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特開2022-190402スラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190402
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】スラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20221219BHJP
   F16L 55/17 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E04G21/04
F16L55/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098713
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】521259644
【氏名又は名称】近畿生コンクリート圧送協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】共田 昌一
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】森口 照美
(72)【発明者】
【氏名】酒井 治彦
【テーマコード(参考)】
2E172
3H025
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA31
3H025EA01
3H025EB01
3H025EC13
3H025ED01
(57)【要約】
【課題】通常時はシート材が輸送管に可及的に密着してすっきりした外観を呈する一方、輸送管破裂時にはその衝撃を緩和して生コン等のスラリーの飛散を防止する。
【解決手段】シート材3を輸送管2に巻き付けて被覆した後、輸送管2の管軸方向に沿って一定間隔を置いた複数箇所を締結ベルト5で固定する。このときの締結ベルト5の固定は、輸送管2の外周長より十分に長い周長の円環状態C1を形成してバックル部8で固定した上で、その円環C1の一部を短絡させてより周長の短い円環状態C2を形成し、この状態を維持するように結束バンド11で固定するという方法・態様で行う。この状態の締結ベルト5に対してその円環C2を拡径させる方向に力を作用させてゆくと、一定限度を超えたときに、バックル部8による固定よりも先に結束バンド11が破断して、締結ベルト5が円環状態C2から円環状態C1に拡径するようになっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー圧送用輸送管にシート材を巻き付けてそれを被覆するとともに、その管軸方向に沿う複数箇所を締結ベルトで固定してなるスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置であって、
前記締結ベルトを前記輸送管の外周長より長い周長の第1の円環状態に形成可能な第1固定手段と、その一部を短絡させて固定することによりそれより周長の短い第2の円環状態に形成可能な第2固定手段とを備え、
前記シート材は通常時は前記第2の円環状態の締結ベルトによって拘束されており、
前記第2の円環状態の締結ベルトに対して拡径方向に一定以上の力が作用したときに、前記第2固定手段による固定が解除されて前記第2の円環状態が前記第1の円環状態に拡径するようになっている、ことを特徴とするスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置において、
前記シート材を前記輸送管に巻き付けたときの最内端から最外端までの長さが前記第1の円環状態の周長より長い、ことを特徴とするスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置において、
前記シート材を前記輸送管に巻き付けたときの最外端側の縁部には複数のハトメが設けられており、前記締結ベルトはこのハトメに挿通させた上で固定されている、ことを特徴とするスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置において、
前記シート材はその一方の面にクッション層を有するクッション層付きシート材であって、このクッション層が内側となるように前記輸送管に巻き付けられている、ことを特徴とするスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートポンプ車から所定の型枠内に生コンを圧送する生コン圧送用輸送管等のスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アジテータ車によって建築・建設現場に搬入された生コンクリート(本書では「生コン」という。)は、コンクリートポンプ車によって圧送され、所定の型枠内に打設される。一般に生コンは高圧で圧送されるため、生コン圧送用の輸送管には高度の耐久性が要求される。
