(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190397
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221219BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221219BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 B
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098701
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】藤生 和宏
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AC06
2D003BA07
2D003BB09
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB03
2D015HA03
2D015HB04
(57)【要約】
【課題】作業機械の動作に起因して、傾斜面に位置する作業機械が転倒することを抑制できる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械1は、作業部3と、本体部2と、検知部12と、制御部11とを備える。作業部3は、作業を実行する。本体部2は、作業部3を支持する。検知部12は、本体部2の姿勢を検知する。制御部11は、検知部12の検知結果に基づいて、作業部3の動作と本体部2の動作とのうちの少なくとも1つを制限する制限処理を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を実行する作業部と、
前記作業部を支持する本体部と、
前記本体部の姿勢を検知する検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて、前記作業部の動作と前記本体部の動作とのうちの少なくとも1つを制限する制限処理を実行する制御部と
を備える作業機械。
【請求項2】
前記制御部は、基準姿勢からの前記本体部の姿勢の変化に基づいて、前記制限処理を実行する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記基準姿勢は、水平面に前記本体部が配置されたときの前記本体部の姿勢を含む、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記本体部は、走行する走行体を含み、
前記制御部は、前記走行体が走行する時の、前記本体部の姿勢の変化に基づいて、前記制限処理を実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記制御部は、
前記作業部の姿勢を特定し、
前記作業部の姿勢と前記本体部の姿勢とに基づいて、前記制限処理を実行する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記制限処理は、動作速度を制限する第1制限処理と、動作を禁止する第2制限処理とを含む、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制御部は、前記本体部の傾斜角を示す判定条件に基づいて前記制限処理を実行する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項8】
前記判定条件は、第1判定条件と、前記第1判定条件と異なる第2判定条件とを含み、
前記制御部は、前記第1判定条件に基づいて前記第1制限処理を実行し、前記第2判定条件に基づいて前記第2制限処理を実行する、請求項7に記載の作業機械。
【請求項9】
前記制御部は、前記制限処理において、前記作業部の第1所定方向への動作を制限し、
前記第1所定方向は、前記本体部の位置する傾斜面を下る方向を示す、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項10】
前記本体部は、前記作業部を支持し、前記走行体に旋回可能に支持される旋回体を含み、
前記制御部は、前記制限処理において、前記旋回体の第1所定方向への旋回動作を制限する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項11】
前記制御部は、前記制限処理において、前記走行体の第2所定方向への走行動作を制限し、
前記第2所定方向は、前記本体部の姿勢の変化が大きくなる方向を示す、請求項4から請求項10のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項12】
前記検知部の検知結果を報知する報知部をさらに備える、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項13】
前記報知部は、前記制限処理の内容を報知する、請求項12に記載の作業機械。
【請求項14】
前記検知部の前記検知結果を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記憶部に記憶された前記検知結果に基づいて、前記制限処理を実行する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項15】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された検知結果に基づいて、前記走行動作による前記本体部の姿勢の変化を予測し、前記予測に基づいて前記制限処理を実行する、請求項14に記載の作業機械。
【請求項16】
前記作業機械は複数の作業モードを切替可能に構成され、
前記制御部は、所定の作業モードの場合、前記検知部の前記検知結果に基づいて、前記制限処理を実行する、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項17】
前記制御部は、前記検知部の前記検知結果に基づいて、所定の作業モードへの作業モードの切替を許可する、請求項15に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の油圧ショベルは、転倒防止装置を備える。転倒防止装置は、油圧ショベルの重心位置を算出する。転倒防止装置は、重心安全域を算出する。転倒防止装置は、重心安全域の境界に重心位置が近づいたときに警告を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧ショベルのような作業機械では、傾斜面に位置する作業機械の動作を制限しないため、作業機械の動作に起因する作業機械の転倒を抑制できない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、作業機械が傾斜状態で動作したことに起因して、転倒することを抑制できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、作業機械は、作業部と、本体部と、検知部と、制御部とを備える。前記作業部は、作業を実行する。前記本体部は、前記作業部を支持する。前記検知部は、前記本体部の姿勢を検知する。前記制御部は、前記検知部の検知結果に基づいて、前記作業部の動作と前記本体部の動作とのうちの少なくとも1つを制限する制限処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業機械によれば、作業機械が傾斜状態で動作したことに起因して、転倒することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る作業機械の油圧構成及び電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る作業機械の制御部が実行する処理の一例を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、傾斜面に位置する作業機械を示す。
図5(b)は、
図5(a)の作業機械を平面視した図である。
【
図6】
図6(a)は、傾斜面に位置する作業機械の別の図を示す。
図6(b)は、
図6(a)の作業機械を平面視した図である。
【
図7】
図7(a)は、傾斜面に位置する作業機械の別の図を示す。
図7(b)は、
図7(a)の作業機械を平面視した図である。
【
図8】本実施形態に係る作業機械の旋回体のパターンテーブルを示す図である。
【
図9】
図9(a)は、傾斜面に位置する作業機械を示す。
図9(b)は、第1姿勢になった
