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特開2022-190475液体補充容器、液体補充システムおよび液体貯蔵容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190475
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】液体補充容器、液体補充システムおよび液体貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J2/175 115
B41J2/175 169
B41J2/175 141
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098816
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 寛久
(72)【発明者】
【氏名】井利 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA24
2C056EC64
2C056KC02
2C056KC09
2C056KC15
2C056KC17
2C056KD08
(57)【要約】
【課題】液体貯蔵容器に記録液を補充する際の記録液による汚染を抑制する。
【解決手段】記録液の被注入部を有する液体貯蔵容器に対して記録液を補充する液体補充容器であって、前記液体貯蔵容器に補充する記録液を保持する保持部と、前記保持部の記録液を吐出するための開口部を有し、前記液体貯蔵容器の前記被注入部に挿入される注入部と、を備える液体補充容器において、前記開口部は、前記被注入部の内壁に対向するように開口することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液の被注入部を有する液体貯蔵容器に対して記録液を補充する液体補充容器であって、
前記液体貯蔵容器に補充する記録液を保持する保持部と、
前記保持部の記録液を吐出するための開口部を有し、前記液体貯蔵容器の前記被注入部に挿入される注入部と、
を備える液体補充容器において、
前記開口部は、前記被注入部の内壁に対向するように開口する
ことを特徴とする液体補充容器。
【請求項2】
前記注入部は、前記液体貯蔵容器の前記被注入部に挿入された場合に、前記被注入部の内壁に対向する先端側の側面で開口している
ことを特徴とする請求項1に記載の液体補充容器。
【請求項3】
前記注入部は、前記注入部の先端において挿入方向と交差する方向であって、前記被注入部の内壁に向かう方向に突出する先端部を有し、
前記開口部は、前記先端部において前記先端部が突出する方向に開口している
ことを特徴とする請求項1に記載の液体補充容器。
【請求項4】
前記注入部は、前記注入部の先端において挿入方向から前記被注入部の内壁に向かって湾曲して突出する湾曲先端部を有し、
前記開口部は、前記湾曲先端部において前記湾曲先端部が突出する方向に開口していることを特徴とする請求項1に記載の液体補充容器。
【請求項5】
前記注入部は、先端側が有底筒状に構成され、挿入方向に延びる記録液の流路を内部に有し、筒状部の一部に前記開口部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体補充容器。
【請求項6】
前記注入部は、先端側に略半球体状の底部を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の液体補充容器。
【請求項7】
前記開口部は、前記注入部の先端に向かうほど周方向の幅が広くなる
ことを特徴とする請求項5に記載の液体補充容器。
【請求項8】
前記開口部は、前記挿入方向と直交する方向の両側に対で設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の液体補充容器。
【請求項9】
前記被注入部に対する前記注入部の位置が、前記開口部が前記被注入部の内壁に対して所定の方向に向く位置となるように、前記注入部を前記被注入部に対して位置決めする、前記被注入部の被係合部に係合可能な係合部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の液体補充容器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液体補充容器と、
前記注入部が挿入される被注入口を有し、前記被注入口から挿入された前記注入部の前記開口部から記録液が注入される前記被注入部と、前記被注入部で注入された記録液を貯蔵する貯蔵部と、を備える液体貯蔵容器と、
を備える液体補充システムにおいて、
前記被注入部は、内壁に前記開口部に対向する領域を有する
ことを特徴とする液体補充システム。
【請求項11】
