(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190498
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電線端末カバー
(51)【国際特許分類】
H02G 15/04 20060101AFI20221219BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20221219BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20221219BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20221219BHJP
H01B 17/56 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02G15/04 030
H02G7/00
H02G1/02
H02G1/14
H01B17/56 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098850
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000139573
【氏名又は名称】株式会社愛洋産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸 泰至
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 靖司
【テーマコード(参考)】
5G333
5G352
5G355
5G367
5G375
【Fターム(参考)】
5G333AB25
5G333CB20
5G333DA03
5G352AC03
5G355AA03
5G355BA02
5G355BA08
5G355CA26
5G367BB04
5G375AA02
5G375BA15
5G375BB46
5G375CB05
5G375CB06
5G375CB26
5G375DA02
5G375DA03
5G375DA04
(57)【要約】
【課題】電線からの脱落を良好に抑制できる電線端末カバーを提案する。
【解決手段】電線端末カバーであって、カバー本体と、移動部と、を備える。移動部は、カバー本体の挿入穴の内部に配置される。移動部は、挿入穴の開口部から電線が挿入されると、電線に押し込まれることによって、開口部から挿入穴の奥に向かって移動する。移動部の備える押圧部は、移動部の挿入穴の奥に向かう移動に伴って、電線の側面に向かって移動し、電線を押圧する。移動部が係止位置まで移動したときに、移動部が挿入穴から抜けることが抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末をカバーする電線端末カバーであって、
挿入穴を有するカバー本体と、
前記挿入穴の内部に配置される移動部であって、前記挿入穴の開口部から前記電線が挿入されると、該電線に押し込まれることによって、前記開口部から前記挿入穴の奥に向かって移動する移動部と、を備え、
前記移動部は、前記挿入穴の奥に向かう移動に伴って、前記電線の側面に向かって移動し、前記電線を押圧するように構成された少なくとも1つの押圧部を備え、
前記移動部が前記挿入穴の所定の係止位置まで移動したときに、前記カバー本体が備える第1係止部と、前記移動部が備える第2係止部と、が係止することで前記移動部が前記挿入穴から抜けることを抑制するように構成されている、電線端末カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の電線端末カバーであって、
前記少なくとも1つの押圧部は、少なくとも2つの押圧部を含み、
前記少なくとも2つの押圧部は、前記移動部の前記挿入穴の奥に向かう移動に伴って前記電線を挟み込むように移動する、電線端末カバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電線端末カバーであって、
前記少なくとも1つの押圧部は、第1部分及び第2部分を含み、
前記移動部が前記挿入穴の所定の位置まで挿入されたときに、前記第1部分は、前記第2部分と比較して、前記挿入穴に挿入される前記電線の中心となる軸線に近い位置まで移動する、電線端末カバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電線端末カバーであって、
