IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190462
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】作業車両及びトラクタ
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20221219BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20221219BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F16D25/12 D
F16D48/02 640A
F16D48/02 640E
F16D48/02 640F
F16D48/02 640K
B60K23/02 P
B60K23/02 R
B60K23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098794
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳来 昂平
(72)【発明者】
【氏名】黒下 佳彦
【テーマコード(参考)】
3D036
3J057
【Fターム(参考)】
3D036EA09
3D036EB21
3D036EB31
3D036EC23
3J057AA03
3J057BB04
3J057GA03
3J057GA80
3J057GB12
3J057GB17
3J057HH05
3J057JJ01
(57)【要約】
【課題】クラッチ操作の操作性を向上できる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両1は、原動機4と、原動機4の動力によって駆動する走行装置7と、走行装置7に動力を伝達する接続状態と、走行装置7への動力の伝達を切断する切断状態と、走行装置7に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能な走行クラッチ5dとクラッチペダル32Aの操作位置を検出し、検出した操作位置に対応する検出値を出力する検出装置53と、検出装置53からの検出値が、閾値に一致すれば、走行クラッチ5dを半クラッチ状態にし、閾値未満及び閾値超の一方の場合であれば、走行クラッチ5dを切断状態にし、閾値未満及び閾値超の他方の場合であれば、走行クラッチ5dを接続状態にする制御装置40と、操作部材45と、操作部材45の操作に応じて閾値の値を異なる値に変更する変更部40Aと、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を出力する原動機と、
前記原動機が出力した動力によって駆動する駆動装置と、
前記原動機が出力した動力を前記駆動装置に伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に設けられ、且つ前記駆動装置に動力を伝達する接続状態と、前記駆動装置への動力の伝達を切断する切断状態と、前記駆動装置に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能なクラッチと、
クラッチペダルと、
前記クラッチペダルの操作位置を検出し、検出した操作位置に対応する検出値を出力する検出装置と、
前記検出装置からの検出値が、予め定められた閾値に一致すれば、前記クラッチを半クラッチ状態にし、前記閾値未満及び前記閾値超の一方の場合であれば、前記クラッチを切断状態にし、前記閾値未満及び前記閾値超の他方の場合であれば、前記クラッチを接続状態にする制御装置と、
操作部材と、
前記操作部材の操作に応じて前記閾値の値を異なる値に変更する変更部と、
を備えている作業車両。
【請求項2】
前記検出装置は、前記クラッチペダルが最大操作位置にあるときに、前記検出値として予め定められた第1検出値を出力し、前記クラッチペダルが操作されていない未操作位置にあるときに、前記検出値として、前記第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値を出力し、
前記閾値は、前記第1検出値と前記第2検出値との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値であり、
前記変更部は、前記操作部材の操作に応じて、前記閾値の値を当該値よりも前記第1検出値に近づけた値、又は、前記閾値の値を当該値よりも前記第2検出値に近づけた値に変更する請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
表示装置を備え、
前記制御装置は、設定されている前記閾値を前記表示装置に表示させ、前記操作部材の操作に応じて前記変更部により変更される前記閾値を前記表示装置に表示させる請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
表示装置を備え、
前記制御装置は、設定されている前記閾値を前記クラッチペダルの感度として前記表示装置に表示させ、前記操作部材の操作に応じて前記変更部により変更される前記閾値を、前記クラッチペダルの感度として前記表示装置に表示させる請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記操作部材は、操作レバーに設けられたダイヤルスイッチであり、
前記変更部は、前記ダイヤルスイッチの操作に応じて、前記閾値の値を異なる値に変更する請求項1~4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記操作部材は、表示パネルと、当該表示パネルの前面に配置されたタッチパネルとを有する表示装置であり、
前記変更部は、前記タッチパネルへのタッチ操作に応じて前記閾値の値を異なる値に変更する請求項1~4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
制動操作部材と、
前記制動操作部材の操作に応じて前記駆動装置の制動が可能な制動装置と、
前記クラッチを接続状態から切断状態に切り換える自動切換制御の有効又は無効を切り換える切換部材と、を備え、
前記制御装置は、
(1)前記自動切換制御が無効である場合に、前記制動操作部材の操作が行われると、前記制動操作部材の操作に応じて前記駆動装置の制動を行う制動制御を実行し、
(2)前記自動切換制御が有効である場合に、前記制動操作部材の操作が行われると、前記制動制御と、前記クラッチを接続状態から切断状態に切り換える切断制御と、を行い、前記切断制御後に前記制動操作部材の操作が解除された場合には、前記クラッチを切断状態から、前記変更部が変更した値の前記閾値を用いた半クラッチ状態を経て、接続状態に切り換える接続制御を行う請求項1~6のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記検出装置は、前記クラッチペダルが最大操作位置にあるときに、前記検出値として予め定められた第1検出値を出力し、前記クラッチペダルが操作されていない未操作位置にあるときに、前記検出値として、前記第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値を出力し、
前記閾値は、前記第1検出値と前記第2検出値との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値であり、
前記変更部は、前記操作部材の操作に応じて、前記閾値の値を当該値よりも前記第1検出値に近づけた値に変更する請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記操作部材とは別の操作部材を備え、
前記変更部は、前記別の操作部材と前記操作部材とが操作される場合に、当該操作部材の操作に応じて前記閾値の値を異なる値に変更し、前記別の操作部材を操作しない状態で前記操作部材が操作される場合に、前記操作部材の操作に応じず、前記閾値の値を異なる値に変更しない請求項1~8のいずれかに記載の作業車両。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の作業車両は、車体と、前記車体に設けられ、且つ作業を行う作業装置を連結する連結装置を備えているトラクタ。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記車体に推進力を付与する走行装置であり、
