(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190464
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ガラス配線基板及びガラス配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/09 20060101AFI20221219BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H05K1/09 C
H05K3/18 G
H05K3/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098797
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 徹勇起
【テーマコード(参考)】
4E351
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA09
4E351AA13
4E351BB03
4E351BB24
4E351BB33
4E351BB49
4E351CC03
4E351CC07
4E351DD04
4E351DD11
4E351DD19
5E343AA07
5E343AA26
5E343BB02
5E343BB13
5E343BB18
5E343BB24
5E343BB35
5E343BB44
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD63
5E343DD76
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】ガラス配線基板において、ガラス板上に形成された導体層の端部におけるガラスクラックの発生を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】ガラス配線基板は、ガラス板と、ガラス板上に形成された導体層とを備える。そして、導体層は、ガラス板側から第1の金属層と第2の金属層と第3の金属層と第4の金属層とが順次積層された構造を有し、断面視において、第4の金属層の幅が、第1の金属層の幅、第2の金属層の幅、第3の金属層の幅よりも狭い。また、第4の金属層の酸性溶液中でのエッチング速度が、第3の金属層の酸性溶液中でのエッチング速度よりも速い。第1の金属層はチタンスパッタ膜であり、第2の金属層は銅スパッタ膜であり、第3の金属層は無電解ニッケルめっき膜であり、第4の金属層は電解銅めっき膜である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、
前記ガラス板上に形成された導体層と、
を備えるガラス配線基板であって、
前記導体層は、
前記ガラス板側から第1の金属層と第2の金属層と第3の金属層と第4の金属層とが順次積層された構造を有し、
断面視において、前記第4の金属層の幅が、前記第1の金属層の幅、前記第2の金属層の幅、前記第3の金属層の幅よりも狭い、
ガラス配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス配線基板であって、
前記第4の金属層の酸性溶液中でのエッチング速度が、前記第3の金属層の酸性溶液中でのエッチング速度よりも速い、
ガラス配線基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガラス配線基板であって、
前記第1の金属層はチタンスパッタ膜であり、
前記第2の金属層は銅スパッタ膜であり、
前記第3の金属層は無電解ニッケルめっき膜であり、
前記第4の金属層は電解銅めっき膜である、
ガラス配線基板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のガラス配線基板であって、
前記ガラス板は貫通孔を有し、
前記貫通孔の側壁には、前記ガラス板側から順に前記第3の金属層と前記第4の金属層とが形成されている、
ガラス配線基板。
【請求項5】
ガラス板と、
前記ガラス板上に形成された、前記ガラス板側から第1の金属層と第2の金属層と第3の金属層と第4の金属層とが順次積層された構造を有する、導体層と、
を備えるガラス配線基板の製造方法であって、
前記ガラス板上に前記第1の金属層を設ける工程と
前記第1の金属層上に前記第2の金属層を設ける工程と、