図9(a)の作業機械を平面視した図である。
図9(c)は、第2姿勢になった
図9(a)の作業機械を平面視した図である。
【
図10】
図10(a)は、傾斜面に位置する作業機械を示す。
図10(b)は、第3姿勢になった
図10(a)の作業機械を平面視した図である。
図10(c)は、第4姿勢になった
図10(a)の作業機械を平面視した図である。
【
図11】本実施形態に係る作業機械の作業部のパターンテーブルを示す図である。
【
図12】本実施形態に係る作業機械の報知部の表示部に表示される画像を示す。
【
図13】本実施形態に係る作業機械の制御部が実行する処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
[実施形態1]
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械1を説明する。作業機械1は、例えば、建設機械もしくは農業機械を含むものであり、自走式であるか固定式であるかを問わない。以下、作業機械1が油圧ショベルである場合を例に挙げて本実施形態を説明する。油圧ショベルは建設機械の一例である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る作業機械1を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の作業機械1は、本体部2と、作業部3と、エンジン部6とを備える。本体部2は、作業部3を支持する。本体部2は、旋回体4と、走行体5とを含む。
【0012】
旋回体4は、走行体5に支持される。具体的には、旋回体4は、例えば、旋回ベアリングを介して、走行体5の上部に配置される。旋回体4は、走行体5により、旋回可能に支持される。
【0013】
旋回体4は、キャビン43、旋回モータ40を含む。旋回体4には、エンジン部6が配置される。
【0014】
キャビン43は、運転席401と、操作部20とを収容する。運転席401は、オペレータが着座する。本明細書では、運転席401に着座したオペレータから見て、左側を左方向と記載する場合がある。また、運転席401に着座したオペレータから見て、右側を右方向と記載する場合がある。また、運転席401に着座したオペレータから見て、前側を前方向と記載する場合がある。また、運転席401に着座したオペレータから見て、後側を後方向と記載する場合がある。
【0015】
操作部20は、作業部3と、旋回体4と、走行体5とをそれぞれ操作可能である。オペレータは、運転席401に着座して操作部20を操作することによって、作業部3と、旋回体4と、走行体5とをそれぞれ操作できる。操作部20は、走行体5を動作させる走行レバー(不図示)を含む。走行レバーは、旋回体4の旋回角度に関わらず、走行体5を走行動作させることができ、
図1において、走行レバーを機体前方(図中左方向)に傾倒すると、作業機械1は図中左方向に走行する。また、旋回体4が180°旋回し、図中右側を向いた場合は、走行レバーを機体前方(図中右方向)に傾倒すると、図中左方向に走行する。
【0016】
旋回モータ40は、キャビン43を旋回させる。具体的には、旋回モータ40は、旋回ベアリングを介してキャビン43を旋回させる。旋回モータ40は、例えば、油圧モータである。旋回モータ40は、例えば、操作部20の操作に応じて、走行体5に対して左方向もしくは右方向にキャビン43を旋回させる。
【0017】
走行体5は、作業機械1を走行させる。具体的には、例えば、走行体5は、エンジン部6からの動力を受けた油圧ポンプ7(メインポンプ71)により吐出された圧油により駆動し、操作部20の操作に応じて、作業機械1を走行させる。本実施形態において、走行体5は、クローラー式走行装置である。すなわち、走行体5は、走行モータ50と、クローラー501とを備える。なお、圧油とは、後述する油圧アクチュエータを動作させるために高い圧力が加えられた作動油である。
【0018】
クローラー501は、一対のクローラー501である。一対のクローラー501は、第1クローラー501Aと、第2クローラー501Bとを含む。第1クローラー501Aは、左方向に配置される。第2クローラー501Bは、右方向に配置される。
【0019】
走行モータ50は、クローラー501を回転駆動させる。走行モータ50は、例えば、油圧モータである。走行モータ50は、一対の走行モータ50である。一対の走行モータ50は、第1走行モータと、第2走行モータとを含む。第1走行モータは、第1クローラー501Aを回転駆動させる。第2走行モータは、第2クローラー501Bを回転駆動させる。
【0020】
走行体5は、ブレード511と、ブレードシリンダ512と、ブレードアーム513とをさらに備える。ブレード511は、排土機構をなし、整地作業等に用いられる。ブレード511は、板形状である。ブレードシリンダ512は、ブレード511を駆動する。ブレードアーム513は、ブレード511を支持する。
【0021】
作業部3は、作業を実行する。具体的には、例えば、作業部3は、エンジン部6からの動力を受けて駆動し、操作部20の操作に応じて、土砂の掘削作業を実行する。本実施形態において、作業部3は、ブーム301と、アーム302と、バケット303と、ブームシリンダ31と、アームシリンダ32と、バケットシリンダ33とを含む。
【0022】
ブーム301は、旋回体4により、第1回転支点R1を中心に揺動自在に支持されている。
【0023】
ブームシリンダ31は、ブーム301を作動させる。具体的には、ブームシリンダ31は、作動油によって駆動され、第1回転支点R1を中心にブーム301を揺動させる。ブームシリンダ31は、シリンダボディと、シリンダボディの内部空間を2つの油圧室に仕切るピストンと、一端がピストンに接続され油圧動力を出力するロッドとを含む。ピストンは、作動油によってシリンダボディの内部を進退し、ロッドがブーム301を作動させる。
【0024】
アーム302は、ブーム301により、第2回転支点R2を中心に揺動自在に支持されている。
【0025】
アームシリンダ32は、アーム302を作動させる。具体的には、アームシリンダ32は、作動油によって駆動され、第2回転支点R2を中心にアーム302を揺動させる。アームシリンダ32は、上述したブームシリンダ31と同様の構成を有する。
【0026】
バケット303は、アタッチメントの一種である。バケット303は、アームの先端にバケットリンク(不図示)を介して、アーム302により、第3回転支点R3を中心に揺動自在に支持されている。また、バケットリンクには、吊り作業用のクレーンフック(不図示)が取り付けられている。
【0027】
バケットシリンダ33は、バケット303を作動させる。具体的には、バケットシリンダ33は、作動油によって駆動され、第3回転支点R3を中心にバケット303を揺動させる。バケットシリンダ33は、上述したブームシリンダ31と同様の構成を有する。
【0028】
エンジン部6は、後述する油圧ポンプ7(メインポンプ71)を駆動して、圧油を吐出させることにより、ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33、旋回モータ40、第1走行モータ、及び、第2走行モータを駆動する。なお、以下、ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33、旋回モータ40、第1走行モータ、及び、第2走行モータを総称して油圧アクチュエータという場合がある。
【0029】
上述した構成を有する作業機械1では、走行モータ50の回転駆動により走行体5が走行動作し、旋回モータ40の旋回駆動により旋回体4が旋回動作する。また、ブームシリンダ31及びアームシリンダ32の伸縮動作により、バケット303が上下前後に動作し、バケットシリンダ33の伸縮動作によりバケット303がダンプ動作もしくはクラウド動作する。
【0030】
図1と
図2とを参照して、作業機械1の動作についてさらに詳しく説明する。
図2は、作業機械1の油圧及び電気的な概略構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、作業機械1は、上述したエンジン部6と、油圧ポンプ7(メインポンプ71、パイロットポンプ72)と、コントロールバルブ8と、電磁弁9と、作動油タンク10と、制御部11と、検知部12~18とを備える。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の作業機械1のエンジン部6は、エンジン61と、エンジン制御部62とを含む。エンジン制御部62は、例えば、ECU(Engine Control Unit)である。エンジン61には、燃料タンク(不図示)から燃料が供給される。
