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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190443
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20221219BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20221219BHJP
   A61M 60/109 20210101ALI20221219BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20221219BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20221219BHJP
【FI】
A61M1/36 123
A61M1/16 111
A61M60/109
A61M60/37
A61M60/531
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098770
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 和也
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】千秋 輝
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077DD01
4C077GG13
4C077HH09
4C077HH13
(57)【要約】
【課題】AV連結式の血液回路内の排液を行う場合に、血液回路がAV連結状態であることを判定する。
【解決手段】血液浄化装置は、脱血側回路と、返血側回路とを有し、脱血側回路の一端部及び返血側回路の一端部が血液浄化器を介して相互に繋がり、且つ、脱血側回路の他端部及び返血側回路の他端部が相互に繋がっていることによって、閉回路を形成可能な血液回路と、血液回路に設けられる血液ポンプと、脱血側回路及び返血側回路の一端部を経由して流体が流動可能な開状態と、流体が流動できない閉状態とを切替可能な流路切替部と、血液回路の内圧を検出する圧力検出部と、血液回路が閉回路を形成している状態で、血液回路の残液を所定の排出先に排液させる排液工程を行う制御部を備える。制御部は、閉状態の場合に、血液ポンプの回転により脱血側回路と返血側回路との間で圧力差を発生させた後、開状態に切り替え、圧力検出部の検出結果に基づき、圧力差を監視することによって、血液回路が閉回路であるか否かを判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から脱血される血液が流入する脱血側回路と、患者へ血液を返血する返血側回路とを有し、前記脱血側回路の一端部及び前記返血側回路の一端部が血液浄化器を介して相互に繋がり、且つ、前記脱血側回路の他端部及び前記返血側回路の他端部が直接又は間接に相互に繋がっていることによって、閉回路を形成可能である血液回路と、
前記血液回路に設けられる血液ポンプと、
前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動可能な開状態と、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動できない閉状態とを切替可能な流路切替部と、
前記血液回路の内圧を検出する圧力検出部と、
前記血液回路が前記閉回路を形成している状態で、前記血液回路の残液を所定の排出先に排液させる排液工程を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記血液ポンプの回転により前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させた後に、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断する判断工程を、さらに実行し、
前記判断工程において前記閉回路であると判断した場合、判断後において前記排液工程が実行される、血液浄化装置。
【請求項2】
前記血液ポンプは、前記脱血側回路に設けられている第1の血液ポンプであり、
前記血液浄化装置は、前記返血側回路に設けられている第2の血液ポンプをさらに備え、
前記制御部は、前記判断工程として、
前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記第1の血液ポンプ及び前記第2の血液ポンプを第1の方向に回転させることにより、前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させた後に、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断する、請求項1の血液浄化装置。
【請求項3】
前記圧力差は、前記脱血側回路が陰圧であり、前記返血側回路が陽圧であるときの圧力差である、請求項1または2の血液浄化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記判断工程において、前記圧力差の監視結果に基づき、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断し、