【0003】
しかし、生コンには砂利等の骨材が含まれており、それによって輸送管の内壁が削られるなどして摩耗するため、その耐久性には自ずと限度があった。また、管内の閉塞によって一時的に内圧が急上昇し、それに起因して輸送管が破裂することもあった。輸送管が破裂すると、高圧で圧送されていた生コンが一気に噴出し、周囲に飛散することになる。
【0004】
そこで、従来は、養生シートで輸送管を覆ってその適宜箇所を固定することにより輸送管破裂時の生コンの飛散に備えたり、特許文献1に記載のようにチューブ状に成形したカバーで輸送管全体を覆って輸送管の不意の破損に備えたりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭53-5135号(実開昭54-109324号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが調べたところでは、輸送管破裂時には管内圧力が一気に5MPa以上にまで上昇するケースがあり、単に養生シートで輸送管を覆って固定しただけでは、輸送管破裂時の圧力に養生シートが耐えられず、生コンが養生シートを突き破って周囲に飛散するおそれがあった。
【0007】
この場合、養生シートに代えて高強度のシート材を用いることも考えられるが、高強度のシート材は一般に高価な上、5MPa以上の圧力に耐えられるシート材を見出すことは必ずしも容易ではなかった。また、シート材を幾重にも巻き付けたり、その厚みを増したりすることも考えられるが、そうするとシート材全体の重量も増加し、特にブーム式コンプリートポンプ車の輸送管にそれを装着した場合には、ブーム全体の重量が増大して、関節部や支持部に負担が掛かったり、稼働時の安定性に悪影響を及ぼしたりするおそれがあった。
【0008】
他方、特許文献1に記載のようにチューブ状にカバーを成形した場合は、特別な形状に成形しなければならない上、装着の際もカバー端部から輸送管を挿入しなければならず、作業が煩雑という問題があった。特に既設の輸送管に後付けで装着する場合はそれが顕著であった。
【0009】
さらに、特許文献1に記載のチューブ状の輸送管カバーは、端部をゴム輪又は絞り紐で緊縛するようになっているが、その中間部は予め余裕を持たせて膨れ気味に形成されている。これは、このスペースに輸送管破裂時に噴き出た生コンを収容するためであり、生コンの飛散を防止する上で大きな意味を有しているものである。しかし、常時だぶついた状態にあるため、見栄えが良くない上、作業の邪魔になったり、強風に煽られてばたついたりするという問題があった。特にコンクリートポンプ車は現場までカバーを輸送管につけたまま一般道路を走行するため、強風に煽られると走行に支障が生じるおそれもある。さらに、カバーが風でばたついて摩耗などによる劣化が生じ、カバーの寿命を縮めてしまうおそれもあった。
【0010】
以上のような問題は、生コンを圧送する場合だけでなく、モルタルやセメントミルク、グラウト、泥水等のスラリーを圧送する場合にも起こり得る問題であった。
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、生コン等のスラリーを圧送するための輸送管において、通常時はシート材を輸送管に比較的密着させてすっきりした外観を呈する一方、輸送管破裂時にはその衝撃を緩和してスラリーの飛散を防止することができるスラリー飛散防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成したことを特徴する。
すなわち、本発明は、スラリー圧送用輸送管にシート材を巻き付けてそれを被覆するとともに、その管軸方向に沿う複数箇所を締結ベルトで固定してなるスラリー圧送用輸送管におけるスラリー飛散防止装置であって、
前記締結ベルトを前記輸送管の外周長より長い周長の第1の円環状態に形成可能な第1固定手段と、その一部を短絡させて固定することによりそれより周長の短い第2の円環状態に形成可能な第2固定手段とを備え、
前記シート材は通常時は前記第2の円環状態の締結ベルトによって拘束されており、
