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特開2022-190414鋼コンクリート合成構造及びそれに用いられる鋼材の接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190414
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】鋼コンクリート合成構造及びそれに用いられる鋼材の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/03 20060101AFI20221219BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E04C5/03
E04B1/41 503Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098728
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】沖田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】可児 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
【テーマコード(参考)】
2E125
2E164
【Fターム(参考)】
2E125AB01
2E125AC01
2E125AC15
2E125AG02
2E125AG06
2E164AA02
(57)【要約】
【課題】加工の手間を省き、鋼材とコンクリートとの付着性能を高める。鋼材の接合における加工手間や作業手間を省略する。
【解決手段】鋼コンクリート合成構造1の芯材として、フランジ4の外面に所定パターンの突起6を備えた縞H形鋼2を用いる。縞H形鋼2の接合端部に跨がるフランジ4の外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板10及び内面側添接板11を設けるとともに、前記外面側添接板10と前記縞H形鋼2のフランジ4外面との間に易変形板12を配置する。前記外面側添接板10、易変形板12、縞H形鋼2のフランジ4及び内面側添接板11を一体にボルトで締結し、前記易変形板12を前記縞H形鋼2のフランジ4外面に形成された突起6のパターンに合わせて変形させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼コンクリート合成構造の芯材として、フランジの外面に所定パターンの突起を備えた縞H形鋼が用いられていることを特徴とする鋼コンクリート合成構造。
【請求項2】
前記突起のパターンは、縞H形鋼の軸方向及び幅方向に沿う格子状である請求項1記載の鋼コンクリート合成構造。
【請求項3】
添接板が設けられる範囲のフランジの内面には突起が形成されていない請求項1、2いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造。
【請求項4】
上記請求項1~3いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造であって、
縞H形鋼の接合端部に跨がるフランジの外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板及び内面側添接板が設けられるとともに、前記外面側添接板と前記縞H形鋼のフランジ外面との間に易変形板が配置され、
前記外面側添接板、易変形板、縞H形鋼のフランジ及び内面側添接板が一体にボルトで締結され、前記易変形板が前記縞H形鋼のフランジ外面に形成された突起のパターンに合わせて変形していることを特徴とする鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造。
【請求項5】
上記請求項1~3いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造であって、
縞H形鋼の接合端部に跨がるフランジの外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板及び内面側添接板が設けられるとともに、前記外面側添接板の前記縞H形鋼のフランジ外面と対向する面にパテ材が塗布され、
前記外面側添接板、縞H形鋼のフランジ及び内面側添接板が一体にボルトで締結され、前記パテ材が前記縞H形鋼のフランジ外面に形成された突起のパターンに応じて変形した状態で硬化していることを特徴とする鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造。
【請求項6】
上記請求項1~3いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造であって、
一方の前記縞H形鋼のウェブの両側にそれぞれ、ウェブと平行する連結プレートが接合端面から突出した状態で設けられ、
他方の前記縞H形鋼のウェブの両側にそれぞれ、2枚の伝達プレートを前記連結プレートが嵌入可能な離隔幅を空けて配置することにより接合端面に向けて開口するスリット部が形成され、
