(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190432
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20221219BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20221219BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20221219BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/03 300C
B60C11/12 C
B60C11/03 300B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098754
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐人
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC18
3D131BC34
3D131BC44
3D131CB06
3D131EB05U
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB23W
3D131EB23X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB43X
3D131EB44X
3D131EB46V
3D131EB46W
3D131EB46X
3D131EB47W
3D131EB47X
3D131EB48V
3D131EB48W
3D131EB48X
3D131EB62W
3D131EB72W
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB91X
3D131EB99V
3D131EB99W
3D131EB99X
3D131EC13V
3D131EC13W
3D131EC13X
3D131EC14V
3D131EC14W
3D131EC16V
(57)【要約】
【課題】優れた雪上旋回性能を発揮し得るタイヤを提供する
【解決手段】車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有するタイヤである。外側ショルダー陸部11には、複数の外側ショルダー横溝50が設けられている。内側ショルダー陸部15には、複数の内側ショルダー横溝55が設けられている。外側ショルダー横溝50のそれぞれは、内側溝部50iと、外側溝部50oとを含むことにより、タイヤ周方向の一方側に凸で折れ曲がっている。内側ショルダー横溝55のそれぞれは、内側溝部55iと、外側溝部55oとを含むことにより、タイヤ周方向の他方側に凸で折れ曲がっている。内側ショルダー横溝55の内側溝部55iの角度θ2iは、外側ショルダー横溝50の内側溝部50iの角度θ1iよりも大きい。内側ショルダー横溝55の外側溝部55oの角度θ2oは、外側ショルダー横溝50の外側溝部50oの角度θ1oよりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、
前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝と、最も前記第2トレッド端側に配された内側ショルダー周方向溝とを含み、
前記複数の陸部は、
前記外側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、前記第1トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、
前記内側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、前記第2トレッド端を含む内側ショルダー陸部とを含み、
前記外側ショルダー陸部には、前記外側ショルダー周方向溝から前記第1トレッド端を超えた位置まで延びる複数の外側ショルダー横溝が設けられ、
前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダー周方向溝から前記第2トレッド端を超えた位置まで延びる複数の内側ショルダー横溝が設けられ、
前記外側ショルダー横溝のそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝と前記第1トレッド端との間において、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜する内側溝部と、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜する外側溝部とを含むことにより、タイヤ周方向の一方側に凸で折れ曲がり、
前記内側ショルダー横溝のそれぞれは、前記内側ショルダー周方向溝と前記第2トレッド端との間において、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する内側溝部と、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する外側溝部とを含むことにより、タイヤ周方向の他方側に凸で折れ曲がり、
前記内側ショルダー横溝の前記内側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ2iは、前記外側ショルダー横溝の前記内側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ1iよりも大きく、
前記内側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ2oは、前記外側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ1oよりも小さい、
タイヤ。
【請求項2】
