(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190395
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】防眩性積層体、偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20221219BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G02B5/02 A
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098699
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古井 玄
(72)【発明者】
【氏名】成川 隆史
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
【Fターム(参考)】
2H042AA15
2H042BA01
2H042BA02
2H042BA19
2H042BA20
2H149AA02
2H149AA18
2H149AA19
2H149AB15
2H149BA02
2H149FC06
(57)【要約】
【課題】鉛筆硬度及び耐屈曲性に優れた防眩性積層体を提供する。
【解決手段】基材上に樹脂層を有する防眩性積層体であって、前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、前記樹脂層は、平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子を含み、前記第1の粒子の個数基準の70%以上が、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に跨って存在し、下記式1を満たす、防眩性積層体。
5<t1/t2<15 (式1)
[式1中、t1は前記第1の樹脂層の平均厚みを示し、t2は前記第2の樹脂層の平均厚みを示す。]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に樹脂層を有する防眩性積層体であって、
前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、
前記樹脂層は、平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子を含み、
前記第1の粒子の個数基準の70%以上が、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に跨って存在し、
下記式1を満たす、防眩性積層体。
5.0<t1/t2<15.0 (式1)
[式1中、t1は前記第1の樹脂層の平均厚みを示し、t2は前記第2の樹脂層の平均厚みを示す。]
【請求項2】
前記第1の粒子の平均粒子径を示すD1と、前記第2の樹脂層の平均厚みを示すt2とが、t2<D1の関係である、請求項1に記載の防眩性積層体。
【請求項3】
前記第1の粒子の平均粒子径を示すD1と、前記第1の樹脂層の平均厚みを示すt1とが、D1<t1の関係である、請求項1又は2に記載の防眩性積層体。
【請求項4】
前記第1の粒子が有機粒子である、請求項1~3の何れかに記載の防眩性積層体。
【請求項5】
前記基材の前記樹脂層側の表面の平均傾斜角が5.0度以上15.0度以下である、請求項1~4の何れかに記載の防眩性積層体。
【請求項6】
前記基材の前記樹脂層側の表面の算術平均高さが0.05μm以上0.25μm以下である、請求項1~5の何れかに記載の防眩性積層体。
【請求項7】
前記第1の樹脂層の厚み方向の真ん中のインデンテーション硬さを示すH1と、前記第2の樹脂層の厚み方向の真ん中のインデンテーション硬さを示すH2とが、H1<H2の関係である、請求項1~6の何れかに記載の防眩性積層体。
【請求項8】
40MPa<H2-H1である、請求項7に記載の防眩性積層体。
【請求項9】
40MPa<H2-H1≦100MPaである、請求項7に記載の防眩性積層体。
【請求項10】
前記樹脂層が、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1~9の何れかに記載の防眩性積層体。
【請求項11】
前記基材がアクリル樹脂基材である、請求項1~10の何れかに記載の防眩性積層体。
【請求項12】
偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が請求項1~11の何れかに記載の防眩性積層体である、偏光板。
【請求項13】
表示素子上に、請求項1~11の何れかに記載の防眩性積層体を有する、画像表示装置。
【請求項14】
フォルダブルタイプの画像表示装置又はローラブルタイプの画像表示装置である、請求項13に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防眩性積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、ノートPC、デスクトップPCのモニター等の画像表示装置の表面には、防眩性を付与するために、防眩性積層体が設置される場合がある。防眩性とは、照明及び人物等の背景の映り込みを抑制する特性である。
【0003】
防眩性積層体は、基材上に表面が凹凸形状である防眩層を有する基本構成からなる。防眩性積層体は、画像表示装置等の表面部材として使用される場合が多いため、人の指及び物等が接触する機会が多い。このため、防眩性積層体は鉛筆硬度が高いことが好ましい。
【0004】
防眩性積層体の鉛筆硬度を高くするため、防眩層の樹脂成分としては、硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく用いられている(例えば、特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6840215号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2018/070426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~2の防眩性積層体は、防眩層の硬度が高いため、鉛筆硬度は良好である。しかし、特許文献1~2の防眩性積層体は耐屈曲性が不十分な場合があった。具体的には、特許文献1~2の防眩性積層体をフォルダブルタイプの画像表示装置又はローラブルタイプの画像表示装置に適用した場合、防眩性積層体にクラックが生じる場合があった。前述した耐屈曲性は、防眩性積層体の基材としてアクリル樹脂基材を用いた場合に悪化する傾向があった。
【0007】
本開示は、鉛筆硬度及び耐屈曲性に優れた防眩性積層体、並びに、それを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]~[3]の防眩性積層体、偏光板及び画像表示装置を提供する。
[1]基材上に樹脂層を有する防眩性積層体であって、
前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、
前記樹脂層は、平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子を含み、
前記第1の粒子の個数基準の70%以上が、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に跨って存在し、
下記式1を満たす、防眩性積層体。
5.0<t1/t2<15.0 (式1)
[式1中、t1は前記第1の樹脂層の平均厚みを示し、t2は前記第2の樹脂層の平均厚みを示す。]
[2]偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が前記[1]に記載の防眩性積層体である、偏光板。
[3]表示素子上に、前記[1]に記載の防眩性積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示の防眩性積層体は、鉛筆硬度及び耐屈曲性を良好にすることができる。本開示の偏光板及び画像表示装置は、鉛筆硬度及び耐屈曲性に優れた防眩性積層体を有するため、偏光板及び画像表示装置の設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の防眩性積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】比較例3の防眩性積層体を示す断面図である。
【
図3】比較例4の防眩性積層体を示す断面図である。
【
図4】本開示の画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を説明する。
[防眩性積層体]
本開示の防眩性積層体は、基材上に樹脂層を有し、
前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、
前記樹脂層は、平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子を含み、
前記第1の粒子の個数基準の70%以上が、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に跨って存在し、
下記式1を満たす、防眩性積層体である。
5.0<t1/t2<15.0 (式1)
[式1中、t1は前記第1の樹脂層の平均厚みを示し、t2は前記第2の樹脂層の平均厚みを示す。]
【0012】
図1は、本開示の防眩性積層体100の一実施形態を示す断面図である。