前記被注入部は、内壁において前記開口部に対向する領域に、前記開口部から前記被注入部の内壁に向けて吐出された記録液が、前記被注入部の内壁に当たった後に、前記貯蔵部に向かう方向に移動するように、傾斜した傾斜面を含む
ことを特徴とする請求項10に記載の液体補充システム。
【請求項12】
前記傾斜面は、前記被注入口から離れるほど、前記注入部の挿入方向と直交する方向において、前記被注入口から離れるように傾斜している
ことを特徴とする請求項11に記載の液体補充システム。
【請求項13】
前記被注入部は、
内壁において前記被注入口に近い側に、前記注入部と対向する第1の壁面と、
内壁において前記第1の壁面よりも前記被注入口から遠い側に、前記第1の壁面よりも前記注入部から離れて前記開口部に対向する第2の壁面と、
を含む
ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の液体補充システム。
【請求項14】
前記液体貯蔵容器は、前記被注入部の外面における、前記第2の壁面に対応する位置に凸状部を有する
ことを特徴とする請求項13に記載の液体補充システム。
【請求項15】
前記液体貯蔵容器を複数備える液体補充システムであって、
複数の前記液体貯蔵容器は、前記被注入部が同じ向きとなるように隣接して配置され、
前記凸状部は、前記被注入部の外面における、複数の前記液体貯蔵容器が隣接する方向における一方の側に設けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の液体補充システム。
【請求項16】
前記液体貯蔵容器を複数備える液体補充システムであって、
複数の前記液体貯蔵容器は、前記被注入部が同じ向きとなるように隣接して配置され、
前記凸状部は、前記被注入部の外面における、隣接する他の前記被注入部と対向する領域から外れた位置に設けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の液体補充システム。
【請求項17】
前記注入部は、前記被注入部に対して鉛直方向下方に向かって挿入される
ことを特徴とする請求項10から16のいずれか1項に記載の液体補充システム。
【請求項18】
前記注入部は、前記被注入部に対し、鉛直方向に対して斜め下方に向かって挿入されることを特徴とする請求項10から16のいずれか1項に記載の液体補充システム。
【請求項19】
前記被注入部は、内壁において前記開口部に対向する領域に、前記注入部の挿入方向に沿って傾斜した領域を含む
ことを特徴とする請求項18に記載の液体補充システム。
【請求項20】
前記被注入部は、内壁において前記開口部に対向する領域よりも前記被注入口から遠い側に、前記開口部に対向する領域に対して突出する突出部を含む
ことを特徴とする請求項10から19のいずれか1項に記載の液体補充システム。
【請求項21】
前記液体貯蔵容器を複数備える液体補充システムであって、
複数の前記液体貯蔵容器は、前記被注入部に対する前記液体補充容器の前記注入部の位置が、前記開口部が前記被注入部の内壁に対して所定の方向に向く位置となるように、前
記注入部を前記被注入部に対して位置決めする、前記液体補充容器の係合部に係合可能な被係合部をさらに備え、
前記被係合部は、対応する前記液体補充容器の係合部に係合可能であって、他の液体貯蔵容器に対応する前記液体補充容器の係合部とは係合しない形状である
ことを特徴とする請求項10から20のいずれか1項に記載の液体補充システム。
【請求項22】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液体補充容器の前記注入部が挿入される被注入口を有し、前記被注入口から挿入された前記注入部の前記開口部から記録液が注入される前記被注入部と、前記被注入部で注入された記録液を貯蔵する貯蔵部と、を備える液体貯蔵容器において、
前記被注入部は、内壁に前記開口部に対向する領域を有する
ことを特徴とする液体貯蔵容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体補充容器、液体補充システムおよび液体貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体補充容器によって液体貯蔵容器に記録液(インク)を補充する際に、補充された記録液は、液体貯蔵容器内の液面で飛び散り、周囲を汚染する場合がある。特許文献1にあるインク補給補助装置は、軸方向に流路を有するインク入口部材と液密状態で接続可能な接続部と、接続部に向けてインクを流入可能なインク流入部を備える。当該インク補給補助装置は、これらの部品を介してインクを補充することで、インク液面からの跳ね返りによる汚染を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-161743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクを補充するための部品を備える構成では、インク補給補助装置に部品を接続したり、インク補給補助装置から部品を取り外したりする際に、部品に付着したインクが飛び散って周囲を汚染する可能性がある。また、部品数の増加は、コストの増加にもつながる。