【0033】
エンジン61は、油圧ポンプ7(メインポンプ71及びパイロットポンプ72)を駆動する。その結果、油圧ポンプ7(メインポンプ71)は、作動油タンク10から圧油を吐出し、圧油をコントロールバルブ8に送り出す。コントロールバルブ8は、各油圧アクチュエータ31、32、33、40、50に対して圧油を供給する。その結果、ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33、旋回モータ40、走行モータ50(第1走行モータ、及び、第2走行モータ)が駆動する。
【0034】
油圧ポンプ7(パイロットポンプ72)は、作動油タンク10からパイロット油を吐出し、電磁弁9に送り出す。電磁弁9は、制御部11を介して接続された操作部20の操作に応じたパイロット油をコントロールバルブ8の制御ポートに出力する。その結果、コントロールバルブ8はパイロット油に応じて方向と流量を制御した圧油を各油圧アクチュエータ31、32、33、40、50に供給する。
【0035】
また、作業機械1は、第1検知部12と、第2検知部13と、第3検知部14と、第4検知部15と、第5検知部16と、第6検知部17と、第7検知部18とをさらに備える。各検知部12~18は制御部11に接続されている。
【0036】
第1検知部12は、本体部2の姿勢を検知する。第1検知部12は、本発明の「検知部」の一例に相当する。本体部2の姿勢は、本体部2の傾斜と、傾斜面に対する本体部2の向きを示す。また、本体部2の傾斜とは、例えば、本体部2が位置する面の角度と、本体部2が位置する面の角度に応じた本体部2の傾きを示す。つまり、本体部2が傾斜面に位置する場合、本体部2の姿勢は傾斜面の角度に応じた姿勢となる。第1検知部12は、旋回体4に取り付けられる。第1検知部12は、例えば、傾斜センサ、回転角センサ、または、静電容量センサでありえる。なお、第1検知部12は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)であってもよい。慣性計測装置は、本体部2のロール角、及び、本体部2のピッチ角を計測する。第1検知部12は、検知結果を制御部11に出力する。
【0037】
第2検知部13は、例えば、角度センサにより構成され、ブーム301の角度を検知する。第2検知部13は、ブーム301の回転角を検出する。第2検知部13は、例えばポテンショメータ、または、ロータリエンコーダである。第2検知部13は、検知結果を制御部11に出力する。
【0038】
第3検知部14は、例えば、角度センサにより構成され、アーム302の角度を検知する。第3検知部14は、アーム302の回転角を検出する。第3検知部14は、例えばポテンショメータ、または、ロータリエンコーダである。第3検知部14は、検知結果を制御部11に出力する。
【0039】
第4検知部15は、例えば、角度センサにより構成され、バケット303の角度を検知する。第4検知部15は、バケット303の回転角を検出する。第4検知部15は、例えばポテンショメータ、または、ロータリエンコーダである。第4検知部15は、検知結果を制御部11に出力する。
【0040】
第5検知部16は、旋回体4の旋回角度情報を取得する。第5検知部16は、走行体5に対する旋回体4の旋回角度を検出することができる。第5検知部16は、例えばポテンショメータ、ロータリエンコーダ等により構成される。第5検知部16は、例えば、不図示の旋回ベアリングに取り付けられる。第5検知部16は、検知結果を制御部11に出力する。
【0041】
第6検知部17は、ブームシリンダ31に取り付けられ、ブームシリンダ31に供給される作動油の圧力を検出する。第6検知部17は、検知結果を制御部11に出力する。
【0042】
第6検知部17が検知した作動油の圧力に基づいて、制御部11は、バケット303に収容された掘削物の荷重を算出できる。また、制御部11は、第6検知部17が検知した作動油の圧力に基づいて、クレーンフックに吊り下げた物体の荷重を算出できる。なお、以下の説明では、バケット303の収容物の荷重と、クレーンフックに吊り下げた物体の荷重を総称して「吊り荷重」という場合がある。
【0043】
第7検知部18は、作業機械1の周囲環境の状態を検知する。第7検知部18は、例えば、TOF(Time Of Flight)カメラのような測域センサである。TOFカメラは、例えばライダである。具体的には、第7検知部18は、例えば、作業機械1の周囲に光を出射して、反射光を受光する。そして、第7検知部18は、検知結果として、受光した反射光に対応する信号を、制御部11に出力する。つまり、第7検知部18は、作業機械1の周囲環境の状態を示す信号を制御部11に出力する。なお、第7検知部18は、例えば、ミリ波レーダ、カメラ、またはステレオカメラであってもよい。
【0044】
また、
図2に示すように、作業機械1は、報知部19と、制御部11と、記憶部21とをさらに備える。
【0045】
報知部19は、オペレータに作業機械1の状態を示す情報(以下、「状態情報」という場合がある)を報知する。報知部19が報知する情報は、例えば、本体部2の姿勢(傾斜角度)、吊り荷重、作業部3の姿勢、作業機械1の走行速度、作業機械1の転倒リスクの度合い、警告(転倒防止のための制御内容を含む)である。警告は、作業機械1の動作を制限すること、または、作業機械1の動作を禁止することを含む。報知部19は、少なくとも1つの視覚報知部と、聴覚報知部とを含む。視覚報知部は、例えば、発光部、表示部により構成される。発光部は、例えば、LED(Light Emitting Diode)で構成され、発光することで状態情報を報知し、例えば、発光色や発光方法で、作業機械1の状態を示す。具体的には、作業機械1の状態(転倒リスク)を発光色で示す場合には、転倒リスクがないとき(安全状態)を緑色、転倒リスクが低いとき(注意状態)を黄色、転倒リスクが高いとき(警告状態)を赤色で示す。他方、作業機械1の状態(転倒リスク)を発光方法で示す場合には、転倒リスクがないとき(安全状態)を消灯、転倒リスクが低いとき(注意状態)を点灯、転倒リスクが高いとき(警告状態)を点滅で示す。また、表示部は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイのようなディスプレイによって構成され、作業機械1の状態を示すメッセージやアイコンを表示することで、状態情報を報知する。聴覚報知部は、例えば、スピーカーである。スピーカーは、音声メッセージまたは音(警報を含む)を出力することで作業機械1の状態を報知する。
【0046】
記憶部21は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。具体的には、記憶部21は、半導体メモリーのような主記憶装置と、半導体メモリー、ソリッドステートドライブ、及び/または、ハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。記憶部21は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0047】
制御部11は、作業機械1を制御する。制御部11は、統合ECU(Electronic Control Unit)のようなプロセッサーを含む。制御部11のプロセッサーは、記憶部21の記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行して、作業機械1を制御する。
【0048】
(判定処理)
ここで、
図1~
図3を参照して、制御部11が、第1検知部12の検知結果に基づいて、作業機械1の姿勢を判定する判定処理について説明する。
図3は、本実施形態に係る作業機械1の制御部11が実行する処理の一例を示す図である。制御部11は、第1検知部12から検知結果を取得すると、記憶部21に記憶された判定条件を参照して、作業機械1の姿勢(本体部2の姿勢:傾斜状態)を判定する。例えば、判定条件が傾斜10°以上で転倒リスクを示すものであれば、第1検知部12の検知結果が12°であった場合には、制御部11は、作業機械1の姿勢に転倒リスクがあると判定する。
【0049】
判定処理では、ある一時点の作業機械1の姿勢を検知、もしくは、作業機械1の姿勢の時間的変化を検知することができる。例えば、作業機械1の走行中の姿勢変化を検知することができ、もしくは、作業機械1が位置する環境の変化に伴う姿勢変化を検知することもできる。作業機械1が位置する環境の変化とは、例えば、作業機械1を支持する台座の傾斜が機械的に変化すること等をいう。
【0050】
