(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190399
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】光学積層体、偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221219BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20221219BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221219BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221219BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/08
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098704
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古井 玄
(72)【発明者】
【氏名】成川 隆史
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB14
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2H149BA02
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2H291HA09
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2H291PA44
4F100AA20B
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4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐光性試験後における、密着性の低下及び透過像鮮明度の変化を抑制し得る、光学積層体を提供する。
【解決手段】基材上に第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、前記第1の樹脂層は、互いに独立した領域α1と、α1を取り囲む領域α2とを有し、前記第2の樹脂層は、互いに独立した領域β1と、前記領域β1を取り囲む領域β2とを有し、下記条件1、2を満たす、光学積層体。
1.前記基材の前記樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa2とが、θa2<θa1の関係である。
2.前記基材の前記樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa2とが、Pa2<Pa1の関係である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に樹脂層を有する光学積層体であって、
前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、
前記第1の樹脂層は、互いに独立した領域α1と、前記領域α1を取り囲む領域α2とを有し、前記領域α1に含まれる樹脂と前記領域α2に含まれる樹脂とが異なり、
前記第2の樹脂層は、互いに独立した領域β1と、前記領域β1を取り囲む領域β2とを有し、前記領域β1に含まれる樹脂と前記領域β2に含まれる樹脂とが異なり、
下記条件1又は条件2を満たす、光学積層体。
<条件1>
前記基材の前記樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa2とが、θa2<θa1の関係である。
<条件2>
前記基材の前記樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa2とが、Pa2<Pa1の関係である。
【請求項2】
前記θa1が5.0度以上20.0度以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記θa2が10.0度以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記Pa1が0.05μm以上0.25μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記Pa2が0.15μm以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第1の樹脂層の厚み方向の中心より前記基材側を第1領域、前記第1の樹脂層の厚み方向の中心より前記第2の樹脂層側を第2領域と定義した際に、前記領域α1の70%以上が前記第2領域に存在する、請求項1~5の何れかに記載の光学積層体。
【請求項7】
前記領域α1に含まれる樹脂と前記領域β2に含まれる樹脂とが実質的に同一であり、前記領域α2に含まれる樹脂と前記領域β1に含まれる樹脂とが実質的に同一である、請求項1~6の何れかに記載の光学積層体。
【請求項8】
前記樹脂層が平均粒子径0.5μm以上の第1の粒子を含む、請求項1~7の何れかに記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第2の樹脂層が前記第1の粒子を含む、請求項8に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記第1の粒子が有機粒子である、請求項8又は9に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記基材がアクリル樹脂基材である、請求項1~10の何れかに記載の光学積層体。
【請求項12】
前記樹脂層が、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1~11の何れかに記載の光学積層体。
【請求項13】
偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が請求項1~12の何れかに記載の光学積層体である、偏光板。
【請求項14】
表示素子上に、請求項1~12の何れかに記載の光学積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、ノートPC、デスクトップPCのモニター等の画像表示装置の表面には、防汚性、反射防止性及び防眩性等を付与するために、光学積層体が設置される場合がある。
【0003】
光学積層体は、基材上に光学機能層を有する基本構成からなる。光学積層体は、画像表示装置等の表面部材として使用される場合が多いため、人の指及び物等が接触する機会が多い。このため、光学積層体は鉛筆硬度が良好であることが好ましい。
【0004】
光学積層体の鉛筆硬度を良好にするため、光学機能層のバインダー樹脂としては、硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましく用いられている。
硬化性樹脂組成物の硬化物は、光学積層体の鉛筆硬度を良好にしやすいが、基材との密着性に劣る傾向がある。特許文献1及び2には、光学機能層のバインダー樹脂として、硬化性樹脂組成物の硬化物を用い、かつ、密着性が良好な光学積層体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-234163号公報
【特許文献2】特開2015-188772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~2の光学積層体は、初期の密着性は良好である。しかし、特許文献1~2の光学積層体は、経時的に密着性が低下したり、光学特性が変化する場合があった。具体的には、特許文献1~2の光学積層体に対して、紫外線照射による耐光性試験を実施した場合、密着性が低下したり、透過像鮮明度が変化したりする場合があった。
【0007】
本開示は、耐光性試験後における、密着性の低下及び透過像鮮明度の変化を抑制し得る、光学積層体、並びに、それを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]~[3]の光学積層体、偏光板及び画像表示装置を提供する。
[1]基材上に樹脂層を有する光学積層体であって、
前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、
前記第1の樹脂層は、互いに独立した領域α1と、前記領域α1を取り囲む領域α2とを有し、前記領域α1に含まれる樹脂と前記領域α2に含まれる樹脂とが異なり、
前記第2の樹脂層は、互いに独立した領域β1と、前記領域β1を取り囲む領域β2とを有し、前記領域β1に含まれる樹脂と前記領域β2に含まれる樹脂とが異なり、
下記条件1又は条件2を満たす、光学積層体。
<条件1>
前記基材の前記樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa2とが、θa2<θa1の関係である。
<条件2>
前記基材の前記樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa2とが、Pa2<Pa1の関係である。
[2]偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が前記[1]に記載の光学積層体である、偏光板。
[3]表示素子上に、前記[1]に記載の光学積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示の光学積層体、偏光板及び画像表示装置は、耐光性試験後における、密着性の低下及び透過像鮮明度の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の光学積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】第1の樹脂層の厚み方向における領域α1の位置を算出する手法を説明する図である。
【