【0005】
本発明は、液体貯蔵容器に記録液を補充する際の記録液による汚染を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体補充容器は、記録液の被注入部を有する液体貯蔵容器に対して記録液を補充する液体補充容器であって、前記液体貯蔵容器に補充する記録液を保持する保持部と、前記保持部の記録液を吐出するための開口部を有し、前記液体貯蔵容器の前記被注入部に挿入される注入部と、を備える液体補充容器において、前記開口部は、前記被注入部の内壁に対向するように開口することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体貯蔵容器に記録液を補充する際の記録液による汚染を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体補充システムの記録液補充時の飛散の抑制について説明する図である。
図2】液体補充容器の先端形状を例示する図である。
図3】実施形態2における記録液補充時の飛散の抑制について説明する図である。
図4】被注入部に設けられる凹部および段差の位置について説明する図である。
図5】液体貯蔵容器と液体補充容器との位置決めについて説明する図である。
図6】液体補充容器から液体貯蔵容器に記録液を補充する例を示す図である。
図7】液体補充時に発生する記録液の飛散について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。ただし、実施形
態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、およびそれらの相対配置などは、発明が適用される構成や各種条件などにより適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。
【0010】
<実施形態1>
液体補充システムは、液体補充容器から液体貯蔵容器に液体(記録液)を補充するシステムである。液体補充容器は、液体貯蔵容器に対して記録液を補充するための容器である。液体貯蔵容器は、記録ヘッドにより液体(記録液)を吐出して記録をするための液体吐出装置内に複数搭載される。実施形態1に係る液体補充容器および液体貯蔵容器は、記録液補充時の記録液による汚染を抑制する。ここで、図6および図7を参照して、比較例での記録液による汚染について説明する。
【0011】
図6は、比較例に係る液体補充容器601から液体貯蔵容器603に記録液を補充する例を示す図である。液体補充容器601は、液体貯蔵容器603に記録液を補充するための注入部602を有する。液体貯蔵容器603は、注入部602が挿入され、液体補充容器601から記録液が注入される被注入口604を有する。
【0012】
図7は、液体補充時に発生する記録液の飛散について説明する図である。図7は、比較例に係る液体貯蔵容器603の被注入口604、および液体補充容器601の注入部602付近を拡大した図である。
【0013】
図7では、補充される記録液は、液体補充容器601の注入部602から、液体貯蔵容器603が貯蔵する記録液の液面605に直接滴下される。滴下された記録液は、液面605のE地点に衝突する(E1)。衝突時に液面605から記録液が飛び散り(E2、E3)、飛び散った記録液は液体貯蔵容器603の被注入口604から飛び出て周囲を汚染する場合がある(E3)。
【0014】
図1を参照して、液体補充システム100の記録液補充時の飛散の抑制について説明する。液体補充システム100は、液体貯蔵容器101および液体補充容器201を備える。
【0015】
実施形態1に係る液体貯蔵容器101は、記録液が注入される被注入部102および被注入部102で注入された記録液を貯蔵する貯蔵部105を有する。被注入部102は、液体補充容器201の注入部202が挿入される被注入口103を有する。記録液は、注入部202の開口部から被注入部102に注入される。被注入部102は、内壁104に注入部202の開口部に対向する領域を有する。貯蔵部105は、注入部202の開口部に対向する領域を介して記録液が補充される。
【0016】
液体補充容器201は、記録液を水平方向に吐出する注入部202、および液体貯蔵容器101に補充する記録液を保持する保持部203を有する。注入部202は、保持部203の記録液を吐出するための開口部を有する。開口部は、被注入部102の内壁104に対向するように開口する。注入部202は、液体貯蔵容器101の被注入口103から被注入部102に挿入される。図1は、液体貯蔵容器101の被注入部102、および液体補充容器201の注入部202付近を拡大し、記録液が吐出されて液面106に滴下する流れを模式的に示す。
