(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190450
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 71/08 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A01B71/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098779
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 康史
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA20
2B041AB05
2B041AC08
2B041EA02
2B041EA23
(57)【要約】
【課題】専用の動力源を必要とせず、必要な時に、作業車両に搭載されたエンジンを動力源として、空気圧送手段を駆動させることができる作業車両を提供する。
【解決手段】
作業車両は、エンジンと、ミッションケースと、圃場を走行するための走行装置とを有する走行車体と、空気圧送手段を備え、空気圧送手段は、エンジンが作動している間に、ミッションケースから常時、動力を出力するライブPTO軸から動力を受けて、吸い込んだ空気を送出するように構成され、ライブPTO軸から空気圧送手段への動力の伝達を入切するクラッチが設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、ミッションケースと、圃場を走行するための走行装置とを有する走行車体と、
空気圧送手段とを備え、
前記空気圧送手段は、前記エンジンが作動している間に、前記ミッションケースから常時、動力を出力するライブPTO軸から動力を受けて、吸い込んだ空気を送出するように構成され、
前記ライブPTO軸から前記空気圧送手段への動力の伝達を入切するクラッチが設けられたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記空気圧送手段は、前記走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置され、
前記空気圧送手段から送出される空気を案内する送出ホースが、前記収納空間から出し入れ可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記空気圧送手段は、前記走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置され、
前記エンジンの熱を放出するラジエータに、夾雑物を受ける防塵ネットが設けられ、
前記空気圧送手段の吸気部に接続された吸気ダクトの吸い込み口が、前記防塵ネットの近傍に配置され、前記防塵ネットへ向けられており、前記空気圧送手段によって、前記吸気ダクトを介して吸い込まれた空気が、前記走行車体の下方に送出されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項4】
エンジンの作動状態を検知するエンジン作動検知手段を備え、
前記空気圧送手段は、前記走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置され、
前記空気圧送手段から送出される空気を案内する送出ダクトの吹き出し口が、走行車体の下方に向けられており、
前記エンジン作動検知手段によって、エンジンが作動していることが検知されたことを条件として、前記クラッチを介して前記空気圧送手段へ動力が伝達されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
作業車両が走行中であるか否かを検知する走行検知手段を備え、
前記クラッチを介して前記空気圧送手段へ動力が伝達される条件として、さらに、前記走行検知手段によって、作業車両が停車中であることが検知されたことを含むことを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記走行車体の下部の温度を検出する温度センサを備え、
前記クラッチを介して前記空気圧送手段へ動力が伝達される条件として、さらに、前記温度センサによって検出される前記走行車体の下部の温度が所定の温度以上であることを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に付着した土や薬液などを除去することができるトラクターや薬剤散布車両などの作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場上を走行しつつ、薬液の散布作業を行う作業車両が開示されている。このような作業車両には、圃場上で農作業を行う間に、圃場上の土や花粉、薬液などが付着するため、作業者は、車両を圃場の外へ移動させる前に、車両に付着した土や花粉、薬液を取り除くことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に付着した土や花粉、薬液を取り除くには、エアブロアやエアコンプレッサーなどの空気圧送手段を用いて、土や薬液を車両から吹き飛ばし、または吸引するのが効率的であるが、空気圧送手段の動力源を別途用意する必要があるため、余分な労力と載置スペースを要するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、専用の動力源を必要とせず、必要な時に、作業車両に搭載されたエンジンを動力源として、空気圧送手段を駆動させることができる作業車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のかかる目的は、
エンジンと、ミッションケースと、圃場を走行するための走行装置とを有する走行車体と、
空気圧送手段とを備え、
前記空気圧送手段は、前記エンジンが作動している間に、前記ミッションケースから常時、動力を出力するライブPTO軸から動力を受けて、吸い込んだ空気を送出するように構成され、
前記ライブPTO軸から前記空気圧送手段への動力の伝達を入切するクラッチが設けられたことを特徴とする作業車両によって達成される。
【0007】
本発明によれば、エンジンが作動している間にミッションケースから常時、動力を出力するライブPTO軸から空気圧送手段へ動力を伝達するように構成されているから、作業車両の走行中、停車中に拘わらず、必要なときに、エアブロアやエアコンプレッサーなどの空気圧送手段を駆動させることができる。
【0008】
さらに、本発明によれば、ライブPTO軸から空気圧送手段への動力の伝達を入切するクラッチが設けられているから、不要なときは空気圧送手段の駆動を停止させることができ、便利であるとともに、ミッションケースから動力を出力するライブPTO軸にかかる負荷を軽減させることができる。