図1の防眩性積層体100は、基材10上に樹脂層20を有している。また、
図1の樹脂層20は、基材10側から、第1の樹脂層21と、第2の樹脂層22とを有している。また、
図1の樹脂層20は、平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子23を含有している。また、
図1中の第1の粒子23は、第1の樹脂層21及び第2の樹脂層22に跨って存在している。
なお、
図1は模式的な断面図である。すなわち、防眩性積層体100を構成する各層の縮尺、各材料の縮尺、及び表面凹凸の縮尺は、図示しやすくするために模式化したものであり、実際の縮尺とは相違している。
図1以外の図も同様に実際の縮尺とは相違している。
【0013】
<基材>
基材としては、光透過性、平滑性、耐熱性及び機械的強度が良好であることが好ましい。このような基材としては、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等の樹脂を含む樹脂基材が挙げられる。樹脂基材は、2以上の樹脂基材を貼り合わせたものであってもよい。
樹脂基材は、機械的強度及び寸法安定性を良好にするため、延伸処理されていることが好ましい。
【0014】
樹脂基材の中でも、吸湿性が低いため寸法安定性を良好にしやすく、かつ、光学的異方性が低いため視認性を良好にしやすい、アクリル樹脂基材が好ましい。また、アクリル樹脂基材は、樹脂層用塗布液を所定の組成として、かつ、所定の乾燥条件とすることにより、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を1回の塗布で形成しやすくできる。
アクリル樹脂基材は、硬くて脆いため、アクリル樹脂基材上に硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を形成すると、耐屈曲性が不十分になる場合がある。本開示の防眩性積層体は、アクリル樹脂基材上に硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を形成しても、樹脂層の厚み方向の所定の位置に第1の粒子を存在させること、及び、式1を満たすことなどにより、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
本明細書において、アクリル樹脂とは、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を意味する。
【0015】
アクリル樹脂基材が含有するアクリル樹脂としては特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1種又は2種以上組み合わせて重合してなるものが好ましく、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチルを用いて得られるものが好ましい。また、アクリル樹脂としては、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報等に記載のものも挙げられる。アクリル樹脂として、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂、イミド環構造を有するアクリル樹脂等の環構造を有するものを用いてもよい。
【0016】
アクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が、100℃以上150℃以下であることが好ましく、105℃以上135℃以下であることがより好ましく、110℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。
アクリル樹脂のガラス転移点が100℃以上であると、樹脂層を形成する際にアクリル樹脂基材が過度に溶解することを抑制しやすくできる。アクリル樹脂のガラス転移点が150℃以下であると、樹脂層を形成する際のアクリル樹脂基材が溶解する度合いをコントロールしやすくできる。
【0017】
アクリル樹脂基材は、アクリル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、アクリル樹脂基材を構成する全樹脂に対するアクリル樹脂の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
アクリル樹脂基材は、例えば、調湿したアクリル樹脂からなるペレットを溶融押し出し後、冷却しながら、縦方向に延伸し、その後、横方向に延伸することで製造することができる。
溶融押し出し工程では、1軸、2軸、又は2軸以上のスクリューを使用することができ、スクリューの回転方向、回転数、溶融温度は任意に設定できる。
延伸は、延伸後に所望の厚みになるように行うことが好ましい。また、延伸倍率は限定されないが、1.2倍以上4.5倍以下が好ましい。延伸時の温度、湿度は任意に決められる。延伸方法は、一般的な方法でよい。
【0019】
基材の平均厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、35μm以上がさらに好ましい。基材の平均厚みを10μm以上とすることにより、防眩性積層体の取り扱い性を良好にしやすくできる。
基材の平均厚みは、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。基材の平均厚みを100μm以下とすることにより、防眩性積層体の耐屈曲性をより良好にしやすくできる。
【0020】
上述した基材の平均厚みは、防眩性積層体の完成時の基材の平均厚みを意味する。後述するように、樹脂層用塗布液により基材の一部が溶解することによって、防眩性積層体の完成時の基材の平均厚みは、初期の基材の平均厚みよりも減少する場合がある。このため、初期の基材の平均厚みは、防眩性積層体の完成時の基材の平均厚みよりも厚くすることが好ましい。初期の基材の平均厚みと、防眩性積層体の完成時の基材の平均厚みとの差は、樹脂層の厚み、樹脂層用塗布液の組成、前記塗布液の乾燥条件等により異なるため一概にはいえないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0021】
基材の平均厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した防眩性積層体の断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により算出できる。STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
基材の平均厚み、第1の樹脂層の厚み、第2の樹脂層の厚み、樹脂層の厚み方向における第1の粒子の位置、基材の樹脂層側の表面の平均傾斜角、基材の樹脂層側の表面の算術平均高さ等を測定するためには、防眩性積層体の断面が露出した測定用のサンプルを作製する必要がある。前記サンプルは、例えば、後述する(A1)~(A2)の工程で作製できる。なお、コントラスト不足で界面等が見え難い場合には、前処理として、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸などで前記サンプルに染色処理を施してもよい。
【0022】
本明細書において、各種の測定及び評価、並びに、測定及び評価のためのサンプリングを実施する雰囲気は、特に断りのない限り、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下で測定したものとする。また、測定、評価及びサンプリングを実施前に、対象となる防眩性積層体を前記雰囲気に30分以上晒すものとする。
【0023】
基材は、基材の樹脂層側の表面の平均傾斜角が5.0度以上15.0度以下であることが好ましい。
平均傾斜角を5度以上とすることにより、防眩性積層体の耐屈曲性をより良好にしやすくできる。耐屈曲性が良好になる理由は、基材と樹脂層との密着性が良好になることにより、屈曲時に界面剥離が生じないためと考えられる。
平均傾斜角を15度以下とすることにより、内部ヘイズが上昇することを抑制しやすくできる。また、基材の一部が樹脂層用塗布液により溶解している実施形態の場合には、平均傾斜角を15度以下とすることにより、鉛筆硬度を良好にしやすくできる。前述の実施形態において鉛筆硬度を良好にしやすくできる理由は、樹脂層に基材成分が過度に溶出しないことによって、樹脂層の硬度が低下しにくくなるためと考えられる。
基材の平均傾斜角は、5.5度以上がより好ましく、6.0度以上がさらに好ましい。基材の平均傾斜角は、14.0度以下がより好ましく、13.0度以下がさらに好ましい。
【0024】
基材の平均傾斜角及び基材の算術平均高さは、例えば、以下のように測定することができる。
(1)防眩性積層体の断面写真を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で撮像する。STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は5000倍以上10000倍以下とすることが好ましい。
(2)断面写真の画像から、基材と樹脂層との界面の稜線を取得し、高さデータを取得する。具体的には下記のようにする。基材と樹脂層との界面は、基材の樹脂層側の表面に相当する。
(a)撮影した画像を、オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェアImageJ(version 1.52a)にて表示する。
(b)画像中に表示されたスケール表示から、ピクセル当たりの長さを求める。