前記圧力差の監視結果は、前記脱血側回路と前記返血側回路との間で発生した前記圧力差が縮小したことを示す、請求項1または2の血液浄化装置。
【請求項5】
前記血液回路内の残液を排出するための第1の流体を前記血液回路に導入する導入部をさらに有し、
前記制御部は、前記流路切替部が開状態に切り替えているときに、前記導入部から前記第1の流体を前記血液回路に導入するとともに、前記血液ポンプを回転させることによって前記血液回路の残液を所定の排出先に排液する、請求項1の血液浄化装置。
【請求項6】
前記第1の流体は、空気、生理食塩液または透析液である、請求項5の血液浄化装置。
【請求項7】
患者から脱血される血液が流入する脱血側回路と、患者へ血液を返血する返血側回路とを有し、前記脱血側回路の一端部及び前記返血側回路の一端部が血液浄化器を介して相互に繋がり、且つ、前記脱血側回路の他端部及び前記返血側回路の他端部が直接又は間接に相互に繋がっていることによって、閉回路を形成可能である血液回路と、
前記血液回路に設けられる血液ポンプと、
前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動可能な開状態と、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動できない閉状態とを切替可能な流路切替部と、
前記血液回路の内圧を検出する圧力検出部と、
前記血液回路が前記閉回路を形成している状態で、前記血液回路の残液を所定の排出先に排液させる排液工程を実行する制御部と、を備えた血液浄化装置によって実行される方法であって、
前記制御部が、前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記血液ポンプの回転により前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させるステップと、
前記制御部が、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断するステップと、
前記判断するステップにおいて前記閉回路であると判断した場合、前記制御部が、判断後において前記排液工程を実行するステップと
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液回路内の排液を行う場合に血液回路の接続状態を自己診断する血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化装置は、患者を治療する際に使用され得る。血液浄化装置は、患者の体から脱血し、再び体内に返血するための血液回路を有する。血液回路は、ダイアライザと接続し得る脱血回路(動脈側回路ともいう)及び返血回路(静脈側回路ともいう)から主に構成される。ダイアライザは、血液浄化手段として知られている。
【0003】
患者の治療後、穿刺針を患者の体から抜き、血液回路内の液体を排液して廃棄する場合がある。これは、血液回路内に液体が残留している場合、その後の作業時に医療従事者に液体等がかかってしまうことを防ぐため、および血液回路やダイアライザを廃棄する際の廃棄コストを低減するために行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4160754号公報
【特許文献2】特許第6437349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、血液回路を閉ループにすることで患者にとって衛生的かつ安全に血液回路内の液体を排液する方法を開示している。しかしながら、特許文献1は、血液回路内の排液を開始する前に血液回路の接続状態を確認する方法について言及していない。正しく閉回路が形成されずに排液すると、血液回路から液漏れが生じてしまい、患者に接続された状態のままだと、不要な脱血が行われてしまう可能性がある。このように、適切に排液されない問題が生じ得る。
【0006】
AV連結式(閉ループ)の血液回路内を排液する工程は、患者に針が穿刺されておらず、脱血回路及び返血回路が連結された状態、すなわち、AV連結状態で行われる。特許文献2は、血液回路内の排液を行う前の工程で患者に針が接続されている可能性がある場合に血液ポンプを停止し、及び低速動作に制限する方法を開示している。しかしながら、特許文献2は、AV連結状態の判定を行うことに言及していない。
【0007】
本発明は、血液回路内の排液を行う場合に、血液回路がAV連結状態であることを判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様である血液浄化装置は、患者から脱血される血液が流入する脱血側回路と、患者へ血液を返血する返血側回路とを有し、前記脱血側回路の一端部及び前記返血側回路の一端部が血液浄化器を介して相互に繋がり、且つ、前記脱血側回路の他端部及び前記返血側回路の他端部が直接又は間接に相互に繋がっていることによって、閉回路を形成可能である血液回路と、前記血液回路に設けられる血液ポンプと、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動可能な開状態と、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動できない閉状態とを切替可能な流路切替部と、前記血液回路の内圧を検出する圧力検出部と、前記血液回路が前記閉回路を形成している状態で、前記血液回路の残液を所定の排出先に排液させる排液工程を実行する制御部と、を備える。前記制御部は、前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記血液ポンプの回転により前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させた後に、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断する判断工程を、さらに実行する。前記判断工程において前記閉回路であると判断した場合、判断後において前記排液工程が実行される。
