(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190416
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20221219BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221219BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L21/92 602J
H01L21/92 602K
H01L21/60 301A
H01L21/60 311Q
H01L21/88 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098730
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹井 祥司
【テーマコード(参考)】
5F033
5F044
【Fターム(参考)】
5F033GG01
5F033HH07
5F033HH08
5F033HH09
5F033HH11
5F033HH12
5F033HH13
5F033HH17
5F033HH18
5F033HH19
5F033HH20
5F033HH21
5F033HH33
5F033JJ19
5F033JJ33
5F033KK08
5F033KK11
5F033KK18
5F033KK33
5F033MM08
5F033MM13
5F033MM18
5F033PP15
5F033PP27
5F033PP28
5F033QQ19
5F033QQ33
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR15
5F033RR21
5F033RR22
5F033TT02
5F033TT04
5F033TT08
5F033VV07
5F033XX19
5F033XX28
5F044AA14
5F044EE01
5F044EE04
5F044EE06
5F044LL01
5F044QQ02
5F044QQ03
5F044QQ04
5F044QQ05
5F044QQ06
(57)【要約】
【課題】パッド配線層の周囲領域におけるイオンマイグレーションを抑制し、かつパッド配線層への応力を低減できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、素子形成面3を有するチップ本体21と、チップ本体21の素子形成面3に形成されたパッシベーション層2と、パッシベーション層2上に形成されたCu導電層49を含む第1導電層56、ならびに第1導電層56上に形成されたNi層54およびPd層55を含む第2導電層51を有し、庇部57を有するパッド配線層29と、パッド配線層29に接合された接合部材22と、パッシベーション層2上において庇部57の下方に選択的に形成され、パッド配線層29の周囲領域にパッシベーション層2の上面23を露出させ、かつ第1導電層56の側面49cを被覆する被覆絶縁膜58とを含む。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子形成面を有する半導体チップと、
前記半導体チップの前記素子形成面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、第1導電材料を含む第1導電層、および前記第1導電層上に形成され、前記第1導電材料とは異なる第2導電材料を含む第2導電層を有し、前記第2導電層が前記第1導電層の端面に対して外側に突出することによって形成された庇部を有するパッド配線層と、
前記パッド配線層に接合され、前記素子形成面の素子に電力を供給する接合部材と、
前記絶縁層上において前記庇部の下方に選択的に形成され、前記パッド配線層の周囲領域に前記絶縁層の上面を露出させ、かつ前記第1導電層の端面を被覆する被覆絶縁膜とを含む、半導体装置。
【請求項2】
前記庇部は、平面視において前記パッド配線層の外周に沿って環状に形成されており、
前記被覆絶縁膜は、前記環状の庇部の下方の凹部の全周に亘って形成され、前記第1導電層を側方から被覆する環状の絶縁膜を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁層上において互いに間隔を空けて配置された複数の前記パッド配線層を含み、
前記パッド配線層の周囲領域は、隣り合う前記パッド配線層の間の領域を含む、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電層は、前記接合部材が接合され、前記被覆絶縁膜から全体が露出した露出面である接合面を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記被覆絶縁膜は、平面視において前記庇部の下方にほぼ隠れている、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記被覆絶縁膜は、前記パッド配線層の厚さ方向において、前記第2導電層の端面に沿う端面を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記被覆絶縁膜の端面は、前記第2導電層の端面よりも前記パッド配線層の内側に配置されている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記被覆絶縁膜の端面は、前記第2導電層の端面と面一である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記被覆絶縁膜の端面は、前記第2導電層の端面よりも前記パッド配線層の外側に配置されている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記被覆絶縁膜は、前記パッド配線層の厚さ方向における第1厚さと、前記パッド配線層の厚さ方向に交差する方向における第2厚さであって、前記第1厚さよりも小さい第2厚さとを有している、請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記被覆絶縁膜は、樹脂膜を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記樹脂膜は、ポリイミド樹脂膜およびフェノール樹脂膜の少なくとも一方を含む、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1導電層は、Cu導電層を含み、
前記第2導電層は、前記Cu導電層上のNi導電層と、前記Ni導電層上のPd導電層とを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記接合部材は、前記パッド配線層の厚さ方向に延びる柱状体を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記接合部材は、ボンディングワイヤを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体チップを支持する導電部材と、
前記導電部材の一部および前記半導体チップを被覆する封止樹脂とを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
素子形成面を有する半導体基板の前記素子形成面に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に、第1導電材料を含む第1導電層、および前記第1導電材料とは異なる第2導電材料を含む第2導電層を順に積層することによってパッド配線層を形成する工程と、
前記パッド配線層の前記第1導電層を選択的にサイドエッチングすることによって、前記第1導電層の端面に対して外側に突出する前記第2導電層の一部からなる庇部を前記パッド配線層に形成する工程と、
前記パッド配線層を覆うように前記絶縁層上に第2絶縁層を形成する工程と、
前記庇部をマスクとして利用するパターニングによって、前記庇部で覆われた前記第2絶縁層の第1部分を前記第1導電層の端面を被覆する被覆絶縁膜として残し、かつ前記庇部で覆われていない前記第2絶縁層の第2部分を選択的に除去する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2絶縁層は、感光性の樹脂層を含み、
前記庇部をマスクとして利用するパターニングは、前記樹脂層に対して全面露光を行う工程と、露光後の現像処理によって、前記樹脂層の非感光部である前記第1部分を樹脂膜として残し、かつ前記樹脂層の感光部である前記第2部分を選択的に除去する工程とを含む、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記庇部をマスクとして利用するパターニングは、前記第2絶縁層をエッチバックすることによって、前記第2絶縁層の前記第1部分を被覆絶縁膜として残し、かつ前記第2絶縁層の前記第2部分を選択的に除去する工程を含む、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体基板と、半導体基板上に形成されたCu配線と、Cu配線の表面および側面を覆うめっき層と、めっき層を介してCu配線上にワイヤボンディングされたCuワイヤとを備える、半導体装置を開示している。めっき層は、Ni/Pd/Auの積層構造を有している。