【0009】
本発明の好ましい実施態様においては、
前記空気圧送手段は、前記走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置され、
前記空気圧送手段から送出される空気を案内する送出ホースが、前記収納空間から出し入れ可能に構成されている。
【0010】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、エアブロアやエアコンプレッサーなどの空気圧送手段が、走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置されているから、空気圧送手段の作動音や振動が外部に漏れることを抑制することができる。
【0011】
また、本発明のこの好ましい実施態様によれば、空気圧送手段から送出される空気を案内する送出ホースを、収納空間から出し入れ可能に構成されているから、空気圧送手段を使用しないときに、送出ホースが作業者の邪魔にならない。
【0012】
さらに、本発明のこの好ましい実施態様によれば、収納空間から取り出した送出ホースを向けて、操縦席の近傍を含む走行車体2に付着した土や薬液を吹き飛ばし、取り除くことができるので、圃場の外に土や薬液が流出してしまうという事態を防止することができる。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記空気圧送手段は、前記走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置され、
前記エンジンの熱を放出するラジエータに、夾雑物を受ける防塵ネットが設けられ、
前記空気圧送手段の吸気部に接続された吸気ダクトの吸い込み口が、前記防塵ネットの近傍に配置され、前記防塵ネットへ向けられており、前記空気圧送手段によって、前記吸気ダクトを介して吸い込まれた空気が、前記走行車体の下方に送出される。
本発明のこの好ましい実施態様によれば、エアブロアやエアコンプレッサなどの空気圧送手段が、走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置されているから、空気圧送手段の作動音や振動が外部に漏れることを抑制することができる。
【0014】
また、本発明のこの好ましい実施態様によれば、空気圧送手段の吸気部に接続された吸気ダクトの吸い込み口が、夾雑物を受ける防塵ネットの近傍に配置され、防塵ネットへ向けられているから、防塵ネットに付着した夾雑物を、空気圧送手段によって吸引し、取り除くことができ、防塵ネットの目詰まりによってエンジンのオーバーヒートが発生してしまう事態を防止することができる。
【0015】
さらに、本発明のこの好ましい実施態様によれば、空気圧送手段によって吸引された空気が、走行車体の下方に送出されるように構成されているから、作業者を、夾雑物が交じった排風に晒すことなく、夾雑物を圃場に排出することができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
エンジンの作動状態を検知するエンジン作動検知手段を備え、
前記空気圧送手段は、前記走行車体の操縦席の下方に設けられた収納空間に配置され、
前記空気圧送手段から送出される空気を案内する送出ダクトの吹き出し口が、走行車体の下方に向けられており、
前記エンジン作動検知手段によって、エンジンが作動していることが検知されたことを条件として、前記クラッチを介して前記空気圧送手段へ動力が伝達される。
【0017】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、エンジンが作動しているときには、送出ダクトの吹き出し口から走行車体の下方へ送風されるから、走行車体の下方に位置する作物を、作動時に高温となったエンジンの近傍から遠ざけることができ、作物が、エンジンの近傍から放射される輻射熱によって傷み、または、エンジンの近傍に接触し、焦げてしまう事態を防止することができる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
作業車両が走行中であるか否かを検知する走行検知手段を備え、
前記クラッチを介して前記空気圧送手段へ動力が伝達される条件として、さらに、前記走行検知手段によって、作業車両が停車中であることが検知されたことを含んでいる。
【0019】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、エンジンが作動しており、かつ、作業車両が停車している場合には、送出ダクトの吹き出し口から走行車体の下方へ送風されるから、停車位置にある作物がエンジンの熱で傷むことを防止することができるとともに、作業車両が走行している間は、空気圧送手段を停止させておくことができ、エネルギー消費を抑えることができる。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記走行車体の下部の温度を検出する温度センサを備え、
前記クラッチを介して前記空気圧送手段へ動力が伝達される条件として、さらに、前記温度センサによって検出される前記走行車体の下部の温度が所定の温度以上であることを含んでいる。
【0021】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、エンジンが作動しており、かつ、作業車両が停車している場合であっても、走行車体の下部の温度が所定の温度未満である場合には、空気圧送手段に動力が伝達されないように構成されているから、不必要なタイミングで、空気圧送手段が駆動されることを防止することができ、エネルギー消費をより一層抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、専用の動力源を必要とせず、必要な時に、作業車両に搭載されたエンジンを動力源として、空気圧送手段を駆動させることができる作業車両を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる作業車両の略左側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された作業車両の動力伝達機構を示す要部略側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された作業車両の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図6】
図6は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる作業車両のボンネットの内部を示す部分拡大図である。
【
図7】