前記スリット部に前記連結プレートを挿入した状態で、ウェブの両側に配置された前記伝達プレート及び連結プレートと縞H形鋼のウェブとが一体にボルトで締結されていることを特徴とする鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジの外面に所定パターンの突起が形成された縞H形鋼を芯材として用いた鋼コンクリート合成構造及びそれに用いられる鋼材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼コンクリート合成構造において、芯材としてH形鋼を用いたとき、その周囲に充填されるコンクリートとの付着性能を高めるため、H形鋼に様々な加工を施すことが提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、フランジ外面およびウェブ両面に複数の突起が設けられている突起付H形鋼が開示され、下記特許文献2には、内面側に複数の突起を有する形鋼が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-4494号公報
【特許文献2】特開2005-98059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載されたH形鋼は、フランジ外面やウェブ両面或いはフランジ内面に複数の突起が設けられているため、H形鋼に形成された突起とコンクリートとの噛み込みによって、鋼材とコンクリートとの間において充分な付着力が得られるようになる。
【0006】
しかしながら、前記突起が圧延や溶接によって設けられているため、圧延の場合には、既製のH形鋼に圧延を施す加工コストが増大し、溶接の場合には、長いH形鋼に突起を一個ずつ溶接するのに多大な手間がかかり、製作コストが嵩む問題があった。
【0007】
そこで本発明の第1の課題は、加工の手間を省き、鋼材とコンクリートとの付着性能を高めた鋼コンクリート合成構造を提供することにある。
【0008】
また、従来のH形鋼同士を連結する接合構造は、フランジ及びウェブの各両面に添接板を設け、これら添接板及びH形鋼を一体に高力ボルトで締結する構造が用いられる。ところが、H形鋼として前記突起付きのものを用いた場合には、添接板とH形鋼との接触が突起の先端部のみとなるため、H形鋼と添接板との摩擦力が極めて小さくなる問題があった。このため、(1)添接板を取り付ける範囲の突起を削除してH形鋼の外面を平坦にする、(2)通常よりも添接板を大きくし、添接板と突起先端との接触面積を増大するとともに、高力ボルトの数を増加して締め付け力を増大する、などの対策を講じることによって、摩擦力を増大させるのが一般的であった。
【0009】
ところが、上記(1)の対策では、突起を削除するためのH形鋼の加工に手間がかかる問題があり、上記(2)の対策では、締め付けるボルトの数が多くなり、現場での作業に手間がかかる問題があった。
【0010】
そこで本発明の第2の課題は、鋼材の接合における加工手間や作業手間を省略した鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記第1の課題を解決するために請求項1に係る本発明として、鋼コンクリート合成構造の芯材として、フランジの外面に所定パターンの突起を備えた縞H形鋼が用いられていることを特徴とする鋼コンクリート合成構造が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、鋼コンクリート合成構造の芯材として、フランジの外面に所定パターンの突起を備えた縞H形鋼を用いている。前記縞H形鋼は、主に路面覆工板として用いられ、フランジの外面に滑り止め用の複数の突起が設けられたものである。このように縞H形鋼のフランジ外面には、予め所定パターンの突起が設けられているため、コンクリートとの付着性能向上のための突起を設けるための加工を別途施すことなく、鋼材とコンクリートとの付着性能が向上できる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記突起のパターンは、縞H形鋼の軸方向及び幅方向に沿う格子状である請求項1記載の鋼コンクリート合成構造が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、縞H形鋼の突起のパターンとして種々存在する中で、コンクリートとの付着性能を向上させる観点から、縞H形鋼の軸方向及び幅方向に沿う格子状のものを使用している。
【0015】
請求項3に係る本発明として、添接板が設けられる範囲のフランジの内面には突起が形成されていない請求項1、2いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、縞H形鋼の接合端部に跨がる添接板を設けた場合において、前記添接板が設けられる範囲のフランジの内面に突起を形成した場合には、フランジ内面側に配置された添接板との摩擦力が低下するおそれがあるので、接合強度を高めるため、フランジの内面には突起を形成しないのが好ましい。
【0017】
上記第2の課題を解決するために請求項4に係る本発明として、上記請求項1~3いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造であって、
縞H形鋼の接合端部に跨がるフランジの外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板及び内面側添接板が設けられるとともに、前記外面側添接板と前記縞H形鋼のフランジ外面との間に易変形板が配置され、
