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特開2022-190510ディスク装置およびディスク装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190510
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ディスク装置およびディスク装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 23/03 20060101AFI20221219BHJP
   G11B 23/00 20060101ALI20221219BHJP
   G11B 21/02 20060101ALI20221219BHJP
   G11B 33/12 20060101ALI20221219BHJP
   G11B 33/02 20060101ALI20221219BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G11B23/03 603B
G11B23/00 601B
G11B21/02 630A
G11B33/12 313S
G11B33/12 313U
G11B33/02 D
G11B33/14 501W
G11B23/00 601F
G11B23/00 601X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098869
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 学
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康貴
(57)【要約】
【課題】記録媒体の設置枚数を増大可能なディスク装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態によれば、ディスク装置は、底壁12aを有するベース12とカバー14とを具備する筐体と、外周面と外周面の底壁の側の端部に設けられた環状のフランジ65と有し、枢軸に回転自在に支持されたハブ64、を具備する駆動モータ19と、ハブに取り付けられフランジに積層された10枚以上の磁気ディスク18と、それぞれハブに取り付けられ隣り合う磁気ディスクの間に位置し、磁気ディスクとともにフランジに積層配置された複数枚のスペーサリング66と、を備えている。少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成され、スペーサリングの厚さは、最大の厚さと最小の厚さとの差が0.01mm以上、0.09mm以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を有するベースと前記ベースに固定されたカバーとを具備する筐体と、
前記底壁に立設された枢軸と、前記枢軸と同軸的に位置する外周面と前記外周面の前記底壁の側の端部に設けられた環状のフランジと有し、前記枢軸に回転自在に支持されたハブと、を具備する駆動モータと、
前記ハブに取り付けられ前記フランジに積層された10枚以上の磁気ディスクと、
それぞれ前記ハブに取り付けられ隣り合う前記磁気ディスクの間に位置し、前記磁気ディスクとともに前記フランジに積層配置された、前記磁気ディスクよりも1枚少ない複数枚のスペーサリングと、を備え、
少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成され、前記スペーサリングの厚さは、最大の厚さと最小の厚さとの差が0.01mm以上、0.09mm以下である、
ディスク装置。
【請求項2】
前記少なくとも1枚のスペーサリングは、前記フランジに最も隣接している磁気ディスクに積層されているスペーサリングである請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記複数枚のスペーサリングのうち、複数枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成され、前記スペーサリングの厚さは、最大の厚さと最小の厚さとの差が0.01mm以上、0.09mm以下である請求項1に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記底壁の上に回動自在に支持されたアクチュエータブロックと、それぞれ前記アクチュエータブロックから延出し延出端に設置面を有する複数本のアームと、それそれ前記設置面に固定された前記アームから延出した支持板と前記支持板の延出端部に支持された磁気ヘッドとを有する複数のサスペンションアッセンブリと、を具備したヘッドアクチュエータを更に備え、
前記アームの設置面と対向する前記磁気ディスクの表面との間隔は、所定の設計値に対して±0.06mmの誤差範囲内に設定されている請求項1に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記底壁に設置され前記複数枚の磁気ディスクの外周部に隣接して配置されたランプを更に備え、
前記ランプは、それぞれ前記磁気ディスクの外周部が配置される複数の凹所と、各凹所の近傍からそれぞれ延出し互いに対向した一対のガイド面と、有し、
前記磁気ディスクの厚さ方向の中心軸線と前記ランプの凹所の高さ方向の中心軸線とが一致している、あるいは、±0.06mmのずれ範囲内にある、請求項1に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記筐体は、空気よりも密度の低い低密度ガスが封入されている請求項1に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記筐体は、3.5インチ、ディスク装置の規格で規定された最大高さ26.1mm以下の高さを有する請求項1に記載のディスク装置。
【請求項8】
底壁を有するベースと前記ベースに固定されたカバーとを具備する筐体と、前記底壁に立設された枢軸と、前記枢軸と同軸的に位置する外周面と前記外周面の前記底壁の側の端部に設けられた環状のフランジと有し、前記枢軸に回転自在に支持されたハブと、を具備する駆動モータと、前記ハブに取り付けられ前記フランジに積層された10枚以上の磁気ディスクと、それぞれ前記ハブに取り付けられ隣り合う前記磁気ディスクの間に位置し、前記磁気ディスクとともに前記フランジに積層配置された、前記磁気ディスクよりも1枚少ない複数枚のスペーサリングと、を備えるディスク装置の製造方法であって、
