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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022019033
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/26 20060101AFI20220120BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220120BHJP
   B64C 27/14 20060101ALI20220120BHJP
   B64D 27/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B64C27/26
B64D27/24
B64C27/14
B64D27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122571
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】520265871
【氏名又は名称】スカイリンクテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】森本 高広
(57)【要約】
【課題】垂直離着陸時のホバリング効率を高め、その上で水平飛行時の高速性を実現する航空機を提供することを課題とする。
【解決手段】航空機1は、本体2と、その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼5と、回転軸6aが略鉛直上方に向けられ、且つ、本体2または翼5に設けられる1つ以上の固定プロペラ機構6と、回転軸7aの向きが変更可能にされ、且つ、本体2または翼3に設けられる1つ以上の可変プロペラ機構7とを備えており、固定プロペラ機構6は、飛行時に羽根6bの回転を停止または飛行時の空気抵抗を減少させるように回転されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼と、
回転軸が略鉛直方向に平行であると共に上方に向けられ、且つ、前記本体または翼に設けられる1つ以上の固定プロペラ機構と、
回転軸の向きが変更可能にされ、且つ、前記本体または翼に設けられる1つ以上の可変プロペラ機構とを備えており、
前記固定プロペラ機構は、飛行時に羽根の回転を停止または前記飛行時の空気抵抗を減少させるように回転されている、航空機。
【請求項2】
前記固定プロペラ機構の駆動部が電動機である、請求項1記載の航空機。
【請求項3】
前記固定プロペラ機構の駆動部がエンジンであり、前記回転軸への動力を入切りするクラッチをさらに備えている、請求項1記載の航空機。
【請求項4】
前記クラッチにより動力を切った後に、前記回転軸を駆動させる電動機をさらに備えている、請求項3記載の航空機。
【請求項5】
前記固定プロペラ機構の羽根の回転位置を検出するセンサと、
前記回転軸の回転を止めるブレーキ機構とを備えている、請求項2または4記載の航空機。
【請求項6】
前記固定プロペラ機構の羽根の羽根角が可変にされている、請求項1、2、3、4あるいは5のいずれかに記載の航空機。
【請求項7】
前記可変プロペラ機構が1組の翼の左右にそれぞれ設けられており、
前記可変プロペラ機構を設けた翼が、前記本体の長手方向の軸に対し略垂直な軸周りに傾動するようにされている、請求項1、2、3、4、5あるいは6のいずれかに記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラ機構を用いた航空機に関する。さらには詳しくは、プロペラ機構の回転軸を傾斜可能することができる航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直(短距離)離着陸のための手法として、例えば、チルトウィングと呼ばれるタイプが知られている。チルトウィングは、主翼をプロペラ機構ごと機体に対して傾ける(チルトする)ものである。
【0003】
特許文献1には、チルトウィングタイプの航空機、特許文献2にはチルトウィングタイプのドローンが開示されている。