前記押圧部は、前記挿入穴の奥から前記開口部の側を向く面であって、前記電線が前記挿入穴に挿入されたときに、前記電線と当接し前記電線から前記挿入穴の奥に向かう荷重を受ける当接面を有する、電線端末カバー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電線端末カバーであって、
前記押圧部は、前記電線に向かって突出する突起を有している、電線端末カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電線端末カバーであって、
前記係止位置よりも前記挿入穴の前記開口部の側の位置である副係止位置に前記移動部が位置するときに、前記カバー本体が備える第1副係止部と、前記移動部が備える第2副係止部と、が係止することで前記移動部が前記挿入穴から抜けることを抑制するように構成されている、電線端末カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電線の末端に装着される電線端末カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧絶縁電線の端末は、電気的絶縁性を確保するために電線端末カバーで覆って保護される。このような技術の一つとして、例えば特許文献1には、開口部から嵌挿することで取り付けることができる電線端末カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線端末カバーは、短絡、地絡による漏電、感電などを防止するためのものである。そのため、嵌挿された電線が電線末端カバーに対して確実に固定されることが強く望まれる。
本開示の目的は、電線からの脱落を良好に抑制できる電線端末カバーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、電線の端末をカバーする電線端末カバーであって、カバー本体と、移動部と、を備える。カバー本体は、挿入穴を有する。移動部は、挿入穴の内部に配置される。移動部は、挿入穴の開口部から電線が挿入されると、電線に押し込まれることによって、開口部から挿入穴の奥に向かって移動する。また移動部は、少なくとも1つの押圧部を備える。少なくとも1つの押圧部は、移動部の挿入穴の奥に向かう移動に伴って、電線の側面に向かって移動し、電線を押圧するように構成されている。移動部が挿入穴の所定の係止位置まで移動したときに、カバー本体が備える第1係止部と、移動部が備える第2係止部と、が係止することで、移動部が挿入穴から抜けることを抑制するように構成されている。
【0006】
このような構成であれば、挿入穴の開口部に電線を挿入して移動部を挿入穴の奥に押し込むと、押圧部が電線の側面を押圧する。その結果、例えば押圧部と電線の間の摩擦力や、押圧部の電線への食い込みなどが生じ、電線が押圧部に対して固定される。移動部は、電線に押されて所定の係止位置まで移動すると、第1係止部と第2係止部とが係止して挿入穴からの脱落が抑制される。そのため、電線が押圧部に対して固定された状態が維持されることとなり、電線端末カバーの電線からの脱落を良好に抑制できる。
【0007】
上述した電線端末カバーにおいて、少なくとも1つの押圧部は、少なくとも2つの押圧部を含んでもよい。少なくとも2つの押圧部は、移動部の挿入穴の奥に向かう移動に伴って電線を挟み込むように移動してもよい。このような構成であれば、少なくとも2つの押圧部によって電線を挟み込んで固定することができる。
【0008】
上述した電線端末カバーにおいて、少なくとも1つの押圧部は、第1部分及び第2部分を含んでもよい。移動部が挿入穴の所定の位置まで挿入されたときに、第1部分は、第2部分と比較して、挿入穴に挿入される電線の中心となる軸線に近い位置まで移動してもよい。
【0009】
このような構成において、第1部分と第2部分とは、異なる直径の電線を押圧して固定することができる。第1部分では相対的に細い径の電線を固定することができ、第2部分では相対気に太い径の電線を固定することができる。よって、上記の電線端末カバーは、異なる径の電線の端末に適切に取り付けることができる。
【0010】