前記内側ショルダー横溝の前記内側溝部の前記角度θ2iと、前記外側ショルダー横溝の前記内側溝部の前記角度θ1iとの差は、5~20°である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記内側ショルダー横溝の前記外側溝部の前記角度θ2oと、前記外側ショルダー横溝の前記外側溝部の前記角度θ1oとの差は、10°以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記外側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向の長さは、前記内側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向の長さよりも大きい、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の外側ショルダー横溝の最大の溝幅は、前記複数の内側ショルダー横溝の最大の溝幅よりも大きい、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダー周方向溝から延び、かつ、前記第2トレッド端に達することなく途切れる複数の内側ショルダー途切れ溝が設けられている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記複数の内側ショルダー途切れ溝の最大の溝幅は、前記複数の内側ショルダー横溝の最大の溝幅よりも小さい、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記複数の内側ショルダー途切れ溝の最大の深さは、前記複数の内側ショルダー横溝の最大の深さよりも小さい、請求項6又は7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記複数の内側ショルダー途切れ溝のそれぞれは、前記内側ショルダー周方向溝と前記第2トレッド端との間において、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する内側溝部と、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する外側溝部とを含むことにより、前記内側ショルダー横溝と同じ向きに凸で折れ曲がっている、請求項6ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記内側ショルダー横溝は、前記内側溝部と前記外側溝部との間の折れ曲がり頂点を含み、
前記内側ショルダー途切れ溝は、前記内側溝部と前記外側溝部との間の折れ曲がり頂点を含み、
前記内側ショルダー途切れ溝の前記折れ曲がり頂点は、前記内側ショルダー横溝の折れ曲がり頂点よりもタイヤ軸方向内側に位置している、請求項9に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ショルダー陸部に複数本のショルダー横溝が設けられたタイヤが提案されている。前記タイヤは、前記ショルダー横溝によって雪上性能の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、雪上性能のより一層の向上が求められており、とりわけ、雪上での旋回性能の向上が求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、優れた雪上旋回性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端と、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝と、前記複数の周方向溝に区分された複数の陸部とを含み、前記複数の周方向溝は、最も前記第1トレッド端側に配された外側ショルダー周方向溝と、最も前記第2トレッド端側に配された内側ショルダー周方向溝とを含み、前記複数の陸部は、前記外側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、前記第1トレッド端を含む外側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、前記第2トレッド端を含む内側ショルダー陸部とを含み、前記外側ショルダー陸部には、前記外側ショルダー周方向溝から前記第1トレッド端を超えた位置まで延びる複数の外側ショルダー横溝が設けられ、前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダー周方向溝から前記第2トレッド端を超えた位置まで延びる複数の内側ショルダー横溝が設けられ、前記外側ショルダー横溝のそれぞれは、前記外側ショルダー周方向溝と前記第1トレッド端との間において、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜する内側溝部と、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜する外側溝部とを含むことにより、タイヤ周方向の一方側に凸で折れ曲がり、前記内側ショルダー横溝のそれぞれは、前記内側ショルダー周方向溝と前記第2トレッド端との間において、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する内側溝部と、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する外側溝部とを含むことにより、タイヤ周方向の他方側に凸で折れ曲がり、前記内側ショルダー横溝の前記内側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ2iは、前記外側ショルダー横溝の前記内側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ1iよりも大きく、前記内側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ2oは、前記外側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向に対する角度θ1oよりも小さい。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー横溝の前記内側溝部の前記角度θ2iと、前記外側ショルダー横溝の前記内側溝部の前記角度θ1iとの差は、5~20°であるのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー横溝の前記外側溝部の前記角度θ2oと、前記外側ショルダー横溝の前記外側溝部の前記角度θ1oとの差は、10°以下であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向の長さは、前記内側ショルダー横溝の前記外側溝部のタイヤ軸方向の長さよりも大きいのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の外側ショルダー横溝の最大の溝幅は、前記複数の内側ショルダー横溝の最大の溝幅よりも大きいのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダー周方向溝から延び、かつ、前記第2トレッド端に達することなく途切れる複数の内側ショルダー途切れ溝が設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の内側ショルダー途切れ溝の最大の溝幅は、前記複数の内側ショルダー横溝の最大の溝幅よりも小さいのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の内側ショルダー途切れ溝の最大の深さは、前記複数の内側ショルダー横溝の最大の深さよりも小さいのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記複数の内側ショルダー途切れ溝のそれぞれは、前記内側ショルダー周方向溝と前記第2トレッド端との間において、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜する内側溝部と、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜する外側溝部とを含むことにより、前記内側ショルダー横溝と同じ向きに凸で折れ曲がっているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー横溝は、前記内側溝部と前記外側溝部との間の折れ曲がり頂点を含み、前記内側ショルダー途切れ溝は、前記内側溝部と前記外側溝部との間の折れ曲がり頂点を含み、前記内側ショルダー途切れ溝の前記折れ曲がり頂点は、前記内側ショルダー横溝の折れ曲がり頂点よりもタイヤ軸方向内側に位置しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れた雪上旋回性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
【
図2】
図1の外側ショルダー陸部及び内側ショルダー陸部の拡大図である。
【
図3】
図1の外側ショルダー陸部及び外側ミドル陸部の拡大図である。
【
図4】
図1の内側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬期での使用を前提とした乗用車用の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような態様に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部等に文字やマークで表示されている(図示省略)。また、トレッド部2は、例えば、非対称パターン(トレッドパターンがタイヤ赤道Cに対して線対称ではないことを指す)に構成されている。
【0020】
トレッド部2は、車両装着時に車両外側となる第1トレッド端T1と、車両装着時に車両内側となる第2トレッド端T2とを含む。第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2は、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
【0021】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0025】
トレッド部2は、第1トレッド端T1と第2トレッド端T2との間でタイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3と、周方向溝3に区分された複数の陸部10とを含む。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2が4本の周方向溝3に区分された5つの陸部10を含む所謂5リブタイヤとして構成されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2が3本の周方向溝3と4つの陸部10とで構成された所謂4リブタイヤでも良い。
【0026】
周方向溝3は、外側ショルダー周方向溝4及び内側ショルダー周方向溝7を含む。外側ショルダー周方向溝4は、複数の周方向溝3の内、最も第1トレッド端T1側に設けられている。内側ショルダー周方向溝7は、複数の周方向溝3の内、最も第2トレッド端T2側に設けられている。
【0027】
本実施形態の周方向溝3は、外側ショルダー周方向溝4及び内側ショルダー周方向溝7に加え、外側クラウン周方向溝5及び内側クラウン周方向溝6を含む。外側クラウン周方向溝5は、外側ショルダー周方向溝4とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。内側クラウン周方向溝6は、内側ショルダー周方向溝7とタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0028】
周方向溝3は、タイヤ周方向に直線状に延びるものや、ジグザグ状に延びるもの等、種々の態様を採用し得る。本実施形態の具体的な態様は、後述される。
【0029】
外側ショルダー周方向溝4又は内側ショルダー周方向溝7の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~35%である。外側クラウン周方向溝5又は内側クラウン周方向溝6の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの3%~15%である。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における第1トレッド端T1から第2トレッド端T2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0030】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3mm以上であるのが望ましい。望ましい態様では、周方向溝3の溝幅W1は、トレッド幅TWの2.0%~6.0%である。本実施形態では、4本の周方向溝3の内、内側クラウン周方向溝6が最も大きい溝幅を有している。
【0031】
複数の陸部10は、外側ショルダー陸部11及び内側ショルダー陸部15を含む。外側ショルダー陸部11は、外側ショルダー周方向溝4のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、第1トレッド端T1を含んでいる。内側ショルダー陸部15は、内側ショルダー周方向溝7のタイヤ軸方向外側に配され、かつ、第2トレッド端T2を含んでいる。
【0032】
本実施形態の複数の陸部10は、上述の外側ショルダー陸部11及び内側ショルダー陸部15に加え、外側ミドル陸部12、内側ミドル陸部14及びクラウン陸部13を含む。外側ミドル陸部12は、外側ショルダー周方向溝4と外側クラウン周方向溝5との間に区分されている。すなわち、外側ミドル陸部12は、外側ショルダー周方向溝4を介して外側ショルダー陸部11と隣接している。内側ミドル陸部14は、内側ショルダー周方向溝7と内側クラウン周方向溝6との間に区分されている。すなわち、内側ミドル陸部14は、内側ショルダー周方向溝7を介して内側ショルダー陸部15と隣接している。クラウン陸部13は、外側クラウン周方向溝5と内側クラウン周方向溝6との間に区分されている。
【0033】
図2には、外側ショルダー陸部11及び内側ショルダー陸部15の拡大図が示されている。発明を理解し易いように、
図2では、外側ミドル陸部12、内側ミドル陸部14及びクラウン陸部13が省略されているのは言うまでもない。
【0034】