また、作業機械1の走行中の姿勢変化を検知する場合、検知された本体部2の姿勢が所定期間維持されたことを判定条件として加えてもよい。具体的には、例えば、作業機械1が走行動作により平面から傾斜面に進入する場合には、傾斜面を走行する期間、傾斜面の角度を本体部2の姿勢として検知するため、作業機械1の平面における姿勢と傾斜面における姿勢とにより姿勢変化を検知する。他方、作業機械1が表面に凹凸形状を有する路面を走行する場合には、凹凸形状に合わせて、作業機械1の姿勢が頻繁に変化するため、制御部11はかかる場合には作業機械1の姿勢の変化を検知しない。この結果、誤検知による制限処理の発生を抑制できる。
【0051】
なお、この判定処理は、程度の異なる判定条件を複数設けることで、段階的な判定が可能となる。例えば、転倒リスクが比較的低い第1判定条件と、転倒リスクが比較的高い第2判定条件を設けることもできる。すなわち、第1判定条件は、本体部2の姿勢が示す本体部2の角度が第1閾値以上であることを含む。この場合、例えば、第1判定条件となる傾斜角度を10°(第1閾値)以上30°未満とし、第2判定条件となる傾斜角度を30°(第2閾値)以上とする。
【0052】
判定処理において、作業機械1の姿勢(傾斜状態)は基準姿勢に基づき算出される。基準姿勢とは、作業機械1の姿勢検知をするときの基準となる本体部2の姿勢(傾斜角度)を示し、本体部2が平面に配置されたときの姿勢(傾斜角度)、もしくは、姿勢検知を開始したときの本体部の姿勢(傾斜角度)を含む。この基準姿勢は、水平面に本体部2が配置されたときの本体部2の姿勢を含む。したがって、本体部2が平面に配置されたときの本体部2の姿勢の変化に基づいて、制御部11は、制限処理を実行できる。この結果、基準の姿勢から変化があった場合に、制限処理を実行できる。また、基準姿勢は、本体部2の姿勢が変化する前に第1検知部12が検知した本体部2の姿勢(検知処理開始時の本体部2の姿勢)を含んでもよい。これにより、制御部11は、走行中の姿勢の変化を検知することができ、走行開始時に安定状態であっても、走行動作により不安定状態と移行したと判定できる。
【0053】
(他の判定例)
(作業部3の姿勢検知結果を用いた判定例)
上記の例では、本体部2の姿勢を検知して、作業機械1の状態判定を行ったが、これには限定されない。例えば、作業部3の姿勢を検知して、制御部11は、作業部3の姿勢検知結果に基づいて、判定処理を実行してもよい。この判定例では、制御部11は、作業部3の姿勢を特定する。具体的には、制御部11は、第2検知部13の検知結果と、第3検知部14の検知結果と、第4検知部15の検知結果とに基づいて、作業部3の姿勢を特定する。さらに具体的には、制御部11は、ブーム301の回転角と、アーム302の回転角と、バケット303の回転角と、ブーム301の長さ、アーム302の長さ、バケット303の長さとに基づいて、ブーム301、アーム302、及びバケット303の位置を特定する。そして、バケット303の位置情報に基づいて、制御部11は作業部3の姿勢を特定する。例えば、制御部11は、ブーム301及びアーム302が、本体部2から遠い位置に伸ばした状態であるときは、作業機械1は転倒リスクが高い状態にあると判定する。また、制御部11は、ブーム301及びアーム302が本体部2の近い位置に引き込まれた状態であるときは、作業機械1は転倒リスクが低い状態にあると判定する。
【0054】
(吊り荷重の検知結果を用いた判定例)
また、他の判定方法として、吊り荷重に基づく判定が可能である。この判定例では、制御部11は、第6検知部(荷重センサ)17の検知結果に基づいて、作業機械1の状態を判定する。例えば、制御部11は、吊り荷重が所定の閾値よりも大きい場合には、作業機械1は転倒リスクが高い状態であると判定する。また、制御部11は、吊り荷重が上記閾値以下である場合には、作業機械1は転倒リスクが低い状態であると判定する。
【0055】
以上、本発明における判定処理の方法について、いくつか例を挙げて説明したが、これには限定されず、種々の改変が可能である。例えば、複数の判定方法を組み合わせて、判定処理を行ってもよい。具体的には、本体部2の姿勢検知結果と、作業部3の姿勢検知結果とを組み合わせた判定処理、本体部2の姿勢検知結果と吊り荷重の検知結果とを組み合わせた判定処理、さらには、本体部2の姿勢検知結果、作業部3の姿勢検知結果及び吊り荷重の検知結果を組み合わせた判定処理が可能である。
【0056】
(制限処理)
次に、制御部11が、作業機械1の動作を制限する制限処理について説明する。具体的には、制御部11は、制限処理において、本体部2及び/または作業部3の動作を制限する。本体部2の動作制限とは、例えば、走行体5の走行動作の制限と、旋回体4の旋回動作の制限を含む。また、作業部3の動作制限とは、ブーム301、アーム302及びバケット303の回動動作の制限を含む。
【0057】
動作の制限とは、例えば、動作速度の制限、動作の禁止である。動作の禁止とは、所定範囲外への動作の禁止、所定方向への動作の禁止を含む。制御部11は、制限処理において、例えば、エンジン部6のエンジン制御部62に制御信号を送信してエンジン回転数を制御し、もしくは、電磁弁9に制御信号を送信してパイロット油の連通状態を制御する。具体的には、制御部11がエンジン制御部62に制御信号を送信すると、エンジン回転数が低下して、メインポンプ71の吐出量が減少し、油圧アクチュエータに供給される圧油の流量が減少するため、油圧アクチュエータの動作速度が低下する。また、制御部11が電磁弁9に制御信号を送信すると、電磁弁9を通過するパイロット油の流量が変化し、電磁弁9を通過するパイロット油の流量が減少すれば油圧アクチュエータの動作速度が低下し、パイロット油が電磁弁9を通過できなくなれば、油圧アクチュエータの動作が停止する。なお、制御部11はエンジン61の回転数を段階的に制限してもよい。
【0058】
また、制御部11は、制限処理において、段階的に作業機械1の動作を制限することもできる。例えば、比較的軽い制限を課す第1制限処理と、比較的重い制限を課す第2制限処理を設けることができる。例えば、第1制限処理では動作速度が制限され、第2制限処理では動作が禁止される。さらに、制御部11は、判定条件に基づいて制限処理を実行することができ、例えば、第1判定条件に基づいて第1制限処理を実行し、第2判定条件に基づいて第2制限処理を実行することができる。以下、具体例を示して制限処理を詳説する。
【0059】
(走行動作の制限:走行体5の走行動作に対する制限処理)
まず、
図4を参照して、制御部11が走行体5の動作を制限する処理を詳しく説明する。
図4は、作業機械1の走行状態を示し、図面中央には平面PLを走行する状態(第5姿勢ST5)、図中左側には平面から上り斜面(第1傾斜面SL1)に進入する状態(第6姿勢ST6)、図中右側には平面から下り斜面(第2傾斜面SL2)に進入する状態(第7姿勢ST7)をそれぞれ示す。なお、同図において、作業機械1の作業部3は、斜面を上る方向(第1傾斜方向D1)の側に位置し、物体Wを吊り下げている。なお、第1傾斜方向D1は、傾斜面SLの基端から傾斜面SLの頂点の側に向かう方向を示す。つまり、第1傾斜方向D1は、本体部2の位置する傾斜面SLを上る方向を示す。第1傾斜方向D1は、いわゆる山側へ向かう方向を示す。また、
図4の例では、作業部3が斜面を上る方向(第1傾斜方向D1)の側に位置する例を説明するが、作業部3が斜面を下る方向(第2傾斜方向D2)の側に位置する場合も同様であるため説明を省略する。
【0060】
(斜面上向きの状態での走行動作)
まず、作業機械1が平面PLから上り斜面(第1傾斜面SL1)に進入する走行動作の制限制御について説明する。
【0061】
(走行速度の制限)
作業機械1の第6姿勢ST6が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、例えば、走行体5の動作を制限する。具体的には、制御部11は、
図3に示すように、走行速度を制限速度まで減速させる。制限速度とは、作業機械1の転倒の発生を回避できる程度の低速度であり、例えば、予め設定された速度(第1速度)、もしくは、作業機械1の姿勢検知時の走行速度に所定係数を乗じた速度(第2速度)であり、さらには、これらの速度のいずれか一方を選択してもよい。具体的には、予め設定された速度が3km/時であり、所定係数が0.7である場合、作業機械1の姿勢検知時の走行速度が5km/時であれば、第1速度は3km/時となり第2速度は3.5km/時となる。また、第1速度と第2速度のいずれか遅い方を選択する場合には、第1速度(3km/時)が制限速度となる。また、速度の低下は、所定の減速率をもって緩やかに行い、急な速度変化により転倒リスクが高まることを抑制している。つまり、オペレータが急な操作を行っても、作業部3の作業動作の速度、走行体5の走行動作の速度、及び、旋回体4の旋回動作の速度とのうちの少なくとも1つは制限される(緩やかに減速する)。