上述した電線端末カバーにおいて、押圧部は、挿入穴の奥から開口部の側を向く面であって、電線が挿入穴に挿入されたときに、電線と当接し電線から挿入穴の奥に向かう荷重を受ける当接面を有してもよい。このような構成であれば、当接面において電線からの荷重を適切に受けることができ、移動部の挿入穴の奥への移動をスムーズに行うことができる。
【0011】
上述した電線端末カバーにおいて、押圧部は、電線に向かって突出する突起を有していてもよい。このような構成であれば、突起が電線の側面に食い込むことにより電線をより強固に押圧部に対して固定することができ、電線端末カバーの電線からの脱落をより良好に抑制できる。
【0012】
上述した電線端末カバーにおいて、上述した係止位置よりも挿入穴の開口部の側の位置である副係止位置に移動部が位置するときに、カバー本体が備える第1副係止部と、移動部が備える第2副係止部と、が係止することで移動部が挿入穴から抜けることを抑制するように構成されていてもよい。
【0013】
このような構成であれば、移動部が副係止位置にあるときは、移動部が係止位置にあるときよりも移動部の位置が開口部側である。そのため、移動部が副係止位置にあるときは、押圧部が電線の側面に向かう移動量が小さく、その結果、電線が挿入しやすくなっている。上記の構成では、第1副係止部と第2副係止部とが係止することで、電線が挿入しやすい状態を維持することができるため、電線端末カバーを電線へ取り付ける作業を簡便なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の副係止状態の電線端末カバーを示す斜視図である。
【
図5】
図5A-5Cは電線端末カバーの断面図であって、
図5Aは移動部が部分的にカバー本体内部に配置された状態を示す図であり、
図5Bは副係止状態を示す図であり、
図5Cは係止状態を示す図である。
【
図6】実施形態の係止状態の電線端末カバーを示す斜視図である。
【
図7】
図7A-7Cは、副係止状態において、異なる径の電線が挿入された電線端末カバーの断面図である。
【
図8】
図8A-8Cは、係止状態において、異なる径の電線が挿入された電線端末カバーの断面図である。
【
図10】電線端末カバーの変形例を示す斜視図である。
【
図11】電線端末カバーの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.実施形態]
[1-1.電線端末カバーの構成]
図1に、本実施形態の電線端末カバー1を示す。電線端末カバー1は、電線3の端末に装着されて電線3の端末をカバーし、電線3の端末からの漏電を抑制する。電線端末カバー1は、例えば合成樹脂などの絶縁性材料によって形成されている。ここでいう電線3とは、絶縁体で被覆された電線であって、電柱に掛けて用いられる高圧絶縁電線を含む。電線端末カバー1は、カバー本体10と、移動部20と、を有する。
【0016】
図2A-2D及び
図3にカバー本体10を示す。カバー本体10は外形が略円錐形状であり、その高さ方向に延びる挿入穴11を有する。挿入穴11は、
図2C,2D及び
図3に示されるように、カバー本体10を貫通する貫通孔である。円錐の底にあたる部分の開口部12aは円錐の先端にあたる部分の先端開口12bよりも広い。以下の説明では、開口部12aの形成された側を下側、先端開口12bが形成された側を上側とし、上下の方向を用いて説明をする。また上下と直交する方向を、前後、左右とする。これらの方向は、説明の便宜上用いるにすぎず、電線端末カバー1の使用態様などを制限するものではない。
【0017】
挿入穴11は、主に電線が挿入される空間である挿入空間11aと、主に移動部20が配置される溝である左右一対の挿入溝11bと、を含む。挿入空間11aは、略円柱形の空間であり、
図3に示されるように、上下方向の中央部において上側ほど狭くなる部分を有する。一対の挿入溝11bは、挿入穴11の内壁面において外方向に向かって窪んだ部分であり、上下に延びる。また一対の挿入溝11bは挿入空間11aを中心として互いに向かい合うように反対側に位置している。一対の挿入溝11b同士の間隔は、上に向かうほど狭くなる。
【0018】
カバー本体10の下方の端部近傍には、貫通孔である係止穴13が形成されている。係止穴13は、一対の挿入溝11bが形成される位置に形成されている。係止穴13が、第1係止部、及び、第1副係止部に相当する。