【0017】
注入部202の開口部を液体貯蔵容器101の内壁104に対向させた状態で記録液を注入すると、注入部202から吐出された記録液は、被注入部102の内壁104のA地点に衝突する。A地点に衝突した記録液は、内壁104で角が形成されたB地点まで減速しながら伝わる(B1)。
【0018】
減速した記録液は、B地点から滴下されて液面106のC地点に衝突する(C1)。記録液は、注入部202から直接滴下される場合よりも減速された状態で、注入部202より低いB地点から液面106に滴下される。このため、注入部202の開口部から被注入部102の内壁104に向けて吐出された記録液の飛び散りは抑制される。また、被注入部102の内壁104に向けて吐出された記録液は、被注入口103から外部へ飛散することが抑制される。
【0019】
補充される記録液が泡立ちやすい場合、記録液が内壁104を伝わって滴下する速度が減衰することにより、液面106に抱き込まれる空気は減少し、記録液の泡立ちは抑制することができる。泡立ちの抑制により、泡立った記録液が被注入口103から溢れて周囲を汚染することは抑制される。また、泡立った記録液の消泡を待ちながら記録液を補充する手間は軽減される。
【0020】
図2は、液体補充容器201の注入部202の先端形状を例示する図である。注入部202の先端形状は、例えば、フック形状、傾斜+ドン突き形状、両側切り欠き形状、L字カール形状、L字形状である。注入部202の先端形状は、記録液が液体貯蔵容器101の被注入部102の内壁104に衝突するように吐出される形状であればよく、図2に例示する形状に限られない。
【0021】
フック形状、傾斜+ドン突き形状、両側切り欠き形状は、注入部202が、液体貯蔵容器101の被注入部102に挿入された場合に、被注入部102の内壁に対向する先端側の側面で開口している例である。注入部202は、先端側が有底筒状に構成され、挿入方向に延びる記録液の流路を内部に有し、筒状部の一部に開口部が設けられている。
【0022】
フック形状は、注入部202の先端側に略半球体状の底部を有し、先端側の側面に切り欠き(開口部)が形成された形状である。傾斜+ドン突き形状は、注入部202の切り欠き(開口部)が、注入部202の先端に向かうほど周方向の幅が広くなるように形成された形状である。傾斜+ドン突き形状では、底部が平面状に形成されているため、記録液の吐出方向は、フック形状の場合よりも定まりやすい。
【0023】
両側切り欠き形状は、切り欠き(開口部)が、注入部202の挿入方向と直交する方向の両側に対で設けられている形状である。なお、開口部は、対向する両側の側面に限られず、3箇所以上に形成したり、片側に複数形成したりしてもよい。
【0024】
フック形状、傾斜+ドン突き形状、両側切り欠き形状のように、注入部202の先端部に切り欠き(開口)を形成する場合、先端部に凸部がないため、注入部202は、キャッピングが容易である。また、注入部202の先端部に開口を形成する場合、被注入口103との引っ掛かりが生じ難いため、被注入部102はスムーズに装着することができる。
【0025】
L字カール形状は、注入部202の先端部がL字状に湾曲した形状である。注入部202は、注入部202の先端において挿入方向から被注入部102の内壁に向かって湾曲して突出する湾曲先端部を有する。注入部202の開口部は、湾曲先端部において湾曲先端部が突出する方向に開口している。なお、注入部202の先端部は、記録液を吐出する開口部が被注入部102の内壁104に対向していればよく、図2に示すL字状に限られず、緩やかな円弧状に曲げられてもよい。
【0026】
L字形状は、注入部202の先端部をL字型とした形状である。注入部202は、注入部202の先端において挿入方向と交差する方向であって、被注入部102の内壁に向かう方向に突出する先端部を有する。注入部202の開口部は、先端部において先端部が突
出する方向に開口している。なお、先端部の形状は、L字型に限られず、液体貯蔵容器101の被注入部102の形状に合わせて所定の角度で曲げられた形状であってもよい。
【0027】
注入部202の先端形状がフック形状、傾斜+ドン突き形状、両側切り欠き形状である場合、L字カール形状、L字形状の場合よりも、開口面積は広くすることができる。この場合、フック形状、傾斜+ドン突き形状、両側切り欠き形状の注入部202では、圧力一定で記録液を補充した場合、L字カール形状、L字形状の注入部202よりも、記録液は減速して吐出される。記録液の減速により、飛び散り抑制効果はさらに期待される。
【0028】
なお、記録液が減速して吐出される場合、液体補充容器201の注入部202の開口は、液体貯蔵容器101の内壁104に記録液が衝突できる距離まで近づけることが望ましい。
【0029】
特に、注入部202の先端形状が両側切り欠き形状の場合、フック形状、傾斜+ドン突き形状の場合よりも、記録液は減速して補充される。この場合、注入部202は、開口が液体貯蔵容器101の内壁104とさらに近づくように配置されることが望ましい。
