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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190331
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】有機化合物及び有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20221219BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221219BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221219BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221219BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20221219BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221219BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20221219BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
H05B33/14 B
H05B33/12 C
H01L27/32
H05B33/12 E
H05B33/02
G02B5/20
C09K11/06 660
C09K11/06 690
G09F9/30 365
G09F9/30 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098605
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】宮下 広和
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】山田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 洋伸
(72)【発明者】
【氏名】西出 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】河田 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐斗
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
4H050
5C094
【Fターム(参考)】
2H148AA00
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107DD51
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD68
3K107DD69
3K107EE03
3K107EE22
3K107EE28
3K107EE29
3K107EE61
3K107EE63
3K107EE68
3K107FF14
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
4H050WB11
4H050WB13
4H050WB21
5C094AA01
5C094AA31
5C094BA27
5C094CA19
5C094FB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発光特性と化合物の安定性に優れる有機化合物を提供する。
【解決手段】下記A33、B1等の化合物による。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M(L1n(L2m(Mは金属原子、n+m=3、n≧1)に示される有機化合物であって、M(L1)は下記一般式[1]乃至[3]に示され、M(L2)は下記一般式[4]乃至[5]に示されることを特徴とする有機化合物。
【化1】
前記一般式[1]乃至[3]において、環Aは、下記一般式[6]乃至[7]に示される構造から選ばれる。
【化2】
(*は結合位置を表す。)
前記一般式[1]乃至[3],[5]において、X1乃至X26は、炭素原子または窒素原子からそれぞれ独立に選ばれる。前記炭素原子は、水素原子、重水素原子、または置換基Rを有し、前記置換基Rは、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換あるいは無置換のシリル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる。
前記一般式[1]において、R1乃至R4は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記一般式[4],[6],[7]において、R5乃至R17は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換あるいは無置換のシリル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基、置換あるいは無置換の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。
【請求項2】
前記R1乃至R4は、メチル基、エチル基、イソプロピル基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
【請求項3】
前記R5乃至R17は、水素原子、重水素原子、ターシャリーブチル基、フェニル基のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機化合物。
【請求項4】
前記R8とR12は、水素原子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物。
【請求項5】
前記M(L1)は、前記一般式[1]で示されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機化合物。
【請求項6】
前記M(L1)は、前記一般式[2]乃至[3]で示されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機化合物。
【請求項7】
陽極と陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置される有機化合物層と、を有する有機発光素子において、
前記有機化合物層の少なくとも一層は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項8】
前記有機化合物を有する層が発光層であることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記発光層は、さらにホスト材料を有し、前記有機化合物の含有量は1質量%以上30質量%であることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記ホスト材料は、少なくともアジン環を骨格に有することを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記ホスト材料は、少なくともトリフェニレン、フェナンスレン、クリセン、フルオランテンのいずれかを骨格に有することを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記ホスト材料は、少なくともジベンゾチオフェン、ジベンゾフランのいずれかを骨格に有することを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記ホスト材料は、SP3炭素を有さないことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記発光層は、さらに第三の成分を有することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記発光層と積層して配置される別の発光層を更に有し、前記別の発光層は前記発光層が発する発光色とは異なる色を発光することを特徴とする請求項8乃至14のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項16】
白色に発光することを特徴とする請求項15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、請求項7乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続された能動素子と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項18】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は請求項7乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項19】
請求項7乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項20】
請求項7乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルタと、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項21】
請求項7乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項22】
請求項7乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有することを特徴とする電子写真方式の画像形成装置の露光光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物及びこれを用いた有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセンス素子」あるいは「有機EL素子」と称する場合がある)は、一対の電極とこれら電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。これら一対の電極から電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
有機発光素子の最近の進歩は著しく、その特徴として、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であることが挙げられる。
ところで、現在までに発光性の有機化合物の創出が盛んに行われている。高性能の有機発光素子を提供するにあたり、発光特性の優れた化合物の創出が重要であるからである。
これまでに創出された化合物として、特許文献1には下記化合物1-Aが記載されている。また、特許文献2には下記化合物1-Bが記載されている。
【0003】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-269734号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0296251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化合物1-Aは、本発明者らが調べたところ後述するように、発光特性と化合物の安定性にさらなる改善の余地がある材料であった。化合物1-Bは、本発明者らが調べたところ後述するように、化合物の安定性にさらなる改善の余地がある材料であった。