【0019】
カバー本体10の下端には、周囲よりも外周側に広がる第1フランジ部14が形成されている。またカバー本体10の上下方向の略中央には、周囲よりも外周側に広がる第2フランジ部15が形成されている。第1フランジ部14及び第2フランジ部15は、手又は工具を用いてカバー本体10を掴むときに、滑り止めとして機能する。またカバー本体10の下端から上部にわたって、上下に延びる一対の突条16が形成されている。この突条16は、挿入溝11bに合わせて突出する部分であって、左右に一つずつ形成されている。
【0020】
図4A-4Cに、移動部20を示す。また
図5A-5Cに、カバー本体10に移動部20が挿入された状態を示す。移動部20は挿入穴11の内部に配置される。移動部20は、2つの押圧部21と、2つの押圧部21を連結する連結部22と、を有する。押圧部21は、上下に長さを有する棒状の部材である。連結部22は2つの押圧部21の上端部同士を接続している。連結部22は押圧部21よりも薄く形成されており、連結部22が弾性変形することで、2つの押圧部21が接近・離脱することができる。
【0021】
2つの押圧部21は、
図5Aに示されるように、一対の挿入溝11bそれぞれに配置される。言い換えると、2つの押圧部21は、挿入穴11に挿入された電線3を中心として互いに反対側となる位置に配置される。
【0022】
説明を
図4A-4Cに戻る。押圧部21は、それぞれ、第2係止部23、第2副係止部24a及び第2副係止部24b、第1当接面25、第2当接面26、第3当接面27、並びに複数の突起28を有する。以下の説明において、第2副係止部24a及び第2副係止部24bを区別しないときは、単に第2副係止部24と記載する。
【0023】
第2係止部23は、押圧部21の下端に設けられ、左右方向外側に突出する突起である。
図5C及び
図6に示されるように、移動部20が係止位置まで移動したときに、第2係止部23が係止穴13に入り込む。これにより、移動部20が挿入穴11から抜けることが抑制される。本実施形態における係止位置は、移動部20が挿入穴11の最も深くまで挿入されたときの位置である。以下の説明において、移動部20が係止位置にある状態を係止状態とも記載する。
【0024】
説明を
図4A-4Cに戻る。第2副係止部24は、押圧部21における第2係止部23よりも上側の位置に形成される。第2副係止部24aは相対的に上側かつ前側に配置され、第2副係止部24bは相対的に下側かつ後側に配置される。
図1及び
図5Bに示されるように、移動部20が副係止位置まで挿入されたときに、第2副係止部24と係止穴13とが係合し、移動部20が挿入穴11から抜けることを抑制する。副係止位置は、係止位置よりも挿入穴11の開口部12aの側の位置である。なお、第2副係止部24a及び第2副係止部24bは前後に小さく突出した突起である。そのため、第2係止部23が大きく係止穴13に入り込んで係合する場合と比較して、第2副係止部24a及び第2副係止部24bと係止穴13との係合は解除されやすい。以下の説明において、移動部20が副係止位置にある状態を副係止状態とも記載する。
【0025】
2つの押圧部21の互いに向かい合う面には、第1当接面25、第2当接面26、及び第3当接面27が形成される。これらの当接面は、挿入穴11の奥から開口部12aの側を向く面であって、言い換えると下方を向く面である。ここでいう下方とは、斜め下方向も含む。第1当接面25は押圧部21の上端近傍の位置に設けられ、水平方向に広がる。第2当接面26は、第1当接面25よりも下方に設けられる面であり、上側ほど内側に向かう傾斜面である。第3当接面27は、第2当接面26よりも下方に設けられる面であり、上側ほど内側に向かう傾斜面である。これらの当接面は、電線3が挿入穴11に挿入されたときに、電線3と当接し電線3から挿入穴11の奥に向かう荷重を受ける。
【0026】
押圧部21における第1当接面25が形成される高さから第2当接面26が形成される高さまでを第1部分21aとする。また、第2当接面26が形成される高さから第3当接面27が形成される高さまでを第2部分21bとする。また、移動部20の下端から第3当接面27が形成される高さまでを第3部分21cとする。
【0027】