図3】本開示の画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を説明する。
[光学積層体]
本開示の光学積層体は、基材上に樹脂層を有し、
前記樹脂層は、前記基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有し、
前記第1の樹脂層は、互いに独立した領域α1と、前記領域α1を取り囲む領域α2とを有し、前記領域α1に含まれる樹脂と前記領域α2に含まれる樹脂とが異なり、
前記第2の樹脂層は、互いに独立した領域β1と、前記領域β1を取り囲む領域β2とを有し、前記領域β1に含まれる樹脂と前記領域β2に含まれる樹脂とが異なり、
下記条件1又は条件2を満たす、ものである。
<条件1>
前記基材の前記樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa2とが、θa2<θa1の関係である。
<条件2>
前記基材の前記樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa2とが、Pa2<Pa1の関係である。
【0012】
図1は、本開示の光学積層体100の一実施形態を示す断面図である。
図1の光学積層体100は、基材10上に樹脂層20を有している。また、
図1の樹脂層20は、基材10側から、第1の樹脂層21と、第2の樹脂層22とを有している。
また、
図1の第1の樹脂層21は、互いに独立した領域α1と、前記領域α1を取り囲む領域α2とを有している。また、
図1の第2の樹脂層22は、互いに独立した領域β1と、前記領域β1を取り囲む領域β2とを有している。本明細書において、
図1の第1の樹脂層及び第2の樹脂層のように、互いに独立した領域n1と、前記領域n1を取り囲む領域n2とを有する構造のことを、“海島構造”と称する場合がある。
なお、
図1は模式的な断面図である。すなわち、光学積層体100を構成する各層の縮尺、各材料の縮尺、及び表面凹凸の縮尺は、図示しやすくするために模式化したものであり、実際の縮尺とは相違している。
図1以外の図も同様に実際の縮尺とは相違している。
【0013】
<基材>
基材としては、光透過性、平滑性、耐熱性及び機械的強度が良好であることが好ましい。このような基材としては、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等の樹脂を含む樹脂基材が挙げられる。樹脂基材は、2以上の樹脂基材を貼り合わせたものであってもよい。
樹脂基材は、機械的強度及び寸法安定性を良好にするため、延伸処理されていることが好ましい。
【0014】
樹脂基材の中でも、吸湿性が低いため寸法安定性を良好にしやすく、かつ、光学的異方性が低いため視認性を良好にしやすい、アクリル樹脂基材が好ましい。また、アクリル樹脂基材は、樹脂層用塗布液を所定の組成として、かつ、所定の乾燥条件とすることにより、条件1及又は条件2を満たし、かつ、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を海島構造としやすくできる。
アクリル樹脂基材は、硬くて脆いため、アクリル樹脂基材上に他の層を形成した場合、密着性を良好にしにくい。特に、アクリル樹脂基材上に、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層のような硬い樹脂層を形成した場合には、基材と樹脂層との密着性が不十分になりやすい。本開示の光学積層体は、アクリル樹脂基材上に硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を形成しても、条件1又は条件2を満たし、かつ、樹脂層が海島構造を有することなどにより、密着性の低下を抑制し、かつ、像鮮明度の変化を抑制しやすくできる。
本明細書において、アクリル樹脂とは、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を意味する。
【0015】
アクリル樹脂基材が含有するアクリル樹脂としては特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1種又は2種以上組み合わせて重合してなるものが好ましく、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチルを用いて得られるものが好ましい。また、アクリル樹脂としては、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報等に記載のものも挙げられる。アクリル樹脂として、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂、イミド環構造を有するアクリル樹脂等の環構造を有するものを用いてもよい。
【0016】
アクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が、100℃以上150℃以下であることが好ましく、105℃以上135℃以下であることがより好ましく、110℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。
アクリル樹脂のガラス転移点が100℃以上であると、樹脂層を形成する際にアクリル樹脂基材が過度に溶解することを抑制しやすくできる。アクリル樹脂のガラス転移点が150℃以下であると、樹脂層を形成する際のアクリル樹脂基材が溶解する度合いをコントロールしやすくできる。
【0017】
アクリル樹脂基材は、アクリル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、アクリル樹脂基材を構成する全樹脂に対するアクリル樹脂の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
アクリル樹脂基材は、例えば、調湿したアクリル樹脂からなるペレットを溶融押し出し後、冷却しながら、縦方向に延伸し、その後、横方向に延伸することで製造することができる。
溶融押し出し工程では、1軸、2軸、又は2軸以上のスクリューを使用することができ、スクリューの回転方向、回転数、溶融温度は任意に設定できる。
延伸は、延伸後に所望の厚みになるように行うことが好ましい。また、延伸倍率は限定されないが、1.2倍以上4.5倍以下が好ましい。延伸時の温度、湿度は任意に決められる。延伸方法は、一般的な方法でよい。
【0019】
樹脂基材に含まれるアクリル樹脂等の樹脂は、重量平均分子量が10,000以上500,000以下であることが好ましく、50,000以上300,000以下であることがより好ましい。樹脂の重量平均分子量を前記範囲とすることにより、条件1、条件2、上記海島構造を制御しやすくできる。
【0020】
基材の平均厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、35μm以上がさらに好ましい。基材の平均厚みを10μm以上とすることにより、光学積層体の取り扱い性を良好にしやすくできる。
基材の平均厚みは、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。基材の平均厚みを100μm以下とすることにより、光学積層体の耐屈曲性をより良好にしやすくできる。
【0021】
上述した基材の平均厚みは、光学積層体の完成時の基材の平均厚みを意味する。後述するように、樹脂層用塗布液により基材の一部が溶解することによって、光学積層体の完成時の基材の平均厚みは、初期の基材の平均厚みよりも減少する場合がある。このため、初期の基材の平均厚みは、光学積層体の完成時の基材の平均厚みよりも厚くすることが好ましい。初期の基材の平均厚みと、光学積層体の完成時の基材の平均厚みとの差は、樹脂層の厚み、樹脂層用塗布液の組成、前記塗布液の乾燥条件等により異なるため一概にはいえないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0022】
基材の平均厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した光学積層体の断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により算出できる。STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
基材の平均厚み、第1の樹脂層の厚み、第2の樹脂層の厚み、第1の樹脂層の厚み方向における領域α1の位置、樹脂層の厚み方向における第1の粒子の位置、θa1、θa2、Pa1、Pa2等を測定するためには、光学積層体の断面が露出した測定用のサンプルを作製する必要がある。前記サンプルは、例えば、下記の(A1)~(A2)の工程で作製できる。なお、コントラスト不足で界面等が見え難い場合には、前処理として、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸などで前記サンプルに染色処理を施してもよい。
【0023】
(A1)光学積層体を任意の大きさに切断したカットサンプルを作製した後、前記カットサンプルを樹脂で包埋した包埋サンプルを作製する。カットサンプルの大きさは、例えば、縦10mm×横3mmの短冊状とする。包埋用の樹脂はエポキシ樹脂が好ましい。
包埋サンプルは、例えば、シリコン包埋板内にカットサンプルを配置した後に包埋用の樹脂を流し込み、さらに、包埋用の樹脂を硬化させた後、シリコン包埋板から、カットサンプル及びこれを包む包埋用の樹脂を取り出すことにより得ることができる。以下に例示するストルアス社製のエポキシ樹脂の場合、前述した硬化の工程は、常温で12時間放置して硬化することが好ましい。包埋サンプルの形状はブロック状である。
シリコン包埋板は、例えば、堂阪イーエム社製のものが挙げられる。シリコン包埋板は、シリコンカプセルと称する場合もある。包埋用のエポキシ樹脂は、例えば、ストルアス社製の商品名「エポフィックス」と、同社製の商品名「エポフィックス用硬化剤」とを10:1.2で混合したものを用いることができる。
【0024】