この半導体装置の製造工程は、たとえば、半導体基板を覆う絶縁膜上に、バリアメタル膜を介してCu配線を形成する工程を含む。バリアメタル膜は、それぞれスパッタ法で形成されたTi/Cuシード層を含む。Cu配線は、バリアメタル膜上のレジスト膜をマスクにして、バリアメタル膜上に電解めっき法によって形成される。Cu配線のめっき後、レジスト膜が除去され、これにより露出したTi/Cuシード層がウエットエッチングによって除去される。たとえば、まずCuシード層が過酸化水素水と硝酸との混合液で除去され、次に、Ti膜が過酸化水素水とアンモニアとの混合液で除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態に係る半導体装置の目的は、パッド配線層の周囲領域におけるイオンマイグレーションを抑制し、かつパッド配線層への応力を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る半導体装置は、素子形成面を有する半導体チップと、前記半導体チップの前記素子形成面に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、第1導電材料を含む第1導電層、および前記第1導電層上に形成され、前記第1導電材料とは異なる第2導電材料を含む第2導電層を有し、前記第2導電層が前記第1導電層の端面に対して外側に突出することによって形成された庇部を有するパッド配線層と、前記パッド配線層に接合され、前記素子形成面の素子に電力を供給する接合部材と、前記絶縁層上において前記庇部の下方に選択的に形成され、前記パッド配線層の周囲領域に前記絶縁層の上面を露出させ、かつ前記第1導電層の端面を被覆する被覆絶縁膜とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態に係る半導体装置によれば、パッド配線層の周囲領域におけるイオンマイグレーションを抑制し、かつパッド配線層への応力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す半導体装置の平面図(封止樹脂を透過)である。
【
図3】
図3は、
図1に示す半導体装置の平面図(半導体素子および封止樹脂を透過)である。
【
図17】
図17は、素子チップの配線構造を説明するための模式的な平面図である。
【
図18】
図18は、前記素子チップの模式的な断面図であって、
図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
【
図19】
図19は、
図18の二点鎖線Aで囲まれた部分の拡大図であって、被覆絶縁膜の第1形態を示す図である。
【
図20】
図20は、
図18の二点鎖線Aで囲まれた部分の拡大図であって、被覆絶縁膜の第2形態を示す図である。
【
図21】
図21は、
図18の二点鎖線Aで囲まれた部分の拡大図であって、被覆絶縁膜の第3形態を示す図である。
【
図22】
図22は、
図18の二点鎖線Aで囲まれた部分の拡大図であって、被覆絶縁膜の第4形態を示す図である。
【
図23A】
図23Aは、前記半導体装置の製造工程の一部を説明するための図である。
【
図26】
図26は、前記素子チップの参考例を示す模式的な断面図である。
【
図27】
図27は、前記素子チップの他の形態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本開示の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の詳細な説明において、序数が付された名称の構成要素が複数存在するが、当該序数と、請求項に記載の構成要素の序数とは、必ずしも一致するものではない。
図1~
図16に基づき、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置A10について説明する。
【0009】
半導体装置A10は、導電部材10、素子チップ20、接合層30および封止樹脂40を備える。
図1に示すように、半導体装置A10のパッケージ形式は、QFN(Quad For Non-Lead Package)である。素子チップ20は、フリップチップ型のLSIである。素子チップ20には、その内部にスイッチング回路212Aおよび制御回路212B(それぞれ詳細は後述)が構成されている。
【0010】
半導体装置A10においては、スイッチング回路212Aにより直流電力(電圧)が交流電力(電圧)に変換される。半導体装置A10は、たとえばDC/DCコンバータの回路を構成する一要素に用いられる。ここで、
図2は、理解の便宜上、封止樹脂40を透過している。
図3は、理解の便宜上、素子チップ20および封止樹脂40を透過している。これらの図において、透過した素子チップ20および封止樹脂40をそれぞれ想像線(二点鎖線)で示している。
【0011】
半導体装置A10の説明においては、導電部材10の厚さ方向Zを「厚さ方向Z」と呼ぶ。厚さ方向Zに対して直交する方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向Zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。
図1および
図2に示すように、半導体装置A10は、厚さ方向Zに沿って視て正方形状である。また、半導体装置A10の説明においては、便宜上、第2方向yにおいて複数の第2リード12(詳細は後述)が位置する側を「第2方向yの一方側」と呼ぶ。第2方向yにおいて複数の第1リード11(詳細は後述)が位置する側を「第2方向yの他方側」と呼ぶ。
【0012】
導電部材10は、
図2に示すように、素子チップ20を支持するとともに、半導体装置A10を配線基板に実装するための端子をなしている。
図11~
図14に示すように、導電部材10は、その一部が封止樹脂40に覆われている。導電部材10は、厚さ方向Zにおいて互いに反対側を向く主面101(第1面)および裏面102(第2面)を有する。主面101は、厚さ方向Zの一方側を向き、かつ素子チップ20に対向している。
【0013】
素子チップ20は、主面101に支持されている。主面101は、封止樹脂40に覆われている。裏面102は、厚さ方向Zの他方側を向く。導電部材10は、単一のリードフレームから構成される。当該リードフレームの構成材料は、たとえば、銅(Cu)または銅合金である。導電部材10は、複数の第1リード11、複数の第2リード12および一対の第3リード13を含む。
【0014】
複数の第1リード11は、
図3および
図4に示すように、厚さ方向Zに沿って視て第2方向yに延びる帯状である。複数の第1リード11は、第2方向yに沿って配列されている。半導体装置A10が示す例においては、複数の第1リード11は、第1入力端子111A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの3つの端子により構成される。
複数の第1リード11は、第2方向yの一方側から他方側に向けて第1入力端子11A、出力端子11C、第2入力端子11Bの順に配列されている。第1入力端子11Aおよび第2入力端子11Bは、半導体装置A10において電力変換対象となる直流電力(電圧)が入力される。第1入力端子11Aは、正極(P端子)である。第2入力端子11Bは、負極(N端子)である。出力端子11Cは、素子チップ20に構成されたスイッチング回路212Aにより電力変換された交流電力(電圧)が出力される。
【0015】
図3に示すように、第1入力端子11Aは、第2方向yにおいて複数の第2リード12と出力端子11Cとの間に位置する。出力端子11Cは、第2方向yにおいて第1入力端子11Aと第2入力端子11Bとの間に位置する。第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々は、主部111および一対の側部112を含む。
図3および
図4に示すように、主部111は、第1方向xに延びている。複数の第1リード11において、素子チップ20は、主部111の主面101に支持されている。
【0016】
一対の側部112は、主部111の第1方向xの両端につながっている。
図3、
図4、
図12および
図13に示すように、一対の側部112の各々は、第1端面112Aを有する。第1端面112Aは、第1リード11の主面101および裏面102の双方につながり、かつ第1方向xを向く。第1端面112Aは、封止樹脂40から露出している。
図9に示すように、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの一対の側部112の各々には、くびれ部112Bが形成されている。くびれ部112Bは、第1リード11の主面101から裏面102に至り、かつ第2方向yの両側から側部112の内方に向けて凹んでいる。くびれ部112Bは、封止樹脂40に接している。くびれ部112Bにより、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cにおいて、一対の第1端面112Aの各々の第2方向yの寸法bは、主部111の裏面102の第2方向yの寸法Bよりも小となる。
【0017】
図3に示すように、第2入力端子11Bは、出力端子11Cよりも第2方向yの他方側に位置する。このため、第2入力端子11Bは、複数の第1リード11のうち第2方向yの他方側に位置する。第2入力端子11Bは、主部111、一対の側部112および複数の突出部113を含む。
複数の突出部113は、主部111の第2方向yの他方側から突出している。隣り合う2つの突出部113の間には、封止樹脂40が充填されている。
図11に示すように、複数の突出部113の各々は、副端面113Aを有する。副端面113Aは、第2入力端子11Bの主面101および裏面102の双方につながり、かつ第2方向yの他方側を向く。副端面113Aは、封止樹脂40から露出している。
図7に示すように、複数の副端面113Aは、第1方向xに沿って所定の間隔で配列されている。
【0018】