前記第2の円環状態の締結ベルトに対して拡径方向に一定以上の力が作用したときに、前記第2固定手段による固定が解除されて前記第2の円環状態が前記第1の円環状態に拡径するようになっている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、輸送管にシート材を巻き付けてそれを被覆し、その管軸方向に沿う複数箇所を締結ベルトで固定することにより輸送管への装着がなされるため、既設の輸送管にも後付けで装着することができる。また、本発明は、輸送管にシート材を巻き付けた上でその複数箇所を締結ベルトで固定するものであるから、シート材を輸送管に可及的に密着させてすっきりした外観にすることができる。このため、だぶついたシート材によって作業が邪魔されたり、それが強風に煽られてばたついたりすることを防止することができる。
【0014】
他方、輸送管破裂時には、噴出したスラリーの圧力によって締結ベルトが拡径方向の力を受け、これが一定の限度を超えると第2固定手段の固定状態が解除されることになる。これにより、周長の短い第2の円環状態にあった締結ベルトが、それよりも周長の長い第1の円環状態にまで拡径するとともに、それまでは比較的密に巻回されていたシート材も弛緩して、第1の円環状態が許容する範囲まで広がることになる。
【0015】
このように、本発明においては、輸送管破裂時には、そのときの圧力エネルギーの一部が第2固定手段の解除に消費されるため、まずは、これによって衝撃が緩和される。そして、第2固定手段が解除されると、締結ベルトは輸送管の外周長よりも長い周長の第1の円環状態まで拡径されることになり、それによってシート材の巻回も弛緩して拡径する余裕が生じる。この結果、シート材と輸送管との間にスペースが生まれることになり、漏れ出たスラリーはここに収容されることになる。これによりスラリーの飛散が防止される。
【0016】
なお、本発明においては、第2の円環状態にある締結ベルトに対して拡径方向に一定以上の力が作用したときに第2固定手段による固定が解除されて第2の円環状態が第1の円環状態に拡径するようになっていればよく、第2固定手段による固定が解除されるための具体的構成や具体的手段は問わない。例えば、第2固定手段による固定が係合の場合は、係合が外れて固定が解除されるように構成されていてもよいし、第2固定手段自体が破断して固定が解除されるように脆弱に構成されていてもよい。また、現に固定のための直接的な操作が施された箇所自体において固定が解除される場合だけでなく、当該箇所以外の箇所で固定が解除される場合も含む。つまり、第2固定手段による固定が解除されることで全体として第2の円環状態を維持できなくなるようになっていればよい。
【0017】
本発明にいう「拘束」には、いわゆる緊縛された状態だけでなく、それよりも緩く縛る場合も含まれる。第2の円環状態にある締結ベルトによってどの程度シート材を拘束するかは任意である。
【0018】
本発明においては、その好適な実施態様の一つとして、前記シート材を前記輸送管に巻き付けたときの巻回の最内端から最外端までの長さが前記第1の円環状態の周長より長くなるように構成することができる。例えば、シート材が平面展開状態において矩形状に形成されている場合に、その長手方向を輸送管の管軸方向に沿わせて輸送管に巻き付けたとすると、それと直交する方向に当たる短手方向の長さが第1の円環状態の周長より長くなるように構成することができる。
【0019】
一般に、第2固定手段が解除されて締結ベルトが第1の円環状態まで拡径された場合、輸送管に巻き付けられたシート材の巻回が弛緩して拡径するが、それが広がる余地は第1の円環状態にある締結ベルトによって許容される範囲までである。それ以上のシート材の広がりは第1の円環状態にある締結ベルトによって阻止される。このように、第2固定手段が解除されて締結ベルトが第1の円環状態まで拡径するとシート材の巻回も弛んで広がることになるが、上記のように構成した場合は、たとえ巻回が弛んでもシート材にはオーバーラップ部分が存在することになるため、このオーバーラップ部分によってスラリーの飛散を防止することができる。
【0020】
本発明においては、その好適な実施態様の一つとして、前記シート材の一側の縁部に複数のハトメを設けてもよい。この場合、ハトメはシート材を輸送管に巻き付けたときにその最表面に位置するように巻回の最外端側の縁部に設けることが好ましく、締結ベルトはこのハトメに挿通させた上で固定される。
【0021】
輸送管破裂時の衝撃によって締結ベルトが輸送管の管軸方向に横ずれを起こすと、輸送管に巻き付けたシート材が部分的に弛んだり、解けたりして、その隙間から外部にスラリーが飛散するおそれがある。しかし、上記のように締結ベルトをハトメに挿通させてシート材に固定することにより、このような締結ベルトの横ずれを防止することができる。
【0022】
本発明においては、その好適な実施態様の一つとして、前記シート材がその一方の面にクッション層を有するクッション層付きシート材であってもよい。そして、このクッション層が内側となるように前記輸送管に巻き付けるようにしてもよい。
【0023】