化合物1-Aは、さらなる発光特性と化合物の化学安定性に改善の余地がある。化合物の発光特性を向上させることで、さらに発光効率の高い有機発光素子を提供することができる。また、化合物の安定性を向上させることで、さらに耐久特性に優れる有機発光素子を提供することができる。化合物1-Bは、化合物の酸化安定性が低い。酸化安定性を向上させることでも、耐久特性に優れる有機発光素子を提供することができる。
すなわち、本発明の目的は、発光特性と化合物の安定性に優れる有機化合物を提供することであり、また本発明の他の目的は、発光特性および駆動耐久に優れる有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機化合物は、M(L1n(L2m(Mは金属原子、n+m=3、n≧1)に示される有機化合物であって、M(L1)は下記一般式[1]乃至[3]に示され、M(L2)は下記一般式[4]乃至[5]に示されることを特徴とする。
【0007】
【化2】
前記一般式[1]乃至[3]において、環Aは、下記一般式[6]乃至[7]に示される構造から選ばれる。
【0008】
【化3】
(*は結合位置を表す。)
前記一般式[1]乃至[3],[5]において、X1乃至X26は、炭素原子または窒素原子からそれぞれ独立に選ばれる。前記炭素原子は、水素原子、重水素原子、または置換基Rを有し、前記置換基Rは、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換あるいは無置換のシリル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる。
前記一般式[1]において、R1乃至R4は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記一般式[4],[6],[7]において、R5乃至R17は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換あるいは無置換のシリル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基、置換あるいは無置換の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る有機化合物は、量子収率が高く発光特性に優れる。また化合物自体の化学安定性が高い。このため、この有機化合物を用いることで、発光効率と耐久特性に優れる有機発光素子を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る有機化合物の平面性を示す図である。
図2】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の一例を表す概略断面図である。(b)本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
図4】(a)本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。
図5】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。(b)折り曲げ可能な表示装置の一例を表す模式図である。
図6】(a)本発明の一実施形態に係る照明装置の一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る車両用灯具を有する移動体の一例を示す模式図である。
図7】(a)本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの他の例を示す模式図である。
図8】(a)本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る画像形成装置の露光光源の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪有機化合物(有機金属錯体)≫
まず、本実施形態に係る有機化合物について説明する。本実施形態に係る有機化合物は、M(L1n(L2m(Mは金属原子n+m=3、n≧1)に示される有機化合物であって、M(L1)は下記一般式[1]乃至[3]に示され、M(L2)は下記一般式[4]乃至[5]に示される有機金属錯体である。
【0012】
【化4】
【0013】
一般式[1]乃至[3]において、環Aは、下記一般式[6]乃至[7]に示される構造から選ばれる。
【0014】
【化5】
(*は結合位置を表す。)
【0015】
<X1乃至X26
一般式[1]乃至[3],[5]において、X1乃至X26は、炭素原子または窒素原子からそれぞれ独立に選ばれる。炭素原子は、水素原子、重水素原子、または置換基Rを有し、置換基Rは、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換あるいは無置換のシリル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基、置換あるいは無置換の複素環基から選ばれる。
【0016】
[置換基R]
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の水素原子は重水素原子であってよい。隣接するアルキル基、例えばX3乃至X6、X9乃至X12、X15乃至X18で示される隣接するアルキル基は、結合して、ベンゼン環等の芳香環を形成してもよい。
【0018】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2-エチル-オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルコキシ基としては、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基が好ましい。
【0019】
アミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N-メチル-N-エチルアミノ基、N-ベンジルアミノ基、N-メチル-N-ベンジルアミノ基、N,N-ジベンジルアミノ基、アニリノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ジナフチルアミノ基、N,N-ジフルオレニルアミノ基、N-フェニル-N-トリルアミノ基、N,N-ジトリルアミノ基、N-メチル-N-フェニルアミノ基、N,N-ジアニソリルアミノ基、N-メシチル-N-フェニルアミノ基、N,N-ジメシチルアミノ基、N-フェニル-N-(4-ターシャリブチルフェニル)アミノ基、N-フェニル-N-(4-トリフルオロメチルフェニル)アミノ基、N-ピペリジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アミノ基としては、炭素原子数1以上6以下のアミノ基が好ましい。
【0020】
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ヘテロアリールオキシ基としては、例えば、フラニルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数6以上30以下の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0024】
複素環基としては、例えは、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。複素環基としては、炭素原子数3以上27以下の複素環基が好ましい。
【0025】
上記アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、芳香族炭化水素基、複素環基がさらに有してもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、ピリジル基、ピロリル基等の複素環基、シアノ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
<R1乃至R4
一般式[1]において、R1乃至R4は、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0027】
1乃至R4で表される、ハロゲン原子、アルキル基の具体例としては、X1乃至X26で説明したものと同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましい。アルキル基の水素原子は重水素原子であってよい。また、アルキル基がさらに有してもよい置換基の具体例としては、X1乃至X26で説明したものと同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
1乃至R4は、メチル基、エチル基、イソプロピル基のいずれかであることが好ましい。
【0029】
<R5乃至R17
一般式[4],[6],[7]において、R5乃至R17は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のヘテロアリールオキシ基、置換あるいは無置換のシリル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基、置換あるいは無置換の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0030】
5乃至R17で表される、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、芳香族炭化水素基、複素環基の具体例としては、X1乃至X26で説明したものと同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルキル基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が好ましい。アルコキシ基としては、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基が好ましい。アミノ基としては、炭素原子数1以上6以下のアミノ基が好ましい。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数6以上30以下の芳香族炭化水素基が好ましい。複素環基としては、炭素原子数3以上27以下の複素環基が好ましい。また、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、シリル基、芳香族炭化水素基、複素環基がさらに有してもよい置換基の具体例としては、X1乃至X26で説明したものと同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
5乃至R17は、水素原子、重水素原子、ターシャリーブチル基、フェニル基のいずれかであることが好ましい。また、R8とR12は、水素原子であることが好ましい。この場合、テトラヒドロアントラセン骨格またはキサントン骨格と環Aとの二面角が小さくなるため、Ir金属と配位しやすい構造となるからである。これにより、Ir錯体としてはより安定な化合物となる。
【0032】
<n,m>
n+m=3、n≧1である。nは1以上3以下の整数であることが好ましく、mは0以上2以下の整数であることが好ましい。また、n=1であることが好ましい。なぜなら、L1は平面性の高い構造であるため、分子会合しやすい化合物である。n=1である場合、分子量を小さくすることができ、より低い温度で、昇華精製や真空蒸着による素子作製を行うことができるからである。
【0033】
次に、本実施形態に係る有機化合物の合成方法を説明する。本実施形態に係る有機化合物は、例えば、下記に示す反応スキームに従って合成される。
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
