(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190503
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ドア制御装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/622 20150101AFI20221219BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E05F15/622
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098860
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桑原 武士
(72)【発明者】
【氏名】浅野 良
(72)【発明者】
【氏名】宮代 龍
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA04
2E052CA06
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052GB12
2E052GD07
(57)【要約】
【課題】ユーザがドアを開操作するときの操作性を向上できるドア制御装置を提供する。
【解決手段】ドア制御装置100は、フロントドアの自重に起因してフロントドアの開閉方向に作用する力を自重開閉力としたとき、自重開閉力を打ち消すような大きさに設定されるアシスト力をフロントドアの開度に応じて記憶する記憶部101と、フロントドアが開操作される状況下において、記憶部101に記憶されるアシスト力に基づいて、フロントドアに付与するアシスト力をフロントドアの開度に応じて調整するアシスト処理を実施するドア制御部102と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部を有する車体と、前記ドア開口部を開閉するドアと、前記ドアに対し前記ドアの開閉方向にアシスト力を付与するドア駆動部と、を備える車両に適用されるドア制御装置であって、
前記ドアの自重に起因して前記ドアの開閉方向に作用する力を自重開閉力としたとき、
前記自重開閉力を打ち消すような大きさに設定される前記アシスト力を前記ドアの開度に応じて記憶する記憶部と、
前記ドアが開操作される状況下において、前記記憶部に記憶される前記アシスト力に基づいて、前記ドアに付与する前記アシスト力を調整するアシスト処理を実施するドア制御部と、を備える
ドア制御装置。
【請求項2】
前記ドアは、ドアハンドルと、前記ドアハンドルに対する操作を検出するハンドルスイッチと、を有し、
前記ドア制御部は、前記ドアハンドルに対する操作が検出されたとき、前記アシスト処理を開始する
請求項1に記載のドア制御装置。
【請求項3】
前記ドアは、前記自重開閉力が閉方向に作用するように前記車体に支持されるものであり、
前記ドアハンドルは、車内から操作されるインサイドドアハンドルと、車外から操作されるアウトサイドドアハンドルと、を有し、
前記ドア制御部は、前記インサイドドアハンドルに対する操作が検出される場合には、前記アウトサイドドアハンドルに対する操作が検出される場合よりも、前記アシスト処理において、前記ドアに付与する前記アシスト力を弱くする
請求項2に記載のドア制御装置。
【請求項4】
前記ドア駆動部は、前記ドアに制動力を付与できるように構成され、
前記ドア制御部は、前記アシスト処理の実施中に前記ドアが停止する場合には、前記アシスト処理を終了し、前記ドアに前記制動力を付与する制動処理を開始する
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のドア制御装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶される前記アシスト力は、前記ドアの開度に関わらず、前記自重開閉力との合力を「0」とする大きさに設定される
請求項1~請求項4の何れか一項に記載のドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザのドアの開閉操作をアシストするドア開閉アシスト装置が記載されている。ドア開閉アシスト装置は、ドアにアシスト力を付与するアクチュエータと、アクチュエータを制御するコントローラと、を備える。コントローラは、ユーザのドアに対する操作力に応じたアシスト力をアクチュエータに出力させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなドア開閉アシスト装置において、アシスト力は、ユーザのドアに対する操作力が検出された後に決定される。このため、ユーザがドアを開操作し始めてから、ドアにアシスト力が付与されるまでに時間が掛かるおそれがある。