このように構成した場合は、シート材を輸送管に比較的密着させた状態で巻き付けながら、輸送管破裂時にはクッション層が圧縮することにより外側シート材と輸送管との間にスラリーを収容するスペースが形成されるため、すっきりした外観と輸送管破裂時の衝撃緩和という2つの目的の達成がさらに容易になる。また、クッション層による防音効果や遮熱効果も奏する。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、締結ベルトの固定の方法・態様を工夫して、輸送管破裂時の圧力エネルギーの一部を第2固定手段の解除に消費させる一方、第2固定手段の解除によってシート材と輸送管との間にスラリーを収容するスペースが生じるようになっているため、両者の相乗効果によってスラリーの飛散を防止することができる。
【0025】
また、通常時は第2固定手段よって比較的密着した状態でシート材が輸送管を被覆しているため、だぶついたシート材によって作業が邪魔されたり、それが強風に煽られてばたついたりすることを防止することができる。
【0026】
さらに、本発明は、シート材を輸送管に巻き付けてその管軸方向に沿う複数箇所を締結ベルトで固定することにより輸送管に装着するものであるから、既設の輸送管にも後付けで装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る生コン飛散防止装置の斜視図。
図2】(A)は上記実施形態に使用されるシート材の平面図、(B)は同シート材の断面図。
図3】上記実施形態に使用される締結ベルトの平面図。
図4図1における締結ベルトの締結部分の拡大図
図5】上記締結部分の断面図。
図6】上記実施形態における締結ベルトの固定(締結)の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は本発明の実施形態に係る生コン飛散防止装置1の斜視図であり、生コン圧送用輸送管2にシート材3を巻き付けて輸送管2全体を被覆し、その管軸方向に沿う複数箇所を締結ベルト5で固定した状態を示している。
【0030】
《1》輸送管
生コン圧送用輸送管2には、口径・長さ・肉厚等の点において様々な種類・大きさ・寸法のものがあるが、本実施形態が適用される輸送管2はその種類・大きさ・寸法を問わない。また、生コン圧送用輸送管2には、主に地上に設置されるものとコンクリートポンプ車のブーム部分に設けられるものとがあるが、本実施形態の生コン飛散防止装置1はそのいずれにも適用することができる。以下では特に両者を区別せず、単に輸送管と総称して説明する。
【0031】
《2》シート材
シート材3は、図2(A)に示すとおり、平面展開状態において矩形状のシート材であり、外側シート材3aと内側クッション層3bという二層構造を有する。シート材3の一方の長辺の縁部には長円形状のハトメ4が一定間隔を置いて一列に整列して設けられている。
【0032】
このうち、外側シート材3aも平面展開状態で矩形状に形成されており、その大きさ・寸法は輸送管2の寸法に応じて様々な大きさ・寸法にすることができる。一例として縦700~1200mm、横2940mmの大きさである。なお、本実施形態では、シート材3の長手方向(長辺に沿う方向)を輸送管2の管軸方向と合致させてシート材3を輸送管2に巻き付けるようになっている。また、それと直交する方向に当たる短手方向の長さ(短辺の長さ)は締結ベルト5の全長よりも十分に長くなるように形成されている(この点の技術的意義については後述する)。
【0033】
外側シート材3aに用いられるシート材としては、耐候性・遮熱性・防水性に優れたもの、例えばテント倉庫やトラックの幌等に用いられるテント材又はテント生地と呼ばれるものが好ましいが、それに限定されるものではない。外側シート材3aの素材についても特に限定されないが、一例として、ポリエステル製の基布をポリ塩化ビニルでコーティングした合成樹脂補強繊維シートを挙げることができる。さらに、外側シート材3aの機械的特性についても特に限定されないが、JIS L 1096 A法(ストリップ法)による引張強さが縦横ともに1300N/3cm以上、同じくJIS L 1096 A法(ストリップ法)による伸び率が縦横ともに20%以上、JIS L 1096 A法(シングルタング法)による引裂強さが縦横ともに80N以上の生地が好ましい。また、外側シート材3aの厚さについても特に限定されないが、一例を挙げると0.4~1mmである。なお、外側シート材3aの周囲の縁部、特にハトメ4が設けられた側の縁部は、補強のために生地を重ねて縫合する等の端部処理が施されていることが好ましい。
【0034】
内側クッション層3bも平面展開状態で矩形状に形成されている。その素材についても、クッション性を有していれば特に限定されないが、一例としてエチレン・プロピレンゴム製の発泡体を挙げることができる。内側クッション層3bの厚さについても特に限定されないが、一例を挙げると3~5mmである。
