(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190422
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスに対するテープ巻き付け装置
(51)【国際特許分類】
B65H 81/06 20060101AFI20221219BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20221219BHJP
H01B 13/26 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B65H81/06 B
H01B13/012 Z
H01B13/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098739
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 晴美
【テーマコード(参考)】
5G327
【Fターム(参考)】
5G327CA02
5G327CC07
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で容易に、治具板の搬送速度のムラに影響されずに、品質の良いテープ巻きを行えるテープ巻き付け装置を提供する。
【解決手段】一定の搬送方向に搬送される治具板10と、治具板に対して相対移動可能であり初期位置から終了位置まで治具板と同期して移動するスライドベース20と、スライドベースに対して相対移動可能とされたテープ巻きユニット50と、テープ巻きユニット50をスライドベース20を基準にして相対移動させるスライド駆動機構60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の搬送方向に搬送されると共に、ワイヤハーネスのテープ巻き付け対象部位を、その軸線方向を前記搬送方向と平行な方向に揃えた状態で支持する治具板と、
前記治具板に対して当該治具板の搬送方向と平行な方向に相対移動可能に設けられ、予め設定された初期位置から終了位置までの間を前記治具板と同期して移動するスライドベースと、
前記スライドベースを前記治具板と同期して移動するようにセットすると共にそのセットを解除する同期セット及び解除機構と、
前記スライドベースが初期位置から終了位置まで移動した後に前記同期セット及び解除機構によるセットが解除された際に、前記スライドベースを前記一定の搬送方向と逆の方向に移動させて初期位置へ戻す戻し移動機構と、
前記スライドベースに対して、前記治具板の搬送方向と平行な方向に相対移動可能に設けられ、テープ巻き付けヘッドを前記ワイヤハーネスのテープ巻き付け対象部位の軸線周りに回転させることにより、前記テープ巻き付け対象部位の外周にテープを巻き付けるテープ巻きユニットと、
前記テープ巻きユニットを前記スライドベースに対して相対移動させるスライド駆動機構と、
前記同期セット及び解除機構、前記戻し移動機構、及び、前記スライド駆動機構を動作制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記ワイヤハーネスに対するテープ巻き付け時に、前記治具板と同期して移動する前記スライドベースを基準にして、前記テープ巻き付けユニットを前記スライドベースに対して相対移動制御する、
テープ巻き付け装置。
【請求項2】
前記スライドベースに、前記同期セット及び解除機構として、
セット時にストッパを突出させることで該ストッパを前記治具板に係合させ、セット解除時に前記ストッパを後退させることで前記治具板に対する前記ストッパの係合を解除するストッパ駆動機構が設けられている、
請求項1に記載のテープ巻き付け装置。
【請求項3】
前記スライドベースに、前記ワイヤハーネスに対するテープ巻き付け時に、前記ワイヤハーネスのテープ巻き付け対象部位の前記搬送方向における前側の位置で前記ワイヤハーネスを挟んで振れ止めする把持機構が設けられている、
