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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190403
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】磁歪発電素子
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20221219BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02N2/18
H01F5/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098714
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将輝
(72)【発明者】
【氏名】山浦 憲
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 敏幸
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681BB08
5H681DD30
5H681EE10
(57)【要約】
【課題】発電量を高くすることが可能な磁歪発電素子を提供する。
【解決手段】磁歪発電素子1は、少なくとも一部に磁歪体を有する磁歪体ユニット2と、磁歪体に磁気バイアスを与える磁石と、コイルと、中空部5bを有し、磁歪体の少なくとも一部を中空部5b内に収めるボビン5と、を備える。ボビン5は、コイルが巻回された被巻回部5cを、中空部5bが設けられた部位の外周側に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に磁歪体を有する磁歪体ユニットと、
前記磁歪体に磁気バイアスを与える磁石と、
コイルと、
中空部を有し、前記磁歪体の少なくとも一部を前記中空部内に収めるボビンと、を備え、
該ボビンは、前記コイルが巻回された被巻回部を、前記中空部が設けられた部位の外周側に有することを特徴とする磁歪発電素子。
【請求項2】
前記磁歪体ユニットは、基端部と撓み部と、を有し、
前記ボビンは、前記被巻回部から離間する方向に延在する延在部を有し、
前記磁歪体ユニットの前記基端部は、前記延在部に固定されている請求項1に記載の磁歪発電素子。
【請求項3】
前記磁歪体ユニットは、基端部を含む第1片部と、撓み部を含んで返り側にあり、前記被巻回部が周囲に配設された第2片部と、前記第1片部と前記第2片部とに接続された折返し部と、を備えて、側面視U字状に形成されており、
前記ボビンは、前記被巻回部の両端部にフランジを有し、前記中空部に前記第2片部が通されており、
前記両端部に設けられた前記フランジの少なくとも一方には、前記第1片部が通される貫通孔が形成されている請求項1又は2に記載の磁歪発電素子。
【請求項4】
前記磁歪体ユニットは、前記ボビンの前記中空部内において、前記磁歪体ユニットに振動が生じたときの撓み量が小さい小振れ部と、前記磁歪体ユニットに振動が生じたときの撓み量が前記小振れ部よりも大きい大振れ部と、を備え、
前記ボビンにおいて前記中空部を画定し前記磁歪体ユニットの周囲を囲む内壁は、前記小振れ部に対向する部位から前記大振れ部に対向する部位に向かうにつれて、前記磁歪体ユニットの撓み方向に広がるように前記内壁同士の対向間隔が拡大している請求項1から3のいずれか一項に記載の磁歪発電素子。
【請求項5】
前記ボビンは、前記内壁の外周側にあり前記被巻回部を構成する外壁を有し、
前記外壁は、前記小振れ部に対向する部位から前記大振れ部に対向する部位に向かうにつれて、前記磁歪体ユニットの撓み方向に広がるように前記外壁同士の間隔が拡大している請求項4に記載の磁歪発電素子。
【請求項6】
前記コイルにおいて、前記被巻回部における前記小振れ部に対応する長さ領域に対する巻き数は、前記大振れ部に対応する長さ領域に対する巻き数よりも多い請求項5に記載の磁歪発電素子。
【請求項7】
前記ボビンは、前記コイルの両端部に対向する位置に一対のフランジを有し、