【0035】
このような外側シート材3aと内側クッション層3bとが一体化されて本実施形態のシート材3が形成されている(図2(B)参照)。両者を一体化する手段は特に限定されない。本実施形態では、外側シート材3aの各辺の縁部を除いて内側クッション層3bが設けられており、これによりシート材3は一方の面にクッション層3bを有するクッション層付きシート材として構成されている。
【0036】
《3》締結ベルト
本実施形態の締結ベルト5は、図3に示すとおり、長尺状のベルト本体6とバックル部8とを備える。ベルト本体6は合成繊維製の高強度の帯状体であり、その一端にバックル部8が設けられている。後述するように、締結ベルト5はシート材3を巻き付けた輸送管2の外周を周回させた上で締結されるものであるから、その長さは輸送管2の外周長よりも十分に長くなるように形成されている。
【0037】
ベルト本体6には、2個を1組とする孔部が2組、したがって合計4個の孔部7a~7dが穿設されている。この孔部7a~7dの目的ないし機能については後述する。なお、孔部の個数については4個に限定されず、通常のズボン用の腰ベルトのように一定間隔を置いて複数個の孔部(4個を超える孔部)が設けられていてもよい。
【0038】
バックル部8は、矩形状の枠体9と、この枠体9に対して摺動可能な掛止部10とを備える。本実施形態における枠体9及び掛止部10はいずれも金属製である。ベルト本体6の一端はこの枠体9の一辺を内に抱き込むようにして折り返した上で縫合されており、これによって両者はバックル部8が揺動自在な態様で一体化されて連結されている。掛止部10は、枠体9の内部をベルト本体6の長手方向に沿って摺動自在に構成されている。掛止部10の表面には、滑り止めのためにローレット加工が施されている。
【0039】
この締結ベルト5を締結するには、バックル部8が設けられていない側のベルト本体6の端部をバックル部8に近付けて全体を円環状にし、同端部を枠体9と掛止部10との間の第1の隙間S1に挿通させた上、掛止部10を内に抱き込むようにして折り返し、枠体9と掛止部10との間の第2の隙間S2を挿通させる。これにより締結ベルト5は任意の位置で固定することができ、所望の周長の円環を形成することができる(以上につき図3~5参照)。
【0040】
《4》締結ベルトの固定
このようにして形成した円環によって対象物を縛り付けるのが締結ベルト5の通常の使用方法である。本実施形態では、このバックル部8による固定に加えて、さらに以下のような態様の固定も重畳的に用いる。
【0041】
具体的には、上記のように締結ベルト5をバックル部8によって固定した上で(図6(A)参照。このとき締結ベルト5は円環状態C1にある)、図6(B)に示すように、その円環C1の一部を短絡させて、より周長の短い円環状態C2を形成する。このとき、そこに含まれなかった余剰部分Rに孔部7cと7dとが含まれるようにしておく。その上で、図6(C)のように余剰部分Rを折り返して、より周長の短い円環C2の外周部に重ね合わせる。このとき、孔部7b、7c及び7dの各位置がほぼ合致するようにする。次いで、図6(D)に示すように、結束バンド11を孔部7aと、孔部7b、7c及び7dとの間に掛け渡して固定する。これにより、折り返した余剰部分Rがもとの状態に戻らないようにするとともに、締結ベルト5をバックル部8のみで固定したときに形成される最初の円環状態C1よりも周長の短い円環状態C2も維持されることになる。
【0042】
つまり、本実施形態では、締結ベルト5をバックル部8によって固定した上で、その円環C1の一部を短絡させてより周長の短い円環状態C2を形成し、この状態を維持するように結束バンド11で固定するという方法・態様で固定するものである。このバックル部8によって固定したときに形成される円環状態C1が本発明の「第1の円環状態」に相当し、結束バンド11で固定することにより形成される、より周長の短い円環状態C2が本発明の「第2の円環状態」に相当する。また、バックル部8が本発明の「第1固定手段」に相当し、結束バンド11が本発明の「第2固定手段」に相当する。
【0043】
さらに、本実施形態では、このようにしてバックル部8及び結束バンド11により2段階で固定した締結ベルト5に対して、その円環C2を拡径させる方向に力を作用させてゆくと、ある段階で、つまり一定以上の力が拡径方向に作用した段階で、バックル部8による固定よりも先に結束バンド11が破断するようになっている。
【0044】
《5》本実施形態の使用方法
以上のように各部材が構成された本実施形態の生コン飛散防止装置1は以下のように使用される。