前記外面側添接板、易変形板、縞H形鋼のフランジ及び内面側添接板が一体にボルトで締結され、前記易変形板が前記縞H形鋼のフランジ外面に形成された突起のパターンに合わせて変形していることを特徴とする鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明は、前記鋼コンクリート合成構造の芯材として縞H形鋼を用いた場合における、縞H形鋼同士の接合構造について規定しており、上記第2の課題を解決するための第1の手段である。具体的には、縞H形鋼の接合端部に跨がるフランジの外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板及び内面側添接板を設けるとともに、前記外面側添接板と縞H形鋼のフランジ外面との間に、薄アルミ板などからなる易変形板を配置する。そして、前記外面側添接板、易変形板、縞H形鋼のフランジ及び内面側添接板を一体にボルトで締結することにより、前記易変形板を縞H形鋼の突起のパターンに合わせて変形させる。このため、前記易変形板を介して外面側添接板と縞H形鋼との接触面積が増大し、これらの間の摩擦力が向上する。
【0019】
請求項5に係る本発明として、上記請求項1~3いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造であって、
縞H形鋼の接合端部に跨がるフランジの外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板及び内面側添接板が設けられるとともに、前記外面側添接板の前記縞H形鋼のフランジ外面と対向する面にパテ材が塗布され、
前記外面側添接板、縞H形鋼のフランジ及び内面側添接板が一体にボルトで締結され、前記パテ材が前記縞H形鋼のフランジ外面に形成された突起のパターンに応じて変形した状態で硬化していることを特徴とする鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明は、前記鋼コンクリート合成構造の芯材として縞H形鋼を用いた場合における、縞H形鋼同士の接合構造について規定しており、上記第2の課題を解決するための第2の手段である。具体的には、縞H形鋼の接合端部に跨がるフランジの外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板及び内面側添接板を設けるとともに、前記外面側添接板の縞H形鋼のフランジ外面と対向する面にパテ材を塗布しておく。そして、前記外面側添接板、縞H形鋼のフランジ及び内面側添接板を一体にボルトで締結することにより、前記パテ材が縞H形鋼の突起のパターンに応じて変形した状態で硬化する。これによって、前記パテ材が縞H形鋼のフランジ外面のうち突起以外の領域の前記外面側添接板との隙間に充填され、縞H形鋼と外面側添接板とが一体となるため、通常の外面が平坦なH形鋼の継手と同等以上の接合強度を確保することができる。
【0021】
請求項6に係る本発明として、上記請求項1~3いずれかに記載の鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造であって、
一方の前記縞H形鋼のウェブの両側にそれぞれ、ウェブと平行する連結プレートが接合端面から突出した状態で設けられ、
他方の前記縞H形鋼のウェブの両側にそれぞれ、2枚の伝達プレートを前記連結プレートが嵌入可能な離隔幅を空けて配置することにより接合端面に向けて開口するスリット部が形成され、
前記スリット部に前記連結プレートを挿入した状態で、ウェブの両側に配置された前記伝達プレート及び連結プレートと縞H形鋼のウェブとが一体にボルトで締結されていることを特徴とする鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、前記鋼コンクリート合成構造の芯材として縞H形鋼を用いた場合における、縞H形鋼同士の接合構造について規定しており、上記第2の課題を解決するための第3の手段である。具体的には、一方の縞H形鋼のウェブの両側にそれぞれ、ウェブと平行する連結プレートを接合端面から突出した状態で設けるとともに、他方の縞H形鋼のウェブの両側にそれぞれ、2枚の伝達プレートを前記連結プレートが嵌入可能な離隔幅を空けて配置することにより接合端面に向けて開口するスリット部を形成する。そして、前記スリット部に連結プレートを挿入した状態で、ウェブの両側に配置された伝達プレート及び連結プレートとウェブとを一体にボルトで締結する。これによって、フランジに添接板を配置しなくてもウェブの両側で強固に連結できる接合構造となる。また、フランジの外面に添接板やボルト・ナットが配置されないため、鋼材の配筋位置をコンクリート構造物の外側寄りにすることができ、強度上有利となる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、加工の手間が省略でき、鋼材とコンクリートとの付着性能が高い鋼コンクリート合成構造が提供できる。また、鋼材の接合における加工手間や作業手間が省略可能な鋼コンクリート合成構造に用いられる鋼材の接合構造が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る鋼コンクリート合成構造1の一例を示す壁体の斜視図である。
図2】縞H形鋼2の斜視図である。
図3】接合構造の第1の手段を示す断面図である。