【発明の効果】
【0009】
血液浄化装置は、AV連結式の血液回路内の排液を行う場合に、血液回路がAV連結状態であることを自己診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書において開示される実施形態の詳細な理解は、添付図面に関連して例示される以下の説明から得ることができる。
図1】第1の実施形態に係る血液浄化装置の構成を示す配管図である。
図2】第1の実施形態に係る、AV連結式の血液回路内の排液を開始する場合に実施する自己診断の動作フローを説明する図である。
図3】第1の実施形態に係る血液浄化装置の第1の状態を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る血液浄化装置の第2の状態を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る血液浄化装置の第3の状態を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る血液浄化装置の第4の状態を示す図である。
図7】AV連結状態の血液回路から排液する動作を説明する図である。
図8】第1の状態から第4の状態におけるA圧及びV圧の一覧を示した図である。
図9】第2の実施形態に係る、AV連結式の血液回路内の排液を開始する場合に実施する自己診断の動作フローを説明する図である。
図10】第2の実施形態に係る血液浄化装置の第5の状態を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る血液浄化装置の第6の状態を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る血液浄化装置の第7の状態を示す図である。
図13】第2の実施形態に係る血液浄化装置の第8の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、いくつかの実施形態に係る血液浄化装置を説明する。血液浄化装置は、透析治療のために使用される機器とすることができるが、本発明の要旨は、透析治療のための機器以外にも適用可能である。血液浄化装置は、透析液をダイアライザに流入させるための配管部と、患者の血液をダイアライザに流入させるための体外循環部を含む。本明細書では、本発明の要旨を血液浄化装置の体外循環部の構成を参照しながら説明する。
【0012】
本明細書では、動脈のことを対応する英単語の頭文字に基づいて「A」と称することがあり、静脈のことを対応する英単語の頭文字に基づいて「V」と称することがある。例えば、「動脈側の~」と書くところを「A側の~」と記載することがあり、「静脈側の~」と書くところを「V側の~」と記載することがある。また、本明細書で使用される「排液工程」は、血液回路内を排液する工程を意味する。
【0013】
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る血液浄化装置100の構成を示す配管図である。図1では、脱血回路の患者接続部11にて、脱血回路が患者の血管に接続されることが可能であり、返血回路の患者接続部12にて、返血回路が患者の血管に接続されることが可能であることが示されている。患者の治療後、脱血回路の患者接続部11及び返血回路の患者接続部12は患者の体から抜去され、血液回路16が閉ループになるように相互に連結される。患者接続部11及び患者接続部12は、任意の連結器を介して相互に連結されてもよい。これをAV連結状態13と呼ぶこととする。
【0014】
血液浄化装置100は、ACLP、Aチャンバ14、PCLP、A圧センサ15、血液回路16、血液ポンプ(BP1)、DIチャンバ17、DI圧センサ18、血液浄化器19、Vチャンバ20、V圧センサ21、VCLP、電磁弁22、排出部23、及び制御装置24を備える。制御装置24は、本明細書で説明する血液浄化装置100の動作を制御する。
【0015】
ACLPは、脱血回路に取り付けられたクランプであり、VCLPは、返血回路に取り付けられたクランプである。PCLPは、血液回路16のプライミング時などに透析液または生理食塩液などを血液回路16内に導入するライン(プライミングライン)に取り付けられたクランプである。クランプは、開閉により血液回路16を閉塞または開放する電磁弁であってよい。
【0016】
Aチャンバ14は、脱血回路のエアをトラップする。DIチャンバ17は、血液浄化器19に流れる血液中のエアをトラップする。Vチャンバ20は、返血回路のエアをトラップする。
【0017】
A圧センサ15は、Aチャンバ14における血液回路16内の圧力を測定するための圧力センサである。DI圧センサ18は、DIチャンバ17における血液回路16内の圧力を測定するための圧力センサである。V圧センサ21は、Vチャンバ20における血液回路16内の圧力を測定するための圧力センサである。
