(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190363
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20221219BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02K1/27 502A
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098645
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP02
5H615SS10
5H615SS18
5H622CA02
5H622CA05
5H622CB05
5H622PP19
(57)【要約】
【課題】ヨークに対するマグネットの組み付け性を向上すると共に、ヨークの内側面に対して複数のマグネットがバランスよく配置されたモータを提供する。
【解決手段】本発明のモータ(1)は、ロータ(15)と、ロータ(15)と対向して配置されたステータ(13)とを備え、ロータ(15)は、ヨーク(151)と、複数のマグネット(153)とを有し、ヨーク(151)は、マグネットに向かって突出した第1突出部(201)と第2突出部(202)とを有し、第1突出部(201)は第2突出部(202)に対してロータ(15)の回転軸(X)方向における一方側に配置され、第2突出部(202)は、第1突出部(201)よりも周方向における大きさが大きい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータと対向して配置されたステータと
を備え、
前記ロータは、ヨークと、複数のマグネットとを有し、
前記ヨークは、前記マグネットに向かって突出した第1突出部と第2突出部とを有し、
前記第1突出部は前記第2突出部に対して前記ロータの回転軸方向における一方側に配置され、
前記第2突出部は、前記第1突出部よりも周方向における大きさが大きい
モータ。
【請求項2】
前記第2突出部は、前記ヨークの周方向に複数設けられ、互いに隣接する前記第2突出部の間に前記マグネットが配置されている
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第2突出部の個数と、前記マグネットの個数とは等しい
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1突出部および前記第2突出部における外周面は円弧形状を有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
複数の前記マグネットは、周方向においてそれぞれ互いに接触している
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドローンのようなマルチコプタに用いられるモータにおいて、ロータのヨークには円環状のヨーク円筒部と、そのヨーク円筒部の内側面から径方向内側に突出する複数のヨーク突出部を有し、複数のヨーク突出部の間にマグネットをそれぞれ配置する構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1のモータにおいては、複数のヨーク突出部における周方向の長さ分だけマグネット間の距離が離れてしまうため大型化に繋がり、小型化のためにマグネット間の距離を短くしたいという要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のモータにおいて、ヨークの内側面に形成されたヨーク突出部を除去して隙間なく複数のマグネットを配置しようとした場合、例えば、寸法公差がプラス側で製造された複数のマグネットであれば最後のマグネットが入らずに取り付けることができなくなるおそれがあった。一方、寸法公差がマイナス側で製造された複数のマグネットであれば、マグネット間の隙間が大きくなり過ぎてしまうというおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、ヨークに対するマグネットの組み付け性を向上することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のモータは、ロータと、前記ロータと対向して配置されたステータとを備え、前記ロータは、ヨークと、複数のマグネットとを有し、前記ヨークは、前記マグネットに向かって突出した第1突出部と第2突出部とを有し、前記第1突出部は前記第2突出部に対して前記ロータの回転軸方向における一方側に配置され、前記第2突出部は、前記第1突出部よりも周方向における大きさが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかるアウターロータ型のモータの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態にかかるモータの断面斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態にかかるステータコアの全体構