図7は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図8】
図8は、
図7に示された実施態様にかかる作業車両のボンネットの近傍を示す略左側面図である。
【
図9】
図9は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図10】
図10は、
図9に示された実施態様にかかるコントローラによる空気圧送手段の駆動制御を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図12】
図12は、
図11に示された実施態様にかかるコントローラによる空気圧送手段の駆動制御を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、
図11に示された実施態様にかかるステアリングハンドルおよび操縦席の近傍の略斜視図である。
【
図14】
図14は、
図11に示された実施態様にかかるキャビンの左側の開閉扉の近傍の略斜視図である。
【
図15】
図15は、
図14に示された第二の手摺りが回動される様子を示す模式的左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる作業車両1の略左側面図であり、
図2は、
図1に示された作業車両1の要部平面図である。
【0026】
本明細書においては、
図1または
図2に矢印で示されるように、作業車両1の進行方向となる側を「前」方とし、特に断りがない限り、作業車両1の進行方向に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。
【0027】
作業車両1は、本実施態様においては、圃場に薬液を散布する薬液散布車両であり、走行車体2と、走行車体2の後部に取り付けられた薬液タンク30と、走行車体2の前部に設けられたセンターブーム50と、センターブーム50の左右に回動可能に設けられた左右一対のサイドブーム51,52と、走行車体2に付着した土や薬液などを清掃するブロワ16(
図3および
図4参照)を備えている。
【0028】
薬液タンク30の内部には薬液が貯留されており、薬液タンクに貯留された薬液を、走行車体2の後部に設けられた薬液ポンプ(図示せず)を用いて、センターブーム50および一対のサイドブーム51,52に設けられた多数のノズル42から圃場に供給するように構成されている。以下、センターブーム50および一対のサイドブーム51,52を、散布ブームともいう。
【0029】
一対のサイドブーム51,52はそれぞれ、左右の開閉シリンダ18の伸縮によって、回動支点19を中心に車体幅方向に回動されるように構成され、さらに、左右の上下動シリンダ44,45の伸縮によって、後端部が上下動されるように構成されている。
【0030】
走行車体2は、
図1に示されるように、その骨格を構成するメインフレーム8と、メインフレーム8の上方に設けられたステップフロア66(
図3参照)と、ステップフロア66上に設けられ、作業者(操縦者)が搭乗するキャビン20と、本発明にかかる「走行装置」に相当する前輪6および後輪7と、ボンネット12の下方に設けられたエンジン3と、動力伝達機構を備えている。
【0031】
キャビン20内には、前輪6または後輪7を操舵するステアリングハンドル5(
図1参照)と、車両の走行速度の調節および前後進の切換えを行うHSTレバー29(
図1参照)と、操縦席4(
図1参照)と、作業車両1を制御するコントローラ60(
図2参照)と、種々の操作スイッチを有する操作部9(
図2参照)が設けられている。
【0032】
図3は、
図1に示された作業車両1の動力伝達機構を示す要部略側面図である。
【0033】
図3に示されるエンジン3で発生した動力は、走行駆動力および作業駆動力を伝達するミッションケース17を介して、以下のようにして、清掃用のブロワ16、薬液ポンプ、前輪6および後輪7および散布ブーム50,51などの作業装置に伝動される。清掃用のブロワ16は、操縦席4を下方から支持するシートステー34によって形成された収納空間31内に配置されている。
【0034】
また、本実施態様においては、ミッションケース17は、分割構造になっており、互いに連結されたフロントミッションケース21およびリアミッションケース22を備えている。リアミッションケース22には、HSTレバー29(
図1参照)によって操作される油圧式無段変速機28が連結されている。
【0035】
エンジン3から前方へ延びる出力軸10によって出力された動力は、まず、出力軸10の前部に取り付けられたプーリー11と、ミッションケース17への入力軸14の前部に取り付けられたプーリー13とにわたって巻き付けられた無端ベルト15によって、入力軸14を介して、フロントミッションケース21に伝達される。フロントミッションケース21に伝達された動力は二方に分配され、一方はライブPTO軸23へ、他方は主クラッチ24が設けられた中継軸26を介して油圧式無段変速機28およびリアミッションケース22へ伝達される。なお、主クラッチ24は、ステアリングハンドル5の近傍に設けられたクラッチペダル(図示せず)が踏み込まれると、動力の伝達がオフされるように構成されている。
【0036】
ライブPTO軸23は、エンジン3が作動している間、すなわち、出力軸10が回転している間、常時、フロントミッションケース21から動力を出力し、回転するように構成されている。
【0037】
図3に示されるように、ライブPTO軸23にはプーリー36が取り付けられており、操縦席4の下方に配置されたブロワ16への入力軸40には、プーリー37が、電磁クラッチ39を介して取り付けられている。電磁クラッチ39がオンされた状態で、ライブPTO軸23が回転すると、2つのプーリー36、37に架け渡された無端ベルト38によって、入力軸40が回転される。
【0038】
図4は、
図3に示されたブロワ16の拡大図であり、
図4(a)は、ブロワ16の略斜視図であり、
図4(b)は、ブロワ16の羽根を示す略正面図である。
【0039】
ブロワ16は、
図4(a)または
図4(b)に示されるように、ハウジング55と、ハウジング55の内部に収容された羽根14を備えている。ハウジング55は、その内部に空気を吸い込むための吸気部56と、吸い込まれた空気を送出する排気部57を備え、排気部57には、可撓性を有し、送出された空気を案内する送出ホース58が接続されている。
【0040】
一方、ブロワ16への入力軸40は、ブロワ16の羽根14の中央部に形成された角筒形の筒部43に差し込まれた状態で固定されており、
図3および
図4(a)に示される入力軸40が回転すると、羽根14が回転されて、吸気部56の近傍の空気が、吸気部56からハウジング55の内部へ吸い込まれる。ハウジング55の内部へ吸い込まれた空気は、回転される羽根14によって、排気部57から、送出ホース58の内部へ送られた後に、吹き出し口59から送出される。