【0018】
BP1は、血液回路16内の血液、生理食塩液及び空気を所定の方向に送ることができる。BP1が正回転すると、血液、生理食塩液及び空気は、血液回路16を第1の方向30に流れ、BP1が逆回転すると、血液、生理食塩液及び空気は、血液回路16を第1の方向30とは逆向きの第2の方向40に流れる。本明細書で、正回転は、時計回りの回転を意味し、逆回転は、反時計回りを意味する。
【0019】
血液浄化器19は、ダイアライザと呼ばれ得る。血液浄化器19は、血液浄化膜を内在し、血液を導入する血液導入口及び導入した血液を導出する血液導出口を有し、透析液を導入する透析液導入口及び導入した透析液を排出する透析液排出口を有する。血液浄化器19は、血液導入口から導入した血液を、血液浄化膜を介して透析液に接触させて浄化する。
【0020】
排出部23は、血液浄化器19から排液回路を介して送られた血液中の老廃物及び水分を排液する脱気ポンプまたは除水ポンプである。排液回路は、血液浄化器19と排出部23の間を繋ぐ回路であり、図1では破線で示されている。電磁弁22は、血液浄化器19と排出部23の間に取り付けられ、開閉により排液回路を閉塞または開放する。
【0021】
AV連結式の血液回路内の排液を行う際、脱血回路の患者接続部11及び返血回路の患者接続部12は、任意の連結器を介して間接的に、あるいは介さずに直接的に連結されて、血液回路16を閉ループにする必要がある。AV連結状態13になっておらず、血液回路16が患者に接続されたまま排液工程を行うと、血液浄化装置100は、患者に空気または血液回路内の残留液を送り込み、及び脱血が続いて行われてしまうリスクを有する。また、血液回路16が患者から抜去されても、AV連結状態13になっておらず、プライミングラインまたは別の箇所から血液回路16に空気が導入されると、あるいはBP1が回転すると、脱血回路の患者接続部11及び/または返血回路の患者接続部12から血液回路内の残液が漏れ出す可能性がある。
【0022】
(自己診断の動作フロー)
以下、図2を参照しながら、第1の実施形態に係る、AV連結式の血液回路内の排液を開始する場合に実施する自己診断の動作フローを説明する。自己診断は、血液回路16がAV連結状態13であること、すなわち、閉ループ状態であることを確認するために行われる。
【0023】
S201にて、血液浄化装置100は、V圧センサ21と血液回路16が接続されていることを判定する。具体的には、血液浄化装置100は、ACLP、VCLP及び電磁弁22を閉じ、PCLPを開放してプライミングラインから空気、生理食塩液または透析液を導入して、BP1を正回転させる。この動作により、V側が加圧される。
【0024】
図3は、この状態(第1の状態)を示した図である。ACLP、VCLP及び電磁弁22は、閉じられているので、PCLPとは区別可能なように表示されている。BP1が正回転しているので、導入された空気、生理食塩液または透析液は、第1の方向30の矢印に沿って血液回路16内を進む。図3では、空気、生理食塩液または透析液の進む方向が複数の矢印によって示されている。この動作の結果、V側が陽圧となる。
【0025】
ACLP及びVCLPを閉じるのは、仮に、返血回路が患者に接続されている状態であっても、患者に対して気泡混入するリスクをなくすためであり、また、脱血回路が患者に接続されている場合に脱血されないようにするためである。
【0026】
S202にて、血液浄化装置100は、V側が加圧されたと判定した場合、V圧センサ21と血液回路16が接続されていると判定し、S203に処理が進む。V側が加圧されたかどうかの判定基準は、予め定められた基準とすることができる。一方、V側が加圧されていないと判定した場合、V圧センサ21と血液回路16が接続されていないと判定し、S209に処理が進む。
【0027】
S203にて、血液浄化装置100は、A側が患者に接続されていないことを判定する。この判定を行う理由は、仮に、脱血回路が患者に接続されていた場合、患者から脱血することになってしまうためである。具体的には、血液浄化装置100は、PCLPを閉じるとともに、ACLP及び電磁弁22を開放した上で、BP1を正回転させる。S201の処理とは異なり、PCLPは閉じたままであるため、空気、生理食塩液または透析液は血液回路16内に導入されず、A側は陰圧となる。
【0028】
図4は、この状態(第2の状態)を示した図である。BP1は、正回転しており、A側が陰圧になっていることが示されている。
【0029】
BP1の正回転によってV圧が上昇するため、血液浄化装置100は、電磁弁22を開放することにより、下流側(V側)を減圧することができる。
【0030】
S204にて、血液浄化装置100は、A側が患者に接続されていないことを判定する。具体的には、血液浄化装置100は、電磁弁22を閉塞してBP1の回転を停止し、A圧センサ15によりその後のA圧の変化を測定する。BP1は、しごきポンプであり、BP1が停止することでBP1部分が閉塞され、VCLP~ACLP~BP1までが密閉回路となり、A側の陰圧が保持される。A側が陰圧である条件は、任意の条件を設定することができ、BP1が停止した後、所定時間のA圧の変化が予め定められた範囲内となることであってよい。
【0031】
図5は、この状態(第3の状態)を示した図である。ACLPは開放されているが、PCLP及びVCLPは閉塞したままであり、BP1が停止しているため、A側の圧力は陰圧のままである。
【0032】
