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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190470
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20221219BHJP
   B60R 16/033 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
H02J9/06 110
B60R16/033 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098810
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛
(72)【発明者】
【氏名】米▲崎▼ 圭一
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015FA18
5G015GB05
5G015HA02
5G015HA14
5G015JA11
5G015JA56
5G015JA59
(57)【要約】
【課題】補助電源の再充電に要する時間を短縮することができる電源制御装置および電源制御方法を提供する
【解決手段】実施形態の一態様に係る電源制御装置は、診断部を備える。診断部は、補助電源によって主電源のバックアップを行うときに補助電源から負荷へ供給する電流よりも小さな電流を負荷へ所定時間供給させ、所定時間経過後の補助電源の電圧に基づいて、バックアップが可能か否かを診断する。診断時に負荷へ供給する電流は、バックアップを行うときに駆動される負荷に供給される想定電流を基に設定される。所定時間は、バックアップを行うときに駆動される負荷の想定駆動時間を基に設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助電源によって主電源のバックアップを行うときに前記補助電源から負荷へ供給する電流よりも小さな電流を前記負荷へ所定時間供給させ、前記所定時間経過後の前記補助電源の電圧に基づいて、前記バックアップが可能か否かを診断する診断部
を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記所定時間は、
第1所定時間と、前記第1所定時間よりも短い第2所定時間とを含み、
前記診断部は、
第1電流を前記負荷へ前記第1所定時間供給させた後、前記第1電流よりも大きい第2電流を前記負荷へ前記第2所定時間供給させ、前記第1所定時間および前記第2所定時間経過後の前記補助電源の電圧から、前記バックアップを行った後の前記補助電源の電圧を推定し、当該電圧に基づいて、前記バックアップが可能か否かを診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記第1電流および前記第2電流は、
前記バックアップを行うときに駆動される前記負荷に供給される想定電流を基に設定される
ことを特徴とする請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記第1所定時間および前記第2所定時間は、
前記バックアップを行うときに駆動される前記負荷の想定駆動時間を基に設定される
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記診断部は、
前記所定時間経過後の前記補助電源の電圧から、前記補助電源の温度が現在温度よりも所定温度低い場合に前記バックアップを行った後の前記補助電源の電圧を推定し、当該電圧に基づいて、前記バックアップが可能か否かを診断する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電源制御装置。
【請求項6】
電源制御装置の診断部が、
補助電源によって主電源のバックアップを行うときに前記補助電源から負荷へ供給する電流よりも小さな電流を前記負荷へ所定時間供給させ、前記所定時間経過後の前記補助電源の電圧に基づいて、前記バックアップが可能か否かを診断すること
を含むことを特徴とする電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動運転による走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、主電源と補助電源とを備え、主電源の電源系統に失陥が発生した場合に、補助電源の電源系統によって自動運転用の車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
冗長電源システムを備える車両は、補助電源による主電源のバックアップが可能か否かの診断が行われ、バックアップが可能と診断されると、自動運転への移行が許可される。
【0004】
補助電源によるバックアップが可能か否かを診断する方法として、例えば、補助電源から負荷へ退避走行の開始から完了までに必要となる電力を供給し、それにより低下する補助電源の電圧に基づいて診断する方法がある。
【0005】
この方法では、負荷への電力供給により低下する補助電源の電圧が所定の閾値を超えていれば、バックアップが可能と診断する。車両は、バックアップが可能と診断された後、補助電源の再充電が完了すると自動運転への移行が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-182864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した診断方法では、補助電源の再充電に時間が掛かるという問題がある。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、補助電源の再充電に要する時間を短縮することができる電源制御装置および電源制御方法を提供するこを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、診断部を備える。診断部は、補助電源によって主電源のバックアップを行うときに前記補助電源から負荷へ供給する電流よりも小さな電流を前記負荷へ所定時間供給させ、前記所定時間経過後の前記補助電源の電圧に基づいて、前記バックアップが可能か否かを診断する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様に係る電源制御装置および電源制御方法は、補助電源の再充電に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。