クラッチは、前記伝達機構に設けられ、且つ前記走行装置に動力を伝達する接続状態と、前記走行装置への動力の伝達を切断する切断状態と、前記走行装置に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能なクラッチである請求項10に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業車両及びトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチペダルに連動するクラッチ機構を備えたトラクタにおいて、所謂半クラッチ状態を継続し過ぎることに起因するクラッチ機構の焼き付きを防止する技術がある。特許文献1には、クラッチペダルの踏み込み量を検出するポテンショメータを備え、クラッチペダルの最大踏み込み位置と開放位置との間の中間位置にある半クラッチ状態をポテンショメータにより検出し、半クラッチ状態が所定時間継続すると警報出力するトラクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-62009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトラクタは、半クラッチ状態を検出し、半クラッチ状態が所定時間継続すると警報出力する構成に過ぎず、運転者の体格等によっては半クラッチの位置が不適切で、運転者がクラッチ操作に慣れない場合にはクラッチ機構の焼き付きを誘発する虞がある。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、クラッチ操作の操作性を向上できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業車両は、動力を出力する原動機と、前記原動機が出力した動力によって駆動する駆動装置と、前記原動機が出力した動力を前記駆動装置に伝達する伝達機構と、前記伝達機構に設けられ、且つ前記駆動装置に動力を伝達する接続状態と、前記駆動装置への動力の伝達を切断する切断状態と、前記駆動装置に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能なクラッチと、クラッチペダルと、前記クラッチペダルの操作位置を検出し、検出した操作位置に対応する検出値を出力する検出装置と、前記検出装置からの検出値が、予め定められた閾値に一致すれば、前記クラッチを半クラッチ状態にし、前記閾値未満及び前記閾値超の一方の場合であれば、前記クラッチを切断状態にし、前記閾値未満及び前記閾値超の他方の場合であれば、前記クラッチを接続状態にする制御装置と、操作部材と、前記操作部材の操作に応じて前記閾値の値を異なる値に変更する変更部と、を備えている。
【0006】
好ましくは、前記検出装置は、前記クラッチペダルが最大操作位置にあるときに、前記検出値として予め定められた第1検出値を出力し、前記クラッチペダルが操作されていない未操作位置にあるときに、前記検出値として、前記第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値を出力し、前記閾値は、前記第1検出値と前記第2検出値との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値であり、前記変更部は、前記操作部材の操作に応じて、前記閾値の値を当該値よりも前記第1検出値に近づけた値、又は、前記閾値の値を当該値よりも前記第2検出値に近づけた値に変更する。
【0007】
好ましくは、表示装置を備え、前記制御装置は、設定されている前記閾値を前記表示装置に表示させ、前記操作部材の操作に応じて前記変更部により変更される前記閾値を前記表示装置に表示させる。
好ましくは、表示装置を備え、前記制御装置は、設定されている前記閾値を前記クラッチペダルの感度として前記表示装置に表示させ、前記操作部材の操作に応じて前記変更部により変更される前記閾値を、前記クラッチペダルの感度として前記表示装置に表示させる。
【0008】
好ましくは、前記操作部材は、操作レバーに設けられたダイヤルスイッチであり、前記
変更部は、前記ダイヤルスイッチの操作に応じて、前記閾値の値を異なる値に変更する。
好ましくは、前記操作部材は、表示パネルと、当該表示パネルの前面に配置されたタッチパネルとを有する表示装置であり、前記変更部は、前記タッチパネルへのタッチ操作に応じて前記閾値の値を異なる値に変更する。
【0009】
好ましくは、制動操作部材と、前記制動操作部材の操作に応じて前記駆動装置の制動が可能な制動装置と、前記クラッチを接続状態から切断状態に切り換える自動切換制御の有効又は無効を切り換える切換部材と、を備え、前記制御装置は、(1)前記自動切換制御が無効である場合に、前記制動操作部材の操作が行われると、前記制動操作部材の操作に応じて前記駆動装置の制動を行う制動制御を実行し、(2)前記自動切換制御が有効である場合に、前記制動操作部材の操作が行われると、前記制動制御と、前記クラッチを接続状態から切断状態に切り換える切断制御と、を行い、前記切断制御後に前記制動操作部材の操作が解除された場合には、前記クラッチを切断状態から、前記変更部が変更した値の前記閾値を用いた半クラッチ状態を経て、接続状態に切り換える接続制御を行う。
【0010】
好ましくは、前記検出装置は、前記クラッチペダルが最大操作位置にあるときに、前記検出値として予め定められた第1検出値を出力し、前記クラッチペダルが操作されていない未操作位置にあるときに、前記検出値として、前記第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値を出力し、前記閾値は、前記第1検出値と前記第2検出値との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値であり、前記変更部は、前記操作部材の操作に応じて、前記閾値の値を当該値よりも前記第1検出値に近づけた値に変更する。
【0011】
好ましくは、前記操作部材とは別の操作部材を備え、前記変更部は、前記別の操作部材と前記操作部材とが操作される場合に、当該操作部材の操作に応じて前記閾値の値を異なる値に変更し、前記別の操作部材を操作しない状態で前記操作部材が操作される場合に、前記操作部材の操作に応じず、前記閾値の値を異なる値に変更しない。
好ましくは、作業車両は、車体と、前記車体に設けられ、且つ作業を行う作業装置を連結する連結装置を備えているトラクタである。
【0012】
好ましくは、前記駆動装置は、前記車体に推進力を付与する走行装置であり、クラッチは、前記伝達機構に設けられ、且つ前記走行装置に動力を伝達する接続状態と、前記走行装置への動力の伝達を切断する切断状態と、前記走行装置に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能なクラッチである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クラッチ操作の操作性を向上できる作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】トラクタの構成及び制御ブロック図を示す図である。
図2】運転席の周りを示す図である。
図3】第1表示装置を示す図である。
図4】感度設定処理の一例を示すフローチャートである。
図5A】設定画面の一例を示す図である。
図5B】設定画面の一例を示す図である。
図5C】設定画面の一例を示す図である。
図5D】設定画面の一例を示す図である。
図6A】感度又は閾値電圧の変更によりクラッチペダルのストローク長が変更可能であることを示す図である。
図6B】ストローク長とシャトルクラッチ圧力との関係を示す図である。
図6C】感度と閾値電圧とクラッチペダルのストローク長との関係を示す図である。
図7A】自動切換制御における第1処理までの流れを示す図である。
図7B】第1処理後にブレーキペダルを操作したときの動作を示す図である。
図7C】第1処理後にクラッチペダルを操作したときの動作を示す図である。
図8A】自動切換制御が無効である場合におけるクラッチレバー、クラッチペダル及びブレーキペダルの各操作と走行クラッチの状態との関係を示す図である。
図8B】自動切換制御が有効である場合におけるクラッチレバー、クラッチペダル及びブレーキペダルの各操作と走行クラッチの状態との関係を示す図である。
図9】トラクタの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図9は作業車両1の一実施形態を示す側面図であり、図9は作業車両1の一実施形態を示す平面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバイン、移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0016】