ここで上記(a)乃至(k)および(l)乃至(x)に示される化合物を適宜変更することにより、種々の化合物を得ることができる。本実施形態に係る有機化合物の合成方法は、上記の合成スキームに限定されることなく、種々の合成スキームおよび試薬を用いることができる。尚、合成方法については実施例にて詳細に説明する。
【0037】
次に、本実施形態に係る有機化合物は、以下のような特徴を有するため、量子収率が高く、化合物の化学安定性に優れる化合物となり、さらにこの有機化合物を用いることで、発光効率と素子耐久に優れる有機発光素子を提供することもできる。
(1)環Aに、環と縮合する脂肪環を有さないために量子収率が高い。
(2)環Aに、環と縮合し、かつベンジル位に相当する部位を有する脂肪環を有さないために化合物の安定性が高い。
(3)環Aに、環と縮合する脂肪環を有さないためにIr錯体の対称性が向上し、安定な錯体となる。
(4)配位子L1の電子供与性を低減することで、酸化安定性の高いIr錯体となる。
【0038】
以下、これらの特徴について、比較化合物1-Aまたは1-Bを比較対照に挙げながら説明する。尚、比較化合物1-Aは特許文献1に記載の化合物1-A、比較化合物1-Bは特許文献2に記載の化合物1-Bである。
【0039】
(1)環Aに、環と縮合する脂肪環を有さないために量子収率が高い。
【0040】
本発明者らは、本発明の有機金属錯体を発明するにあたり、有機金属錯体の配位子の構造に注目した。具体的には、配位子を構成する環Aの芳香環と複素環が、より少ない配座異性体を有する構造とすることで量子収率の向上を試みた。
【0041】
ここで、例示化合物A33と比較化合物1-Aの発光特性を比較した結果を表1に示す。尚、発光波長の測定は、日立製F-4500を用い、室温下、励起波長350nmにおける希釈トルエン溶液のフォトルミネッセンス(PL)測定により行った。また、量子収率の測定は、希釈トルエン溶液での絶対量子収率を浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920-02)を用いて測定した。量子収率は、例示化合物A33の量子収率を1.0とした相対値により表す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1より、比較化合物1-Aよりも、例示化合物A33の方が、量子収率は高く、発光特性に優れることが分かる。これについて以下のように考察を行った。
【0044】
両化合物の構造上の差異は、比較化合物1-Aがピリジン環にシクロヘキサンが縮合した構造を有するのに対して、例示化合物A33はピリジン環(環A)に脂肪環が縮合していないことである。
【0045】
ここで、シクロヘキサンは、以下に示すように複数の立体配座を有することが知られている。これらの立体配座は熱などのエネルギーにより相互に構造変化し、配座異性体となる。
【0046】
【化8】
【0047】
比較化合物1-Aはピリジン環上にシクロヘキサンが縮合した構造を有している。このため、配座異性体を形成することになる。比較化合物1-Aでは、励起状態において、励起エネルギーがシクロヘキサン部位の構造変化に伴う熱エネルギーへ変換されたため、量子収率が低くなったと考えられる。また、シクロヘキサン部位が複数の配座異性体を有するため、励起状態としては複数の励起準位をとるため、励起寿命が長くなったことも、量子収率低下の要因として考えられる。
【0048】
一方、例示化合物A33には、複数の立体配座を有するシクロヘキサン構造を配位子を構成する環Aの骨格中に環と縮合した形で有さないため、励起状態における構造変化が小さく、速やかに発光過程に至るために、量子収率が高いと考察している。
【0049】
(2)環Aに、環と縮合し、かつベンジル位に相当する部位を有する脂肪環を有さないために化合物の安定性が高い。
【0050】
本発明者らは、本発明の有機金属錯体を発明するにあたり、有機金属錯体の配位子の構造の結合の強さに着目した。具体的には、配位子を構成する環Aの炭素-水素結合に、結合解離エネルギーが小さい結合が含まれないように分子設計を試みた。
【0051】
ここで、表2に、ACC.Chem.Res.36,255-263,(2003)に記載の炭素-水素結合の結合解離エネルギーを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
結合解離エネルギーが大きい数値の方が強い結合であり、小さい数値の方が弱い結合である。つまり、ベンジル基のベンジル位の炭素-水素結合は弱い結合であることが分かる。これは、ベンジル位の水素原子が脱離し、ラジカルとなった際に、隣り合うベンゼン環とのπ電子との共鳴により、ラジカルが安定するためである。このため、ベンジル位の炭素-水素結合は弱い結合である。すなわち、ベンジル基のような構造を分子構造中に有する場合、炭素-水素結合の結合が切断されやすい化合物となるため好ましくない。
【0054】
ここで、例示化合物A33と比較化合物1-Aの構造を、炭素-水素結合の観点から比較した結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3より、比較化合物1-Aは、ピリジン環と縮合する脂肪環が、結合が弱いベンジル位に相当する部位(表中の*の箇所)を2つ有するため、炭素-水素結合が切断されたラジカルが発生しやすい化合物である。有機発光素子では、素子駆動中に酸化還元が繰り返し行われており、また、励起状態の高エネルギーを有する分子が存在するため、素子を形成する分子にラジカルが発生しやすいことは好ましくない。なぜなら、ラジカル反応に伴う化合物の分解などの材料劣化を招いてしまうからである。
【0057】
一方、例示化合物A33では、環Aに、環と縮合し、かつ結合が弱いベンジル位に相当する部位を有する脂肪環を持たない。このため、化合物としてより安定性に優れる化合物であると言える。
【0058】
(3)環Aに、環と縮合する脂肪環を有さないためにIr錯体の対称性が向上し、安定な錯体となる。
【0059】
本発明者らは、本発明の有機金属錯体を発明するにあたり、有機金属錯体の立体配座に着目した。Ir錯体は正八面体の錯体構造をとることが知られている。
【0060】
ここで、例示化合物A33と比較化合物1-Aの錯体構造についての比較を表4に示す。尚、簡単のため、配位子は1つを描くことで錯体構造を表現している。表4中のC-Nは同一の二座配位子を表す。
【0061】
【表4】
【0062】
上記特徴(1)にて説明したとおり、比較化合物1-Aは、ピリジン環に複数の立体配座を有するシクロヘキサンが縮合した構造を有する。このため、錯体構造を考える場合、シクロヘキサンの配座によって、複数の錯体構造を形成することが可能になってしまう。言い換えれば、立体配座異性体により、錯体構造の対称性が低くなる。化合物の対称性が低いことは、融点低下を招く。比較化合物1-Aは、上述の特徴(2)に説明したとおり、ラジカルを発生しやすい化合物であるため、融点を越えるとラジカル由来の反応や分解を招く懸念がある。このことは、材料を高温にする昇華精製や真空蒸着して素子を作製する際に不利となる。
【0063】
別の観点として、複数の錯体構造を有する場合、熱的に不安定な構造を取る際に、分解を生じやすくなるため、好ましくないとも言える。
【0064】
よって、Ir錯体の錯体構造の対称性がより高く、複数の錯体構造を有さない例示化合物A33の方が、比較化合物1-Aよりも安定性が高いことが期待できる。
【0065】
(4)配位子L1の電子供与性を低減することで、酸化安定性の高いIr錯体となる。
【0066】
本発明者らは、本発明の有機金属錯体を発明するにあたり、有機金属錯体の配位子の共鳴構造に着目した。具体的には、配位子L1を構成する酸素原子の非共有電子対による共鳴構造により、Ir錯体が不安定になることがないように、分子設計を試みた。
【0067】
例えば、フェノールは、ヒドロキシ基の酸素原子の非共有電子対により、以下に示すように、共鳴構造を取る。すなわち、酸素原子の非共有電子対がベンゼン環上に流れ込むため、その負電荷が酸素原子の位置に対して、p位とo位に分布することがわかる。
【0068】
【化9】
【0069】
ここで、例示化合物A33と例示化合物B1と比較化合物1-Bの構造を、酸素原子の観点から比較した結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
例示化合物A33は、酸素原子を有さない一方で、比較化合物1-Bは、酸素原子を有している(表中の*の箇所)。このため、Ir金属と結合するフェニル基への電子供与性が大きくなる。とくにIr金属に対して、p位に位置する酸素原子による電子供与性の効果が大きくなることが考えられる。電子供与性が大きくなることは、HOMOが浅くなる(真空準位に近くなる)効果がある。言い換えれば、酸化されやすい材料となる。つまり、比較化合物1-Bは酸化安定性が低くなる。
【0072】
ここで、例示化合物B1は、酸素原子を有しているが、電子求引性の置換基であるケトン基を導入することで、Ir金属と結合するフェニル基への電子供与性を低減することができる。その結果、例示化合物B1は酸化安定性が高い材料となる。
【0073】
尚、本発明の有機金属錯体の特徴(2)乃至(4)に挙げた化合物の安定性の評価は、後述する実施例において、より詳細に述べる。
【0074】
本発明に係る有機化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。尚、以下に示す例示化合物において、一般式[1]乃至[7]において矢印で示した配位結合を点線で示している。
【0075】
【化10】
【0076】
【化11】
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
【0079】
【化14】
【0080】
A群に属する例示化合物は、M(L1)が一般式[1]で示され、環Aが、一般式[6]に示されるピリジン環である有機金属錯体である。このため発光波長は、緑色から黄色域である。これらの化合物を用いることで、緑色から黄色域の発光素子を提供することができる。
【0081】
B群に属する例示化合物は、M(L1)が一般式[2]乃至[3]で示され、環Aが、一般式[6]に示されるピリジン環である有機金属錯体である。このため発光波長は、緑色から黄色域である。また、これらの化合物は、電子求引性であるケトン基を有するため、とくに酸化安定性が高い化合物である。
【0082】
C群に属する例示化合物は、M(L1)が一般式[1]乃至[3]で示され、環Aが、一般式[7]に示されるキノリン環である有機金属錯体である。このため発光波長は、黄色から赤色域である。これらの化合物を用いることで、黄色から赤色域の発光素子を提供することができる。
【0083】
さらに本発明の化合物は、有機発光素子中の発光層で、以下のような条件で用いることが好ましい。
(5)本発明の化合物を、発光層中において1質量%以上30重量%以下の含有量にてホスト材料と混合する。
(6)本発明の化合物と発光層中で混合するホスト材料は、少なくとも、アジン骨格を有する。
(7)本発明の化合物と発光層中で混合するホスト材料は、少なくともトリフェニレン、フェナンスレン、クリセン、フルオランテンのいずれかを骨格に有する。
(8)本発明の化合物と発光層中で混合するホスト材料は、少なくともジベンゾチオフェン、ジベンゾフランのいずれかを骨格に有する。
(9)本発明の化合物とともに用いるホスト材料は、SP3炭素を有さない。
【0084】
以下、上記の条件について説明する。
(5)本発明の化合物を、発光層中において1質量%以上30重量%以下の含有量にてホスト材料と混合する。
【0085】
特許文献1によると、上述の比較化合物1-Aを発光層に用いる際には、51質量%以上100重量%以下で用いることが最も好ましいという記載がある。一方、本発明の有機金属錯体を発光層に用いる際には1質量%以上30重量%であることが好ましい。このことは、特許文献1と本発明の思想が逆方向であることを示していると言える。すなわち、本発明の有機金属錯体は、発光層に用いる際には、低濃度下においてこそ、特性に優れる機能を発現する化合物であるといえる。また、低濃度であることで、高効率、高色純度の発光素子を提供することができる。