図2に示されるように、外側ショルダー陸部11には、複数の外側ショルダー横溝50が設けられている。外側ショルダー横溝50は、それぞれ、外側ショルダー周方向溝4から第1トレッド端を超えた位置まで延びている。なお、本明細書の各図では、第1トレッド端T1及び第2トレッド端T2よりもタイヤ軸方向外側の領域は、省略されている。また、内側ショルダー陸部15には、複数の内側ショルダー横溝55が設けられている。内側ショルダー横溝55は、それぞれ、内側ショルダー周方向溝7から第2トレッド端T2を超えた位置まで延びている。
【0035】
外側ショルダー横溝50のそれぞれは、外側ショルダー周方向溝4と第1トレッド端T1との間において、内側溝部50iと、内側溝部50iのタイヤ軸方向外側に配された外側溝部50oとを含む。内側溝部50iは、タイヤ軸方向に対して第1方向(本明細書の各図では、右上がりである。)に傾斜している。外側溝部50oは、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向(本明細書の各図では、右下がりである。)に傾斜している。これにより、外側ショルダー横溝50のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側に凸で折れ曲がっている。
【0036】
内側ショルダー横溝55のそれぞれは、内側ショルダー周方向溝7と第2トレッド端T2との間において、内側溝部55iと、内側溝部55iのタイヤ軸方向外側に配された外側溝部55oとを含む。内側溝部55iは、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。外側溝部55oは、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。これにより、内側ショルダー横溝55のそれぞれは、タイヤ周方向の他方側に凸で折れ曲がっている。
【0037】
なお、本明細書において、「横溝がタイヤ周方向に凸に折れ曲がっている」とは、横溝が局所的に曲がることにより、少なくとも、横溝の溝中心線の曲がっている領域が、横溝の全長の10%以下の範囲に収まっている態様を意味する。望ましい態様として、本実施形態の外側ショルダー横溝50及び内側ショルダー横溝55は、溝中心線の曲がっている領域が、溝の全長の5%以下の範囲に収まっている。より望ましい態様では、これらの横溝の溝中心線の曲がっている領域における曲率半径が、1.0mm以下とされる。
【0038】
本発明では、内側ショルダー横溝55の内側溝部55iのタイヤ軸方向に対する角度θ2iは、外側ショルダー横溝50の内側溝部50iのタイヤ軸方向に対する角度θ1iよりも大きい。また、内側ショルダー横溝55の外側溝部55oのタイヤ軸方向に対する角度θ2oは、外側ショルダー横溝50の外側溝部55oのタイヤ軸方向に対する角度θ1oよりも小さい。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、優れた雪上旋回性能を発揮することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0039】
本発明では、外側ショルダー横溝50及び内側ショルダー横溝55が折れ曲がることにより、比較的小さいスリップ角での旋回時では、内側ショルダー横溝55が大きな雪柱せん断力及びエッジによる摩擦力を提供する。また、比較的大きなスリップ角での旋回時では、外側ショルダー横溝50が大きな雪柱せん断力及びエッジによる摩擦力を提供する。したがって、広い範囲のスリップ角において、雪上旋回性能が向上する。
【0040】
また、外側ショルダー横溝50及び内側ショルダー横溝55が逆向きに凸で折れ曲がることにより、様々な旋回状態においても、比較的大きな雪上せん断力及びエッジによる摩擦力が期待できる。
【0041】
また、内側ショルダー横溝55の内側溝部55iの角度θ2iが、外側ショルダー横溝50の内側溝部50iの角度θ1iよりも大きいため、内側ショルダー陸部15のタイヤ軸方向のパターン剛性を上げることができ、雪上や氷上での旋回時の操縦安定性を向上させる効果が期待できる。一方、内側ショルダー横溝55の外側溝部55oの角度θ2oの角度が、外側ショルダー横溝50の外側溝部50oの角度θ1oよりも小さいため、外側ショルダー横溝50の外側溝部50oのエッジがタイヤ軸方向に大きな摩擦力を提供できる。また、このような角度の分布により、外側ショルダー陸部11の剛性が適度に低下するため、雪上や氷上において、接地圧の変化に対するグリップ力の過渡特性がリニアとなる。これにより、雪上や氷上での旋回時、運転者がタイヤの限界グリップ力を把握し易くなる。本発明では、このようなメカニズムにより、優れた雪上旋回性能を発揮できると考えられる。
【0042】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0043】
図1に示されるように、外側ショルダー周方向溝4は、例えば、一定の溝幅で直線状に延びている。一方、内側クラウン周方向溝6は、前記タイヤ周方向の一方側(外側ショルダー横溝50の凸の向きである。)に向かって溝幅が漸減する変幅部6aをタイヤ周方向に複数含んでいる。また、内側ショルダー周方向溝7も、前記タイヤ周方向の一方側に向かって溝幅が漸減する変幅部7aをタイヤ周方向に複数含んでいる。外側クラウン周方向溝5は、前記タイヤ周方向の他方側(内側ショルダー横溝55の凸の向きである。)に向かって溝幅が漸減する変幅部5aをタイヤ周方向に複数含んでいる。これら変幅部を含んだ周方向溝3は、内部で雪を強く押し固めることができ、雪上旋回性能を高めるのに役立つ。また、変幅部5aの向きが上記の様に特定されることにより、加速時及び減速時の両方において、大きな雪柱せん断力が発揮される。
【0044】
図2に示されるように、本実施形態では、内側ショルダー陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅W3は、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W2よりも小さいのが望ましい。具体的には、内側ショルダー陸部15の前記幅W2は、外側ショルダー陸部11の前記幅W2の75%~95%であり、望ましくは80%~90%である。これにより、内側ショルダー陸部15が適度に変形し易くなり、優れた雪上性能が得られる。
【0045】
外側ショルダー横溝50の内側溝部50iの前記角度θ1iは、例えば、5~15°である。内側ショルダー横溝55の内側溝部55iの前記角度θ2iは、例えば、20~35°である。また、前記角度θ1iと前記角度θ2iとの差は、例えば、5~20°である。このように、前記角度θ1iと前記角度θ2iとの差を比較的大きくすることにより、外側ショルダー周方向溝4から外側ショルダー横溝50内に流入する空気の移動速度と、内側ショルダー周方向溝7から内側ショルダー横溝55内に流入する空気の移動速度との差を大きくでき、各横溝が発生するノイズを効果的にホワイトノイズ化できる。