(A2)ブロック状の包埋サンプルを垂直に切断し、光学積層体の断面が露出してなる、測定用のサンプルを作製する。測定用のサンプルとしては、ブロック状の包埋サンプルから切断された薄い切片の方を用いる(測定のサンプルの条件は後述する。)。包埋サンプルは、カットサンプルの中心を通るように切断することが好ましい。包埋サンプルはダイヤモンドナイフで切断することが好ましい。
包埋サンプルを切断する装置としては、例えば、ライカマイクロシステムズ社製の商品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」が挙げられる。包埋サンプルを切断する際は、最初は大まかに切断し(粗トリミング)、最終的には、「SPEED:1.00mm/s」、「FEED:70nm」の条件で精密にトリミングすることが好ましい。
上記のようにブロック状の包埋サンプルから切断された切片のうち、穴等の欠陥がなく、かつ、厚みが60nm以上100nm以下で均一な切片は、基材の平均厚み、第1の樹脂層の厚み、第2の樹脂層の厚み、第1の樹脂層の厚み方向における領域α1の位置、樹脂層の厚み方向における第1の粒子の位置、θa1、θa2、Pa1、Pa2、第1の粒子の粒子径、無機微粒子の粒子径の測定用サンプルとして用いることができる。
【0025】
本明細書において、各種の測定及び評価、並びに、測定及び評価のためのサンプリングを実施する雰囲気は、特に断りのない限り、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下で測定したものとする。また、測定、評価及びサンプリングを実施前に、対象となる光学積層体を前記雰囲気に30分以上晒すものとする。
【0026】
基材は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤及び可塑剤等の添加剤を含んでもよい。
基材の表面には、密着性向上のために、コロナ放電処理等の物理的な処理又は化学的な処理を施したり、易接着層を形成したりしてもよい。
【0027】
<樹脂層>
樹脂層は、基材側から、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを有することを要する。樹脂層として、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を有することにより、密着性を良好にしつつ、鉛筆硬度の低下を抑制しやすくできる。
【0028】
樹脂層が単層の場合、光学積層体の耐屈曲性又は鉛筆硬度を良好にしにくい。例えば、硬度の高い樹脂層の単層の場合、光学積層体の耐屈曲性を良好にしにくい。また、硬度の低い樹脂層の単層の場合、光学積層体の鉛筆硬度を良好にしにくい。
【0029】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、例えば、基材上に、樹脂となる成分、及び溶媒を含む樹脂層用塗布液を塗布、乾燥し、必要に応じて硬化することにより形成することができる。樹脂層用塗布液は、さらに、必要に応じて、第1の粒子、無機微粒子、添加剤を含有してもよい。
上記の手法の場合、例えば、樹脂層用塗布液が基材の一部を溶解し、基材から溶出した樹脂成分を主成分として、樹脂層用塗布液の樹脂成分を少量含む領域により第1の樹脂層を形成し、さらに、基材から溶出した樹脂成分の含有量は少量であり、樹脂層用塗布液の樹脂成分を主成分とする領域により第2の樹脂層を形成することができる。すなわち、上記の手法では、1つの樹脂層用塗布液を用いた1回の塗布により、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成することができる。また、上記の手法により形成した第2の樹脂層は、基材から溶出した樹脂成分の含有量が少量であるため、鉛筆硬度を良好にしやすくできる。
上記の手法では、樹脂層用塗布液を所定の組成として、かつ、所定の乾燥条件とすることが肝要である。所定の組成及び所定の乾燥条件については後述する。
基材上に樹脂層用塗布液を塗布する方法は特に制限されず、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の汎用の塗布方法が挙げられる。
樹脂層用塗布液を硬化する際には、紫外線及び電子線等の電離放射線を照射することが好ましい。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯及びメタルハライドランプ灯等が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190nm以上380nm以下の波長域が好ましい。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種の電子線加速器が挙げられる。
【0030】
第1の樹脂層は、互いに独立した領域α1と、前記領域α1を取り囲む領域α2とを有し、前記領域α1に含まれる樹脂と前記領域α2に含まれる樹脂とが異なることを要する。さらに、前記第2の樹脂層は、互いに独立した領域β1と、前記領域β1を取り囲む領域β2とを有し、前記領域β1に含まれる樹脂と前記領域β2に含まれる樹脂とが異なることを要する。
第1の樹脂層が前記領域α1及び前記領域α2を有し、かつ、第2の樹脂層が前記領域β1及び前記領域β2を有することにより、耐光性試験後の密着性を良好にしやすくできる。
【0031】
領域α1に含まれる樹脂と領域α2に含まれる樹脂とが異なるとは、樹脂の組成及び分子量の少なくとも何れかが異なることを意味する。領域α1に含まれる樹脂と領域α2に含まれる樹脂とは、樹脂の組成が異なることが好ましい。樹脂の組成が異なる例としては、領域α1と領域α2とが異なる種類の樹脂を含む場合、領域α1と領域α2とが同じ種類の樹脂を含むが樹脂の混合割合が異なる場合等が挙げられる。
領域β1に含まれる樹脂と領域β2に含まれる樹脂とが異なるとは、樹脂の組成及び分子量の少なくとも何れかが異なることを意味する。領域β1に含まれる樹脂と領域β2に含まれる樹脂とは、樹脂の組成が異なることが好ましい。樹脂の組成が異なる例としては、領域β1と領域β2とが異なる種類の樹脂を含む場合、領域β1と領域β2とが同じ種類の樹脂を含むが樹脂の混合割合が異なる場合等が挙げられる。
【0032】
本明細書において、領域α1、領域α2、領域β1及び領域β2の樹脂は、いわゆるバインダー樹脂を意味する。このため、後述する第1の粒子等の粒子は、領域α1、領域α2、領域β1及び領域β2の樹脂を意味しない。
【0033】
領域α1の割合が多いと硬度が不十分になりやすく、領域α2の割合が多いと密着性が悪化しやすい。このため、領域α1と領域α2との面積比は、1:99~10:90であることが好ましく、2:98~5:95であることがより好ましい。
領域β1の割合が多いと硬度が不十分になりやすく、領域β2の割合が多いと密着性が悪化しやすい。このため、領域β1と領域β2との面積比は、5:95~50:50であることが好ましく、10:90~40:60であることがより好ましい。
上記の面積比は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した光学積層体の断面写真から算出できる。数値の信頼性を高めるために、複数の断面写真を取得し、領域α1又は領域β1の合計数を50以上とした上で、面積割合を算出するものとする。
【0034】
第1の樹脂層及び第2の樹脂層は、領域α1に含まれる樹脂と領域β2に含まれる樹脂とが実質的に同一であることが好ましく、かつ、領域α2に含まれる樹脂と領域β1に含まれる樹脂とが実質的に同一であることが好ましい。前記構成を備えることにより、耐光性試験後の密着性を良好にしやすくできる。前記構成により耐光性試験後の密着性を良好にしやすくできる原因は、第1の樹脂層と第2の樹脂層との親和性が高まることにより、耐光性試験等の過酷な環境においても、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の密着性が低下しにくくなるためと考えられる。
【0035】
第1の樹脂層が前記領域α1及び前記領域α2を有するように構成しやすくするため、及び、第2の樹脂層が前記領域β1及び前記領域β2を有するように構成しやすくするためには、樹脂層用塗布液に含まれる成分同士の相溶性を低くしたり、樹脂層用塗布液に含まれる成分と基材から溶出した成分との相溶性を低くすることが好ましい。
上記のように相溶性を低くすることにより、下記(1)~(4)の事象により、本開示の第1の樹脂層及び第2の樹脂層の構成を形成しやすくできると考えられる。
(1)基材上に樹脂層用塗布液を塗布した際に、基材の一部が溶解する。
(2)基材から溶出した樹脂成分を主成分として、樹脂層用塗布液の樹脂成分を少量含む領域が第1の樹脂層となり、基材から溶出した樹脂成分の含有量は少量であり、樹脂層用塗布液の樹脂成分を主成分とする領域が第2の樹脂層となる。
(3)相溶性が低いため、上記(2)の際に、第1の樹脂層に少量含まれる樹脂層用塗布液の樹脂成分が領域α1を形成し、基材から溶出した樹脂成分が領域α2を形成する。
(4)相溶性が低いため、上記(2)の際に、第2の樹脂層に少量含まれる基材から溶出した樹脂成分が領域β1を形成し、樹脂層用塗布液の樹脂成分が領域β2を形成する。
【0036】
第1の樹脂層の厚み方向の中心より基材側を第1領域、第1の樹脂層の厚み方向の中心より第2の樹脂層側を第2領域と定義した際に、領域α1の70%以上が前記第2領域に存在することが好ましい。前記構成を有することにより、耐光性試験後の密着性をより良好にしやすくできる。
【0037】
領域α1が第2領域に存在する割合は、個数基準で80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
本明細書において、第1の樹脂層の厚み方向における領域α1が存在する位置は、下記(1)~(5)の手法で判別するものとする。
(1)走査型透過電子顕微鏡(STEM)により、光学積層体の断面写真を撮像する。 STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