(c)“FreeHand Selections”を選択して、界面を含むようにROIをつくり、Brightnessを調節して、界面を境に色が明確に異なるようにする。
(d)Process-Smoothを2回かける。
(e)Image-Typeを8bitにする。
(f)“Straight”を選択して、界面に沿って線を引く。
(g)ImageJのPluginであるABSnakeを導入して実行する。その際”Gradient threshold”を10に設定し、Draw colorをRedに設定する。その他の設定はデフォルトのままとする。
(h)目視で、界面がRedでトレースできていることを確認する。不良の場合は、(f)からやり直す。
(i)Image-Adjust-Color Thresholdを実行。Redとそれ以外を分けるようにしきい値を設定する。具体的には、Color spaceをRGBにして、「Red」「Green」及び「Blue」の「Pass」にチェックをつけ、Redの範囲の上下限を最大値(255)にし、「Green」及び「Blue」の範囲の上下限を最小値(0)にする。
(j)Process-Binary-Make Binaryを実行して、界面のトレース線の部分と、前記トレース線以外の部分とで2値化する。
(k)File-Save Asで”Text Image”で2値化されたデータを保存する。
(l)2値化されたデータから、界面を高さデータ点列に変換する。
(3)高さデータ点列から、下記の手順で、平均傾斜角、算術平均高さを算出する。
(m) 最小二乗法の二次回帰により高さデータの中心線を求めて、高さデータから差し引くことで、中心線を0とし上方向を正、下方向を負とするように変換する。中心線の方向をx軸、それに垂直な方向(高さ方向)をy軸とする。
(n) (b)で求めたピクセル当たりの長さを用いて、高さデータを長さに換算する。
(o)カットオフ波長0.5μmのガウシャンによるローパスフィルターを適用する。
(p)tan-1((yi+1-yi-1)/2Δx)[yiは高さデータ点列のi番目の点における高さ、Δxは隣り合う点のx軸方向の距離]により求められる各点の傾斜角度の絶対値の算術平均を算出することにより、平均傾斜角を求める。
(q)各点の高さの絶対値の算術平均を算出することにより、算術平均高さを求める。
【0025】
基材は、基材の樹脂層側の表面の算術平均高さが0.05μm以上0.25μm以下であることが好ましい。
算術平均高さを0.05μm以上とすることにより、防眩性積層体の耐屈曲性をより良好にしやすくできる。耐屈曲性が良好になる理由は、基材と樹脂層との密着性が良好になることにより、屈曲時に界面剥離が生じないためと考えられる。
算術平均高さを0.25μm以下とすることにより、内部ヘイズが上昇することを抑制しやすくできる。また、基材の一部が樹脂層用塗布液により溶解している実施形態の場合には、算術平均高さを0.25μm以下とすることにより、鉛筆硬度を良好にしやすくできる。前述の実施形態において鉛筆硬度を良好にしやすくできる理由は、樹脂層に基材成分が過度に溶出しないことによって、樹脂層の硬度が低下しにくくなるためと考えられる。
基材の算術平均高さは、0.07μm以上がより好ましく、0.09μm以上がさらに好ましい。基材の算術平均高さは、0.23μm以下がより好ましく、0.20μm以下がさらに好ましい。
【0026】
基材の樹脂層側の表面の平均傾斜角及び算術平均高さを上述した範囲とするためには、基材の一部を樹脂層用塗布液で溶解させることが好ましい。但し、基材を樹脂層用塗布液で溶解する際には、樹脂層用塗布液を所定の組成として、かつ、所定の乾燥条件とすることが好ましい。所定の組成及び所定の乾燥条件については後述する。
【0027】
基材は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤及び可塑剤等の添加剤を含んでもよい。
基材の表面には、密着性向上のために、コロナ放電処理等の物理的な処理又は化学的な処理を施したり、易接着層を形成したりしてもよい。
【0028】
<樹脂層>
樹脂層は、基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有することを要する。
また、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とは、下記式1を満たすことを要する。
5.0<t1/t2<15.0 (式1)
[式1中、t1は第1の樹脂層の平均厚みを示し、t2は第2の樹脂層の平均厚みを示す。]
【0029】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、例えば、基材上に、第1の粒子、樹脂となる成分、及び溶媒を含む樹脂層用塗布液を塗布、乾燥し、必要に応じて硬化することにより形成することができる。樹脂層用塗布液は、さらに、必要に応じて、無機微粒子、添加剤を含有してもよい。
上記の手法の場合、樹脂層用塗布液が基材の一部を溶解し、基材から溶出した成分と樹脂層用塗布液とが混合して形成される領域が第1の樹脂層となり、基材から溶出した成分を殆ど含まず、樹脂層用塗布液を主成分とする領域が第2の樹脂層となる。すなわち、上記の手法では、1つの樹脂層用塗布液を用いた1回の塗布により、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成することができる。
上記の手法では、樹脂層用塗布液を所定の組成として、かつ、所定の乾燥条件とすることが肝要である。所定の組成及び所定の乾燥条件については後述する。
基材上に樹脂層用塗布液を塗布する方法は特に制限されず、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の汎用の塗布方法が挙げられる。
樹脂層用塗布液を硬化する際には、紫外線及び電子線等の電離放射線を照射することが好ましい。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯及びメタルハライドランプ灯等が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190nm以上380nm以下の波長域が好ましい。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種の電子線加速器が挙げられる。
【0030】
なお、樹脂層を2層にする手段として、後述する比較例3及び4のように、2つの樹脂層用塗布液を準備し、1層目の樹脂層を形成した後、2層目の樹脂層を積層する手段が考えられる。しかし、1層目の塗布液に粒子を含ませた場合には、防眩性を良好にしにくく、2層目の塗布液に粒子を含ませた場合には、耐屈曲性を良好にしにくい。また、2つの樹脂層用塗布液を用いて樹脂層を2層にする手段では、1層目と2層目との密着性を良好にしにくい。
このため、上述した手法のように、1つの樹脂層用塗布液を用いた1回の塗布により、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成することが好ましい。
【0031】
樹脂層が単層の場合、防眩性積層体の耐屈曲性又は鉛筆硬度を良好にすることができない。例えば、硬度の高い樹脂層の単層の場合、防眩性積層体の耐屈曲性を良好にすることができない。また、硬度の低い樹脂層の単層の場合、防眩性積層体の鉛筆硬度を良好にすることができない。
さらに、樹脂層が、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有していても、式1を満たさない場合、防眩性積層体の耐屈曲性又は鉛筆硬度を良好にすることができない。第2の樹脂層は第1の樹脂層よりも基材から遠いため、基材から溶出した成分の含有量は、第1の樹脂層よりも第2の樹脂層の方が少なくなる。よって、第2の樹脂層の硬度は、第1の樹脂層の硬度よりも高くなりやすい。t1/t2が15.0以上であることは、硬度の高い第2の樹脂層の厚みの割合が小さいこと意味する。このため、t1/t2が15.0以上の場合、防眩性積層体の鉛筆硬度を良好にすることができない。また、t1/t2が5.0以下であることは、硬度の高い第2の樹脂層の厚みの割合が大きいこと意味する。このため、t1/t2が5.0以下の場合、防眩性積層体の耐屈曲性を良好にすることができない。
【0032】
t1/t2は、5.5以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましい。また、t1/t2は、14.0以下であることが好ましく、13.5以下であることがより好ましい。
【0033】
樹脂層全体の厚み(言い換えると、第1の樹脂層と第2の樹脂層との合計厚み)は、下限は、7.0μm以上が好ましく、8.0μm以上がより好ましく、9.0μm以上がさらに好ましく、上限は、15.0μm以下が好ましく、14.0μm以下がより好ましく、13.0μm以下がさらに好ましい。
第1の樹脂層の平均厚みt1は、下限は、5.0μm以上が好ましく、7.0μm以上がより好ましく、8.5μm以上がさらに好ましく、上限は、13.0μm以下が好ましく、12.0μm以下がより好ましく、11.0μm以下がさらに好ましい。t1を5.0μm以上とすることにより、耐屈曲性を良好にしやすくでき、t1を13.0μm以下とすることにより、鉛筆硬度の低下を抑制しやすくできる。
第2の樹脂層の平均厚みt1は、下限は、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましく、上限は、4.0μm以下が好ましく、3.0μm以下がより好ましく、2.7μm以下がさらに好ましい。t2を0.3μm以上とすることにより、鉛筆硬度を良好にしやすくでき、t2を4.0μm以下とすることにより、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