図5Cに示されるように、移動部20が係止位置まで挿入されたときに、第1部分21aは、第2部分21bと比較して、挿入穴11に挿入される電線の中心となる軸線Aに近い位置まで移動する。また第2部分21bは、第3部分21cと比較して、軸線Aに近い位置まで移動する。このように、係止状態のとき、2つの押圧部21の有するそれぞれの第1部分21a同士の間隔をL1、第2部分21b同士の間隔をL2、第3部分21c同士の間隔をL3とすると、L1<L2<L3となる。
【0028】
荷重を加えられないときの移動部20の下端部分の左右幅(
図5AにおけるL4)は、挿入溝11bを含めた挿入穴11の下端の左右の幅(
図5CにおけるL5)よりも大きい。そのため、移動部20が挿入穴11の奥に移動するにつれて、押圧部21は軸線A側に接近する。
【0029】
突起28は、電線に向かって突出している。
図4A、4Bに示されるように、突起28は、第1部分21aについては、左右の押圧部21の両方で3箇所設けられている。一方、第2部分21b及び第3部分21cについては、突起28は左の押圧部21では2箇所に設けられているが、右の押圧部21では電線端末カバー1箇所のみに設けられている。また突起28は、左右の押圧部21にて向かい合う位置にならないように、位置をずらして配置されている。
【0030】
[1-2.電線端末カバーの動作]
電線端末カバー1に電線3を挿入する前に、カバー本体10及び移動部20を組み付ける。
図5Aに示されるように、移動部20の上端(つまり連結部22側)から開口部12aを通して挿入穴11に挿入する。このとき、一対の押圧部21が一対の挿入溝11bにそれぞれ収まるように挿入する。
図5Bに示すように、移動部20が副係止位置まで挿入されると、第2副係止部24が係止穴13に係止する。これにより、カバー本体10に対する移動部20の位置が緩めに固定される。副係止位置にある移動部20は、力を加えることで比較的容易に係止状態を解除して移動させることができる。また、副係止位置にある移動部20の備える一対の押圧部21同士は、外部荷重を受けない自然状態よりも若干接近した状態となる。
【0031】
電線端末カバー1は、副係止状態のときに、電線3を挿入して取り付ける作業を行うことができる。上述したように、副係止状態のとき(
図5Bのとき)は、係止状態のとき(
図5Cのとき)よりも、押圧部21の電線3の側面に向かう移動量、言い換えると軸線Aに向かう移動量が小さい。係止状態のときは押圧部21同士の間隔が狭く電線3が挿入できないので、副係止状態のときに電線3を挿入する。
【0032】
副係止状態のときは、係止状態のときと同様に、第1部分21a同士、第2部分21b同士、第3部分21c同士の間隔がそれぞれ異なる。すなわち、挿入可能な電線の径が異なる。
【0033】
図7A-7Cに示される電線3a-3cは、径の異なる電線であり、電線3aが最も細く、電線3cが最も太い。移動部20が副係止位置にあるときに、電線3aを開口部12aから上に向かって挿入すると、電線3aは第1当接面25に当接するまで挿入される(
図7A)。また電線3bの場合は、第2当接面26に当接するまで挿入される(
図7B)。また電線3cの場合は、第3当接面27に当接するまで挿入される(
図7C)。電線3bはその太さによって第2当接面26よりも奥に挿入することができず、また、電線3cはその太さにより第3当接面27よりも奥に挿入することができない。以下の説明において、電線3a-3cを特に区別しない場合は、電線3と記載する。
【0034】
電線3がいずれかの当接面に当接した状態で、さらに電線3を上に押し込むと、いずれかの当接面が電線3から挿入穴11の奥に向かう荷重を受ける。それによって、移動部20は電線3に押し込まれ、開口部12aから挿入穴11の奥に向かって移動する。2つの押圧部21は挿入溝11bに沿って奥に移動するが、2つの挿入溝11bは奥ほど接近するように形成されているため、奥に移動するにつれて2つの押圧部21同士も接近する。その結果、押圧部21は電線3の側面に向かって移動し、電線3を押圧する。言い換えると、2つの押圧部21は、移動部20の挿入穴11の奥に向かう移動に伴って電線3を挟み込む。電線3は、
図8A-8Cに示されるように、その太さに応じた間隔の部分に収まり、一対の押圧部21に挟み込まれて、突起28によって強固に固定される。
【0035】