(2)断面写真に基づき、第1の樹脂層の基材側の表面の稜線の標高の平均X1、第1の樹脂層の第2の樹脂層側の表面の稜線の標高の平均X2を算出する(
図2の符号X1及びX2参照)。
(3)X1及びX2の標高の中間を、第1の樹脂層の厚み方向の中心Mと定義する(
図2の符号M参照)。
(4)断面写真に基づき、第1の樹脂層の厚み方向の中心より基材側の第1領域に存在する領域α1、及び、第1の樹脂層の厚み方向の中心より第2の樹脂層側の第2領域に存在する領域α1、の個数をカウントする。第1の樹脂層の厚み方向の中心を跨いで、第1領域及び第2領域の両方に存在している領域α1は、領域α1の面積割合に応じて、第1領域及び第2領域に個数を割り振る。例えば、第1領域に存在する面積割合が40%で第2領域に存在する面積割合が60%の領域α1は、第1領域に0.4個を割り振り、第2領域に0.6個を割り振る。
(5)数値の信頼性を高めるために、複数の断面写真を取得し、領域α1の合計数を50以上とした上で、第1領域及び第2領域に存在する領域α1の個数基準の割合を算出する。
【0039】
樹脂層全体の厚み(言い換えると、第1の樹脂層と第2の樹脂層との合計厚み)は、下限は、4.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましく、6.0μm以上がさらに好ましく、上限は、15.0μm以下が好ましく、12.0μm以下がより好ましく、10.0μm以下がさらに好ましい。
第1の樹脂層の平均厚みt1は、下限は、3.0μm以上が好ましく、4.0μm以上がより好ましく、4.5μm以上がさらに好ましく、上限は、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、7.0μm以下がさらに好ましい。t1を3.0μm以上とすることにより、密着性及び耐屈曲性を良好にしやすくでき、t1を10.0μm以下とすることにより、鉛筆硬度の低下を抑制しやすくできる。
第2の樹脂層の平均厚みt2は、下限は、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、上限は、4.0μm以下が好ましく、3.0μm以下がより好ましく、2.7μm以下がさらに好ましい。t2を0.3μm以上とすることにより、鉛筆硬度を良好にしやすくでき、t2を4.0μm以下とすることにより、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
【0040】
t1/t2は、密着性及び耐屈曲性の低下を抑制しやすくするため、1.5以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、t1/t2は、鉛筆硬度を良好にしやすくするため、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましい。
【0041】
第1の樹脂層の平均厚み、及び、第2の樹脂層の平均厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した光学積層体の断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により算出できる。STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
【0042】
《樹脂成分》
樹脂層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。樹脂層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことにより、光学積層体の鉛筆硬度を良好にしやすくできる。
【0043】
樹脂層用塗布液の樹脂成分の全量に対する硬化性樹脂組成物の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0044】
硬化性樹脂組成物の硬化物としては、熱硬化性樹脂組成物の硬化物及び電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。これらの中でも、鉛筆硬度を高くしやすく、かつ、未硬化の組成物の状態において基材を溶解しやすい、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物が好ましい。
【0045】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0046】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。
電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線又は電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
【0047】
電離放射線硬化性化合物としては、電離放射線硬化性官能基を1つ有する単官能の電離放射線硬化性化合物、電離放射線硬化性官能基を2つ以上有する多官能の電離放射線硬化性化合物のいずれも用いることができる。また、電離放射線硬化性化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。なお、単官能の電離放射線硬化性モノマーは、他の樹脂成分との相溶性を良好しやすいため、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に海島構造を形成しにくい傾向がある。単官能の電離放射線硬化性モノマーを用いる場合は、前述の特性に注意すべきである。
基材の一部を溶解し、かつ、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に海島構造を形成し、かつ、鉛筆硬度を高くし、かつ、硬化収縮を抑制しやすくするためには、電離放射線硬化性化合物として、下記(a)~(c)の混合物を用いることが好ましい。下記(a)~(c)は、電離放射線硬化性官能基としてエチレン性不飽和結合基を有する化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレート系化合物であることがより好ましい。(メタ)アクリレート系化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等により分子骨格の一部を変性したものも使用することができる。
(a)2官能の電離放射線硬化性モノマー
(b)3官能以上の電離放射線硬化性モノマー
(c)多官能の電離放射線硬化性オリゴマー
【0048】
電離放射線硬化性化合物として、(a)の2官能の電離放射線硬化性モノマーを含むことにより、基材の一部を溶解しやすくすることができるため、θa1又はPa1を大きくしやすくできる。但し、(a)の2官能の電離放射線硬化性モノマーの量が多過ぎると、基材を過度に溶解することにより、基材の強度が低下したり、光学積層体の鉛筆硬度が低下する場合がある。
電離放射線硬化性化合物として、(b)の3官能以上の電離放射線硬化性モノマーを含むことにより、光学積層体の鉛筆硬度を良好にしやすくできる。但し、(b)の3官能以上の電離放射線硬化性モノマーの量が多過ぎると、樹脂層の硬度が高くなり過ぎて、光学積層体の耐屈曲性が低下する場合がある。
電離放射線硬化性化合物として、(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーを含むことにより、光学積層体の鉛筆硬度を維持しつつ、硬化収縮を抑制しやすくできる。但し、(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの量が多過ぎると、光学積層体の鉛筆硬度が低下する場合がある。
【0049】
電離放射線硬化性化合物の総量に対する、(a)の2官能の電離放射線硬化性モノマーの量は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、13質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
電離放射線硬化性化合物の総量に対する、(b)の3官能以上の電離放射線硬化性モノマーの量は、25質量%以上55質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
電離放射線硬化性化合物の総量に対する、(c)多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの量は、25質量%以上55質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
(a)の2官能の電離放射線硬化性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
【0051】
(b)の3官能以上の電離放射線硬化性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(b)の3官能以上の電離放射線硬化性モノマーの官能基数は、鉛筆硬度を高くしつつ硬化収縮を抑制するため、3以上5以下であることが好ましく、3以上4以下であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。
【0052】
(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0053】
(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの官能基数は、鉛筆硬度を維持しつつ硬化収縮を抑制するため、4以上8以下であることが好ましく、5以上7以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。
(c)の多官能の電離放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量は、鉛筆硬度を維持しつつ硬化収縮を抑制するため、1000~5000であることが好ましく、1100~3500であることがより好ましく、1200~2000であることがさらに好ましい。