【0034】
第1の樹脂層の平均厚み、及び、第2の樹脂層の平均厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した防眩性積層体の断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により算出できる。STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
【0035】
樹脂層は、平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子を含むことを要する。
樹脂層が第1の粒子を含まない場合、防眩性積層体に防眩性を付与することができない。
【0036】
樹脂層は、第1の粒子の個数基準の70%以上が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に跨って存在することを要する。
第1の粒子23が第1の樹脂層21及び第2の樹脂層22に跨って存在するとは、
図1に示すように、樹脂層20の厚み方向において、第1の粒子23が、第1の樹脂層21側及び第2の樹脂層22側の両側に存在することを意味する。一方、
図2では、第1の粒子23は、第1の樹脂層21及び第2の樹脂層22に跨って存在せず、第2の樹脂層22側の片側に存在している。
図3では、第1の粒子23は、第1の樹脂層21及び第2の樹脂層22に跨って存在せず、第1の樹脂層21側の片側に存在している。
本明細書において、“第1の粒子の個数基準の70%以上が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に跨って存在する”ことを、“第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たす”と記述する場合がある。本明細書において、“第1の粒子の個数基準の70%以上が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に跨って存在しない”ことを、“第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たさない”と記述する場合がある。
【0037】
第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たさない場合、防眩性及び耐屈曲性を良好にすることができない。
第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たさない場合、第1の粒子の個数基準の30%超が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を跨ぐことなく、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の何れかに存在することになる。本明細書において、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を跨ぐことなく、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の何れかに存在する第1の粒子のことを、“偏った第1の粒子”と記述する場合がある。第1の樹脂層に偏った第1の粒子が多く含まれる場合、第1の粒子によって樹脂層の表面に凹凸が形成されにくくなるため、防眩性を良好にすることができない。また、防眩性積層体を屈曲した際には、第1の粒子と樹脂層との界面で剥離が生じる場合があり、前記剥離が耐屈曲性を低下させる原因となる。第1の粒子と樹脂層との界面の剥離は、樹脂層の硬度が硬い方が抑制しにくい。このため、第2の樹脂層に偏った第1の粒子が多く含まれる場合、耐屈曲性を良好にすることができない。
【0038】
第1の粒子が、樹脂層の厚み方向において、第1の樹脂層側及び第2の樹脂層側の両側に存在する割合は、個数基準で80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0039】
樹脂層の厚み方向における第1の粒子が存在する位置は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した防眩性積層体の断面写真から判別できる。また、上述した個数基準の割合は、前記断面写真から算出できる。なお、数値の信頼性を高めるために、複数の断面写真を取得し、第1の粒子の合計数を50以上とした上で、上述した個数基準の割合を算出することが好ましい。
STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
【0040】
第1の樹脂層の厚み方向の真ん中のインデンテーション硬さを示すH1と、第2の樹脂層の厚み方向の真ん中のインデンテーション硬さを示すH2とは、H1<H2の関係であることが好ましい。
H1<H2の関係を満たすことにより、防眩性積層体の鉛筆硬度及び耐屈曲性を良好にしやすくできる。
【0041】
H1とH2とは、40MPa<H2-H1であることが好ましい。H2-H1を40MPa超とすることにより、防眩性積層体の鉛筆硬度及び耐屈曲性を良好にしやすくできる。H2-H1は、45MPa以上であることがより好ましく、50MPa以上であることがさらに好ましい。
H2-H1が大きすぎると、H2が大きすぎることにより防眩性積層体の耐屈曲性が低下したり、H1が小さすぎることにより防眩性積層体の鉛筆硬度が低下しやすくなる。このため、H2-H1は、100MPa以下であることが好ましく、90MPa以下であることがより好ましく、80MPa以下であることがさらに好ましい。
H2の値は、樹脂層用塗布液を構成する樹脂成分により調整することができる。H1の値は、樹脂層用塗布液を構成する樹脂成分と、基材から溶出した成分との混合物の値であるため、前記2つの成分により調整することができる。
【0042】
H1は、下限は、鉛筆硬度を良好にしやすくするため、150MPa以上であることが好ましく、160MPa以上であることがより好ましく、170MPa以上であることがさらに好ましく、上限は、耐屈曲性の低下を抑制しやすくするため、250MPa以下であることが好ましく、240MPa以下であることがより好ましく、230MPa以下であることがさらに好ましい。
H2は、下限は、鉛筆硬度を良好にしやすくするため、230MPa以上であることが好ましく、240MPa以上であることがより好ましく、245MPa以上であることがさらに好ましく、上限は、耐屈曲性の低下を抑制しやすくするため、310MPa以下であることが好ましく、290MPa以下であることがより好ましく、285MPa以下であることがさらに好ましい。
【0043】
-インデンテーション硬さの測定方法-
H1~H3を測定するためには、測定対象の層の断面が露出した測定用のサンプルを作製する必要がある。前記サンプルは、例えば、下記(A1)~(A2)の工程で作製できる。
【0044】
(A1)防眩性積層体を任意の大きさに切断したカットサンプルを作製した後、前記カットサンプルを樹脂で包埋した包埋サンプルを作製する。カットサンプルの大きさは、例えば、縦10mm×横3mmの短冊状とする。包埋用の樹脂はエポキシ樹脂が好ましい。
包埋サンプルは、例えば、シリコン包埋板内にカットサンプルを配置した後に包埋用の樹脂を流し込み、さらに、包埋用の樹脂を硬化させた後、シリコン包埋板から、カットサンプル及びこれを包む包埋用の樹脂を取り出すことにより得ることができる。以下に例示するストルアス社製のエポキシ樹脂の場合、前述した硬化の工程は、常温で12時間放置して硬化することが好ましい。包埋サンプルの形状はブロック状である。
シリコン包埋板は、例えば、堂阪イーエム社製のものが挙げられる。シリコン包埋板は、シリコンカプセルと称する場合もある。包埋用のエポキシ樹脂は、例えば、ストルアス社製の商品名「エポフィックス」と、同社製の商品名「エポフィックス用硬化剤」とを10:1.2で混合したものを用いることができる。
【0045】
(A2)ブロック状の包埋サンプルを垂直に切断し、防眩性積層体の断面が露出してなる、インデンテーション硬さの測定用のサンプルを作製する。インデンテーション硬さの測定用のサンプルの形状はブロック状を維持している。包埋サンプルは、カットサンプルの中心を通るように切断することが好ましい。包埋サンプルはダイヤモンドナイフで切断することが好ましい。
ブロック状の包埋サンプルを切断する装置としては、例えば、ライカマイクロシステムズ社製の商品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」が挙げられる。ブロック状の包埋サンプルを切断する際は、最初は大まかに切断し(粗トリミング)、最終的には、「SPEED:1.00mm/s」、「FEED:70nm」の条件で精密にトリミングすることが好ましい。
上記のように、ブロック状の包埋サンプルから切断された切片のうち、穴等の欠陥がなく、かつ、厚みが60nm以上100nm以下で均一な切片は、第1の樹脂層の平均厚み、第2の樹脂層の平均厚み、樹脂層の厚み方向における第1の粒子の位置、基材の樹脂層側の表面の平均傾斜角、基材の樹脂層側の表面の算術平均高さ、第1の粒子の粒子径、無機微粒子の粒子径の測定用サンプルとして用いることができる。
【0046】
H1~H3は、上述したサンプルの切断面の所定の位置に、バーコビッチ圧子(材質:ダイヤモンド三角錐)を垂直に押し込んで測定する。