請求項1又は2に記載のテープ巻き付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具板と共に搬送されるワイヤハーネスの軸線周りにテープ巻き付けヘッドを回転させることにより、ワイヤハーネスの外周にテープを巻き付けるテープ巻き付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載されるワイヤハーネスは、幹線と分岐線とコネクタ等の各種部品により構成されている。この種のワイヤハーネスは、治具板の上にY型フォーク等の支持部材で支持しながら電線を配索し、電線にコネクタ等の各種部品を組み付ける等の多種の工程を経ることで製造されている。一般に工場では、多数のワイヤハーネスを流れ作業で製造するので、ワイヤハーネスを治具板と共にコンベア等の搬送装置で一定の搬送方向に搬送しながら、適宜に定められた場所で、該当する組み付け工程を実行することが行われている。
【0003】
それらの組み付け工程の中に、ワイヤハーネスに対し、例えば粘着テープ等のテープを巻き付けるテープ巻き付け工程が含まれている。テープの巻き付けには、複数本の電線や信号線を一纏めに束ねるために巻き付けるもの、複数本の電線等が収容された外装部材(コルゲートチューブ等)の外周に巻き付けるもの、識別のために巻き付けるもの、これらを任意に組み合わせるもの等があるが、ここでは、幹線の所定範囲(直線状の部位)に対してテープを巻き付ける工程について説明する。
【0004】
テープの巻き付けを機械で行うものとして、治具板と共に搬送されるワイヤハーネスの軸線周りにテープ巻き付けヘッドを回転させることにより、ワイヤハーネスの外周にテープを巻き付けるテープ巻き付け装置が知られている。
【0005】
この装置においては、治具板が常に一定速度で移動していれば、定位置に配置したテープ巻きユニットにより、一定ピッチにテープを巻き付けることが容易にできる。しかしながら、治具板の搬送速度は、作業態様などに応じて速度に変化(ムラ等)が生じる可能性がある。
【0006】
そのため、巻き付け速度(テープ巻き付けヘッドの回転速度)が一定の場合、治具板の移動速度(ワイヤハーネスの送り速度)が速いと、巻き付けピッチが大きくなって、単位長さ当たりのテープの巻き量が少なくなってしまう。逆に、治具板の移動速度(ワイヤハーネスに送り速度)が遅いと、巻き付けピッチが小さくなって、巻き量が多くなってしまう、という現象が生じる。つまり、ワイヤハーネスの位置によって巻き量にムラが生じてしまうことになる。このように、様々な要因で治具板の搬送速度には変化が生じることが多く、その変化に対応させながらテープの巻き付けを高品質で実施することは難しい。
【0007】
その対策として、特許文献1に開示されたテープ巻き付け装置では、治具板の搬送路の適当な位置に、ワイヤハーネスの周方向(幹線の周方向)に沿って回転しながらワイヤハーネスにテープを巻き付ける巻き付けヘッドを備えたテープ巻きユニットを配置し、このテープ巻きユニットを、治具板の移動方向に沿って、制御した速度で移動させるように構成している。
【0008】
そして、この装置では、テープ巻き付け開始位置でのテープの巻き付け動作を終えた後、巻き付け動作を継続しながら、テープ巻きユニットの移動速度をワイヤハーネスの搬送速度に対して遅らせる(テープ巻きユニットの停止を含む)。これにより、ワイヤハーネスとテープ巻きユニットに速度差を生じさせ、その速度差によって、テープをワイヤハーネスに螺線状に巻き付けられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、予めワイヤハーネスの移動速度が分かっている場合には、テープ巻きの開始前に、テープ巻きユニットの移動速度を演算して、その値に基づいた制御速度でテープ巻きユニットを移動させればよいが、途中でワイヤハーネスの搬送速度が変化した場合などには対応できないという問題がある。
【0011】
その対策としては、治具板の搬送速度をセンサ等で検出して、センサの検出データに応じてテープ巻きユニットの移動速度を制御することが考えられる。しかし、余計なセンサや演算手段などを設けなくてはならず、構成が複雑化しコストが高くなる。また、センサで検出したデータに基づいてテープ巻きユニットの移動速度を制御したとしても、巻き付け精度を確保するのが難しいという問題もある。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で容易に、治具板の搬送速度のムラに影響されずに、品質の良いテープ巻きを行うことのできるワイヤハーネスに対するテープ巻き付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係るテープ巻き付け装置は、下記(1)~(3)を特徴としている。
(1) 一定の搬送方向に搬送されると共に、ワイヤハーネスのテープ巻き付け対象部位を、その軸線方向を前記搬送方向と平行な方向に揃えた状態で支持する治具板と、