図10に示すように、第2入力端子11Bの一対の側部112の各々には、切込部112Cが形成されている。切込部112Cは、第2入力端子11Bの主面101から裏面102に至り、かつ第1端面112Aから第1方向xに凹んでいる。これにより、第1端面112Aは、第2方向yにおいて互いに離間した2つの領域に分断されている。切込部112Cによっても、第2入力端子11Bにおいて、一対の第1端面112Aの各々の第2方向yの寸法bは、主部111の裏面102の第2方向yの寸法Bよりも小となる。なお、ここでの寸法bは、第1端面112Aの一方の領域の第2方向yの寸法b1と、第1端面112Aの他方の領域の第2方向yの寸法b2とを足し合わせたもの(b=b1+b2)である。切込部112Cには、封止樹脂40が充填されている。
【0019】
図3および
図4に示すように、複数の第1リード11の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。半導体装置A10が示す例においては、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々の裏面102の面積は、ともに等しい。第2入力端子11Bの裏面102の面積は、第1入力端子11Aおよび出力端子11Cの各々の裏面102の面積よりも大である。
【0020】
第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの各々において、素子チップ20が支持される主部111の主面101には、たとえば銀(Ag)めっきを施してもよい。さらに、第1入力端子11A、第2入力端子11Bおよび出力端子11Cの各々において、封止樹脂40から露出する裏面102、一対の第1端面112Aおよび複数の副端面113Aには、たとえば錫(Sn)めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0021】
複数の第2リード12は、
図3に示すように、複数の第1リード11よりも第2方向yの一方側に位置する。複数の第2リード12のいずれか一つは、素子チップ20に構成された制御回路212Bの接地端子である。その他の複数の第2リード12の各々には、制御回路212Bを駆動させるための電力(電圧)、または制御回路212Bに伝達するための電気信号が入力される。
図3、
図4および
図11に示すように、複数の第2リード12の各々は、第2端面121を有する。第2端面121は、第2リード12の主面101および裏面102の双方につながり、かつ第2方向yの一方側を向く。第2端面121は、封止樹脂40から露出している。
図8に示すように、複数の第2端面121は、第1方向xに沿って所定の間隔で配列されている。
【0022】
図3および
図4に示すように、複数の第2リード12の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。なお、複数の第2リード12の裏面102の面積は、いずれも等しい。素子チップ20が支持される複数の第2リード12の裏面102には、たとえば銀めっきを施してもよい。さらに、封止樹脂40から露出する複数の第2リード12の裏面102および第2端面121には、たとえば錫めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル、パラジウム、金の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0023】
一対の第3リード13は、
図3に示すように、第2方向yにおいて第1リード11(第1入力端子11A)と、複数の第2リード12との間に位置する。一対の第3リード13は、第1方向xにおいて互いに離間している。一対の第3リード13の各々には、素子チップ20に構成された制御回路212Bに伝達するための電気信号などが入力される。
図3、
図4および
図14に示すように、一対の第3リード13の各々は、第3端面131を有する。第3端面131は、主面101および裏面102の双方につながり、かつ第1方向xを向く。第3端面131は、封止樹脂40から露出している。第3端面131は、複数の第1リード11の第1端面112Aとともに、第2方向yに沿って配列されている。
【0024】
図3および
図4に示すように、一対の第3リード13の各々において、主面101の面積は、裏面102の面積よりも大である。素子チップ20が支持される一対の第3リード13の主面101には、たとえば銀めっきを施してもよい。さらに、封止樹脂40から露出する一対の第3リード13の裏面102および第3端面131には、たとえば錫めっきを施してもよい。なお、錫めっきに替えて、たとえばニッケル、パラジウム、金の順に積層された複数の金属めっきを採用してもよい。
【0025】
素子チップ20は、
図11~
図14に示すように、フリップチップ接合により導電部材10(複数の第1リード11、複数の第2リード12および一対の第3リード13)に電気的に接合され、かつこれらに支持されている。素子チップ20は、封止樹脂40に覆われている。
図12~
図16に示すように、素子チップ20は、チップ本体21、パッド配線層29および複数の接合部材22を有する。
【0026】
チップ本体21は、素子チップ20の主要部をなす。
図15および
図16に示すように、チップ本体21は、半導体基板211および半導体層212を有する。
図15および
図16に示すように、半導体基板211は、その下方において半導体層212、パッド配線層29および複数の接合部材22を支持している。半導体基板211の構成材料は、たとえば、Si(シリコン)または炭化ケイ素(SiC)である。
【0027】
図11~
図14に示すように、半導体層212は、半導体基板211の導電部材10の主面101に対向する側に積層されている。半導体層212は、ドープされる元素量の相違に基づく複数種類のp型半導体およびn型半導体を含む。半導体層212には、スイッチング回路212Aと、スイッチング回路212Aに導通する制御回路212Bとが構成されている。スイッチング回路212Aは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子である。
【0028】
半導体装置A10が示す例においては、スイッチング回路212Aは、高電圧領域(上アーム回路)と低電圧領域(下アーム回路)との2つの領域に区分されている。各々の領域は、1つのnチャンネル型のMOSFETにより構成されている。制御回路212Bは、スイッチング回路212Aを駆動させるためのゲートドライバや、スイッチング回路212Aの高電圧領域に対応するブートストラップ回路などが構成されるとともに、スイッチング回路212Aを正常に駆動させるための制御を行う。なお、半導体層212には、配線層(後述)が構成されている。当該配線層により、スイッチング回路212Aと制御回路212Bとは、相互に導通している。
【0029】
図11~
図14に示すように、複数の接合部材22は、チップ本体21の導電部材10の主面101に対向する側から、導電部材10の主面101に向けて突出している。複数の接合部材22は、導電部材10の主面101に電気的に接合されている。複数の接合部材22は、複数の第1接合部材22Aおよび複数の第2接合部材22Bを含む。複数の第1接合部材22Aは、半導体層212のスイッチング回路212Aに導通している。あわせて、複数の第1接合部材22Aは、複数の第1リード11の主面101に電気的に接合されている。これにより、複数の第1リード11は、スイッチング回路212Aに導通している。また、複数の第2接合部材22Bは、半導体層212の制御回路212Bに導通している。あわせて、複数の第2接合部材22Bの大半は、複数の第2リード12の主面101に電気的に接合されている。残りの第2接合部材22Bは、一対の第3リード13の主面101に電気的に接合されている。これにより、複数の第2リード12および一対の第3リード13は、制御回路212Bに導通している。
【0030】
図15および
図16に示すように、複数の接合部材22の各々は、半導体層212上に形成されたパッド配線層29上に形成されている。パッド配線層29は、半導体層212のスイッチング回路212Aおよび制御回路212Bのいずれかに導通している。接合部材22は、パッド配線層29から導電部材10の主面101に向けて突出した柱状体222として形成されている。柱状体222は、先端面222Aおよび側面222Bを有する。先端面222Aは、導電部材10の主面101に対向している。側面222Bは、先端面222Aにつながり、かつ厚さ方向Zに対して直交する方向を向く。半導体装置A10においては、柱状体222には、先端面222Aからチップ本体21に向けて凹む凹部222Cが形成されていてもよい。柱状体222は、半導体層212に形成されたスイッチング回路212Aおよび制御回路212Bに対して、パッド配線層29を介して電力を供給する。
【0031】
接合層30は、
図15および
図16に示すように、導電部材10の主面101と、複数の接合部材22との双方に接している。接合層30は、導電性を有する。これにより、複数の接合部材22は、導電部材10の主面101に電気的に接合されている。複数の接合部材22の各々において、接合層30は、柱状体222の先端面222Aおよび側面222Bの双方に接している。半導体装置A10においては、接合層30は、柱状体222の凹部222Cにも接している。また、素子チップ20の柱状体222は、接合層30に埋め込まれている。これにより、柱状体222は、先端面222Aおよび凹部222Cだけでなく、側面の一部も接合層30で覆われている。
【0032】
封止樹脂40は、
図5~
図8に示すように、頂面41、底面42、一対の第1側面431および一対の第2側面432を有する。封止樹脂40の構成材料は、たとえば黒色のエポキシ樹脂である。
図11~
図14に示すように、頂面41は、厚さ方向Zにおいて導電部材10の主面101と同じ側を向く。