該フランジの少なくとも一方に前記コイルの端部を絡げるためのピンが設けられている請求項1から6のいずれか一項に記載の磁歪発電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から磁歪素子を発電素子とすることが知られている。
例えば、特許文献1には、U字型のフレーム(同文献には、フレームヨークと記載。)と、フレームに取り付けられた磁歪体(同文献には、磁歪板と記載。)と、フレーム及び磁歪体の周囲に巻回されたコイルと、を備える磁歪発電素子が開示されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の磁歪発電素子は、フレームの先端に錘等の振動時の共振周波数を調整可能な部品を備える。この磁歪発電素子に外力が加わることによって振動が生じた場合に、錘が上下に振動し、磁歪体が設けられたU字型のフレームの根本部分(U字の底部)が撓むと同時に、フレームの先端の振幅が大きくなり、周囲の磁場を変化させる。その変化した磁場によって、コイル内に電流が誘起されて発電がなされることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-78237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の磁歪発電素子においては、例えば、フレームと磁歪体の上に自己融着線を使った空芯コイルを挿入して、これらを接着剤で固定することがあった。この場合、発電量の観点で改善の余地があった。
【0006】
具体的には、コイルをフレーム及び磁歪体の周囲に直接配設せずに、フレーム及び磁歪体の振動(振幅)を阻害しないようにして発電量を高くする点で改善の余地があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発電量を高くすることが可能な磁歪発電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る磁歪発電素子は、少なくとも一部に磁歪体を有する磁歪体ユニットと、前記磁歪体に磁気バイアスを与える磁石と、コイルと、中空部を有し、前記磁歪体の少なくとも一部を前記中空部内に収めるボビンと、を備え、該ボビンは、前記コイルが巻回された被巻回部を、前記中空部が設けられた部位の外周側に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発電量を高くすることが可能な磁歪発電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る磁歪発電素子を示す斜視図である。
図2】磁歪発電素子の側面図である。
図3】磁石及び磁歪体ユニットを示す側面図である。
図4】フレームを示す斜視図である。
図5】ボビンを示す斜視図である。
図6】変形例に係る磁歪発電素子を示す斜視図である。
図7】変形例に係る磁歪発電素子を示す側面図である。
図8】コイルを一部複数巻きにした構成を示す、コイル周りの部分断面図である。
図9】第2実施形態に係る磁歪発電素子を示す斜視図である。
図10】第2実施形態に係る磁歪発電素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る磁歪発電素子1(1X)について説明する。
なお、本実施形態で用いる図面は、本発明の磁歪発電素子の構成、形状、磁歪発電素子を構成する各部材の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
また、図面は、磁歪発電素子1(1X)の長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
<<第1実施形態>>
<概要>
まず、本実施形態に係る磁歪発電素子1の概要について主に図1から図3を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る磁歪発電素子1を示す斜視図、図2は、磁歪発電素子1の側面図である。図3は、磁石7及び磁歪体ユニット2を示す側面図である。
なお、図1においてはコイル6を省略して示しており、図1及び図2においては、磁歪体4(図3参照)及び磁石7(図3参照)を省略して示している。
【0012】
本実施形態に係る磁歪発電素子1は、少なくとも一部に磁歪体4を有する磁歪体ユニット2と、磁歪体4に磁気バイアスを与える磁石7(図3参照)と、コイル6と、中空部5bを有し、磁歪体4の少なくとも一部を中空部5b内に収めるボビン5と、を備える。