【0086】
これは、本発明の有機金属錯体の構造上の特徴によるものである。本発明の有機金属錯体は、配位子に平面性の高いテトラヒドロアントラセン骨格またはキサントン骨格を有している。このため、発光層に過剰に高濃度で混合すると、有機金属錯体同士が凝集し、濃度消光を起こしやすくなるため、発光効率の低下を招いてしまう可能性がある。このため、本発明の有機金属錯体を発光層に用いる際には1質量%以上30重量%であることが好ましい。このような条件において、高効率の発光素子を提供することができる。
【0087】
(6)本発明の化合物と発光層中で混合するホスト材料は、少なくとも、アジン骨格を有する。
【0088】
本発明の有機金属錯体は、HOMOが深く、酸化安定性が高い化合物である。このため、本発明の有機金属錯体とともに発光層を形成するホスト材料もHOMOが深い材料であることが好ましい。なぜならば、ホスト材料とのHOMOおよびLUMOの過剰なギャップを生み出さずに済むからである。
【0089】
ここで、本発明者らは、HOMOが深い材料として、ホスト材料の骨格にアジン環を有することが好ましいことを見出した。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジンなどのアジン環は、電子欠乏性の複素環である。すなわち、これらの構造を有するホスト材料はHOMOが深くなることが期待できる。
【0090】
一方で、アジン環のみからなるホスト材料では、HOMOが深くなりすぎるため、正孔輸送層から発光層への正孔注入の悪化が懸念される。そのため、正孔注入特性を維持できる程度にHOMOが浅くなることを期待できるカルバゾール骨格を導入することが特に好ましい。
【0091】
すなわち、カルバゾール骨格とアジン骨格を有することで、本発明の有機金属錯体と好適なHOMOとLUMOのギャップを有する発光層を形成することができ、かつ、正孔輸送層及び電子輸送層から発光層へのキャリア注入を維持することができる。
【0092】
尚、アリールアミンやカルバゾール骨格のみからなるホスト材料となると、HOMOが浅いホスト材料となる。HOMOが浅いホスト材料を用いた場合には、発光層全体が、HOMOが浅く、かつ、LUMOも浅くなるため、電子輸送層から発光層への電子注入が困難となるため好ましくない。具体的には、CBP(4,4‘-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル)などは、本発明の有機金属錯体とともに用いるホスト材料としては好ましくない。
【0093】
(7)本発明の化合物と、発光層中で混合するホスト材料は、少なくともトリフェニレン、フェナンスレン、クリセン、フルオランテンのいずれかを骨格に有する。
【0094】
本発明の有機金属錯体は、テトラヒドロアントラセン骨格またはキサントン骨格を有している。図1に示すように、テトラヒドロアントラセン骨格およびキサントン骨格は平面性の高い構造である。このため、ホスト材料としては、同様に、平面性が高い構造を有することが好ましい。なぜなら、平面性の高い構造を有することで、平面性の高い部位同士が相互作用にて接近することができるからである。より具体的には有機金属錯体のテトラヒドロアントラセン部位またはキサントン骨格と、ホスト材料の平面性部位が接近しやすくなる。このため、有機金属錯体とホスト材料の分子間距離が短くなることが期待できる。
【0095】
ここで、燐光発光素子に用いられる三重項エネルギーは、デクスター機構によるエネルギー移動が行われることが知られている。デクスター機構は分子同士の接触により、エネルギー移動が行われる。すなわち、ホスト材料とゲスト材料との分子間距離が短くなることで、効率よくホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動が行われることになる。
【0096】
本発明において、平面性の高い材料をホスト材料に用いることで、有機金属錯体とホスト材料の分子間距離が短くなり、より高効率にホストから有機金属錯体へのエネルギー移動を起こりやすくなる。結果として、高効率な有機発光素子を提供することができる。
【0097】
ここで、平面性の高い構造とは、トリフェニレン、フェナンスレン、クリセン、フルオランテンを指す。少なくともこれらの構造のいずれかを有する化合物をホスト材料とすることで、本発明の有機金属錯体はより高効率の発光素子を提供することができる。
【0098】
(8)本発明の化合物と発光層中で混合するホスト材料は、少なくともジベンゾチオフェン、ジベンゾフランのいずれかを骨格に有する。
【0099】
本発明の有機金属錯体は、配位子にテトラヒドロアントラセン骨格またはキサントン骨格を有している。このため、表6に示すように、配位子とIr金属とで形成するHOMO部位は、テトラヒドロアントラセンの9,10位のSP3炭素により、共役が切れている特徴的な分子軌道を有する。キサントンに関しても同様である。
【0100】
このため、HOMOの分子軌道において、テトラヒドロアントラセン骨格およびキサントン骨格のIr金属の反対側が空軌道となるため、ホール輸送能が低くなってしまう。
【0101】
このホール輸送能を改善するために、ホスト材料としてはホール輸送能に優れる骨格を有する材料であることが好ましい。ホール輸送能に優れる骨格とは、非共有電子対を豊富に有し、電子供与性の高い骨格である。具体的には、上記条件(6)で説明したようなカルバゾールなどの電子供与性の窒素原子を有する骨格や、ジベンゾチオフェンやジベンゾフランのような非共有電子対を豊富に有するカルコゲン原子を有する骨格である。
【0102】
このうち、本発明の有機金属錯体と好適に用いることができるホストとしては、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランの骨格を有することが好ましい。ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランの骨格は、極端にHOMOが浅くなることがないため、ホールと電子のキャリアバランスを調整することができ、かつ、本発明の有機金属錯体のホール輸送能を補助する骨格としてふさわしい。
【0103】
【表6】
【0104】
(9)本発明の化合物とともに用いるホスト材料は、SP3炭素を有さない。
【0105】
本発明の有機金属錯体は、上記条件(6)で述べたように、ホスト材料との距離を改善することで発光特性が改善される特徴を有する化合物であることを述べた。ホスト材料としては、さらにSP3炭素を有さない材料となることで、有機金属錯体との距離を短くすることができる。なぜならば、SP3炭素を持つ場合には、アルキル基の有する疎水性相互作用と立体障害により、有機金属錯体とホスト材料との距離が離れてしまうからである。SP3炭素を有さないホスト材料となることで、ゲスト材料である有機金属錯体との距離が短くなることができる。
【0106】
本発明に係る好ましいホスト材料の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0107】
【化15】
【0108】
【化16】
【0109】
【化17】
【0110】
【化18】
【0111】
AA群に属する例示化合物は、少なくともアジン環を骨格に有する化合物である。このため、これらの化合物は、HOMOが深く、本発明の有機金属錯体とのHOMOとLUMOのギャップが小さいため、本発明の有機金属錯体と良好な発光層を形成することができる。
【0112】
BB群に属する例示化合物は、少なくともトリフェニレン、フェナンスレン、クリセン、フルオランテンのいずれかを骨格に有し、かつ、SP3炭素を有さない化合物である。このため、これらの化合物は本発明の有機金属錯体と距離をより接近することができるため、本発明の有機金属錯体への良好なエネルギー移動をするホスト材料である。このうち、トリフェニレンを骨格に有する化合物が、平面性が高く、特に好ましい。
【0113】
CC群に属する例示化合物は、少なくともジベンゾチオフェン、ジベンゾフランのいずれかを骨格に有し、かつ、SP3炭素を有さない化合物である。このため、これらの化合物は本発明の有機金属錯体と発光層を形成した場合、HOMOとLUMOのバランスが良くなる。そのため、本発明の有機金属錯体のホスト材料として用いた場合には、良好なキャリアバランスを実現するホスト材料である。このうち、ジベンゾチオフェンを骨格に有する化合物が、非共有電子対が豊富であり、とくに好ましい。
【0114】
≪有機発光素子≫
次に、本実施形態の有機発光素子について説明する。
【0115】
本実施形態の有機発光素子は、一対の電極である陽極と陰極と、これら電極間に配置される有機化合物層と、を少なくとも有する。本実施形態の有機発光素子において、有機化合物層は発光層を有していれば単層であってもよいし複数層からなる積層体であってもよい。ここで有機化合物層が複数層からなる積層体である場合、有機化合物層は、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。また発光層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0116】
本実施形態の有機発光素子において、有機化合物層の少なくとも一層に本実施形態に係る有機化合物が含まれている。具体的には、本実施形態に係る有機化合物は、発光層、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等のいずれかに含まれている。本実施形態の係る有機化合物は、好ましくは、発光層に含まれる。
【0117】
本実施形態の有機発光素子において、本実施形態に係る有機化合物が発光層に含まれる場合、発光層は、本実施形態に係る有機化合物のみからなる層であってもよいし、本実施形態に係る有機化合物と他の化合物とからなる層であってもよい。ここで、発光層が本実施形態に係る有機化合物と他の化合物とからなる層である場合、本実施形態に係る有機化合物は、発光層のホストとして使用してもよいし、ゲストとして使用してもよい。また発光層に含まれ得るアシスト材料として使用してもよい。ここでホストとは、発光層を構成する化合物の中で質量比が最も大きい化合物である。またゲストとは、発光層を構成する化合物の中で質量比がホストよりも小さい化合物であって、主たる発光を担う化合物である。またアシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で質量比がホストよりも小さく、ゲストの発光を補助する化合物である。尚、アシスト材料は、第2のホストとも呼ばれている。ここで、本実施形態に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、ゲストの濃度は、発光層全体に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、発光層は、ホストの他に、アシスト材料等の第三の成分を含有してもよい。
【0118】
本発明者らは種々の検討を行い、本実施形態に係る有機化合物を、発光層のホスト又はゲストとして、特に、発光層のゲストとして用いると、高効率で高輝度な光出力を呈し、かつ極めて耐久性が高い素子が得られることを見出した。この発光層は単層でも複層でも良いし、本実施形態の発光色を緑発光とし、他の発光色を有する発光材料を含むことで、混色させることも可能である。複層とは発光層と別の発光層とが積層している状態を意味する。この場合、有機発光素子の発光色は緑色に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。白色の場合、別の発光層が緑以外の色、すなわち青色や赤色を発光する。また、製膜方法も蒸着もしくは塗布製膜で製膜を行う。この詳細については、後述する実施例で詳しく説明する。