図5~
図8に示すように、底面42は、頂面41とは反対側を向く。
図4に示すように、底面42から、複数の第1リード11の裏面102、複数の第2リード12の裏面102、および一対の第3リード13の裏面102が露出している。
【0033】
図7および
図8に示すように、一対の第1側面431は、頂面41および底面42の双方につながり、かつ第1方向xを向く。一対の第1側面431は、第2方向yにおいて互いに離間している。
図12~
図14に示すように、一対の第1側面431の各々から、複数の第1リード11の第1端面112Aと、第3リード13の第3端面131とが、第1側面431と面一となるように露出している。
【0034】
図5および
図6に示すように、一対の第2側面432は、頂面41、底面42および一対の第1側面431のいずれにもつながり、かつ第2方向yを向く。一対の第2側面432は、第1方向xにおいて互いに離間している。
図11に示すように、第2方向yの一方側に位置する第2側面432から、複数の第2リード12の第2端面121が、第2側面432と面一となるように露出している。第2方向yの他方側に位置する第2側面432から、第2入力端子11B(第1リード11)の複数の副端面113Aが、第2側面432と面一となるように露出している。
【0035】
半導体装置A10は、主面101を有する導電部材10と、チップ本体21、および主面101に電気的に接合された複数の接合部材22を有する素子チップ20と、主面101と複数の接合部材22との双方に接する接合層30とを備える。複数の接合部材22の各々は、チップ本体21の主面101に対向する側に接するパッド配線層29から主面101に向けて突出し、かつ接合層30に接する柱状体222を含む。これにより、素子チップ20はフリップチップ接合により導電部材10に電気的に接合されている。
【0036】
図17は、素子チップ20の配線構造を説明するための模式的な平面図である。
図18は、
図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
図17では、素子チップ20の平面構造の一部、より具体的には、第1接合部材22Aおよび第1接合部材22Aを支持するパッド配線層29を示している。第2接合部材22Bおよび第2接合部材22Bを支持するパッド配線層29については説明を省略するが、
図17に示す第1接合部材22Aおよびパッド配線層29の構造と同様である。
図18では、フリップチップ接合により導電部材10に接合される前の素子チップ20が示されている。また、
図18では、柱状体222(第1接合部材22A)が上方に向かって突出する状態で素子チップ20が示されている。したがって、前述の
図11~
図16と、
図18とでは上下が反転している。
【0037】
素子チップ20は、多層配線構造1と、パッシベーション層2と、パッド配線層29と、被覆絶縁膜58と、柱状体222(接合部材22)と、接合層30とを含む。なお、
図18では、複数の接合部材22のうちの一つの接合部材22だけを示している。
多層配線構造1は、半導体層212の素子形成面3の上に形成された複数の層間絶縁膜4~7と、複数の層間絶縁膜4~7内に形成された複数の配線層14~16とを含む。なお、配線層14~16は、多層配線構造1を形成するものであるから、それぞれ、配線層14~16と称してもよい。
【0038】
複数の層間絶縁膜4~7は、半導体層212の素子形成面3の上に形成された第1層間絶縁膜4と、第1層間絶縁膜4の上に形成された第2層間絶縁膜5と、第2層間絶縁膜5の上に形成された第3層間絶縁膜6と、第3層間絶縁膜6の上に形成された第4層間絶縁膜7とを含む。第1層間絶縁膜4、第2層間絶縁膜5、第3層間絶縁膜6および第4層間絶縁膜7は、それぞれ、酸化膜(SiO2膜)または窒化膜(SiN膜)を含んでいてもよい。
【0039】
複数の配線層14~16は、半導体層212に形成されたスイッチング回路212Aおよび制御回路212Bに電気的に接続されている(
図18では、スイッチング回路212Aのみ示している。)
複数の配線層14~16は、第1層間絶縁膜4の上に形成され、かつ第2層間絶縁膜5に被覆された第1配線層14と、第2層間絶縁膜5の上に形成され、かつ第3層間絶縁膜6に被覆された第2配線層15と、第3層間絶縁膜6の上に形成され、かつ第4層間絶縁膜7に被覆された第3配線層16とを含む。第1配線層14、第2配線層15および第3配線層16は、それぞれ、銅またはアルミニウムを含んでいてもよい。
【0040】
第1配線層14の下面には、第1バリア層31が形成されている。第1バリア層31は、第1配線層14を構成する電極材料が第1層間絶縁膜4内に拡散するのを抑制する。
第1配線層14の上面には、第1バリア層32が形成されている。第1バリア層32は、第1配線層14を構成する電極材料が第2層間絶縁膜5内に拡散するのを抑制する。
第2配線層15の下面には、第2バリア層33が形成されている。第2バリア層33は、第2配線層15を構成する電極材料が第2層間絶縁膜5内に拡散するのを抑制する。
【0041】
第2配線層15の上面には、第2バリア層34が形成されている。第2バリア層34は、第2配線層15を構成する電極材料が第3層間絶縁膜6内に拡散するのを抑制する。
第3配線層16の下面には、第3バリア層35が形成されている。第3バリア層35は、第3配線層16を構成する電極材料が第3層間絶縁膜6内に拡散するのを抑制する。
第3配線層16の上面には、第3バリア層36が形成されている。第3バリア層36は、第3配線層16を構成する電極材料が第4層間絶縁膜7内に拡散するのを抑制する。
【0042】
各バリア層31~36は、窒化チタン層またはチタン層からなる単層構造を有していてもよいし、窒化チタン層および窒化チタン層の上に形成されたチタン層を含む積層構造を有していてもよい。各バリア層31~36は、互いに同じ材料で構成された層であってもよいし、互いに異なる材料で構成された層であってもよい。
パッシベーション層2は、多層配線構造1を被覆するように多層配線構造1の上に形成されている。より具体的には、パッシベーション層2は、第4層間絶縁膜7を被覆している。
【0043】
パッシベーション層2は、酸化膜(SiO2膜)、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)膜または窒化膜(SiN膜)を含んでいてもよい。この実施形態では、パッシベーション層2は、窒化膜(SiN膜)で形成されている。パッシベーション層2は、多層配線構造1の最上層絶縁層と称してもよいし、表面保護層と称してもよい。
第1配線層14の上面および第2配線層15の下面の間の第2層間絶縁膜5には、第2層間絶縁膜5を貫通する第1ビア39が形成されている。第1配線層14は、第1ビア39を介して第2配線層15と電気的に接続されている。
【0044】
第1ビア39と第2層間絶縁膜5との間には、第1ビアバリア膜43が形成されている。第1ビア39は、タングステンを含んでいてもよい。第1ビアバリア膜43は、窒化チタンを含んでいてもよい。
第2配線層15の上面および第3配線層16の下面の間の第3層間絶縁膜6には、第3層間絶縁膜6を貫通する第2ビア44が形成されている。第2配線層15は、第2ビア44を介して第3配線層16と電気的に接続されている。
【0045】
第2ビア44と第3層間絶縁膜6との間には、第2ビアバリア膜45が形成されている。第2ビア44は、タングステンを含んでいてもよい。第2ビアバリア膜45は、窒化チタンを含んでいてもよい。
第3配線層16上のパッシベーション層2および第4層間絶縁膜7には、パッシベーション層2および第4層間絶縁膜7を貫通する第3ビア46が形成されている。第3ビア46は、パッシベーション層2から露出し、かつ第3配線層16と電気的に接続されている。
【0046】
第3ビア46の露出面は、パッシベーション層2の上面23と面一に形成されている。第3ビア46および第4層間絶縁膜7の間、ならびに第3ビア46およびパッシベーション層2の間には、第3ビアバリア膜47が形成されている。第3ビア46は、タングステンを含んでいてもよい。第3ビアバリア膜47は、窒化チタンを含んでいてもよい。
パッド配線層29は、第3ビア46を覆うようにパッシベーション層2の上面23に形成されている。
図17に示すように、パッド配線層29は、平面視において帯状に形成されており、複数の柱状体222を支持していてもよい。この実施形態では、パッド配線層29は、互いに間隔を空けて複数形成されている。パッド配線層29は、多層配線構造1の最上面に形成された配線であるので、最上層配線層、最上層配線、トップメタル配線層などと称してもよい。
パッド配線層29は、パッシベーション層2の上に形成されたバリア導電層48と、銅を主成分とする金属を含み、バリア導電層48の主面の上に形成された第1導電層56とを含む積層構造を有している。第1導電層56は、銅を主成分とする金属を含むので、Cu導電層49と称してもよい。バリア導電層48は、Cu導電層49を構成する電極材料がパッシベーション層2内に拡散するのを抑制する。
【0047】
ここで、「銅を主成分とする金属」とは、Cu導電層49を構成する銅の質量比率(質量%)が、Cu導電層49を構成する他の成分に対して最も高い金属のことをいう(以下、同じ)。Cu導電層49がアルミニウム-銅合金(Al-Cu合金)からなる場合、銅の質量比率RCuは、アルミニウムの質量比率RAlよりも高い(RCu>RAl)。
Cu導電層49がアルミニウム-シリコン-銅合金(Al-Si-Cu合金)からなる場合、銅の質量比率RCuは、アルミニウムの質量比率RAlおよびシリコンの質量比率RSiよりも高い(RCu>RAl、かつ、RCu>RSi)。
【0048】
「銅を主成分とする金属」には、微量の不純物を含む場合はあるが、純度99.9999%(6N)以上の高純度銅や、純度99.99%(4N)以上の高純度銅等も含まれる。