以下、作業車両(トラクタ)1の運転席10に着座した運転者の前側(図9の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(図9の矢印A2方向)を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向として説明する。
図9に示すように、作業車両(トラクタ)1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、原動機4が出力した動力によって駆動する駆動装置であり、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0017】
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であり、動力を出力する機械である。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジンである。変速装置5は、原動機4が出力した動力を走行装置7(駆動装置)に伝達する伝達機構である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席10が設けられている。
【0018】
また、車体3の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8には、作業装置2を着脱可能である。作業装置2を連結装置8に連結することによって、車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0019】
図2に示すように、運転席10の周囲には、車体3の操舵を行うステアリングホイール30、制動操作部材31及びクラッチ切換部材32が設けられている。制動操作部材31は、複数の操作部、例えば、左側に設けられたブレーキペダル31Lと、右側に設けられたブレーキペダル31Rとを含んでいる。ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31Rは、車体3に揺動自在に支持され、運転席10に着座した運転者が操作することができる。
【0020】
クラッチ切換部材32は、クラッチペダル32Aと、クラッチレバー32Bとを含んでいる。クラッチペダル32Aは、車体3に揺動自在に支持されていて、ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31Rと同様に、運転席10に着座した運転者が操作することができる。クラッチレバー32Bは、例えば、ステアリングホイール30の近傍で揺動自在に支持されていて、前進位置(F)と、後進位置(R)と、中立位置(N)とに切換可能である。
【0021】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、走行クラッチ5dと、PTO動力伝達部5eと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0022】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
走行クラッチ5dは、走行装置7(前輪7F、後輪7R)に動力を伝達する接続状態と、走行装置7への動力の伝達を切断する切断状態とに切り換え可能なクラッチである。また、走行クラッチ5dは、切断状態から接続状態に切り換えられる際に、走行装置7に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態に変位可能である。走行クラッチ5dは、シャトル軸12と、クラッチ切換部13とを有している。シャトル軸12には、原動機4から出力された動力が伝達される。クラッチ切換部13は、前進側、後進側及び中立側に切り換えられる油圧クラッチである。
【0023】
クラッチ切換部13は、油路(図示省略)等を介して接続された前進切換弁26及び後進切換弁27に接続されている。前進切換弁26及び後進切換弁27は、例えば、二位置電磁切換弁である。前進切換弁26のソレノイドが励磁された場合は、クラッチ切換部13は、前進側に切り換わる。後進切換弁27のソレノイドが励磁された場合は、クラッチ切換部13は、後進側に切り換わる。前進切換弁26及び後進切換弁27のソレノイドのそれぞれが消磁された場合は、クラッチ切換部13は、中立側に切り換わる。
【0024】
クラッチ切換部13の切換は、クラッチ切換部材32によって行うことが可能である。クラッチレバー32Bが前進位置(F)である場合には、前進切換弁26のソレノイドが励磁される一方で、後進切換弁27のソレノイドは消磁が維持され、クラッチ切換部13は前進側に切り換えられる。クラッチレバー32Bが後進位置(R)である場合には、後進切換弁27のソレノイドが励磁される一方で、前進切換弁26のソレノイドは消磁が維持され、クラッチ切換部13は後進側に切り換えられる。クラッチレバー32Bが中立位置(N)である場合には、前進切換弁26及び後進切換弁27のソレノイドの消磁が維持され、クラッチ切換部13は中立側に切り換えられる。
【0025】
また、クラッチレバー32Bが前進位置(F)及び後進位置(R)の状態で、クラッチペダル32Aが操作されると、前進切換弁26及び後進切換弁27のいずれかのソレノイドが励磁され、クラッチ切換部13は前進側及び後進側のいずれかから中立側に切り換えられる。
シャトル軸12は、推進軸5aに接続されている。推進軸5aの動力は、主変速部5b及び副変速部5cに伝達され、副変速部5cから出力された動力は後輪デフ装置20Rに伝達される。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。つまり、走行クラッチ5dは、クラッチ切換部13が前進側及び後進側のいずれかに切り換えられ、且つ、クラッチペダル32Aが操作されていない場合は、接続状態であり、走行装置7(前輪7F、後輪7R)に動力を伝達する。また、走行クラッチ5dは、クラッチ切換部13が中立側に切り換えられた場合は、切断状態であり、走行装置7への動力の伝達を切断する。
【0026】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0027】
図1に示すように、作業車両1は、制動装置46を備えている。制動装置46は、左制動装置46aと、右制動装置46bとを有している。左制動装置46a及び右制動装置46bは、ディスク型の制動装置であり、制動する制動状態と、制動を解除する解除状態に切換可能である。左制動装置46aは、後車軸21Rの左側に設けられ、右制動装置46bは、後車軸21Rの右側に設けられている。作業車両1を操作する運転者がブレーキペダル31Lを操作する(踏み込む)ことによって、ブレーキペダル31Lに連結された左連結部材47aが制動方向へ動き、左制動装置46aを制動状態にすることができる。運転者がブレーキペダル31Rを操作する(踏み込む)ことによって、ブレーキペダル31Rに連結された右連結部材47bが制動方向へ動き、右制動装置46bを制動状態にすることができる。
【0028】
また、左連結部材47aには、作動油により作動する左油圧作動部48aが連結されている。左油圧作動部48aには、油路を介して左制動弁49aが接続されている。左制動弁49aによって、左油圧作動部48aを作動させることにより、左連結部材47aを制動方向に移動させることができる。また、右連結部材47bには、作動油により作動する右油圧作動部48bが連結されている。右油圧作動部48bには、油路を介して右制動弁49bが接続されている。右制動弁49bによって、右油圧作動部48bを作動させることにより、右連結部材47bを制動方向に移動させることができる。
【0029】
以上のように、左制動装置46a及び右制動装置46bは、ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31Rの操作によって、左の後輪7R及び右の後輪7Rのそれぞれを独立して制動状態にすることができる。
図1に示すように、運転席10の周囲には、複数の表示装置50が設けられている。複数の表示装置50は、運転席10(ステアリングホイール30)の前方に設けられた第1表示装置50Aと、運転席10(ステアリングホイール30)の側方に設けられた第2表示装置50Bとを含んでいる。
【0030】
図3に示すように、第1表示装置50Aは、主に運転に関する様々な情報を表示するメータパネル等であって、原動機4の回転数を表示する原動機回転数計51a、水温計51b、燃料計51cを含んでいる。また、第1表示装置50Aは、様々な情報を点灯/消灯等により報知する表示灯52Aを含む報知装置52を有している。図3に示す第1表示装置50Aは、一例であって上述した構成に限定されない。