前記治具板に対して当該治具板の搬送方向と平行な方向に相対移動可能に設けられ、予め設定された初期位置から終了位置までの間を前記治具板と同期して移動するスライドベースと、
前記スライドベースを前記治具板と同期して移動するようにセットすると共にそのセットを解除する同期セット及び解除機構と、
前記スライドベースが初期位置から終了位置まで移動した後に前記同期セット及び解除機構によるセットが解除された際に、前記スライドベースを前記一定の搬送方向と逆の方向に移動させて初期位置へ戻す戻し移動機構と、
前記スライドベースに対して、前記治具板の搬送方向と平行な方向に相対移動可能に設けられ、テープ巻き付けヘッドを前記ワイヤハーネスのテープ巻き付け対象部位の軸線周りに回転させることにより、前記テープ巻き付け対象部位の外周にテープを巻き付けるテープ巻きユニットと、
前記テープ巻きユニットを前記スライドベースに対して相対移動させるスライド駆動機構と、
前記同期セット及び解除機構、前記戻し移動機構、及び、前記スライド駆動機構を動作制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記ワイヤハーネスに対するテープ巻き付け時に、前記治具板と同期して移動する前記スライドベースを基準にして、前記テープ巻き付けユニットを前記スライドベースに対して相対移動制御する、
テープ巻き付け装置。
【0014】
上記(1)の構成のテープ巻き付け装置によれば、治具板の搬送速度によらず、テープ巻きユニットを、スライドベースに対して一定速度で相対移動させることができる。したがって、治具板の搬送速度にムラがあっても、スライドベースと一体に移動する治具板に支持されたワイヤハーネスに対して、テープ巻きユニットを一定速度で相対移動させることができる。そのため、治具板の搬送速度に関係なく、つまり治具板の搬送速度の変化を考慮する必要なく、テープを一定ピッチでワイヤハーネスに巻き付けることができ、良好なテープ巻き品質を得ることができる。
また、同期セット及び解除機構の動作制御だけで、スライドベースを治具板の動きに追従させることができるので、スライドベースを独立して治具板に同期移動させる機構を設ける必要がなく、構成の簡略化を図ることができる。また、治具板の搬送速度の変化に応じてテープ巻きユニットの動作制御を行うものではないので、余計なセンサや演算なども不要であり、構成の簡略化や実現の容易化を図ることができる。
また、テープ巻き付け対象部位の位置に応じて巻き数を異ならせる必要がある場合にも、治具板の搬送速度に関係なく容易に各位置を特定できるので、巻き数を異ならせる制御が容易になる。
【0015】
(2) 前記スライドベースに、前記同期セット及び解除機構として、
セット時にストッパを突出させることで該ストッパを前記治具板に係合させ、セット解除時に前記ストッパを後退させることで前記治具板に対する前記ストッパの係合を解除するストッパ駆動機構が設けられている、
上記(1)に記載のテープ巻き付け装置。
【0016】
上記(2)の構成のテープ巻き付け装置によれば、治具板が所定位置に搬送されてきたタイミングでストッパを突出することで、治具板に対してストッパを係合させ、治具板に対してスライドベースを連結させることができて、治具板の移動に同期してスライドベースを初期位置から終了位置に向けて移動させることができる。また、終了位置に到達したら、ストッパを後退させることで、治具板に対するストッパの係合を解除することができ、治具板に対するスライドベースの同期移動を解除することができる。したがって、治具板の搬送タイミングに応じたストッパの動作だけで、簡単にスライドベースを治具板の移動に同期させることができる。
【0017】
(3) 前記スライドベースに、前記ワイヤハーネスに対するテープ巻き付け時に、前記ワイヤハーネスのテープ巻き付け対象部位の前記搬送方向における前側の位置で前記ワイヤハーネスを挟んで振れ止めする把持機構が設けられている、
上記(1)又は(2)に記載のテープ巻き付け装置。
【0018】
