さが調整されたら、吐出口22Cを介して地盤Gへ注入材を注入する。図3(C)には、吐出口22Cから吐出された注入材によって地盤改良される区間を、区間E3として破線で示している。
【0059】
なお、上記の例では、吐出口32から注入材を吐出しながら注入ホース30の挿入深さを調整する例について説明したが、区間E1、E2を地盤改良するごとに、一旦注入材の吐出を中断して、注入ホース30の挿入深さの調整が完了してから吐出を再開してもよい。
【0060】
<注入深度、注入量及び注入圧の管理>
領域E0を上下方向に途切れなく地盤改良するために、区間E1、E2及びE3は、少なくとも上下方向の寸法を、間隔L1以上の寸法とする必要がある。また、区間E1、E2及びE3の横方向の寸法を、領域E0の横方向の寸法以上の寸法とする必要がある。
【0061】
さらに、領域E0を所望の品質で地盤改良するために、領域E0における注入材の濃度を、所定の濃度以上とする必要がある。
【0062】
このように、区間E1、E2及びE3の寸法を管理するためには、それぞれの区間に注入材を注入する「注入深度ごと」に、吐出口22A、22B及び22Cから吐出される注入材の「注入圧」と「注入時間」とを紐づけて管理することが好ましい。また、区間E1、E2及びE3における注入材の濃度を管理するためには、それぞれの注入深度ごとに、注入材の「注入量」と「注入時間」とを紐づけて管理することが好ましい。
【0063】
さらに、区間E1、E2及びE3の寸法及び区間E1、E2及びE3における注入材の濃度を正確に管理するために、それぞれの「注入深度ごと」に、注入材の「注入圧及び注入量」と、「注入時間」とを紐づけて管理することがさらに好ましい。
【0064】
(注入深度の管理)
図4(A)には、検出装置50が識別子40Aを検知している状態を初期状態として、検出装置50によって検出された色強度と時間との関係が模式的なグラフで示されている。検出装置50の分析部は、上述したように、画像の色を検知可能とされている。
【0065】
図4(A)において、縦軸の色強度は明度及び彩度を示している。以下の説明において、色強度が強い(弱い)とは、それぞれ、明度及び彩度が高い(低い)ことを示している。
【0066】
実線K1は赤の色相の色強度を示すグラフであり、破線K2は緑の色相の色強度を示すグラフである。注入ホース30(図1参照)における無塗装の外周面は黒色であり赤及び緑の色強度が弱い。一方、赤色の第一塗布部42及び緑色の第二塗布部44はそれぞれ、赤及び緑の色強度が強い。
【0067】
すなわち、図4(A)に示された実線K1のうち、色強度が強い部分では、検出装置50が識別子40A、40B、40Cの何れかにおける第一塗布部42を検知している(図3(A)~(C)参照)。このため、これらの部分においては、注入液が、吐出口22A、22B、22Cの何れかから地盤Gへ注入可能な状態とされている。
【0068】
また、破線K2のうち、色強度が強い部分では、検出装置50が識別子40A、40B、40Cの何れかにおける第二塗布部44を検知している。
【0069】
図4(A)における実線K1と破線K2の経時変化は、実線K1における色強度が強い部分に続けて、破線K2における色強度が強い部分が検知されたことを示している。すなわち、図1に示す第一塗布部42が検知された後に、第二塗布部44が検知されている。これは、注入ホースが引き抜かれることによって、上方の第一塗布部42に続けて、下方の第二塗布部44が検知されたことを示している。
【0070】
以上のことにより、検出装置50によって検知された情報に基づく図4(A)のグラフからは、以下のことが読み取れる。
【0071】
検出装置50が識別子40Aを検知している初期状態、すなわち吐出口22Aの位置が注入深度とされている(区間E1に注入材を注入している)初期状態が、期間T1で示した時間だけ維持されたこと。
【0072】
期間T1の経過後、注入ホース30が引き上げられて、検出装置50が識別子40Bを検知している状態、すなわち吐出口22Bの位置が注入深度とされている(区間E2に注入材を注入している)状態が、期間T2で示した時間だけ維持されたこと。
【0073】
期間T2の経過後、注入ホース30が引き上げられて、検出装置50が識別子40Cを検知している状態、すなわち吐出口22Cの位置が注入深度とされている(区間E3に注入材を注入している)状態が、期間T3で示した時間だけ維持されたこと。
【0074】
(注入量及び注入圧の管理)