所定の位置は、H1の測定では、第1の樹脂層の厚み方向の真ん中であり、H2の測定では、第2の樹脂層の厚み方向の真ん中であり、H3の測定では、基材の厚み方向の真ん中である。第1の樹脂層の厚み方向の真ん中は、第1の樹脂層の厚み方向の中心であることが好ましいが、前記中心からのズレが0.10μmは許容できる。同様に、第2の樹脂層の厚み方向の真ん中は、第2の樹脂層の厚み方向の中心であることが好ましいが、前記中心からのズレが0.10μmは許容できる。同様に、基材の厚み方向の真ん中は、基材の厚み方向の中心であることが好ましいが、前記中心からのズレが0.10μmは許容できる。
【0047】
インデンテーション硬さは、下記の条件で測定することが好ましい。
<測定条件>
・使用圧子:バーコビッチ圧子(型番:TI-0039、BRUKER社製)
・押し込み条件:荷重制御方式
・最大荷重:50μN
・荷重印加時間:10秒間(荷重変化率:5μN/sec)
・保持時間:5秒間
・保持荷重:50μN
・荷重除荷時間:10秒間(荷重変化率:-5μN/sec)
【0048】
インデンテーション硬さは、下記のようにして算出することができる。
まず、押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定することにより、荷重-変位曲線を作成する。作成した荷重-変位曲線を解析することにより、最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と測定対象の層とが接している投影面積Ap(mm2)で除した値として、インデンテーション硬さHITを算出することができる(下記式2)。
HIT=Fmax/Ap (式2)
ここで、Apは標準試料の溶融石英(BRUKER社製の5-0098)を用いてOliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
本明細書において、H1~H3は、20個のサンプルの測定値の平均値を意味する。
【0049】
《第1の粒子》
第1の粒子は、平均粒子径が0.5μm以上の粒子である。平均粒子径が0.5μm未満の場合、樹脂層の表面に凹凸形状を形成することが困難であり、防眩性を良好にすることができない。
【0050】
第1の粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等の樹脂の1種以上から形成される有機粒子;シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等の無機物の1種以上から形成される無機粒子;が挙げられる。これらの中でも、有機粒子は、分散安定性に優れ、かつ、比重が比較的小さいため、第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たしやすくできる点で好ましい。
【0051】
第1の粒子の含有量は、樹脂層用塗布液の樹脂成分100質量部に対して、下限は、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましく、上限は、10.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
第1の粒子の含有量を0.5質量部以上とすることにより、防眩性を良好にしやすくできる。また、第1の粒子の含有量を10.0質量部以下とすることにより、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
【0052】
第1の粒子の平均粒子径は、0.8μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。
第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たしやすくするために、第1の粒子の平均粒子径は、3.0μm以下であることが好ましく、2.7μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
第1の粒子の平均粒子径は、例えば、以下の(B1)~(B3)の作業により算出できる。
(B1)光学顕微鏡にて防眩性積層体の透過観察画像を撮像する。倍率は500倍以上2000倍以下が好ましい。
(B2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(B3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を粒子の平均粒子径とする。
ただし、光学的に第1の粒子が観察できないときは、以下の(B4)~(B6)により第1の粒子の平均粒子径を算出する。
(B4)防眩性積層体から、第1の粒子の中心を通る断面となるような切片をミクロトームにて作製する。切片の厚さは60nm~100nmが好ましい。1つの第1の粒子につき連続で複数の切片を作製し、各切片から(B5)の作業により算出した粒子径が極大となる切片を、第1の粒子の中心を通る断面となる切片とすることができる。
(B5)得られた切片を走査型透過電子顕微鏡(STEM)にて観察して粒子径を算出する。粒子径の算出方法は(B2)と同様とする。倍率は5000倍以上20000倍以下が好ましい。
(B6)(B4)~(B5)の作業を20個分の粒子に対して行って、20個分の粒子径の数平均から得られる値を第1の粒子の平均粒子径とする。
【0054】
第1の粒子の平均粒子径を示すD1と、第2の樹脂層の平均厚みを示すt2とは、t2<D1の関係であることが好ましい。t2<D1とすることにより、第1の粒子によって、防眩性積層体の表面に凹凸形状を付与しやすくできるため、防眩性を良好にしやすくできる。
D1-t2は、0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましい。
【0055】
D1-t2が大きすぎると、第1の粒子が第2の樹脂層の表面から突出することにより、耐屈曲性が低下する場合がある。このため、D1-t2は、2.0μm以下であることが好ましく、1.7μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
第1の粒子の平均粒子径を示すD1と、第1の樹脂層の平均厚みを示すt1とは、D1<t1の関係であることが好ましい。D1<t1とすることにより、耐屈曲性をより良好にしやすくできる。
t1-D1は、4.0μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましく、6.0μm以上であることがさらに好ましい。
【0057】
t1-D1が大きすぎると、硬度の低い第1の樹脂層の厚みが増すことにより、鉛筆硬度が低下する場合がある。このため、t1-D1は、10.0μm以下であることが好ましく、9.0μm以下であることがより好ましく、8.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
《無機微粒子》
樹脂層は、無機微粒子を含んでいてもよい。樹脂層が比較的比重の大きい無機微粒子を含むことにより、第1の粒子が樹脂層の下方に沈みにくくなるため、第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たしやすくできる。また、無機微粒子は、第1の粒子の分散性を高め、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
本明細書において、無機微粒子とは、平均一次粒子径が200nm以下の無機粒子を意味する。
無機微粒子の平均粒子径は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、5nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
【0059】
無機微粒子の平均粒子径は、以下の(C1)~(C3)の作業により算出できる。
(C1)防眩性積層体の断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、倍率は5万倍以上30万倍以下とすることが好ましい。
(C2)観察画像から任意の10個の無機微粒子を抽出し、個々の無機微粒子の粒子径を算出する。粒子径は、無機微粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(C3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を無機微粒子の平均粒子径とする。
【0060】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる微粒子が挙げられる。これらの中でも、内部ヘイズの発生を抑制しやすいシリカが好適である。
【0061】
無機微粒子の含有量は、樹脂層用塗布液の樹脂成分100質量部に対して、下限は、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましく、上限は、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましい。
無機微粒子の含有量を0.1質量部以上とすることにより、第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たしやすくできる。また、無機微粒子の含有量を5.0質量部以下とすることにより、第1の粒子が樹脂層の上方に過度に浮かぶことを抑制できるため、第1の粒子が厚み方向の位置の条件を満たしやすくできる。
【0062】
《樹脂成分》