前記第2の金属層上に触媒層を設ける工程と、
前記触媒層上にレジストを設ける工程と、
前記レジストに開口部を設ける工程と、
前記レジストの開口部内に前記第3の金属層を設ける工程と、
前記第3の金属層上に前記第4の金属層を設ける工程と、
前記レジストを除去する工程と、
前記触媒層と前記第2の金属層とを除去する工程と、
前記第1の金属層を除去する工程と、
を有するガラス配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のガラス配線基板の製造方法であって、
前記ガラス板は貫通孔を有し、
前記第2の金属層上に触媒層を設ける工程は、前記第2の金属層上と前記貫通孔の側壁上に触媒層を設ける工程である、
ガラス配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス配線基板及びガラス配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化及び小型化が進んでいる。これに伴い、電子機器に搭載される半導体モジュールの高密度化が要求されている。このような要求に応えるために、半導体チップを実装するための配線基板の配線密度を高めることが検討されている。
【0003】
配線基板に含まれるコア材としては、一般的にガラスエポキシ樹脂が用いられている(特許文献1)。近年、コア材としてガラス板を用いたガラス配線基板が注目されている。
【0004】
ガラス板は、ガラスエポキシ樹脂からなるコア材と比較して、より高い平滑度を実現できる。そのため、ガラス配線基板では、超微細配線の形成が可能である。それゆえ、ガラス配線基板を用いると、高密度な実装が可能になる。
【0005】
また、ガラス板の20℃乃至260℃の温度範囲における線膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)は、シリコン基板を用いた半導体チップの20℃乃至260℃の温度範囲における線膨張係数とほぼ一致する。それゆえ、ガラス配線基板を用いると、残留応力が小さな実装が可能である。
【0006】
さらに、ガラス配線基板は、シリコンインターポーザよりも誘電正接(tanδ)が低く、高速伝送に優れている。
【0007】
以上のことから、ガラス配線基板は、高性能な電子機器に搭載される半導体モジュールの配線基板の一つとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ガラス配線基板は、ガラス板上に導体層が形成されたものである。ガラス配線基板として、
図1に示すようなガラス板10上にコンデンサを形成したガラス配線基板1が提案されている。
【0010】
図1に示すガラス配線基板1は、チタンスパッタ層M101と銅スパッタ層M102と電解銅めっき層M103からなる導体層M100と、チタンスパッタ層M201と銅スパッタ層M202と電解銅めっき層M203からなる導体層M200と、誘電体層DEと、チタンスパッタ層M301と銅スパッタ層M302と電解銅めっき層M303からなる導体層M300と、樹脂層ILとを備える。導体層M100は配線又はパッドとして機能する。導体層M200と誘電体層DEと導体層M300はコンデンサを成し、導体層M200は下電極として機能し、導体層M300は上電極として機能する。なお、チタンスパッタは各層間の密着性確保、銅スパッタは電解銅めっき層形成時のシード層として活用するのが目的である。
【0011】
ここで、導体層M100と導体層M200と誘電体層DEと導体層M300の総厚tは、およそ30μmとなるが、この場合、導体層M100と導体層M200と誘電体層DEと導体層M300の中で支配的な銅と、ガラス板10との線膨張係数の差(銅:17ppm/K、ガラス:3ppm/K)により、
図1に示す、導体層とガラス板が接する部分の端部P1でガラスにクラックが発生することがあった。端部P1でガラスにクラックが入るのは、導体層M100と導体層M200と誘電体層DEと導体層M300の応力がガラス板に作用するためである。
【0012】