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークおよびマグネットを示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態にかかるマグネットの構成を示す平面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークの構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークの内側面に形成された第1突出部および第2突出部の構成を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施の形態にかかるモータのマグネットをヨークに組み付ける際に用いられる専用治具の構成を示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークをマグネットへ挿入する際に用いられる受け治具の構成(A)、および、組付手順の説明に供する断面図(B)である。
【
図10】本発明の一実施の形態にかかる専用治具に取り付けられたマグネットに対してヨークが挿入された状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施の形態にかかるヨークに対するマグネットの配置状態を示す斜視図(A)、部分拡大斜視図(B)および上面図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0010】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかるモータ(1)は、ロータ(15)と、ロータ(15)と対向して配置されたステータ(13)とを備え、ロータ(15)は、ヨーク(151)と、複数のマグネット(153)とを有し、ヨーク(151)は、マグネット(153)に向かって突出した第1突出部(201)と、第2突出部(202)とを有し、第1突出部(201)は第2突出部(202)に対してロータ(15)の回転軸(X)方向における一方側に配置され、第2突出部(202)は、第1突出部(201)よりも周方向における大きさが大きい。
【0011】
〔2〕第2突出部(202)は、ヨーク(151)の周方向に複数設けられ、互いに隣接する第2突出部(202)の間にマグネット(153)が配置されている。
【0012】
〔3〕第2突出部(202)の個数と、マグネット(153)の個数とは等しい。
【0013】
〔4〕第1突出部(201)および第2突出部(202)における外周面は円弧形状を有する。
【0014】
〔5〕複数のマグネット(153)は、周方向においてそれぞれ互いに接触している。
【0015】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかるアウターロータ型のモータの全体構成を示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施の形態にかかるモータの断面斜視図である。
図3は、本発明の一実施の形態にかかるステータコアの全体構成を示す斜視図である。
図4は、本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークおよびマグネットを示す斜視図である。
図5は、本発明の一実施の形態にかかるマグネットの構成を示す平面図である。
図6は、本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークの構成を示す斜視図である。
図7は、本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークの内側面に形成された第1突出部および第2突出部の構成を示す斜視図である。
図8は、本発明の一実施の形態にかかるモータのマグネットをヨークに組み付ける際に用いられる専用治具の構成を示す平面図である。
図9は、本発明の一実施の形態にかかるモータのヨークをマグネットへ挿入する際に用いられる受け治具の構成(A)、および、組付手順の説明に供する断面図(B)である。
図10は、本発明の一実施の形態にかかる専用治具に取り付けられたマグネットに対してヨークが挿入された状態を示す斜視図である。
図11は、本発明の一実施の形態にかかるヨークに対するマグネットの配置状態を示す斜視図(A)、部分拡大斜視図(B)および上面図(C)である。
【0016】
なお、本実施の形態の説明において、以下の説明では、便宜上、モータ1が回転する際の軸線Xが延びる方向を回転軸X方向または軸線X方向とする。また、以下の説明では、便宜上、回転軸X方向において矢印a方向を上側、矢印b方向を下側とする。また、軸線Xに垂直な径方向において、軸線Xから遠ざかる矢印c方向を外周側とし、軸線Xに近づく矢印d方向を内周側とする。以下の説明において、上側(矢印a方向)および下側(矢印b方向)は、モータ1の上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。さらに、
図1乃至