本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0054】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0055】
《第1の粒子》
樹脂層は、防眩性を良好にしやすくするため、平均粒子径が0.5μm以上の第1の粒子を含むことが好ましい。防眩性をより良好にしやすくするためには、第2の樹脂層が前記第1の粒子を含むことがより好ましい。
【0056】
第1の粒子は、防眩性をより良好にしやすくするため、第1の粒子の個数基準の70%以上が第2の樹脂層側に存在することが好ましい。前記割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0057】
樹脂層の厚み方向における第1の粒子が存在する位置は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)により撮像した光学積層体の断面写真から判別できる。また、上述した個数基準の割合は、前記断面写真から算出できる。なお、数値の信頼性を高めるために、複数の断面写真を取得し、第1の粒子の合計数を50以上とした上で、上述した個数基準の割合を算出することが好ましい。
なお、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を跨いで、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両方に存在している第1の粒子は、各層の面積割合に応じて、各層に個数を割り振る。例えば、第1の樹脂層に存在する面積割合が40%で、第2の樹脂層に存在する面積割合が60%である第1の粒子は、第1の樹脂層に0.4個を割り振り、第2の樹脂層に0.6個を割り振る。
STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は1000倍以上7000倍以下とすることが好ましい。
【0058】
第1の粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等の樹脂の1種以上から形成される有機粒子;シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等の無機物の1種以上から形成される無機粒子;が挙げられる。これらの中でも、有機粒子は、分散安定性に優れ、かつ、比重が比較的小さいため、第1の粒子を第2の樹脂層に位置させやすい点で好ましい。
【0059】
第1の粒子の含有量は、樹脂層用塗布液の樹脂成分100質量部に対して、下限は、0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、1.3質量部以上であることがさらに好ましく、上限は、10.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
第1の粒子の含有量を0.5質量部以上とすることにより、防眩性を良好にしやすくできる。また、第1の粒子の含有量を10.0質量部以下とすることにより、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
【0060】
第1の粒子の平均粒子径は、防眩性を良好にしやすくするため、0.8μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。
第1の粒子の平均粒子径は、耐屈曲性の低下を抑制しやすくするため、3.0μm以下であることが好ましく、2.7μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0061】
第1の粒子の平均粒子径は、例えば、以下の(B1)~(B3)の作業により算出できる。
(B1)光学顕微鏡にて光学積層体の透過観察画像を撮像する。倍率は500倍以上2000倍以下が好ましい。
(B2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(B3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を粒子の平均粒子径とする。
ただし、光学的に第1の粒子が観察できないときは、以下の(B4)~(B6)により第1の粒子の平均粒子径を算出する。
(B4)光学積層体から、第1の粒子の中心を通る断面となるような切片をミクロトームにて作製する。切片の厚さは60nm~100nmが好ましい。1つの第1の粒子につき連続で複数の切片を作製し、各切片から(B5)の作業により算出した粒子径が極大となる切片を、第1の粒子の中心を通る断面となる切片とすることができる。
(B5)得られた切片を走査型透過電子顕微鏡(STEM)にて観察して粒子径を算出する。粒子径の算出方法は(B2)と同様とする。倍率は5000倍以上20000倍以下が好ましい。
(B6)(B4)~(B5)の作業を20個分の粒子に対して行って、20個分の粒子径の数平均から得られる値を第1の粒子の平均粒子径とする。
【0062】
第1の粒子の平均粒子径を示すD1と、第2の樹脂層の平均厚みを示すt2とは、t2-D1が、-0.5μm以上であることが好ましく、2.0μm以下であることが好ましい。
t2-D1が-0.5μm以上であると、第1の粒子によって、光学積層体の表面に凹凸形状を付与しやすくできるため、防眩性を良好にしやすくできる。t2-D1は、0μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。
t2-D1が2.0μm以下であると、第1の粒子が第2の樹脂層の表面から突出しにくくすることにより、耐擦傷性を良好にしやすくすることができる。t2-D1は、1.5μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
《無機微粒子》
樹脂層は、無機微粒子を含んでいてもよい。樹脂層が比較的比重の大きい無機微粒子を含むことにより、第1の粒子が樹脂層の下方に沈みにくくなるため、第1の粒子を第2の樹脂層に位置させやすくできる。また、無機微粒子は、第1の粒子の分散性を高め、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
本明細書において、無機微粒子とは、平均一次粒子径が200nm以下の無機粒子を意味する。
無機微粒子の平均粒子径は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、5nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
【0064】
無機微粒子の平均粒子径は、以下の(C1)~(C3)の作業により算出できる。
(C1)光学積層体の断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、倍率は5万倍以上30万倍以下とすることが好ましい。
(C2)観察画像から任意の10個の無機微粒子を抽出し、個々の無機微粒子の粒子径を算出する。粒子径は、無機微粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(C3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を無機微粒子の平均粒子径とする。
【0065】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びチタニア等からなる微粒子が挙げられる。これらの中でも、内部ヘイズの発生を抑制しやすいシリカが好適である。
【0066】
無機微粒子の含有量は、樹脂層用塗布液の樹脂成分100質量部に対して、下限は、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.7質量部以上であることがさらに好ましく、上限は、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましい。
無機微粒子の含有量を0.1質量部以上とすることにより、第1の粒子を第2の樹脂層に位置させやすくできる。また、無機微粒子の含有量を5.0質量部以下とすることにより、第1の粒子が樹脂層の上方に過度に浮かぶことを抑制できるため、耐屈曲性の低下を抑制しやすくできる。
【0067】
《添加剤》
樹脂層用塗布液は、必要に応じて、レベリング剤、屈折率調整剤、帯電防止剤、防汚剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤及び熱重合開始剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
《溶媒》
樹脂層用塗布液は、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、基材を溶解し得る溶媒を選択することが好ましい。溶媒として、基材を溶解しやすい溶媒を用いるほど、θa1及びPa1の値が大きくなりやすくなる。但し、基材を過度に溶解すると、基材の強度が低下するため、基材の種類に応じて、適切な溶媒を選択することが好ましい。
また、溶媒は、基材の溶解性だけではなく、溶媒に固有の蒸発速度を考慮して選択することが好ましい。溶媒が蒸発する速度は、乾燥条件によっても制御できる。例えば、乾燥温度を高くすれば溶媒が蒸発する速度は速くなる。また、乾燥風速を速くすれば溶媒が蒸発する速度は速くなる。
溶媒の乾燥が遅いと、基材の溶解が進み、θa1及びPa1が大きくなりやすい。また、溶媒の乾燥が遅く、乾燥時の温度が高いと、第1の樹脂層と第2の樹脂層との層間において、樹脂成分の移動が激しくなり、θa2及びPa2が大きくなりやすい。
以上のことから、基材の溶解性、蒸発速度、乾燥条件を考慮して、溶媒を選択することが好ましい。
【0069】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のグリコールエーテル類;セロソルブアセテート類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;等が挙げられる。溶媒は、1種単独でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0070】