特許文献3には、チルトウィングタイプで、且つ、本体の四方から4つの上向きのプロペラを設けた航空機が開示されている。このものは、垂直離着陸時にはプロペラ機構ごと翼を立て、水平飛行時には翼を寝かせる。四方に設けたプロペラは、水平飛行時には、空気抵抗を減少させるため、折り畳まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-254264号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第2571762号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第105173075号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、垂直離陸機の需要が増えるに伴って、垂直離着陸時から水平飛行時に渡る幅広い領域で、高いプロペラ効率が求められている。
一般に、垂直離着陸時に、ホバリング効率を高めるためには、プロペラの羽根を大径にし、大きなプロペラ面積を有するのがよい。しかし羽根が大径になると、先端にいくほど速度が速くなる。水平飛行時に、羽根表面の気流が音速を超えると、空気抵抗が大きくなり、航空機の高速性が低下する。
すなわち、大径の羽根で垂直離着陸時のホバリング効率を高めることと、その大径の羽根で水平飛行時の高速性を実現することは相反する技術事項である。
【0006】
そこで本発明は、垂直離着陸時のホバリング効率を高め、その上で水平飛行時の高速性を実現する航空機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の航空機は、本体と、その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼と、回転軸が略鉛直方向に平行であると共に上方に向けられ、且つ、前記本体または翼に設けられる1つ以上の固定プロペラ機構と、回転軸の向きが変更可能にされ、且つ、前記本体または翼に設けられる1つ以上の可変プロペラ機構とを備えており、前記固定プロペラ機構は、飛行時に羽根の回転を停止または前記飛行時の空気抵抗を減少させるように回転されている、ことを特徴としている。
【0008】
(2)このような航空機は、前記固定プロペラ機構の駆動部が電動機であるのが好ましい。
【0009】
(3)また前記固定プロペラ機構の駆動部がエンジンであり、前記回転軸への動力を入切りするクラッチをさらに備えているのが好ましい。
【0010】
(4)さらに前記クラッチにより動力を切った後に、前記回転軸を駆動させる電動機をさらに備えているのが好ましい。
【0011】
(5)さらに前記固定プロペラ機構の羽根の回転位置を検出するセンサと、
前記回転軸の回転を止めるブレーキ機構とを備えているのが好ましい。
【0012】
(6)さらに前記固定プロペラ機構の羽根の羽根角が可変にされているのが好ましい。
【0013】
(7)さらに前記可変プロペラ機構が1組の翼の左右にそれぞれ設けられており、前記可変プロペラ機構を設けた翼が、前記本体の長手方向の軸に対し略垂直な軸周りに傾動するようにされているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の航空機は、大きなプロペラ面積を確保できる。さらに羽根の回転速度を早くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の航空機の一実施形態を示す概略図である。
図2図2aは固定プロペラ機構および可変プロペラ機構の駆動機構を示す概略機構図、図2bは図2aの駆動機構の他の実施形態を示す概略機構図である。
図3図3aは固定プロペラ機構の羽根の翼型を示す概略断面図、図3bおよび図3cは固定プロペラ機構の羽根の前進方向に対する回転位置の一例を示す概略図、図3dは固定プロペラ機構の羽根における飛行時の空気抵抗を説明するための示す概略図である。
図4図4aは図3の航空機の他の例を示す概略図、図4bは図3の航空機のさらに他の例を示す概略図、図4cは図3の航空機のさらに他の例を示す概略図である。
図5図5図1の航空機の他の実施形態を示す概略図である。
図6図6aは図5の航空機の他の例を示す概略図、図6bは図5の航空機のさらに他の例を示す概略図、図6cは図5の航空機のさらに他の例を示す概略図、図6dは図5の航空機のさらに他の例を示す概略図である。
図7図7は羽根の翼型の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.概略説明]
<第1実施形態>
(航空機1)
まず図1を用いて本発明の航空機の概略を説明する。図に示している航空機1は、大まかには、本体2と、その本体2を中心にして、その両側面からそれぞれ反対向きに延びている一対の翼からなる主翼3とを備えている。また本体2の他端側には水平尾翼4が左右に延びている。その水平尾翼4の両端には、垂直尾翼4aがそれぞれ設けられている。