【0119】
本実施形態に係る有機化合物は、本実施形態の有機発光素子を構成する発光層以外の有機化合物層の構成材料として使用することができる。具体的には、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層、ホールブロッキング層等の構成材料として用いてもよい。この場合、有機発光素子の発光色は緑色に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。
【0120】
ここで、本実施形態に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物、電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0121】
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にして、かつ注入されたホールを発光層へ輸送できるようにホール移動度が高い材料が好ましい。また有機発光素子中において結晶化等の膜質の劣化を低減するために、ガラス転移点温度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、アリールカルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。さらに上記のホール注入輸送性材料は、電子ブロッキング層にも好適に使用される。以下に、ホール注入輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0122】
【化19】
【0123】
主に発光機能に関わる発光材料としては、本実施形態の有機化合物の他に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、イリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、銅錯体、ユーロピウム錯体、ルテニウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。以下に、発光材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0124】
【化20】
【0125】
【化21】
【0126】
発光層に含まれる発光層ホストあるいは発光アシスト材料としては、上記で述べたAA群乃至CC群の材料以外にも、芳香族炭化水素化合物もしくはその誘導体の他、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体等が挙げられる。また、本実施形態の有機金属錯体のうち、M(L1)が一般式[2]乃至[3]で示される化合物の場合、アシスト材料としては、同じキサントン骨格を有するEM28、EM30が特に好ましい。以下に、発光層に含まれる発光層ホストあるいは発光アシスト材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0127】
【化22】
【0128】
電子輸送性材料としては、陰極から注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、クリセン誘導体、アントラセン誘導体等)が挙げられる。さらにの電子輸送性材料は、ホールブロッキング層にも好適に使用される。以下に、電子輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0129】
【化23】
【0130】
<有機発光素子の構成>
有機発光素子は、基板の上に、絶縁層、第一電極、有機化合物層、第二電極を形成して設けられる。第二電極の上には、保護層、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。カラーフィルタとマイクロレンズとの間において、平坦化層を設ける場合も同様である。
【0131】
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、第一電極との間に配線が形成可能なように、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0132】
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
【0133】
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものが良い。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン、等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
【0134】
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0135】
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。上記の材料にて、電極としての役割を有さない、反射膜として機能することも可能である。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
【0136】
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム-銀、アルミニウム-リチウム、アルミニウム-マグネシウム、銀-銅、亜鉛-銀等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を低減するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が低減できれば、合金の比率は問わない。例えば、銀:他の金属が、1:1、3:1等であってよい。
【0137】
陰極は、ITOなどの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流及び交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
【0138】
[有機化合物層]
有機化合物層は、単層で形成されても、複数層で形成されてもよい。複数層を有する場合には、その機能によって、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホールブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、と呼ばれてよい。有機化合物層は、主に有機化合物で構成されるが、無機原子、無機化合物を含んでいてもよい。例えば、銅、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、イリジウム、白金、モリブデン、亜鉛等を有してよい。有機化合物層は、第一電極と第二電極との間に配置されてよく、第一電極及び第二電極に接して配されてよい。
【0139】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層(正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)は、以下に示す方法により形成される。
【0140】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ等のドライプロセスを用いることができる。またドライプロセスに代えて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。
【0141】
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0142】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0144】
[保護層]
第二電極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、第二電極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、第二電極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機化合物層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、第二電極を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。ALD法による膜の材料は限定されないが、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等であってよい。ALD法で形成した膜の上に、さらにCVD法で窒化ケイ素を形成してよい。ALD法による膜は、CVD法で形成した膜よりも小さい膜厚であってよい。具体的には、50%以下、さらには、10%以下であってよい。
【0145】
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
【0146】
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は、下の層の凹凸を低減する目的で設けられる。目的を制限せずに、材質樹脂層と呼ばれる場合もある。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
【0147】
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等があげられる。
【0148】
[マイクロレンズ]
有機発光素子または有機発光装置は、その光出射側にマイクロレンズ等の光学部材を有してよい。マイクロレンズは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等で構成されうる。マイクロレンズは、有機発光素子または有機発光装置から取り出す光量の増加、取り出す光の方向の制御を目的としてよい。マイクロレンズは、半球の形状を有してよい。半球の形状を有する場合、当該半球に接する接線のうち、絶縁層と平行になる接線があり、その接線と半球との接点がマイクロレンズの頂点である。マイクロレンズの頂点は、任意の断面図においても同様に決定することができる。つまり、断面図におけるマイクロレンズの半円に接する接線のうち、絶縁層と平行になる接線があり、その接線と半円との接点がマイクロレンズの頂点である。
【0149】
また、マイクロレンズの中点を定義することもできる。マイクロレンズの断面において、円弧の形状が終了する点から別の円弧の形状が終了する点までの線分を仮想し、当該線分の中点がマイクロレンズの中点と呼ぶことができる。頂点、中点を判別する断面は、絶縁層に垂直な断面であってよい。
【0150】
[対向基板]
平坦化層の上には、対向基板を有してよい。対向基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。対向基板は、前述の基板を第一基板とした場合、第二基板であってよい。
【0151】
[画素回路]
有機発光素子を有する有機発光装置は、有機発光素子に接続されている画素回路を有してよい。画素回路は、第一の発光素子、第二の発光素子をそれぞれ独立に発光制御するアクティブマトリックス型であってよい。アクティブマトリックス型の回路は電圧プログラミングであっても、電流プログラミングであってもよい。駆動回路は、画素毎に画素回路を有する。画素回路は、発光素子、発光素子の発光輝度を制御するトランジスタ、発光タイミングを制御するトランジスタ、発光輝度を制御するトランジスタのゲート電圧を保持する容量、発光素子を介さずにGNDに接続するためのトランジスタを有してよい。