そこで、本発明は、ガラス配線基板において、ガラス板上に形成された導体層の端部におけるガラスクラックの発生を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のガラス配線基板の一つは、ガラス板と、ガラス板上に形成された導体層とを備える。そして、導体層は、ガラス板側から第1の金属層と第2の金属層と第3の金属層と第4の金属層とが順次積層された構造を有し、断面視において、第4の金属層の幅が、第1の金属層の幅、第2の金属層の幅、第3の金属層の幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、ガラス配線基板において、ガラス板上に形成された導体層の端部におけるガラスクラックの発生を抑制することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、既に提案されているガラス配線基板の一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るガラス配線基板の一部を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すガラス配線基板のF2-F2線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すガラス配線基板のF2-F2線に沿った断面図である。
【
図6A】
図6Aは、一実施形態に係るガラス配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、一実施形態に係るガラス配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図6C】
図6Cは、一実施形態に係るガラス配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図6D】
図6Dは、一実施形態に係るガラス配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図6E】
図6Eは、一実施形態に係るガラス配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図6F】
図6Fは、一実施形態に係るガラス配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例に係るガラス配線基板の一部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係るガラス配線基板の一部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例と比較例の層の構成を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する各部分には、同一符号を用いて、重複する説明は省略する。本開示において、「金属層の幅」は、ガラス板の主面に垂直な断面における金属層の一端から他端までの長さを意味する。例えば、
図3に示されたコンデンサが積層されるパッドとして機能する導体層M10の第1の金属層M11の幅は、一端aから他端bまでの長さであり、貫通孔THの周囲に形成されたパッドとして機能する導体層の第1の金属層M11の幅は、一端cから他端dまでの長さである。
図2に示された2つのパッドを接続する配線として機能する導体層を構成する金属層の幅は長手方向に垂直な方向の長さである。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係るガラス配線基板の一部を概略的に示す平面図である。
図2に示すように、ガラス配線基板2は、貫通孔THを有するガラス板10と、導体層ML1と、導体層ML2とからなる。なお、導体層ML1は、
図2には示されない導体層又は層間ビアとともに、所望の回路を成してもよい。
【0019】
図3は、
図2に示すガラス配線基板2のF2-F2線に沿った断面図である。
図3は、導体層ML1のうちコンデンサが積層されるパッドとして機能する導体層M10と、導体層ML2のうち貫通孔THの周囲に形成されたパッドとして機能する部分に本発明が適用された場合の断面図である。本発明が適用された導体層は、第1の金属層M11(以下、金属層M11)と第2の金属層M12(以下、金属層M12)と第3の金属層M13(以下、金属層M13)と第4の金属層M14(以下、金属層M14)とからなる。
図2に示された導体層ML2のうち2つのパッドを接続する配線として機能する部分にも本発明が適用される。
【0020】
図1に示された導体層M200と誘電体層DEと導体層M300と同様に、