以後の説明において、本体2の延びている方向を前後方向(長手方向の軸が延びている方向)とし、主翼3の延びている方向を左右方向(長手方向の軸に略垂直な軸が延びている方向)とし、垂直尾翼4aの延びている方向を上下方向とする。そして本体2の主翼3のある側が前方で、水平尾翼4のうち翼が立っている側が左方で、垂直尾翼4aの先端側が上方である。なお、それらの前後・左右・上下は、図中に矢印で指し示している。
【0017】
主翼3の左右の翼には、固定プロペラ機構6、6がそれぞれ設けられている。図中の二点鎖線はプロペラの羽根を省略して記載するものである。水平尾翼4は本体2の長手方向の軸に略垂直な軸周りに回動/傾動するようにされている。水平尾翼4の左右の翼には、可変プロペラ機構7、7がそれぞれ設けられている。
【0018】
垂直離着陸の際には、航空機1は、水平尾翼4を立てた状態にして、可変プロペラ機構7により空気を下方へ押し出す。さらに固定プロペラ機構6も空気を下方へ押し出す。これらのプロペラ機構6、7による空気を下方に押し出す力の反作用で、航空機1は浮力を得る。
一方で水平飛行時には、水平尾翼4の面が本体2の長手方向の軸にほぼ平行になるように、水平尾翼4を回動/傾動する。これらの主翼3および水平尾翼4によって生み出される揚力を利用し、航空機1は高度を保つ。
図1では、右方の水平尾翼4は航空機1の水平飛行時の翼の状態を示しており、左方の水平尾翼4は航空機1の垂直離着陸時の翼の状態を示している。なお、本実施形態では、左右の翼は連結されており、回動/傾動する際には、同時に同じ向きに回動/傾動する。さらになお左右の翼が独立して回動/傾動するようにしてもよい。
【0019】
航空機1は、垂直離着陸時に、固定プロペラ機構6の羽根6bおよび可変プロペラ機構7の羽根7bの合計の羽根面積を利用することができる。このため、ホバリング効率が向上する。
また固定プロペラ機構6の羽根6bの羽根面積分だけ、可変プロペラ機構7の羽根7bの羽根長さを短くすることができる。このため、羽根7bの先端付近の気流が音速を超えない程度まで、羽根7bの回転数を上げることができ、水平飛行時の航空機1の高速性を実現できる。
【0020】
[2.各構成]
(本体2)
次に、各構成を説明する。本体2には、操縦者が乗っていてもよいし、地上コントロール局や管制から遠隔操縦される無人の航空機であってもよい。本体2には人の座席が設けられていたり、荷物などを収納するためのスペースが形成されていたりする。
【0021】
(水平尾翼4)
水平尾翼4は、本体2の内部で、左右の翼を連結している連結ロッド(図示せず)を備えている。例えば、その連結ロッドをアクチュエータなどを用いて回転させると、水平尾翼4は回動/傾動する。
【0022】
(可変プロペラ機構7、シャフト9、ヘベルギヤ機構9a)
図2aは固定プロペラ機構6および可変プロペラ機構7の駆動機構を示す概略機構図である。図に示している機構Aでは、可変プロペラ機構7は駆動部8としてのエンジン8aから動力を得ている。その動力は、ヘベルギヤ機構9aおよびシャフト9を介して伝達される。エンジン8aとして、例えば、ガソリンエンジン、ガスタービンなどの従来公知のエンジンを用いてよい。
【0023】
(バッテリ17、発電機18)
エンジン8aの近傍には発電機18または/およびバッテリ17が設けられている。エンジン8aの駆動により発電機18が発電し、発電した電気は後述する電動機8bに通電される。また発電した電気はバッテリ17に蓄電してもよい。その蓄電された電力は電動機8bで用いられる。なお発電機18を備えずに、予め充電されたバッテリ17を搭載してもよい。
【0024】
(固定プロペラ機構6)
本実施形態では、固定プロペラ機構6の羽根6bは大径であるから、大きな動力が必要である。このため、エンジン8aの動力が用いられる。エンジン8aの駆動力は、複数のヘベルギヤ機構9aおよびシャフト9を介して、固定プロペラ機構6に伝達される。
一方で、固定プロペラ機構6には、駆動部8として電動機(電動モータ)8bが設けられている。電動モータ8bは、バッテリ17または発電機18から電線17aを介して電気が送電される。また電動モータ8bには、インバータ8cが用いられている。インバータ8cにより電動モータ8bの回転数を変更することができる。なおインバータ8cは従来公知のものである。
【0025】
(クラッチ12)
固定プロペラ機構6と可変プロペラ機構7とを連結するシャフト9bには、クラッチ12が設けられている。クラッチ12を入切りすることにより、エンジン8aと固定プロペラ機構6との間の動力の伝達を入切りすることができる。本実施系形態では、クラッチ12として摩擦クラッチなどの円板クラッチを用いている。なお、従来公知の他のクラッチを用いてもよい。
【0026】
(ブレーキ機構10、センサ11)
本実施形態では、電動モータ8bにブレーキ機構10が一体的に設けられている。ブレーキ機構10としては、例えば、ディスクブレーキなどである。なお従来公知の他のブレーキ機構を採用してもよい。