【0046】
外側ショルダー横溝50の外側溝部50oの前記角度θ1oは、例えば、5~10°である。内側ショルダー横溝55の外側溝部55oの前記角度θ2oは、例えば、3~7°である。また、前記角度θ1oと前記角度θ2oとの差は、例えば、10°以下である。これにより、第1トレッド端T1付近及び第2トレッド端T2付近での陸部の剛性の差を小さくできる。したがって、操舵時の手応えがリニアになり、優れた雪上旋回性能が得られる。
【0047】
より望ましい態様では、前記角度θ1oと前記角度θ2oとの差が、前記角度θ1iと前記角度θ2iとの差よりも小さくなっている。これにより、上述のノイズ性能の向上と、上述の雪上旋回性能の向上とがバランス良く得られる。
【0048】
本実施形態では、外側ショルダー横溝50における内側溝部50iと外側溝部50oとの間の折れ曲がり角度θ1bは、内側ショルダー横溝55における内側溝部55iと外側溝部55oとの間の折れ曲がり角度θ2bよりも大きい。これにより、これらの横溝が発生する各種のノイズの周波数帯域を分散させることができ、ノイズ性能が向上する。また、外側ショルダー横溝50の折れ曲がり角度θ1bが相対的に大きいため、外側ショルダー横溝50に起因した外側ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の剛性低下が抑制でき、雪上旋回性能を維持することができる。
【0049】
図2に示されるように、外側ショルダー横溝50の折れ曲がり角度θ1b、及び、内側ショルダー横溝55の折れ曲がり角度θ2bは、例えば、135~170°である。外側ショルダー横溝50の折れ曲がり角度θ1bは、より望ましくは150~170°である。内側ショルダー横溝55の折れ曲がり角度θ2bは、より望ましくは140~160°である。さらに望ましい態様では、前記折れ曲がり角度θ1bは、前記折れ曲がり角度θ2bの101%~120%とされ、より望ましい態様では105%~115%とされる。このような角度の配置により、ノイズ性能と雪上旋回性能とがバランス良く向上する。
【0050】
本実施形態において、前記折れ曲がり角度θ1bと、前記折れ曲がり角度θ2bとの角度差θ1b-θ2bは、望ましくは3°以上、より望ましくは8°以上であり、望ましくは28°以下、より望ましくは18°以下である。これにより、ノイズ性能を高めつつ、十分な雪上旋回性能を発揮することができる。
【0051】
外側ショルダー横溝50は、内側溝部50iと外側溝部50oとの間の折れ曲がり頂点50tを含む。外側ショルダー横溝50の前記折れ曲がり頂点50tは、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の中心位置11cよりもタイヤ軸方向内側に位置している。前記中心位置11cから前記折れ曲がり頂点50tまでのタイヤ軸方向の距離L3は、例えば、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W2の15%~25%である。このような外側ショルダー横溝50は、外側ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、優れたノイズ性能を発揮できる。
【0052】
同様の観点から、内側ショルダー横溝55は、内側溝部55iと外側溝部55oとの間の折れ曲がり頂点55tを含む。内側ショルダー横溝55の前記折れ曲がり頂点55tは、内側ショルダー陸部15の接地面のタイヤ軸方向の中心位置15cよりもタイヤ軸方向内側に位置している。前記中心位置15cから前記折れ曲がり頂点55tまでのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、内側ショルダー陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅W3の15%~25%である。
【0053】
さらに望ましい態様では、前記距離L4は、前記距離L3よりも小さいのが望ましい。これにより、各横溝が発生するノイズが、より一層ホワイトノイズ化され易くなる。
【0054】
外側ショルダー横溝50の外側溝部50oのタイヤ軸方向の長さL5は、例えば、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W2の60%~80%であり、望ましくは65%~75%である。また、内側ショルダー横溝55の外側溝部55oのタイヤ軸方向の長さL6は、例えば、内側ショルダー陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅W3の60%~75%であり、望ましくは65%~70%である。
【0055】
外側ショルダー横溝50の外側溝部50oのタイヤ軸方向の長さL5は、内側ショルダー横溝55の外側溝部55oのタイヤ軸方向の長さL6よりも大きいのが望ましい。具体的には、外側ショルダー横溝50の外側溝部50oの前記長さL5は、内側ショルダー横溝55の外側溝部55oの前記長さL6の105%~130%である。これにより、外側ショルダー陸部11の第1トレッド端T1付近の剛性が確保され、優れた雪上旋回性能が得られる。
【0056】
複数の内側ショルダー横溝55のそれぞれのタイヤ軸方向の内端は、外側ショルダー横溝50のタイヤ軸方向の内端に対してタイヤ周方向に位置ずれしているのが望ましい。なお、この態様は、少なくとも、内側ショルダー横溝55の溝中心線の内端と、外側ショルダー横溝50の溝中心線の内端とがタイヤ周方向に位置ずれしていることを意味する。内側ショルダー横溝55の前記内端と、外側ショルダー横溝50の前記内端とのタイヤ周方向の距離L7は、例えば、3~15mmであり、望ましくは5~10mmである。このような各横溝の配置は、周方向溝側からの空気の入力を分散させることができ、ノイズ性能を向上させるのに役立つ。
【0057】
外側ショルダー横溝50のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、外側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅W2の65%~75%である。内側ショルダー横溝55のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、例えば、内側ショルダー陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅W3の75%~90%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0058】
外側ショルダー横溝50の最大の溝幅、及び、内側ショルダー横溝55の最大の溝幅は、それぞれ、望ましくは3.0~8.0mmであり、より望ましくは4.0~7.0mmである。さらに望ましい態様では、複数の外側ショルダー横溝50の最大の溝幅が、複数の内側ショルダー横溝55の最大の溝幅よりも大きい。これにより、外側ショルダー横溝50が大きな雪柱せん断力を提供し、雪上旋回性能が向上する。