上記(3)の構成のテープ巻き付け装置によれば、把持機構によってワイヤハーネスを把持することにより、テープ巻き付けに伴うワイヤハーネスの暴れを抑制することができ、安定した品質の良いテープ巻きを行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成で容易に、治具板の搬送速度のムラに影響されずに、品質の良いテープ巻きを行うことができる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るテープ巻き付け装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るテープ巻き付け装置の側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るテープ巻き付け装置におけるストッパ駆動機構の構成及び動作説明図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るテープ巻き付け装置におけるテープ巻きユニットのテープ巻き付けヘッドの概略構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るテープ巻き付け装置の治具板の搬送位置による動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係るテープ巻き付け装置の概略構成図、
図2は、テープ巻き付け装置の側面図である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のテープ巻き付け装置1は、ワイヤハーネスWを組み立てるための治具板10と、治具板10の搬送経路に沿った所定の作業エリアに配置されたスライドベース20及びテープ巻きユニット50と、を有している。ワイヤハーネスWは、幹線101や該幹線101から分岐する分岐線などの電線に、コネクタ等の各種部品105を取り付けることで構成されるもので、搬送される治具板10の上で組み立てられていく。
【0025】
治具板10は、
図2に示すように、コンベア等の搬送装置11のフレーム12に斜めに傾けた姿勢で載せられており、搬送装置11によって、一定の搬送方向(矢印A方向)に速度Vaで次々に搬送される。治具板10の作業板面(上面)には、ワイヤハーネスWのテープ巻き付け対象部位となる直線状の幹線101が、その軸線方向を搬送方向Aと平行な方向に揃えて、ストレートに延ばした状態で支持されている。この場合、テープ巻き付け対象部位(幹線101)は、その長さ方向の両端外側の位置をY型フォーク110等で支持されることにより、テープの巻き付け作業ができるように、治具板10の作業板面(表面)から浮かせた状態で支持されている。
【0026】
スライドベース20は、治具板10の下方の作業の邪魔にならない箇所に配置されており、治具板10に対して該治具板10の搬送方向Aと平行な方向(矢印B方向)に相対移動可能に設けられている。すなわち、
図2に示すように、スライドベース20は、搬送装置11のフレーム12の前面に対し、スライドガイド21を介して取り付けられている。このスライドベース20は、予め設定された初期位置から終了位置までの間を治具板10と同期して移動することができるように設けられている。そのための同期手段については後述する。ここで、スライドベース20の初期位置は、治具板10の搬送方向の上流側の位置として設定されている。また、終了位置は、治具板10の搬送方向の初期位置よりも下流側の位置として設定されている。
【0027】
そして、スライドベース20に、スライドベース20に対して治具板10の搬送方向Aと平行な方向(矢印C方向)に相対移動可能にテープ巻きユニット50が取り付けられている。すなわち、
図2に示すように、テープ巻きユニット50のベースフレーム53は、スライドベース20に対しスライドガイド22を介して取り付けられている。また、ベースフレーム53は、キャスタ52により床面を自由に移動できるようになっている。
【0028】
図1に示すように、スライドベース20の治具板10の搬送方向Aにおける前端部には、スライドベース20を治具板10と同期して移動するようにセットすると共にそのセットを解除する同期セット及び解除機構としてのストッパ駆動機構30が設けられている。
【0029】
図3は、同期セット及び解除装置としてのストッパ駆動機構30の構成及び動作説明図である。
図3中、(1)から(5)は、順に移行する特徴的なタイミングでの各部の状態を示しており、以下の内容を表している。
【0030】
(1)「原点待機」は、スライドベース20が初期位置(原点)にある時の状態を示している。
(2)「検出」は、移動する治具板10が同期セット動作を開始する位置に到達したことを検出した時の状態を示している。
(3)「係合」は、ストッパ駆動機構30が同期セット動作を行うことで、スライドベース20が治具板10と連結された時の状態を示している。