【0041】
収納空間31は、
図3に示される開閉式のパネル(カバー)49によって閉じられており、パネル49を開いて、一方の端部が排気部57に接続された送出ホース58の他方の端部を、収納空間31から出し入れすることが可能である。したがって、作業者は、送出ホース58を収納空間31からキャビン20(
図1参照)内に取り出して、ブロワ16を駆動させることによって、走行車体2を清掃することができる。
【0042】
具体的には、キャビン20内において、
図3に示されるステップフロア66上に堆積した土、花粉などの塵埃類、籠った臭いなどを車外へ吹き飛ばすことができる。また、キャビン20の外部についても、開閉扉25(
図1参照)やリヤガラス(図示せず)を通じて、送出ホース58をキャビン20の外へ延ばすことによって、車両1に付着した土や薬液を圃場上に吹き飛ばすことができる。
【0043】
ここに、操縦席4の右方に設けられた操作部9のブロワスイッチ35(
図5参照)が押圧操作される度に、コントローラ60の出力信号に基づき、電磁クラッチ39の入切(オンオフ)が切り換えられるように構成されている。加えて、ライブPTO軸23には、上述のように、エンジン3が作動している間、常時、動力が伝達されるように構成されているので、ブロワ16を用いて、走行車体2の清掃を開始するとき、および清掃を終了するときには、作業者は、停車中であっても、ブロワスイッチ35を押圧操作し、ブロワ16の駆動のオンオフを切り換えることができる。すなわち、電磁クラッチ39は、ライブPTO軸23から、空気圧送手段の一例であるブロワ16への動力の伝達を入切するクラッチである。なお、本実施態様においては、収納空間31内(操縦席49の裏側)に図示しないフックが設けられており、作業者は、送出ホース58を束ねた状態で、フックに引っ掛けて収納することができる。
【0044】
ライブPTO軸23は、プーリー36よりも後方において、薬液ポンプに接続されており、エンジン3が作動している間、常時回転されるライブPTO軸23によって伝達された動力を用いて、走行中、停止中に拘わらず、センターブーム50および左右一対のサイドブーム51,52へ薬液を供給することができる。
【0045】
一方、油圧式無段変速機28およびリアミッションケース22に伝達された動力は、
図3に示される伝動軸63,64を通じて、前輪6および後輪7へ伝達される他、PTO軸106を通じて、散布ブーム50,51などの作業装置に伝達される。伝動軸63,64およびPTO軸106への動力の伝達は、主クラッチ24を用いて切断することができる。
【0046】
図5は、
図1に示された作業車両1の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【0047】
図5に示されるように、作業車両1の制御系は、作業車両1全体の動作を制御するコントローラ60を備えている。
【0048】
コントローラ60は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部61と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する記憶部62を備え、記憶部62には、作業車両1を制御する種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0049】
図5に示されるように、作業車両1の検出系は、ステアリングハンドル5の舵角を検出するエンコーダ65と、回動支点19(
図4参照)の近傍に設けられ、回動支点19(
図2参照)を中心とした各サイドブーム51,52の回動角度を検出する開閉角度センサ53と、左右の上下動シリンダ44,45(
図2参照)によって変更される左右の各サイドブーム51,52の仰角θを検知する仰角センサ54を備えている。
【0050】
図5に示されるように、作業車両1は、入力系として機能するHSTレバー29および操作部9(
図2参照)を備えている。
【0051】
操作部9は、電磁クラッチ39の断接を切り換え、ブロワ16の駆動のオンオフを切り換えるブロワスイッチ35と、開閉シリンダ18(
図1および
図2参照)を伸縮させ、左右一対の各サイドブーム51,52を回動させるための左開閉スイッチ91および右開閉スイッチ92と、各上下動シリンダ44,45(
図2参照)を伸縮させ、左右一対の各サイドブーム51,52の自由端(
図2における後側の端部)を昇降するための左昇降スイッチ93および右昇降スイッチ94を備えている。
【0052】
図5に示されるように、作業車両1の駆動系は、
図3に示された電磁クラッチ39に電流パルスを出力する駆動回路47と、油圧式無段変速機28内のトラニオン軸(図示せず)の開度を調整し、作業車両1の前後進および車速を変更するHSTサーボモータ48と、
図1に示された左右一対の各サイドブーム51,52を回動させる左右の各開閉シリンダ18(
図2参照)を伸縮させる左右のギヤードモータ27(
図2参照)と、左右の上下動シリンダ44,45(
図2参照)を伸縮させる左右の電磁弁46を備えている。
【0053】
本実施態様によれば、エンジン3が作動している間、フロントミッションケース21から常時、動力を出力するライブPTO軸23から、空気圧送手段の一例であるブロワ16へ動力を伝達するように構成されているから、作業車両1の走行中、停車中に拘わらず、必要なときに、ブロワ16を駆動させることができる。
【0054】
さらに、本実施態様によれば、
図3に示されるように、ライブPTO軸23からブロワ16への動力の伝達を入切する電磁クラッチ39が設けられているから、不要なときはブロワスイッチ35(
図5参照)を押圧操作してブロワ16の駆動を停止させることができ、ライブPTO軸23にかかる負荷を軽減させることができる。
【0055】
また、本実施態様によれば、ブロワ16が、走行車体2の操縦席4の下方に設けられた収納空間31内(
図3参照)に配置されているから、ブロワ16の作動音や振動が収納空間31の外部、すなわち操縦席4の近傍に漏れることを抑制することができる(防音、防振)。
【0056】
加えて、本実施態様によれば、
図3に示されるように、ブロワ16から送出される空気を案内する送出ホース58を、パネル49を開けて、収納空間31から出し入れすることができるから、ブロワ16を使用しないときに、送出ホース58が作業者(または作業車両1の操縦者)の邪魔にならない。
【0057】
さらに、収納空間31から取り出した送出ホース58を向けて、操縦席4の近傍を含む走行車体2に付着した土や薬液を圃場上で吹き飛ばし、取り除くことができるので、圃場の外に土や薬液が流出してしまうという事態を防止することができる。
【0058】