【0031】
第2表示装置50Bは、第1表示装置50Aと同様に、主に様々な運転に関する情報を表示する装置であって、表示パネル50B1と、表示パネル50B1の前面に配置されたタッチパネル50B2とを備えている。第2表示装置50Bには、様々なメニューが表示され、所定の操作を行うことによって、作業車両1の様々な設定を行うことが可能である。
【0032】
図1に示すように、作業車両1は、制御装置40を備えている。制御装置40は、CPU、電気電子回路等から構成されており、作業車両1の様々な制御を行う。制御装置40は、変更部40Aと記憶部40Bとを備えている。記憶部40Bは、記憶装置であり、作業車両1の動作に関する種々の制御プログラム、データテーブルを記憶している。制御装置40には、アクセル41aの操作量を検出するアクセルセンサ42a、イグニッションスイッチ42b、ポンパスイッチ42c、車速(速度)を検出する車速検出センサ42d、制動操作部材31(ブレーキペダル31L、ブレーキペダル31R)の操作量を検出するブレーキ操作検出センサ42e、クラッチレバー32Bのポジションを検出するクラッチレバーセンサ42f、クラッチペダル32Aの操作位置を検出し、検出した操作位置に対応する検出値を出力する検出装置53等が接続されている。
【0033】
検出装置53は、例えば、クラッチペダル32Aの操作量を検出するクラッチ操作検出センサ53aである。クラッチ操作検出センサ53aは、クラッチペダル32Aの操作量(踏み込み量)に応じて、検出値が小さくなる検出方式の検出センサである。例えば、クラッチペダル32Aが最大踏み込み位置PMAX(後述する図6A参照)に踏み込まれた状態では、クラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が「0ボルト」となる。そして、クラッチペダル32Aが最大踏み込み位置PMAXから離れるに連れて、クラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が上昇する。そして、クラッチペダル32Aから足を離した状態、つまり、クラッチペダル32Aが未操作位置P0(後述する図6A参照)にある状態では、クラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が最大値(例えば「5ボルト」)となる。
【0034】
制御装置40は、アクセルセンサ42aによってアクセル41aの操作量が検出された場合、当該操作量に応じて原動機4の回転数(原動機回転数という)を変更する。制御装置40は、イグニッションスイッチ42bがONに操作された場合、所定の処理を経て原動機4の始動を行い、イグニッションスイッチ42bがOFFに操作された場合、原動機
4の駆動を停止させる。
【0035】
制御装置40は、ポンパスイッチ42cが上昇させる方向(上昇側)に操作された場合、制御弁を制御することでリフトシリンダを伸長させて、作業装置2を上昇させる。また、制御装置40は、ポンパスイッチ42cが下降させる方向(下降側)に操作された場合、リフトシリンダを収縮させて、作業装置2を下降させる。
制御装置40は、ブレーキ操作検出センサ42eに基づいて制動制御を行う。制動制御では、制御装置40は、ブレーキペダル31Lの操作がブレーキ操作検出センサ42eにより検出された場合、左油圧作動部48aを作動させることにより左制動装置46aによる制動を行う。また、制動制御では、制御装置40は、ブレーキペダル31Rの操作がブレーキ操作検出センサ42eにより検出された場合、右油圧作動部48bを作動させることにより右制動装置46bによる制動を行う。また、制動制御では、制御装置40は、ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31Rの操作がブレーキ操作検出センサ42eにより検出された場合、左油圧作動部48a及び左油圧作動部48aを作動させることにより、左制動装置46a及び右制動装置46bによる制動を行う。
【0036】
制御装置40は、クラッチレバーセンサ42fによってクラッチレバー32Bが前進位置(F)に切り換えられたことを検出された場合、前進切換弁26のソレノイドを励磁することによって、クラッチ切換部13を前進側に切り換える。制御装置40は、クラッチレバーセンサ42fによってクラッチレバー32Bが後進位置(R)に切り換えられたことを検出された場合、後進切換弁27のソレノイドを励磁することによって、クラッチ切換部13を後進側に切り換える。制御装置40は、クラッチレバーセンサ42fによってクラッチレバー32Bが中立位置(N)に切り換えられたことを検出された場合、前進切換弁26及び後進切換弁27のソレノイドを消磁することによって、クラッチ切換部13を中立側に切り換える。
【0037】
制御装置40は、検出装置53(クラッチ操作検出センサ53a)からの検出値(例えば検出電圧値)が、予め定められた閾値(例えば閾値電圧)に一致すれば、走行クラッチ5dを半クラッチ状態にし、閾値未満であれば、走行クラッチ5dを切断状態にし、閾値超であれば、走行クラッチ5dを接続状態にする。
例えば、運転者がクラッチペダル32Aを最大踏み込み位置PMAXに踏み込んだ状態にすると、制御装置40は、クラッチ操作検出センサ53aからの検出電圧値が閾値電圧を超えるため、走行クラッチ5dを切断状態にする。そして、運転者がクラッチペダル32Aを最大踏み込み位置PMAXから戻して行き、半クラッチ状態を示す位置となると、制御装置40は、クラッチ操作検出センサ53aからの検出電圧値が閾値電圧に一致し、走行クラッチ5dを半クラッチ状態にする。そして、運転者がクラッチペダル32Aをさらに戻すと、制御装置40は、クラッチ操作検出センサ53aからの検出電圧値が閾値電圧未満となるため、走行クラッチ5dを接続状態にする。このように、運転者は、クラッチペダル32Aを、最大踏み込み位置PMAXに踏み込んだ後に、半クラッチ状態を示す位置までに戻して、さらに未操作位置P0に戻すという一連の操作を行う。
【0038】
本実施形態の作業車両1は、クラッチペダル32Aについての半クラッチのストローク長を変更することが可能である。なお、半クラッチのストローク長とは、走行クラッチ5dを切断状態にするためにクラッチペダル32Aを操作した最大踏み込み位置PMAXから、走行クラッチ5dが半クラッチ状態となるクラッチペダル32Aの操作位置までのクラッチペダル32Aの変位長さのことである。
【0039】
ところで、クラッチレバー32B(操作レバー)は、運転者などによって操作可能な操作部材45を備えている。操作部材45は、例えばダイヤルスイッチ45aであり、クラッチレバー32Bの先端側に設けられ、クラッチレバー32Bの長手方向を軸心として回動可能となっている。
図2に示すように、運転席10の右側には、アームレスト18が設けられている。アームレスト18は、運転席10の前後方向に延設されている。運転者は、右腕をアームレスト18に乗せた姿勢で、ステアリングホイール30を操作することができる。アームレスト18の右側面には、クラッチレバー32Bに配置された操作部材45とは別の操作部材
54が設けられている。操作部材54は、例えば感度設定ボタン54aである。感度設定ボタン54aは、例えば、押しボタンスイッチである。感度設定ボタン54aは、運転者などが操作しているときにスイッチがオンとなり、運転者などが操作していないときにスイッチがオフとなる操作スイッチである。
【0040】
図1に示すように、制御装置40は、変更部40Aを備えている。制御装置40は、例えば、CPUが、記憶部40Bに記憶されている制御プログラムを実行することにより、変更部40Aとして機能する。変更部40Aは、操作部材45の操作に応じて、閾値電圧(閾値)の値を異なる値に変更する。
具体的には、検出装置53は、クラッチペダル32Aが最大踏み込み位置PMAX(つまり、最大操作位置)にあるときに、検出値として予め定められた第1検出値(例えば、最小値である「0ボルト」)を出力し、クラッチペダル32Aが操作されていない未操作位置P0にあるときに、検出値として、第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値(例えば、最大値である「5ボルト」)を出力する。閾値は、第1検出値(0ボルト)と第2検出値(5ボルト)との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値である。閾値電圧(閾値)は、例えば、デフォルト値(初期値)として、2.5ボルトに設定されている。
【0041】