(4)「係合解除」は、同期した移動によりスライドベース20が終了位置に到達し、そのタイミングでストッパ駆動機構30が同期セット解除動作を行うことで、治具板10に対するスライドベース20の連結が解除された時の状態を示している。
(5)「原点戻し」は、同期解除後にスライドベース20を初期位置(原点)に戻す時の途中の状態を示している。
【0031】
ストッパ駆動機構30は、スライドベース20に固定されたエアシリンダ31と、エアシリンダ31のロッドの先端に取り付けられたストッパ32とを有している。ストッパ32は、治具板10の前端下端角部に係合できる形状とされている。
【0032】
ストッパ駆動機構30は、スライドベース20が初期位置にある状態で、治具板10の搬送方向の前端が接近してきた所定のタイミングで同期セット動作を行うように制御される。
【0033】
すなわち、
図3の(1)「原点待機」、(2)「検出」、(3)「係合」に示すように、ストッパ駆動機構30は、同期セット動作として、ストッパ32を治具板10の移動軌跡の範囲内に突出させる(矢印Y1の動作)ことで、ストッパ32を、移動する治具板10に係合させる。それにより、スライドベース20が治具板10と一体に同期して移動するようになる。つまり、治具板10の速度Vaとスライドベース20の速度Vbの関係が「Va=Vb」になり、スライドベース20が、治具板10の搬送方向Aと同じ矢印B1方向に移動する。
【0034】
同期セット動作を実行するタイミングは、ストッパ駆動機構30の手前に配置されたタイミング検出センサ35で検出する。
【0035】
一例として
図3に示したタイミング検出センサ35は、エアシリンダ36と作動片37で構成されている。作動片37は、エアシリンダ36の伸縮ロッドの先端に配置されており、伸長状態にあるロッドの先端の作動片37が、移動してくる治具板10の突起39に接触することで、治具板10が同期開始位置に到達したことを検出する。この検出信号により、ストッパ駆動機構30のエアシリンダ31がストッパ32を突出させる。
【0036】
なお、このタイミング検出センサ35は、同期成立後の適当なタイミング(例えば、ストッパ駆動機構30が同期セット解除動作としてエアシリンダ31のロッドを退縮させるタイミングと同じタイミング)で、作動片37を待機位置に一旦後退させ、その後、スライドベース20が初期位置に戻る前に、再び作動片37を突出位置に戻す。これは、後述するスライドベース20の戻し移動の際に、治具板10の突起39と作動片37が干渉しないようにする措置である。
【0037】
図3で説明すると、(4)「係合解除」、(5)「原点戻し」に示すように、スライドベース20が終了位置に到達すると、ストッパ駆動機構30が同期セット解除動作としてエアシリンダ31のロッドを退縮させる(矢印Y2の動作)。そうすると、ストッパ32が退避位置に後退し(矢印Y2の動作)、治具板10に対する係合が解除される。同じタイミングで、タイミング検出センサ35は、作動片37を一旦退避位置に退避させる(矢印Y3の動作)。これは、スライドベース20を初期位置に戻し移動する際に、治具板10の突起39と作動片37が干渉しないようにするために行われる。
【0038】
そして、係合解除が行われたら、戻し移動機構70(
図1参照)により、スライドベース20を初期位置(原点)に戻し移動する。すなわち、治具板10の搬送方向Aと逆の矢印B2方向に移動してスライドベース20を初期位置に戻す。この戻し移動の際に、ストッパ32と突起39は、互いに干渉しない位置関係に配置されている。戻し移動が開始された適当なタイミングで、タイミング検出センサ35は、作動片37を検出可能位置まで突出させる(矢印Y4の動作)。
【0039】
なお、スライドベース20が治具板10に同期移動して終了位置に到達したことを検出する方法としては、スライドベース20に移動リミッタを設けておいてもよいし、テープ巻きユニット50が作業を終了した時点を終了位置として認識するようにしてもよい。
【0040】
上述のタイミング検出センサ35は、機械式センサ(リミットスイッチ等)を用いたものであるが、タイミング検出センサとして、光学式のものを使用することもできる。例えば、治具板10側に反射板を取り付け、スライドベース20側に発光部と受光部を備えた光学センサを取り付ける。そして、光学センサの発光部から出た光が反射板で反射して受光部に入射したことにより、治具板10が同期セット動作を実行する位置に到達したことを検出するようにしてもよい。