【0062】
(走行動作の禁止)
また、作業機械1の第6姿勢ST6が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、走行体5の動作制限として、走行動作を禁止することもできる。例えば、所定方向への走行動作を制限することができる。
図4の例では、平面PLから第1傾斜面SL1に進む第1傾斜方向D1(作業機械1の傾斜角度が大きくなる方向)への走行動作を禁止することができる。したがって、作業機械1の転倒リスクが高くなる(重心位置の変化が大きくなる)方向への走行体5の走行動作が制限される。この結果、走行体5の走行動作で第1傾斜面SL1に進入した作業機械1がさらに第1傾斜方向D1に走行することを抑制できる。換言すると、作業機械1の転倒リスクが低くなる方向(例えば、基準姿勢に戻る方向)への走行体5の動作が許可される。このように、転倒リスクが高い状態での作業機械1の動作を制限することで、転倒の発生が抑制される。なお、上り斜面での走行動作においては、
図4中の第1傾斜方向D1は、本発明の「第1所定方向」の一例に相当する。
【0063】
他方、制御部11は、走行動作を禁止する他の制限処理として、走行範囲を制限することもできる。制御部11は、走行範囲の制限処理において、例えば、第1傾斜方向D1もしくは第2傾斜方向D2への走行範囲を制限することもできる。
【0064】
このように、制御部11は作業機械1の姿勢を示す判定結果に基づいて、走行速度の制限、もしくは、走行動作の禁止等の制限処理を実行する。このとき、制御部11は段階的な制限処理を実行することができ、例えば、第1判定条件に基づく第1制限処理として走行速度を制限し、第2判定条件に基づく第2制限処理として走行方向を制限することができる。
【0065】
(斜面下向きの状態での走行動作)
次に、作業機械1が平面PLから下り斜面(第2傾斜面SL2)に進入する走行動作についても、上述した上り斜面での走行動作と同様に、制限処理の対象となるため以下説明する。
【0066】
(走行速度の制限)
作業機械1の第7姿勢ST7が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、例えば、走行体5の動作制限として、走行速度を制限速度まで減速させる。
【0067】
(走行動作の禁止)
また、作業機械1の第7姿勢ST7が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、走行動作の禁止として、転倒リスクが高くなる方向への走行動作を制限することができる。なお、下り斜面での走行動作においては、転倒リスクが高くなる方向(第2傾斜方向D2)は、本発明の「第2所定方向」の一例に相当する。
【0068】
(旋回動作の制限)
次に、
図5~
図8を参照して、制御部11が旋回体4の動作を制限する処理を説明する。
図5(a)は、傾斜面SLに位置する作業機械1を示す。
図5(a)に示すように、作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1の側に位置し、物体Wを吊り下げている。
【0069】
(斜面上向きの状態での旋回動作)
まず、作業機械1が傾斜面SLに上向きの状態で、旋回動作する制限制御について説明する。
【0070】
図5(b)において、第11姿勢ST11は、走行体5に対する旋回体4の角度が基準角度のときの作業機械1の姿勢を示す。基準角度は、例えば、走行体5に対する旋回体4の角度が「0°」である。
図5(b)において、第11姿勢ST11の作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1の側に位置する。
【0071】
第12姿勢ST12は、走行体5に対する旋回体4の角度が基準角度から左方向に所定角度だけ旋回したときの作業機械1の姿勢を示す。所定角度は、例えば、走行体5に対する旋回体4の角度が「90°」である。
図5(b)において、第12姿勢ST12の作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1に交差し、作業部3が第1クローラー501Aの側に位置する状態を示す。
【0072】
第13姿勢ST13は、走行体5に対する旋回体4の角度が基準角度から右方向に所定角度だけ旋回したときの作業機械1の姿勢を示す。所定角度は、例えば、走行体5に対する旋回体4の角度が「90°」である。
図5(b)において、第13姿勢ST13の作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1に交差し、作業部3が第2クローラー501Bの側に位置する状態を示す。
【0073】
作業機械1の旋回体4は第1旋回方向RD1に旋回する。第1旋回方向RD1は、第13姿勢ST13から第11姿勢ST11に向かう旋回方向を示す。
図5(b)において、第1旋回方向RD1は、作業部3が本体部2の位置する傾斜面SLを上る方向に向くように旋回体4が旋回する方向を示す。
【0074】
作業機械1の旋回体4は第2旋回方向RD2に旋回する。第2旋回方向RD2は、第11姿勢ST11から第13姿勢ST13に向かう旋回方向を示す。
図5(b)において、第2旋回方向RD2は、作業部3が本体部2の位置する傾斜面SLを下る方向に向くように旋回体4が旋回する方向を示す。
【0075】
作業機械1の旋回体4は第3旋回方向RD3に旋回する。第3旋回方向RD3は、第12姿勢ST12から第11姿勢ST11に向かう旋回方向を示す。
図5(b)において、第3旋回方向RD3は、作業部3が本体部2の位置する傾斜面SLを上る方向に向くように旋回体4が旋回する方向を示す。
【0076】
作業機械1の旋回体4は第4旋回方向RD4に旋回する。第4旋回方向RD4は、第11姿勢ST11から第12姿勢ST12に向かう旋回方向を示す。
図5(b)において、第4旋回方向RD4は、作業部3が本体部2の位置する傾斜面SLを下る方向に向くように旋回体4が旋回する方向を示す。
【0077】
(旋回速度の制限)
図5(a)と
図5(b)とに示すように、傾斜面SLに位置する作業機械1の姿勢が第1判定条件を満たす場合、制御部11は、旋回体4の旋回動作を制限する。具体的には、制御部11は、上述した速度制限処理と同様の手法を用いて、旋回方向RD1、RD2、RD3、RD4を問わず旋回速度を制限速度まで減速させる。
【0078】
(旋回動作の禁止)
また、作業機械1の第11姿勢ST11が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、旋回体4の動作制限として、所定方向への旋回動作を禁止することもできる。
図5の例では、作業機械1の転倒リスクが高くなる傾斜面SLの上方向から下方向(第2旋回方向RD2、第4旋回方向RD4)への旋回動作を禁止することができる。つまり、
図5(b)に示す第2旋回方向RD2と第4旋回方向RD4とのそれぞれは、本発明の「第1所定方向」の一例に相当する。
【0079】
他方、制御部11は、旋回動作を禁止する他の制限処理として、旋回範囲を制限することもできる。制御部11は、旋回範囲の制限処理において、例えば、旋回範囲を転倒リスクが高くならない範囲(重心位置の変化が大きくならない範囲)TRに制限することもできる。
このように、動作禁止の方法として、所定方向への動作の禁止、もしくは、所定範囲外への動作の禁止を選択可能とすることで、作業環境に応じた制限処理を実行できる。例えば、
図5の例では、所定方向への動作の禁止による制限処理では、旋回動作ができなくなり、実質的に危険回避が困難であるが、所定範囲外への動作の禁止による制限処理を実行することで、所定範囲での旋回動作が可能となり危険回避が可能となる。
【0080】
なお、
図6(a)、(b)示すように、作業機械1の作業部3が、第2傾斜方向D2の側に位置する場合(斜面下向きの状態)には、作業部3は転倒リスクが低くなる傾斜面SLの下方向から上方向(第3旋回方向RD3、第4旋回方向RD4)への旋回動作のみ可能であるため、上述した制限処理はされない。
【0081】
このように、制御部11は作業機械1の姿勢を示す判定結果に基づいて、旋回速度の制限、もしくは、旋回動作の禁止等の制限処理を実行する。このとき、制御部11は、上述した走行動作と同様に、段階的な制限処理を実行することができ、例えば、第1判定条件に基づく第1制限処理として旋回速度を制限し、第2判定条件に基づく第2制限処理として旋回方向を制限することができる。
【0082】
(斜面横向きの状態での旋回動作)