図2図2は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図3図3は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図4図4は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図5図5は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図6図6は、実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図7図7は、実施形態に係る電源制御方法の説明図である。
図8図8は、実施形態に係る電源制御装置の診断部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する電源制御装置を例に挙げて説明するが、実施形態に係る電源制御装置は、自動運転機能を備えていない車両に搭載されてもよい。
【0013】
また、以下では、電源制御装置が搭載される車両が電気自動車またはハイブリット自動車である場合について説明するが、電源制御装置が搭載される車両は、内燃機関によって走行するエンジン自動車であってもよい。
【0014】
なお、実施形態に係る電源制御装置は、主電源と補助電源とを備え、主電源に電源失陥が発生した場合に、補助電源によって主電源をバックアップする任意の装置に搭載されてもよい。
【0015】
[1.電源制御装置の構成]
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成例を示す説明図である。図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、主電源10と、第1負荷101と、一般負荷102と、第2負荷103と、自動運転制御装置100とに接続される。電源制御装置1は、主電源10の電力を第1負荷101および一般負荷102に供給する第1系統110と、後述する補助電源20の電力を第2負荷103に供給する第2系統120とを備える。
【0016】
第1負荷101は、自動運転用の負荷を含む。例えば、第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。一般負荷102は、例えば、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、および各種ライト等を含む。
【0017】
第2負荷103は、第1負荷101と同様の機能を備える。第2負荷103は、例えば、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等の自動運転中に動作する装置を含む。第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。自動運転制御装置100は、第1負荷101または第2負荷103を動作させて、車両を自動運転制御する装置である。
【0018】
主電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する)とを含む。なお、主電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0019】
DC/DC11は、発電機と、PbB12よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続され、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリット自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0020】
なお、主電源10は、エンジン自動車に搭載される場合、DC/DC11の代わりにオルタネータ(発電機)が設けられる。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101および一般負荷102への電力供給、第2負荷103への電力供給、および後述する補助電源20の充電を行う。
【0021】
電源制御装置1は、補助電源20と、系統間スイッチ41と、電池用スイッチ42と、バイパススイッチ43と、制御部3と、第1電圧センサ51と、第2電圧センサ52と、DC/DC53とを備える。補助電源20は、主電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。補助電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、補助電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0022】
系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続する系統間ライン130に設けられ、第1系統110と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。電池用スイッチ42は、LiB21と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチであり、具体的には、LiB21とバイパススイッチ43およびDC/DC53とを接続および切断可能なスイッチである。
【0023】
バイパススイッチ43は、電池用スイッチ42と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。DC/DC53は、バイパススイッチ43と並列に接続され、LiB21から出力される電圧およびLiB21へ入力される電圧を調整する。
【0024】
第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられ、第1系統110の電圧を検出し、検出結果を制御部3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられ、第2系統120の電圧を検出し、検出結果を制御部3に出力する。