S205にて、A側の圧力が陰圧のままである場合、A側は患者に接続されていないと判定され、S206に処理が進む。一方、A側の陰圧が解消される場合、A側が患者に接続されている状態、または大気開放状態であると判定され、S209に処理が進む。なお、仮に、A側が患者に接続されている場合には、患者の体から脱血してしまう恐れがあるが、制御装置24は、少量の脱血となるようにS203でのBP1の回転量を制限するように構成され得る。
【0033】
S206にて、血液浄化装置100は、血液回路16のA側とV側が連結されており、AV連結状態13となっていることを判定する。具体的には、血液浄化装置100は、VCLPを開放することによりACLP及びVCLPを開放状態にし、A圧センサ15およびV圧センサ21によりA圧とV圧をそれぞれ測定し、両者の圧力差を比較する。PCLP及び電磁弁22は、閉じたままである。AV連結状態13となる条件は、例えば、A圧とV圧の差が縮小し、予め定められた範囲に収まる場合であってよい。ACLP及びVCLPを開放状態にするのは、A側とV側の圧力が平衡(均等)になるようにするためである。
【0034】
図6は、この状態(第4の状態)を示した図である。BP1は停止しているので、A側とV側の圧力が平衡になるように残留液が移動する。この状態において、血液浄化装置100は、A圧センサ15およびV圧センサ21によりA圧とV圧をそれぞれ測定し、両者の圧力差を比較して、AV連結状態13となる条件を満たしているかどうかを判定する。
【0035】
S207にて、AV連結状態13となっていると判定された場合、S208に処理が進み、一方、AV連結状態13となっていないと判定された場合、S209に処理が進む。
【0036】
S208に処理が進む場合、上述した処理によって、血液浄化装置100は、AV連結式の血液回路内の排液を行う前に、血液回路16がAV連結状態13(閉ループ状態)であることを自己診断できたことになる。
【0037】
S208にて、血液浄化装置100は、PCLPが閉塞されており、かつ、電磁弁22、ACLP及びVCLPを開放されている状態で、AV連結式の血液回路内の排液動作を開始する。図7は、AV連結状態13の血液回路16から排液する動作を説明する図である。血液浄化装置100は、Vチャンバ20の上部、Aチャンバ14の上部または血液回路16の任意の開放部(例えば、PCLP、DIチャンバ17の上部など)から空気を導入し、BP1を正回転する。BP1が正回転すると、血液回路16内の残液は、図7に示したように、第1の方向30に流れ、血液浄化器19を介して排出部23から排出される。
【0038】
なお、本発明の一実施形態では、血液浄化装置100は、S208の排液動作を行う際、BP1の回転量を任意に制御してもよい。例えば、血液浄化装置100は、BP1を第1の回転量に制限した状態で回転し始め、所定の時間が経過した後、第2の回転量に上げることができる。このようにBP1の回転量を制御するのは、万が一、脱血回路が患者に接続されていたとしても、患者の体からの脱血量を抑制するためである。
【0039】
図2の動作フローでは、血液回路16が閉ループになっていると判定された後に排液動作が行われることを説明したが、本発明はこの実施形態に限定されない。血液浄化装置100は、排液動作を開始した後に、血液回路16が閉ループになっていると判定した場合には、そのまま排液動作を続け、閉ループになっていない場合には、その時点で排液動作を中止するように構成されることも可能である。
【0040】
S209に処理が進む場合、上述した理由によって、何らかの不具合が発生しているため、S209にて、血液浄化装置100は、血液回路16内の排液動作を中断する。
【0041】
図8は、第1の状態から第4の状態におけるA圧及びV圧の一覧を示した図である。正常なAV連結状態13である場合、V圧はS201にて上昇した後、S206にて減少し、A圧はS203にて減少し、S206にて上昇する。
【0042】
一方、接続状態が異常であるケースは複数考えられ得る。まず、A側およびV側が患者に接続されている場合、S204にてA圧が上昇してきてしまい、エラーとなる。次に、A側が開放状態であり、かつV側が患者に接続されている場合、脱血回路から空気が導入されるため、A圧は変化せずエラーとなる。最後に、A側が閉塞状態であり、かつV側が患者に接続されている場合、V圧は上昇したままであり、かつA圧は減少したままである。
【0043】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、脱血回路の患者接続部11の穿刺針、及び返血回路の患者接続部12の穿刺針がそれぞれ、患者に接続される実施形態を説明したが、第2の実施形態は、SNDP(シングルニードルダブルポンプ)の構成を説明する。なお、シングルニードルの透析は、患者に対して1箇所のルートのみ確保して、血液の脱血と返血を交互に繰り返して透析を実施する方法であり、二股に分かれた専用の穿刺針または二股のチューブが使用される。シングルニードルの場合であっても、治療後に血液回路内の液体を排液して廃棄する場合があるため、本発明に係る、AV連結式の血液回路内の排液を行う場合の自己診断手法が適用可能である。
【0044】