図4(B)には、記録装置60によって記録された注入材の注入時間と、注入材の注入量(単位時間あたりの注入流量Q[m3/s])との関係が模式的なグラフで示されている。また、図4(C)には、記録装置60によって記録された注入材の注入時間と、注入材の注入圧P[Pa]との関係が模式的なグラフで示されている。
【0075】
ここで、図4(B)に、図4(A)に示された期間T1、T2、T3を図示すると、それぞれ、区間E1、E2、E3における注入材の注入時間と、注入材の注入量との関係を把握できる。同様に、図4(C)に、図4(A)に示された期間T1、T2、T3を図示すると、それぞれ、区間E1、E2、E3における注入材の注入時間と、注入材の注入圧との関係を把握できる。
【0076】
なお、図4(A)~(C)に示した例では、区間E1、E2、E3の順に、注入材を注入しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、図5(A)~(C)では、区間E1、E3、E2の順に、注入材を注入した例を示している。
【0077】
検出装置50によって検知された情報に基づく図5(A)のグラフからは、上記と同様に、以下のことが読み取れる。
【0078】
検出装置50が識別子40Aを検知している初期状態、すなわち吐出口22Aの位置が注入深度とされている(区間E1に注入材を注入している)初期状態が、期間T1で示した時間だけ維持されたこと。
【0079】
期間T1の経過後、注入ホース30が引き上げられて、検出装置50が識別子40Bを検知している状態、すなわち吐出口22Bの位置が注入深度とされている(区間E2に注入材を注入している)状態が、期間T2で示した時間だけ維持されたこと。
【0080】
しかし、期間T2は短い期間であるため、この期間T2は、注入ホース30を引き上げている途中に識別子40Bが検知された期間であること。
【0081】
その後、検出装置50が識別子40Cを検知している状態、すなわち吐出口22Cの位置が注入深度とされている(区間E3に注入材を注入している)状態が、期間T3で示した時間だけ維持されたこと。
【0082】
期間T3の経過後、注入ホース30が「押し下げ」られて、検出装置50が識別子40Bを検知している状態、すなわち吐出口22Bの位置が注入深度とされている(区間E2に注入材を注入している)状態が、期間T4で示した時間だけ維持されたこと。
【0083】
注入ホース30が「押し下げ」られたことは、破線K2における色強度が強い部分に続けて、実線K1における色強度が強い部分が検知されたことから把握できる。すなわち、図1に示す第二塗布部44が検知された後に、第一塗布部42が検知されている。これは、注入ホースが押し下げられることによって、下方の第二塗布部44に続けて、上方の第一塗布部42が検知されたことを示している。
【0084】
<作用及び効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る注入材注入機構10では、図1に示すように、注入ホース30の外周面に、識別子40が設けられている。この識別子40は、地上に設置された検出装置50で検知され、注入材の注入深度が検出される。すなわち、注入材の注入深度を機械的に把握できる。
【0085】
また、注入深度毎に、注入材の注入時間と、注入量及び注入圧力の少なくとも一つ(本実施形態においては双方)と、を紐付けることができるため、注入材の注入計画に対する出来形の照合が容易である。また、注入量や注入圧に異常値が生じた場合に、当該異常値が生じた深度を容易に把握することができる。
【0086】
また、識別子40はカラーマーカーとされ、注入ホース30の外周面の全周に亘って形成されている。これにより、注入ホース30が回転しても、検出装置50が色を読み取り、注入区間の深度を検出することができる。
【0087】
また、識別子40は面状に形成されている。このため、線状に形成した目盛りなどのマーカーと比較して、検知可能な範囲が広く、誤差が生じにくい。また、注入ホース30の外周面が土等で汚れても読取り易い。
【0088】
なお、識別子40を読み取り易くする観点から、注入ホース30には、識別子40に付着した付着物を除去する除去機構を設けてもよい。このような除去機構としては、識別子40に向かって水を噴射する水噴射装置や、識別子40の表面を拭うワイパーなどの洗浄装置等が挙げられる。
【0089】
水噴射装置や洗浄装置は、注入ホース30における識別子40の直下部又は直上部に設けることが好ましい。直下部又は直上部とは、概ね識別子40の下方又は上方の10cm程度以内の部分である。
【0090】