図3において矢印e方向を、軸線Xを中心とした時計回り方向とし、矢印f方向を反時計回り方向とする。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、モータ1は、例えばドローン(図示せず)などの浮遊式移動体に搭載されるアウターロータ型のブラシレスモータである。
【0018】
例えば
図1において、モータ1は、上側(矢印a方向)にドローンのプロペラ(図示せず)が取り付けられ、下側(矢印b方向)に当該ドローンの機体が取り付けられる。
図2に示すように、モータ1は、主に、ステータハウジング11、ステータ13、ロータ15、ホルダ17、および、軸受19を有している。
【0019】
ステータハウジング11は、円筒形状の内周部111、円筒形状の外周部112、および連結部115を有している。ステータハウジング11の内周部111は、回転軸X方向に延びる円筒形状または略円筒形状に形成されている。この内周部111は、内周側(矢印d方向)の面(以下、「内周面」と言う。)に軸受19を保持している。
【0020】
具体的には、内周部111は、回転軸X方向の上側(矢印a方向)に軸受19aを保持し、下側(矢印b方向)に軸受19bを保持している。
【0021】
すなわち、ステータハウジング11の内周部111は、軸受19a、19bに対する軸受ホルダとして機能する。軸受19a、19bは、例えばボールベアリングである。但し、これに限るものではなく、例えばスリーブベアリング等のその他種々のベアリングを用いるようにしてもよい。
【0022】
ステータハウジング11の外周部112は、内周部111と同様、回転軸X方向に延びる円筒形状または略円筒形状に形成されている。内周部111および外周部112は、双方ともに軸線Xを中心とする。
【0023】
ステータハウジング11の内周部111と外周部112との間には、連結部115が設けられ、当該内周部111および当該外周部112と当該連結部115とが一体に形成されている。連結部115は、内周部111と外周部112とを互いに連結する。連結部115は、内周部111の外周側の端部から更に外周側(矢印c方向)へ向かって延び、外周部112の内周側の端部に接続されている。
【0024】
外周部112の外周側の面(以下、「外周面」と言う。)には、ステータ13のステータコア131が固定されている。ステータ13は、ステータコア131と、インシュレータ135と、コイル139とを有している。
【0025】
図3に示すように、ステータコア131は、珪素鋼板等の積層体となっており、環状部132、および、当該環状部132から外周側(矢印d方向)へ向かって延びる複数の磁極部であるティース部133からなる。ステータコア131の環状部132がステータハウジング11の外周部112の外周面に固定されている。
【0026】
ステータコア131のティース部133には、絶縁部材からなるインシュレータ135が装着されている。ティース部133には、インシュレータ135を介してコイル139(
図2)が巻回されている。ステータコア131のティース部133およびコイル139は、インシュレータ135を介して互いに電気的に絶縁されている。
【0027】
ロータ15(
図2)は、ヨーク151およびマグネット153を有している。ヨーク151は、回転軸X方向に延びる環状かつ筒形状からなる鉄芯である。ヨーク151はマグネット153を取り囲んだ状態で当該マグネット153と一体に固定されている。ヨーク151は、鉄等の磁性体により形成されている。
【0028】
図4に示すように、ヨーク151の内側の面(以下、これを「内側面」と言う。)151nに、複数のマグネット153が密着した状態で接着剤等によって固定されている。
【0029】
図5に示すように、マグネット153は、外周方向へ向かって全体的に凸状に湾曲した瓦形状を有している。なお、マグネット153は全て同一形状および同一構造を有している。なお、マグネット153は、磁場中成形によって配向された異方性マグネットである。ただし、これに限るものではなく、等方性マグネットであってもよい。
【0030】
マグネット153は、ヨーク151の内側面151nの内径に合わせて外周方向へ向かって全体的に凸状に湾曲した瓦形状に形成されているため、ヨーク151の内側面151nに対して当該マグネット153の外周面153outが密着した状態で固定される。この時、
図5に示すマグネット153と、
図5に示すマグネット153から極性が反転したマグネット153とが交互に配置される。
【0031】
マグネット153の回転軸X方向における高さは、ヨーク151の回転軸X方向における高さよりも高く形成されている。ただし、これに限るものではなく、マグネット153よりもヨーク151の方が高く形成されていてもよく、また、同じ高さであってもよい。
【0032】
図6および
図7に示すように、ヨーク151は、その内側面151nにおける軸線X方向の下側(矢印b方向)に、当該内側面151nから径方向において回転軸Xへ向かう、すなわちマグネット153(
図3)に向かうように円弧状に突出した第1突出部201を有している。
【0033】