【0030】
一方、注入部202の先端形状がLカール形状、L字形状である場合、フック形状、傾斜+ドン突き形状の場合と比較して開口面積が小さく、記録液の流れは速くなり直進性を有する。したがって、注入部202の開口と内壁104とは、先端形状がフック形状、傾斜+ドン突き形状の場合と比較して、離れた構成にすることが可能となる。
【0031】
<実施形態2>
実施形態2は、被注入部102の形状を変えることにより、実施形態1よりも記録液の速度を低減し、記録液の飛散をさらに抑制する形態である。図3(A)~図3(F)は、実施形態2における記録液補充時の記録液飛散の抑制について説明する図である。
【0032】
実施形態2に係る液体貯蔵容器101および液体補充容器201の構成は、実施形態1と同様であるが、液体貯蔵容器101の被注入部102の形状は、図1に示す例と異なる。実施形態2での被注入部102の形状は、注入部202から補充された記録液が衝突する内壁が傾斜している形状、内壁104に凹部または段差を設けた形状等を含む。実施形態2での被注入部102の形状によっても、液体貯蔵容器101および液体補充容器201は、記録液補充時の記録液による汚染を抑制する効果を奏することができる。
【0033】
図3(A)は、被注入部102aが、内壁104aにおいて、注入部202の開口部に対向する領域に傾斜面を含む例を示す。傾斜面は、被注入部102aの内壁104aに向けて吐出された記録液が、内壁104aに当たった後に、貯蔵部105に向かう方向に移動するように傾斜する。傾斜面は、被注入口103から離れるほど、注入部202の挿入方向と直交する方向において、被注入口103から離れるように傾斜している。図3(A)では、注入部202は、被注入部102に対して鉛直方向下方に向かって挿入される。
【0034】
補充された記録液は、注入部202の開口部から吐出されると内壁104aの対向する位置であるA地点に衝突し、内壁104aの傾斜面に沿ってB地点へ伝わる。内壁104aが傾斜しているため、記録液は、被注入口103から離れたB地点で液面106のC地点に滴下される。したがって、液面106のC地点で飛び散った記録液が被注入口103から出ていくことは抑制される。
【0035】
図3(B)は、図3(A)と同様に、被注入部102bの内壁104bが傾斜面を含み、傾斜面に凹部が形成されている例を示す。図3(B)では、注入部202は、被注入部102bに対して鉛直方向下方に向かって挿入される。
【0036】
被注入部102bは、内壁104bにおいて被注入口103に近い側に、注入部202と対向する第1の壁面を含む。また、被注入部102bは、内壁104bにおいて第1の壁面よりも被注入口103から遠い側に、第1の壁面よりも注入部202から離れて開口部に対向する第2の壁面(凹部の底面)を含む。被注入部102bは、外面において第2の壁面に対応する位置に凸状部を有する。
【0037】
被注入部102bは、図3(A)に示す被注入部102aと同様に、傾斜面を有することにより、記録液が飛び散って被注入口103から出ていくことを抑制する効果を奏することができる。
【0038】
内壁104bに凹部が形成されているため、記録液がA地点に衝突して被注入口側(被注入口103側)へ向かって飛び散った場合でも、被注入口103側の段差Dにより、記録液が被注入口103から出ることは抑制される。
【0039】
また、被注入部102bは、内壁104bにおいて、開口部に対向する領域よりも被注入部102bから遠い側に、開口部に対向する領域に対して、外側に突出する突出部(段差B)を含む。段差Bによって、液面106に滴下される記録液はさらに減速するため、液面106のC地点に滴下されときの記録液の飛散は抑制することができる。
【0040】
なお、図3(B)の例では、内壁104bは、液面106側の段差Bおよび被注入口103側の段差Dによって形成される凹部を有するが、液面106側または被注入口103側のいずれか一方に段差を有してもよい。
【0041】
図3(C)は、被注入部102cの内壁104cが、注入部202から吐出された記録液が衝突するA地点よりも被注入口103側に、段差Dを有する例を示す。図3(C)では、注入部202は、被注入部102cに対して鉛直方向下方に向かって挿入される。
【0042】
被注入部102cは、内壁104cにおいて被注入口103に近い側に、注入部202と対向する第1の壁面を含む。また、被注入部102bは、内壁104bにおいて第1の壁面よりも被注入口103から遠い側に、第1の壁面よりも注入部202から離れて開口部に対向する第2の壁面(A地点を含む領域)を含む。
【0043】