【0152】
発光領域の大きさに合わせて、駆動電流の大きさが決定されてよい。具体的には、第一の発光素子、第二の発光素子を同じ輝度で発光させる場合に、第一の発光素子に流される電流値は、第二の発光素子に流される電流値より小さくてもよい。発光領域が小さいので必要な電流が小さい場合があるためである。
【0153】
[画素]
有機発光素子を有する有機発光装置は、複数の画素を有してよい。画素は互いに他と異なる色を発光する副画素を有する。副画素は、例えば、それぞれRGBの発光色を有してよい。
【0154】
画素は、画素開口とも呼ばれる領域が発光する。この領域は第一領域と同じである。画素開口は15μm以下であってよく、5μm以上であってよい。より具体的には、11μm、9.5μm、7.4μm、6.4μm等であってよい。副画素間は、10μm以下であってよく、具体的には、8μm、7.4μm、6.4μmであってよい。
【0155】
画素は、平面図において、公知の配置形態をとりうる。例えは、ストライプ配置、デルタ配置、ペンタイル配置、ベイヤー配置であってよい。副画素の平面図における形状は、公知のいずれの形状をとってもよい。例えば、長方形、ひし形等の四角形、六角形、等である。もちろん、正確な図形ではなく、長方形に近い形をしていれば、長方形に含まれる。副画素の形状と、画素配列と、を組み合わせて用いることができる。
【0156】
<本実施形態に係る有機発光素子の用途>
本実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0157】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。表示装置は、複数の画素を有し、複数の画素の少なくとも一つが、本実施形態の有機発光素子と、有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有してよい。
【0158】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0159】
次に、図面を参照しながら本実施形態に係る表示装置につい説明する。図2は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるトランジスタとを有する表示装置の例を示す断面模式図である。トランジスタは、能動素子の一例である。トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。
【0160】
図2(a)は、本実施形態に係る表示装置の構成要素である画素の一例である。画素は、副画素10を有している。副画素はその発光により、10R、10G、10Bに分けられている。発光色は、発光層から発光される波長で区別されても、副画素から出射する光がカラーフィルタ等により、選択的に透過または色変換が行われてもよい。それぞれの副画素10は、層間絶縁層1の上に第一電極2である反射電極、第一電極2の端を覆う絶縁層3、第一電極2と絶縁層3とを覆う有機化合物層4、第二電極5である透明電極、保護層6、カラーフィルタ7を有している。
【0161】
層間絶縁層1は、その下層または内部にトランジスタ、容量素子が配されていてよい。トランジスタと第一電極2は不図示のコンタクトホール等を介して電気的に接続されていてよい。
【0162】
絶縁層3は、バンク、画素分離膜とも呼ばれる。第一電極2の端を覆っており、第一電極2を囲って配されている。絶縁層3の配されていない部分が、有機化合物層4と接し、発光領域となる。
【0163】
有機化合物層4は、正孔注入層41、正孔輸送層42、第一発光層43、第二発光層44、電子輸送層45を有する。
【0164】
第二電極5は、透明電極であっても、反射電極であっても、半透過電極であってもよい。
【0165】
保護層6は、有機化合物層4に水分が浸透することを低減する。保護層6は、一層のように図示されているが、複数層であってよい。層ごとに無機化合物層、有機化合物層があってよい。
【0166】
カラーフィルタ7は、その色により7R、7G、7Bに分けられる。カラーフィルタ7は、不図示の平坦化膜上に形成されてよい。また、カラーフィルタ7上に不図示の樹脂保護層を有してよい。また、カラーフィルタ7は、保護層6上に形成されてよい。またはガラス基板等の対向基板上に設けられた後に、貼り合わせられてよい。
【0167】
図2(b)の表示装置100は、有機発光素子26とトランジスタの一例としてTFT18を有する。ガラス、シリコン等の基板11とその上部に絶縁層12が設けられている。絶縁層12の上には、TFT18等の能動素子が配されており、能動素子のゲート電極13、ゲート絶縁膜14、半導体層15が配置されている。TFT18は、他にもドレイン電極16とソース電極17とで構成されている。TFT18の上部には絶縁膜19が設けられている。絶縁膜19に設けられたコンタクトホール20を介して有機発光素子26を構成する陽極21とソース電極17とが接続されている。
【0168】
なお、有機発光素子26に含まれる電極(陽極21、陰極23)とTFT18に含まれる電極(ソース電極17、ドレイン電極16)との電気接続の方式は、図2(b)に示される態様に限られるものではない。つまり陽極21又は陰極23のうちいずれか一方とTFT18のソース電極17またはドレイン電極16のいずれか一方とが電気接続されていればよい。TFTは、薄膜トランジスタを指す。
【0169】
図2(b)の表示装置100では有機化合物層22を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層22は、複数層であってもよい。陰極23の上には有機発光素子26の劣化を低減するための第一の保護層24や第二の保護層25が設けられている。
【0170】
図2(b)の表示装置100ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えて他のスイッチング素子として用いてもよい。
【0171】
また図2(b)の表示装置100に使用されるトランジスタは、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタに限らず、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタでもよい。活性層として、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンなどの非単結晶シリコン、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体が挙げられる。なお、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
【0172】
図2(b)の表示装置100に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
【0173】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFTにより発光輝度が制御され、有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。なお、本実施形態に係るスイッチング素子は、TFTに限られず、低温ポリシリコンで形成されているトランジスタ、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。基板内にトランジスタを設けるか、TFTを用いるかは、表示部の大きさによって選択され、例えば0.5インチ程度の大きさであれば、Si基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0174】
図3は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0175】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0176】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0177】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0178】
図4(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0179】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本実施形態の有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0180】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。撮像装置は光電変換装置と呼ばれてもよい。光電変換装置は逐次撮像するのではなく、前画像からの差分を検出する方法、常に記録されている画像から切り出す方法等を撮像の方法として含むことができる。
【0181】
図4(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部1202は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器1200は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部1201に映される。電子機器1200としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0182】
図5は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。図5(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光素子が用いられてよい。額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、図5(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0183】
図5(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。図5(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光素子を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一および第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0184】
図6(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光源1402が発する光を透過する光学フィルタ1404と光拡散部1405と、を有してよい。光源1402は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。光学フィルタ1404は光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部1405は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ1404、光拡散部1405は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0185】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路を有してよい。照明装置は本実施形態の有機発光素子とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