第1突出部201は、ヨーク151の内側面151nにおける軸線X方向の下側(矢印b方向)であって、かつ、周方向に沿って等間隔に複数(この場合、28個)設けられている。ただし、これに限るものではなく、複数の第1突出部201は、マグネット153の数以下でさえあれば、何個であってもよい。
【0034】
複数の第1突出部201は、互いに隣接する第1突出部201同士の周方向端部間における間隔をマグネット153の長さL1よりも僅かに長い距離としている。すなわち、複数の第1突出部201は、ヨーク151の内側面151nに沿って互いに隣接する第1突出部201間にマグネット153を配置可能な状態で設けられている。この第1突出部201は、マグネット153をヨーク151の内側面151nに組み付ける際のガイドおよび位置決めとしての役割を担っている。
【0035】
また、ヨーク151は、その内側面151nにおける軸線X方向の上側(矢印a方向)に、当該内側面151nから径方向において回転軸Xへ向かう、すなわちマグネット153に向かうように円弧状に突出した第2突出部202を有している。
【0036】
第2突出部202は、ヨーク151の内側面151nの軸線X方向の上側(矢印a方向)であって、かつ、周方向に沿って等間隔に複数(この場合、28個)設けられている。ただし、これに限るものではなく、マグネット153の数以下でかつ第1突出部201と同じ数であれば、何個であってもよい。因みに、第1突出部201および第2突出部202は、金型内においてピンでヨーク151の外側面から打ち込むことにより成形される。
【0037】
第2突出部202は、第1突出部201よりも周方向に大きな円弧形状を有している。具体的には、第2突出部202の径方向の断面形状における円弧の長さが、第1突出部201の径方向の断面形状における円弧よりも長く、かつ、第2突出部202の径方向における突出量が第1突出部201の径方向における突出量よりも大きい。
【0038】
さらに、第1突出部201および第2突出部202は円弧形状でなくてもよく、例えば楕円弧形状であったり、断面矩形状、断面三角形状等、その他種々の形状であったりしてもよい。例えば、第1突出部201が円弧形状であり、第2突出部202が断面矩形状であってもよく、形状、大きさ、および、突出量等を任意の組み合わせとすることも可能である。
【0039】
複数の第2突出部202については、互いに隣接する第2突出部202同士の周方向端部間における間隔をマグネット153の長さL1と同じ距離としている。すなわち、第2突出部202は第1突出部201よりも周方向に大きく、かつ、第2突出部202同士の周方向端部間における間隔は、第1突出部201同士の周方向端部間における間隔よりも短くなっている。したがって、第2突出部202は、マグネット153がヨーク151の内側面151nに組み付けられた状態において、マグネット153の周方向の位置がずれることを防止する役割を担っている。
【0040】
なお、第2突出部202の中心と第1突出部201の中心とはそれぞれ、軸線X方向に沿って平行かつ直線状に配置されている。この場合、第2突出部202および第1突出部201は、軸線X方向に沿った縦一列の突出部列として合計28列配置されている。
【0041】
すなわち、第1突出部201および第2突出部202は、ヨーク151の内側面151nにおいて軸線X方向の下側および上側に突出部列として一列に配置され、周方向においては突出部列が合計28列配置されている。一列の第1突出部201および第2突出部202と、それと隣接する一列の第1突出部201および第2突出部202との間にはマグネット153が配置されている。
【0042】
ホルダ17(
図1、
図2)は、アルミニウム合金によって形成されており、全体的に円盤形状を有している。ただし、これに限るものではなく、ホルダ17は、樹脂やプラスチック等の他の素材によって形成されていてもよい。なお、ホルダ17についても、切削加工の削り出しによって形成されている。但し、これに限らず、ホルダ17は、プレス成型等によって形成されるようにしてもよい。
【0043】
ホルダ17は、内周側(矢印c方向)に設けられた内周部171、外周側(矢印d方向)の端部に設けられた外周端部173、および、スポーク175を有している。
【0044】
ホルダ17の内周部171は、軸線Xを中心とした貫通孔171hが設けられた円柱状の凸部171dと、当該凸部171dの外周側の端部から径方向へ延びるフランジ部171fを有している。フランジ部171fは、上側(矢印a方向)からステータハウジング11の内周部111を覆うことが可能な大きさを有している。
【0045】
内周部171の凸部171dは、軸線Xを中心として上下方向(矢印ab方向)に延びる円筒形状の内筒部172を有している。内周部171の内筒部172における外周面には、軸受19a、19bの内輪が保持されている。すなわち、ホルダ17の内筒部172は、モータ1における回転中心として機能する。
【0046】
フランジ部171fの外周側(矢印c方向)の端部には複数(例えば6本)のスポーク175が接続されており、スポーク175の径方向の先端部には環状の外周端部173が接続されている。すなわちスポーク175は、内周部171のフランジ部171fと外周端部173とを接続している。