図6は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる作業車両1のボンネット12の内部を示す部分拡大図である。
【0059】
図6に示されるように、エンジン3は、走行車体2の前部に設けられた左右の前部フレーム69(左側の前部フレーム69のみ図示)に載置および固定されており、上方をボンネット12によって、前方をフロントグリル70によって画定されたエンジンルーム68内に位置している。エンジンルーム68には、エンジン3の他に、冷却ファン72、ラジエータ71、およびラジエータ71の背面に設けられた防塵ネット67が配置されている。
【0060】
本実施態様においては、前記実施態様と同様に、作業車両1は薬液散布車両であり、センターブーム50(
図1参照)から散布された薬液が過度にラジエータ71の近傍に浸入しないよう、冷却ファン72の駆動によって、
図6に多数の矢印で示されるように、ハンドルポスト73を覆うハンドルポストカバー74の近傍から、エンジンルーム68内のラジエータ71およびエンジン3の近傍に外気が取り込まれるように構成されている。このように、ラジエータ71の近傍に外気が供給されることによって、エンジン3のオーバーヒートを防止することができる。
【0061】
ラジエータ71およびエンジン3の近傍に供給される外気には、花粉などの夾雑物が多く含まれており、外気がラジエータ71の後方に設けられた防塵ネット67を通過する際に、これらの夾雑物が防塵ネット67に付着する。防塵ネット67上に夾雑物が堆積し、目詰まりが発生すると、ラジエータ71およびエンジン3の近傍に外気が充分に供給されず、エンジン3のオーバーヒートが起こることがあるため、防塵ネット67上に堆積した夾雑物を、防塵ネット67上から取り除く必要があるが、ボンネット12を開けて、防塵ネット67を度々清掃するのは面倒であった。
【0062】
このような状況に鑑みて、本実施態様においては、
図4に示されたブロワ16を用いて、防塵ネット67に付着した花粉などの夾雑物を吸引して取り除き、走行車体2の下方に排出するように構成されている。
【0063】
具体的には、
図6に示されるように、防塵ネット67の近傍に、夾雑物を吸引し、取り除くための吸気ダクト75の一方の端部である吸い込み口32が配置されており、この吸気ダクト75が、ステップフロア66の下方において後方へ延び、他方の端部が、
図4に示されたブロワ16の吸気部56に接続されている。
【0064】
したがって、作業者は、エンジン3を作動させた状態で、定期的に、ブロワスイッチ35を押圧操作して、ブロワ16を駆動させることによって、吸気ダクト75の吸い込み口32から、防塵ネット67の背面に付着した花粉などの夾雑物を吸引し、取り除くことができるので、エンジン3のオーバーヒートを防止することができ、また、ボンネット12を開けて、防塵ネット67を直接清掃する必要がなく、人手を省力化することができる。
【0065】
また、ブロワ16の排気部57から延びる送出ホース58(
図4参照)は、本実施態様においては、
図6に示されるように、走行車体2の下方(ステップフロア66の下方)に向けて配置されているため、作業者を、防塵ネット67から吸引された夾雑物を含むブロワ16の排風に晒すことなく、夾雑物を圃場上に排出することができる。
【0066】
なお、本実施態様を含め、以降の各実施態様の構成は、特に言及がない限り、前記実施態様と同様であり、本実施態様においても、エンジン3が作動している間、常時回転されるライブPTO軸(
図3参照)から、入力軸40を介して、ブロワ16へ動力が伝達されるように構成されており、したがって、電磁クラッチ39をオンしておくことにより、走行中、停車中に拘わらず、ブロワ16による夾雑物の吸引と圃場への排出を行うことができる。
【0067】
本実施態様によれば、前記実施態様の場合と同様に、空気圧送手段の一例であるブロワ16が、操縦席4の下方に設けられた収納空間31に配置されている(別実施態様ではあるが、
図3参照)から、ブロワ16の作動音や振動が外部、すなわち、操縦席4の近傍に漏れることを抑制することができる。
【0068】
また、本実施態様によれば、ブロワ16の吸気部56に接続された吸気ダクト75の吸い込み口32が、
図6に示されるように、夾雑物を受ける防塵ネット67の近傍に配置され、かつ、防塵ネット67へ向けられているから、防塵ネット67に付着した夾雑物を、ブロワ16によって吸引し、取り除くことができ、防塵ネット67の目詰まりによってエンジン3のオーバーヒートが発生してしまう事態を防止することができる。
【0069】
さらに、本実施態様によれば、ブロワ16によって吸引された空気が、走行車体2の下方に送出されるように構成されているから、作業者を、夾雑物が交じった排風に晒すことなく、夾雑物を圃場上に排出することができる。なお、本実施態様においては、ブロワ16の排気部57に接続された送出ホース58を用いて、走行車体2の下方へ夾雑物を排出するように構成されているが、送出ホース58を用いることは必ずしも必要でなく、ブロワ16の排気部57から、直に、走行車体2の下方へ夾雑物を排出するように構成してもよい。この場合には、排気部57を機体下に向けることによって、収納空間31に夾雑物が残ってしまう事態を防止することができる。
【0070】
図7は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両1の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムであり、
図8は、
図7に示された実施態様にかかる作業車両1のボンネット12の近傍を示す略左側面図である。
【0071】
図7に示されるように、本実施態様にかかる作業車両1は、検出系として、
図1ないし
図5に示された実施態様の場合に加え、さらに、エンジン3の作動状態を検知するエンジン作動検知手段76を備えている。なお、エンジン作動検知手段76は、エンジン3の回転数を検出するセンサによって構成されているが、他の手段によって、エンジン3の作動を検知するように構成してもよい。
【0072】
また、本実施態様においては、
図1ないし
図5に示された実施態様の送出ホース58に代えて、
図8に示される送出ダクト77が、ブロワ16の排気部57(
図4参照)に接続されており、
図8に示されるように、この送出ダクト77の吹き出し口78が、走行車体2の下方、具体的には、エンジンルーム68の下方まで延ばされており、エンジン作動検知手段76によって、エンジン3が作動していることが検知されているときには、コントローラ60の出力信号に基づき、電磁クラッチ39がオンされ、ブロワ16が駆動されて、吹き出し口78から、車体2の腹下(エンジンルーム68の下方)に空気が送出されるように構成されている。
【0073】