【0186】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0187】
図6(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0188】
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。テールランプ1501は、有機発光素子を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0189】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓1502は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。この場合、有機発光素子が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0190】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光素子を有する。
【0191】
図7を参照して、上述の各実施形態の表示装置の適用例について説明する。表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトのようなウェアラブルデバイスとして装着可能なシステムに適用できる。このような適用例に使用される撮像表示装置は、可視光を光電変換可能な撮像装置と、可視光を発光可能な表示装置とを有する。
【0192】
図7(a)は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの一例を示す模式図である。図7(a)を用いて、1つの適用例に係る眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600のレンズ1601の表面側に、CMOSセンサやSPADのような撮像装置1602が設けられている。また、レンズ1601の裏面側には、上述した各実施形態の表示装置が設けられている。
【0193】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、撮像装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、撮像装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0194】
図7(b)は、本発明の一実施形態に係るウェアラブルデバイスの他の例を示す模式図である。図7(b)を用いて、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており、制御装置1612に、図7(a)の撮像装置1602に相当する撮像装置と、表示装置が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の撮像装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、撮像装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、撮像装置および表示装置の動作を制御する。
【0195】
制御装置1612は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0196】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、受光素子を有する撮像装置を有し、撮像装置からのユーザーの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第一の視界領域と、第一の視界領域以外の第二の視界領域とを決定する。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の視界領域の表示解像度を第二の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の視界領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0197】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域および第二の表示領域から優先度が高い領域が決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0198】
なお、第一の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、撮像装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0199】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する撮像装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0200】
図8(a)は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図である。画像形成装置40は電子写真方式の画像形成装置であり、感光体27、露光光源28、帯電部30、現像部31、転写器32、搬送ローラー33、定着器35を有する。露光光源28から光29が照射され、感光体27の表面に静電潜像が形成される。この露光光源28が本実施形態に係る有機発光素子を有する。現像部31はトナー等を有する。帯電部30は感光体27を帯電させる。転写器32は現像された画像を記録媒体34に転写する。搬送ローラー33は記録媒体34を搬送する。記録媒体34は例えば紙である。定着器35は記録媒体34に形成された画像を定着させる。
【0201】
図8(b)および図8(c)は、露光光源28を示す図であり、発光部36が長尺状の基板に複数配置されている様子を示す模式図である。矢印37は、感光体の軸に平行な方向であり、有機発光素子が配列されている列方向を表わす。この列方向は、感光体27が回転する軸の方向と同じである。この方向は感光体27の長軸方向と呼ぶこともできる。図8(b)は発光部36を感光体27の長軸方向に沿って配置した形態である。図8(c)は、図8(b)とは異なる形態であり、第一の列と第二の列のそれぞれにおいて発光部36が列方向に交互に配置されている形態である。第一の列と第二の列は行方向に異なる位置に配置されている。第一の列は、複数の発光部36が間隔をあけて配置されている。第二の列は、第一の列の発光部36同士の間隔に対応する位置に発光部36を有する。すなわち、行方向にも、複数の発光部36が間隔をあけて配置されている。図8(c)の配置は、たとえば格子状に配置されている状態、千鳥格子に配置されている状態、あるいは市松模様と言い換えることもできる。
【0202】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【実施例0203】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
【0204】
[実施例1(例示化合物A25、A33の合成)]
【化24】
【0205】
(1)化合物m-2の合成
2000mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物m-1:20.0g(0.07mol)
ヒドラジン1水和物:87.2g(1.74mol)
炭酸カリウム:19.3g(0.14mol)
ジエチレングリコール:200ml
クロロベンゼン:200ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で加熱還流撹拌した。反応終了後、室温下にて、1N塩酸溶液を加えた。反応溶液をトルエンにて抽出操作を行い、濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘプタン=1:4)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、うす茶色固体のm-2を3.6g(収率:20%)得た。
【0206】
(2)化合物m-3の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物m-2:3.0g(11.6mmol)
カリウム-t-ブトキシド:3.9g(26.6mmol)
DMSO:45ml
次に、5℃にて撹拌しているところにヨウ化メチル3.2g(28.9mmol)をゆっくり加えた。次に、反応溶液を室温下にて撹拌した。反応終了後、室温下にて、1N塩酸溶液を加えた。反応溶液をトルエンにて抽出操作を行い、濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘプタン=1:4)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、うす茶色固体のm-3を2.5g(収率:70%)得た。
【0207】
(3)化合物m-5の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物m-3:2.0g(6.3mmol)
化合物m-4:1.2g(9.5mmol)
Pd(PPh34:0.07g
トルエン:20ml
エタノール:10ml
2M―炭酸ナトリウム水溶液:20ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で80℃に加熱し、この温度(80℃)で6時間攪拌を行った。反応終了後、水を加えて分液を行った後、クロロホルムに溶解した後、これをカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行うことにより、うす黄色固体の化合物m-5を0.95g(収率:48%)得た。
【0208】
(4)化合物m-6の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
2-エトキシエタノール:24ml
塩化イリジウム(III)水和物:0.32g
化合物m-5:0.8g(2.6mmol)
次に、反応溶液を、120℃に加熱して6時間攪拌を行った。冷却後、水を加え、ろ過し水で洗浄した。これを乾燥することで、黄色固体の化合物m-6を1.0g(収率90%)を得た。
【0209】
(5)例示化合物A25の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
2-エトキシエタノール:30ml
化合物m-6:1.0g(0.6mmol)
化合物m-7:0.23g(2.3mmol)
炭酸ナトリウム:0.6g(5.9mmol)
次に、反応溶液を、100℃に加熱して6時間攪拌を行った。冷却後、メタノールを加え、ろ過しメタノールで洗浄した。これを乾燥することで、黄色固体の例示化合物A25を0.7g(収率65%)を得た。
【0210】
尚、例示化合物A25は、MALDI-TOF-MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI-TOF-MS]
実測値:m/z=916 計算値:C5151IrN22=916
【0211】
(6)例示化合物A33の合成
50mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
例示化合物A25:0.5g(0.5mmol)
化合物m-5:1.7g(5.5mmol)
次に、反応溶液を、230℃に加熱して3時間攪拌を行った。100℃まで冷却後、トルエン2mLを加え、室温になるまで撹拌した。その後、ヘプタンを加えろ過を行った。ろ過物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、濃い黄色固体A33を0.1g(収率20%)を得た。