【0041】
なお、戻し移動機構70は、スライドベース20が初期位置から終了位置まで移動した後に同期セット及び解除機構30によるセットが解除された際に、スライドベース20を治具板10の搬送方向と逆の方向に移動させて初期位置へ戻すための機構であり、ワイヤとプーリとモータを用いた構造としてもよいし、シリンダ等の他のアクチュエータを用いた構造としてもよい。
【0042】
次に、テープ巻きユニット50について説明する。テープ巻きユニット50としては、公知のものを使用することができる。前述したように、テープ巻きユニット50は、スライドベース20に対して、治具板10の搬送方向Aと平行な方向に相対移動可能に設けられている。テープ巻きユニット50は、治具板10の方向に前進・後退するアームの先にテープ巻き付けヘッド55を備えている。
【0043】
図4は、テープ巻きユニット50のテープ巻き付けヘッド55の概略構成を示す斜視図である。このテープ巻きユニット50は、テープ巻き付け時に、テープ巻き付けヘッド55をワイヤハーネスWまで前進させる。そして、ワイヤハーネスWのテープ巻き付け対象部位(幹線101)の軸線周りにテープ巻き付けヘッド55を回転させることにより、テープ巻き付け対象部位(幹線101)の外周にテープ58を巻き付ける。すなわち、テープ巻き付けヘッド55は、ワイヤハーネスWの周方向に沿って矢印Rのように回転しながら、リール状テープ57から引き出したテープ58をワイヤハーネスWに巻き付ける。
【0044】
テープ巻きユニット50には、テープ巻き付けヘッド55の他に、図示しないテープカット機構やワイヤハーネス押さえ機構を備えている。テープカット機構は、ワイヤハーネスに巻き付けたテープとリール状テープの間でテープを切断するものである。また、ワイヤハーネス押さえ機構は、テープ巻き付けヘッド55の両側でワイヤハーネスを暴れないように押さえるものである。これらの機構は、必要時に所定の動作をすることで所定の機能を果たすものであり、不必要時には他の作業の邪魔にならないように退避位置に後退するように設けられている。
【0045】
このテープ巻きユニット50とスライドベース20との間には、テープ巻きユニット50をスライドベース20に対して相対移動させるためのスライド駆動機構60が設けられている。スライド駆動機構は、図示しないモータを駆動制御することで、テープ巻きユニット50の位置や移動速度などを細かく制御することができる。
【0046】
また、スライドベース20の前端側(治具板10の移動方向における前端側)には、ワイヤハーネスWに対するテープ巻き付け時に、ワイヤハーネスWのテープ巻き付け対象部位(幹線101)の搬送方向における前側の位置でワイヤハーネスWを挟んで振れ止めする把持機構40が設けられている。この把持機構40も必要時のみ前進して、ワイヤハーネスWを一対の把持アームで挟むようになっている。
【0047】
さらに、テープ巻き付け装置1は、図示しない制御装置を備えている。この制御装置は、同期セット及び解除機構(ストッパ駆動機構30)、戻し移動機構70、スライド駆動機構60、把持機構40、テープ巻きユニット50などの全般を制御するためのものであり、大まかに次のような制御を実行する。以下、
図5に示す治具板10の搬送位置に応じた動作の流れと共に説明する。
【0048】
まず、「原点」の段階では、スライドベース20が初期位置に待機している。この段階では、ストッパ駆動機構30やテープ巻きユニット50も待機状態にあり、治具板10と共にワイヤハーネスWが速度Vaで矢印A方向に搬送されている。
【0049】
治具板10の前端がスライドベース20が初期位置に到達すると、先に説明したタイミング検出センサ35がそれを検出し、ストッパ駆動機構30が動作してストッパ(前述)を突出させる。これにより、「係合」の段階に入る。すなわち、ストッパ駆動機構30のストッパが突出して治具板10と係合する。これにより、スライドベース20が治具板10と同期して移動するようになる。
【0050】
一方、スライドベース20に対しテープ巻きユニット50を、治具板10の搬送方向Aと逆の方向C2に移動させる。そうすると、治具板10と反対方向に相対移動するテープ巻きユニット50が、ワイヤハーネスWの巻き付け開始位置に至る。この段階で「巻き付け開始」となる。
【0051】
この「巻き付け開始」の段階で、テープ巻きユニット50が、テープ巻き付けヘッド55を退避位置からテープ巻き付け位置に前進させて、ワイヤハーネスWに対するテープ巻き付け動作を開始する。