このように構成することによって、車体2の下部(エンジンルーム68の下方の部分)の温度を下げることができ、また、
図8に示されるように、車体2の腹下に位置する作物を、風によってエンジンルーム68の近傍から物理的に遠ざけることができるから、作物が、エンジン3の作動により高温となった車体2の下部に接触して焦げたり、あるいは輻射熱により傷んでしまう事態を防止することができる。
【0074】
加えて、エンジン3が作動している間のみに、電磁クラッチ39がオンされ、車体2の腹下に空気を送出するように構成されているから、エネルギー消費を抑えることができる。
【0075】
なお、本実施態様においては、
図1ないし
図5に示された実施態様と同様に、吸気部56にダクトの類は接続されておらず、収納空間31内の空気を、
図8に示されるように、エンジンルーム68の下方に位置する空間に送出するように構成されている。
【0076】
本実施態様によれば、エンジン3が作動しているときには、送出ダクト77の吹き出し口78から、走行車体2の下方へ送風されるから、走行車体2の下方に位置する作物を、作動時に高温となったエンジン3の近傍から遠ざけることができ、作物が、エンジン3の近傍から放射される輻射熱によって傷み、または、エンジン3の近傍に接触し、焦げてしまう事態を防止することができる。
【0077】
図9は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両1の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムであり、
図10は、
図9に示された実施態様にかかるコントローラ60による空気圧送手段の駆動制御を示すフローチャートである。
【0078】
図9に示されるように、本実施態様にかかる作業車両1は、検出系として、
図7および
図8に示された前記実施態様の場合に加え、さらに、作業車両1が走行しているか否かを検知する走行検知手段79を備えている。なお、本実施態様においては、走行検知手段として、後輪7の回転数を検知するセンサが用いられているが、GNSS受信機を用いたり、駆動輪に動力を伝達する走行クラッチのオンオフを検知するように構成してもよい。
【0079】
また、本実施態様においては、
図7および
図8に示された前記実施態様の場合と同様に、吸気部56にはダクトの類は接続されておらず、ブロワ16の排気部57(
図4参照)に接続された送出ダクト77の吹き出し口78(
図8参照)が、走行車体2の下方、具体的には、エンジンルーム68の下方に向けられている。
【0080】
一方、
図10に示されるように、本実施態様においては、エンジン作動検知手段76によって、エンジン3が作動していることが検知され(ステップs1)、かつ、走行検知手段79によって、作業車両1が停車中であることが検知されたとき(ステップs2)に、コントローラ60の出力信号に基づき、電磁クラッチ39がオンされ(ステップs3)、空気圧送手段の一例であるブロワ16(
図3および
図4参照)が駆動されるように構成されている。
【0081】
このように、本実施態様においては、エンジン3の作動という要件に加えて、作業車両1が走行していないという要件を充足する場合に、ブロワ16が自動的に駆動されるように構成されているから、エネルギー消費を抑えつつ、作物をエンジンルーム68の近傍から遠ざけ、エンジン3の熱から保護することができる。平たく言えば、エンジン3が作動しているけれども、作業車両1が走行しており、作物が、走行車体2の腹下の部分(エンジンルーム68の下方の部分)に接触する時間が短い場合には、エンジン3の熱が作物に伝わりにくいため、本実施態様においては、作業車両1が走行しているときには、ブロワ16を駆動しないように構成されている。
【0082】
本実施態様によれば、エンジン3が作動しており、かつ、作業車両1が停車している場合には、
図8および
図10に示されるように、ブロワ16の排気部57に接続された送出ダクト77の吹き出し口78から走行車体2の下方へ送風されるから、
図7および
図8に示された前記実施態様と同様に、停車位置にある作物がエンジン3の熱で傷むことを防止することができるとともに、作業車両1が走行している間は、空気圧送手段の一例であるブロワ16を停止させておくことができ、エネルギー消費を抑えることができる。
【0083】
図11は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる作業車両1の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムであり、
図12は、
図11に示された実施態様にかかるコントローラ60による空気圧送手段の駆動制御を示すフローチャートである。
【0084】
図11に示されるように、本実施態様にかかる作業車両1は、検出系として、
図9および
図10に示された前記実施態様の場合に加え、さらに、走行車体2の下部(走行車体2の腹下の部分)の温度、具体的には、エンジンルーム68(
図8参照)の下方に位置する部分の温度を検出する温度センサ80を備えている。
【0085】
また、本実施態様においては、
図7ないし
図10に示された各実施態様の場合と同様に、吸気部56にはダクトの類は接続されておらず、ブロワ16の排気部57(
図4参照)に接続された送出ダクト77の吹き出し口78(
図8参照)が、走行車体2の下方、具体的には、エンジンルーム68の下方に向けられている。
【0086】
一方、
図12に示されるように、本実施態様においては、エンジン作動検知手段76によって、エンジン3が作動していることが検知され(ステップss1)、かつ、走行検知手段79によって、作業車両1が停車中であることが検知され(ステップss2)、かつ、温度センサ80によって検出された走行車体2の下部(具体的にはエンジンルーム68の下方の部分)の温度が、所定の温度以上(ステップss3)である場合には、コントローラ60の出力信号に基づき、電磁クラッチ39がオンされ(ステップss4)、空気圧送手段の一例であるブロワ16(
図3および
図4参照)が駆動されるように構成されている。
【0087】
このように、本実施態様においては、エンジン3が作動中という要件、および作業車両1が停車中という要件に加えて、肝心な走行車体2の下部の温度が所定の温度以上という要件を充足する場合に、ブロワ16が自動的に駆動されるように構成されているから、エネルギー消費を効果的に抑えつつ、作物をエンジンルーム68の近傍から遠ざけ、エンジン3の熱から保護することができる。平たく言えば、エンジン3が作動しており、作業車両1が停車中である場合であっても、肝心な走行車体2の下部の温度がさほど熱くなければ、車体の下方に位置する作物に問題がないため、このような場合には、本実施態様においてはブロワ16を駆動しないように構成されている。
【0088】