言い換えれば、ユーザがドアを開操作する初期段階において、ユーザがドアを大きな力で開操作する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するドア制御装置は、ドア開口部を有する車体と、前記ドア開口部を開閉するドアと、前記ドアに対し前記ドアの開閉方向にアシスト力を付与するドア駆動部と、を備える車両に適用されるドア制御装置であって、前記ドアの自重に起因して前記ドアの開閉方向に作用する力を自重開閉力としたとき、前記自重開閉力を打ち消すような大きさに設定される前記アシスト力を前記ドアの開度に応じて記憶する記憶部と、前記ドアが開操作される状況下において、前記記憶部に記憶される前記アシスト力に基づいて、前記ドアに付与する前記アシスト力を調整するアシスト処理を実施するドア制御部と、を備える。
【0006】
上記構成のドア制御装置は、ユーザがドアを開操作するとき、ドアの自重開閉力を打ち消すようなアシスト力であってドア開度に応じたアシスト力をドア駆動部に出力させる。このため、ユーザは、ドアの開操作の初期段階から、自重開閉力の影響を受けにくくなる。したがって、ドア制御装置は、ユーザのドアに対する操作性を高めることができる。
【0007】
前記ドアは、ドアハンドルと、前記ドアハンドルに対する操作を検出するハンドルスイッチと、を有し、前記ドア制御部は、前記ドアハンドルに対する操作が検出されたとき、前記アシスト処理を開始することが好ましい。
【0008】
上記構成のドア制御装置は、ユーザがドアハンドルを操作し始めたタイミングで、アシスト処理を速やかに開始できる。つまり、ドア制御装置は、ドアが全閉位置から動き出す前にアシスト処理を開始できる。
【0009】
前記ドアは、前記自重開閉力が閉方向に作用するように前記車体に支持されるものであり、前記ドアハンドルは、車内から操作されるインサイドドアハンドルと、車外から操作されるアウトサイドドアハンドルと、を有し、前記ドア制御部は、前記インサイドドアハンドルに対する操作が検出される場合には、前記アウトサイドドアハンドルに対する操作が検出される場合よりも、前記アシスト処理において、前記ドアに付与する前記アシスト力を弱くすることが好ましい。
【0010】
ユーザが車内からドアを開操作する場合には、ユーザが車外からドアを開操作する場合よりも、ドアが車外に存在する障害物に接触する可能性が高い。この点、ドア制御装置は、インサイドドアハンドルが操作される場合には、アウトサイドドアハンドルが操作される場合よりも、アシスト処理においてドアに付与するアシスト力を弱くする。このため、ユーザは、車内からドアを開操作する場合には、車外からドアを開操作する場合よりも、ドアを開けにくくなる。したがって、ドア制御装置は、ユーザが車内からドアを開操作する際に、ドアが障害物に接触するおそれを低減できる。
【0011】
前記ドア駆動部は、前記ドアに制動力を付与できるように構成され、前記ドア制御部は、前記アシスト処理の実施中に前記ドアが停止する場合には、前記アシスト処理を終了し、前記ドアに前記制動力を付与する制動処理を開始することが好ましい。
【0012】
上記構成のドア制御装置は、ユーザがドアの開操作を止めた後に、ドアに制動力を付与できる。このため、ドア制御装置は、ユーザがドアの開操作を止めた後に、風などの外乱が作用することに起因して、ドアが動くことを抑制できる。
【0013】
前記記憶部に記憶される前記アシスト力は、前記ドアの開度に関わらず、前記自重開閉力との合力を「0」とする大きさに設定されることが好ましい。
上記構成のドア制御装置によれば、ユーザは、自重開閉力を感じることなく、自らの思い通りにドアを開操作できる。したがって、ドア制御装置は、ユーザのドアに対する操作性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
ドア制御装置は、ユーザがドアを開操作するときの操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るドア制御装置を備える車両の模式図。
【
図3】フロントドアの駆動に関わる構成要素の模式図。
【
図4】フロントドアに作用する力とドア開度との関係を示すグラフ。
【
図5】ドア開度に応じてドア駆動部のモータに流れる電流値を示すマップ。
【
図6】フロントドアが操作されるときに、ドア制御装置が実施する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ドア制御装置を備える車両の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示すように、車両10は、車体20と、フロントドア30と、ドアロック装置40と、ドア駆動部50と、を備える。