樹脂層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。樹脂層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことにより、防眩性積層体の鉛筆硬度を良好にしやすくできる。硬化性樹脂組成物の硬化物は、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両方に含まれることが好ましい。
【0063】
樹脂層用塗布液の樹脂成分の全量に対する硬化性樹脂組成物の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0064】
硬化性樹脂組成物の硬化物としては、熱硬化性樹脂組成物の硬化物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。これらの中でも、鉛筆硬度を高くしやすく、かつ、未硬化の組成物の状態において基材を溶解しやすい、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0066】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。
電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線又は電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
【0067】
電離放射線硬化性化合物としては、電離放射線硬化性官能基を1つ有する単官能の電離放射線硬化性化合物、電離放射線硬化性官能基を2つ以上有する多官能の電離放射線硬化性化合物のいずれも用いることができる。また、電離放射線硬化性化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
基材の一部を溶解し、かつ、鉛筆硬度を高くし、かつ、硬化収縮を抑制しやすくするためには、電離放射線硬化性化合物として、下記(a)~(c)の混合物を用いることが好ましい。下記(a)~(c)は、電離放射線硬化性官能基としてエチレン性不飽和結合基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート系化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリレート系化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等により分子骨格の一部を変性したものも使用することができる。
(a)単官能の電離放射線硬化性モノマー
(b)多官能の電離放射線硬化性モノマー
(c)多官能の電離放射線硬化性オリゴマー
【0068】
電離放射線硬化性化合物として、(a)の単官能の電離放射線硬化性モノマーを含むことにより、基材の一部を溶解しやすくすることができ、かつ、基材から溶出した成分を樹脂層用塗布液の成分に相溶させやすくできる。また、(a)の単官能の電離放射線硬化性モノマーを含むことにより、樹脂層用塗布液の粘度が低下するため、樹脂層用塗布液と基材から溶出した成分との混合物が対流しやすくなる。この結果、第2の樹脂層の厚みに対して第1の樹脂層の厚みが大きくなるため、t1/t2を5超過にしやすくできる。
但し、(a)の単官能の電離放射線硬化性モノマーの量が多過ぎると、基材を過度に溶解してしまうため、基材の強度が低下したり、防眩性積層体の鉛筆硬度が低下する場合がある。また、(a)の単官能の電離放射線硬化性モノマーの量が多過ぎると、上述した対流が激しくなるため、第2の樹脂層の厚みに対して第1の樹脂層の厚みが大きくなり過ぎ、t1/t2が15を超える場合がある。
電離放射線硬化性化合物として、(b)の多官能の電離放射線硬化性モノマーを含むことにより、防眩性積層体の鉛筆硬度を良好にしやすくできる。但し、(b)の多官能の電離放射線硬化性モノマーの量が多過ぎると、樹脂層の硬度が高くなり過ぎて、防眩性積層体の耐屈曲性が低下する場合がある。
電離放射線硬化性化合物として、(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーを含むことにより、防眩性積層体の鉛筆硬度を維持しつつ、硬化収縮を抑制しやすくできる。但し、(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの量が多過ぎると、防眩性積層体の鉛筆硬度が低下する場合がある。
【0069】
電離放射線硬化性化合物の総量に対する、(a)の単官能の電離放射線硬化性モノマーの量は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、17質量%以上33質量%以下であることがさらに好ましい。
電離放射線硬化性化合物の総量に対する、(b)の多官能の電離放射線硬化性モノマーの量は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、6質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上13質量%以下であることがさらに好ましい。
電離放射線硬化性化合物の総量に対する、(c)多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの量は、40質量%以上80質量%以下であることが好ましく、50質量%以上77質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0070】
(a)の単官能の電離放射線硬化性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単官能モノマーは、基材との密着性を良好にしやすいため好ましい。
【0071】
(b)の多官能の電離放射線硬化性モノマーのうち、2官能の電離放射線硬化性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。3官能以上の電離放射線硬化性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(b)の多官能の電離放射線硬化性モノマーの官能基数は、鉛筆硬度を高くしつつ硬化収縮を抑制するため、3以上5以下であることが好ましく、3以上4以下であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
【0072】
(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0073】
(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの官能基数は、鉛筆硬度を維持しつつ硬化収縮を抑制するため、4以上8以下であることが好ましく、5以上7以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。
(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量は、鉛筆硬度を維持しつつ硬化収縮を抑制するため、1000~5000であることが好ましく、1100~3500であることがより好ましく、1200~2000であることがさらに好ましい。
本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0074】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0075】
《添加剤》
樹脂層用塗布液は、必要に応じて、レベリング剤、屈折率調整剤、帯電防止剤、防汚剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤及び熱重合開始剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0076】
《溶媒》
樹脂層用塗布液は、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、基材を溶解し得る溶媒を選択することが好ましい。但し、基材を過度に溶解すると、基材の強度が低下するため、基材の種類に応じて、適切な溶媒を選択することが好ましい。
また、溶媒は、基材の溶解性だけではなく、溶媒に固有の蒸発速度を考慮して選択することが好ましい。溶媒の蒸発速度が遅い場合、基材を過度に溶解しやすいためである。溶媒が蒸発する速度は、乾燥条件によっても制御できる。例えば、乾燥温度を高くすれば溶媒が蒸発する速度は速くなる。また、乾燥風速を速くすれば溶媒が蒸発する速度は速くなる。
以上のことから、基材の溶解性、蒸発速度、乾燥条件を考慮して、溶媒を選択することが好ましい。
【0077】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のグリコールエーテル類;セロソルブアセテート類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;等が挙げられる。溶媒は、1種単独でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0078】
アクリル樹脂基材は溶媒に溶解しやすい。このため、基材としてアクリル樹脂基材を用いる場合、溶媒に固有の蒸発速度が速い溶媒を主成分とすることが好ましい。主成分とは、溶媒の全量の50質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