【0059】
外側ショルダー横溝50の最大の深さ、及び、内側ショルダー横溝55の最大の深さは、それぞれ、望ましくは8.0~10.0mmであり、より望ましくは8.0~9.0mmである。このような外側ショルダー横溝50及び内側ショルダー横溝55は、ノイズ性能と雪上旋回性能とをバランス良く向上させる。
【0060】
外側ショルダー陸部11は、例えば、複数の外側ショルダー横溝50で区分された複数の外側ショルダーブロック51を含む。外側ショルダーブロック51には、溝が設けられておらず、かつ、複数のサイプが設けられている。本実施形態の外側ショルダーブロック51には、例えば、複数の第1外側ショルダーサイプ53及び複数の第2外側ショルダーサイプ54が設けられている。
【0061】
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合って略平行に延びる2つの内壁間の幅が1.5mm以下であるものを意味する。また、「略平行」とは、2つの内壁の間の角度が10°以下である態様を意味する。サイプの前記幅は、望ましくは0.5~1.5mmであり、より望ましくは0.4~1.0mmとされる。実施形態の各サイプは、トレッド平面視においてジグザグ状に延び、かつ、サイプの深さ方向にもジグザグ状に延びる所謂3Dサイプとして構成されている。
【0062】
サイプの構成は、特に限定されるものではない、別の態様では、両側のサイプエッジの少なくとも一方が面取り部で構成されても良い。また、サイプの底部には、幅が1.5mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
【0063】
第1外側ショルダーサイプ53は、例えば、外側ショルダー周方向溝4からタイヤ軸方向外側に延び、かつ、外側ショルダーブロック51内で途切れている。本実施形態の第1外側ショルダーサイプ53は、例えば、外側ショルダー横溝50の内側溝部50iに沿って延びている。このような第1外側ショルダーサイプ53は、外側ショルダー陸部11の偏摩耗を抑制しつつ、雪上性能を高めることができる。
【0064】
第2外側ショルダーサイプ54は、例えば、第1外側ショルダーサイプ53のタイヤ軸方向外側に設けられており、両端が外側ショルダーブロック51内で途切れている。本実施形態の第2外側ショルダーサイプ54は、例えば、外側ショルダー横溝50の外側溝部50oに沿って延びている。
【0065】
より望ましい態様では、1つの外側ショルダーブロック51内において、第2外側ショルダーサイプ54の本数は、第1外側ショルダーサイプ53の本数よりも少ないのが望ましい。このようなサイプの配置は、第1トレッド端T1付近の偏摩耗を抑制するとともに、大きなスリップ角での旋回時においても、操舵の手応えをリニアにすることができる。
【0066】
内側ショルダー陸部15には、複数の内側ショルダー途切れ溝56が設けられている。内側ショルダー途切れ溝56は、内側ショルダー周方向溝7から延び、かつ、第2トレッド端T2に達することなく途切れている。このような内側ショルダー途切れ溝56は、ノイズ性能と雪上旋回性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0067】
複数の内側ショルダー途切れ溝56のそれぞれは、内側ショルダー周方向溝7と第2トレッド端T2との間において、内側溝部56iと、内側溝部56iのタイヤ軸方向外側に配された外側溝部56oとを含んでいる。内側溝部56iは、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。外側溝部56oは、前記第2方向に傾斜している。これにより、内側ショルダー途切れ溝56は、内側ショルダー横溝55と同じ向きに凸で折れ曲がっている。このような内側ショルダー途切れ溝56は、内側ショルダー陸部15の偏摩耗を抑制しつつ、上述の効果を発揮できる。
【0068】
内側ショルダー途切れ溝56の内側溝部56iと外側溝部56oとの間の折れ曲がり角度には、上述の内側ショルダー横溝55の折れ曲がり角度θ2bを適用できる。また、内側ショルダー途切れ溝56の内側溝部56iのタイヤ軸方向の角度には、上述の内側ショルダー横溝55の内側溝部55iの前記角度θ2iを適用できる。同様に、内側ショルダー途切れ溝56の外側溝部56oのタイヤ軸方向の角度には、上述の内側ショルダー横溝55の外側溝部55oの前記角度θ2oを適用できる。
【0069】
内側ショルダー途切れ溝56の外側溝部56oのタイヤ軸方向の長さは、内側ショルダー途切れ溝56の内側溝部56iのタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。これにより、内側ショルダー途切れ溝56と第2トレッド端T2との距離が十分に確保され、第2トレッド端T2付近の剛性低下が抑制されるため、優れた雪上旋回性能が発揮される。
【0070】
複数の内側ショルダー途切れ溝56の最大の溝幅は、複数の内側ショルダー横溝55の最大の溝幅よりも小さい。内側ショルダー途切れ溝56の最大の溝幅は、例えば、3.0mm以下であり、より望ましくは2.5mm以下である。また、複数の内側ショルダー途切れ溝56の最大の深さは、複数の内側ショルダー横溝55の最大の深さよりも小さい。内側ショルダー途切れ溝56の最大の深さは、例えば、3.0~7.0mmであり、望ましくは4.0~6.0mmである。
【0071】
内側ショルダー途切れ溝56は、内側溝部56iと外側溝部56oとの間の折れ曲がり頂点56tを含む。内側ショルダー途切れ溝56の折れ曲がり頂点56tと、内側ショルダー横溝55の折れ曲がり頂点55tとのタイヤ軸方向の距離は、例えば、10mm以下である。これにより、内側ショルダー途切れ溝56及び内側ショルダー横溝55が協働して雪上旋回性能を高めることができる。
【0072】
別の実施態様では、内側ショルダー途切れ溝56の折れ曲がり頂点56tは、内側ショルダー横溝55の折れ曲がり頂点55tよりもタイヤ軸方向内側に位置しているものでも良い。これにより、内側ショルダー陸部15の偏摩耗が抑制される。
【0073】
内側ショルダー陸部15は、例えば、複数の内側ショルダー横溝55で区分された複数の内側ショルダーブロック57を含む。本実施形態の内側ショルダーブロック57には、例えば、複数の第1内側ショルダーサイプ58及び複数の第2内側ショルダーサイプ59が設けられている。
【0074】
第1内側ショルダーサイプ58は、例えば、内側ショルダー周方向溝7からタイヤ軸方向外側に延び、かつ、内側ショルダーブロック57内で途切れている。本実施形態の第1内側ショルダーサイプ58は、例えば、内側ショルダー横溝55の内側溝部55iに沿って延びている。このような第1内側ショルダーサイプ58は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く向上させる。