被注入部102cが被注入口103側に段差Dを有することで、内壁104cに衝突した記録液は、被注入口103から離れたB地点から液面106のC地点に滴下される。したがって、液面106に衝突したC地点で飛び散った記録液が被注入口103から出ていくことは抑制される。また、内壁104cのA地点に衝突した記録液が被注入口103側へ向かって飛び散っても、段差Dにより記録液が被注入口103から出ていくことは抑制される。
【0044】
図3(D)は、被注入部102dの内壁104dが、注入部202から吐出された記録液が衝突するA地点よりも被注入口103側で、段差Dおよび段差D’を有する例を示す。図3(D)では、注入部202は、被注入部102dに対して鉛直方向下方に向かって挿入される。
【0045】
段差Dおよび段差D’が設けられた内壁104dのうち、被注入口103に近い側で注入部202と対向する領域は、第1の壁面に相当する。また、内壁104dにおいて第1の壁面よりも被注入口103から遠い側に、第1の壁面よりも注入部202から離れて開口部に対向する面は、第2の壁面に相当する。
【0046】
注入部202の先端部が両側切り欠き形状である場合、段差Dおよび段差D’は、注入部202の開口の向きに合わせて形成されればよい。両側切り欠き形状の注入部202を使用することにより、記録液が吐出する開口部の面積は大きくなる。したがって、記録液の速度はより低下し、記録液の飛び散りは抑制される。
【0047】
注入部202の先端部がフック形状のように一方向に開口を有する形状である場合、注入部202は、開口の向きを段差Dまたは段差D’のいずれかに合わせて、被注入口103に挿入されればよい。注入部202の開口を段差Dまたは段差D’のいずれかに合わせることで、記録液の飛び散りは抑制される。
【0048】
図3(E)は、被注入部102eが、内壁104eにおいて注入部202の開口部に対向する領域に傾斜面を含み、注入部202が被注入部102に対し、鉛直方向に対して斜め下方に向かって挿入される例を示す。被注入部102eは、傾斜面を有することにより、図3(A)に示す被注入部102aと同様に、記録液が飛び散って被注入口103から出ていくことを抑制する効果を奏することができる。
【0049】
注入部202が鉛直方向に対して斜め下方に向かって挿入されることで、液体補充容器201は、記録液を補充する際、垂直状態にすることなく、開口部が水平方向を向かないようにして被注入口103に挿入することができる。図3(E)の例では、液体補充容器201を垂直にした状態で被注入口103に挿入する場合よりも、注入部202からの液だれは抑制される。
【0050】
図3(F)は、被注入部102fが、内壁104fにおいて注入部202の開口部に対向する領域に傾斜面を含み、内壁104fに凹部が形成されている例を示す。さらに、注入部202は、被注入部102fに対し、鉛直方向に対して斜め下方に向かって挿入される。
【0051】
凹部が形成された内壁104fにおいて、被注入口103に近い側で注入部202と対向する領域は、第1の壁面に相当する。また、内壁104dにおいて第1の壁面よりも被注入口103から遠い側に、第1の壁面よりも注入部202から離れて開口部に対向する領域は、第2の壁面に相当する。
【0052】
被注入部102fは、図3(E)と同様に、被注入部102fの内壁104fが傾斜面を含み、注入部202が被注入部102fに対し、鉛直方向に対して斜め下方に向かって挿入されるため、被注入部102eと同様の効果を奏することができる。
【0053】
さらに、被注入部102fは、被注入部102fの内壁104fが傾斜面を含み、内壁104fに凹部が形成されているため、被注入部102fは、図3(B)の被注入部102bと同様の効果を奏することができる。
【0054】
<実施形態3>
実施形態3は、実施形態2で液体貯蔵容器101の被注入部102に設けられる凹部または段差を形成する位置を限定する実施形態である。図4(A)および図4(B)は、実施形態3に係る液体貯蔵容器101に設けられる凹部または段差の位置について説明する図である。
【0055】
図3(B)および図3(F)に例示する凹部と、図2(C)および図3(D)に例示する段差とは、図4(A)に示すように液体貯蔵容器101の側面側の位置107aに形成されると、隣接する他の液体貯蔵容器101に接触する場合がある。また、液体貯蔵容器101を設置する幅が大きくなってしまう。
【0056】
実施形態3に係る液体貯蔵容器101では、被注入部102の凹部または段差は、図4(B)に示すように、他の液体貯蔵容器が配置されていない方向の位置107b(液体貯蔵容器101の天面側)または位置107c(手前側)に形成される。凹部または段差を、被注入部102の内壁104のうち他の液体貯蔵容器が配置されていない、液体貯蔵容器101の長手方向に設けることで、本体の幅からはみ出さないようにすることができる。
【0057】
なお、被注入部102の内壁104に設けられる凹部および段差で、注入部202の開口部に対向する領域は、第2の壁面に相当する。また、凹部が形成された内壁104において、開口部に対向する領域よりも被注入口103から遠い側で、開口部に対向する領域に対して、外側に突出する段差は、突出部に相当する。