図3に示された導体層M20と誘電体層DEと導体層M30はコンデンサを成し、導体層M20は、金属層M21と金属層M22と金属層M23とからなり、導体層M30は、金属層M31と金属層M32と金属層M33とからなる。ガラス配線基板2は、貫通孔TH内が樹脂層ILにより充填されている。
【0021】
また、
図4に示すように、ガラス配線基板2は、貫通孔TH内が金属層M14によって充填されていてもよい。なお、ガラス配線基板2は、
図3と
図4には示されない触媒層を含むことがある。
【0022】
ガラス板10は、典型的には、光透過性を有する。ガラス板10を構成するガラス材料の成分及びその配合比率は特に限定されない。ガラス板10としては、例えば、無アルカリガラス、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、感光性ガラスなど、ケイ酸塩を主成分とするガラスを用いることができる。ガラス板10としては、半導体パッケージ及び半導体モジュールに用いられるという観点からは、無アルカリガラスを用いることが望ましい。無アルカリガラスに含まれるアルカリ成分の含有率は、0.1質量%以下であることが好ましい。
【0023】
ガラス板10の厚さは、貫通孔THの形成容易性や製造時のハンドリング性を考慮すると、0.1mm以上0.8mm以下の範囲内にあることが好ましいが、貫通孔THの形成が不要な場合、厚みは特に限定されない。
【0024】
ガラス板10の製造方法としては、例えば、フロート法、ダウンドロー法、フュージョン法、アップドロー法、ロールアウト法などが挙げられる。ガラス板10は、いずれの方法によって作製されたものを用いてもよい。
【0025】
ガラス板10の線膨張係数は、20℃乃至260℃の温度範囲において、0.5×10-6/K以上15.0×10-6/K以下の範囲内にあることが好ましく、1×10-6/K以上8.0×10-6/K以下の範囲内にあることがより好ましく、1×10-6/K以上4.0×10-6/K以下の範囲内にあることが更に好ましい。ガラス板10の線膨張係数がこの範囲内にあると、ガラス配線基板2上に表面実装されるシリコン基板を用いた半導体チップの線膨張係数との差が小さい傾向にある。なお、線膨張係数とは、温度の上昇に対応して長さが変化する割合を意味している。
【0026】
ガラス板10の少なくとも一方の主面は、機能層を備えていてもよい。機能層としては、例えば、微粒子を含む反射防止層、赤外線吸収剤を含む赤外線遮蔽層、ハードコート材料を含む強度付与層、帯電防止剤を含む帯電防止層、着色剤を含む着色層、光学薄膜を含む光学フィルタ層、光散乱膜を含むテクスチャ制御層、アンチグレア層などを挙げることができる。このような機能層は、例えば、蒸着法、スパッタ法、ウエット方式などの表面処理技術によって形成することができる。
【0027】
ガラス板10は貫通孔THを具備していてもよい。貫通孔の長さ方向に対して平行な断面の形状は、長方形であってもよく、Xシェイプ、すなわち、貫通孔のトップ径及びボトム径に対して、中央部の径がより小さい形状であってもよく、テーパ状、すなわち、貫通孔のトップ径に対してボトム径がより小さい形状であってもよく、Oシェイプ、すなわち、貫通孔のトップ径及びボトム径に対して、中央部の径がより大きい形状であってもよく、その他の形状であってもよい。貫通孔の長さ方向に対して垂直な断面の形状は、円形であってもよく、楕円形であってもよく、多角形であってもよい。
【0028】
図5は、
図3、
図4に示す導体層ML1の拡大図である。
図5に示すように、導体層M10を段差形状とすることにより、導体層M20と導体層M30と金属層M14の応力がガラス板10と樹脂層ILとに分散して作用し、導体層とガラス板が接する部分の端部P2でのガラスクラックを抑制することができる。
【0029】
このような形状を構成するため、金属層M11と、金属層M12と、金属層M13と、金属層M14の酸性エッチング剤中でのエッチング速度の関係はM14>M12>M13>>M11にする必要がある。このようなエッチング速度の差異により、製造工程における金属層M12をエッチング除去する際に、本実施形態に係る
図5に示した段差形状を得ることができる。具体的には、この段差形状とは、金属層M14の幅L-M14が、金属層M11の幅L-M11、金属層M12の幅L-M12、金属層M13の幅L-M13よりも狭い(L-M14<L-M11、L-M12、L-M13)形状を成したものである。
【0030】