図3に示すように、車両10は、傾斜センサ60と、ドア制御装置100と、を備える。
【0017】
図2に示すように、車体20は、フロントドア30に開閉されるドア開口部21を有する。車体20は、フロントドア30の前端部を揺動可能に支持するドアヒンジ22を有する。ドアヒンジ22の揺動軸線は上下方向に延びている。
【0018】
図1及び
図2に示すように、フロントドア30は、ドア開口部21を全閉する全閉位置とドア開口部21を全開する全開位置との間で揺動するスイングドアである。
図1~
図3に示すように、フロントドア30は、ドア本体31と、ユーザに操作されるドアハンドル32と、ドアハンドル32に対するユーザの操作を検出するハンドルスイッチ33と、を有する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ドアハンドル32は、車内のユーザに操作されるインサイドドアハンドル321と、車外のユーザに操作されるアウトサイドドアハンドル322と、を含む。インサイドドアハンドル321は、ドア本体31の車内を向く面に設置され、アウトサイドドアハンドル322は、ドア本体31の車外を向く面に設置されている。
【0020】
図3に示すように、ハンドルスイッチ33は、インサイドドアハンドル321に対する操作を検出するインサイドハンドルスイッチ331と、アウトサイドドアハンドル322に対する操作を検出するアウトサイドハンドルスイッチ332と、を含む。インサイドハンドルスイッチ331は、インサイドドアハンドル321が操作されていない場合にオフとなり、インサイドドアハンドル321が操作されている場合にオンとなる出力信号をドア制御装置100に出力する。同様に、アウトサイドハンドルスイッチ332は、アウトサイドドアハンドル322が操作されていない場合にオフとなり、アウトサイドドアハンドル322が操作されている場合にオンとなる出力信号をドア制御装置100に出力する。
【0021】
図2に示すように、ドアロック装置40は、フロントドア30の車体20に対する拘束状態を切り替えるラッチ機構41を有する。ラッチ機構41は、全閉位置に位置するフロントドア30を車体20に拘束するフルラッチ状態と、フロントドア30を車体20に拘束しないアンラッチ状態と、に切り替わる。ラッチ機構41は、フロントドア30が全閉位置に向けて閉操作されるときに、アンラッチ状態からフルラッチ状態に切り替わる。一方、ラッチ機構41は、ユーザがドアハンドル32を操作するときに、フルラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0022】
図3に示すように、ドア駆動部50は、インナーチューブ51と、アウターチューブ52と、スピンドルスクリュ53と、軸受54と、モータ55と、減速機56と、ハウジング57と、を有する。
【0023】
インナーチューブ51は、筒状をなしている。インナーチューブ51は、スピンドルスクリュ53と螺合するスピンドルナット511を有する。スピンドルナット511は、インナーチューブ51の内部であってインナーチューブ51の基端寄りに固定されている。インナーチューブ51の先端部は、車体20に揺動可能に連結されている。インナーチューブ51の車体20に対する揺動軸線は、フロントドア30の揺動軸線と同方向に延びている。アウターチューブ52は、インナーチューブ51よりも径が大きな筒状をなしている。アウターチューブ52は、軸方向に移動可能にインナーチューブ51を収容している。アウターチューブ52は、基端部に軸受54を保持している。
【0024】
スピンドルスクリュ53は、棒状をなしている。スピンドルスクリュ53は、アウターチューブ52に収容された状態で、軸受54に支持されている。スピンドルスクリュ53は、スピンドルナット511とともにいわゆる送りねじ機構を構成する。スピンドルスクリュ53が回転する場合、スピンドルナット511がスピンドルスクリュ53に対して軸方向に移動する。つまり、スピンドルスクリュ53が回転する場合、スピンドルスクリュ53の回転方向に応じて、インナーチューブ51がアウターチューブ52に対して進退する。一方、インナーチューブ51がアウターチューブ52に対して進退する場合、スピンドルナット511に対してスピンドルスクリュ53が回転する。こうして、上記送りねじ機構は、スピンドルスクリュ53の回転運動をインナーチューブ51及びアウターチューブ52の伸縮運動に変換したり、インナーチューブ51及びアウターチューブ52の伸縮運動をスピンドルスクリュ53の回転運動に変換したりする。
【0025】