【0047】
次に、ヨーク151にマグネット153を組み付けて固定するまで手順について説明する。
図8(A)乃至(D)に示すように、最初に治具500を用意する。治具500は、鉄等の磁性体であり、複数(この場合、28個)のピース501が互いに連結可能に構成されている。
【0048】
すなわち、治具500は、
図8(A)に示すように、各ピース501を連結して直線状に形成することが可能であると共に、
図8(B)に示すように、全部のピース501を連結して円形状に形成することが可能である。
【0049】
図8(C)および(D)に示すように、ピース501の外周面501gは、マグネット153の内周面153inと同様の曲率半径であり、ピース501の外周面501gに対してマグネット153の内周面153inが密着可能である。なお、ピース501は、全て同一形状および同一構造である。
【0050】
ピース501は、長手方向の一端側において円形の貫通孔501ahが形成された半円形状の第1係合部501aと、長手方向の他端側において長円形の貫通孔501bhが形成された長円形状の第2係合部501bとを有している。
【0051】
互いに隣接するピース501同士は、一方のピース501の第1係合部501aと、他方のピース501の第2係合部501bとが互いに重なり合った状態で、貫通孔501ahおよび貫通孔501bhを図示しないピンで回動可能な状態に連結されている。
【0052】
ピース501は、長手方向においてマグネット153の長さL1と同じ長さを有している。ピース501は磁性体であり、マグネット153は異方性マグネットであるため、各ピース501に対して各マグネット153が磁力により1対1で張り付けられる。
【0053】
このような治具500を直線状に展開した状態において(
図8(A))、各ピース501に対して各マグネット153が張り付けられ、複数のマグネット153が全体的に直線状に配置される。その後、治具500の一端側のピース501と他端側のピース501とを連結させることにより、治具500および複数のマグネット153が円形状に展開される(
図8(B))。
【0054】
このとき、治具500では、互いに隣接するピース501同士がピン(図示せず)を支点として僅かに回転することにより円形状になる。このため、互いに隣接するマグネット153同士は左側面153lと右側面153rとが径方向の外周側において僅かに離間し、マグネット153間に所定の隙間SP(
図8(D))が生じる。
【0055】
ただし、治具500の各ピース501は、全体として円形状に展開されていても互いに接触した状態が維持されているため、マグネット153の径方向の内周側の部分CPにおいてマグネット153同士は接触したままの状態が維持されている。
【0056】
次に、
図9(A)および(B)に示すように、円柱形状からなる組付用の受け治具700を用意する。この受け治具700は、大径円柱部701と、当該大径円柱部701よりも小径の小径円柱部702とが段差面703を介して一体化された構造を有している。
【0057】
受け治具700における小径円柱部702の外周面702gには、断面矩形状かつ環状の凹空間704が形成されている。この凹空間704は、治具500のピース501が完全に収容可能な高さおよび奥行からなる大きさの空間であるが、マグネット153については収容不可能な大きさである。
【0058】
複数のマグネット153がピース501に張り付けられた治具500を用い、受け治具700における小径円柱部702の凹空間704に対してピース501を円形状にしながら嵌め込むと、マグネット153の下側端面が大径円柱部701の段差面703に当接される。この状態において、ヨーク151の内側面151nをマグネット153の外周面153outに沿って上側(矢印b方向)から下側(矢印a方向)へ向かって嵌め込む。
【0059】
このとき、マグネット153間の隙間SPに第1突出部201がガイドとして入り込むように上側(矢印b方向)から下側(矢印a方向)へヨーク151を嵌め込むことができる。その過程においては、第1突出部201の上側に第2突出部202が存在するため、第2突出部202についてもマグネット153間の隙間SPに入り込むことになる。このとき、第1突出部201が第2突出部202よりも小さいため、より容易にヨーク151をマグネット153に対して挿入することができる。
【0060】
この場合、第2突出部202はマグネット153の周方向における位置決めの役割をも担う。なお、例えば、マグネット153はマイナス交差で形成されている場合、全てのマグネット153をヨーク151の内側面151nに配置すると、互いに隣接するマグネット153同士において接触しない部分が生じる可能性がある。
【0061】
しかしながら、互いに隣接する第2突出部202同士の間隔がマグネット153の長さL1に等しいので、全てのマグネット153同士が点対象となるように正確に位置決めされるとともに、全てのマグネット153の内周側の部分CPにおいて互いに接触した状態が維持される。
【0062】