バリア導電層48は、第3ビア46を覆うようにパッシベーション層2の上に形成されている。バリア導電層48は、第3ビア46を介して第1配線層14、第2配線層15および第3配線層16と電気的に接続されている。
【0049】
バリア導電層48は、100nm以上500nm以下(この形態では100nm程度)の厚さを有していてもよい。バリア導電層48は、単一の金属層からなる単層構造を有していてもよい。バリア導電層48は、複数の金属層が積層された積層構造を有していてもよい。
バリア導電層48は、Cu導電層49の熱膨張率よりも小さい熱膨張率を有していることが好ましい。また、バリア導電層48は、Cu導電層49の剛性率よりも大きい剛性率を有していることが好ましい。
【0050】
バリア導電層48は、チタン、窒化チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロムまたはルテニウムのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの金属材料によれば、Cu導電層49の熱膨張率よりも小さい熱膨張率(4μm/m・K以上9μm/m・K以下)を有するバリア導電層48を実現できる。Cu導電層49が高純度銅からなる場合、Cu導電層49の熱膨張率は16.5μm/m・K程度である。
【0051】
バリア導電層48は、タンタル、タングステン、モリブデン、クロムまたはルテニウムのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの金属材料によれば、Cu導電層49の熱膨張率よりも小さい熱膨張率(4μm/m・K以上7μm/m・K以下)を有するバリア導電層48を実現できる。
また、これらの金属材料によれば、Cu導電層49の剛性率よりも大きい剛性率(50Gpa以上180Gpa以下)を有するバリア導電層48を実現できる。Cu導電層49が高純度銅からなる場合、Cu導電層49の剛性率は48Gpa程度である。
【0052】
Cu導電層49は、パッド配線層29の内の大部分を占めている。Cu導電層49は、2μm以上6μm以下の厚さを有していてもよい。Cu導電層49は、上面49a(第1面)と、上面49aの反対側に位置する下面49b(第2面)と、上面49aおよび下面49bを接続する側面49c(端面)とを有している。Cu導電層49の下面49bは、バリア導電層48と機械的および電気的に接続されている。
【0053】
Cu導電層49の下面49bの周縁は、バリア導電層48の周縁からバリア導電層48の内方に離れている。Cu導電層49の下面49bは、パッシベーション層2の上面23に沿う方向に関して、Cu導電層49の上面49aよりも幅狭に形成されている。
より具体的には、Cu導電層49において、側面49cの下面49b側の領域には、Cu導電層49の内方に向かって窪み、かつ、バリア導電層48の縁部の上面を露出させる凹部50が形成されている。
【0054】
凹部50は、Cu導電層49の斜め上方に向かって膨らむ凸湾曲状に形成されている。これにより、凹部50の内面は、凸湾曲面とされている。この凹部50によって、Cu導電層49の下面49bが、Cu導電層49の上面49aよりも幅狭に形成されている。
Cu導電層49の側面49cは、この形態では、バリア導電層48の周縁(側面)よりも外側に位置している。したがって、バリア導電層48の周縁(側面)は、この形態では、Cu導電層49の下面49bの周縁とCu導電層49の側面49cとの間の領域に位置している。Cu導電層49の側面49cは、バリア導電層48の周縁(側面)よりも内側に位置していてもよい。
【0055】
パッド配線層29は、Cu導電層49の上面49aに形成された第2導電層51を含む。第2導電層51は、Cu導電層49の上面49aを被覆するようにCu導電層49の上面49aの上に形成されている。
第2導電層51は、Cu導電層49の上面49aと機械的および電気的に接続された第1部分52と、第1部分52からCu導電層49の側面49cよりも外側に張り出した第2部分53とを含む。第2部分53は、パッド配線層29の厚さ方向上部に形成された庇状であるため、庇部57と称してもよい。
【0056】
第2導電層51は、上面51a(第1面)と、上面51aの反対側に位置する下面51b(第2面)と、上面51aおよび下面51bを接続する側面51c(端面)とを有している。第2導電層51の下面51bは、Cu導電層49(第1導電層56)と機械的および電気的に接続されている。
第2導電層51の側面51cは、Cu導電層49の側面49cよりもパッド配線層29の外側に配置されている。これにより、庇部57の下方には、第2導電層51の側面51cとCu導電層49の側面49cとの段差に起因する凹部59が形成されている。この実施形態では、
図17に示すように、庇部57は、平面視においてパッド配線層29の外周全体にわたって環状に形成されている。これにより、凹部59は、環状の庇部57の下方の全周に亘って環状に形成されている。凹部59は、パッシベーション層2の上面23、第1導電層56の側面49cおよび庇部57で囲まれた部分であってもよい。
【0057】
第2導電層51は、この形態では、Cu導電層49の上面49aの上に形成された第1層54と、第1層54の上に形成された第2層55とを含む積層構造を有している。
第1層54および第2層55は、Cu導電層49およびCu柱状体18(後述)の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する材料からなる。たとえば、Cu導電層49およびCu柱状体18の線膨張係数が16.0以上18.0(10-6/℃)以下であり、第1層54および第2層55の線膨張係数が10.0以上15.0(10-6/℃)以下であってもよい。
【0058】
第1層54および第2層55に使用される材料としては、たとえば、Ni=13.3(10-6/℃)程度、Pd=11.8(10-6/℃)程度、Au=14.2(10-6/℃)程度、W=4.3(10-6/℃)程度、Pt=8.9(10-6/℃)程度、等が挙げられる。これらのうち、この実施形態では、第1層54がニッケル(Ni)層で形成され、第2層55がパラジウム(Pd)層で形成されている。
【0059】
第2層55は、第1層54の厚さよりも小さい厚さで形成されている。第2層55は、第2層55を構成するパラジウムの質量比率(質量%)が、第2層55を構成する他の成分に対して最も高い金属であってもよい。言い換えれば、第2層55は、パラジウムを主成分とする金属であればよい。また、第1層54は、第1層54を構成するニッケルの質量比率(質量%)が、第1層54を構成する他の成分に対して最も高い金属であってもよい。言い換えれば、第1層54は、ニッケルを主成分とする金属であればよい。
【0060】
第1層54の厚さは、0.5μm以上5μm以下であってもよい。第2層55の厚さは、0.05μm以上0.5μm以下であってもよい。
被覆絶縁膜58は、パッシベーション層2上に形成されている。
図19~
図22を参照して、被覆絶縁膜58について詳細に説明する。
まず
図19を参照して、被覆絶縁膜58は、パッシベーション層2上において庇部57の下方の凹部59に選択的に形成されている。この実施形態では、凹部59が平面視環状に形成されていることから(
図17参照)、被覆絶縁膜58も同様に環状に形成されている。環状の被覆絶縁膜58は、凹部59内において、第1導電層56を側方から包むことによって、第1導電層56の側面49cを被覆している。
【0061】
ここで、「凹部59に選択的に形成されている」とは、たとえば、被覆絶縁膜58の全部または大部分が、パッシベーション層2の上面23の領域のうち凹部59内の領域に形成されていることであってもよい。たとえば、第2導電層51の側面51cよりも外側への被覆絶縁膜58のはみ出し量Sが、パッド配線層29の厚さ方向における被覆絶縁膜58の第1厚さT
3よりも小さい範囲(S<T
3)であれば(
図21、
図22参照)、「被覆絶縁膜58が凹部59に選択的に形成されている」と定義してもよい。これにより、被覆絶縁膜58は、平面視において、庇部57の下方にほぼ隠れていてもよい。
【0062】
被覆絶縁膜58は、パッド配線層29の厚さ方向において、第2導電層51の側面51cに沿う側面58cを有している。「第2導電層51の側面51cに沿う側面58c」は、第2導電層51の側面51cから内側および外側へ幅W1(幅W1<第2導電層51の厚さT2)の範囲内の領域において、第2導電層51の側面51cに対してほぼ平行に形成にされた側面58cと定義してもよい。「側面51cに対してほぼ平行な面」は、側面51cに対して平行である面、および側面51cに対して、±5°程度に傾斜する面を含んでいてもよい。
【0063】
図19では、被覆絶縁膜58は、第2導電層51の側面51cから内側へ幅W
1の範囲内の領域において、側面51cよりもパッド配線層29の内側に配置された側面58cを有している。被覆絶縁膜58の側面58cは、その全体が側面51cに対してほぼ平行であってもよいし、一部が側面51cに対してほぼ平行であり、残りが側面51cに対してほぼ平行でなくてもよい。たとえば、
図19に示すように、第1導電層56の厚さ方向において側面58cを、側面51cに対してほぼ平行な第1領域581cと、側面51cに対してほぼ平行でない第2領域582cに分けたときを考える。この場合、第1領域581cが側面58cの50%超(好ましくは、70%以上90%以下)を占め、第2領域582cが側面58cの50%未満(好ましくは、10%以上30%以下)であってもよい。
図19に示すように、第1領域581cが第2領域582cに対して側面58cの下部側に形成されていてもよい。また、第2領域582cは、断面視において直線状であってもよいし、