【0075】
第2内側ショルダーサイプ59は、例えば、第1内側ショルダーサイプ58のタイヤ軸方向外側に設けられており、両端が内側ショルダーブロック57内で途切れている。本実施形態の第2内側ショルダーサイプ59は、例えば、内側ショルダー横溝55の外側溝部55oに沿って延びている。このような第2内側ショルダーサイプ59は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く向上させる。
【0076】
図3には、外側ショルダー陸部11及び外側ミドル陸部12の拡大図が示されている。
図3に示されるように、外側ミドル陸部12は、外側ミドル陸部12をタイヤ軸方向に横断する複数の外側ミドル横溝20に区分された複数の外側ミドルブロック24を含む。
【0077】
外側ミドル横溝20は、第1トレッド端T1側でタイヤ軸方向に延びる第1溝部21と、第2トレッド端T2側でタイヤ軸方向に延びる第2溝部22とを含む。また、第2溝部22が第1溝部21に対してタイヤ周方向の一方側に位置ずれすることにより、外側ミドル横溝20は、第1溝部21のエッジと第2溝部22のエッジとの間でタイヤ周方向に沿って延びる縦エッジ25を2つ含む。このような外側ミドル横溝20は、縦エッジ25がタイヤ軸方向に大きな摩擦力を提供し、雪上旋回性能を高めるのに役立つ。
【0078】
外側ミドル横溝20は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。外側ミドル横溝20のタイヤ軸方向に対する角度(第1溝部21及び第2溝部22の角度である。)は、例えば、45°以下であり、望ましくは15~25°である。このような外側ミドル横溝20は、雪上旋回性能の向上に役立つ。
【0079】
2つの縦エッジ25は、例えば、タイヤ周方向に平行に延びる仮想面で外側ミドルブロック24をタイヤ軸方向に3等分したときの中央の部分に含まれるのが望ましい。縦エッジ25のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、10°以下であり、望ましくは5°以下である。さらに望ましい態様として、本実施形態の縦エッジ25は、タイヤ周方向に対して平行に配されている。このような縦エッジ25は、雪上走行時、タイヤ軸方向に大きな反力を提供し、雪上旋回性能を確実に向上させる。
【0080】
外側ミドル陸部12には、複数の途切れ溝26が設けられているのが望ましい。途切れ溝26は、外側ショルダー周方向溝4から延び、かつ、外側ミドル陸部12内で途切れている。望ましい態様では、途切れ溝26は、外側ミドル横溝20の縦エッジ25よりも第1トレッド端T1側で途切れている。また、途切れ溝26のタイヤ軸方向の長さは、外側ショルダー横溝50の内側溝部50iのタイヤ軸方向の長さよりも小さい。このような途切れ溝26は、ノイズ性能を損ねることなく、雪上旋回性能を高めることができる。
【0081】
途切れ溝26は、例えば、外側ショルダー周方向溝4からその途切れ端26aに向かって溝幅が漸減している。また、途切れ溝26は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。途切れ溝26のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、45°以下であり、望ましくは10~25°である。
【0082】
さらに望ましい態様では、複数の途切れ溝26のそれぞれのタイヤ軸方向の外端は、外側ショルダー横溝50のタイヤ軸方向の内端と向き合っている。なお、この構成は、少なくとも、外側ショルダー周方向溝4における途切れ溝26の開口部について、その幅を維持したままタイヤ軸方向に平行に延長したときの領域(以下、途切れ溝延長領域という)が、外側ショルダー周方向溝4における外側ショルダー横溝50の開口部の少なくとも一部と重複する態様を意味する。望ましい態様では、前記途切れ溝延長領域のタイヤ周方向の幅の50%以上が、外側ショルダー横溝50の前記開口部と重複している。これにより、外側ショルダー横溝50及び途切れ溝26が協働して大きな雪柱を形成でき、雪上旋回性能がより一層向上する。
【0083】
外側ミドルブロック24には、複数の外側ミドルサイプ30が設けられている。外側ミドルサイプ30は、例えば、前記第1方向に傾斜している。外側ミドルサイプ30のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~25°である。サイプが波状に延びている場合、前記角度は、サイプの振幅の中心線で測定されるものとする。
【0084】
外側ミドルサイプ30の少なくとも1本は、外側ショルダー周方向溝4又は外側クラウン周方向溝5から延び、かつ、外側ミドルブロック24内に途切れ端を有する。このような外側ミドルサイプ30は、外側ミドルブロック24の剛性を維持しつつ、雪上ブレーキ性能を向上させることができる。
【0085】
本実施形態の外側ミドルブロック24には、第1溝部21と途切れ溝26との間に、ディンプル34が設けられている。このディンプル34は、タイヤ周方向に縦長の楕円形のエッジで囲まれた領域が凹んでいる。このようなディンプル34は、外側ミドルブロック24の剛性を適度に緩和し、外側ミドル横溝20や途切れ溝26に雪が詰まるのを抑制するのに役立つ。
【0086】
図4には、内側ミドル陸部14及び内側ショルダー陸部15の拡大図が示されている。
図4に示されるように、内側ミドル陸部14は、複数の内側ミドル横溝35で区分された複数の内側ミドルブロック36を含む。
【0087】
内側ミドル横溝35は、例えば、内側ミドル陸部14をタイヤ軸方向に完全に横断している。内側ミドル横溝35は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。内側ショルダー横溝55のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~25°である。
【0088】
望ましい態様では、複数の内側ミドル横溝35のそれぞれのタイヤ軸方向の外端は、内側ショルダー途切れ溝56のタイヤ軸方向の内端と向き合っている。なお、この構成は、少なくとも、内側ショルダー周方向溝7における内側ミドル横溝35の開口部について、その幅を維持したままタイヤ軸方向に平行に延長したときの領域(以下、内側ミドル横溝延長領域という)が、内側ショルダー周方向溝7における内側ショルダー途切れ溝56の開口部の少なくとも一部と重複する態様を意味する。望ましい態様では、内側ミドル横溝延長領域のタイヤ周方向の幅の50%以上が、外側ショルダー横溝50の前記開口部と重複している。これにより、内側ミドル横溝35及び内側ショルダー途切れ溝56が協働して大きな雪柱を形成でき、雪上旋回性能がより一層向上する。
【0089】
上述の効果をさらに高める観点から、内側ミドル横溝35をその長さ方向に平行に第2トレッド端T2側に延長した領域が、トレッド平面視において、内側ショルダー途切れ溝56の内側溝部56iの開口面積の50%以上と重複するのが望ましい。