そして、上述したように、係止位置まで移動部20を挿入すると、係止穴13と第2係止部23とが係止し、移動部20の脱落が良好に抑制される。言い換えると、係止穴13と第2係止部23とによって、移動部20が挿入穴11から抜けることを抑制する脱落抑制部30が構成される。
【0036】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態の電線端末カバー1は、挿入穴11の開口部12aに電線3を挿入して移動部20を所定の係止位置まで移動させると、電線3が押圧部21により固定されるとともに、移動部20(すなわち押圧部21)の挿入穴11から脱落が抑制される。そのため、電線端末カバー1の電線3からの脱落を良好に抑制できる。
【0037】
(1b)電線端末カバー1における2つの押圧部21は、挿入穴11に挿入された電線3を中心として互いに反対側となる位置に配置されており、移動部20の挿入穴11の奥に向かう移動に伴って電線3を挟み込むように移動する。したがって、これら2つの押圧部21によって電線3を挟み込んで固定することができる。
【0038】
(1c)押圧部21は、それぞれ、第1部分21a、第2部分21b、及び第3部分21cを有する。そして、各部分はそれぞれ、移動部20が係止位置まで挿入されたときの軸線Aまでの距離が相違する。そのため、第1部分21a、第2部分21b、第3部分21cは、それぞれ、
図8A-8Cに示されるように、電線3a、電線3b、電線3cを挟み込むことに適している。よって、電線端末カバー1は、異なる径の電線3a-3cの端末に適切に取り付けることができる。
【0039】
(1d)押圧部21は、挿入穴11の奥から開口部12aの側を向く面であって、電線3が挿入穴11に挿入されたときに、電線3と当接し電線3から挿入穴11の奥に向かう荷重を受ける第1当接面25、第2当接面26、及び第3当接面27を有している。そのため、各当接面において電線3からの荷重を適切に受けることができ、移動部20の挿入穴11の奥への移動をスムーズに行うことができる。
【0040】
また、移動部20が副係止位置にあるとき、2つの押圧部21の有する第1当接面25同士の間隔、第2当接面26同士の間隔、第3当接面27同士の間隔はそれぞれ異なっている。そのため、電線3a-3cの端末を開口部12aから挿入すると、その径に応じた当接面に当接し、そこから移動部20を奥へ押すこととなる。すなわち、径が異なる電線3を挿入しても、移動部20の移動を実現できる。
【0041】
(1e)押圧部21は、電線3に向かって突出する複数の突起28を有している。そのため、突起28が電線3の側面に食い込むことで電線3をより強固に押圧部21に対して固定することができ、電線端末カバー1の電線3からの脱落をより良好に抑制できる。
【0042】
(1f)電線端末カバー1は、副係止状態のときは、係止状態のときよりも押圧部21同士が間隔を有していて電線3が挿入しやすい状態を維持することができる。そのため、電線3へ取り付ける作業を簡便なものとすることができる。
【0043】
[2.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0044】
(2a)上記実施形態では、移動部20が2つの押圧部21を備える構成を例示した。しかしながら移動部の備える押圧部の数は2つに限定されない。例えば移動部が備える押圧部は1つのみであって、電線3を押圧部と挿入穴の内壁とで挟み込むように構成されていてもよい。また例えば移動部は3つ以上の押圧部を備えていてもよい。
【0045】
(2b)上記実施形態では、移動部20をカバー本体10の挿入穴11に対して深く挿入した際に移動部20がカバー本体10に係止される構成を例示した。具体的には、移動部20が係止位置及び副係止位置のいずれかに位置する場合に係止する構成を例示した。しかしながら、副係止位置での係止はなされない、すなわち副係止位置が存在しない構成であってもよい。
【0046】
また、係止位置では係止穴13と第2係止部23とが係止し、副係止位置では係止穴13と第2副係止部24とが係止する構成を例示した。つまり、係止穴13は、第2係止部23と係止する第1係止部と、第2副係止部24と係止する第1副係止部と、の両方の機能を有する構成を例示した。しかしながら、第2副係止部24が係止する第1副係止部は、係止穴13とは別の部分であってもよい。
【0047】