ボビン5は、コイル6が巻回された被巻回部5cを、中空部5bが設けられた部位の外周側に有することを特徴とする。
【0013】
「磁歪体ユニット2」としては、U字状に形成された磁性材料であるフレーム3と、磁歪体4とによって構成されるものに限定されない。例えば、フレーム3は、直線的に形成され、片持ち状態で他の部材に保持されるものであっても、両持ち状態で他の部材に保持されるものであってもよい。さらには、フレーム3自体が磁歪材料(鉄ガリウム合金や、鉄コバルト合金等)によって形成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、コイル6がボビン5に取り付けられていることで、コイル6が接着剤を介して磁歪体ユニット2に直接接続されているものと異なり、磁歪体ユニット2の撓み方向の振動をコイル6が制限しないため、発電量を高くすることができる。発電された電流は、コイル6の巻き線の両端がそれぞれ電気的に接続された出力回路(図示せず)を通じて外部に取り出される。
また、上記構成によれば、接着剤を必要とせず、接着剤の在庫管理や、その塗布量の調整が不要であり、接着剤の剥離等の問題も生じない。
さらには、磁歪体ユニット2に装着する前段階でボビン5にコイル6を巻回することができ、コイル6の巻回が容易になり、また、空芯のコイル6をフレーム3に取り付ける場合とは異なり、コイル6の巻線を傷つけることがない。
【0015】
(磁歪体ユニット)
次に、磁歪体ユニット2について、図3に加え、図4を主に参照して説明する。図4は、フレーム3を示す斜視図である。
本実施形態に係る磁歪体ユニット2は、上記のように、磁性材料であり側面視U字状の板バネであるフレーム3と、フレーム3の上面に取り付けられ、磁歪材料(本実施形態においては鉄ガリウム合金)であり板状の磁歪体4と、によって構成されている。
磁歪体4は、外力が付加されたときに、その内部に生じる圧縮応力又は引張応力によって変形し、変形により磁束を変化させる逆磁歪効果を備えている。
【0016】
フレーム3と磁石7とによって、図3に示す磁石7、図1に示すフレーム3の第1片部3c、折返し部3e、第2片部3d、及び磁石7と第2片部3dとの間のギャップを通る磁気回路が形成されている。このほか、フレーム3の第2片部3dに非接触に近接する位置に補助磁石(図示せず)を配置してもよい。
フレーム3の第2片部3dに外力が付加されて振動することにより、磁石7とフレーム3に取り付けられた磁歪体4とのギャップにおける磁気抵抗が増減することで、コイル6内部を通過する磁束の変化量が増加することになる。
【0017】
図1に示すように、磁歪体ユニット2は、基端部3aと撓み部3bと、を有する。基端部3aは、振動する磁歪体ユニット2(フレーム3)における固定端となる側の一部長さ領域である。撓み部3bは、長尺の磁歪体ユニット2の長手方向に関して基端部3aの反対側であり、振動する磁歪体ユニット2(フレーム3)における自由端となる先端側の一部長さ領域である。撓み部3bは外力が付与されて加振される部位であり、磁歪体ユニット2(フレーム3)の振動時に基端部3aよりも大きな撓みが発生する。
【0018】
なお、図1に示すように、後述するボビン5の延在部5dに取り付けられるフレーム3の基端部3aには、左右方向中央において端面から長手方向にスリット3hが形成されている。このスリット3hは、ボビン5と不図示の固定具により共締めするためのものであり、ボビン5のスリット5nに上下に重なる位置に、同じ形状で形成されている。
一方、撓み部3bの先端にもスリットが形成されている。このスリットには錘(図示せず)をネジ等で固定することができる。錘を撓み部3bの先端に取り付けることでフレーム3の共振周波数を所望に調整することができる。
【0019】
本実施形態の磁歪体ユニット2は、基端部3aを含む第1片部3cと、撓み部3bを含んで返り側にあり、ボビン5の被巻回部5cが周囲に配設された第2片部3dと、第1片部3cと第2片部3dとに接続された折返し部3eと、を備えて、側面視U字状に形成されている。
第2片部3dにおける磁歪体4が取り付けられる部位は、他の部位よりも幅の狭い幅狭部3iとなっており、剛性が低められて撓みやすく形成されている。この幅狭部3iの周囲にボビン5におけるコイル6が巻回される被巻回部5cが配設されている。