モータ55は、例えば、ブラシレスモータである。モータ55は、ロータの位置を検出するホール素子などの回転角センサ551を有する。モータ55の回転軸は、減速機56に連結される。減速機56は、モータ55の回転軸から伝達されるトルクを増大させつつ、スピンドルスクリュ53に伝達する。なお、上記送りねじ機構の効率及び減速機56の減速比は、インナーチューブ51及びアウターチューブ52が伸縮するときに、モータ55の回転軸が回転できる程度であることが好ましい。ハウジング57は、箱状をなしている。ハウジング57は、モータ55と減速機56とを収容している。ハウジング57は、フロントドア30に固定されている。
【0026】
以上説明したように、ドア駆動部50は、モータ55の駆動により、スピンドルスクリュ53を回転させることにより、インナーチューブ51及びアウターチューブ52を伸縮させる。インナーチューブ51及びアウターチューブ52が伸長する場合、フロントドア30に開方向の力が作用する。一方、インナーチューブ51及びアウターチューブ52が収縮する場合、フロントドア30に閉方向の力が作用する。本実施形態において、ドア駆動部50は、ユーザが小さな力でフロントドア30を開閉操作することができるように、ユーザの開閉操作をアシストするものである。以降の説明では、ドア駆動部50がドアの開閉方向に作用する力を「アシスト力Fa」ともいう。
【0027】
次に、
図4に示すグラフを参照して、フロントドア30に作用する力について説明する。グラフの縦軸において、フロントドア30の開方向に作用する力の向きを正の方向とし、フロントドア30の閉方向に作用する力の向きを負の方向としている。
【0028】
図4に示すように、フロントドア30には、フロントドア30の自重に起因した力(以下、「自重開閉力Fw」ともいう。)が閉方向に作用している。この点で、フロントドア30は、他の力が作用していない場合、閉方向に動こうとする。また、自重開閉力Fwは、フロントドア30の開度(以下、「ドア開度」ともいう。)が大きくなるにつれて、言い換えれば、全開位置に向かうにつれて小さくなっている。この点で、フロントドア30は、ドア開度が小さいほど、閉方向に動きやすくなっている。ドア開度に応じた自重開閉力Fwは、実験及びシミュレーションなどから取得することが好ましい。このとき、車両10は、水平な路面に駐車していると想定することが好ましい。また、自重開閉力Fwは、ドアヒンジ22における静止摩擦力などを含む力として扱ってもよい。
【0029】
自重開閉力Fwが閉方向に作用している状況下では、ユーザは、フロントドア30を開操作する場合、自重開閉力Fwよりも大きな操作力Fhをフロントドア30の開方向に付与する必要がある。また、ユーザは、フロントドア30を開操作する場合、フロントドア30が全閉位置から開方向に動き始めるときに、最も大きな操作力Fhをフロントドア30に付与する必要がある。そこで、本実施形態では、ユーザがフロントドア30を開操作する場合、ユーザが小さな操作力Fhでフロントドア30を開操作できるように、ドア駆動部50のアシスト力Faがフロントドア30の開方向に付与される。
【0030】
なお、本実施形態のように、フロントドア30がスイングドアである場合、フロントドア30に付与されるアシスト力Fa、自重開閉力Fw及び操作力Fhは、力のモーメントであるとする。詳しくは、アシスト力Fa、自重開閉力Fw及び操作力Fhは、フロントドア30の揺動軸線からそれぞれの力が作用する位置までの距離を考慮した力のモーメントであるとする。
【0031】
次に、ドア制御装置100について説明する。
図3に示すように、ドア制御装置100は、記憶部101と、ドア制御部102と、を有する。
【0032】
記憶部101は、自重開閉力Fwを打ち消すような大きさに設定されるアシスト力Faをドア開度に応じて記憶する。
図4に示すように、本実施形態において、アシスト力Faは、自重開閉力Fwと負号が逆で絶対値が等しくなっている。つまり、ドア開度に関わらず、自重開閉力Fw及びアシスト力Faの合力は「0」となっている。
【0033】
図5に示すように、記憶部101は、ドア開度に応じたアシスト力Faを、ドア開度とドア駆動部50のモータ55に流す電流との関係を示すマップとして記憶する。他の実施形態において、記憶部101は、ドア開度に応じたアシスト力Faを、ドア開度とアシスト力Faと相関する他のパラメータとの関係を示すマップとして記憶してもよい。
【0034】
ドア制御部102は、記憶部101に記憶されるマップに基づいて、ドア駆動部50のモータ55を制御することにより、フロントドア30に付与するアシスト力Faをドア開度に応じて調整するアシスト処理を実施する。詳しくは、ドア制御部102は、アシスト処理において、モータ55に流れる電流の向き及び大きさを制御することにより、アシスト力Faの向き及び大きさをドア開度に応じて調整する。こうして、ドア制御部102は、アシスト処理において、フロントドア30の自重開閉力Fwとアシスト力Faとの合力が「0」となるように、フロントドア30に付与するアシスト力Faを調整する。なお、ドア制御部102は、ハンドルスイッチ33の出力信号に基づいて、ドアハンドル32に対する操作が開始される場合に、アシスト処理を開始する。