金属層M11と金属層M12と金属層M13と金属層M14は酸性エッチング剤中でのエッチング速度の関係がM14>M12>M13>>M11であれば、どのような金属を選択してもよいが、金属層M11は、ガラスとの密着性確保と酸性エッチング剤中で難溶解性を示すチタンが望ましく、チタンよりなる金属層M11、金属層M13との密着性を考慮して、金属層M12は銅を選択するのが望ましい。金属層M11、金属層M12は、製造容易性、製造コストを考慮して、スパッタ法により形成されるのが望ましい。また、金属層M11、金属層M12、金属層M13、金属層M14中で最も膜厚が厚い金属層M14は、配線抵抗や製造容易性、製造コストを考慮して、電解めっき法により形成した銅であることが望ましい。
【0031】
金属層M13は、金属層M14、金属層M12と比較して、酸性エッチング剤中でのエッチング速度が最も遅いニッケルが望ましい。ニッケルは真空中で成膜してもよく、無電解ニッケルめっき膜でもよい。ただし、ガラス板10に貫通孔THが具備される場合は、金属層M13は無電解ニッケルめっき膜を用いるのが望ましい。
【0032】
無電解ニッケルを成膜した場合、無電解ニッケルめっき液中に含まれる還元剤である次亜リン酸系の化合物由来のリンが膜中に共析する。
【0033】
金属層M13が無電解ニッケルめっき膜の場合、膜中に含有されるリン濃度は特に限定されず、例えば、0.1wt%から12wt%までの範囲内で選択をすることが可能である。
【0034】
無電解ニッケルめっきよりなる金属層M13の厚みは、1μmより厚くなると貫通孔TH内部でのガラスとの密着性が低下するため、膜厚は1μm以下が望ましく、より望ましくは0.3μm以下、更に望ましくは0.1μm以下である。膜厚を薄くすることで無電解ニッケルめっきの成膜にかかる時間を短縮できる。
【0035】
また、無電解ニッケルめっき膜には還元剤に由来する共析物であるリン以外にも、無電解ニッケルめっき液中に含まれる硫黄や鉛やビスマスなどが含まれていてもよい。あるいは、還元剤にホウ素を含む薬剤を使用することで、無電解ニッケルめっき膜中にホウ素を含有させてもよい。
【0036】
金属層M13が無電解ニッケルめっき膜(リン含有率が5wt%以下)の場合、金属層M12の除去を目的として、酸性エッチング剤に浸漬すると、エッチング速度の関係はM14>M12>M13>>M11のため、段差形状が形成される。
【0037】
また、金属層M13が無電解ニッケルめっき膜(リン含有率が5wt%よりも高い)の場合、金属層M12の除去を目的として、酸性エッチング剤に浸漬すると、エッチング速度の関係はM14>M12>>M13、M11のため、段差形状が形成される。
【0038】
すなわち、無電解ニッケルめっき膜中のリン含有率に依存することなく、段差形状を得ることができ、目的とするガラスクラック抑制効果を得ることができる。
【0039】
金属層M13が無電解ニッケルめっきで、金属層M12が銅の場合、金属層M13と金属層M12との界面には、無電解ニッケルめっき成膜時に銅表面に施す触媒のパラジウムが介在する。銅上のパラジウムの処理量は限定されない。
【0040】
酸性エッチング剤としては、硫酸と過酸化水素水の混合物、あるいは過硫酸ナトリウムなどを使用することができる。
【0041】
金属層M21と金属層M22、金属層M31と金属層M32には、例えば、スパッタ法又はCVD法によって形成され、例えば、Cu、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu3N4、Cu合金単体又は複数組み合わせたものを適用することができる。本実施形態では、電気特性、製造の容易性の観点及びコスト面を考慮して、金属層M21、金属層M31にはチタンスパッタ膜を、金属層M22、金属層M32には銅スパッタ膜を用いるのが好ましい。このチタン/銅スパッタ膜の構成にすることで、ガラスと導体層間、導体層と導体層、誘電体層と導体層の各層間で良好な密着性が確保できる。なお、スパッタ工程のタクト短縮のため、チタンと銅の合計膜厚は1μm以下とするのが望ましい
【0042】
金属層M23、金属層M33は、電解めっき法によって形成される。金属層M23、金属層M33は、製造コストや製造容易性、配線抵抗を考慮して電解めっき法により銅を形成するのが好ましい。
【0043】