【0052】
なお、このテープ巻き付け動作が始まる前に、把持機構40が動作して、ワイヤハーネスWの前端側を暴れないように把持する。また、テープ巻きユニット50のワイヤハーネス押さえ機構が動作して、テープ巻き付けヘッド55の前後の位置で、ワイヤハーネスWを暴れないように押さえる。
【0053】
巻き付け開始位置では、ワイヤハーネスWに対しテープ巻きユニット50を静止した関係に保つ(スライドベース20に対しテープ巻きユニット50を停止した状態に保つ)ことで、テープを一巻き以上に重ねて巻き付けることが可能である。
【0054】
次に「巻き付け途中」の段階では、スライドベース20に対しテープ巻きユニット50を一定速度で、治具板10の搬送方向と反対方向に相対移動させながら、テープ巻き付けを行う。そうすることにより、治具板10の移動速度によらずに、ワイヤハーネスWに対して一定の送り速度を保ちながら、テープ巻き付けヘッド55によるテープ巻きを行うことができる。したがって、ワイヤハーネスWの移動速度にムラが生じたとしても、一定のピッチでテープを巻き付けることができる。
【0055】
つまり、ワイヤハーネスWに対するテープ巻き付け時に、治具板10と同期して移動するスライドベース20を基準にして、テープ巻き付けユニット50をスライドベース20に対して相対移動制御することにより、ワイヤハーネスWの移動速度の変化に影響されずにテープ巻きを行うことができる。例えば、スライドベース20に対するテープ巻きユニット50の移動速度やテープ巻き付けヘッド55の回転速度を、治具板10の搬送速度になんら影響されずに決定して制御することができる。なお、スライドベース20に対するテープ巻きユニット50の移動速度Vc(治具板10の搬送方向と逆方向の速度)を治具板10の移動速度とほぼ等しくすると、テープ巻きユニット50は、あたかも定位置にて作業するように見えることになるので、テープ巻き付けユニット50を支えるキャスタ52をある程度簡素化することも可能になる。
【0056】
なお、「巻き付け途中」の段階では、テープ巻きユニット50のスライドベース20に対する移動速度やテープ巻き付けヘッド55の回転速度を自由に調整しながらテープの巻き付けを行うことができる。例えば、巻き付け始めは低速にし、途中で低速から高速に切り換え、あるいは逆に切り換え、コルゲートチューブのあるところは低速にする等、自由に調整することが可能である。
【0057】
次に、テープ巻きユニット50が終了位置に到達すると、「巻き付け終了」の段階に入る。この段階では、巻き付けたテープとテープリールの間でテープを切断すると共に、巻き付けヘッド55をテープ巻き付け位置から退避位置に後退させてワイヤハーネスWに対するテープ巻き付け動作を終了させる。
【0058】
巻き付け作業が終了したら、次に「原点戻し」の段階に入る。この段階では、同期セット及び解除機構であるストッパ駆動機構30をセット解除状態に動作させて、スライドベース20の治具板10との同期移動を終了させる。それと共に、戻し移動機構70によりスライドベース20を初期位置に戻す(矢印B2の動作)と共に、テープ巻きユニット50をスライドベース20に対する初期位置に戻す(矢印C1の動作)。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のテープ巻き付け装置1によれば、治具板10の搬送速度によらず、テープ巻きユニット50を、スライドベース20に対して一定速度で相対移動させることができる。したがって、治具板10の搬送速度にムラがあっても、スライドベース20と一体に移動する治具板10に支持されたワイヤハーネスWに対して、テープ巻きユニット50を一定速度で相対移動させることができる。そのため、治具板10の搬送速度に関係なく、つまり治具板10の搬送速度の変化を考慮する必要なく、テープを一定ピッチでワイヤハーネスWに巻き付けることができ、良好なテープ巻き品質を得ることができる。
【0060】
また、同期セット及び解除機構であるストッパ駆動機構30の動作制御だけで、スライドベース20を治具板10の動きに追従させることができるので、スライドベース20を独立して治具板10に同期移動させる機構を設ける必要がなく、構成の簡略化を図ることができる。また、治具板10の搬送速度の変化に応じてテープ巻きユニット50の動作制御を行うものではないので、余計なセンサや演算なども不要であり、構成の簡略化や実現の容易化を図ることができる。
【0061】