センサ11は、例えばロータリエンコーダなどである。光電式、電磁式などの回転軸6a(図1参照)の回転角度を検出する従来公知のものを採用することができる。
本実施形態では、例えば、センサ11で回転軸6aの回転角度を検出しながら、電動モータ8bで回転軸6aを回転させ、所定の回転位置に到達したら、ブレーキ機構10を作動させ、回転軸6aをロックする。これにより羽根6bが所定の回転位置で固定される。
【0027】
[3.航空機の飛行]
(1)垂直離着陸時の動作
垂直離着陸時には、航空機1は水平尾翼4の左右の翼を立てた状態にする。このときクラッチ12は繋げられている。このためエンジン8aの動力は固定プロペラ機構6に伝達される。航空機1は、固定プロペラ機構6および可変プロペラ機構7の合計の羽根面積を利用して、ホバリングする。なお可変プロペラ機構7は、航空機1のホバリングの姿勢を制御するのに用いることができる。
【0028】
(2)水平飛行時の動作
次いで航空機1は、回転軸7aを前方に向けるように、水平尾翼4を次第に傾斜させ、最終的に寝かせて、水平飛行に移行する。
航空機1は、水平飛行により、主翼3などから揚力を得ている。このため、上向きに固定され、水平飛行に寄与してない固定プロペラ機構6を停止させる。その際の羽根6bの位置は、空気抵抗の影響が少なくなる回転位置に配置される。ブレーキ10は回転位置をロックする。
【0029】
(3)固定プロペラ機構6の羽根6bが受ける空気抵抗
(羽根6bを停止させる)
図3aは羽根6bの翼型13を示す概略断面図である。図に示している翼型13の断面形状は、一般的に、風を受ける側(先端側)の断面が湾曲形状の肉厚部13aと、後端側の断面が尖っている形状の薄肉部13bとからなる。例えば、薄肉部13bから風を受けると(図中の符号19参照)、先端の湾曲している部分14a付近と、後端の尖っている部分14b付近とで、羽根6bの表面を流れる気流が剥離(空気が乱れ)しやすく、空気抵抗が大きい状態になりやすい。
【0030】
図3bおよび図3cは、前進方向に対する羽根6bの回転位置の例を示す概略図である。図に示しているように、羽根6bの回転位置により、進行方向から受ける風が羽根6bと接触する部位が異なる。図の符号20は、進行方向から受ける風を示している。羽根6bが停止している回転位置により、風20により生じる羽根6bの受ける空気抵抗は異なる。このため本実施形態では、空気抵抗が減少する羽根6b回転位置を予め試験的に求め、その回転位置で羽根6bをブレーキ10によりロックしている。
【0031】
(所定の回転数で羽根6bを回転させる)
羽根6bを所定の回転位置でロックする他に、羽根6bを所定の回転数で回転させてもよい。
図3dは羽根6bが受ける飛行時の空気抵抗を説明するための概略図である。航空機1が水平飛行をする際に、羽根6bのうち、進行方向に回転している側の羽根6b(図の右方の羽根)は、翼型の肉厚部13a側から風を受けることとなる。一方で、後方に向けて進んでいる側の羽根6b(図の左方の羽根)は薄肉部13b側から風を受けることとなる。
したがって、羽根6bを回転させることで、左方の羽根の薄肉部13b側から当たる風の速度(合成速度21参照)を遅くすることでき、レイノルズ数を小さくすることができる。このため、羽根6bの表面を流れる気流の剥離が起こりづらくなり、空気抵抗の増加が抑えられる傾向にある。
なお、回転を速くすれば薄肉部13bの抵抗は減少する傾向にあるが、反対に進行方向側の肉厚部13aの回転速度が速くなる。羽根6bが音速に達すると抵抗が増えるため、回転数には上限があり、単に速くすればよい訳ではない。
【0032】
このように、羽根6bの回転数、羽根6bの長さ、羽根6bの飛行方向に対する傾き(羽根角)、航空機1の飛行速度により、羽根6bが受ける空気抵抗は異なる。このため、空気抵抗を小さくする回転数を試験的に求め、得られた回転数で羽根6bを回転させるのがよい。例えば、水平速度に応じて、電動モータ8bの回転数を変更するなどである。電動モータ8bの回転数はインバータ8cにより制御する。
【0033】
すなわち固定プロペラ機構6の羽根6bを停止または空気抵抗が少なくなるように回転させているので、航空機1の速度を向上させることができる。
【0034】
[4.他の実施形態]
(1)固定プロペラ機構6の他の実施形態
(1-1)羽根角の変更
これから説明する変形例、実施形態において、前述した第1実施形態と異なる部分のみ説明をし、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