次に、作業機械1が傾斜面SLに横向きに位置する状態で、旋回動作する制限制御について説明する。
【0083】
図7(a)は、傾斜面SLに位置する作業機械1の別の図を示す。
図7(a)に示すように、作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1または第2傾斜方向D2に交差する方向に作業機械1の作業部3は位置し、物体Wを吊り下げている。
【0084】
図7(b)において、第11姿勢ST11の作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1または第2傾斜方向D2に交差する。
図6(b)において、第12姿勢ST12の作業機械1の作業部3は、第2傾斜方向D2の側に位置する。
図6(b)において、第13姿勢ST13の作業機械1の作業部3は、第1傾斜方向D1の側に位置する。
【0085】
作業機械1の旋回体4は第1旋回方向RD1、第2旋回方向RD2、第3旋回方向RD3、及び、第4旋回方向RD4に旋回する。
図7(b)において、第1旋回方向RD1と第4旋回方向RD4とは、作業部3が本体部2の位置する傾斜面SLを下る方向に向くように旋回体4が旋回する方向を示す。
図7(b)において、第2旋回方向RD2と第3旋回方向RD3とは、作業部3が本体部2の位置する傾斜面SLを上る方向に向くように旋回体4が旋回する方向を示す。
【0086】
例えば、
図7(b)に示すように、第11姿勢ST11の作業機械1の旋回体4が第1旋回方向RD1または第4旋回方向RD4に旋回する場合、本体部2の位置する傾斜面SLを下る方向に旋回体4は旋回する。つまり、
図7(b)に示す第1旋回方向RD1と第4旋回方向RD4とのそれぞれは、本発明の「第1所定方向」の一例に相当する。
【0087】
(旋回速度の制限)
作業機械1の第11姿勢ST11が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、例えば、旋回体4の動作制限として、上述した速度制限処理と同様の手法を用いて、旋回速度を制限速度まで減速させる。
【0088】
(旋回動作の禁止)
また、作業機械1の第11姿勢ST11が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、旋回動作の禁止として、上述した禁止制限処理と同様の手法を用いて、転倒リスクが高くなる方向への旋回動作を制限することができる。なお、斜面横向きの状態での旋回動作においては、転倒リスクが高くなる方向(第4傾斜方向D4)は、本発明の「第1所定方向」の一例に相当する。
【0089】
他方、制御部11は、旋回動作を禁止する他の制限処理として、旋回範囲を制限することもできる。制御部11は、旋回範囲の制限処理において、例えば、旋回範囲を転倒リスクが高くならない範囲(重心位置の変化が大きくならない範囲)に制限することもできる。
【0090】
このように、制御部11は作業機械1の姿勢を示す判定結果に基づいて、旋回速度の制限、もしくは、旋回動作の禁止等の制限処理を実行する。このとき、制御部11は、上述した走行動作と同様に、段階的な制限処理を実行することができ、例えば、第1判定条件に基づく第1制限処理として旋回速度を制限し、第2判定条件に基づく第2制限処理として旋回方向を制限することができる。
【0091】
(旋回動作の制限方法を示すパターンテーブル)
以上、旋回動作の制限処理について具体例を示して説明したが、これらの制限処理を予め定められたパターンテーブルに基づいて実行することもできる。よって、次に、
図8を参照して、作業機械1の旋回体4のパターンテーブルを説明する。
図8は、本実施形態に係る作業機械1の旋回体4のパターンテーブルを示す図である。
図8に示す旋回体4のパターンテーブルTBは、記憶部21に記憶される。パターンテーブルTBは、作業機械1の状態と、作業機械1の状態に対応した旋回体4の動作の可否が示される。具体的には、パターンテーブルTBは、状態情報T11と、状態情報T12と、状態情報T13と、状態情報T14と、第1旋回情報T15と、第2旋回情報T16とを含む。
【0092】
状態情報T11は、走行体5の状態を示す。状態情報T12は、ブレード511の状態を示す。状態情報T13は、旋回体4の状態を示す。状態情報T14は、作業部3の状態を示す。
【0093】
第1旋回情報T15は、旋回体4の右方向への旋回の可否が示される。旋回体4の右方向への旋回の可否は、記号で示される。旋回体4の右方向への旋回作を許可する場合、「〇」が示される。旋回体4の右方向への旋回を許可しない場合、「×」が示される。
【0094】
第2旋回情報T16は、旋回体4の左方向への旋回の可否が示される。旋回体4の左方向への旋回の可否は、記号で示される。旋回体4の左方向への旋回を許可する場合、「〇」が示される。旋回体4の左方向への旋回を許可しない場合、「×」が示される。
【0095】
例えば、パターンテーブルTBの状態情報T11は、傾斜面SLと走行体5の前後方向とが平行であることを示す。パターンテーブルTBの状態情報T12は、第1傾斜方向D1の側にブレード511が位置することを示す。パターンテーブルTBの状態情報T13は、走行体5に対する旋回体4の角度が「0°」を示す。パターンテーブルTBの状態情報T14は、第1傾斜方向D1の側に作業部3が位置することを示す。この場合、第1旋回情報T15は、旋回体4の左方向への旋回を許可しない。つまり、第2旋回情報T16は、作業部3の短縮方向DBへの動作は制限される。また、第2旋回情報T16は、旋回体4の左方向への旋回を許可する。
【0096】
このように、制限処理の内容を、パターンテーブルを用いて予め定めることで、制限処理を実行するための、システム開発が容易になる。
【0097】
(作業部3の動作の制限:斜面上向きの状態での作業部3の動作)
まず、作業機械1が上り傾斜面SLに位置した状態で、作業部3の動作を制限する制限制御について説明する。
【0098】
図9~
図11を参照して、制御部11が作業部3の動作を制限する処理を説明する。
図9(a)に示すように、作業機械1の作業部3は、斜面を上る方向(第1傾斜方向D1)の側に位置し、物体Wを吊り下げている。
【0099】
また、
図9(a)には、第1姿勢ST1になった状態の作業機械1と、第2姿勢ST2になった状態の作業機械1とが示される。第1姿勢ST1は、第2姿勢ST2の作業部3の位置よりも作業部3の位置が第1傾斜方向D1にある状態を示す。第2姿勢ST2は、第1姿勢ST1の作業部3の位置よりも作業部3の位置が第2傾斜方向D2にある状態を示す。第2傾斜方向D2は、第1傾斜方向D1の逆方向を示す。具体的には、第2傾斜方向D2は、傾斜面SLの頂点の側から傾斜面SLの基端に向かう方向を示す。つまり、第2傾斜方向D2は、本体部2の位置する傾斜面SLを下る方向を示す。第2傾斜方向D2は、いわゆる谷側へ向かう方向を示す。第2傾斜方向D2は、「第1所定方向」の一例に相当する。
【0100】
図9(b)は、第1姿勢ST1になった
図9(a)の作業機械1を平面視した図である。
図9(c)は、第2姿勢ST2になった
図9(a)の作業機械1を平面視した図である。
【0101】
(作業部3の動作速度の制限)
図9(a)~
図9(c)に示すように、作業機械1の第1姿勢ST1が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、作業部3の動作速度を制限する。具体的には、制御部11は、制限処理において、作業部3の動作速度を減速させる。
【0102】
(作業部3の動作禁止)
また、作業機械1の第1姿勢ST1が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、作業部3の動作制限として、作業部3の動作を禁止することもできる。例えば、所定方向への作業部3の動作を制限することができる。
図9の例では、傾斜面SL平面の上側から下側への動作を禁止することができる。すなわち、作業部3が第2傾斜方向D2(短縮方向DB)に動作し、第1姿勢ST1から第2姿勢ST2に移行することが防止される。したがって、作業機械1の転倒リスクが高くなる(重心位置の変化が大きくなる)方向への作業部3の作業動作が制限される。この結果、作業部3の作業動作で傾斜面SLに位置する作業機械1が転倒することを抑制できる。
【0103】
他方、制御部11は、作業部3の動作を禁止する他の制限処理として、作業部3の動作範囲を制限することもできる。制御部11は、例えば、作業部3の動作範囲を転倒リスクが高くならない範囲(重心位置の変化が大きくならない範囲)に制限することもできる。
【0104】
(斜面下向きの状態での作業部3の動作)