【0020】
(ボビン)
次に、本実施形態に係るボビン5について、図1及び図2に加え、図5を主に参照して説明する。図5は、ボビン5を示す斜視図である。
本実施形態に係るボビン5は、磁歪体ユニット2を挿通させて、寸動型の被巻回部5cの外周にコイル6が取り付けられるものであり、例えば非弾性の樹脂材料で形成されている。
【0021】
図1に示すように、ボビン5は、被巻回部5cから離間する方向に延在する延在部5dを有する。磁歪体ユニット2(フレーム3)の基端部3aは、延在部5dに固定されている。なお、本実施形態においては、フレーム3は、基端部3a以外でボビン5に固定されておらず、振動発電中においても接触しないように構成されている。
【0022】
「被巻回部5cから離間する方向」とは、本実施形態においては、ボビン5のフランジ5eに直交する方向のうち、被巻回部5cから離間する方向である。延在部5dは、フランジ5eに直交する方向であって被巻回部5cから離間する方向に、フランジ5eの下端から延在している。
【0023】
上記構成によれば、磁歪体ユニット2(フレーム3)の基端部3aがボビン5の延在部5dに固定されていることで、ボビン5における、フランジ5eに直交する方向のうち被巻回部5cから離間する方向(軸心方向)の磁歪体ユニット2に対する相対的な移動を抑制できる。また、磁歪発電素子1を他の機器にまとめて搭載しやすくなる。
【0024】
また、上記のように、ボビン5が非弾性材料によって構成されていることで、図1に示すボビン5の延在部5dに固定されたフレーム3の基端部3aに伝わる振動が吸収されることを抑制できる。
【0025】
ボビン5は、被巻回部5cの両端部にフランジ5e、5fを有し、中空部5bに第2片部3dが通されている。両端部に設けられたフランジ5e、5fの少なくとも一方、本実施形態においてはフランジ5eには、第1片部3cが通される貫通孔5aが形成されている。
また、フランジ5eに貫通孔5aが形成されていることで、U字状に形成された磁歪体ユニット2にボビン5を簡単に取り付けることができる。
【0026】
また、本実施形態に係るフランジ5fの下側の二隅には、下方に突出する一対の脚部5jが形成されている。第1片部3cのうち、貫通孔5aに通される部位よりも折返し部3e側の部位が、一対の脚部5jの間に通されている。
【0027】
磁歪体ユニット2の第2片部3dは、ボビン5の中空部5bの中央部を貫通するように取り付けられている。つまり、第2片部3dの上下空間が空けられるように、第2片部3dは、中空部5bを貫通するように配設されている。このため、中空部5bは、第2片部3dの振動時の動作空間として利用される。
【0028】
このような構成により、ボビン5と磁歪体ユニット2(フレーム3)の第2片部3dが接触しないため、ボビン5は第2片部3dの振動を阻害しないため、発電量が増加する。さらに、ボビン5の中空部5bを画定する内壁は、第2片部3dを覆っていることで、磁歪体ユニット2の過当な振動を抑える止め具として利用できる。
【0029】
<変形例>
次に変形例に係るボビン5について、図6から図8を主に参照して説明する。図6は、変形例に係る磁歪発電素子を示す斜視図、図7は、変形例に係る磁歪発電素子を示す側面図である。図8は、コイル6を一部複数巻きにした構成を示す、コイル6周りの部分断面図である。
なお、図6においてはコイル6を省略して示しており、図6及び図7においては、磁歪体4(図3参照)及び磁石7(図3参照)を省略して示している。
【0030】
図7に示すように、磁歪体ユニット2(フレーム3)は、ボビン5の中空部5b内において、磁歪体ユニット2に振動が生じたときの撓み量が小さい小振れ部3fと、磁歪体ユニット2に振動が生じたときの撓み量が小振れ部3fよりも大きい大振れ部3gと、を備える。小振れ部3fおよび大振れ部3gは第2片部3d(図1参照)の一部であり、大振れ部3gは第2片部3dにおける基端側、すなわち第2片部3dのうち折返し部3eに近接する位置にある。
ボビン5において中空部5bを画定し磁歪体ユニット2(フレーム3)の周囲を囲む内壁5gは、小振れ部3fに対向する部位から大振れ部3gに対向する部位に向かうにつれて、磁歪体ユニット2(フレーム3)の撓み方向に広がるように内壁5g同士の対向間隔が拡大している。