第2の実施形態の構成では、第1の実施形態の構成に対して、第2の血液ポンプ(BP2)、SNチャンバ25及びSN圧センサ26が追加される。BP2は、V側の加圧または減圧を行うためのポンプである。SNチャンバ25は、Aチャンバ14、DIチャンバ17及びVチャンバ20と同様の部材でできており、シングルニードルによる治療時に圧力を蓄圧するバッファの役割を果たす。SN圧センサ26は、SNチャンバ25における血液回路16内の圧力を測定するための圧力センサである。図10の構成を参照すると、脱血時には、BP1が回転し、BP2が停止すると、SNチャンバ25に蓄圧され、一方、返血時には、BP1が停止し、BP2が回転すると、SNチャンバ25に蓄圧された分の血液が患者に返血される。
【0045】
(自己診断の動作フロー)
図9は、第2の実施形態に係る、AV連結式の血液回路内の排液を開始する場合に実施する自己診断の動作フローを説明する図である。図9の動作フローは、図2で説明した動作フローに類似している。自己診断は、血液回路16がAV連結状態13であること、すなわち、閉ループ状態であることを確認するために行われる。
【0046】
S901にて、血液浄化装置100は、V圧センサ21と血液回路16が接続されていることを判定する。具体的には、血液浄化装置100は、ACLP、VCLP及び電磁弁22を閉じ、PCLPを開放してプライミングラインから空気、生理食塩液または透析液を導入して、BP1及びBP2を正回転させる。この動作により、V側が加圧される。
【0047】
図10は、この状態(第5の状態)を示した図である。ACLP、VCLP及び電磁弁22は、閉じられているので、PCLPとは区別可能なように表示されている。BP1及びBP2が正回転しているので、導入された空気、生理食塩液または透析液は、第1の方向30の矢印に沿って血液回路16内を進む。図10では、空気、生理食塩液または透析液の進む方向が複数の矢印によって示されている。この動作の結果、V側が陽圧となる。
【0048】
ACLP及びVCLPを閉じるのは、仮に、返血回路が患者に接続されている状態であっても、患者に対して気泡混入するリスクをなくすためであり、また、脱血回路が患者に接続されている場合に脱血されないようにするためである。
【0049】
S902にて、血液浄化装置100は、V側が加圧されたと判定した場合、V圧センサ21と血液回路16が接続されていると判定し、S903に処理が進む。V側が加圧されたかどうかの判定基準は、予め定められた基準とすることができる。一方、V側が加圧されていないと判定した場合、V圧センサ21と血液回路16が接続されていないと判定し、S909に処理が進む。
【0050】
S903にて、血液浄化装置100は、A側が患者に接続されていないことを判定する。この判定を行う理由は、仮に、脱血回路が患者に接続されていた場合、患者から脱血することになってしまうためである。具体的には、血液浄化装置100は、PCLPを閉じるとともに、ACLP及び電磁弁22を開放した上で、BP1を正回転させ、BP2を逆回転させる。S901の処理とは異なり、PCLPは閉じたままであるため、空気、生理食塩液または透析液は血液回路16内に導入されず、A側は陰圧となる。
【0051】
図11は、この状態(第6の状態)を示した図である。BP1は、正回転しているため、A側は陰圧になっている。また、BP2が逆回転しているため、V側は減圧される。
【0052】
BP1の正回転およびBP2の逆回転によって血液回路16内の血液などの残留液は、血液浄化器19及び電磁弁22を介して排出部23から排出され、V側は減圧される。
【0053】
S904にて、血液浄化装置100は、A側が患者に接続されていないことを判定する。具体的には、血液浄化装置100は、電磁弁22を閉塞してBP1及びBP2の回転を停止し、A圧センサ15によりその後のA圧の変化を測定する。BP1は、しごきポンプであり、BP1が停止することでBP1部分が閉塞され、VCLP~ACLP~BP1までが密閉回路となり、A側の陰圧が保持される。A側が陰圧である条件は、任意の条件を設定することができ、BP1及びBP2が停止した後、所定時間のA圧の変化が予め定められた範囲内となることであってよい。
【0054】
図12は、この状態(第7の状態)を示した図である。ACLPは開放されているが、PCLP及びVCLPは閉塞したままであり、BP1が停止しているため、A側の圧力は陰圧のままである。
【0055】
S905にて、A側の圧力が陰圧のままである場合、A側は患者に接続されていないと判定され、S906に処理が進む。一方、A側の陰圧が解消される場合、A側が患者に接続されている状態、または大気開放状態であると判定され、S909に処理が進む。なお、仮に、A側が患者に接続されている場合には、患者の体から脱血してしまう恐れがあるが、制御装置24は、少量の脱血となるようにS903でのBP1及びBP2の回転量を制限するように構成され得る。
【0056】
S906にて、血液浄化装置100は、血液回路16のA側とV側が連結されており、AV連結状態13となっていることを判定する。具体的には、血液浄化装置100は、VCLPを開放することによりACLP及びVCLPを開放状態にし、A圧センサ15およびV圧センサ21によりA圧とV圧をそれぞれ測定し、両者の圧力差を比較する。PCLP及び電磁弁22は、閉じたままである。AV連結状態13となる条件は、例えば、A圧とV圧の差が縮小し、予め定められた範囲に収まる場合であってよい。ACLP及びVCLPを開放状態にするのは、A側とV側の圧力が平衡(均等)になるようにするためである。
【0057】