アクリル樹脂基材は溶媒に溶解しやすい。このため、基材としてアクリル樹脂基材を用いる場合、溶媒に固有の蒸発速度が速い溶媒を含むことが好ましい。
本明細書において、蒸発速度が速い溶媒は、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際に、蒸発速度が100以上の溶媒を意味する。また、本明細書において、蒸発速度が遅い溶媒は、酢酸ブチルの蒸発速度を100とした際に、蒸発速度が100未満の溶媒を意味する。
【0071】
蒸発速度が速い溶媒の蒸発速度は、120以上450以下であることがより好ましく、140以上400以下であることがさらに好ましい。
蒸発速度が速い溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(蒸発速度150)、メチルイソブチルケトン(蒸発速度160)、トルエン(蒸発速度200)、メチルエチルケトン(蒸発速度370)が挙げられる。
蒸発速度が速い溶媒は、溶媒の全量の75質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
【0072】
また、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に海島構造を形成しやすくするためには、溶媒として、溶媒に固有の蒸発速度が遅く、かつ、極性が高く、分子量が大きい溶媒を含むことが好ましい。前述した特性を備える溶媒は、塗布液の粘性が大きくなるため塗布液がゲル状になりやすくなる。このため、前述した特性を備える溶媒は、塗布液の相溶性を低下させやすくすることができるため、海島構造を形成しやすくできる。前述した特性を備える溶媒としては、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコール等が挙げられる。
蒸発速度が遅く、かつ、極性が高く、分子量が大きい溶媒は、溶媒の全量の15質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0073】
《乾燥条件》
樹脂層用塗布液から樹脂層を形成する際には、乾燥条件を制御することが好ましい。
また、本開示の光学積層体は、樹脂層用塗布液を2段階で乾燥することが好ましい。具体的には、1段階目の乾燥は乾燥風速を小さくし、2段階目の乾燥は乾燥風速を大きくすることが好ましい。1段階目の乾燥時に、基材から溶出した樹脂成分を主成分として含み、樹脂層用塗布液の樹脂成分を少量含む領域により第1の樹脂層を形成し、さらに、基材から溶出した樹脂成分を少量含み、樹脂層用塗布液の樹脂成分を主成分として含む領域により第2の樹脂層を形成することができる。さらに、1段階目の乾燥温度を高くすることで、樹脂成分の移動しやすくすることにより、海島構造を形成しやすくすることができる。
そして、2段階目の乾燥を実施することにより、基材が過度に溶解することを抑制できるため、θa1及びPa1が大きくなり過ぎることを抑制しやすくできる。
【0074】
さらに、1段階目の乾燥及び2段階目の乾燥では、乾燥時間を制御することが好ましい。樹脂層用塗布液の乾燥の乾燥時間が長くなることは、樹脂層用塗布液の樹脂成分に電離放射線を照射するまでの時間が長くなることを意味する。言い換えると、樹脂層用塗布液の乾燥の乾燥時間が長くなることは、樹脂層用塗布液の樹脂成分が、未硬化で流動性を有する状態を長く保つことを意味する。このため、樹脂層用塗布液の乾燥の乾燥時間が長くなると、第1の樹脂層と第2の樹脂層との層間において、樹脂成分の移動が激しくなり、θa2及びPa2が大きくなりやすくなるため、条件1及び条件2を満たしにくくなる。
【0075】
乾燥条件は、乾燥温度及び乾燥機内の風速により制御することができる。乾燥温度及び風速の好ましい範囲は、樹脂層用塗布液の組成により異なるため一概にはいえないが、下記の条件とすることが好ましい。
<1段階目の乾燥>
乾燥温度は75℃以上95℃以下が好ましく、乾燥風速は1m/s以上10m/s以下が好ましい。乾燥時間は20秒以上40秒以下が好ましい。
<2段階目の乾燥>
乾燥温度は75℃以上95℃以下が好ましく、乾燥風速は15m/s以上30m/s以下が好ましい。乾燥時間は20秒以上40秒以下が好ましい。
【0076】
樹脂層用塗布液により基材の一部を溶解させ、かつ、基材から溶出した成分と樹脂層用塗布液とを十分に混合させやすくするため、電離放射線の照射は塗布液の乾燥後に行うことが好適である。
【0077】
<その他の層>
光学積層体は、基材及び樹脂層以外の層を有していてもよい。その他の層としては、反射防止層、防汚層及び帯電防止層等が挙げられる。
【0078】
<条件1、条件2>
本開示の光学積層体は、下記の条件1又は条件2を満たすことを要する。本開示の光学積層体は、条件1及び条件2の少なくとも一方を満たせば良いが、両方を満たすことが好ましい。
<条件1>
前記基材の前記樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の平均傾斜角を示すθa2とが、θa2<θa1の関係である。
<条件2>
前記基材の前記樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa1と、前記第1の樹脂層の前記第2の樹脂層側の表面の算術平均高さを示すPa2とが、Pa2<Pa1の関係である。
【0079】
-条件1-
θa2<θa1の関係を満たさない場合、θa1が小さいことによって、初期の密着性を良好にしにくかったり、θa2が大きいことによって、耐光性試験後における透過像鮮明度の変化を抑制しにくい。
耐光性試験前後で透過像鮮明度が変化する原因は、耐光性試験の前後で、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の屈折率差が変化するためと考えられる。本開示の光学積層体には、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面だけではなく、基材と第1の樹脂層との界面も存在する。基材(特にアクリル樹脂基材)は、耐光性試験により比較的変成しにくい。一方、樹脂層用塗布液の樹脂成分は、耐光性試験により比較的変成しやすい。このため、基材の樹脂成分の含有量が少ない第2の樹脂層は、耐光性試験前後で屈折率が変化しやすくなる。一方、基材、及び、基材の樹脂成分を多く含む第1の樹脂層は、耐光性試験前後で屈折率が変化しにくくなる。このため、θa2が大きいことにより、θa2<θa1の関係を満たさない場合には、耐光性試験後における透過像鮮明度の変化を抑制しにくいと考えられる。
【0080】
-条件2-
Pa2<Pa1の関係を満たさない場合、Pa1が小さいことによって、初期の密着性を良好にしにくかったり、Pa2が大きいことによって、耐光性試験後における透過像鮮明度の変化を抑制しにくい。
Pa2が大きいことにより、Pa2<Pa1の関係を満たさない場合に、耐光性試験後における透過像鮮明度の変化を抑制しにくい理由は、条件1と同様の理由が考えられる。
【0081】
θa1は、初期の密着性を良好にしやすくするため、5.0度以上が好ましく、8.0度以上がより好ましく、10.0度以上がさらに好ましい。θa1は、鉛筆硬度を良好にしやすくするため、20.0度以下が好ましく、18.0度以下がより好ましく、17.0度以下がさらに好ましい。
【0082】
θa2は、耐光性試験後における透過像鮮明度の変化を抑制しやすくするため、10.0度以下が好ましく、8.0度以下がより好ましく、6.0度以下がさらに好ましく、4.0度以下がよりさらに好ましい。
θa2は、密着性を良好にしやすくするため、0度超が好ましく、1.0度以上がより好ましく、2.0度以上がさらに好ましい。
【0083】
Pa1は、初期の密着性を良好にしやすくするため、0.05μm以上が好ましく、0.07μm以上がより好ましく、0.10μm以上がさらに好ましい。Pa1は、鉛筆硬度を良好にしやすくするため、0.25μm以下が好ましく、0.23μm以下がより好ましく、0.20μm以下がさらに好ましい。
【0084】
Pa2は、耐光性試験後における透過像鮮明度の変化を抑制しやすくするため、0.15μm以下が好ましく、0.13μm以下がより好ましく、0.10μm以下がさらに好ましく、0.06μm以下がよりさらに好ましい。
Pa2は、密着性を良好にしやすくするため、0.02μm以上が好ましく、0.04μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。
【0085】
θa1及びθa2、並びに、Pa1及びPa2は、例えば、以下のように測定することができる。
(1)光学積層体の断面写真を、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で撮像する。STEMの加速電圧は10kV以上30kV以下、STEMの倍率は5000倍以上10000倍以下とすることが好ましい。
(2)断面写真の画像から、基材と樹脂層との界面の稜線、及び、第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面の稜線を取得し、高さデータを取得する。具体的には下記のようにする。基材と樹脂層との界面は、基材の樹脂層側の表面に相当する。第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面は、第1の樹脂層の第2の樹脂層側の表面に相当する。
(a)撮影した画像を、オープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェアImageJ(version 1.52a)にて表示する。
(b)画像中に表示されたスケール表示から、ピクセル当たりの長さを求める。
(c)“FreeHand Selections”を選択して、界面を含むようにROIをつくり、Brightnessを調節して、界面を境に色が明確に異なるようにする。
(d)Process-Smoothを2回かける。
(e)Image-Typeを8bitにする。