本実施態様によれば、
図12に示されるように、エンジン3が作動しており、かつ、作業車両1が停車している場合であっても、走行車体2の下部の温度が所定の温度未満である場合には、空気圧送手段の一例であるブロワ16に動力が伝達されないように構成されているから、不必要なタイミングで、ブロワ16が駆動されることを防止することができ、エネルギー消費をより一層抑えることができる。
【0089】
図13は、
図11に示された実施態様にかかるステアリングハンドル5および操縦席4の近傍の略斜視図である。
【0090】
図13には、キャビン20内において、ステアリングハンドル5および操縦席4の近傍を右方、かつ、斜め上から見た状態が示されている。
【0091】
本実施態様においては、左右一対の各サイドブーム51,52の自由端を昇降させるための左昇降スイッチ93、右昇降スイッチ94などが配置された操作ボックス82がステアリングハンドル5の右方に設けられており、以下のようにして、操作ボックス82を、
図13に示される収納位置と、使用位置との間で移動させることができるので、特に、右側の開閉扉25から乗り降りするときに、操作ボックス82が邪魔にならない。
【0092】
図13に示されるように、ハンドルポストカバー74には、2つの回動支点83を有するアーム84と、ステー85が取り付けられており、操作ボックス82は、アーム84の一方の端部であって、ハンドルポストカバー74に取り付けられた端部とは反対側の端部に固定されている。
【0093】
ステー85には、側面視において略L字状をなす溝86が形成されており、溝86は、図面縦方向(上下方向)に延びる縦延部87と、図面横方向(前後方向)に延びる横延部88を有している。縦延部87と横延部88は連続的に形成されている。
【0094】
操作ボックス82が固定されたアーム84は、
図13に示されるノブボルト89およびナット(図示せず)を用いて、ステー85に位置固定されており、ノブボルト89を回してナットとの螺合を緩めた後に、ノブボルト89のネジ山部分を溝86に沿ってスライドさせるようにして、操作ボックス82を移動させることができる(矢印付きの一点鎖線参照)。
【0095】
操作ボックス82を使用するときには、ノブボルト89のネジ山部分が横延部88の後部(操縦席4側)に位置するように操作ボックス82を移動させ、
図13に破線で示される「使用位置」に位置させることによって、作業者は、右手で操作ボックス82を、左手でステアリングハンドル5をそれぞれ操作、操縦することができる。「使用位置」に位置しているときには、操作ボックス82は、操作部9(防除コントローラ)と略同一の高さ位置に位置しており、アーム84は、破線で示された位置に位置する。
【0096】
一方、操作ボックス82を使用しないときには、ノブボルト89のネジ山部分が縦延部87の上部に位置するように操作ボックス82を移動させ、
図13に示される「収納位置」に位置させることによって、キャビン20に乗り降りする際に、操作ボックス82が邪魔にならない。
【0097】
なお、操作ボックス82を収納位置に移動させると、
図13に示されるように、アーム84の回動によって、操作ボックス82が略鉛直の姿勢をなし、前後方向に嵩張らない。これに対し、操作ボックス82を使用位置に移動させた場合には、アーム84の回動によって、操作ボックス82が略水平の姿勢をなすように構成されているため、操作性が良い。
【0098】
また、本実施態様においては、アーム84とステー85とがハンドルポストカバー74に共締めされており、省スペース化が図られている。
【0099】
図14は、
図11に示された実施態様にかかるキャビン20の左側の開閉扉25の近傍の略斜視図である。
【0100】
図14に示されるように、本実施態様においては、キャビン20の開閉扉25の近傍に、第一の手摺り97と、第一の手摺り97に回動可能に取り付けられた第二の手摺り98が設けられている。
【0101】
第一の手摺り97の上端部は、キャビン20の開閉扉25の後方に位置する扉後方フレーム81(
図1および
図13も参照)に取り付けられ、下端部は、キャビン20の左側に設けられたサブステップ90の下側の踏桟102の後面に取り付けられており、作業者は、サブステップ90を用いてキャビン20に乗り降りする際に、第一の手摺り97を掴んで、安全に乗り降りすることができる。本実施態様においては、第一の手摺り97は、パイプで形成されており、握り易いことに加えて、軽量化が図られている。
【0102】
一方、第二の手摺り98は、通常、上下方向に延びる姿勢をなし、第一の手摺り97の補強部材として機能しており、高所作業を行うときに、以下のようにして、第一の手摺り97の上部を中心に第二の手摺り98を回動させて、前後方向に延びる手摺りとして用いることができる。
【0103】
図15は、
図14に示された第二の手摺り98が回動される様子を示す模式的左側面図である。
【0104】
第二の手摺り98は、筒状をなす手摺り本体105と、手摺り本体105の内部に一部が挿入された略J字状のフック99を備え、
図14および
図15に示されるように、手摺り本体105が上下方向に延びる姿勢(実線で図示)と、略前後方向に延びる姿勢(破線で図示された第二の手摺り98参照)との間で切り換え可能に構成されている。
【0105】
手摺り本体105が上下方向に延びる姿勢をとき、フック99は、サブステップ90の走行車体2への固定用パイプ100の上部に引っ掛けられており、手摺り本体105が略前後方向に延びる姿勢に切り換えるときには、左側の開閉扉25を左前方へスライドさせて開き、キャビン20の内側に設けられたピン95(
図14参照)に、固定用パイプ100から取り外した第二の手摺り98のフック99を引っ掛けることによって、手摺り本体105が略前後方向に延びる姿勢をとる状態で、固定することができる。
【0106】
ここに、フック99は、
図15に示されるように、手摺り本体105の内部に設けられたバネ96を介して手摺り本体105に連結されており、フック99をスライドさせて、手摺り本体105から露出する部分の長さを変更することができる。
【0107】
したがって、第二の手摺り98のフック99を、サブステップ90の固定用パイプ100から取り外す際には、作業者は、フック99を下方にスライドさせることによって、フック99を容易に固定用パイプ100から取り外すことができる。なお、フック99を固定用パイプ100から取り外すと、バネ96の収縮力によって、フック99が手摺り本体105内へスライドされるため、第二の手摺り98を前方に回動させる際に、フック99が、
図15に示されるピン95の下面に接触せず、閊えることがない。
【0108】
一方、フック99をピン95に引っ掛ける際には、作業者は、一時的に手摺り本体105を、