また、治具板10が所定位置に搬送されてきたタイミングでストッパ32を突出することで、治具板10に対してストッパ32を係合させ、治具板10に対してスライドベース20を連結させることができて、治具板10の移動に同期してスライドベース20を初期位置から終了位置に向けて移動させることができる。また、終了位置に到達したら、ストッパ32を後退させることで、治具板10に対するストッパ32の係合を解除することができ、治具板10に対するスライドベース20の同期移動を解除することができる。したがって、治具板10の搬送タイミングに応じたストッパ32の動作だけで、簡単にスライドベース20を治具板10の移動に同期させることができる。
【0062】
また、把持機構40によってワイヤハーネスWを把持することにより、テープ巻き付けに伴うワイヤハーネスWの暴れを抑制することができ、安定した品質の良いテープ巻きを行うことができる。
【0063】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るワイヤハーネスに対するテープ巻き付け装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 一定の搬送方向(A)に搬送されると共に、ワイヤハーネス(W)のテープ巻き付け対象部位(101)を、その軸線方向を前記搬送方向(A)と平行な方向に揃えた状態で支持する治具板(10)と、
前記治具板(10)に対して当該治具板(10)の搬送方向(A)と平行な方向に相対移動可能に設けられ、予め設定された初期位置から終了位置までの間を前記治具板(10)と同期して移動するスライドベース(20)と、
前記スライドベース(20)を前記治具板(10)と同期して移動するようにセットすると共にそのセットを解除する同期セット及び解除機構(30)と、
前記スライドベース(20)が初期位置から終了位置まで移動した後に前記同期セット及び解除機構(30)によるセットが解除された際に、前記スライドベース(20)を前記一定の搬送方向(A)と逆の方向に移動させて初期位置へ戻す戻し移動機構(70)と、
前記スライドベース(20)に対して、前記治具板(10)の搬送方向(A)と平行な方向に相対移動可能に設けられ、テープ巻き付けヘッド(55)を前記ワイヤハーネス(W)のテープ巻き付け対象部位(101)の軸線周りに回転させることにより、前記テープ巻き付け対象部位(101)の外周にテープ(58)を巻き付けるテープ巻きユニット(50)と、
前記テープ巻きユニット(50)を前記スライドベース(20)に対して相対移動させるスライド駆動機構(60)と、
前記同期セット及び解除機構(30)、前記戻し移動機構(70)、及び、前記スライド駆動機構(60)を動作制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記ワイヤハーネス(W)に対するテープ巻き付け時に、前記治具板(10)と同期して移動する前記スライドベース(20)を基準にして、前記テープ巻き付けユニット(50)を前記スライドベース(20)に対して相対移動制御する、
テープ巻き付け装置(1)。
【0065】
[2] 前記スライドベース(20)に、前記同期セット及び解除機構(30)として、
セット時にストッパ(32)を突出させることで該ストッパ(32)を前記治具板(10)に係合させ、セット解除時に前記ストッパ(32)を後退させることで前記治具板(10)に対する前記ストッパ(32)の係合を解除するストッパ駆動機構(30)が設けられている、
上記[1]に記載のテープ巻き付け装置(1)。
【0066】
[3] 前記スライドベース(20)に、前記ワイヤハーネス(W)に対するテープ巻き付け時に、前記ワイヤハーネス(W)のテープ巻き付け対象部位(101)の前記搬送方向(A)における前側の位置で前記ワイヤハーネス(W)を挟んで振れ止めする把持機構(40)が設けられている、
上記[1]又は[2]に記載のテープ巻き付け装置(1)。
【符号の説明】
【0067】
1 テープ巻き付け装置
10 治具板
11 搬送装置
20 スライドベース
21、22 スライドガイド
30 ストッパ駆動機構(同期セット及び解除機構)
31、36 エアシリンダ
32 ストッパ
37 作動片
39 突起
40 把持機構
50 テープ巻きユニット
52 キャスタ
53 ベースフレーム
55 テープ巻き付けヘッド
58 テープ
60 スライド駆動機構
70 戻し移動機構
101 テープ巻き付け対象部位
A 治具板の搬送方向
W ワイヤハーネス