誘電体層DEは、スパッタ法、CVD法などの真空プロセスによって形成され、アルミニウム、チタン、タンタル、クロム、ランタン、サマリウム、イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、ガリウム、セリウム、シリコンなどの窒化物や酸化物から選択することができる。誘電体層DEには誘電率が低く絶縁性に優れたシリコンナイトライドや酸化アルミ二ウムを用いるのが望ましい。
【0044】
段差形状は、金属層M14の幅L-M14と、金属層M11の幅L-M11と、金属層M12の幅L-M12と、金属層M13の幅L-M13の関係が、L-M14<L-M13<L-M12<L-M11の場合でも、L-M14<L-M13、L-M12<L-M11の場合でも本発明に係る効果を得ることができる。
【0045】
次に、
図6A~
図6Fを用いて、貫通孔THを具備したガラス板10上の導体層M10の製造方法について説明する。
【0046】
図6Aに示すように、ガラス板10の両面に、金属層M11と金属層M12をスパッタ法により形成する。具体的には、金属層M11としてチタンスパッタ膜を、金属層M12として銅スパッタ膜を形成する。また、金属層M12上とガラス板10のTH内には触媒層CAを形成する。
【0047】
次に、
図6Bに示すように、触媒層CA上にレジスト層REを形成し、レジスト層REに開口部REOを形成する。レジスト層REの形成前に触媒層CAを形成せずに、レジスト層REの形成後に触媒層CAを形成すると、レジスト層RE上にも触媒が吸着する。この場合、レジスト層RE上にも次工程で形成する無電解ニッケルめっき膜が析出し、目的とする構造が得られなくなるため、望ましくない。
【0048】
次に、
図6Cに示すように、レジスト層REの開口部REO内に金属層M13を形成する。金属層M13は無電解ニッケルめっき膜である。無電解ニッケルめっきは、次亜リン酸を含有する溶液中に浸漬することで形成される。このとき、無電解ニッケルめっき膜中にはリンが不純物として共析する。
【0049】
金属層M13を無電解めっき法で形成する場合、金属層M13は、触媒層CAが露出した部分に選択的に形成することができる。ただし、ガラス板10が貫通孔THを具備しない場合においては、金属層M13は無電解ニッケルめっき膜には限定されず、またニッケルにも限定されない。すなわち、酸性溶液中でのエッチング速度がM14>M12>M13>>M11であれば、金属種は限定されない。
【0050】
次に、
図6Dに示すように、金属層M13上に金属層M14を電解めっき法により形成する。具体的には、金属層M14として電解銅めっき膜を形成する。
【0051】
次に、
図6Eに示すように、レジスト層REを剥離するとともに、触媒層CAと金属層M12を除去する。触媒層CAと金属層M12は酸性溶液中で除去する。レジスト層REの形成後に金属層M13を形成せずに、レジスト層REの形成前に金属層M13を形成する工法では、金属層M13がリン含有率の高い無電解ニッケルめっき膜の場合、金属層M13を除去するには、高温高濃度アルカリ溶液中に浸漬する必要があり、この際、ガラス板10が脆化する懸念があるが、本実施形態の工法では無電解ニッケルめっき膜のエッチングそのものが不要である。すなわち、触媒層CAと銅よりなる金属層M12を酸性溶液中でエッチングすればよいため、ガラス板10の脆化を抑制できる。
【0052】
酸性溶液としては、例えば硫酸や過酸化水素を含むエッチング剤、あるいは過硫酸ナトリウムなどを含む溶液を用いることができる。金属層M13の無電解ニッケルめっき膜中に含まれるリンの含有率が高い場合、金属層M13はエッチングされない。そのため、触媒層CAと金属層M12をエッチングする際に、金属層M14の一部がエッチングされることで、導体層M10の断面が段差形状となる。
【0053】
一方、金属層M13の無電解ニッケルめっき膜中に含まれるリンの含有率が低い場合、触媒層CAと金属層M12を除去する際に、金属層M13と金属層M14もエッチングされるが、エッチング速度の差により、金属層M14の幅は、金属層M12の幅、金属層M13の幅よりも狭くなる。すなわち、リン含有率が高い場合と同様に、導体層M10の断面が段差形状となる。
【0054】
次に、
図6Fに示すように、チタンよりなる金属層M11を弱アルカリ溶液中に浸漬することで、エッチング除去し、ガラス配線基板2を得ることができる。このとき、段差形状を維持するために、金属層M12と、金属層M13と、金属層M14はアルカリエッチング剤により、ほとんどエッチングされない必要がある。なお、チタンエッチング剤は弱アルカリ性であるため、ガラスは脆化されない。
【0055】