(f)“Straight”を選択して、界面に沿って線を引く。
(g)ImageJのPluginであるABSnakeを導入して実行する。その際”Gradient threshold”を10に設定し、Draw colorをRedに設定する。その他の設定はデフォルトのままとする。
(h)目視で、界面がRedでトレースできていることを確認する。不良の場合は、(f)からやり直す。
(i)Image-Adjust-Color Thresholdを実行。Redとそれ以外を分けるようにしきい値を設定する。具体的には、Color spaceをRGBにして、「Red」「Green」及び「Blue」の「Pass」にチェックをつけ、Redの範囲の上下限を最大値(255)にし、「Green」及び「Blue」の範囲の上下限を最小値(0)にする。
(j)Process-Binary-Make Binaryを実行して、界面のトレース線の部分と、前記トレース線以外の部分とで2値化する。
(k)File-Save Asで”Text Image”で2値化されたデータを保存する。
(l)2値化されたデータから、界面を高さデータ点列に変換する。
(3)高さデータ点列から、下記の手順で、平均傾斜角、算術平均高さを算出する。
(m) 最小二乗法の二次回帰により高さデータの中心線を求めて、高さデータから差し引くことで、中心線を0とし上方向を正、下方向を負とするように変換する。中心線の方向をx軸、それに垂直な方向(高さ方向)をy軸とする。
(n) (b)で求めたピクセル当たりの長さを用いて、高さデータを長さに換算する。
(o)カットオフ波長0.5μmのガウシャンによるローパスフィルターを適用する。
(p)tan-1((yi+1-yi-1)/2Δx)[yiは高さデータ点列のi番目の点における高さ、Δxは隣り合う点のx軸方向の距離]により求められる各点の傾斜角度の絶対値の算術平均を算出することにより、θa1及びθa2を求める。
(q)各点の高さの絶対値の算術平均を算出することにより、算術平均高さPa1及びPa2を求める。
【0086】
本明細書において、θa1及びθa2、並びに、Pa1及びPa2は、20個のサンプルの測定値の平均値を意味する。
θa1及びθa2、並びに、Pa1及びPa2を上記範囲とするためには、上述したように、基材の一部を樹脂層用塗布液で溶解させること、樹脂層用塗布液の組成を適切に調製すること、樹脂層用塗布液の乾燥条件を適切な範囲とすること、が重要である。
【0087】
<光学特性、表面形状>
光学積層体は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
全光線透過率、及び、後述するヘイズを測定する際の光入射面は、基材側とする。
【0088】
光学積層体は、JIS K7136:2000のヘイズが、0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましい。ヘイズを0.5%以上とすることにより、防眩性を良好にしやすくできる。
また、映像の解像度の低下を抑制しやすくするため、光学積層体は、ヘイズが20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0089】
光学積層体は、防眩性を良好にしやすくするため、樹脂層側の表面のJIS B0601:2001の算術平均粗さRaが、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましい。また、光学積層体は、映像の解像度の低下を抑制しやすくするため、樹脂層側の表面のRaが0.12μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましい。Raは、カットオフ値0.8mmにおける値を意味する。
【0090】
<大きさ、形状等>
光学積層体は、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2インチ以上500インチ以下程度である。“最大径”とは、光学積層体の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、光学積層体が長方形の場合は、長方形の対角線が最大径となる。光学積層体が円形の場合は、円の直径が最大径となる。
ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500mm以上3000mm以下、長さは500m以上5000m以下程度である。ロール状の形態の光学積層体は、画像表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部は除外することが好ましい。
枚葉の形状も特に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形であってもよいし、円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。より具体的には、光学積層体が四角形状である場合には、縦横比は表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、横:縦=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1、5:4、11:8等が挙げられる。
【0091】
[偏光板]
本開示の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置された第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置された第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が上述した本開示の光学積層体である、ものである。
【0092】
偏光板は、例えば、偏光板とλ/4位相差板とを組み合わせることにより反射防止性を付与するために使用される。この場合、画像表示装置の表示素子上にλ/4位相差板を配置し、λ/4位相差板よりも視認者側に偏光板が配置される。
偏光板を液晶表示装置用に用いる場合、偏光板は液晶シャッターの機能を付与するために使用される。この場合、液晶表示装置は、下側偏光板、液晶表示素子、上側偏光板の順に配置され、下側偏光板の偏光子の吸収軸と上側偏光板の偏光子の吸収軸とが直交して配置される。前記構成では、上側偏光板として本開示の偏光板を用いることが好ましい。
【0093】
<透明保護板>
本開示の偏光板は、第一の透明保護板及び第二の透明保護板の少なくとも一方が上述した本開示の光学積層体である。好ましい実施形態は、第一の透明保護板及び第二の透明保護板のうち、光出射側の透明保護板が上述した本開示の光学積層体である実施形態である。光学積層体は、光学積層体の基材側の面が偏光子側となるように配置することが好ましい。
【0094】
第一の透明保護板及び第二の透明保護板の一方が上述した本開示の光学積層体である場合、他方の透明保護板は特に限定されないが、光学的等方性の透明保護板が好ましい。
本明細書において、光学的等方性とは、面内位相差が20nm以下のものを指し、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。アクリルフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、光学的等方性を付与しやすい。
【0095】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等のシート型偏光子、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶や二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0096】
<大きさ、形状等>
本開示の偏光板の大きさ及び形状の実施形態は、上述した本開示の光学積層体の大きさ及び形状の実施形態が挙げられる。
【0097】
[画像表示装置]
本開示の画像表示装置は、表示素子上に上述した本開示の光学積層体を有するものである。
【0098】
図3は、本開示の画像表示装置500の実施形態を示す断面図である。
図3の画像表示装置500は、表示素子200上に、本開示の光学積層体100を有している。画像表示装置内において、光学積層体は、基材側が表示素子側を向くように配置することが好ましい。
【0099】
表示素子としては、液晶表示素子;EL表示素子(有機EL表示素子、無機EL表示素子);プラズマ表示素子;QD(Quantum dot)を用いた表示素子;ミニLED、マイクロLED表示素子等のLED表示素子;等が挙げられる。これら表示素子は、表示素子の内部にタッチパネル機能を有していてもよい。
液晶表示素子の液晶の表示方式としては、IPS方式、VA方式、マルチドメイン方式、OCB方式、STN方式、TSTN方式等が挙げられる。表示素子が液晶表示素子である場合、バックライトが必要である。バックライトは、液晶表示素子の光学積層体が配置されている側とは反対側に配置される。
【0100】
また、本開示の画像表示装置は、表示素子と光学積層体との間にタッチパネルを有するタッチパネル付きの画像表示装置であってもよい。この場合、タッチパネル付きの画像表示装置の最表面に光学積層体を配置し、かつ、光学積層体の基材側が表示素子側を向くように配置することが好ましい。
【0101】
画像表示装置の大きさ特に限定されないが、有効表示領域の最大径が2インチ以上500インチ以下であることが好ましい。
画像表示装置の有効表示領域とは、画像を表示し得る領域である。例えば、画像表示装置が表示素子を囲う筐体を有する場合、筐体の内側の領域が有効画像領域となる。
有効画像領域の最大径とは、有効画像領域内の任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、有効画像領域が長方形の場合は、長方形の対角線が最大径となる。また、有効画像領域が円形の場合は、円の直径が最大径となる。
【実施例0102】
次に、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
【0103】