【0035】
ドア制御部102は、ドア駆動部50のモータ55を制御することにより、フロントドア30に制動力を付与する制動処理を実施する。例えば、ドア制御部102は、制動処理において、モータ55の特定のコイルにだけ通電する状態を維持することで、フロントドア30に制動力を付与する。ドア制御部102は、アシスト処理を開始した後であって、フロントドア30の開閉速度が停止判定速度未満となる場合には、アシスト処理を終了し、制動処理を開始する。停止判定速度は、フロントドア30の停止を判定するための判定値である。停止判定速度は、「0」又は「0」に近い値に設定される。
【0036】
車両10が傾いた路面に停止している場合には、車両10が水平な路面に停止している場合と比較して、フロントドア30に作用する自重開閉力Fwの大きさが変化する場合がある。この場合には、自重開閉力Fwの大きさが変化するのに伴い、必要なアシスト力Faも変化する。そこで、ドア制御部102は、車両10が傾いている場合には、アシスト処理において、車両10の傾きに応じてフロントドア30に付与するアシスト力Faを補正する。
【0037】
なお、補正後のアシスト力Faは、補正前のアシスト力Faよりも大きくなることもあれば小さくなることもある。また、ドア制御部102は、車両10の傾きに応じたアシスト力Faの補正量を逐次算出してもよいし、事前に用意した車両10の傾きとアシスト力Faの補正量との関係を定めたマップに基づきアシスト力Faの補正量を算出してもよい。
【0038】
次に、
図6に示すフローチャートを参照して、アシスト力Faを調整するために、ドア制御装置100が実施する処理の流れについて説明する。本処理は、車両10が停止する場合であって、フロントドア30が全閉位置に位置する場合に、所定の制御サイクルごとに実施される処理である。
【0039】
図6に示すように、ドア制御装置100は、ハンドルスイッチ33の出力信号がオンになったか否かを判定する(S11)。ハンドルスイッチ33の出力信号がオフの場合(S11:NO)、言い換えれば、ユーザがドアハンドル32を操作しない場合、ドア制御装置100は、本処理を終了する。一方、ハンドルスイッチ33がオンの場合(S11:YES)、言い換えれば、ユーザがドアハンドル32を操作する場合、ドア制御装置100は、傾斜センサ60の出力信号に基づいて、車両10の傾きを算出する(S12)。
【0040】
続いて、ドア制御装置100は、記憶部101に記憶されるマップに基づいて、アシスト処理を開始する(S13)。したがって、アシスト処理を開始した後は、フロントドア30の自重開閉力Fwが相殺され、ユーザが小さな操作力Fhでフロントドア30を開操作可能な状態となる。また、車両10が傾いている場合には、ドア制御装置100は、アシスト処理において、フロントドア30に付与するアシスト力Faを補正する。
【0041】
そして、ドア制御装置100は、回転角センサ551の出力信号に基づいて算出されるフロントドア30の開閉速度が停止判定速度未満か否かを判定する(S14)。フロントドア30の開閉速度が停止判定速度以上の場合(S14:NO)、ドア制御装置100は、ステップS14に処理を移行する。つまり、ドア制御装置100は、フロントドア30が停止するのを待機する。
【0042】
一方、ドア制御装置100は、フロントドア30の開閉速度が停止判定速度未満の場合、言い換えれば、フロントドア30が停止した場合、アシスト処理を終了する(S15)。その後、ドア制御装置100は、制動処理を開始する(S16)。そして、ドア制御装置100は、本処理を終了する。
【0043】
なお、ドア制御装置100は、ユーザが車両10に対して乗降し終えた後は、ユーザがフロントドア30を閉操作できるように、制動処理を終了することが好ましい。ドア制御装置100は、例えば、ユーザがフロントドア30に閉方向の操作力Fhを付与する場合に制動処理を終了すればよい。
【0044】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ドア制御装置100は、ユーザがフロントドア30を開操作するとき、ドア開度に応じて、フロントドア30の自重開閉力Fwを打ち消すようなアシスト力Faをフロントドア30に付与させるアシスト処理を実施する。このため、ユーザは、フロントドア30の開操作の初期段階から、自らの思い通りにフロントドア30を開操作しやすくなる。したがって、ドア制御装置100は、ユーザのフロントドア30に対する操作性を高めることができる。
【0045】