本明細書において、蒸発速度が速い溶媒は、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際に、蒸発速度が100以上の溶媒を意味する。蒸発速度が速い溶媒の蒸発速度は、120以上300以下であることがより好ましく、140以上220以下であることがさらに好ましい。
蒸発速度が速い溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(蒸発速度150)、メチルイソブチルケトン(蒸発速度160)、トルエン(蒸発速度200)が挙げられる。
【0079】
《乾燥条件》
樹脂層用塗布液から樹脂層を形成する際には、乾燥条件を制御することが好ましい。
乾燥条件は、乾燥温度及び乾燥機内の風速により制御することができる。乾燥温度及び風速の好ましい範囲は、樹脂層用塗布液の組成により異なるため一概にはいえないが、乾燥温度は85℃以上105℃以下が好ましく、乾燥風速は5m/s以上20m/s以下が好ましい。乾燥時間は30秒以上90秒以下が好ましい。乾燥条件の中でも、乾燥温度は重要である。乾燥温度を低くするとt1/t2が小さくなる傾向があり、乾燥温度を高くするとt1/t2が大きくなる傾向がある。樹脂層用塗布液により基材の一部を溶解させ、かつ、基材から溶出した成分と樹脂層用塗布液との混合物を流動させて第1の樹脂層の厚みを確保するため、電離放射線の照射は塗布液の乾燥後に行うことが好適である。
【0080】
<その他の層>
防眩性積層体は、基材及び樹脂層以外の層を有していてもよい。その他の層としては、反射防止層、防汚層及び帯電防止層等が挙げられる。
【0081】
<光学特性、表面形状>
防眩性積層体は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
全光線透過率、及び、後述するヘイズを測定する際の光入射面は、基材側とする。
【0082】
防眩性積層体は、JIS K7136:2000のヘイズが、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましい。ヘイズを0.5%以上とすることにより、防眩性を良好にしやすくできる。
また、映像の解像度の低下を抑制しやすくするため、防眩性積層体は、ヘイズが20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0083】
防眩性積層体は、防眩性を良好にしやすくするため、樹脂層側の表面のJIS B0601:2001の算術平均粗さRaが、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。また、防眩性積層体は、映像の解像度の低下を抑制しやすくするため、樹脂層側の表面のRaが0.12μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましい。Raは、カットオフ値0.8mmにおける値を意味する。
【0084】
<大きさ、形状等>
防眩性積層体は、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2インチ以上500インチ以下程度である。“最大径”とは、防眩性積層体の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、防眩性積層体が長方形の場合は、長方形の対角線が最大径となる。防眩性積層体が円形の場合は、円の直径が最大径となる。
ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500mm以上3000mm以下、長さは500m以上5000m以下程度である。ロール状の形態の防眩性積層体は、画像表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部は除外することが好ましい。
枚葉の形状も特に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形であってもよいし、円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。より具体的には、防眩性積層体が四角形状である場合には、縦横比は表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、横:縦=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1、5:4、11:8等が挙げられる。
【0085】
[偏光板]
本開示の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が上述した本開示の防眩性積層体である、ものである。
【0086】
偏光板は、例えば、偏光板とλ/4位相差板とを組み合わせることにより反射防止性を付与するために使用される。この場合、画像表示装置の表示素子上にλ/4位相差板を配置し、λ/4位相差板よりも視認者側に偏光板が配置される。
偏光板を液晶表示装置用に用いる場合、偏光板は液晶シャッターの機能を付与するために使用される。この場合、液晶表示装置は、下側偏光板、液晶表示素子、上側偏光板の順に配置され、下側偏光板の偏光子の吸収軸と上側偏光板の偏光子の吸収軸とが直交して配置される。前記構成では、上側偏光板として本開示の偏光板を用いることが好ましい。
【0087】
<透明保護板>
本開示の偏光板は、第一の透明保護板及び第二の透明保護板の少なくとも一方が上述した本開示の防眩性積層体である。好ましい実施形態は、第一の透明保護板及び第二の透明保護板のうち、光出射側の透明保護板が上述した本開示の防眩性積層体である実施形態である。防眩性積層体は、防眩性積層体の基材側の面が偏光子側となるように配置することが好ましい。
【0088】
第一の透明保護板及び第二の透明保護板の一方が上述した本開示の防眩性積層体である場合、他方の透明保護板は特に限定されないが、光学的等方性の透明保護板が好ましい。
本明細書において、光学的等方性とは、面内位相差が20nm以下のものを指し、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。アクリルフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、光学的等方性を付与しやすい。
【0089】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0090】
<大きさ、形状等>
本開示の偏光板の大きさ及び形状の実施形態は、上述した本開示の防眩性積層体の大きさ及び形状の実施形態が挙げられる。
【0091】
[画像表示装置]
本開示の画像表示装置は、表示素子上に上述した本開示の防眩性積層体を有するものである。
【0092】
図4は、本開示の画像表示装置500の実施形態を示す断面図である。
図4の画像表示装置500は、表示素子200上に、本開示の防眩性積層体100を有している。画像表示装置内において、防眩性積層体は、基材側が表示素子側を向くように配置することが好ましい。
【0093】
表示素子としては、液晶表示素子;EL表示素子(有機EL表示素子、無機EL表示素子);プラズマ表示素子;QD(Quantum dot)を用いた表示素子;ミニLED、マイクロLED表示素子等のLED表示素子;等が挙げられる。これら表示素子は、表示素子の内部にタッチパネル機能を有していてもよい。
液晶表示素子の液晶の表示方式としては、IPS方式、VA方式、マルチドメイン方式、OCB方式、STN方式、TSTN方式等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子である場合、バックライトが必要である。バックライトは、液晶表示素子の防眩性積層体が配置されている側とは反対側に配置される。
【0094】
また、本開示の画像表示装置は、表示素子と防眩性積層体との間にタッチパネルを有するタッチパネル付きの画像表示装置であってもよい。この場合、タッチパネル付きの画像表示装置の最表面に防眩性積層体を配置し、かつ、防眩性積層体の基材側が表示素子側を向くように配置することが好ましい。
【0095】
画像表示装置の大きさ特に限定されないが、有効表示領域の最大径が2インチ以上500インチ以下であることが好ましい。
画像表示装置の有効表示領域とは、画像を表示し得る領域である。例えば、画像表示装置が表示素子を囲う筐体を有する場合、筐体の内側の領域が有効画像領域となる。
有効画像領域の最大径とは、有効画像領域内の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、有効画像領域が長方形の場合は、長方形の対角線が最大径となる。また、有効画像領域が円形の場合は、円の直径が最大径となる。
【0096】
本開示の画像表示装置は、防眩性積層体が耐屈曲性に優れるため、フォルダブルタイプの画像表示装置又はローラブルタイプの画像表示装置であることが好ましい。
【実施例0097】
次に、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0098】
1.測定及び評価
以下のように、実施例及び比較例の防眩性積層体の測定及び評価を行った。なお、各測定及び評価時の雰囲気は、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下とした。また、各測定及び評価の開始前に、対象サンプルを前記雰囲気に30分以上晒してから測定及び評価を行った。結果を表2に示す。比較例7の防眩性積層体は、樹脂層は単層構造であったため、表2において、第2の樹脂層に関する数値は「-」と表記した。
【0099】
1-1.第1の樹脂層及び第2の樹脂層の平均厚み