【0025】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、制御部3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0026】
制御部3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、電源制御装置1の動作を制御する。制御部3は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52から入力される検出結果に基づいて、第1系統110または第2系統120の地絡を検出する。制御部3による地絡の検出方法の具体例については、後述する。
【0027】
制御部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合、その旨を自動運転制御装置100に通知する。なお、制御部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合、自動運転が不可能な状態である旨を自動運転制御装置100に通知してもよい。また、制御部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出していない場合、自動運転が可能な状態である旨を自動運転制御装置100に通知してもよい。
【0028】
制御部3は、第1系統110に地絡等の電源失陥が発生した場合には、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42およびバイパススイッチ43を導通して、補助電源20から第2負荷103に電力を供給する。また、制御部3は、第2系統120に地絡等の電源失陥が発生した場合には、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を遮断した状態で、主電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力を供給する。
【0029】
これにより、電源制御装置1は、自動運転中にいずれか一方の系統が地絡しても、他方の系統を使用し、自動運転制御装置100によって車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0030】
また、制御部3は、補助電源20によって主電源10のバックアップが可能か否かを診断する診断部31を備える。診断部31による診断方法については、図7を参照して後述する。次に、図2図6を参照し、電源制御装置1の動作について説明する。
【0031】
[2.電源制御装置の通常時動作]
制御部3は、第1系統110および第2系統120に地絡が発生していない通常時には、図2に示すように、電池用スイッチ42を遮断し、バイパススイッチ43を導通した状態で系統間スイッチ41を導通し、主電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力を供給する。
【0032】
[3.電源制御装置の地絡発生時動作]
次に、図3図5を参照して、電源制御装置1の地絡発生時動作について説明する。図3に示すように、電源制御装置1では、例えば、第1系統110で地絡200が発生すると、地絡点に向けて過電流が流れるため、第1電圧センサ51によって検出される第1系統110の電圧が地絡閾値以下になる。
【0033】
また、電源制御装置1では、第2系統120で地絡201が発生すると、地絡点に向けて過電流が流れるため、第2電圧センサ52によって検出される第2系統120の電圧が地絡閾値以下になる。
【0034】
このため、制御部3は、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52の少なくともいずれか一方によって検出される電圧が地絡閾値以下になった場合に、電源の異常を検知して系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を導通する。このとき、制御部3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定する。
【0035】
その後、制御部3は、所定時間が経過しても第1電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間以上地絡閾値以下であり、第2電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで復帰した場合、第1系統110に地絡200が発生したと本判定する。
【0036】
そして、図4に示すように、制御部3は、補助電源20から第2負荷103に電力を供給し、その旨を自動運転制御装置100に通知する。これにより、自動運転制御装置100は、補助電源20から供給される電力によって第2負荷103を動作させて、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0037】
また、制御部3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定した後、所定時間が経過しても第2電圧センサ52によって検出される電圧が地絡閾値以下であり、第1電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで復帰した場合、第2系統120に地絡201が発生したと本判定する。
【0038】
そして、図5に示すように、制御部3は、電池用スイッチ42を遮断して、主電源10から第1負荷101に電力を供給し、その旨を自動運転制御装置100に通知する。これにより、自動運転制御装置100は、主電源10から供給される電力によって第1負荷101を動作させて、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0039】
また、電源制御装置1では、地絡200,201ではなく、第1負荷101または一般負荷102が過負荷状態になった場合に、第1電圧センサ51によって検出される電圧が一時的に地絡閾値以下になることがある。また、電源制御装置1では、第2負荷103が過負荷状態になった場合に、第2電圧センサ52によって検出される電圧が一時的に地絡閾値以下になることがある。
【0040】