このとき、マグネット153は、ヨーク151の内側面151nに磁力および接着剤によって張り付けられるので、マグネット153とヨーク151との軸線X方向における上下方向、および、ヨーク151の内側面151nの周方向の位置は維持される。特に、マグネット153は第2突出部202によって周方向の位置ずれが抑制される。
【0063】
この結果、
図10に示すように、治具500、マグネット153およびヨーク151が一体化された状態が形成される。なお、
図10では、受け治具700は省略された状態が表示されている。その後、受け治具700から、マグネット153およびヨーク151だけを取り出し、ヨーク151がホルダ17の外周端部173に固定される。これによりモータ1が完成する。
【0064】
図11(A)乃至(C)に示すように、ヨーク151の内側面151nにはマグネット153が張り付けられるが、各マグネット153はヨーク151の内側面151nに周方向にわたって設けられた複数の突出部列(第1突出部201および第2突出部202)間に配置されているので、マグネット153が周方向へ位置ずれしてしまうことが第2突出部202によって予め抑制されている。
【0065】
すなわち、ヨーク151の内側面151nに対して複数のマグネット153が回転軸Xを中心として点対象にバランス良く配置され、かつ、その状態が第2突出部202の存在によって維持されている。これによりモータ1は、ロータ15を滑らかに回転させることができる。
【0066】
以上の構成によれば、ヨーク151の内側面151nに軸線X方向の下側(矢印b方向)に第1突出部201を形成すると共に、上側(矢印a方向)に第2突出部202を形成し、第1突出部201および第2突出部202を一列の突出部列として周方向に合計28列設けるようにした。これによりモータ1では、マグネット153を同じ個数の突出部列(第1突出部201および第2突出部202)の間に容易かつ均等に配置することができる。
【0067】
特に、マグネット153は、治具500に円形状に張り付けられた状態において各マグネット153間に隙間SPが生じるので、その隙間SPにガイドとなる第1突出部201が入り込むようにヨーク151を外側から挿入するだけで容易に組み付けることができる。
【0068】
ヨーク151の内側面151nにマグネット153が配置された状態においては、各マグネット153間に第1突出部201よりも大きい第2突出部202も存在しているため、マグネット153が周方向にずれることが第2突出部202によって規制されたまま接着剤等により固定される。つまり、複数のマグネット153は、ヨーク151の内側面151nに対して回転軸Xを中心として点対象にバランス良く配置されることになる。
【0069】
モータ1は、複数のプロペラを回転させる構造体であるドローン等に用いられるので、ロータ15の回転バランスが重要である。ヨーク151の内側面151nに固定される複数のマグネット153が回転軸Xを中心として点対象に配置されているので、ロータ15の回転バランスが良くなり、構造体に搭載された状態において振動や騒音を低減することができる。
【0070】
なお、本実施の形態のモータ1は、アウターロータ型のブラシレスモータとして構成されているが、本発明はブラシレスモータ以外のモータにも適用可能である。また、本発明は、インナーロータ型のモータにも適用可能である。
【0071】
以上、本発明のモータについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のモータは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施の形態においては、軸線X方向に沿った突出部列として第1突出部201と第2突出部202を2個設けるようにしたが、これに限るものではなく、3個、4個等、大きさの異なる複数の突出部を設けるようにしてもよい。
【0072】
また、上述の実施の形態においては、回転軸X方向の下側に第1突出部201、上側に第1突出部201よりも大きな第2突出部202を設けるようにした場合に付いて述べたが、本発明はこれに限らず、第1突出部201および第2突出部202の大きさが逆であってもよい、すなわち第1突出部201が第2突出部202よりも大きくてもよい。この場合、第2突出部202がガイドおよび位置決めの役割を担い、ヨーク151は回転軸X方向の下側から組み込まれることになる。
【0073】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
1…モータ、11…ステータハウジング、13…ステータ、15…ロータ、17…ホルダ、171…内周部、173…外周端部、175…スポーク、19(19a、19b)…軸受、111…内周部、112…外周部、115…連結部、131…ステータコア、132…環状部、133…ティース部、135…インシュレータ、139…コイル、151…ヨーク、151n…内側面、153…マグネット、171……内周部、171d……凸部、171f……フランジ部、171h……貫通孔、172……内筒部、173……外周端部、175……スポーク、201…第1突出部、202…第2突出部、500…治具、501…ピース、700…受け治具、701…大径円柱部、702…小径円柱部、703…段差面、704…凹空間、SP…隙間。