弱アルカリ性エッチング剤としては、過酸化水素水とリン酸塩の混合物などを使用することができる。
【0056】
以上、本実施形態の工法を用いることにより、導体層を段差形状とすることができ、これにより、線膨張係数差による導体層とガラス板が接する部分でのガラスクラックの発生を抑制することができる。
【実施例0057】
次に、上述したようなガラス配線基板2の構成とその製造方法を用いた場合の作用効果について、実施例を示す
図7及び比較例を示す
図8を参照して説明する。
【0058】
<実施例1~4>
図7を用いて、実施例1~4について説明する。
図7は実施例に係るガラス配線基板の一部を示す断面図である。層の構成は
図9に示した。実施例1~4における層の構成は、無電解ニッケルめっき膜(金属層M13)のリン含有率及び電解銅めっき膜(金属層M14)の厚さのみが異なる。すなわち、無電解ニッケルめっき膜(金属層M13)のリン含有率が実施例1及び実施例2では1wt%、実施例3及び実施例4では7wt%であり、電解銅めっき膜(金属層M14)の厚さが実施例1及び実施例3では10μm、実施例2及び実施例4では15μmである。
【0059】
導体層M10のパターンサイズは500μm□、導体層M20、誘電体層DEのパターンサイズは300μm□、導体層M30のパターンサイズは250μm□とした。ガラス板10には、厚さが0.5mmの低膨張タイプのガラスを使用した。酸性エッチング剤には、硫酸と過酸化水素水の混合物を使用し、弱アルカリ性エッチング剤には、過酸化水素水とリン酸塩の混合物を使用した。
【0060】
金属層M14の幅L-M14が、金属層M11の幅L-M11、金属層M12の幅L-M12、金属層M13の幅L-M13よりも狭くなり、段差形状を成している。
【0061】
<比較例1>
図8を用いて、比較例1について説明する。
図8は比較例に係るガラス配線基板の一部を示す断面図である。層の構成は
図9に示した。実施例1、実施例3及び比較例1における層の構成は、無電解ニッケルめっき膜(金属層M13)の有無のみが異なる。すなわち、実施例1及び実施例3には無電解ニッケルめっき膜(金属層M13)があり、比較例1には無電解ニッケルめっき膜(金属層M13)がない。
【0062】
導体層M10のパターンサイズは500μm□、導体層M20、誘電体層DEのパターンサイズは300μm□、導体層M30のパターンサイズは250μm□とした。ガラス板10には、厚さが0.5mmの低膨張タイプのガラスを使用した。酸性エッチング剤には、硫酸と過酸化水素水の混合物を使用し、弱アルカリ性エッチング剤には、過酸化水素水とリン酸塩の混合物を使用した。
【0063】
金属層M14の幅L-M14が、金属層M11の幅L-M11、金属層M12の幅L-M12、金属層M13の幅L-M13よりも狭くならず、段差形状を成していない。
【0064】
<作用効果の確認>
本実施形態の効果の確認として、実施例1~4と比較例1で作製したガラス配線基板にて、以下の評価を実施した。
【0065】
<評価方法と条件>
図9記載の仕様の実施例1~4及び比較例1に係るガラス配線基板を温度サイクル試験(TCT)によりガラスクラック耐性を評価した。
試験条件:-55℃/15分⇔125℃/15分、1000サイクル
【0066】
<評価結果>
導体層M10が段差形状を示す実施例1~4では
図7記載の端部P2において、ガラスクラックは発生しなかったが、比較例1の段差形状のない導体層M10では
図8記載の端部P2において、クラックが生じた。これにより、導体層M10を段差形状とすることによるガラス板に対する導体層の応力緩和効果が確認された。また、実施例1~4では無電解ニッケルめっき膜(金属層M13)のリン含有率及び電解銅めっき膜(金属層M14)の厚さによらず、ガラスにはクラックが発生しなかった。
【0067】
上述の実施形態は一例であって、その他、具体的な細部構造などについては適宜に変更可能であることは勿論である。
【0068】
また、コンデンサが積層されるパッドとして機能する導体層と、貫通孔の周囲に形成されたパッドとして機能する導体層に本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明は、ガラス板とガラス板上に形成された導体層とを備えるガラス配線基板一般に適用可能である。
【0069】
本発明は、主基板にも、主基板とICチップとの間に介在するインターポーザとして機能する配線基板にも利用可能である。