この場合、電源制御装置1では、継続的に主電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力が供給され、第2負荷103から第2負荷103に電力が供給される。このため、制御部3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定した後、所定時間が経過する前に第1電圧センサ51および第2電圧センサ52によって検出される電圧が共に地絡閾値を超えるまで復帰すれば、一過性の電圧低下であって、電源に異常がないと本判定する。その後、制御部3は、図2に示した通常動作に復帰させるため、電池用スイッチ42を遮断し、系統間スイッチ41を再導通する。
【0041】
[4.補助電源診断時動作]
次に、図6および図7を参照し、電源制御装置1の診断部31が補助電源20による主電源10のバックアップが可能か否かを診断する診断時動作について説明する。
【0042】
診断部31は、例えば、車両のIG(イグニッションスイッチ)がオフにされるときに、次回IGがオンにされたとき補助電源20による主電源10のバックアップが可能か否かの診断をバックグラウンドで行う。なお、診断部31は、IGがオンされた後に診断を行ってもよい。
【0043】
このとき、図6に示すように、診断部31は、電池用スイッチ42をオンにし、バイパススイッチ43をオフにする。そして、診断部31は、補助電源20によって主電源10のバックアップを行うときに補助電源20から第2負荷103へ供給することが想定される電流(バックアップ電流)よりも小さな診断用の電流をDC/DC53を介して第2負荷103へ所定時間供給させる。診断部31は、DC/DC53を制御することで診断用の電流値を制御する。
【0044】
その後、診断部31は、所定時間経過後の補助電源20の電圧に基づいて、補助電源20による主電源10のバックアップが可能か否かを診断する。本実施形態では、補助電源20に切り替わった後、補助電源20からステアリングモータに30秒間電力を供給して車両を退避走行させた後、補助電源20から電動ブレーキ装置に6秒間電力を供給して車両を停車させるバックアップ制御を想定している。
【0045】
具体的には、図7に示すように、例えば、時刻t1から時刻t2までの第1所定時間(例えば、30秒間)、車両を退避走行させるためには、20[A]のバックアップ電流を30秒間ステアリングモータに供給する必要があると想定している。
【0046】
また、時刻t2から時刻t3までの第2所定時間(例えば、6秒間)で車両を停車させるためには、80[A]のバックアップ電流を6秒間電動ブレーキ装置に供給する必要があると想定している。
【0047】
ここで、診断のために、実際に補助電源20から第2負荷103へ20[A]のバックアップ電流を30秒間供給し、80[A]のバックアップ電流を6秒間供給した後の補助電源20の電圧が所定の閾値を超えていれば、バックアップ可能と診断できる。なお、ここでの閾値は、電動ブレーキ装置を正常に作動させることができる電圧値の下限値よりも高い値に設定される。
【0048】
しかし、この場合、診断に要する消費電力量は、実際にバックアップ制御により退避走行を行う場合のバックアップ電力量と同じ約0.3[Ah]と大きくなり、その分、補助電源20の再充電に要する時間が長くなる。
【0049】
そこで、診断部31は、診断時に時刻t1から時刻t2までの第1所定時間(ここでは、30秒間)、診断用電流として実際のバックアップ制御のときよりも小さい第1電流(例えば、10[A])をDC/DC53の制御により第2負荷103に供給する。その後、診断部31は、診断用電流として時刻t2から時刻t3までの第2所定時間(ここでは、6秒間)、実際のバックアップ制御のときよりも小さく、第1電流よりも大きな第2電流(ここでは、20[A])をDC/DC53の制御により第2負荷103に供給する。
【0050】
このとき、消費される診断時消費電力は、約0.1[Ah]であり、実際にバックアップ制御により退避走行を行う場合のバックアップ電力量の約0.3[Ah]に比べて大幅に低減される。
【0051】
そして、診断部31は、第2電圧センサ52によって、時刻t3における補助電源20の電圧を診断時電圧として検出する。このとき、図7に示すように、診断時電圧は、実際のバックアップ制御のときのバックアップ電圧よりも高い電圧値になる。
【0052】
このため、図7に示すように、診断部31は、診断時電圧に対して第1電圧補正と、第2電圧補正とを行うことによって診断時電圧から、実際にバックアップ制御が行われたときのバックアップ電圧を推定する。
【0053】
第1電圧補正は、10[A]の第1電流を30秒間、第2負荷103に供給したときの補助電源20の電圧低下量から、20[A]のバックアップ電流を30秒間、第2負荷103に供給したときの補助電源20の電圧低下量を推定する処理である。
【0054】
第2電圧補正は、20[A]の第1電流を6秒間、第2負荷103に供給したときの補助電源20の電圧低下量から、80[A]のバックアップ電流を6秒間、第2負荷103に供給したときの補助電源20の電圧低下量を推定する処理である。
【0055】
そして、診断部31は、第2電圧補正を行って推定したバックアップ電圧が所定の閾値を超えていれば、バックアップ可能と診断する。ここでの閾値は、例えば、バックアップ可能最低電圧(例えば、11.5[V])よりも推定誤差マージンの分だけ高い電圧値に設定する。また、診断時電圧やバックアップ電圧は、診断開始時点の補助電源20の電圧に応じて変動する。
【0056】
このため、診断部31は、例えば、診断開始時点の補助電源20のSOC(State Of Charge)が80%のときに想定されるバックアップ可能最低電圧に推定誤差マージンを加算した値を閾値上限に設定する。また、診断部31は、例えば、診断開始時点の補助電源20のSOCが60%のときに想定されるバックアップ可能最低電圧に推定誤差マージンを加算した値を閾値下限に設定する。そして、診断部31は、診断開始時点の補助電源20のSOCに応じて、閾値上限から閾値下限までの間の閾値を選択する。
【0057】
このように、電源制御装置1は、実際のバックアップ制御のときに第2負荷103に供給するバックアップ電流よりも小さな第1電流および第2電流を第2負荷103に供給して、補助電源20によるバックアップが可能か否かを診断する。これにより、電源制御装置1は、診断時消費電力を低減し、補助電源20の電圧低下を抑制することによって、補助電源20の再充電に要する時間を短縮することができる。