変更部40Aは、別の操作部材54と操作部材45とが操作される場合(例えば、感度設定ボタン54aを押下しながらダイヤルスイッチ45aがされる場合)に、ダイヤルスイッチ45aの操作に応じて、閾値の値を当該値(2.5ボルト)よりも第1検出値(0ボルト)に近づけた値(例えば1ボルト)、又は、閾値の値を当該値(2.5ボルト)よりも第2検出値(5ボルト)に近づけた値(例えば4ボルト)に変更することができる。なお、第1検出値、第2検出値、閾値の値及び閾値の変更後の値は、上述した各値に限定されず、上述した各値以外の値であってもよい。
【0042】
ここで、図4を用いて、制御装置40による感度設定処理について説明する。制御装置40は、感度設定ボタン54aの操作ありと判定すると(S1でYes)、作業車両1のモードを通常モードから設定変更モードに変更する。設定変更モードは、運転者などが感度設定ボタン54aを操作している間に亘って維持される。運転者などが感度設定ボタン54aを操作しなくなると、制御装置40は、作業車両1のモードを設定変更モードから通常モードに戻す。一方、制御装置40は、運転者などが感度設定ボタン54aを操作しない場合(S1でNo)、作業車両1のモードを設定変更モードに変更することなく、本処理を終了させる。
【0043】
変更部40Aは、作業車両1のモードが設定変更モードである場合に、操作部材45(ダイヤルスイッチ45a)の操作に応じて、閾値電圧(閾値)の値を異なる値に変更する感度設定を実行する(S2)。具体的には、制御装置40は、図5Aに示すように、クラッチペダル32Aの感度を設定するための設定画面M1を第2表示装置50Bに表示させる。図5Aでは、クラッチペダル32Aの感度「3」(デフォルト値)が示されているとする。変更部40Aは、クラッチレバー32B(操作レバー)に設けられたダイヤルスイッチ45aの操作に応じて、クラッチペダル32Aの感度を変更する。本実施形態では、クラッチペダル32Aの感度は、予め定められた範囲(感度が「1」~「5」までの範囲)内において小数点第一位の単位で変更することが可能である。
【0044】
運転者などによってダイヤルスイッチ45aが奥側に向けて回されると(つまり、クラッチレバー32Bの左側面視した場合の反時計回りに回されると)、クラッチペダル32Aの感度が高くなる。クラッチペダル32Aの感度は、指標部102b及び数値表示部103に表示される。一方、運転者などによってダイヤルスイッチ45aが手前側に向けて回されると(つまり、クラッチレバー32Bの左側面視した場合の時計回りに回されると)、クラッチペダル32Aの感度が小さくなる。図5Bでは、クラッチペダル32Aの感度が最大値である「5」にされ、このときに「OK」を示すボタン104bがタッチ操作されると、変更部40Aは、作業車両1のモードが設定変更モードである場合に、感度を「3」から「5」に変更し、閾値電圧の値を、感度「3」に対応する閾値電圧から感度「5」に対応する閾値電圧に変更し、変更後の感度及び変更後の閾値電圧の値を記憶部40Bに記憶させる。そして、制御装置40は、作業車両1のモードを設定変更モードから通常モードに戻し、本処理を終了させる。また、変更部40Aは、図5Bに示す設定画面M1が表示されている状態で、「CANCEL」を示すボタン104aがタッチ操作されると、感度を「5」に変更することなく、変更前の感度(ここでは図5Aに示す感度が「3」)であることを表示し、制御装置40は、作業車両1のモードを設定変更モードから通常モードに戻し、本処理を終了させる。記憶部40Bは、変更前の感度及び変更前の閾値電圧の値を維持する。
【0045】
図6A図6Cに示すように、感度「3」と閾値電圧が2.5ボルトとが予め対応付けられている。この場合は、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL3となっている。これは、クラッチペダル32Aが最大踏み込み位置PMAXから長さL3だけ戻された位置P3になった時のクラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が「2.5ボルト」となり、検出電圧値が閾値電圧に一致し、走行クラッチ5dが半クラッチ状態となることを意味する。走行クラッチ5dが半クラッチ状態となるクラッチペダル32Aの位置は、長さL3の位置である。つまり、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL3となる。
【0046】
また、感度「5」と閾値電圧が1ボルトとが予め対応付けられている。この場合は、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL5となっている。これは、クラッチペダル32Aが最大踏み込み位置PMAXから長さL5だけ戻された位置P5になった時のクラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が「1ボルト」となり、検出電圧値が閾値電圧に一致し、走行クラッチ5dが半クラッチ状態となることを意味する。走行クラッチ5dが半クラッチ状態となるクラッチペダル32Aの位置は、長さL5の位置である。つまり、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL5となる。
【0047】
また、感度「1」と閾値電圧が4ボルトとが予め対応付けられている。この場合は、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL1となっている。これは、クラッチペダル32Aが最大踏み込み位置PMAXから長さL1だけ戻された位置P1になった時のクラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が「4ボルト」となり、検出電圧値が閾値電圧に一致し、走行クラッチ5dが半クラッチ状態となることを意味する。走行クラッチ5dが半クラッチ状態となるクラッチペダル32Aの位置は、長さL1の位置である。つまり、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL1となる。
【0048】
上記の3つのストローク長の長さは、L5<L3<L1の関係となっている。また、感度「1」~「5」の範囲内で感度「1」、「3」、「5」以外についても閾値電圧がそれぞれ予め対応付けられており、クラッチペダル32Aのストローク長が各々の長さとなっている。すなわち、感度と、閾値電圧及びストローク長とは、反比例の関係となっている。
【0049】
図6Bに示すように、感度「3」(デフォルト値)の場合には、閾値電圧が2.5ボルトであり、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL3であるが、感度「5」に変更すると、閾値電圧が1ボルトとなり、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL5となり、ストローク長が短くなっており、車体3の動き出しが早くなっている。一方、感度「1」に変更すると、閾値電圧が4ボルトとなり、クラッチペダル32Aのストローク長が長さL1となり、ストローク長が長くなっており、車体3の動き出しが遅くなっている。クラッチペダル32Aのストローク長は、運転者の好みによって異なる。例えば、運転者に運転技能がある場合には、ストローク長が短いことが好まれることがある。一方、初心者であれば、ストローク長が長いことが好まれることがある。このようにクラッチペダル32Aの感度を変更することで、運転者の好みに応じたクラッチペダル32Aのストローク長に変更することができる。
【0050】
記憶部40Bは、図6Cに示す感度と閾値電圧とクラッチペダル32Aのストローク長との関係を記憶している。なお、記憶部40Bは、感度と閾値電圧との関係を記憶し、クラッチペダル32Aのストローク長を記憶しないとしてもよい。
ところで、第2表示装置50Bは、タッチパネル機能を有するため、クラッチペダル32Aの感度の設定を行うことが可能である。第2表示装置50Bは、図5Aに示すように、設定画面M1において、感度入力部100を表示する。感度入力部100は、クラッチペダル32Aの感度を入力する部分であって、ボタン入力部101と、スライド入力部102と、数値表示部103とを有している。ボタン入力部101は、押圧の操作によってクラッチペダル32Aの感度を入力する部分であり、感度を増加させる増加入力部101aと、感度を減少させる減少入力部101bとを含んでいる。スライド入力部102は、スライドの操作によって感度を入力する部分であり、目盛部102aと、指標部102bとを含んでいる。
【0051】