図19に示すように弧状に形成されていてもよい。
【0064】
被覆絶縁膜58は、パッド配線層29の厚さ方向における第1厚さT
3と、パッド配線層29の厚さ方向に交差する方向における第2厚さT
4とを有している。被覆絶縁膜58の第2厚さT
4は、第1厚さT
3よりも小さい。たとえば、第1厚さT
3は、第1導電層56の厚さT
1と同じ(たとえば、2μm以上6μm以下程度)であってもよい。
パッド配線層29の周囲領域60においては、被覆絶縁膜58からパッシベーション層2の上面23が露出している。たとえば、
図17においては、隣り合うパッド配線層の間の領域61が周囲領域60であってもよく、当該領域61にパッシベーション層2の上面23が露出していてもよい。
【0065】
被覆絶縁膜58が凹部59に選択的に形成されていることから、第2導電層51の上面51aおよび側面51cは、被覆絶縁膜58から露出している。言い換えれば、被覆絶縁膜58は、パッド配線層29の第1導電層56を選択的に被覆する膜であり、第2導電層51は、被覆絶縁膜58に被覆されていない。したがって、第2導電層51の上面51aおよび側面51cは、上面51aと側面51cとの境界部51d(この実施形態では、第2導電層51の上部角部)を介して連続する露出面として、被覆絶縁膜58から露出している。とりわけ、第2導電層51の上面51aは、その全体が被覆絶縁膜58から露出している。したがって、第2導電層51の上面51aの全体が、接合部材22を接合可能なパッド領域として使用される。
【0066】
被覆絶縁膜58は、電気絶縁性を有する膜からなり、たとえば、樹脂膜であってもよい。樹脂膜としては、たとえば、ポリイミド樹脂膜、フェノール樹脂膜などが挙げられる。被覆絶縁膜58は、樹脂膜以外の絶縁膜(たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜など)であってもよい。
図20を参照して、被覆絶縁膜58は、第2導電層51の側面51cと面一な側面58cを有していてもよい。また、
図21および
図22を参照して、被覆絶縁膜58は、第2導電層51の側面51cから外側へ幅W
1の範囲内の領域において、側面51cよりもパッド配線層29の外側に配置された側面58cを有していてもよい。この場合、
図22に示すように、第2導電層51の側面51cの下部が、被覆絶縁膜58で選択的に被覆されていてもよい。
【0067】
図17および
図18を参照して、接合部材22(柱状体222)は、第2導電層51の上面51aに接合されており、上面51aから突出している。この実施形態では、1つのパッド配線層29に対して複数の接合部材22が接合されている。
図17を参照して、複数の接合部材22は、パッド配線層29の長手方向において、互いに間隔を空けて配列されていてもよい。
【0068】
接合部材22は、バリア層17と、銅を主成分とする金属を含み、バリア層17の主面の上に形成されたCu柱状体18とを含む積層構造を有している。ここで、Cu柱状体18を構成する「銅を主成分とする金属」とは、上述のCu導電層49の定義と同様である。
バリア層17は、パッド配線層29に機械的および電気的に接続されている。バリア層17は、100nm以上500nm以下(この形態では100nm程度)の厚さを有していてもよい。バリア層17は、単一の金属層からなる単層構造を有していてもよい。バリア層17は、複数の金属層が積層された積層構造を有していてもよい。
【0069】
Cu柱状体18は、20μm以上60μm以下の厚さを有していてもよい。また、柱状体222では、Cu柱状体18に代えて、Cu以外の材料からなる柱状体を適用してもよい。
接合層30は、接合部材22の柱状体222の先端面222A上に形成されている。接合層30は、部分的に柱状体222の側面222Bよりも側方に張り出した張出部19を有している。
【0070】
接合層30は、Cu柱状体18に接する部分に、Cu柱状体18の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する材料からなる層を有していてもよい。この実施形態では、接合層30は、柱状体222(Cu柱状体18)の上に形成された第1層24と、第1層24の上に形成された第2層25とを含む積層構造を有している。第1層24は、Cu柱状体18の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有する材料からなる。より具体的には、第1層24は、ニッケル層を含み、第2層25は、はんだ層を含んでいてもよい。
【0071】
ニッケル層としては、ニッケルの質量比率(質量%)が、ニッケル層を構成する他の成分に対して最も高い金属であってもよい。言い換えれば、第1層24は、ニッケルを主成分とする金属であればよい。
はんだ層としては、鉛がゼロもしくはほとんど含有されていない鉛フリーはんだが好ましい。鉛フリーはんだは、たとえば、SnAgCu系、SnZnBi系、SnCu系、SnAgInBi系、SnZnAl系等の各種材料を適用することができる。また、第2層25は、
図18に示すように、フリップチップ接合前では、略球形状に形成されていてもよい。
【0072】
図23A~
図23Pは、半導体装置A10の製造工程の一部を工程順に説明するための図である。
図24Aおよび
図24Bは、被覆絶縁膜58の形成に関連する工程を示す図である。
図25Aおよび
図25Bは、被覆絶縁膜58の形成に関連する工程を示す図である。以下では、Cu導電層49が高純度銅からなる場合を例にとって説明する。
半導体装置A10の製造に際して、まず、素子チップ20が製造される。
図23Aを参照して、多層配線構造1の上にパッシベーション層2が形成されたウエハ状の半導体基板(半導体層212)が準備される。パッシベーション層2および第4層間絶縁膜7には、これらを貫通する第3ビア46が形成されている。次に、バリア導電層48が、パッシベーション層2の上に形成される。バリア導電層48は、たとえば、スパッタ法によって形成されてもよい。
【0073】
次に、
図23Bを参照して、バリア導電層48上に、Cuシード層9が形成される。Cuシード層9は、たとえば、スパッタ法によって形成されてもよい。次に、所定パターンを有するマスク26が、Cuシード層9の上に形成される。マスク26は、Cuシード層9においてCu導電層49を形成すべき領域を露出させる開口26aを選択的に有している。
【0074】
次に、
図23Cを参照して、Cu導電層49(第1導電層56)が形成される。Cu導電層49は、マスク26の開口26aから露出するCuシード層9の表面の上に形成される。Cu導電層49は、電解銅めっき法によって形成されてもよい。Cu導電層49は、マスク26の開口26aの深さ方向途中部まで形成される。Cu導電層49は、Cuシード層9と一体的に形成される。
【0075】
次に、
図23Dを参照して、第1層54および第2層55が、Cu導電層49の上面49aの上にこの順に形成される。第1層54および第2層55は、それぞれ、マスク26の開口26aから露出するCu導電層49の上面49aの上に形成される。第1層54および第2層55は、それぞれ、無電解めっき法によって形成されてもよい。
次に、
図23Eを参照して、マスク26が除去される。
【0076】
次に、
図23Fを参照して、Cuシード層9の不要な部分が、除去される。Cuシード層9は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。この工程では、Cu導電層49の一部がサイドエッチングされる。そのため、Cu導電層49の側面49cは、第2導電層51の側面よりも内方に位置するように形成される。サイドエッチングは、たとえば、互いに異なる導電材料からなる第1導電層56と第2導電層51との間の電池効果によって発生する。「電池効果」は、たとえば、互いに異なる導電材料が導通する状態でエッチング液等の水溶液に浸漬した場合に、両方の導電材料間に電圧が発生し、相対的にイオン化傾向が小さい材料が腐食する現象と定義されてもよい。
【0077】
これにより、第2導電層51が形成される。第2導電層51は、Cu導電層49の上面49aに機械的および電気的に接続された第1部分52と、第1部分52からバリア導電層48の側方に張り出した第2部分53(庇部57)とを含む。また、庇部57の下方に凹部59が形成される。
次に、
図23Gを参照して、バリア導電層48の不要な部分が、除去される。バリア導電層48は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。この工程では、バリア導電層48の厚さに応じた分だけ、Cu導電層49の直下に位置するバリア導電層48が除去される。そのため、バリア導電層48の側面は、Cu導電層49の側面49cよりも内方に位置するように形成される。
【0078】
次に、
図23Hを参照して、Cu導電層49において下面49bおよび側面49cを接続する角部が除去される。Cu導電層49の角部は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。ウエットエッチング工程は、バリア導電層48の主面が露出するまで行われる。これにより、Cu導電層49における側面49cの下面49b側の領域に、バリア導電層48の縁部の上面を露出させる凹部50が形成される。
【0079】
次に、
図23I、
図24Aおよび
図25Aを参照して、パッド配線層29を覆うように、パッシベーション層2上に絶縁層62が形成される。絶縁層62は、感光性の樹脂層(たとえば、ポリイミド樹脂膜、フェノール樹脂膜など)であってもよく、樹脂層以外の絶縁層(たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜など)であってもよい。絶縁層62は、たとえば、スピンコート法によって半導体ウエハ(半導体層212)の全面に形成されてもよい。絶縁層62の一部は、凹部59内に第1部分621(