固定プロペラ機構6の羽根6bを停止または回転させる際に、複数枚の羽根6bのそれぞれの羽根角を変更する機構15(図1の点線参照)を設けて、空気抵抗を減少させる羽根角としてもよい。ここで羽根角は、羽根6bの回転面に対する羽根6bの傾き角度である。
例えば、羽根の薄肉部13bの後方、且つ、表面側に向かう斜め上方から風を受けると(図3aの符号19a参照)、気流が剥離しやすい。このため、羽根角を変更する機構15を用いて、羽根6bが薄肉部13b側から受ける風の向きを調整するのがよい。
【0035】
(1-2)オートジャイロ
前述の固定プロペラ機構6では、水平飛行時に、羽根6bを停止または回転させているが、航空機1の前進する際の風を受けて羽根6bを自然に回転させ、揚力を発生させてもよい。例えば、クラッチ12を切り、回転軸6aをニュートラルな状態にする。そして本体2をその前側が上を向くように、可変プロペラ機構7の回転軸7aの向きを調整し、固定プロペラ機構6の羽根6bが進行方向からの風を受け易いようにする。
【0036】
(2)航空機1の変形例
図4a、図4bおよび図4cは、航空機1の他の例を示す概略図である。なお図では垂直尾翼の記載を省略している。
図4aに示す航空機1aは、航空機1において、チルト式の水平尾翼4の代わりにチルト式の前翼5を設けている。その前翼5に可変プロペラ機構7が設けられている。前翼5は、例えばカナードと呼ばれる種類の翼を含む従来公知のものである。
図4bに示す、航空機1bは、航空機1において、本体2の上面に3つ目の固定プロペラ機構6を設けている。
図4cに示す航空機1cは、航空機1において、主翼3に固定プロペラ機構6を設けていない。本体2の上面に1つの固定プロペラ機構6を設けている。本実施形態では、大径の固定プロペラ機構6を設けている、なお固定プロペラ機構6は複数設けてもよい。
上述の航空機1b、1cにおいて、チルト式の水平尾翼4の代わりにチルト式の前翼5を設け、その前翼5に可変プロペラ機構7を設けてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
図5図1の航空機1の他の実施形態を示す概略図である。図に示す航空機16は、前翼5は固定翼であり、主翼3をチルトさせるものである。主翼3の左右の翼には、可変プロペラ機構7、7がそれぞれ設けられている。また前翼5の左右の翼には、固定プロペラ機構6、6が設けられている。
【0038】
図2aは固定プロペラ機構6および可変プロペラ機構7の駆動機構を示す概略機構図である。図に示している機構Bでは、固定プロペラ機構6の羽根6bの径が小さいので、大きな動力を必要としない。このため機構Bでは、エンジン8aの動力を固定プロペラ機構6に伝達する機構を備えていない。固定プロペラ機構6は、バッテリ17および発電機18から動力を得ている。
なお航空機16において、航空機1と同じ機構Aを用いてもよい。
【0039】
(航空機16の変形例)
図6a、図6b、図6c、図6dおよび図6eは、それぞれ航空機16の変形例を示す概略図である。なお図では垂直尾翼の記載を省略している。
図6aに示す航空機16aは、航空機16において、前翼5の代わりに水平尾翼4を本体2から左右に延ばしている。その水平尾翼4に固定プロペラ機構6、6が設けられている。
図6bに示す航空機16bは、航空機16において、前翼5に設けていた固定プロペラ機構6、6の代わりに、本体2の前側の上面に固定プロペラ機構6を1つ設けている。なお本体2の後側に1つ設けてもよい。
図6cに示す航空機16cは、航空機16において、本体2の上面に追加的に固定プロペラ機構6を1つ設けている。なお複数設けてもよい。
図6dに示す航空機16dは、航空機16において、前翼5に設けていた固定プロペラ機構6、6の代わりに、本体2の前端に接続部材などを介して可変プロペラ機構7を設け、本体2の上面に固定プロペラ機構6を設けている。このものはチルトロータと呼ばれるタイプに相当する。なお固定プロペラ機構6は本体2の上面に複数個を設けてもよい。さらになお、航空機16dにおいて、本体2の後端に可変プロペラ機構7を設けてもよい。さらに本体2の前後端にそれぞれ可変プロペラ機構7、7設けてもよい。
【0040】
(羽根の翼型の変形例)
図7は翼型13の変形例を示す概略断面図である。図に示している翼型22は、最も肉厚になる部位を中央付近に配置している。さらに尖っている部分14bの厚みを増して湾曲に形成している。これにより先端の湾曲している部分14a付近および尖っている部分14b付近における気流の乱れを防止することができる。
【0041】
[5.その他]
上述した実施形態、変形例は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