(2)ドア制御装置100は、ハンドルスイッチ33の出力信号がオンに切り替わることを条件に、アシスト処理を開始する。このため、ドア制御装置100は、ユーザがドアハンドル32を操作し始めたタイミングで、アシスト処理を開始できる。つまり、ドア制御装置100は、フロントドア30が全閉位置から動き出す前にアシスト処理を開始できる。
【0046】
(3)ドア制御装置100は、ユーザがフロントドア30の開操作を止めた後に、アシスト処理を終了し、制動処理を開始する。このため、ドア制御装置100は、ユーザがフロントドア30の開操作を止めた後に、風などの外乱が作用することに起因して、フロントドア30が動くことを抑制できる。
【0047】
(4)ドア制御装置100は、アシスト処理において、自重開閉力Fwと逆向きで大きさの等しいアシスト力Faをフロントドア30に付与させる。このため、ユーザは、フロントドア30の自重を感じることなく、自らの思い通りにフロントドア30を開操作できる。したがって、ドア制御装置100は、ユーザのフロントドア30に対する操作性をより高めることができる。
【0048】
(5)ドア制御装置100は、車両10の傾きに応じて、フロントドア30に付与するアシスト力Faを補正する。このため、自重開閉力Fwが変化するような状況下であっても、ユーザのフロントドア30に対する操作性を高めることができる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ユーザが車内からフロントドア30を開操作する場合には、ユーザが車外からフロントドア30を開操作する場合よりも、フロントドア30が障害物に接触する可能性が高い。この点で、ドア制御装置100は、インサイドドアハンドル321が操作される場合には、アウトサイドドアハンドル322が操作される場合よりも、アシスト処理においてフロントドア30に付与するアシスト力Faを弱くしてもよい。
【0050】
これによれば、ユーザが車内からフロントドア30を開操作する場合には、ユーザが車外からフロントドア30を開操作する場合よりも、フロントドア30が開きにくくなる。したがって、ドア制御装置100は、車内からユーザがフロントドア30を開操作する際に、フロントドア30が障害物に接触するおそれを低減できる。
【0051】
・アシスト力Faの大きさは、自重開閉力Fwの大きさと異なっていてもよい。例えば、自重開閉力Fwとアシスト力Faとの合力が負の値を取る場合には、フロントドア30を開方向に動かすために必要な操作力Fhが大きくなる。この場合、ドア制御装置100は、ユーザがフロントドア30を勢い良く開くことを抑制できる。一方、自重開閉力Fwとアシスト力Faとの合力が正の値を取る場合には、フロントドア30を開方向に動かすために必要な操作力Fhが小さくなる。この場合、ユーザは、より小さな力でフロントドア30を開くことができる。
【0052】
・アシスト力Faの大きさを自重開閉力Fwの大きさよりも小さくする場合において、自重開閉力Fwとアシスト力Faとの差分は、ドア開度に対して一定でなくてもよい。例えば、ドア開度が小さい場合において、自重開閉力Fwとアシスト力Faとの差分を小さくしてもよい。これによれば、ユーザは、フロントドア30を開操作し始めるときに、少ない力でフロントドア30を開くことができる。また、ドア開度が大きい場合において、自重開閉力Fwとアシスト力Faとの差分を大きくしてもよい。これによれば、ドア制御装置100は、全開位置に向かって勢い良く開操作されるフロントドア30を減速できる。
【0053】
・ドア制御装置100は、ユーザがフロントドア30を閉操作するときにもアシスト処理を実施してもよい。
・フロントドア30は、自重開閉力Fwが開方向に作用するように車体20に支持されていてもよい。
【0054】
・アシスト力Faを付与するドアは、リアドアであってもよいし、バックドアであってもよい。また、アシスト力Faを付与するドアは、スライドドアであってもよいし、グライドドアであってもよい。
【0055】
・ドア制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。また、ドア制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路として構成し得る。さらに、ドア制御装置100は、これらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0056】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
30…フロントドア(ドアの一例)
31…ドア本体
32…ドアハンドル
321…インサイドドアハンドル
322…アウトサイドドアハンドル
40…ドアロック装置
50…ドア駆動部
100…ドア制御装置
101…記憶部
102…ドア制御部
Fa…アシスト力
Fh…操作力
Fw…自重開閉力