1.測定及び評価
以下のように、実施例及び比較例の光学積層体の測定及び評価を行った。なお、各測定及び評価時の雰囲気は、温度23±5℃、相対湿度40%以上65%以下とした。また、各測定及び評価の開始前に、対象サンプルを前記雰囲気に30分以上晒してから測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
1-1.領域α1及び領域β1の有無、領域α1が第2領域に存在する割合
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の光学積層体の断面が露出したサンプルを作製した。走査型透過電子顕微鏡により撮像した前記サンプルの断面写真から、領域α1及び領域β1の有無を確認した。さらに、領域α1と領域α2との面積比、及び、領域β1と領域β2との面積比を算出した。第1の樹脂層21内に独立した領域α1が存在すること、領域α1に含まれる樹脂と領域α2に含まれる樹脂とが異なること、第2の樹脂層22内に独立した領域β1が存在すること、領域β1に含まれる樹脂と領域β2に含まれる樹脂とが異なることは、写真の明度差により判別できる。
さらに、第2領域に存在する領域αの個数基準の割合を算出した。前記割合を算出するにあたり、領域αの合計数が50を超えるまで複数の断面写真を取得した。
【0105】
1-2.θa1及びθa2、並びに、Pa1及びPa2
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の光学積層体の断面が露出したサンプルを作製した。走査型透過電子顕微鏡により撮像した前記サンプルの断面写真から、明細書本文の記載に準じて、θa1及びθa2、並びに、Pa1及びPa2を算出した。
【0106】
1-3.第1の樹脂層及び第2の樹脂層の平均厚み
明細書本文の記載に準じて、実施例及び比較例の光学積層体の断面が露出したサンプルを作製した。走査型透過電子顕微鏡により撮像した前記サンプルの断面写真の任意の箇所を20点選び、その平均値により、第1の樹脂層の平均厚みt1、第2の樹脂層の平均厚みであるt2を算出した。
【0107】
1-4.全光線透過率(Tt)及びヘイズ(Hz)
実施例及び比較例の光学積層体を10cm四方に切断した。切断箇所は、目視でゴミや傷などの異常点がない事を確認の上、ランダムな部位から選択した。ヘイズメーター(HM-150、村上色彩技術研究所製)を用いて、各サンプルのJIS K7361-1:1997の全光線透過率、及びJIS K7136:2000のヘイズを測定した。
なお、光源が安定するよう事前に装置の電源スイッチをONにしてから15分以上待ち、入口開口(測定サンプルを設置する箇所)に何もセットせずに校正を行い、その後に入口開口に測定サンプルをセットして測定した。光入射面は基材側とした。
【0108】
1-5.密着性
下記の手法により、実施例及び比較例の光学積層体の密着性を評価した。
さらに、下記の耐光性試験を実施した後の実施例及び比較例の光学積層体の密着性を評価した。
評価用のサンプルは、縦10マス、横10マスの合計100マスの碁盤目状にクロスカットした。カット間隔は1mmとした。カットの際は、第2の樹脂層側からカッターの刃を入れ、基材の上部にまでカッターの刃が到達するようにクロスカットした。
クロスカットを施したサンプルの表面に、粘着テープ(ニチバン株式会社製、製品名「セロテープ(登録商標)」)を貼り付け、JIS K 5600-5-6:1999に規定されるクロスカット法に準拠し剥離試験を行った。剥離試験の結果より、下記評価基準により密着性を評価した。
<評価基準>
A:格子パターンで剥がれの確認できるクロスカット部分が5%未満。
B:格子パターンで剥がれの確認できるクロスカット部分が5%以上15%未満。
C:格子パターンで剥がれの確認できるクロスカット部分が15%以上。
【0109】
<耐光性試験>
JIS B7751に準拠した紫外線カーボンアーク灯式耐光性及び耐候性試験機(スガ試験機社製の商品名「FAL-AU・B」、光源:紫外線カーボンアーク灯、放射照度:500W/m2、ブラックパネル温度:63℃)内に実施例及び比較例の光学積層体を樹脂層側が光源に向くように設置して200時間の試験を実施した。
【0110】
1-6.透過像鮮明度(JIS K7374:2007の透過像鮮明度)
実施例及び比較例の光学積層体の透過像鮮明度を測定した。光入射面は基材側とした。測定装置は、スガ試験機社製の写像性測定器(商品名:ICM-1T)を用いた。4つの光学櫛の幅の透過像鮮明度の合計を表2に示す(単位は「%」)。4つの櫛幅は、0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmを用いた。
さらに、上記の耐光性試験後の実施例及び比較例の光学積層体について、上記と同様に透過像鮮明度を測定した。4つの光学櫛の幅の透過像鮮明度の合計を表2に示す(単位は「%」)。
耐光性試験前後の透過像鮮明度の差を表2に示す(単位は「%」)。前記差が10.0%以下が合格レベルであり、合格レベルの中でも、前記差が5.0%以下のものがより好ましい。
【0111】
1-7.防眩性
実施例及び比較例の光学積層体の基材側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社)、商品名「パナクリーンPD-S1」、屈折率1.49)を介して、黒色板(クラレ社、商品名「コモグラス DFA2CG 502K(黒)系」、全光線透過率0%、厚み2mm、屈折率1.49)を貼り合わせたサンプルを作製した(サンプルの大きさ:縦20cm×横30cm)。前記サンプルを明室環境下(該サンプルの第一主面上の照度が500lux以上1000lux以下。照明:Hf32形の直管三波長形昼白色蛍光灯)で該サンプルの第1主面の中心より直線距離50cm上方から目視にて、被験者20人により、観測者自身の映り込みが気にならない程度の防眩性が得られているか否かを下記の基準により評価した。評価時の照明の位置は水平台から鉛直方向2m上方の高さである。被験者は30歳代の視力0.7以上の健康なものとした。
A:良好と答えた人が14人以上
B:良好と答えた人が7人以上13人以下
C:良好と答えた人が6人以下
【0112】
2.光学積層体の作製
[実施例1]
(基材の製造)
メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルの共重合体を2軸押出機を用いて260℃で混錬してペレット状組成物(ガラス転移点:134℃)を得た。得られたペレット状組成物を、Tダイ(Tダイ温度:260℃)にて溶融押し出し成型し、130℃の冷却ロール上に吐出した。次に、延伸温度145℃にて、縦方向および横方向に延伸倍率1.5倍で逐次二軸延伸を行った。その後冷却して、厚み40μmのアクリル樹脂基材を得た。
(樹脂層の形成)
前記のアクリル樹脂基材上に、表1の実施例1の樹脂層用塗布液をマイヤーバーコーティング法により、6.0g/m2の塗布量で塗布した後、風速5m/s、温度90℃の温風で30秒乾燥し、1段階目の乾燥を実施した。さらに、前記塗布液を、風速20m/s、温度90℃の温風で30秒乾燥し、2段階目の乾燥を実施した。次いで、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気下にて、積算光量が100mJ/cm2になるように紫外線を照射することにより、樹脂層塗布液の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化し、第1の樹脂層及び第2の樹脂層を形成し、実施例1の光学積層体を得た。本明細書において、塗布量は、乾燥後の塗布量を意味する。
【0113】
[実施例2~4]、[比較例1~3]
樹脂層用塗布液の組成、樹脂層用塗布液の塗布量、樹脂層用塗布液の乾燥条件を、表1に記載の組成等に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4、及び、比較例1~3の光学積層体を得た。
【0114】
【0115】
表1中、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、三菱ケミカル社のウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:紫光 UV-7600B、重量平均分子量:1400)を示し、2官能アクリレートモノマーは、テトラエチレングリコールジアクリレートを示し、3官能アクリレートモノマーは、ペンタエリスリトールトリアクリレートを示し、単官能アクリレートモノマーは、4-ヒドロキシブチルアクリレートを示し、光重合開始剤は、IGM Resins B.V.社の商品名“Omnirad 184”を示す。
【0116】
【0117】
表2の結果から、実施例の光学積層体は、耐光性試験後における、密着性の低下及び透過像鮮明度の変化を抑制し得ることが確認できる。
一方、比較例1の光学積層体は、第1の樹脂層が領域α1を有さないものである。このため、比較例1の光学積層体は、第1の樹脂層と第2の樹脂層との親和性を良好にすることができず、耐光性試験後の密着性が低下してしまうものであった。比較例1は、樹脂層用塗布液が単官能モノマーを含むことにより相溶性が良好であるため、海島構造が形成されにくくなり、領域α1が形成されなかったと考えられる。
比較例2の光学積層体は、θa1及びPa1が大きく、条件1及び条件2の何れも満たさないものである。このため、比較例2の光学積層体は、耐光性試験後に透過像鮮明度が激しく変動してしまうものであった。比較例2が条件1及び条件2を満たさない原因は、乾燥時間が長いことにより、第1の樹脂層と第2の樹脂層との層間において、樹脂成分の移動が激しくなり、θa2及びPa2が大きくなったためと考えられる。
比較例3の光学積層体は、θa1及びPa1が小さく、条件1及び条件2の何れも満たさないものである。このため、比較例3の光学積層体は、耐光性試験後の密着性を良好にできないものであった。なお、比較例3の光学積層体は、耐光性試験前の密着性も十分ではないものであった。比較例3が条件1及び条件2を満たさない原因は、樹脂層用塗布液が2官能モノマーを含んでいないためと考えられる。