つまり、内壁5gによって確定される中空部5bは、切頭四角錘状(側面視台形状)に形成されている。
【0031】
このようにボビン5の内壁5gが形成されていることで、図7において二点鎖線でフレーム3が上下に撓んだときの上限及び下限を示すように、フレーム3の撓みの上限及び下限との長尺方向における内壁5gとの距離の差を確保できる。つまり、磁歪体ユニット2(フレーム3)が撓んだときに、その撓みによってボビン5の内壁5gに磁歪体ユニット2が当接して、磁歪体ユニット2の振動を阻害することを抑制できる。このため、逆磁歪効果を高め、及び磁石7とフレーム3との磁気ギャップの増減を大きくして、磁歪発電素子1による発電量を増加させることができる。
【0032】
図6に示すように、ボビン5は、内壁5gの外周側にあり、被巻回部5cを構成する外壁5hを有する。外壁5hは、小振れ部3fに対向する部位から大振れ部3gに対向する部位に向かうにつれて、磁歪体ユニット2の撓み方向に広がるように外壁5h同士の間隔が拡大している。
【0033】
つまり、本実施形態に係るボビン5のフランジ5e、5fの間にある外壁5h(被巻回部)は、切頭四角錘状(側面視台形状)に形成されている。
すなわち、外壁5hの4面の内、2つの対向側面が平行に形成されており、残りの2つの対向する上下面は長手方向を沿って、折返し部3e(図4参照)に向かうにつれて収束するように形成されている。
【0034】
このように外壁5hが形成されていることで、振動によって撓む磁歪体ユニット2の小振れ部3fと大振れ部3gの両部位に、図7に示すようにコイル6に近づけることができるため、磁束密度の変化を大きくでき、コイル6による誘導起電力を高めることができる。
【0035】
図8に示すように、コイル6において、被巻回部5cにおける小振れ部3fに対応する長さ領域に対する巻き数は、大振れ部に対応する長さ領域に対する巻き数よりも多いと好適である。
【0036】
例えば、本例におけるコイル6は、ボビン5の軸心方向において、フランジ5eから中央まで一重巻きとなっており、中央からフランジ5fにかけて二重巻きとなっており、外面は平たくなるように配設されている。
なお、このような構成に限定されず、コイル6の線径やその軸心方向の長さに応じて、巻き数や、巻き数が異なる部位の長さを変更してもよい。
【0037】
上記構成によれば、ボビン5の外壁5hよりも外側にあるスペースを利用して、コイル6を好適に配設することで、コイル6の誘導起電力を大きくすることができる。
特に、歪が大きくなる第2片部3dの基端側(折返し部3e側)にある小振れ部3fに対応する長さ領域に対する巻き数が多いことで、磁歪体4による逆磁歪効果による磁束密度の変化の影響を高めることができる。
【0038】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態に係る磁歪発電素子1Xについて、図9及び図10を主に参照して説明する。図9及び図10は、第2実施形態に係る磁歪発電素子1Xを示す斜視図である。なお、図9においては磁歪体4(図3参照)の図示を省略している。また、図9及び図10においては、コイル6の巻線の図示を省略している。
【0039】
磁歪発電素子1Xが備えるボビン15は、コイル6の両端部に対向する位置に一対のフランジ15e、15fを有する。
フランジ15e、15fの少なくとも一方(本実施形態においてはフランジ15f)にコイル6の端部を絡げるためのピン10が設けられている。
上記構成によれば、コイル6の端部をピン10に絡げ、導線とともにはんだ付けして、他の素子に電力を供給することができ、導線が断線することを抑制できる。
【0040】
本実施形態におけるフランジ15fは、左右方向に間隔を空けて設けられ軸心方向外側に突出する一対の略直方体状の突出部15iを有する。この一対の突出部15iそれぞれの上面にピン10が設けられている。
このように突出部15iによって軸心方向に肉厚に形成された部位にピン10が設けられていることで、磁歪発電素子1Xに振動が付加されたときにおいても、ピン10がフランジ15fから折れたりすることを抑制できる。
【0041】