図15に破線で示された位置よりもやや上方へ回動させた状態で、フック99を前方にスライドさせた後に、フック99の直線形状をなす部分がピン95に当接するまで手摺り本体105を下方に回動させ、フック99を後方に戻しながら(手摺り本体105内にフック99をスライドさせながら)ピン95に引っ掛けることによって、第二の手摺り98を、略前後方向に延びた姿勢で容易に固定することができる。
【0109】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0110】
例えば、
図1ないし
図15に示された各実施態様においては、作業車両1は薬液散布車両として構成されているが、作業車両を薬液散布車両として構成することは必ずしも必要でなく、移植機やトラクターなどとして構成してもよい。
【0111】
また、
図1ないし
図15に示された各実施態様においては、ミッションケース17は、フロントミッションケース21と、リアミッションケース22とを備えた分割構造を有しているが、ミッションケース17が分割構造を有することは必ずしも必要でない。
【0112】
さらに、
図1ないし
図15に示された各実施態様においては、空気圧送手段として、ブロワ16が用いられているが、他に、エアーコンプレッサやヒートサーキュレータを用いて、空気を吸引・送出するように構成してもよい。たとえば、エアーコンプレッサを空気圧送手段として用いる場合には、
図3および
図4に示された入力軸40の回転運動を原動力として圧縮機内部のピストンを上下させ、空気を圧縮するように構成し、エアーコンプレッサからの空気の供給経路に電磁弁を設け、必要なときに、コントローラ60の出力信号に基づき、電磁弁を開いて空気を送出するように構成してもよい。また、空気圧送手段は、走行車体2の下方に配置してもよく、空気圧送手段として、ヒートサーキュレータを用いる場合には、ヒートサーキュレータから、直接、走行車体2の腹下(具体的にはエンジンルーム68の下方)に空気を送出するように構成してもよい。この場合には、
図3に示されたライブPTO軸23から、走行車体2の下方に配置したヒートサーキュレータに、直接または間接的に動力を伝達する必要がある。また、ヒートサーキュレータを走行車体2の下方に配置した場合には、エンジンが作動しているときに、作業車両が停車している場合、あるいは走行車体2の下部の温度が所定の温度以上である場合、または作業車両が停車し、かつ、走行車体2の下部の温度が所定の温度以上である場合に、コントローラからの出力信号に基づき、ヒートサーキュレータを自動的に駆動するように構成することによって、作物をエンジンの熱から保護しつつ、不必要なときにヒートサーキュレータが駆動する事態を防ぐことができ、したがって、エネルギー消費を抑えることができる。加えて、ヒートサーキュレータを走行車体2の下方に配置した場合には、
図3に示された収納空間31に配置した場合に比して、ヒートサーキュレータのメンテナンスが容易となる。
【0113】
また、
図1ないし
図15に示された各実施態様においては、ブロワ16は、ライブPTO軸23から、入力軸40を介して動力を受けるように構成されているが、ライブPTO軸から、直接、動力を受けるように構成してもよい。
【0114】
さらに、
図7ないし
図15に示された各実施態様においては、
図8に示されるように、吹き出し口78が、走行車体2の下方(具体的にはエンジンルーム68の下方)へ向けられた送出ダクト77を用いて、上方から下方へ空気が送出されるように構成されているが、走行車体2の下方の位置に空気を送出することができれば、送出ダクト77の吹き出し口78の向きは下方に限定されるものではなく、たとえば、送出ダクト77の吹き出し口78を前方へ向けて、後方から、特にエンジンルーム68の下方の位置に、空気を送出するように構成してもよい。
【0115】
加えて、
図11および
図12に示された実施態様においては、
図12に示されるように、エンジン3が作動中で、かつ、作業車両1が停止中で、かつ、温度センサ80によって検出される走行車体2の下部の温度が所定の温度以上である場合には、コントローラ60は、電磁クラッチ39をオンし、空気圧送手段を駆動するように構成されているが、エンジン3が作動中で、かつ、温度センサ80によって検出される走行車体2の下部の温度が所定の温度以上である場合に、コントローラ60は、電磁クラッチ39をオンし、空気圧送手段を駆動するように構成してもよく、この場合には、作業車両1が停車中、走行中に拘わらず、作物が走行車体2の下部に接触し、傷んでしまう事態を防止することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 作業車両
2 走行車体
3 エンジン
4 操縦席
5 ステアリングハンドル
6 前輪
7 後輪
8 メインフレーム
9 操作部
10 出力軸
11 プーリー
12 ボンネット
13 プーリー
14 入力軸(フロントミッションケース)
15 無端ベルト
16 ブロワ
17 ミッションケース
18 開閉シリンダ
19 回動支点
20 キャビン
21 フロントミッションケース
22 リアミッションケース
23 ライブPTO軸
24 主クラッチ
25 開閉扉
26 中継軸
27 ギヤードモータ
28 油圧式無段変速機
29 HSTレバー
30 薬液タンク
31 収納空間
32 吸い込み口
33 リヤガラス
34 シートステー
35 ブロワスイッチ
36 プーリー
37 プーリー
38 無端ベルト
39 電磁クラッチ
40 入力軸(ブロワ)
41 羽根
42 ノズル
43 筒部
44 左側の上下動シリンダ
45 右側の上下動シリンダ
46 電磁弁
47 駆動回路
48 HSTサーボモータ
49 パネル
50 センターブーム
51 左側のサイドブーム
52 右側のサイドブーム
53 開閉角度センサ
54 仰角センサ
55 ハウジング
56 吸気部
57 排気部
58 送出ホース
59 吹き出し口
60 コントローラ
61 処理部
62 記憶部
63 伝動軸
64 伝動軸
65 エンコーダ
66 ステップフロア
67 防塵ネット
68 エンジンルーム
69 前部フレーム
70 フロントグリル
71 ラジエータ
72 冷却ファン
73 ハンドルポスト
74 ハンドルポストカバー
75 吸気ダクト
76 エンジン作動検知手段
77 送出ダクト
78 吹き出し口
79 走行検知手段
80 温度センサ
81 扉後方フレーム
82 操作ボックス
83 回動支点
84 アーム
85 ステー
86 溝
87 縦延部
88 横延部
89 ノブボルト
90 サブステップ
91 左開閉スイッチ
92 右開閉スイッチ
93 左昇降スイッチ
94 右昇降スイッチ
95 ピン
96 バネ
97 第一の手摺り
98 第二の手摺り
99 フック
100 固定用パイプ
101 上側の踏桟
102 下側の踏桟
103 回動支点
105 手摺り本体
106 PTO軸