まず、輸送管2全体を覆うようにシート材3を輸送管に巻き付ける。巻き付け回数は特に限定されないが、好ましくは1周を超えて2周未満の範囲であり、より好ましくは1周半以上1周3/4以下の範囲である。本実施形態では、シート材3を輸送管2の周りに約1周半巻き付けている。シート材3を巻き付けるに当たっては、クッション層3bが内側(輸送管側)となるように輸送管2に巻き付ける。また、その際、シート材3の長手方向(長辺に沿う方向)と輸送管2の管軸方向とを合致させるとともに、ハトメ4が設けられていない側の長辺が巻回の最内端となるようにシート材3を輸送管2に巻き付ける。これにより、ハトメ4がシート材3の最外端(最表面)に位置するとともに、輸送管2の管軸方向に沿って整列することになる。
【0045】
このようにしてシート材3を輸送管2に巻き付けて輸送管2全体を被覆した後、輸送管2の管軸方向に沿って一定間隔を置いた複数箇所に締結ベルト5を周回させて固定する。その際、締結ベルト5はハトメ4に挿通させた上で固定する。締結ベルト5で固定する間隔は特に限定されないが、本実施形態では50cm間隔としている。
【0046】
また、このときの締結ベルト5の固定は、前述したとおり、バックル部8によって締結ベルト5を固定した上で、その円環C1の一部を短絡させてより周長の短い円環状態C2を形成し、この状態を維持するように結束バンド11で固定するという方法及び態様で行う。本実施形態に即して再述すると、まず、シート材3で被覆された輸送管2の周りに締結ベルト5を巻き付けて輸送管2の外周長より十分に長い周長の第1の円環状態C1を形成し、バックル部8で固定する。次いで、その一部を短絡させてそれより短い周長の第2の円環状態C2を形成する。このとき、第2の円環状態C2によってシート材3が緊縛されるように調整する。その上で、結束バンド11を孔部7aと、孔部7b、7c及び7dとの間に掛け渡して固定する。これにより第2の円環状態C2が維持されるとともに、シート材3も巻回状態のまま輸送管2に密着して固定されることになる(図4・5参照)。
【0047】
以上のようにして本実施形態の生コン飛散防止装置1を装着した輸送管2を用いて通常の生コン圧送作業を行う。本実施形態の生コン飛散防止装置1では、輸送管2にシート材3を巻き付けてそれを被覆し、その管軸方向に沿う複数箇所を締結ベルト5で固定することにより輸送管2に装着するようになっているため、既設の輸送管2にも後付けで装着することができる。また、本実施形態の生コン飛散防止装置1は、輸送管2にシート材3を巻き付けた上で、その複数箇所を締結ベルト5で固定するものであるため、シート材3を輸送管2に可及的に密着させてすっきりした外観にすることができる。このため、だぶついたシート材3によって作業が邪魔されたり、それが強風に煽られてばたついたりすることを防止することができる。
【0048】
他方、輸送管破裂時には、噴出した生コンの圧力によって締結ベルト5が拡径方向の力を受けることになる。そして、それが一定の限度を超えると結束バンド11が破断して、それまでは周長の短い第2の円環状態C2にあった締結ベルト5がそれよりも周長の長い第1の円環状態C1にまで拡径する。それとともに、それまで拘束されていたシート材3の巻回も弛んで、第1の円環状態C1が許容する範囲まで広がることになる。この結果、シート材3と輸送管2との間にスペースが生まれることになり、輸送管2から漏れ出た生コンはここに収容されることになる。これによって生コンの飛散が防止される。
【0049】
また、結束バンド11が破断すると、生コンの圧力も作用してシート材3が膨れ上がるため、作業者は容易に輸送管2の破裂に気付くことができる。仮に発見が遅れた場合でも、一旦シート材3の内部に収容された生コンは圧力が低下しているため、外部に漏れ出たとしても、弛んだシート材の隙間を通って緩慢に外部に排出されることとなり、広範囲に勢いよく飛散するようなことはない。
【0050】
さらに、本実施形態のシート材3は、その短辺の長さが締結ベルト5の全長よりも十分に長く形成されているため、シート材3の短辺の長さは第1の円環状態C1の周長よりも長いことになる。このため、仮にシート材3の巻回が弛んで第1の円環状態C1によって許容される範囲までそれが広がったとしても、巻回が完全に解けるまでには至らず、シート材3には依然としてオーバーラップ部分が存在することになる。このオーバーラップ部分によっても生コンの飛散が防止される。
【0051】
また、本実施形態では、締結ベルト5をハトメ4に挿通させてシート材3に固定するようにしているため、輸送管破裂時の衝撃によって締結ベルト5が輸送管2の管軸方向に横ずれを起こすことを防止することができる。これにより、仮に結束バンド11が破断しても第1の円環状態C1にある締結ベルト5によって管軸方向に均等にシート材3を拘束することができ、広範囲にわたってシート材3が解けて開口することを防止できる。