【0058】
液体貯蔵容器101は、被注入部102の外面における、第2の壁面に対応する位置に凸状部を有する。液体補充システム100が液体貯蔵容器を複数備える場合、複数の液体貯蔵容器は、被注入部102が同じ向きとなるように隣接して配置される。
【0059】
図4(A)は、凸状部が、被注入部102の外面における、複数の液体貯蔵容器が隣接する方向における一方の側(位置107a)に設けられている例である。図4(B)は、凸状部が、被注入部102の外面における、隣接する他の被注入部102と対向する領域から外れた位置に設けられている例である。図4(B)のように、凸状部は、被注入部102の外面において隣接する他の被注入部102と対向する領域から外れた位置に設けることで、隣接する他の液体貯蔵容器101に接触することを回避することができる。
【0060】
<実施形態4>
実施形態4は、液体貯蔵容器101および液体補充容器201が、被注入部102を注入部202に挿入する際に、相互に位置合わせをするための被係合部および係合部を備える実施形態である。図5(A)および図5(B)は、液体貯蔵容器101と液体補充容器201との位置決めについて説明する図である。
【0061】
図5(A)は、実施形態4に係る液体補充容器201を例示する図である。液体補充容器201は、被注入部502に対する注入部202の位置が、注入部202の開口部が被注入部502の内壁に対して所定の方向に向く位置となるように、注入部202を被注入部502に対して位置決めする係合部501を備える。被注入部502の内壁に傾斜面、凹部、または段差が設けられている場合、所定の方向は、傾斜面、凹部、または段差が設けられている方向とすることができる。
【0062】
図5(B)は、実施形態4に係る液体貯蔵容器101を例示する図である。液体貯蔵容器101は、液体補充容器201の係合部501に係合可能な被係合部503を備える。被係合部503は、被注入部502に対する液体補充容器201の注入部202の位置が、注入部202の開口部が被注入部502の内壁に対して所定の方向に向く位置となるように、注入部202を被注入部502に対して位置決めをする。
【0063】
液体貯蔵容器101に記録液を補充する場合、液体貯蔵容器101の内壁104と液体補充容器201の注入部202の開口部とが対向することにより、記録液の飛散を抑制する効果が得られる。特に、実施形態2で説明したように、被注入部102の内壁104に凹部または段差が形成されている場合、注入部202は、開口が凹部または段差が形成されている向きに向けられるように挿入されることが望ましい。
【0064】
図5の例では、注入部202は、係合部501を被係合部503に合わせて、被注入部
502に挿入される。注入部202は、被注入部502の被注入口と同じ大きさである図5(A)のO-O断面の位置まで挿入される。係合部501と被係合部503とを係合させることで、液体貯蔵容器101と液体補充容器201とは、注入部202の開口部が内壁104に対向する適切な位置に向けられるように、相互に向きおよび位置を決定することができる。
【0065】
なお、液体補充容器201の係合部501と液体貯蔵容器101の被係合部503とは、お互いの向きおよび位置の少なくともいずれかを決定することができればよく、それぞれの形状は、図5に例示する形状に限られない。係合部501と、対応する被係合部503とは、複数個所に設けられてもよく、いずれの向きに設けられてもよい。
【0066】
係合部501と被係合部503とは、液体補充容器201と液体貯蔵容器101との相対位置が決定できればよく、例えば、係合部501と被係合部503との断面形状は三角形または四角形等であってもよい。
【0067】
また、液体貯蔵容器101を複数備える液体補充システム100では、被係合部503は、対応する液体補充容器201の係合部501に係合可能であって、他の液体貯蔵容器に対応する液体補充容器の係合部とは係合しない形状としてもよい。
【0068】
液体吐出装置内に搭載されている液体貯蔵容器101のうち、隣接する液体貯蔵容器101同士で、被係合部503の形状を異なる形状にすることで、液体貯蔵容器101は、種類が異なる記録液が誤って補充されることを軽減することができる。また、液体吐出装置内に搭載されている複数の液体貯蔵容器101の被係合部503の形状を、それぞれに異なる形状にすることで、液体貯蔵容器101は、種類が異なる記録液が誤って補充されることを防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
101:液体貯蔵容器、102:被注入部、104:被注入部の内壁、201:液体補充容器、202:注入部、203:保持部
図1
図2
図3
図4
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図7