(2c)上記実施形態では、押圧部21は、第1部分21a、第2部分21b、及び第3部分21cの3つの部分により、それぞれ異なる径の電線3を挟み込んで固定することができる構成を例示した。しかしながら、3つの部分のうちのいずれか1つの部分、又は2つの部分のみを有していてもよい。また、4つ以上の部分、すなわち径の異なる4種類以上の電線を適切に固定可能に構成されていてもよい。なお、押圧部における電線側を向く面の形状は、電線を押さえ込むことができる限りにおいて、特に限定されない。
【0048】
(2d)上記実施形態では、押圧部21に設けられる当接面として、下方側を向く面である第1当接面25と、下方を向きつつ、上側ほど内側に向かう傾斜面である第2当接面26及び第3当接面27と、を有する構成を例示した。しかしながら当接面の形状はこれらに限定されない。例えば、当接面として、挿入穴11の内壁面から内側方向に突出する壁部分が設けられていてもよい。
【0049】
(2e)上記実施形態では、押圧部21に複数の突起28が形成される構成を例示した。突起28の数、配置、形状は、実施形態で開示した構成に限定されない。また、突起28は設けられていなくてもよい。
【0050】
(2f)上記実施形態にて開示した電線端末カバー1は、様々な形状に変形しうる。例えば、カバー本体10の外観形状、挿入穴11を構成する内壁面の形状、移動部20の形状は、目的とする機能を実現できる範囲で様々な形状に変形しうる。また例えば、カバー本体10において、挿入穴11は貫通孔でなくてもよい。また、移動部20が複数の押圧部21を有する場合において、連結部22を有しておらず、別個に挿入穴11内で移動するように構成されていてもよい。
【0051】
また例えば、
図9A-9Cに示される電線端末カバー101のように、カバー本体110は、移動部20の押圧部21を覆うガード111を備えていてもよい。ガード111は、副係止状態にある移動部20のうち第1フランジ部14より下方に飛び出した部分における、内側面以外の三面を覆う。ここでいう内側面とは、2つの移動部20が向かい合う面である。またガード111は、副係止状態において、移動部20の下端よりも下側まで延びている。このような構成であるから、副係止状態にある移動部20に電線3以外のもの(例えば手や工具)で接触してしまうことが抑制され、その結果、誤って移動部20をカバー本体110に押し込んでしまうことを抑制できる。なお、ガード111の形状は特に限定されない。例えば、移動部20の内側面も覆う形状であってもよいし、内側面以外の三面のうち、いずれか1つ以上の面を覆っていなくてもよい。また、移動部20の下端よりも下側まで延びていなくてもよい。つまり、ガード111は手などで誤って移動部20を押し込んでしまうことを抑制する形状であればよい。
【0052】
また、
図10に示される電線端末カバー201のように、カバー本体210は、ガード211と、2つのガード211をつなぐ筒状の連結板212とを備えていてもよい。ガード211は、
図9A-9Cのガード111と同様の形状である。このような構成であれば、誤って移動部20を押し込んでしまうことをより良好に抑制できる。また、ガード211と連結板212とが繋がることでガード211の強度が上がるため、ガード211の破損を抑制できる。
【0053】
また例えば、
図11に示される電線端末カバー301のように、カバー本体310は、先端開口12bの側の端部に、外側に広がって延びる大径部311が形成されていてもよい。大径部311は、上側面が平面であってもよいが、平面でなくてもよい。このような構成であれば、電線3を挿入する際に大径部311に力を加えて押し込むことができ、先端が細い場合と比較して安定した操作を行うことができる。
【0054】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,101,201,301…電線端末カバー、3,3a,3b,3c…電線、10,110,210,310…カバー本体、11…挿入穴、11a…挿入空間、11b…挿入溝、12a…開口部、12b…先端開口、13…係止穴、14…第1フランジ部、15…第2フランジ部、16…突条、20…移動部、21…押圧部、22…連結部、23…第2係止部、24,24a,24b…第2副係止部、25…第1当接面、26…第2当接面、27…第3当接面、28…突起、30…脱落抑制部、111,211…ガード、212…連結板、311…大径部、A…軸線。