【0052】
さらに、本実施形態では、シート材3をクッション層3bが内側となるように輸送管2に巻き付けているため、シート材3を輸送管2に可及的に密着させた状態で巻き付けながら、輸送管破裂時にはクッション層3bが圧縮することにより外側シート材3aと輸送管2との間に生コンを収容するスペースが形成されることになる。これにより、すっきりした外観と輸送管破裂時の衝撃緩和という2つの目的の達成がさらに容易になる。また、クッション層3bによる防音効果や遮熱効果も奏する。
【0053】
《6》変形例等
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、シート材の内側にクッション層が設けられていたが、シート材はクッション層付きシート材に限定されるものではない。上記実施形態では、シート材が外側シート材と内側クッション層という2層構造を有していたが、本発明のシート材は2層構造に限定されるものではない。1層構造でも、また、3層以上の多層構造であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、シート材にハトメが設けられていたが、本発明においてはハトメを設けることは必須ではない。また、ハトメを設ける場合であっても、一方の縁部だけでなく、両方の縁部に設けてもよい。上記実施形態では、ハトメが長円形に形成されていたが、ハトメの形状は長円形に限定されるものではない。
【0055】
上記実施形態では、シート材が矩形状に形成されていたが、本発明のシート材の形状は矩形状に限定されるものではない。また、上記実施形態では、シート材が矩形状である場合に、その長手方向(長辺に沿う方向)を輸送管の管軸方向と合致させて輸送管に巻き付けるようにしていたが、シート材の巻き付け方はそのような方法・態様に限定されるものではなく、例えば螺旋を形成するように巻き付けてもよい。
【0056】
上記実施形態では、締結ベルトの固定がバックル部による固定と結束バンドによる固定によって行われていたが、締結ベルトの固定はかかる態様に限定されるものではない。留め具を用いて固定する場合であっても、留め具の種類はバックルや結束バンドに限定されるものではない。さらに、バックル部による固定についても、上記実施形態のものに限定されるものではない。
【0057】
上記実施形態では、締結ベルトを固定するに当たって、先にバックル部を固定して第1の円環状態を形成した後、その一部を短絡させて結束バンドで固定することにより第2の円環状態を形成するという順に説明したが、先に結束バンドの方を固定し、その後バックル部を固定することにより第2の円環状態を形成してもよい。本発明における第2の円環状態は、先に第1固定手段を固定して第1の円環状態を形成した場合に、その一部を短絡させて第2固定手段で固定することにより形成可能であればよく、実際にシート材を縛るに当たって第1固定手段と第2固定手段のいずれを先に固定するかは問わない。
【0058】
さらに、本発明の第1及び第2固定手段は、それぞれ単一の固定手段に限られず、複数の固定手段からなっていてもよい。例えば、第2固定手段を例に説明すると、上記実施形態では第2固定手段として単一の結束バンドが用いられていたが、それに代えて複数個の固定手段(その具体的構成は問わない)によって第2の円環状態を維持するように構成してもよい。
【0059】
上記実施形態では、締結ベルトの固定がバックル部による固定と結束バンドによる固定という2段階の固定によって行われていたが、3段階以上の固定から行われるようにされていてもよい。この場合、対応する円環状態は周長の違いによって3種類以上存在することになるが、この場合、最も周長の短いもの(輸送管の外周長に最も近いもの)が本発明の「第2の円環状態」に相当し、それより周長の長いもの、例えばその次に周長が長いものが本発明の「第1の円環状態」に相当することになる。
【0060】
上記実施形態では、生コンを圧送するための輸送管(生コン圧送用輸送管)を例に説明したが、本発明は、生コン圧送用輸送管だけでなく、モルタルやセメントミルク、グラウト、泥水等、広くスラリーを圧送する輸送管にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 生コン飛散防止装置(スラリー飛散防止装置)
2 輸送管
3 シート材
3a 外側シート材
3b 内側クッション層
4 ハトメ
5 締結ベルト
6 ベルト本体
7a~7d 孔部
8 バックル部(第1固定手段)
9 枠体
10 掛止部
11 結束バンド(第2固定手段)
C1 第1の円環状態
C2 第2の円環状態
R 余剰部分
S1 第1の隙間
S2 第2の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6