目盛部102aは、感度の大きさを示す目盛であって、例えば、縦棒(ゲージ)を横方向に複数並べることにより構成されている。目盛部102aにおいて、縦棒の並列方向の一方側、例えば、左側が最小値であり、並列方向の他方、例えば、右側が最大値である。指標部102bは、感度を目盛部102aに対して指し示す部分であって、縦棒の並列方向に沿って移動可能である。指標部102bは、タッチ操作等によって目盛部102aに沿って移動させることができる。また、指標部102bは、ボタン入力部101で入力した感度に連動して目盛部102aに沿って移動する。例えば、増加入力部101aによって感度を増加させた場合、指標部102bは、目盛部102aに沿って増加する方向に移動する。また、減少入力部101bによって感度を減少させた場合、指標部102bは、目盛部102aに沿って減少する方向に移動する。数値表示部103は、ボタン入力部101及びスライド入力部102で設定した感度を数字で表示する。
【0052】
なお、感度入力部100においては、感度の下限値及び上限値が予め設定されていて、感度は予め定められた下限値を下回る設定と、予め定められた上限値を上回る設定とを行うことができないようになっている。例えば、感度の下限値は「1」、感度の上限値は「5」に設定されている。
また、制御装置40は、図5A図5Bに示す設定画面M1、つまり、クラッチペダル32Aの感度を設定するための画面を、第2表示装置50Bに表示させているが、図5C図5Dに示すように、クラッチペダル32Aの閾値電圧を設定するための設定画面M1を第2表示装置50Bに表示させるようにしてもよい。例えば、閾値電圧のデフォルト値は「2.5ボルト」、閾値電圧の下限値は「1ボルト」、閾値電圧の上限値は「4ボルト」に設定されている。
【0053】
ところで、制御装置40は、自動切換制御を行うことができる。自動切換制御は、制動操作部材31(ブレーキペダル31L、ブレーキペダル31R)の操作に応じて、走行クラッチ5dを接続状態から切断状態に切り換える切断制御(第1処理)のことである。即ち、自動切換制御は、走行クラッチ5dが前進側及び後進側に切り換えられている状況において、制動を行う制動操作部材31を用いて、走行クラッチ5dを切断状態に切り換えることができる。
【0054】
制御装置40には、自動切換制御の有効又は無効を切り換える切換部材43が接続されている。切換部材43は、切換スイッチ44を含んでいる。切換スイッチ44は、運転席10の周囲に設置され、ON/OFFに切換え可能なスイッチである。切換スイッチ44は、少なくとも自動切換制御が無効である場合に、OFFからONにすることにより、自動切換制御を無効から有効に切り換える。クラッチペダル32Aは、切換部材43の1つであり、少なくとも自動切換制御が有効である場合に、操作することにより自動切換制御を有効から無効に切り換える。
【0055】
自動切換制御の有効又は無効は、第1表示装置50A及び第2表示装置50Bのいずれかに表示することが可能である。図3に示すように、例えば、報知装置52の複数の表示灯52Aのうち、自動切換制御に対応する第1表示灯52A1は、自動切換制御が有効である場合は点灯し、自動切換制御が無効である場合は消灯する。或いは、第2表示装置50Bにおいては、所定画面において、自動切換制御に対応する表示部は、自動切換制御が有効である場合は点灯し、自動切換制御が無効である場合は消灯する。
【0056】
制御装置40は、自動切換制御として第1処理(切断制御)を行う。第1処理では、制御装置40は、ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31Rのそれぞれの操作量(踏み込み量)W1が、予め定められた閾値E2以上である場合に、第1処理を行う。制御装置40は、操作量(踏み込み量)W1が閾値E2未満である場合には、第1処理を実行し
ない。記憶部40Bは、ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31Rの操作量(踏み込み量)W1の閾値E2を予め記憶している。
【0057】
第1処理が行われた場合、報知装置52は、第1処理が行われたことを報知する。例えば、報知装置52の複数の表示灯52Aのうち、自動切換制御に対応する第2表示灯52A2は、第1処理が行われた場合は点灯し、第1処理が行われなかった場合は消灯する。したがって、第1表示装置50Aは、第1表示灯52A1及び第2表示灯52A2を有しているため、自動切換制御の有効及び無効の表示と、第1処理の表示とを行うことができる。
【0058】
図7A図7Cは、制御装置40で実行する自動切換制御等の流れを示す図である。
図7Aに示すように、制御装置40は、クラッチペダル32Aが操作されておらず且つ、クラッチレバー32Bが前進位置(F)及び後進位置(R)のいずれかに切り換えられている状況において、自動切換制御の有効であるか否かを判断する(S11)。自動切換制御の有効である場合(S11でYes)、制御装置40は、クラッチペダル32Aが操作されたか否かを判断する(S12)。クラッチペダル32Aが操作された場合(S12でYes)、制御装置40は、走行クラッチ5dを制御する(S13)。制御装置40は、ブレーキペダル(ブレーキペダル31L及びブレーキペダル31R)の操作量W1が閾値E2以上であるか否かを判断する(S14)。操作量W1が閾値E2以上である場合(S14でYes)、制御装置40は、走行クラッチ5dを接続状態から切断状態に切り換える第1処理を行う(S15)。なお、制御装置40は、第1処理を行った場合、第1処理を行う前のクラッチレバー32Bの位置を一時的に保持する(位置保持処理)。一方、操作量W1が閾値E2以上でない場合(S14でNo)、S11に戻る。
【0059】
第1処理を行った後においては、制御装置40は、図7B図7Cに示す切断後処理に移行する。図7Bに示すように、切断後処理では、制御装置40は、ブレーキペダルの操作量W1が閾値E2未満になったか否かを判断する(S21:ブレーキペダル判断)。S21(ブレーキペダル判断)では、例えば、ブレーキペダルが踏みこまれた状況下で第1処理(S15)が実行された後、制御装置40は、ブレーキペダルの踏み込みが解除される、即ち、ブレーキペダルが開放されるか否かを判断する。ブレーキペダルが開放されることなどによって、ブレーキペダルの操作量W1が閾値E2未満になった場合(S21でYes)、制御装置40は、走行クラッチ5dを、第1処理を行う前の状態に戻す復帰処理(S22)を行う。一方、操作量W1が閾値E2以上である場合(S21でNo)、S21に戻る。S22(復帰処理)では、位置保持処理にてクラッチレバー32Bが前進位置(F)であると保持された場合、制御装置40は、走行クラッチ5dを前進側に戻し、位置保持処理にてクラッチレバー32Bが後進位置(R)であると保持された場合、制御装置40は、走行クラッチ5dを後進側に戻す。ここでは、制御装置40は、走行クラッチ5dを前進側又は後進側に戻す際に、閾値が変更されていない場合には、デフォルト値の閾値(例えば、閾値電圧が2.5ボルト:感度「3」)を、閾値が変更されている場合には、変更部40Aが変更した値の閾値(例えば、閾値電圧が1ボルト:感度「5」、閾値電圧が4ボルト:感度「1」など)を用いた半クラッチ状態を経て、接続状態に切り換える接続制御を行う。ここでは、運転者によるクラッチペダル32Aの一連の操作が行われないが、制御装置40は、クラッチ操作検出センサ53aの検出電圧値が、デフォルト値の閾値又は変更後の閾値に一致し、閾値超となったとする制御を行う。
【0060】
図7Cに示すように、制御装置40は、クラッチペダル32Aが操作されたか否かを判断する(S31:クラッチペダル判断)。S31(クラッチペダル判断)では、例えば、クラッチペダル32Aが踏み込まれていない状況下で第1処理が実行された後(S15後)、制御装置40は、クラッチペダル32Aの踏み込みが行われたか否かを判断する。
S31(クラッチペダル判断)において、クラッチペダル32Aが開放状態から踏み込み状態に変化した場合(S31でYes)、制御装置40は、走行クラッチ5dの切断状態を保持し(S32)、自動切換制御を有効から無効に切り換える(S33)。一方、クラッチペダル32Aの操作がない場合(S31でNo)、S31に戻る。
【0061】
なお、図7AのS11において、自動切換制御の有効でない場合(S11でNo)、S
11に戻るので、自動切換制御が行われない。なお、制御装置40は、自動切換制御の有効でない場合(S11でNo)に本処理を終了させ、図7AのS12~S15、図7B及び図7Cの処理を実行しないとしてもよい。
図8A及び図8Bは、自動切換制御の有効/無効、クラッチレバー32Bの位置、クラッチペダル32Aの操作及びブレーキペダル31L,31Rの操作等の関係についてまとめた図である。