例えば、本実施形態において、航空機1は、垂直離着陸機(VTOL機)または離陸時に短距離を滑走し、着陸時に垂直着陸する短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)として用いられる。
また本体2の水平に対して斜めに傾けて、斜め前方に前進しながら離陸してもよい。
本実施形態では、固定プロペラ機構の羽根は三枚であるが、二枚以下または四枚以上でもよい。
可変プロペラ機構7は、チルトウィングと呼ばれる翼ごと回動/傾動する機構を主に用いているが、翼に対して可変プロペラ機構7を傾動させるチルトロータと呼ばれる機構を用いてもよい。
【0042】
[6.まとめ]
(1)本発明の航空機1は、本体2と、その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼5と、回転軸6aが略鉛直方向に平行であると共に上方に向けられ、且つ、本体2または翼5に設けられる1つ以上の固定プロペラ機構6と、回転軸7aの向きが変更可能にされ、且つ、本体2または翼3に設けられる1つ以上の可変プロペラ機構7とを備えており、固定プロペラ機構6は、飛行時に羽根6bの回転を停止または飛行時の空気抵抗を減少させるように回転されている、ことを特徴としている。
このため離陸時は、固定プロペラ機構6の羽根6bおよび可変プロペラ機構7の羽根7bの合計の羽根面積を利用することができるので、ホバリング効率が向上する。さらに固定プロペラ機構6の羽根6bの羽根面積分だけ、可変プロペラ機構7の羽根7bの羽根長さを短くすることができる。
さらに水平飛行時は、可変プロペラ機構7の回転軸7aを前進方向にむける。可変プロペラ機構7の羽根7bの羽根長さを短くできるので、羽根7bの先端付近が音速を超えない程度まで、羽根7bの回転数を上げることができる。このため水平飛行時の高速性を実現できる。
また、固定プロペラ機構6の羽根6bを停止または抵抗が少なくなるように回転させることで、羽根6bの翼面における気流に対する速度が音速を超えないようにして、空気抵抗を抑えている。このため、航空機1の高速性を一層高めることができる。
【0043】
(2)このような航空機1は、固定プロペラ機構6の駆動部8が電動機8bであるので、羽根6bの位置合わせ、羽根6bの回転数の制御、水平飛行時の羽根6bの回転を容易にすることができる。
【0044】
(3)また固定プロペラ機構6の駆動部8がエンジン8aであり、回転軸6aへの動力を入切りするクラッチ12をさらに備えているので、負荷の大きな垂直離着陸時にエンジンの動力を用いることができる。またクラッチを切ることにより羽根6bの回転を任意の回転位置で停止させることができる。
【0045】
(4)さらにクラッチ12により動力を切った後に、回転軸6aを駆動させる電動機8bをさらに備えているので、負荷の大きな垂直離着陸時にエンジンの動力を用い、水平飛行時の回転を電動機8bにより行うことができる。
【0046】
(5)さらに固定プロペラ機構6の羽根6bの回転位置を検出するセンサ11
と、回転軸6aの回転を止めるブレーキ機構10とを備えているので、羽根6bを空気抵抗の小さいとされる所定の回転位置で停止させることができる。
【0047】
(6)さらに固定プロペラ機構6の羽根6bの羽根角が可変にされているので、水平飛行時の空気抵抗を一層低減できる。
【0048】
(7)さらに可変プロペラ機構7が1組の翼3の左右にそれぞれ設けられており、可変プロペラ機構7を設けた翼3が、本体2の長手方向の軸に対し略垂直な軸周りに傾動するようにされているので、垂直離着陸時に固定プロペラ機構6の羽根6bと共に、大きな羽根面積を有しているので、水平飛行時に可変プロペラ機構7の羽根7bの長さを短くすることができ、航空機1の高速性を高めることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 航空機
1a 航空機
1b 航空機
1c 航空機
2 本体
3 主翼
4 垂直尾翼
4a 水平尾翼
5 前翼
6 可変プロペラ機構
6a 回転軸
6b 羽根
7 固定プロペラ機構
7a 回転軸
7b 羽根
8 駆動部
8a エンジン
8b 電動機(電動モータ)
8c インバータ
9 シャフト
9a ヘベルギヤ機構
10 センサ
11 ブレーキ機構
12 クラッチ
13 翼型
13a 肉厚部
13b 薄肉部
14a 湾曲している部位
14b 尖っている部位
15 羽根角を変更する機構
16 航空機
16a 航空機
16b 航空機
16c 航空機
16d 航空機
17 バッテリ
18 発電機
19 後端側から受ける風
20 進行方向から受ける風
21 合成速度
22 翼型の変形例
A 機構
B 機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7