図4】接合構造の第2の手段を示す断面図である。
図5】接合構造の第3の手段を示す正面図である。
図6図5のVI-VI線矢視図である。
図7】一方の縞H形鋼2Aを示す、(A)は正面図、(B)は(A)のB-B線矢視図、(C)は(A)のC-C線矢視図である。
図8】他方の縞H形鋼2Bを示す、(A)は正面図、(B)は(A)のB-B線矢視図、(C)は外側伝達プレート20を取り除いた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
本発明に係る鋼コンクリート合成構造1では、図1に示されるように、芯材として、フランジの外面に所定パターンの突起6、6…を備えた縞H形鋼2、2…を用いている。図1に示される鋼コンクリート合成構造1は、縞H形鋼2、2…からなる芯材が平行して複数配置されるとともに、その外周にコンクリート3が充填された壁体であるが、他の鋼コンクリート合成構造にも適用可能であることは言うまでもない。なお、前記縞H形鋼2に加え、必要に応じて鉄筋などを配筋してもよい。
【0027】
前記縞H形鋼2は、図2に示されるように、主に路面覆工板として用いられるものであり、フランジ4の外面に熱間圧延によって滑り止め用の複数の突起6、6…が形成されたものである。フランジ4の外面以外、すなわちフランジ4の内面及びウェブ5の両面にはこのような突起が設けられず、平坦に形成されている。
【0028】
前記突起6の高さは、縞H形鋼の種類によって異なるが、通常1~5mmであり、2~3mmのものを使用するのが好ましい。
【0029】
前記突起6は、フランジ4の外面の全面、すなわちフランジ4の外面の幅方向及び軸方向の全長に亘って形成されている。
【0030】
前記突起6のパターンは、縞H形鋼の種類によって種々の形態のものが存在し、いずれの形態のものを用いてもよいが、図2に示されるように、縞H形鋼2の軸方向及び幅方向に沿う格子状とするのが望ましい。前記格子状とは、縞H形鋼2の軸方向及び幅方向に沿って直線的に延びる凸条からなる突起6をそれぞれ幅方向及び軸方向に離隔して複数配置したものである。突起6のパターンとして格子状のものを用いることにより、縞H形鋼2の軸方向及び幅方向に作用するせん断力に対して、より強固なコンクリート3との付着力が得られ、コンクリート3との付着性能が更に向上できる。
【0031】
前記突起6は、フランジ4の外面のみに設けられ、フランジ4の内面には形成されないのが好ましい。つまり、既製の縞H形鋼2に形成されたフランジ4外面の突起6…以外に、圧延や溶接などによって添接板が設けられる範囲のフランジ4の内面に別途突起を設けるのは好ましくない。フランジ内面に突起を形成した場合には、縞H形鋼2、2同士の接合構造において、フランジ内面側に配置された添接板との接触面積が低下し、摩擦力が低下するおそれがあるため、フランジ内面は平坦であるのが好ましい。
【0032】
図1に示されるように、壁体の芯材として縞H形鋼2、2…を使用する場合、フランジ4が壁体の壁面に向かい合うように配置し、隣り合う縞H形鋼2、2同士でウェブ5、5が対向するように離隔して配置するのがよい。
【0033】
鋼コンクリート合成構造1の芯材として、フランジ4の外面に所定パターンの突起6…を備えた縞H形鋼2を用いることにより、コンクリートとの付着性能を向上させるための突起を設ける加工を別途施す必要がなく、鋼材とコンクリートとの付着性能が向上できる。
【0034】
次いで、前記鋼コンクリート合成構造1に用いられる縞H形鋼2、2の端部同士の接合構造について説明する。
【0035】
(第1の手段)
接合構造の第1の手段は、図3(A)に示されるように、縞H形鋼2、2の接合端部に跨がるフランジ4の外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板10及び内面側添接板11を設けるとともに、外面側添接板10と縞H形鋼2のフランジ4外面との間に易変形板12を配置し、図3(B)に示されるように、前記外面側添接板10、易変形板12、縞H形鋼2のフランジ4及び内面側添接板11を一体にボルト13、13…で締結することにより、前記易変形板12が縞H形鋼2のフランジ4外面に形成された突起6、6…のパターンに合わせて変形した構造としたものである。
【0036】
ボルト13…の締付けによって、外面側添接板10と縞H形鋼2のフランジ4との間に介在した易変形板12が、突起6…において厚み方向に圧縮変形することにより、この易変形板12を介して外面側添接板10と縞H形鋼2との接触面積が増大し、これらの間の摩擦力が向上する。このように、縞H形鋼2の突起6…を除去する加工等を行う必要がないため、加工手間が省けるとともに、添接板の面積を大きくする必要がないため、ボルト13の締め付け作業を最小限に抑えることができる。
【0037】
前記外面側添接板10及び内面側添接板11としては、通常のH形鋼を連結する際の接合構造に用いられる添接板をそれぞれ用いることができる。
【0038】
前記易変形板12は、前記ボルト13の締め付け力によって、容易に厚み方向に圧縮変形可能な材料からなり、具体的には薄アルミ板を用いるのが好ましいが、これに限るものではなく、例えば、銅、ニッケル、金などの変形しやすい金属板や、ゴムや樹脂などの非金属板を用いてもよい。前記薄アルミ板を用いる場合の板厚としては、1~5mm、好ましくは2~4mmとするのがよい。ボルト13の締付けによって、突起6において易変形板12が僅かでも厚み方向に圧縮変形すれば、突起6と易変形板12との接触面積が増大するため、摩擦力が増加できる。