【0062】
説明の便宜上、クラッチレバー32Bが前進位置(F)及び後進位置(R)のいずれかに切り換えられている状態のことを、前後進切換中という。また、クラッチペダル32AのOFFは、当該クラッチペダル32Aの操作量が所定未満(閾値未満)の操作であることを示していて、例えば、未操作状態を示している。クラッチペダル32AのONは、当該クラッチペダル32Aの操作量が所定以上(閾値以上)操作であることを示していて、例えば、踏込状態を示している。ブレーキペダルのOFFは、当該ブレーキペダルの操作量W1が閾値E2未満の操作であることを示していて、例えば、開放状態を示している。ブレーキペダルONは、当該ブレーキペダルの操作量W1が閾値E2以上の操作であることを示していて、例えば、踏込状態を示している。図8Bにおいて、前状態では最初に操作を行ったときの状態を示し、後状態は、前状態後において、クラッチペダル32A、ブレーキペダルなどの操作を行った場合の状態を示している。
【0063】
また、図8A及び図8Bにおいて、「接続」は走行クラッチ5dが接続状態であることを示し、「切断」は走行クラッチ5dが切断状態であることを示している。また、「切断保持」は、少なくとも前状態で走行クラッチ5dが切断状態になった場合において、後状態でも、切断状態を保持していることを示している。また、「接続保持」は、少なくとも前状態で走行クラッチ5dが接続状態になった場合において、後状態でも、接続状態を保持していることを示している。「有効保持」は、少なくとも前状態で自動切換制御が有効になっている場合において、後状態でも、有効を保持していることを示している。「無効切換」は、少なくとも前状態で自動切換制御が有効になっている場合において、後状態において、有効から無効に切り換えられたことを示している。
【0064】
図8AのNo1~No4に示すように、自動切換制御が無効、且つ、前後進切換中において、クラッチペダル32Aの操作を操作すると、ブレーキペダルに関係なく、走行クラッチ5dが接続状態及び切断状態のいずれかに切り換わる。
図8AのNo5~No8に示すように、自動切換制御が無効、且つ、クラッチレバー32Bが中立位置(N)である状態において、クラッチペダル32Aの操作を操作しても、走行クラッチ5dは切断状態に維持される。
【0065】
図8BのNo11の「前状態」に示すように、自動切換制御が有効、且つ、前後進切換中において、クラッチペダル32A及びブレーキペダルが操作されていない場合は、走行クラッチ5dが接続状態になる。その後、図8BのNo11の「後状態」に示すように、クラッチペダル32Aが操作(ON)されると、走行クラッチ5dが切断状態に切り換わるが、自動切換制御が有効のままで保持される(有効保持)。また、図8BのNo11の「後状態」に示すように、ブレーキペダルが操作されると、第1処理が行われ、走行クラッチ5dを切断状態にすることができる。自動切換制御が有効のままで保持される(有効保持)。
【0066】
No12の「前状態」に示すように、クラッチペダル32Aを操作していない状態でブレーキペダルが操作されると、第1処理が行われ、走行クラッチ5dを切断状態にすることができる。その後、図8BのNo12の「後状態」に示すように、クラッチペダル32Aが操作(ON)されると、走行クラッチ5dの切断が保持され(切断保持)、自動切換制御が無効に切り換わる(無効切換)。また、図8BのNo12の「後状態」に示すように、ブレーキペダルの操作が解除されると、走行クラッチ5dを接続状態にし、自動切換制御が有効のままで保持される(有効保持)。
【0067】
No13の「前状態」に示すように、自動切換制御が有効、且つ、前後進切換中において、ブレーキペダルを操作せずにクラッチペダル32Aを操作した場合は、走行クラッチ5dが切断状態になる。その後、No13の「前状態」でクラッチペダル32Aが操作さ
れたままで、No13の「後状態」に示すようにブレーキペダルが操作されると、つまり、クラッチペダル32Aとブレーキペダルの両方を操作すると、自動切換制御が有効から無効に切り換わる(無効切換)。また、図8BのNo13の「後状態」に示すように、クラッチペダル32Aの操作が解除されると、走行クラッチ5dを接続状態にし、自動切換制御が有効のままで保持される(有効保持)。
【0068】
No14の「前状態」に示すように、自動切換制御が有効、且つ、前後進切換中において、ブレーキペダルとクラッチペダル32Aとを操作した場合は、走行クラッチ5dが切断状態になる。その後、No14の「後状態」に示すようにブレーキペダルとクラッチペダル32Aとが操作されていない場合、走行クラッチ5dの切断状態が保持され、自動切換制御が有効のままで保持される(有効保持)。
【0069】
このように、上記実施形態の作業車両1は、動力を出力する原動機4と、原動機4が出力した動力によって駆動する走行装置7(駆動装置)と、原動機4が出力した動力を走行装置7に伝達する変速装置5(伝達機構)と、変速装置5に設けられ、且つ走行装置7に動力を伝達する接続状態と、走行装置7への動力の伝達を切断する切断状態と、走行装置7に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能な走行クラッチ5d(クラッチ)と、クラッチペダル32Aと、クラッチペダル32Aの操作位置を検出し、検出した操作位置に対応する検出値を出力する検出装置53と、検出装置53からの検出値が、予め定められた閾値に一致すれば、走行クラッチ5dを半クラッチ状態にし、閾値未満及び閾値超の一方の場合であれば、走行クラッチ5dを切断状態にし、閾値未満及び閾値超の他方の場合であれば、走行クラッチ5dを接続状態にする制御装置40と、操作部材45と、操作部材45の操作に応じて閾値の値を異なる値に変更する変更部40Aと、を備えている。この構成によれば、運転者による操作部材45の操作により、閾値の値を異なる値に変更するだけで、クラッチペダル32Aの半クラッチ状態となる操作位置を変更することができる。つまり、変更後の閾値に一致する検出装置53の検出値を示すクラッチペダル32Aの操作位置が、半クラッチ状態となる変更後の操作位置になる。クラッチペダル32Aの半クラッチ状態となる操作位置を、図6Aに示す位置P1~P5の範囲内の任意の位置に変更することができる。このため、半クラッチのストローク長を調整することができる。すなわち、クラッチ操作の操作性を向上できる作業車両1を提供することができる。
【0070】
また、検出装置53は、クラッチペダル32Aが最大操作位置にあるときに、検出値として予め定められた第1検出値を出力し、クラッチペダル32Aが操作されていない未操作位置P0にあるときに、検出値として、第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値を出力し、閾値は、第1検出値と第2検出値との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値であり、変更部40Aは、操作部材45の操作に応じて、閾値の値を当該値よりも第1検出値に近づけた値、又は、閾値の値を当該値よりも第2検出値に近づけた値に変更する。この構成によれば、運転者による操作部材45の操作により、閾値の値を当該値よりも第1検出値に近づけた値に変更することで、変更前よりも半クラッチのストローク長を短くすることができる。また、運転者による操作部材45の操作により、閾値の値を当該値よりも第2検出値に近づけた値に変更することで、変更前よりも半クラッチのストローク長を長くすることができる。
【0071】
また、表示装置50を備え、制御装置40は、図5C図5Dに示すように、設定されている閾値を表示装置50に表示させ、操作部材45の操作に応じて変更部40Aにより変更される閾値を表示装置50に表示させる。この構成によれば、設定されている閾値を表示装置50において確認することができる。また、運転者による操作部材45の操作に応じて変更部40Aにより変更される閾値が表示装置50に表示されるので、閾値の変更に際して、変更される閾値を表示装置50において確認することができる。
【0072】
また、表示装置50を備え、制御装置40は、図5A図5Bに示すように、設定されている閾値をクラッチペダル32Aの感度として表示装置50に表示させ、操作部材45の操作に応じて変更部40Aにより変更される閾値を、クラッチペダル32Aの感度として表示装置50に表示させる。この構成によれば、運転者は、表示装置50におけるクラ
ッチペダル32Aの感度の表示を見ることで、クラッチペダル32Aの感度を把握することができる。そして、運転者による操作部材45の操作に応じてクラッチペダル32Aの感度が変更されることを把握できる。このため、運転者は、感覚的に、クラッチペダル32Aの感度を変更することができる。