図13は、この状態(第8の状態)を示した図である。BP1及びBP2は停止しているので、A側とV側の圧力が平衡になるように残留液が移動する。この状態において、血液浄化装置100は、A圧センサ15およびV圧センサ21によりA圧とV圧をそれぞれ測定し、両者の圧力差を比較して、AV連結状態13となる条件を満たしているかどうかを判定する。
【0058】
S907にて、AV連結状態13となっていると判定された場合、S908に処理が進み、一方、AV連結状態13となっていないと判定された場合、S909に処理が進む。
【0059】
S908に処理が進む場合、上述した処理によって、血液浄化装置100は、AV連結式の血液回路内の排液を行う前に、血液回路16がAV連結状態13(閉ループ状態)であることを自己診断できたことになる。
【0060】
S908にて、血液浄化装置100は、PCLPが閉塞されており、かつ、電磁弁22、ACLP及びVCLPを開放されている状態で、AV連結式の血液回路内の排液動作を開始する。血液浄化装置100は、Vチャンバ20の上部、Aチャンバ14の上部または血液回路16の任意の開放部(例えば、PCLP、DIチャンバ17の上部など)から空気を導入し、BP1を正回転し、BP2を逆回転する。BP1が正回転すると、脱血回路の残液は、第1の方向30に流れ、返血回路の残液は、第2の方向40に流れて、血液浄化器19を介して排出部23から排出される。
【0061】
なお、本発明の一実施形態では、血液浄化装置100は、S908の排液動作を行う際、BP1の回転量を任意に制御してもよい。例えば、血液浄化装置100は、BP1を第1の回転量に制限した状態で回転し始め、所定の時間が経過した後、第2の回転量に上げることができる。このようにBP1の回転量を制御するのは、万が一、脱血回路が患者に接続されていたとしても、患者の体からの脱血量を抑制するためである。
【0062】
図9の動作フローでは、血液回路16が閉ループになっていると判定された後に排液動作が行われることを説明したが、本発明はこの実施形態に限定されない。血液浄化装置100は、排液動作を開始した後に、血液回路16が閉ループになっていると判定した場合には、そのまま排液動作を続け、閉ループになっていない場合には、その時点で排液動作を中止するように構成されることも可能である。
【0063】
S909に処理が進む場合、上述した理由によって、何らかの不具合が発生している。このため、S909にて、血液浄化装置100は、血液回路16内の排液動作を中断する。
【0064】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態の構成において、血液浄化器19及びVチャンバ20の間に第3の血液ポンプ(BP3)を設置する構成である。BP3の設置位置は、第2の実施形態と同様の位置であってよい。すなわち、BP3が正回転するとV圧が上昇、BP3が逆回転するとV圧が減少する。以下、図2のフローを参照しながら、第3の実施形態での変更点を説明する。
【0065】
S201にて、血液浄化装置100は、ACLP、VCLP及び電磁弁22を閉じ、PCLPを開放してプライミングラインから空気を導入して、BP1を正回転し、BP3を正回転させる。この動作により、V側が加圧される。第1の実施形態と比較して、BP1及びBP3が正回転しているので、相対的に短時間でV側が陽圧となる。
【0066】
S203にて、血液浄化装置100は、PCLPを閉じるとともに、ACLP及び電磁弁22を開放した上で、BP1を正回転させ、BP3を逆回転させる。S201の処理とは異なり、PCLPは閉じたままであるため、空気は血液回路16内に導入されず、A側は陰圧となる。血液浄化装置100は、BP3を逆回転させ、電磁弁22を開放することにより、V側を減圧することができる。
【0067】
このように、第3の実施形態では、2つの血液ポンプ(BP1、BP3)を使用することにより、第1の実施形態よりも効率的かつ短時間に自己診断を行うことができる。
【0068】
(発明の実施態様)
本発明の第1の実施態様は、患者から脱血される血液が流入する脱血側回路と、患者へ血液を返血する返血側回路とを有し、前記脱血側回路の一端部及び前記返血側回路の一端部が血液浄化器を介して相互に繋がり、且つ、前記脱血側回路の他端部及び前記返血側回路の他端部が直接又は間接に相互に繋がっていることによって、閉回路を形成可能である血液回路と、前記血液回路に設けられる血液ポンプと、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動可能な開状態と、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動できない閉状態とを切替可能な流路切替部と、前記血液回路の内圧を検出する圧力検出部と、前記血液回路が前記閉回路を形成している状態で、前記血液回路の残液を所定の排出先に排液させる排液工程を実行する制御部と、を備えた血液浄化装置である。制御部は、前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記血液ポンプの回転により前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させた後に、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断する判断工程を、さらに実行し、前記判断工程において前記閉回路であると判断した場合、判断後において前記排液工程が実行される。
【0069】