【0058】
また、第1電流および第2電流は、補助電源20によって主電源10のバックアップを行うときに駆動される第2負荷103に供給される想定電流を基に設定される。これにより、診断部31は、実際にバックアップ制御が行われたときの補助電源20の正確なバックアップ電圧を推定することができる。
【0059】
また、第1所定時間および第2所定時間は、補助電源20によって主電源10のバックアップを行うときに駆動される第2負荷103の想定駆動時間を基に設定される。これによっても、診断部31は、実際にバックアップ制御が行われたときの補助電源20の正確なバックアップ電圧を推定することができる。
【0060】
さらに、診断部31は、気温の変化を考慮し、第2電圧補正を行って推定したバックアップ電圧に対して第3電圧補正を行う。具体的には、LiB21は、気温が低下すると、気温の変化に応じて出力電圧が低下する。
【0061】
このため、例えば、日中にIGをオフにし、その後、日中よりも気温が低い夜間や早朝にIGがオンにされた場合、LiB21の電圧が日中の電圧よりも低下していることがある。この場合、補助電源20は、前回日中にIGがオフにされたときにバックアップが可能と診断されていたとしても、次回早朝にIGがオンにされたときに、バックアップが不可能な状態になっているおそれがある。
【0062】
そこで、診断部31は、上記した所定時間(第1所定時間+第2所定時間)経過後の補助電源20の電圧から、補助電源20の温度が現在温度よりも所定温度低い場合にバックアップを行った後の補助電源20の電圧を推定する第3電圧補正を行う。
【0063】
例えば、診断部31は、第2電圧補正を行って推定したバックアップ電圧から、気温が現在温度よりも15℃低くなった場合の補助電源20の電圧(図7に示すバックアップ電圧(-15℃))を第3電圧補正によって推定する。
【0064】
そして、診断部31は、第3電圧補正によって推定した電圧(図7に示すバックアップ電圧(-15℃))に基づいて、補助電源20によるバックアップが可能か否かを診断する。このとき、診断部31は、バックアップ電圧(-15℃)が診断前の補助電源20の電圧に応じた閾値を超えていれば、バックアップが可能と診断する。
【0065】
これにより、診断部31は、IGがオフにされたときから、次にIGがオンにされるまでの間に気温が低下する場合であっても、次にIGがオンにされたときに、補助電源20によるバックアップが可能な状態になっているか否かを正確に診断することができる。
【0066】
なお、上記した第1所定時間、第2所定時間、第1電流、第2電流、および気温等について示した各数値は、一例であり、本実施形態に係る電源制御装置1の動作を限定するものではなく、状況に応じて任意に変更されうる。
【0067】
[5.診断部が実行する処理]
次に、図8を参照して実施形態に係る診断部31が実行する処理について説明する。図8は、実施形態に係る電源制御装置の診断部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。診断部31は、電源制御装置1を備える車両のIGがオフにされると、バックグラウンドで図8に示す処理を開始する。
【0068】
具体的には、図8に示すように、診断部31は、まず、第2負荷103に第1電流を第2所定時間供給し(ステップS101)、第1電圧補正を行う(ステップS102)。続いて、診断部31は、第2負荷103に第2電流を第2所定時間供給し(ステップS103)、第2電圧補正を行う(ステップS104)。
【0069】
その後、診断部31は、第2電圧補正後のバックアップ電圧に対して第3電圧補正を行い(ステップS105)、電圧補正値がバックアップ可能電圧閾値より高いか否かを判定する(ステップS106)。
【0070】
そして、診断部31は、電圧補正値がバックアップ可能電圧閾値より高いと判定した場合(ステップS106,Yes)、バックアップ可能と診断し(ステップS107)、処理を終了する。また、診断部31は、電圧補正値がバックアップ可能電圧閾値より以下であると判定した場合(ステップS106,No)、バックアップ不可能と診断して(ステップS108)、処理を終了する。
【0071】
なお、図8に示した処理は、一例であり、種々の変形が可能である。例えば、診断部31は、第3電圧補正の処理を省略することもできる。例えば、診断部31は、気温の日較差や年較差が所定の気温範囲内の地域では、第3電圧補正を省略することができる。これにより、診断部31は、第3電圧補正に要する処理負荷を削減しつつ、バックアップ可能か否かを正確に診断することができる。
【0072】
また、診断部31は、第2電圧補正の処理および第3電圧補正の処理を省略してもよい。この場合、診断部31は、例えば、第2負荷103に第1電流を第1所定時間供給し、それに伴い降下した補助電源20の電圧から、第2負荷103に第2電流を第2所定時間供給した場合の補助電源20の電圧(第1電圧補正後の電圧)を推定する。
【0073】
そして、診断部31は、推定した第1電圧補正後の電圧から、第2電圧補正後の補助電源20の電圧を推定し、推定した第2電圧補正後の補助電源20の電圧から、第3電圧補正処理後の補助電源20の電圧を推定することもできる。
【0074】
この場合、診断部31は、図8に示す処理に比べて診断の精度は若干低下するものの、ステップS104,S105の処理が不要になる分、処理負荷を低減できる。さらに、診断部31は、ステップS103の処理を行わない、つまり、第2負荷103に第2電流を供給しない。このため、診断部31は、診断のための消費電力をさらに低減することができるので、補助電源20の再充電に要する時間をより一層短縮することができる。
【0075】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 電源制御装置
10 主電源
11 DC/DC
12 PbB
20 補助電源
21 LiB
3 制御部
31 診断部
41 系統間スイッチ
42 電池用スイッチ
43 バイパススイッチ
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
53 DC/DC
100 自動運転制御装置
101 第1負荷
102 一般負荷
103 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8