【0039】
前記易変形板12の平面に、ブラスト加工やショットピーニングなどによる面粗しのための表面処理を施すことにより、更に摩擦力を向上させてもよい。この表面処理は、外面側添接板10及びフランジ4外面の両方の対向面に施すのが好ましいが、いずれか一方の面、特に突起6…と接する面のみに施してもよい。
【0040】
(第2の手段)
接合構造の第2の手段は、図4(A)に示されるように、縞H形鋼2、2の接合端部に跨がるフランジ4の外面及び内面にそれぞれ、外面側添接板10及び内面側添接板11を設けるとともに、前記外面側添接板10の縞H形鋼2のフランジ4外面と対向する面にパテ材14を塗布し、図4(B)に示されるように、前記外面側添接板10、縞H形鋼2のフランジ4及び内面側添接板11を一体にボルト13で締結することにより、前記パテ材14が縞H形鋼2のフランジ4外面に形成された突起6のパターンに応じて変形した状態で硬化した構造としたものである。このように、前記パテ材14が突起6以外のフランジ4外面と外面側添接板10との間の隙間に充填されるため、外面側添接板10と縞H形鋼2とが一体となり、通常の外面が平坦なH形鋼の継手と同等以上の接合強度を確保することができる。
【0041】
前記パテ材14としては、所定時間経過後に硬化する硬化性のものであれば特に制限はないが、エポキシ樹脂系のものを用いるのが望ましく、また、鉛直面に使用してもダレが認められないものを用いるのが特によい。
【0042】
前記パテ材14の塗布厚みは任意であり、特に制限はないが、突起6の高さとほぼ同等とするのが好ましい。
【0043】
(第3の手段)
接合構造の第3の手段について、図5図8に示す。図5及び図6は、接合構造の第3の手段を示す組立図であり、図7は一方の縞H形鋼2Aの接合端部、図8は他方の縞H形鋼2Bの接合端部を示す図である。
【0044】
一方の縞H形鋼2Aは、図7に示されるように、ウェブ5の両側にそれぞれ、ウェブ5と平行する連結プレート15、15が接合端面から突出した状態で設けられている。
【0045】
前記連結プレート15は、ウェブ5から所定の離隔幅を空けてウェブ5とほぼ平行して設けられるとともに、ウェブ5の高さ方向のほぼ全長に亘って設けられている。そして、ウェブ5の高さ方向の両端が、フランジ4、4の内面に溶接部16で溶接されている。
【0046】
前記連結プレート15のうち、一方の縞H形鋼2Aの接合端面より外側に延在した部分(前記溶接部16より先端側部分)には、2枚の連結プレート15、15を貫く同位置に通孔17、17…がそれぞれ形成されている。
【0047】
前記連結プレート15とウェブ5との間には、後述する内側伝達プレート19と同じ厚みの裏当てプレート28が配置されており、図7(C)に示されるように、この裏当てプレート28の軸方向中央側の端縁が、溶接部18でウェブ5に溶接されている。
【0048】
他方の縞H形鋼2Bには、図8に示されるように、ウェブ5の両側にそれぞれ、2枚の伝達プレート(内側伝達プレート19及び外側伝達プレート20)を前記連結プレート15が嵌入可能な離隔幅を空けて配置することにより接合端面に向けて開口するスリット部21が形成されている。
【0049】
前記内側伝達プレート19は、接合端面に臨む辺以外の3辺が溶接部22によってウェブ5に溶接されている。前記内側伝達プレート19には、前記スリット部21に連結プレート15を嵌入した状態で、前記連結プレート15に形成された前記通孔17…に連通する通孔23、23…が形成されている。
【0050】
前記外側伝達プレート20は、上下端縁がそれぞれフランジ4の内面に溶接部24で溶接されている。前記外側伝達プレート20には、前記スリット部21に連結プレート15を嵌入した状態で、前記連結プレート15に形成された前記通孔17…に連通する通孔25、25…が形成されている。
【0051】
また、前記ウェブ5には、前記スリット部21に連結プレート15を嵌入した状態で、前記連結プレート15に形成された通孔17…に連通する通孔26、26…が形成されている。
【0052】
そして、前記スリット部21に連結プレート15を挿入した状態で、ウェブ5の両側に配置された伝達プレート19、20及び連結プレート15と、他方の縞H形鋼2Bのウェブ5とが、通孔17、23、25、26に一体に挿通されるボルト27、27…で締結されている。
【0053】
このように、第3の手段に係る接合構造は、それぞれフランジ4の内面又はウェブ5に固定された連結プレート15及び伝達プレート19、20がウェブ5を貫通するボルト27で固定されているため、フランジ4に添接板を設けなくても強固に連結できる接合構造である。また、フランジ4の外面に添接板やボルト・ナットが配置されないため、コンクリートのかぶり厚さをフランジ4の外面からとることができ、鋼材の配筋位置をコンクリート構造物の外側寄りにすることができ、強度上有利となる。
【符号の説明】
【0054】
1…鋼コンクリート合成構造、2…縞H形鋼、3…コンクリート、4…フランジ、5…ウェブ、6…突起、10…外面側添接板、11…内面側添接板、12…易変形板、13…ボルト、14…パテ材、15…連結プレート、19…内側伝達プレート、20…外側伝達プレート、21…スリット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8