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の防眩性積層体の断面が露出したサンプルを作製した。走査型透過電子顕微鏡により撮像した前記サンプルの断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により、第1の樹脂層の平均厚みであるt1、及び、第2の樹脂層の平均厚みであるt2を算出した。
【0100】
1-2.第1の粒子の位置
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の防眩性積層体の断面が露出したサンプルを作製した。走査型透過電子顕微鏡により撮像した前記サンプルの断面写真から、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に跨って存在する第1の粒子の個数基準の割合を算出した。前記割合を算出するにあたり、第1の粒子の合計数が50を超えるまで複数の断面写真を取得した。併せて、第1の樹脂層のみに存在する第1の粒子の個数基準の割合、及び、第2の樹脂層のみに存在する第1の粒子の個数基準の割合を算出した。
【0101】
1-3.基材の樹脂層側の表面の平均傾斜角、基材の樹脂層側の表面の算術平均高さ
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の防眩性積層体の断面が露出したサンプルを作製した。走査型透過電子顕微鏡により撮像した前記サンプルの断面写真から、明細書本文の記載に準じて、基材の樹脂層側の表面の平均傾斜角、及び、基材の樹脂層側の表面の算術平均高さを算出した。
【0102】
1-4.インデンテーション硬さ
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の防眩性積層体の断面が露出したサンプルを作製した。次いで、測定装置(ブルカー社、品番:TI950)を用いて、明細書本文の記載に準じて、サンプルの第1の樹脂層の厚み方向の真ん中のインデンテーション硬さ、及び、サンプルの第2の樹脂層の厚み方向の真ん中のインデンテーション硬さを測定した。20個のサンプルの測定値の平均値を、各実施例及び比較例のH1及びH2とした。
【0103】
1-5.全光線透過率(Tt)及びヘイズ(Hz)
実施例及び比較例の防眩性積層体を10cm四方に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、各サンプルのJIS K7361-1:1997の全光線透過率、及びJIS K7136:2000のヘイズを測定した。
なお、光源が安定するよう事前に装置の電源スイッチをONにしてから15分以上待ち、入口開口(測定サンプルを設置する箇所)に何もセットせずに校正を行い、その後に入口開口に測定サンプルをセットして測定した。光入射面は基材側とした。
【0104】
1-6.耐屈曲性
実施例及び比較例の防眩性積層体に対して、JIS K5600-5-1:1999に規定の円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験を行った。マンドレルの直径を徐々に小さくし、防眩性積層体に最初に割れが生じたマンドレルの直径を表2に示す。直径5mm以下が合格レベルである。マンドレルに防眩性積層体を巻き付ける際は、基材側がマンドレル側となるようにした。
【0105】
1-7.鉛筆硬度
実施例及び比較例の防眩性積層体を50mm×100mmの大きさにカットしたサンプルを作製した。JIS K5600-5-4:1999に準拠して、荷重500g、速度1.4mm/秒の条件で、前記サンプルの樹脂層上面の鉛筆硬度を測定した。
測定には、東洋精機製作所の鉛筆硬度試験機(品番:NP型鉛筆引掻塗膜硬度試験機)を用いた。メンディングテープ(スリーエム社、品番「810-3-18」)を用いて、カットしたサンプルの両端部を鉛筆硬度試験機の土台に貼り合わせた。5回の鉛筆硬度試験を行い、3回以上の傷等の外観異常が認められなかった際の硬度を、各サンプルの鉛筆硬度の値とした。例えば、2Hの鉛筆を用いて、5回の試験を行い、3回外観異常が生じなければ、その防眩性積層体の鉛筆硬度は2Hである。外観異常については、変色は含まず、傷及び凹みについて確認を行った。鉛筆硬度2H以上が合格レベルである。
【0106】
1-8.防眩性
実施例及び比較例の防眩性積層体の基材側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社)、商品名「パナクリーンPD-S1」、屈折率1.49)を介して、黒色板(クラレ社、商品名「コモグラス DFA2CG 502K(黒)系」、全光線透過率0%、厚み2mm、屈折率1.49)を貼り合わせたサンプルを作製した(サンプルの大きさ:縦10cm×横10cm)。前記サンプルを明室環境下(該サンプルの第一主面上の照度が500lux以上1000lux以下。照明:Hf32形の直管三波長形昼白色蛍光灯)で該サンプルの第1主面の中心より直線距離50cm上方から目視にて、被験者20人により、観測者自身の映り込みが気にならない程度の防眩性が得られているか否かを下記の基準により評価した。評価時の照明の位置は水平台から鉛直方向2m上方の高さである。被験者は30歳代の視力0.7以上の健康なものとした。
A:良好と答えた人が14人以上
B:良好と答えた人が7人以上13人以下
C:良好と答えた人が6人以下
【0107】
2.防眩性積層体の作製
[実施例1]
(基材の製造)
メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルの共重合体を2軸押出機を用いて260℃で混錬してペレット状組成物(ガラス転移点:134℃)を得た。得られたペレット状組成物を、Tダイ(Tダイ温度:260℃)にて溶融押し出し成型し、130℃の冷却ロール上に吐出した。次に、延伸温度145℃にて、縦方向および横方向に延伸倍率1.5倍で逐次二軸延伸を行った。その後冷却して、厚み40μmのアクリル樹脂基材を得た。
(樹脂層の形成)
前記のアクリル樹脂基材上に、表1の実施例1の樹脂層用塗布液をマイヤーバーコーティング法により、6.0g/m2の塗布量で塗布した後、風速15m/s、温度100℃の温風で60秒乾燥した。次いで、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気下にて、積算光量が100mJ/cm2になるように紫外線を照射することにより、樹脂層塗布液の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化し、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成し、実施例1の防眩性積層体を得た。本明細書において、塗布量は、乾燥後の塗布量を意味する。
【0108】
[実施例2~4]、[比較例1~2、5~7]
樹脂層用塗布液の組成、樹脂層用塗布液の塗布量、樹脂層用塗布液の乾燥条件を、表1に記載の組成等に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4、及び、比較例1~2、5~7の防眩性積層体を得た。なお、比較例7の防眩性積層体は、樹脂層は第1の樹脂層の単層構造であった。
【0109】
[比較例3]
前記のアクリル樹脂基材上に、表1の比較例3の1層目の樹脂層用塗布液をマイヤーバーコーティング法により、6.0g/m2の塗布量で塗布した後、風速15m/s、温度100℃の温風で60秒乾燥した。次いで、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気下にて、積算光量が50mJ/cm2になるように紫外線を照射することにより、1層目の樹脂層塗布液の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化し、第1の樹脂層を形成した。
次いで、第1の樹脂層上に、表1の比較例3の2層目の樹脂層用塗布液をマイヤーバーコーティング法により、2.0g/m2の塗布量で塗布した後、風速15m/s、温度70℃の温風で60秒乾燥した。次いで、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気下にて、積算光量が100mJ/cm2になるように紫外線を照射することにより、2層目の樹脂層塗布液の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化し、第2の樹脂層を形成し、比較例3の防眩性積層体を得た。
【0110】
[比較例4]
1層目及び2層目の樹脂層用塗布液の組成、1層目及び2層目の樹脂層用塗布液の塗布量、1層目及び2層目の樹脂層用塗布液の乾燥条件を、表1に記載の組成等に変更した以外は、比較例3と同様にして、比較例4の防眩性積層体を得た。
【0111】
【0112】
表1中、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、三菱ケミカル社のウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:紫光 UV-7600B、重量平均分子量:1400)を示し、2官能アクリレートモノマーは、テトラエチレングリコールジアクリレートを示し、3官能アクリレートモノマーは、ペンタエリスリトールトリアクリレートを示し、単官能アクリレートモノマーは、4-ヒドロキシブチルアクリレートを示し、光重合開始剤は、IGM Resins B.V.社の商品名“Omnirad 184”を示す。
【0113】
【0114】
表2の結果から、実施例の防眩性積層体は、鉛筆硬度、耐屈曲性及び防眩性が良好であることが確認できる。