【0212】
尚、例示化合物A33は、例示化合物A25と同様にして質量分析を行った。
[MALDI-TOF-MS]
実測値:m/z=1129 計算値:C6966IrN3=1129
【0213】
[実施例2(例示化合物の合成B9)]
【化25】
【0214】
(1)化合物n-3の合成
1000mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物n-1:10.0g(0.06mol)
化合物n-2:8.6g(0.07mol)
炭酸カリウム:24.5g(0.12mol)
CuCl2:0.4g(0.003mol)
トリフェニルホスフィン:1.1g(0.004mol)
DMF:200ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で加熱還流撹拌した。反応終了後、室温下にて、1N塩酸溶液を加えた。反応溶液をトルエンにて抽出操作を行い、濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘプタン=1:4)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、うす茶色固体のn-3を10.4g(収率:65%)得た。
【0215】
(2)化合物n-4の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物n-3:5.0g(0.02mmol)
DDQ:12.3g(0.05mmol)
FeCl3・6H2O:14.6g(0.05mmol)
ジクロロエタン:100ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で加熱還流撹拌した。反応終了後、室温下にて、1N塩酸溶液を加えた。反応溶液をトルエンにて抽出操作を行い、濃縮後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘプタン=1:4)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、灰色固体のn-4を2.6g(収率:53%)得た。
【0216】
(3)化合物n-6の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物n-4:2.0g(7.3mmol)
化合物n-5:1.3g(10.9mmol)
Pd(PPh34:0.08g
トルエン:20ml
エタノール:10ml
2M-炭酸ナトリウム水溶液:20ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で80℃に加熱しこの温度(80℃)で6時間攪拌を行った。反応終了後、水を加えて分液を行った後、クロロホルムに溶解した後、これをカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行うことにより、うす黄色固体の化合物n-6を1.05g(収率:53%)得た。
【0217】
(4)化合物n-7の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
2-エトキシエタノール:24ml
塩化イリジウム(III)水和物:0.32g
化合物n-6:0.8g(2.6mmol)
次に、反応溶液を、120℃に加熱して6時間攪拌を行った。冷却後、水を加え、ろ過し水で洗浄した。これを乾燥することで、黄色固体の化合物n-7を1.0g(収率90%)を得た。
【0218】
(5)例示化合物B9の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
2-エトキシエタノール:30ml
化合物n-7:1.0g(0.6mmol)
化合物n-8:0.26g(2.6mmol)
炭酸ナトリウム:0.7g(6.5mmol)
次に、反応溶液を、100℃に加熱して6時間攪拌を行った。冷却後、メタノールを加え、ろ過しメタノールで洗浄した。これを乾燥することで、黄色固体の例示化合物B9を0.7g(収率66%)を得た。
【0219】
尚、例示化合物B9は、実施例1と同様にして質量分析を行った。
[MALDI-TOF-MS]
実測値:m/z=836 計算値:C4127IrN26=836
【0220】
[実施例3乃至5(例示化合物の合成)]
実施例3乃至5に示す例示化合物について、実施例1の原料m-3、m-4、m-7として、表7に示す化合物を用いた他は実施例1のA25と同様にして例示化合物を合成した。また、実施例1と同様にして測定した質量分析結果の実測値:m/zを示す。
【0221】
【表7】
【0222】
[実施例6乃至9(例示化合物の合成)]
実施例6乃至9に示す例示化合物について、実施例1の原料m-3、m-4、m-5として、表8に示す化合物を用いた他は実施例1のA33と同様にして例示化合物を合成した。また、実施例1と同様にして測定した質量分析結果の実測値:m/zを示す。
【0223】
【表8】
【0224】
[実施例10(例示化合物A1の合成)]
【化26】
【0225】
化合物のk-2の合成は、実施例1の「(4)化合物m-6の合成」と同様であるため、省略する。
【0226】
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物k-2:1.0g(0.9mmol)
AgOTf:0.5g(1.9mmol)
ジクロロメタン:50ml
メタノール:2ml
次に、反応溶液を、室温下にて6時間攪拌を行った。その後、溶媒を減圧留去し、黄色固体を得た。
【0227】
次に、200mlのナスフラスコに、得られた黄色固体と以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
エタノール:30ml
化合物k-3:0.4g(1.9mmol)
次に反応溶液を、85℃に加熱して3時間攪拌を行った。冷却後、ろ過を行った。ろ過物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘプタン=1:1)で精製し、濃い黄色固体A1を0.9g(収率59%)を得た。
【0228】
尚、例示化合物A1は、実施例1と同様にして質量分析を行った。
[MALDI-TOF-MS]
実測値:m/z=813 計算値:C4538IrN3=813
【0229】
[実施例11乃至20(例示化合物の合成)]
実施例11乃至20に示す例示化合物について、実施例10の原料k-1、k-3として、表9,10に示す化合物を用いた他は実施例10と同様にして例示化合物を合成した。また、実施例10と同様にして測定した質量分析結果の実測値:m/zを示す。
【0230】
【表9】
【0231】
【表10】
【0232】
[実施例21]
基板上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成されたボトムエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
【0233】
先ずガラス基板上にITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。この時、ITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。次に、1.33×10-4Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、表11に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、この時、対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mm2となるようにした。
【0234】
【表11】
【0235】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。発光素子の最大発光波長は532nmであり、最大外部量子効率(E.Q.E.)は11%であった。
【0236】
さらに、電流密度100mA/cm2での連続駆動試験を行い、輝度劣化率が5%に達した時の時間を測定した。比較例1の輝度劣化率が5%に達した時の時間を1.0としたときに、本実施例の輝度劣化率比は1.9であった。
【0237】
本実施例において、測定装置は、具体的には電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。
【0238】
[実施例22乃至31、比較例1乃至3]
実施例22乃至31において、表12に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例21と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例21と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表12に示す。尚、比較化合物1-A、比較化合物1-Bは、それぞれ表1,3,4に示す比較化合物1-A、表5に示す比較化合物1-Bである。
【0239】
【表12】
【0240】
表12より、比較例1の最大外部量子効率(E.Q.E.)は8%であり、本発明に係る発光素子の方が高発光効率であった。これは、本発明に係る有機金属錯体がより量子収率が高いことに起因する。また、本発明に係る発光素子の方が長寿命であった。比較例1にて用いたIr錯体(比較化合物1-A)は、特許文献1に記載のIr錯体であり、結合安定性が低い材料であることが要因と推察される。
【0241】
さらに、比較例2の輝度劣化率比が0.5であり、本発明に係る発光素子の方が長寿命であった。比較例2にて用いたIr錯体(比較化合物1-A)は、特許文献1に記載のIr錯体であり、ホスト材料は、特許文献1に記載のホスト材料であるCBPである。
【0242】
また、比較例3の輝度劣化率比が0.8であり、本発明に係る発光素子の方が長寿命であった。比較例3にて用いたIr錯体(比較化合物1-B)は、特許文献2に記載のIr錯体であり、酸化安定性が低い材料であることが要因と推察される。
【0243】
以上より、本発明に係る有機金属錯体を用いて、より好ましくは、かつ、好ましいホスト材料を選択することにより、高効率で耐久特性に優れる素子を提供することができる。
【0244】
[実施例32]
表13に示す有機化合物層および電極層を連続製膜した以外は、実施例21と同様の方法により、有機発光素子を作製した。
【0245】
【表13】
【0246】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。発光素子の発光色は緑色であり、最大外部量子効率(E.Q.E.)は20%であった。
【0247】
[実施例33乃至42]
実施例33乃至42において、表14に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例32と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例32と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表14に示す。
【0248】
【表14】
【符号の説明】
【0249】
1:層間絶縁層、2:第一電極、3:絶縁層、4:有機化合物層、5:第二電極、6:保護層、7:カラーフィルタ、10:副画素、11:基板、12:絶縁層、13:ゲート電極、14:ゲート絶縁膜、15:半導体層、16:ドレイン電極、17:ソース電極、18:TFT、19:絶縁膜、20:コンタクトホール、21:陽極、22:有機化合物層、23:陰極、24:第一の保護層、25:第二の保護層、26:有機発光素子、100:表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8