これにより、血液浄化装置は、AV連結式の血液回路内の排液を行う場合に、血液回路がAV連結状態であることを自己診断できるという効果を奏する。
【0070】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記血液ポンプは、前記脱血側回路に設けられている第1の血液ポンプであり、前記血液浄化装置は、前記返血側回路に設けられている第2の血液ポンプをさらに備える。制御部は、判断工程として、前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記第1の血液ポンプ及び前記第2の血液ポンプを第1の方向に回転させることにより、前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させた後に、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断する。
【0071】
これにより、血液浄化装置は、ダブルポンプの構成の場合に、AV連結式の血液回路内の排液を行う場合に、血液回路がAV連結状態であることを自己診断できるという効果を奏する。
【0072】
本発明の第3の実施態様は、第1の実施態様または第2の実施態様において、前記圧力差は、前記脱血側回路が陰圧であり、前記返血側回路が陽圧であるときの圧力差である。
【0073】
これにより、血液浄化装置は、脱血側回路が陰圧であり、返血側回路が陽圧である圧力差を監視することができるという効果を奏する。
【0074】
本発明の第4の実施態様は、第1の実施態様または第2の実施態様において、前記制御部は、前記判断工程において、前記圧力差の監視結果に基づき、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断し、圧力差の監視結果は、脱血側回路と返血側回路との間で発生した圧力差が縮小したことを示す。
【0075】
これにより、血液浄化装置が行う監視結果は、脱血側回路と返血側回路との間で発生した圧力差が縮小したことを示すという効果を奏する。
【0076】
本発明の第5の実施態様は、第1の実施態様において、血液浄化装置は、前記血液回路内の残液を排出するための第1の流体を前記血液回路に導入するための導入部をさらに有しており、制御装置は、前記流路切替部が開状態に切り替えているときに、前記導入部から前記第1の流体を前記血液回路に導入するとともに、前記血液ポンプを回転させることによって前記血液回路の残液を所定の排出先に排液する。
【0077】
これにより、血液浄化装置は、第1の流体を血液回路に導入するとともに、血液ポンプを回転させることによって血液回路の残液を所定の排出先に排液できるという効果を奏する。
【0078】
本発明の第6の実施態様は、第5の実施態様において、導入物は、空気、生理食塩液または透析液である。
【0079】
これにより、血液浄化装置は、排液工程において、空気、生理食塩液または透析液を血液回路内に導入するという効果を奏する。
【0080】
本発明の第7の実施態様は、患者から脱血される血液が流入する脱血側回路と、患者へ血液を返血する返血側回路とを有し、前記脱血側回路の一端部及び前記返血側回路の一端部が血液浄化器を介して相互に繋がり、且つ、前記脱血側回路の他端部及び前記返血側回路の他端部が直接又は間接に相互に繋がっていることによって、閉回路を形成可能である血液回路と、前記血液回路に設けられる血液ポンプと、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動可能な開状態と、前記脱血側回路及び前記返血側回路の一端部を経由して流体が流動できない閉状態とを切替可能な流路切替部と、前記血液回路の内圧を検出する圧力検出部と、前記血液回路が前記閉回路を形成している状態で、前記血液回路の残液を所定の排出先に排液させる排液工程を実行する制御部と、を備えた血液浄化装置によって実行される方法である。この方法は、前記制御部が、前記流路切替部が閉状態に切り替えているときに、前記血液ポンプの回転により前記脱血側回路と前記返血側回路との間で圧力差を発生させるステップと、前記制御部が、前記流路切替部を開状態に切り替え、前記圧力検出部の検出結果に基づく前記圧力差を監視することによって、前記血液回路が閉回路であるか否かを判断するステップと、前記判断するステップにおいて前記閉回路であると判断した場合、前記制御部が、判断後において前記排液工程を実行するステップを備える。
【0081】
これにより、血液浄化装置は、AV連結式の血液回路内の排液を行う場合に、血液回路がAV連結状態であることを自己診断できるという効果を奏する。
【0082】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成及び細部において変更する様々な実施形態を実現可能であることを当業者は理解するだろう。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
100 血液浄化装置
11 脱血回路の患者接続部
12 返血回路の患者接続部
13 AV連結状態
14 Aチャンバ
15 A圧センサ
16 血液回路
17 DIチャンバ
18 DI圧センサ
19 血液浄化器
20 Vチャンバ
21 V圧センサ
22 電磁弁
23 排出部
24 制御装置
25 SNチャンバ
26 SN圧センサ
30 第1の方向
40 第2の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13