【0090】
内側ミドル陸部14には、複数の横細溝38が設けられている。横細溝38は、内側ミドル陸部14をタイヤ軸方向に完全に横断している。横細溝38は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。また、横細溝38の溝幅及び深さは、内側ミドル横溝35の溝幅及び深さよりも小さい。このような横細溝38は、内側ミドル陸部14の剛性を維持しつつ、エッジ成分を増加させることができる。
【0091】
望ましい態様では、複数の横細溝38のそれぞれのタイヤ軸方向の外端は、内側ショルダー横溝55のタイヤ軸方向の内端と向き合っている。なお、この構成は、少なくとも、内側ショルダー周方向溝7における横細溝38の開口部について、その幅を維持したままタイヤ軸方向に平行に延長したときの領域(以下、横細溝延長領域という)が、内側ショルダー周方向溝7における内側ショルダー横溝55の開口部の少なくとも一部と重複する態様を意味する。望ましい態様では、横細溝延長領域のタイヤ周方向の幅の50%以上が、外側ショルダー横溝50の前記開口部と重複している。これにより、横細溝38が接地時に開き易くなって、エッジが提供する摩擦力が大きくなる。したがって、雪上性能が向上する。
【0092】
上述の効果をさらに発揮させる観点から、内側ショルダー横溝55の内側溝部55iをその長さ方向に平行にタイヤ赤道C側に延長した領域が、トレッド平面視において、横細溝38の開口面積の50%以上と重複するのが望ましい。
【0093】
内側ミドルブロック36には、複数の内側ミドルサイプ40が設けられている。内側ミドルサイプ40は、例えば、内側ミドルブロック36をタイヤ軸方向に完全に横断するフルオープンサイプ41と、内側クラウン周方向溝6から延び、かつ、内側ミドルブロック36内で途切れるセミオープンサイプ42とを含む。このような内側ミドルサイプ40は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0094】
本実施形態の内側ミドルブロック36には、セミオープンサイプ42と内側ショルダー周方向溝7との間に、ディンプル48が設けられている。このディンプル48は、タイヤ周方向に縦長の楕円形のエッジで囲まれた領域が凹んでいる。このようなディンプル48は、内側ミドルブロック36の剛性を適度に緩和し、その周辺の溝に雪が詰まるのを抑制することができる。
【0095】
図5には、クラウン陸部13の拡大図が示されている。
図5に示されるように、クラウン陸部13は、複数のクラウン横溝60で区分された複数のクラウンブロック61を含んでいる。
【0096】
クラウン横溝60は、クラウン陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断している。本実施形態のクラウン横溝60は、例えば、第1クラウン溝部60a及び第2クラウン溝部60bを含んでいる。第1クラウン溝部60aは、例えば、外側クラウン周方向溝5に連通し、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。第2クラウン溝部60bは、例えば、内側クラウン周方向溝6に連通し、タイヤ軸方向に対して前記第2方向に傾斜している。このようなクラウン横溝60は、内部で雪を強く押し固めることができ、雪上性能をより一層高めることができる。
【0097】
第1クラウン溝部60aの第1トレッド端T1側の外端部は、例えば、外側ミドル横溝20の第2溝部22をその長さ方向に沿って延長した領域と重複している。第2クラウン溝部60bの第2トレッド端T2側の外端部は、例えば、内側ミドル横溝35の内側クラウン周方向溝6側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した領域と重複している。
【0098】
クラウンブロック61には、第1クラウン途切れ溝62及び第2クラウン途切れ溝63が設けられている。第1クラウン途切れ溝62は、例えば、クラウン横溝60から延びかつクラウンブロック61内で途切れている。第2クラウン途切れ溝63は、内側クラウン周方向溝6から延びかつクラウンブロック61内で途切れている。このような第1クラウン途切れ溝62及び第2クラウン途切れ溝63は、クラウンブロック61の剛性を適度に緩和し、クラウン横溝60や内側クラウン周方向溝6に雪が詰まるのを抑制できる。
【0099】
クラウンブロック61には、複数のクラウンサイプ65が設けられている。クラウンサイプ65は、例えば、前記第2方向に傾斜している。
【0100】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0101】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ195/65R15のタイヤが、表1~2の仕様に基づき試作された。比較例として、
図1の基本トレッドパターンを有し、かつ、外側ショルダー横溝及び内側ショルダー横溝について、内側溝部及び外側溝部の角度の関係が、本発明の発明特定事項を充足しないタイヤが試作された。また、ノイズ性能を比較するための基準となるタイヤ(基準タイヤ)として、
図6に示されるように、外側ショルダー横溝a及び内側ショルダー横溝bが折れ曲がっていないタイヤが試作された。比較例のタイヤ及び基準タイヤは、上述の構成を除き、
図1に示されるものと実質的に同じパターンを有している。各テストタイヤについて、ノイズ性能及び雪上旋回性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×6.0JJ
タイヤ内圧:前輪200kPa、後輪200kPa
テスト車両:排気量1500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0102】
<雪上旋回性能>
上記テスト車両で雪上走行したときの旋回性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上旋回性能が優れていることを示す。
【0103】
<ノイズ性能>
上記テスト車両で70km/hの速度でドライ路面を走行したときの車外騒音の最大の音圧が測定された。結果は、前記基準タイヤの前記音圧との差である音圧減少量が、比較例の前記音圧減少量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、前記ノイズの最大の音圧が小さく、優れたノイズ性能を発揮していることを示す。
テストの結果が表1~2に示される。
【0104】
【0105】
【0106】
表1~2に示されるように、実施例のタイヤは、優れた雪上旋回性能を発揮していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、ノイズ性能が向上していることが確認できた。