次に、作業機械1が下り傾斜面SLに位置した状態で、作業部3の動作を制限する制限制御について説明する。
【0105】
図10(a)は、傾斜面SLに位置する作業機械1を示す。
図10(a)に示すように、作業機械1の作業部3は、斜面を下る方向(第2傾斜方向D2)の側に位置し、物体Wを吊り下げている。
【0106】
また、
図10(a)には、第3姿勢ST3になった状態の作業機械1と、第4姿勢ST4になった状態の作業機械1とが示される。第3姿勢ST3は、第4姿勢ST4の作業部3の位置よりも作業部3の位置が第2傾斜方向D2にある状態を示す。第4姿勢ST4は、第3姿勢ST3の作業部3の位置よりも作業部3の位置が第1傾斜方向D1にある状態を示す。
【0107】
(作業部3の動作速度の制限)
図10(b)に示すように、作業機械1の第3姿勢ST3が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、作業部3の動作を制限する。具体的には、制御部11は、制限処理において、作業部3の動作速度を減速させる。
図10(b)と
図10(c)とにおける伸長方向DAは、第2傾斜方向D2と同様の方向である。
図10(b)と
図10(c)とにおける第2傾斜方向D2は、「第1所定方向」の一例に相当する。
【0108】
(作業部3の動作禁止)
また、作業機械1の第3姿勢ST3が上記判定条件を満たす場合、制御部11は、作業部3の動作制限として、作業部3の動作を禁止することもできる。例えば、所定方向への作業部3の動作を制限することができる。
図10の例では、傾斜面SL平面の上側から下側への動作を禁止することができる。すなわち、作業部3が第2傾斜方向D2(伸長方向DA)に動作し、第4姿勢ST4から第3姿勢ST3に移行することが防止される。
【0109】
他方、制御部11は、作業部3の動作を禁止する他の制限処理として、作業部3の動作範囲を制限することもできる。制御部11は、例えば、作業部3の動作範囲を転倒リスクが高くならない範囲(重心位置の変化が大きくならない範囲)に制限することもできる。
【0110】
(作業部3の動作の制限方法を示すパターンテーブル)
以上、作業部3の動作の制限処理について具体例を示して説明したが、これらの制限処理を予め定められたパターンテーブルに基づいて実行することもできる。よって、次に、
図2~
図11を参照して、作業部3の動作を制限する際の制御部11の処理をさらに詳しく説明する。
図11は、作業部3のパターンテーブルTAを示す図である。
【0111】
図11に示す作業部3のパターンテーブルTAは、記憶部21に記憶される。パターンテーブルTAは、作業機械1の状態と、作業機械1の状態に対応した作業部3の作業の可否が示される。具体的には、パターンテーブルTAは、状態情報T1と、状態情報T2と、状態情報T3と、状態情報T4と、第1作業情報T5と、第2作業情報T6とを含む。
【0112】
状態情報T1は、走行体5の状態を示す。具体的には傾斜面SLに対する走行体5の位置が示される。走行体5の状態は、例えば、傾斜面SLと走行体5の前後方向とが平行な状態、及び、傾斜面SLと走行体5の前後方向とが交差する状態とを含む。
【0113】
状態情報T2は、ブレード511の状態を示す。具体的には傾斜面SLに対するブレード511の位置が示される。ブレード511の状態は、例えば、第1傾斜方向D1の側にブレード511が位置する状態、及び、第2傾斜方向D2の側にブレード511が位置する状態を含む。
【0114】
状態情報T3は、旋回体4の状態を示す。具体的には走行体5に対する旋回体4の角度を示す。旋回体4の状態は、例えば、走行体5に対する旋回体4の角度が「0°」の状態~「90°」の状態を含む。
【0115】
状態情報T4は、作業部3の状態を示す。具体的には傾斜面SLに対する作業部3の位置が示される。作業部3の状態は、例えば、例えば、第1傾斜方向D1の側に作業部3が位置する状態、及び、第2傾斜方向D2の側に作業部3が位置する状態を含む。
【0116】
第1作業情報T5は、作業部3の伸長方向DAへの動作の可否が示される。作業部3の伸長方向DAへの動作の可否は、記号で示される。作業部3の伸長方向DAへの動作を許可する場合、「〇」が示される。作業部3の伸長方向DAへの動作を許可しない場合、「×」が示される。
【0117】
第2作業情報T6は、作業部3の短縮方向DBへの動作の可否が示される。作業部3の短縮方向DBへの動作の可否は、記号で示される。作業部3の短縮方向DBへの動作を許可する場合、「〇」が示される。作業部3の短縮方向DBへの動作を許可しない場合、「×」が示される。
【0118】
例えば、パターンテーブルTAの状態情報T1は、傾斜面SLと走行体5の前後方向とが平行であることを示す。パターンテーブルTAの状態情報T2は、第1傾斜方向D1の側にブレード511が位置することを示す。パターンテーブルTAの状態情報T3は、走行体5に対する旋回体4の角度が「0°」を示す。パターンテーブルTAの状態情報T4は、第1傾斜方向D1の側に作業部3が位置することを示す。この場合、第1作業情報T5は、作業部3の伸長方向DAへの動作を許可する。また、第2作業情報T6は、作業部3の短縮方向DBへの動作を許可しない。つまり、第2作業情報T6は、作業部3の短縮方向DBへの動作は制限される。
【0119】
このように、制限処理の内容を、パターンテーブルを用いて予め定めることで、制限処理を実行するための、システム開発が容易になる。
【0120】
(作業モードの切替)
また、本実施形態の作業機械1においては、作業モードを複数設ける、その作業モードの中から選択された所定の作業モードのときに、制御部11が制限処理を実行するようにしてもよい。作業モードは、例えば、バケット303を用いて掘削作業する掘削モード、もしくは、バケット303のクレーンフックに荷物を吊るして作業するクレーンモードを含む。そして、制御部11は、例えば、クレーンモードに切り替えられた時に、上記判定条件に基づいて制限処理を実行するようにしてもよい。クレーンモードでは、相当の荷重を有する荷物をロープ等により吊るし、加えて、作業中に荷ぶれが生じ得るため、他の作業モードに比べて、作業機械1の転倒リスクが高くなる。他方、掘削モードでは、バケット303の内部に、一時的に掘削物を収容する場合もあるが、クレーンモードと比べて転倒リスクは低い。そのため、制御部11が、より転倒リスクが高い作業モード時に制限処理を実行することで、転倒リスクが低い作業モード時の作業性の低下が抑制される。クレーンモードは、「所定の作業モード」の一例に相当する。
【0121】
また、上記の例では、制御部11は、所定の作業モード時に判定条件を満たした場合に、制限処理を実行するようにしたが、これには限定されない。例えば、制御部11は、判定条件を満たした場合に作業モードの切り替えを許可するようにしてもよい。この場合には、本体部2の姿勢に応じて、クレーンモードへの移行が許可される。この結果、転倒リスクが高い姿勢でのクレーン作業を阻止し、作業機械1の転倒の発生を回避できる。
【0122】
(報知部19の報知処理)
次に
図12を参照して、報知部19を詳しく説明する。
図12は、報知部19の表示部190に表示される画像を示す。報知部19の表示部190に表示される画像は、第1画像191と第2画像192とを含む。第1画像191は、作業機械1の本体部2の姿勢に対応する角度を示す。第2画像192は、制御部11が実行している制限処理を示す。
【0123】
図12に示すように、報知部19は、第1検知部12の検知結果を報知する。したがって、作業機械1が傾斜面に位置することをオペレータに報知できる。この結果、傾斜面と異なる位置に作業機械1を移動させることをオペレータに促すことができる。
【0124】
また、
図12に示すように、報知部19は、制限処理の内容を報知する。したがって、制御部11が実行している制限処理の内容をオペレータに報知できる。この結果、オペレータが制限処理の内容を把握できる。
【0125】
本体部2の姿勢の変化が第1判定条件を満たす場合、報知部19は、第1制限処理の内容を報知できる。また、本体部2の姿勢の変化が第2判定条件を満たす場合、報知部19は第2制限処理の内容を報知できる。
【0126】
また、本体部2の姿勢の変化が第2条件を満たすと第2判定部の判定結果が示す場合、報知部19は、警告を報知する。したがって、作業機械1が転倒する可能性があることを認識できる。この結果、作業が可能な位置に作業機械1を移動させることをオペレータに促すことができる。
【0127】
(制御部11の制限処理の流れ)
次に
図13を参照して、作業機械1の制御部11が実行する処理を説明する。