図24Aにおいてグレーで塗られた部分)として入り込み、絶縁層62の残りは、凹部59外に第2部分622として露出する。
【0080】
絶縁層62が樹脂層である場合、
図24Aを参照して、絶縁層62に対して全面露光が行われる。この際、絶縁層62の第1部分621は庇部57で覆われている露光されず、非感光部となる。一方、絶縁層62の第2部分622は庇部57で覆われていないため露光され、感光部となる。つまり、第2導電層51の庇部57が、絶縁層62の第1部分621が感光されることを防止するマスクとして利用される。次に、
図24Bを参照して、露光後の絶縁層62を現像処理することによって、絶縁層62の非感光部である第1部分621が被覆絶縁膜58として残り、かつ絶縁層62の感光部である第2部分622が選択的に除去される。
【0081】
一方、
図25Aおよび
図25Bに示すように、絶縁層62のパターニングは、エッチバックによって行われてもよい。たとえば、絶縁層62を半導体ウエハ(半導体層212)の全面に形成した後、異方性のエッチバックを行ってもよい。この場合、絶縁層62の第1部分621は、上面23に対する法線方向において、庇部57に隠れていてエッチング液に晒されず、被覆絶縁膜58として残すことができる。
【0082】
次に、
図23Jを参照して、パッド配線層29を覆うように、バリア層17がパッシベーション層2上に形成される。バリア層17は、たとえば、スパッタ法によって形成されてもよい。次に、バリア層17上に、Cuシード層27が形成される。Cuシード層27は、たとえば、スパッタ法によって形成されてもよい。次に、所定パターンを有するマスク28が、Cuシード層27の上に形成される。マスク28は、Cuシード層27においてCu柱状体18を形成すべき領域を露出させる開口28aを選択的に有している。
【0083】
次に、
図23Kを参照して、Cu柱状体18が形成される。Cu柱状体18は、マスク28の開口28aから露出するCuシード層27の表面の上に形成される。Cu柱状体18は、電解銅めっき法によって形成されてもよい。Cu柱状体18は、マスク28の開口28aの深さ方向途中部まで形成される。
次に、
図23Lを参照して、第1層24(ニッケル層)が、Cu柱状体18の上に形成される。第1層24は、マスク28の開口28aから露出するCu柱状体18の上面に形成される。第1層24は、無電解めっき法によって形成されてもよい。次に、第1層24上に、第2層25(はんだ層)が形成される。これにより、接合層30が形成される。
【0084】
次に、
図23Mを参照して、マスク28が除去される。
次に、
図23Nを参照して、Cuシード層27の不要な部分が、除去される。Cuシード層27は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。この工程では、Cu柱状体18の一部がサイドエッチングされる。そのため、Cu柱状体18の側面222Bは、第1層24の側面よりも内方に位置するように形成される。
【0085】
次に、
図23Oを参照して、バリア層17の不要な部分が、除去される。バリア層17は、ウエットエッチングによって除去されてもよい。
次に、
図23Pを参照して、たとえば熱処理によって、第2層25が球形状に成形される。
その後、素子チップ20が導電部材10にフリップ接合される。次に、素子チップ20が導電部材10と共に封止樹脂40によって封止される。そして、封止樹脂40のダイシング工程が実施されて、半導体装置A10が切り出される。以上の工程を経て、半導体装置A10が製造される。
【0086】
以上、この素子チップ20では、
図18~
図22に示すように、第1導電層56の側面49cが被覆絶縁膜58で被覆されているので、Cuに起因するイオンがパッシベーション層2の上面23に沿って移動することを抑制することができる。これにより、パッド配線層29の周囲領域60におけるイオンマイグレーションを抑制することができる。より具体的には、隣り合うパッド配線層29間の領域61におけるイオンの移動を抑制し、イオンマイグレーションを抑制することができる。
【0087】
一方、被覆絶縁膜58が、パッド配線層29の庇部57の下方に選択的に形成されている。そのため、パッド配線層29の上面51aおよび当該上面51a近傍のパッド配線層29の側面51cの上部が、被覆絶縁膜58で被覆されていない。これにより、被覆絶縁膜58によるパッド配線層29の被覆部分を減らすことができるので、パッド配線層29への応力を低減することができる。
【0088】
たとえば、
図26の参考例のように、パッド配線層29の上面51aおよび側面51cが樹脂膜63で覆われ、当該樹脂膜63に接合部材22のコンタクト孔64が形成されている場合と比較する。この参考例では、パッド配線層29が樹脂膜63で覆われているため、たとえば、境界部51dおよびコンタクト孔64付近において、矢印65,66で示す方向に応力がかかりやすい。また、NiおよびPdと樹脂との密着性が乏しいため、この応力に起因して、樹脂膜63が剥離することも懸念される。これに対し、この実施形態では、パッド配線層29の上面51aおよび側面51cが被覆絶縁膜58から露出されているので、少なくとも、
図26に矢印65,66で示す応力を排除することができる。
【0089】
また、この実施形態に係る素子チップ20では、パッド配線層29の上面51aの全体が被覆絶縁膜58から露出している。したがって、
図26のようにパッド配線層29の上面51aの一部のみがコンタクト孔64からパッド67として露出している場合に比べて、より緩和な条件(例えば、寸法条件、位置ずれ条件など)で接合部材22を上面51aに接合することができる。
【0090】
また、凹部59に選択的に埋め込まれた被覆絶縁膜58の形成に際して、絶縁層62のパターニング時のマスクとしてパッド配線層29の庇部57が利用されるので、マスクの追加に伴うコスト上昇を防止することもできる。
本開示の実施形態について説明したが、本開示は他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、素子チップ20がフリップチップ接合される形態のみを示したが、素子チップ20は、半導体基板211の裏面を導電部材10に接合し、第2導電層51と導電部材10の各リードとをワイヤボンディングで接合してもよい。この場合、
図27に示すように、パッド配線層29の上面51aに、ボンディングワイヤ68が接合されてもよい。
【0091】
以上、本開示の実施形態は、すべての点において例示であり限定的に解釈されるべきではなく、すべての点において変更が含まれることが意図される。
この明細書および図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。
[付記1-1]
素子形成面(3)を有する半導体チップ(21)と、
前記半導体チップ(21)の前記素子形成面(3)に形成された絶縁層(2)と、
前記絶縁層(2)上に形成され、第1導電材料を含む第1導電層(49,56)、および前記第1導電層(49,56)上に形成され、前記第1導電材料とは異なる第2導電材料を含む第2導電層(51,54,55)を有し、前記第2導電層(51,54,55)が前記第1導電層(49,56)の端面(49c)に対して外側に突出することによって形成された庇部(57)を有するパッド配線層(29)と、
前記パッド配線層(29)に接合され、前記素子形成面(3)の素子(212A,212B)に電力を供給する接合部材(22)と、
前記絶縁層(2)上において前記庇部(57)の下方に選択的に形成され、前記パッド配線層(29)の周囲領域(60)に前記絶縁層(2)の上面(23)を露出させ、かつ前記第1導電層(49,56)の端面(49c)を被覆する被覆絶縁膜(58)とを含む、半導体装置(A10)。
【0092】
この構成によれば、第1導電層(49,56)の端面(49c)が被覆絶縁膜(58)で被覆されているので、第1導電材料に起因するイオンが絶縁層(2)の上面(23)に沿って移動することを抑制することができる。これにより、パッド配線層(29)の周囲領域(60)におけるイオンマイグレーションを抑制することができる。一方、被覆絶縁膜(58)が、パッド配線層(29)の庇部(57)の下方に選択的に形成されている。そのため、パッド配線層(29)の上面(51a)および当該上面(51a)近傍のパッド配線層(29)の端面(51c)上部が、被覆絶縁膜(58)で被覆されていない。これにより、被覆絶縁膜(58)によるパッド配線層(29)の被覆部分を減らすことができるので、パッド配線層(29)への応力を低減することができる。
[付記1-2]
前記庇部(57)は、平面視において前記パッド配線層(29)の外周に沿って環状に形成されており、
前記被覆絶縁膜(58)は、前記環状の庇部(57)の下方の凹部(59)の全周に亘って形成され、前記第1導電層(49,56)を側方から被覆する環状の絶縁膜(58)を含む、付記1-1に記載の半導体装置(A10)。
【0093】
この構成によれば、第1導電層(49,56)の端面(49c)が凹部(59)の全周に亘って被覆されている。これにより、パッド配線層(29)の周囲領域(60)の全周に亘って、イオンマイグレーションを抑制することができる。
[付記1-3]
前記絶縁層(2)上において互いに間隔を空けて配置された複数の前記パッド配線層(29)を含み、
前記パッド配線層(29)の周囲領域(60)は、隣り合う前記パッド配線層(29)の間の領域(61)を含む、付記1-1または付記1-2に記載の半導体装置(A10)。
【0094】
この構成によれば、隣り合うパッド配線層(29)間におけるイオンの移動を抑制し、イオンマイグレーションを抑制することができる。