なお、コイル6の両端部に対向するフランジ15e、15fにピン10が設けられていればよく、本発明は上記の構成に限定されない。例えばピン10は、フランジ15eのみに設けられていてもよく、フランジ15e、フランジ15fの双方に設けられていてもよく、上方に限定されず軸心方向や左右方向に突出して形成されていてもよい。
【0042】
フランジ15eの上側から上側延出部15j、下端部から下側延出部15kが長尺方向基端側に延在して形成されている。具体的には、下側延出部15kは、板状に形成されており、上側延出部15jよりも長く延在している。
下側延出部15kの上面には、平面視矩形状の凹部15mが形成されている。凹部15m内に、フレーム3の基端部3aが収容される。また、凹部15mにおける、フレーム3のスリット3hに重なる位置に、取付穴15nが上下に貫通して形成されている。この取付穴15nは、フレーム3のスリット3hとともに、不図示の固定具が通されることにより共締めされる。
【0043】
なお、本発明の磁歪発電素子に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0044】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
少なくとも一部に磁歪体を有する磁歪体ユニットと、
前記磁歪体に磁気バイアスを与える磁石と、
コイルと、
中空部を有し、前記磁歪体の少なくとも一部を前記中空部内に収めるボビンと、を備え、
該ボビンは、前記コイルが巻回された被巻回部を、前記中空部が設けられた部位の外周側に有することを特徴とする磁歪発電素子。
(2)
前記磁歪体ユニットは、基端部と撓み部と、を有し、
前記ボビンは、前記被巻回部から離間する方向に延在する延在部を有し、
前記磁歪体ユニットの前記基端部は、前記延在部に固定されている(1)に記載の磁歪発電素子。
(3)
前記磁歪体ユニットは、基端部を含む第1片部と、撓み部を含んで返り側にあり、前記被巻回部が周囲に配設された第2片部と、前記第1片部と前記第2片部とに接続された折返し部と、を備えて、側面視U字状に形成されており、
前記ボビンは、前記被巻回部の両端部にフランジを有し、前記中空部に前記第2片部が通されており、
前記両端部に設けられた前記フランジの少なくとも一方には、前記第1片部が通される貫通孔が形成されている(1)又は(2)に記載の磁歪発電素子。
(4)
前記磁歪体ユニットは、前記ボビンの前記中空部内において、前記磁歪体ユニットに振動が生じたときの撓み量が小さい小振れ部と、前記磁歪体ユニットに振動が生じたときの撓み量が前記小振れ部よりも大きい大振れ部と、を備え、
前記ボビンにおいて前記中空部を画定し前記磁歪体ユニットの周囲を囲む内壁は、前記小振れ部に対向する部位から前記大振れ部に対向する部位に向かうにつれて、前記磁歪体ユニットの撓み方向に広がるように前記内壁同士の対向間隔が拡大している(1)から(3)のいずれか一項に記載の磁歪発電素子。
(5)
前記ボビンは、前記内壁の外周側にあり前記被巻回部を構成する外壁を有し、
外壁は、前記小振れ部に対向する部位から前記大振れ部に対向する部位に向かうにつれて、前記磁歪体ユニットの撓み方向に広がるように前記外壁同士の間隔が拡大している(4)に記載の磁歪発電素子。
(6)
前記コイルにおいて、前記被巻回部における前記小振れ部に対応する長さ領域に対する巻き数は、前記大振れ部に対応する長さ領域に対する巻き数よりも多い(5)に記載の磁歪発電素子。
(7)
前記ボビンは、前記コイルの両端部に対向する位置に一対のフランジを有し、
該フランジの少なくとも一方に前記コイルの端部を絡げるためのピンが設けられている(1)から(6)のいずれか一項に記載の磁歪発電素子。
【符号の説明】
【0045】
1、1X 磁歪発電素子
2 磁歪体ユニット
3 フレーム
3a 基端部
3b 撓み部
3c 第1片部
3d 第2片部
3e 折返し部
3f 小振れ部
3g 大振れ部
3h スリット
3i 幅狭部
4 磁歪体
5 ボビン
5a 貫通孔
5b 中空部
5c 被巻回部
5d 延在部
5e、5f フランジ
5g 内壁
5h 外壁
5j 脚部
5n スリット
6 コイル
7 磁石
10 ピン
15 ボビン
15e、15f フランジ
15i 突出部
15j 上側延出部
15k 下側延出部
15m 凹部
15n 取付穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10