図13は、作業機械1の制御部11が実行する処理のフローチャートを示す。作業機械1の制御部11が実行する処理は、ステップS101~ステップS112を含む。
【0128】
ステップS101において、操作部20は、操作者による作業機械1のクレーンモードへの切替操作を受け付ける。処理はステップS102に進む。
【0129】
ステップS102において、制御部11は、本体部2の姿勢が第1判定条件を満たすか否かを判定する。本体部2の姿勢が第1判定条件を満たさない場合(ステップS102でNo)、ステップS104に進む。本体部2の姿勢が第1判定条件を満たす場合(ステップS102でYes)、ステップS103に進む。
【0130】
ステップS102でYesの場合、ステップS103において、制御部11は、報知部19に本体部2の姿勢に関する情報等を報知させる。処理は、ステップS102に戻る。
【0131】
ステップS102でNoの場合、ステップS104において、制御部11は、クレーンモードへのモード切替を許可し、モードの切替処理を実行する。以降の処理では、作業機械1はクレーンモード下で動作する。処理は、ステップS105に進む。
【0132】
ステップS105において、制御部11は、本体部2の姿勢が第1判定条件を満たすか否かを判定する。本体部2の姿勢が第1判定条件を満たさない場合(ステップS105でNo)、ステップS109に進む。本体部2の姿勢が第1判定条件を満たす場合(ステップS105でYes)、ステップS107に進む。
【0133】
ステップS105でYesの場合、ステップS107において、制御部11は、第1制限処理を実行する。具体的には、制御部11は、本体部2及び/または作業部3の動作速度を減速させる。処理は、ステップS108に進む。
【0134】
ステップS108において、制御部11は、報知部19に第1制限処理の内容を報知させる。処理はステップS109に進む。
【0135】
ステップ105でNoの場合、または、ステップS108の後に、ステップS109において、制御部11は本体部2の姿勢が第2判定条件を満たすか否かを判定する。本体部2の姿勢が第2判定条件を満たさない場合(ステップS109でNo)、処理はステップS106に戻る。本体部2の姿勢が第2判定条件を満たす(ステップS109でYes)、処理はステップS110に進む。
【0136】
ステップS109でYesの場合、ステップS110において、制御部11は、第2制限処理を実行する。具体的には、制御部11は、本体部2及び/または作業部3の動作を禁止する。処理は、ステップS111に進む。
【0137】
ステップS111において、制御部11は、報知部19に第2制限処理の内容を報知させる。処理はステップS112に進む。
【0138】
ステップS112において、制御部11は、クレーンモードの終了条件を満たすか否かを判定する。終了条件を満たさない場合(ステップS112でNo)、処理はステップS104に戻る。終了条件を満たす場合(ステップS112でYes)、処理は終了する。
【0139】
ステップS109でNoの場合、ステップS106において、制御部11は、制限状態を解除する。処理は、ステップS104に戻る。
【0140】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の速度、材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0141】
(1)実施形態1の作業機械1の制御部11は、クレーンモードの場合に作業部3の動作と本体部2の動作とのうちの少なくとも1つを制限したが、これに限らない。例えば、作業部3が土砂の掘削作業を実行するモードの場合、制御部11は作業部3の動作と本体部2の動作とのうちの少なくとも1つを制限してもよい。具体的には、制御部11は、第1検知部12の検知結果と第6検知部17の検知結果とに基づいて、制御部11は作業部3の動作と本体部2の動作とのうちの少なくとも1つを制限する。制御部11は、第6検知部17の検知結果が示すブームシリンダ51aに供給される作業油の圧力に基づいて、バケット303に収容される土砂の重さを算出できる。したがって、本体部2の傾斜と土砂の重さとに基づいて、制御部11は、作業部3の動作と本体部2の動作とのうちの少なくとも1つを制限できる。
【0142】
(2)本実施形態の制御部11は、作業部3の動作を制限する場合、パターンテーブルTAに基づいて、作業部3の動作を制限したがこれに限らない。例えば、制御部11は、作業機械1の重心位置に基づいて、作業部3の動作を制限してもよい。
【0143】
例えば、制御部11は、作業機械1の寸法情報と、作業機械1の重量情報と、本体部2の姿勢と、作業部3の姿勢と、旋回体4の角度情報と、荷重の情報とに基づいて、作業機械1の重心位置を算出する。具体的には、制御部11は、作業機械1の寸法情報と、作業機械1の重量情報と、第1検知部12の検知結果~第6検知部17の検知結果とに基づいて、作業機械1の重心位置を算出する。そして、制御部11は、作業機械1の重心位置に基づいて、作業機械1が転倒する可能性を算出する。そして、制御部11は、制御部11の算出結果に基づいて、作業部3の動作を制限する。この結果、制御部11が作業部3の動作を精度よく制限できる。
【0144】
(3)本実施形態の制御部11は、旋回体4の動作を制限する場合、パターンテーブルTBに基づいて、旋回体4の動作を制限したがこれに限らない。例えば、制御部11は、作業機械1の重心位置に基づいて、旋回体4の動作を制限してもよい。
【0145】
例えば、制御部11は、作業機械1の寸法情報と、作業機械1の重量情報と、第1検知部12の検知結果~第6検知部17の検知結果とに基づいて、作業機械1の重心位置を算出する。そして、制御部11は、作業機械1の重心位置に基づいて、作業機械1が転倒する可能性を算出する。そして、制御部11は、制御部11の算出結果に基づいて、旋回体4の動作を制限する。この結果、制御部11は、旋回体4の動作を精度良く制限できる。
【0146】
また、本実施形態の作業機械1の記憶部21は、第1検知部12の検知結果を記憶する。制御部11は、記憶部21に記憶された検知結果に基づいて、制御処理を実行できる。例えば、傾斜面SLの傾斜が漸次的に大きくなる場合には、記憶部21に第1検知部12の検知結果を蓄積することで、傾斜面SLの傾斜が大きくなる方向(すなわち、本体部2の姿勢の変化が大きくなる方向)と、傾斜変化の大きさを特定することができる。これにより、制御部11は、記憶部21に記憶された第1検知部12の検知結果に基づいて、本体部2の姿勢の変化を予測できる。したがって、制御部11は、本体部2が予測した傾斜角度になる前に、予め制限処理を実行できる。この結果、作業機械1が傾斜面SLに位置する前に、制限処理を実行できる。なお、傾斜面SLの傾斜が大きくなる方向は、本発明における「第2所定方向」に相当する。
【0147】
制御部11は、記憶部21に記憶された検知結果に基づいて、走行体5の走行動作による本体部2の姿勢の変化を予測できる。そして、制御部11は、予測結果に基づいて制限処理を実行する。したがって、制御部11が予測した本体部2の姿勢の変化に基づいて、制御部11は作業機械1の動作を制限する制限処理を実行できる。この結果、傾斜面SLに位置する前に制限処理を実行でき、作業機械1が転倒することを抑制できる。
【0148】
(5)本実施形態の作業機械1の制御部11は、第7検知部18の検知結果を利用して、作業機械1の動作を制限してもよい。第7検知部18の検知結果は、記憶部21に記憶される。第7検知部18は、路面状況を検知できる。路面状況は、例えば、路面の傾斜角度を含む。制御部11は、記憶部21に記憶された第7検知部18の検知結果に基づいて、路面状況を特定する。したがって、制御部11が特定した路面状況に基づいて、制御部11は作業機械1の動作を制限できる。この結果、傾斜面SLに位置する作業機械1が転倒することを抑制できる。
【0149】
また、記憶部21に記憶された第7検知部18の検知結果を使用するため、作業機械1の進行方向の傾斜面SLの角度を制御部11が特定できる。したがって、作業機械1の進行方向の傾斜面SLに作業機械1が近づくことを抑制できる。この結果、作業機械1が転倒する可能性のある傾斜面SLに進入することを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、作業機械を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0151】
1 :作業機械
2 :本体部
3 :作業部
4 :旋回体
5 :走行体
12 :第1検知部
111 :制限部
112 :特定部
113 :第1判定部
114 :第2判定部