[付記1-4]
前記第2導電層(51,54,55)は、前記接合部材(22)が接合され、前記被覆絶縁膜(58)から全体が露出した露出面である接合面(51a)を有している、付記1-1~付記1-3のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
【0095】
この構成によれば、第2導電層(51,54,55)の接合面(51a)の全体が被覆絶縁膜(58)から露出している。そのため、少なくとも、第2導電層(51,54,55)の接合面(51a)に対して被覆絶縁膜(58)から応力が直接加わることを防止することができる。また、第2導電層(51,54,55)の接合面(51a)の全体が露出しているので、第2導電層(51,54,55)の一部のみが所定形状の開口からパッドとして露出している場合に比べて、より緩和な条件(例えば、寸法条件、位置ずれ条件など)で接合部材(22)を接合面(51a)に接合することができる。
[付記1-5]
前記被覆絶縁膜(58)は、平面視において前記庇部(57)の下方にほぼ隠れている、付記1-1~付記1-4のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-6]
前記被覆絶縁膜(58)は、前記パッド配線層(29)の厚さ方向において、前記第2導電層(51,54,55)の端面(51c)に沿う端面(58c)を有している、付記1-1~付記1-5のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-7]
前記被覆絶縁膜(58)の端面(58c)は、前記第2導電層(51,54,55)の端面(51c)よりも前記パッド配線層(29)の内側に配置されている、付記1-6に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-8]
前記被覆絶縁膜(58)の端面(58c)は、前記第2導電層(51,54,55)の端面(51c)と面一である、付記1-6に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-9]
前記被覆絶縁膜(58)の端面(58c)は、前記第2導電層(51,54,55)の端面(51c)よりも前記パッド配線層(29)の外側に配置されている、付記1-6に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-10]
前記被覆絶縁膜(58)は、前記パッド配線層(29)の厚さ方向における第1厚さ(T3)と、前記パッド配線層(29)の厚さ方向に交差する方向における第2厚さ(T4)であって、前記第1厚さ(T3)よりも小さい第2厚さ(T4)とを有している、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-11]
前記被覆絶縁膜(58)は、樹脂膜(58)を含む、付記1-1~付記1-10のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-12]
前記樹脂膜(58)は、ポリイミド樹脂膜およびフェノール樹脂膜の少なくとも一方を含む、付記1-11に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-13]
前記第1導電層(49,56)は、Cu導電層(49)を含み、
前記第2導電層(51,54,55)は、前記Cu導電層(49)上のNi導電層(54)と、前記Ni導電層(54)上のPd導電層(55)とを含む、付記1-1~付記1-12のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-14]
前記接合部材(22)は、前記パッド配線層(29)の厚さ方向に延びる柱状体(222)を含む、付記1-1~付記1-13のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-15]
前記接合部材(22)は、ボンディングワイヤ(68)を含む、付記1-1~付記1-13のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-16]
前記半導体チップ(21)を支持する導電部材(10)と、
前記導電部材の一部および前記半導体チップ(21)を被覆する封止樹脂(40)とを含む、付記1-1~付記1-15のいずれか一項に記載の半導体装置(A10)。
[付記1-17]
素子形成面(3)を有する半導体基板(20)の前記素子形成面(3)に絶縁層(2)を形成する工程と、
前記絶縁層(2)上に、第1導電材料を含む第1導電層(49,56)、および前記第1導電材料とは異なる第2導電材料を含む第2導電層(51,54,55)を順に積層することによってパッド配線層(29)を形成する工程と、
前記パッド配線層(29)の前記第1導電層(49,56)を選択的にサイドエッチングすることによって、前記第1導電層(49,56)の端面(49c)に対して外側に突出する前記第2導電層(51,54,55)の一部からなる庇部(57)を前記パッド配線層(29)に形成する工程と、
前記パッド配線層(29)を覆うように前記絶縁層(2)上に第2絶縁層(62)を形成する工程と、
前記庇部(57)をマスクとして利用するパターニングによって、前記庇部(57)で覆われた前記第2絶縁層(62)の第1部分(621)を前記第1導電層(49,56)の端面(49c)を被覆する被覆絶縁膜(58)として残し、かつ前記庇部(57)で覆われていない前記第2絶縁層(62)の第2部分(622)を選択的に除去する工程とを含む、半導体装置(A10)の製造方法。
【0096】
この方法によれば、絶縁層(2)上において庇部(57)の下方に選択的に被覆絶縁膜(58)を残すことができる。また、少なくとも、パッド配線層(29)の上面(51a)および当該上面(51a)近傍のパッド配線層(29)の端面(51c)上部を、被覆絶縁膜(58)から露出させることができる。これにより、パッド配線層(29)の周囲領域(60)におけるイオンマイグレーションを抑制し、かつパッド配線層(29)への応力を低減することができる半導体装置(A10)を提供することができる。
【0097】
また、第2絶縁層(62)のパターニング時のマスクとしてパッド配線層(29)の庇部(57)が利用されるので、マスクの追加に伴うコスト上昇を防止することもできる。
[付記1-18]
前記第2絶縁層(62)は、感光性の樹脂層(62)を含み、
前記庇部(57)をマスクとして利用するパターニングは、前記樹脂層(62)に対して全面露光を行う工程と、露光後の現像処理によって、前記樹脂層(62)の非感光部である前記第1部分(621)を樹脂膜(58)として残し、かつ前記樹脂層(62)の感光部である前記第2部分(622)を選択的に除去する工程とを含む、付記1-17に記載の半導体装置(A10)の製造方法。
[付記1-19]
前記庇部(57)をマスクとして利用するパターニングは、前記第2絶縁層(62)をエッチバックすることによって、前記第2絶縁層(62)の前記第1部分(621)を被覆樹脂膜(58)として残し、かつ前記第2絶縁層(2)の前記第2部分(622)を選択的に除去する工程を含む、付記1-17に記載の半導体装置(A10)の製造方法。
【符号の説明】
【0098】
1 :多層配線構造
2 :パッシベーション層
3 :素子形成面
4 :第1層間絶縁膜
5 :第2層間絶縁膜
6 :第3層間絶縁膜
7 :第4層間絶縁膜
9 :Cuシード層
10 :導電部材
11 :第1リード
11A :第1入力端子
11B :第2入力端子
11C :出力端子
12 :第2リード
13 :第3リード
14 :第1配線層
15 :第2配線層
16 :第3配線層
17 :バリア層
18 :Cu柱状体
19 :張出部
20 :素子チップ
21 :チップ本体
22 :接合部材
22A :第1接合部材
22B :第2接合部材
23 :上面
24 :第1層
25 :第2層
26 :マスク
26a :開口
27 :Cuシード層
28 :マスク
28a :開口
29 :パッド配線層
30 :接合層
31 :第1バリア層
32 :第1バリア層
33 :第2バリア層
34 :第2バリア層
35 :第3バリア層
36 :第3バリア層
39 :第1ビア
40 :封止樹脂
41 :頂面
42 :底面
43 :第1ビアバリア膜
44 :第2ビア
45 :第2ビアバリア膜
46 :第3ビア
47 :第3ビアバリア膜
48 :バリア導電層
49 :Cu導電層
49a :上面
49b :下面
49c :側面
50 :凹部
51 :第2導電層
51a :上面
51b :下面
51c :側面
51d :境界部
52 :第1部分
53 :第2部分
54 :第1層(Ni層)
55 :第2層(Pd層)
56 :第1導電層
57 :庇部
58 :被覆絶縁膜
58c :側面
59 :凹部
60 :周囲領域
61 :領域
62 :絶縁層
63 :樹脂膜
64 :コンタクト孔
65 :矢印
66 :矢印
67 :パッド
68 :ボンディングワイヤ
101 :主面
102 :裏面
111 :主部
111A :第1入力端子
112 :側部
112A :第1端面
112B :部
112C :切込部
113 :突出部
113A :副端面
121 :第2端面
131 :第3端面
211 :半導体基板
212 :半導体層
212A :スイッチング回路
212B :制御回路
222 :柱状体
222A :先端面
222B :側面
222C :凹部
431 :第1側面
432 :第2側面
581c :第1領域
582c :第2領域
621 :第1部分
622 :第2部分
A10 :半導体装置
S :はみ出し量
T1 :厚さ
T2 :厚さ
T3 :第1厚さ
T4 :第2厚さ
W1 :幅