【0073】
また、操作部材45は、クラッチレバー32B(操作レバー)に設けられたダイヤルスイッチ45aであり、変更部40Aは、ダイヤルスイッチ45aの操作に応じて、閾値の値を異なる値に変更する。この構成によれば、運転者がダイヤルスイッチ45aを操作することにより、閾値の値を、ダイヤルスイッチ45aの操作に応じたピッチで異なる値に変更することができる。このため、運転者によるダイヤルスイッチ45aの操作に従って、半クラッチのストローク長をピッチで調整することができる。
【0074】
また、操作部材45は、表示パネル50B1と、当該表示パネル50B1の前面に配置されたタッチパネル50B2とを有する第2表示装置50B(表示装置)であり、変更部40Aは、タッチパネル50B2へのタッチ操作に応じて閾値の値を異なる値に変更する。この構成によれば、運転者がタッチ操作することにより、閾値の値を、タッチ操作に応じた異なる値に変更することができる。このため、運転者によるタッチ操作に従って、半クラッチのストローク長を調整することができる。
【0075】
また、制動操作部材31と、制動操作部材31の操作に応じて走行装置7の制動が可能な制動装置46と、走行クラッチ5dを接続状態から切断状態に切り換える自動切換制御の有効又は無効を切り換える切換部材43と、を備え、制御装置40は、(1)自動切換制御が無効である場合に、制動操作部材31の操作が行われると、制動操作部材31の操作に応じて走行装置7の制動を行う制動制御を実行し、(2)自動切換制御が有効である場合に、制動操作部材31の操作が行われると、制動制御と、走行クラッチ5dを接続状態から切断状態に切り換える切断制御と、を行い、切断制御後に制動操作部材31の操作が解除された場合には、走行クラッチ5dを切断状態から、変更部40Aが変更した値の閾値を用いた半クラッチ状態を経て、接続状態に切り換える接続制御を行う。この構成によれば、自動切換制御が有効である場合に、制動操作部材31の操作を行うことにより、制動制御と切断制御とが行われるので、走行クラッチ5dを接続状態から切断状態に自動的に切り換えることができ、走行クラッチ5dを手動で切り換えなくても作業車両1をスムーズに停止させることができる。さらに、制動操作部材31の操作が解除されると、走行クラッチ5dを切断状態から、変更後の閾値を用いた半クラッチ状態を経て、接続状態に切り換えることができるので、作業車両1を、運転者が変更したクラッチ繋ぎのタイミングで発進させることができ、運転者の運転感覚に馴染んだ発進を実現できる。
【0076】
また、検出装置53は、クラッチペダル32Aが最大操作位置にあるときに、検出値として予め定められた第1検出値を出力し、クラッチペダル32Aが操作されていない未操作位置P0にあるときに、検出値として、第1検出値から一定範囲の値を隔てた値である予め定められた第2検出値を出力し、閾値は、第1検出値と第2検出値との間に存在する複数の値のうちで予め定められた1つの値であり、変更部40Aは、操作部材45の操作に応じて、閾値の値を当該値よりも第1検出値に近づけた値に変更する。この構成によれば、自動切換制御が有効である場合に、制動操作部材31の操作がされた後に当該制動操作部材31の操作が解除されると、走行クラッチ5dを切断状態から、変更後の閾値を用いた半クラッチ状態を経て、接続状態に切り換えることができる。そして、変更後の閾値が半クラッチのストローク長を短くした値としている、つまり、クラッチ繋ぎのタイミングを、運転者が変更した早いタイミングとしているので、走行クラッチ5dを切断状態から半クラッチ状態に至るまでの時間を短くすることができ、作業車両1を、クラッチ繋ぎを時短したタイミングで発進させることができ、作業車両1の作業効率を向上させることができる。
【0077】
また、操作部材45とは別の操作部材54を備え、変更部40Aは、別の操作部材54と操作部材45とが操作される場合に、当該操作部材45の操作に応じて閾値の値を異なる値に変更し、別の操作部材54を操作しない状態で操作部材45が操作される場合に、操作部材45の操作に応じず、閾値の値を異なる値に変更しない。この構成によれば、別
の操作部材54と操作部材45とが操作される場合に限り、当該操作部材45の操作に応じて閾値の値を異なる値に変更することができるので、誤操作による閾値の変更を防止できる。
【0078】
また、作業車両1は、車体3と、車体3に設けられ、且つ作業を行う作業装置を連結する連結装置8を備えているトラクタである。この構成によれば、上述した特別な効果を有するトラクタを実現できる。
また、駆動装置は、車体3に推進力を付与する走行装置7であり、走行クラッチ5d(クラッチ)は、変速装置5(伝達機構)に設けられ、且つ走行装置に動力を伝達する接続状態と、走行装置への動力の伝達を切断する切断状態と、走行装置に動力を滑りながら部分的に伝達する半クラッチ状態とに変位可能なクラッチである。この構成によれば、運転者による操作部材45の操作により、閾値の値を異なる値に変更するだけで、クラッチペダル32Aの半クラッチ状態となる操作位置を変更することができ、運転者の体格又は経験に左右されず、スムーズに発進動作等が可能な操作性の高いトラクタを実現できる。
【0079】
なお、上記の実施形態では、検出装置53は、クラッチペダル32Aの操作量(踏み込み量)に応じて、検出値が小さくなる検出方式としているが、これに限定されない。例えば、クラッチ操作検出センサ53aは、クラッチペダル32Aの操作量(踏み込み量)に応じて、検出値が大きくなる検出方式の検出センサとしてもよい。この場合には、制御装置40は、検出装置53(クラッチ操作検出センサ53a)からの検出値が、予め定められた閾値に一致すれば、走行クラッチ5dを半クラッチ状態にし、閾値超であれば、走行クラッチ5dを切断状態にし、閾値未満であれば、走行クラッチ5dを接続状態にする。
【0080】
上記の実施形態では、操作部材45(例えばダイヤルスイッチ45a)は、クラッチレバー32B(操作レバー)に設けられているが、これに限定されない。例えば、操作部材45は、運転席10の周囲に配置された各種の操作レバー(シフトレバー、多機能操作レバーなど)に設けられるとしてもよい。また、作業車両1がローダ作業機等の建設機械(建設車両)である場合には、フロントローダを操作するためのローダ操作レバーに、操作部材45を設けるようにしてもよい。また、操作部材45は、運転席10の周囲における、操作レバー以外の部材に設けられるとしてもよい。
【0081】
上記の実施形態では、操作部材45は、ダイヤルスイッチ45aとしているが、これに限定されない。操作部材45は、例えば、ロータリースイッチ、ボタンスイッチ、スライドスイッチなどの各種の操作スイッチであってもよい。
上記の実施形態では、クラッチペダル32Aについての半クラッチのストローク長を調整することを説明してきたが、これに限定されない。例えば、PTOクラッチ15を操作するためのクラッチペダル(PTO用クラッチペダル)についての半クラッチのストローク長を調整することに適用することが可能である。
【0082】
また、記憶部40Bは、複数の運転者の氏名と、複数の運転者ごとに変更後の感度又は変更後の閾値電圧の値とを対応付けて記憶し、第2表示装置50Bが運転者の識別情報(例えば、氏名、運転者番号、パスワードなど)の入力を受け付けると、制御装置40は、入力された運転者の識別情報に対応する変更後の感度又は変更後の閾値電圧の値を記憶部40Bから読み出して設定するようにしてもよい。これによれば、1つの作業車両1(トラクタ)を複数の運転者で共用することができ、各運転者が設定した変更後の感度又は変更後の閾値電圧の値に応じた半クラッチのストローク長でのクラッチ操作を行うことができ、複数の運転者について利便性に優れた作業車両1(トラクタ)を提供することができる。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 作業車両(トラクタ)
2 作業装置
3 車体
4 原動機
5 変速装置(伝達機構)
5d 走行クラッチ(クラッチ)
7 走行装置(駆動装置)
8 連結装置
15 PTOクラッチ(クラッチ)
31 制動操作部材
32A クラッチペダル
32B クラッチレバー(操作レバー)
40 制御装置
40A 変更部
43 切換部材
45 操作部材
45a ダイヤルスイッチ(操作部材)
46 制動装置
50 表示装置
50B 第2表示装置(表示装置)
50B1 表示パネル(操作部材)
50B2 タッチパネル(操作部材)
53 検出装置
54 操作部材
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9