また、識別子40は、第一色である赤で塗布された第一塗布部42と、第二色である緑で塗布された第二塗布部44と、を備えている。そして第二塗布部44は、第一塗布部42と隣接する下方に設けられている。
【0091】
これにより、注入ホース30を上方向へ移動させた場合と下方向へ移動させた場合とで、検出装置50が検出する色の順序が異なる。これにより、注入ホース30の移動方向を機械的に把握できる。
【0092】
なお、本実施形態においては、それぞれの識別子40を2色で形成したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図6(A)に示す識別子70のように、1色で形成してもよい。この場合、検出装置50が、注入ホース30の引き上げ及び押し下げを、注入ホース30の動きを検知して把握する。
【0093】
また、図6(B)に示す識別子72A、72B、72Cのように、識別子毎に色を変えてもよい。このようにすることで、注入深度を容易に把握できる。
【0094】
さらに、図6(C)に示す識別子74のように、識別子を目盛りによって形成してもよい。目盛りには、寸法を併記することが好ましい。
【0095】
またさらに、図6(D)に示す識別子76のように、識別子をQRコード(登録商標)やバーコードのような二次元コードによって形成してもよい。すなわち、機械的に注入深度を把握できればよい。
【0096】
このように、本発明における識別子としては様々な態様を適用可能であり、上述した識別子40のように、注入ホース30の外周面の「全周に亘って」「面状に」形成されていなくてもよい。
【0097】
例えば上述した識別子76は注入ホース30の外周面の「全周に亘って」形成されていないし、識別子74は注入ホース30の外周面に「面状に」形成されていない。
【0098】
また、識別子40、70、72A、72B及び72Cは、色を用いて形成されるが、これらの色を用いた識別子も、面状ではなく線状に形成してもよく、線幅は特に限定されるものではない。つまり、これらの各場合において、検出装置50が、識別子を識別できればよい。識別子が識別することができれば、色を用いた識別子は、塗布ではなく、粘着レープ等によって形成することもできる。
【0099】
また、本実施形態においては、識別子40が3箇所に形成されている例について説明したが、識別子40の箇所数は、地盤改良したい領域E0の深さや、吐出口22の間隔L1に応じて、適宜選択することができる。
【0100】
また、本実施形態においては、単数の削孔GHによって地盤改良する例について説明したが、削孔GHは複数形成してもよい。削孔GHを複数形成する場合は、これら複数の削孔GHに、それぞれ注入管20及び注入ホース30を挿入して地盤改良してもよい。
【0101】
但し、互いに隣り合う削孔GHから同時に地盤改良する際は、注入材を、同じ注入深度で同時に注入しないことが好ましい。注入材を、同じ注入深度で同時に注入すると、地盤G内の圧力が過剰に高くなり、地盤Gが浮き上がる可能性がある。したがって、異なる注入深度で同時に注入することが好ましい。
【0102】
<変形例>
本発明における注入材注入機構は、2つのパッカー材34を用いたダブルパッカー工法に用いられるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。注入材注入機構は、地盤Gへ注入材を注入する各種工法(二重管ストレーナ工法など)に用いることができる。また、各種工法においては、注入管20のような外管を用いない単管構成の管体(例えば注入ホース30のみ)により、地盤Gへ注入材を注入してもよい。
【0103】
また、本発明は、注入材注入機構だけではなく、図7に示す削孔機12に適用することもできる。削孔機12は、地盤へ挿入される削孔ロッド80と、削孔ロッド80の外周面に設けられた識別子40と、地上に設置され、識別子40を検知して掘削深度を検出する検出装置50と、を備えるものとすればよい。このように削孔ロッド80に識別子40を設けることで、掘削深さを機械的に把握することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 注入材注入機構
12 削孔機
20 注入管
30 注入ホース
32 吐出口
34 パッカー材
40 識別子
40A 識別子
40B 識別子
40C 識別子
42 第一塗布部
44 第二塗布部
50 検出装置
60 記録装置
70 識別子
72A 識別子
74 識別子
76 識別子
80 削孔ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7