少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成され、前記スペーサリングの厚さは、最大の厚さと最小の厚さとの差が0.01mm以上、0.09mm以下である2種類以上の厚さの異なるスペーサリングを用意し、
前記フランジの高さを測定し、所定の設計中心値からの高さずれを算出し、
1枚目の磁気ディスクの厚さを測定し、所定の設計中心値からの厚さずれを算出し、
前記1枚目の磁気ディスクを前記フランジに積層し、
前記フランジの高さずれ、および、前記磁気ディスクの厚さずれから、積層された前記1枚目の磁気ディスクの上面の高さずれを算出し、
前記算出した前記上面の高さずれの大小に応じて、前記2種類以上のスペーサリングのなかから、前記高さずれを低減する厚さを有するスペーサリングを選択し、
前記選択したスペーサリングの厚さを測定し、所定の設計中心値からの厚さずれを算出し、
前記選択したスペーサリングを前記1枚目の磁気ディスクの上に積層し、
2枚目以降の磁気ディスクおよび2枚目以降のスペーサリングに対して、前記厚さの測定、所定の設計中心値からの厚さずれの算出、積層、磁気ディスク上面の高さずれの算出、スペーサリングの選択を繰り返し、10枚以上の磁気ディスクおよび9枚以上のスペーサリングを順次、積層する
ディスク装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、ディスク装置およびディスク装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置として、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)は、筐体内に設けられた駆動モータと、駆動モータのハブに積層配置された回転自在な複数枚の磁気ディスクと、を備えている。隣り合う磁気ディスクの間にスペーサリングが配置されている。
このように、複数枚の磁気ディスクとスペーサリングとを交互に積層配置した場合、各構成部材の製造誤差により積層高さにばらつきが生じる場合がある。特に、最上部の磁気ディスクは、各部の製造誤差が累積されることになるため、設定値に対する位置ずれが大きくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-130977号公報
【特許文献2】実開昭60-77795号公報
【特許文献3】米国特許第6040957号明細書
【特許文献4】特開平9-106622号公報
【特許文献5】特開2004-167547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の実施形態の課題は、積層配置される磁気ディスクの高さずれを低減することが可能なディスク装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、ディスク装置は、底壁を有するベースと前記ベースに固定されたカバーとを具備する筐体と、前記底壁に立設された枢軸と、前記枢軸と同軸的に位置する外周面と前記外周面の前記底壁の側の端部に設けられた環状のフランジと有し、前記枢軸に回転自在に支持されたハブと、を具備する駆動モータと、前記ハブに取り付けられ前記フランジに積層された10枚以上の磁気ディスクと、それぞれ前記ハブに取り付けられ隣り合う前記磁気ディスクの間に位置し、前記磁気ディスクとともに前記フランジに積層配置された、前記磁気ディスクよりも1枚少ない複数枚のスペーサリングと、を備えている。少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成され、前記スペーサリングの厚さは、最大の厚さと最小の厚さとの差が0.01mm以上、0.09mm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、トップカバーを分解して示す、第1実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)の分解斜視図。
図2図2は、前記HDDの平面図。
図3図3は、図2の線E-Eに沿った前記HDDの断面図。
図4図4は、前記HDDのヘッドアクチュエータアッセンブリおよびFPCユニットを示す斜視図。
図5図5は、前記ヘッドアクチュエータアッセンブリのヘッドサスペンションアッセンブリおよび磁気ディスクの配置関係を示す側面図。
図6図6は、前記HDDのランプを示す斜視図。
図7図7は、前記ランプの烏口部分を拡大して示す側面図。
図8図8は、前記HDDの製造工程を示すフローチャート。
図9図9は、3種類のスペーサリングを示す斜視図。
図10図10は、磁気ディスクを除いた状態の前記HDDの平面図。
図11図11は、前記HDDのベースの平面図。
図12図12は、第6実施形態に係るHDDの製造工程を示すフローチャート。
図13A図13Aは、第7実施形態に係るHDDの製造方法において、Zハイトずれと高さ調整(高さ調整無し)との関係を模式的に示す図。
図13B図13Bは、第7実施形態に係るHDDの製造方法において、Zハイトずれと高さ調整(1ケ所で所高さ調整)との関係を模式的に示す図。
図13C図13Cは、第7実施形態に係るHDDの製造方法において、Zハイトずれと高さ調整(2ケ所で高さ調整)との関係を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下図面を参照しながら、実施形態に係るディスク装置およびその製造方法について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の大きさ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(第1実施形態)
ディスク装置として、第1実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)について詳細に説明する。
図1は、カバーを分解して示す第1実施形態に係るHDDの分解斜視図、図2は、カバーを取外した状態のHDDの平面図である。
図1に示すように、HDDは、ほぼ矩形状の筐体10を備えている。筐体10は、上面の開口した矩
形箱状のベース12と、複数のねじ13によりベース12にねじ止めされベース12の上端開口を閉塞する内カバー14と、内カバー14に重ねて配置され、周縁部がベース12に溶接される外カバー(トップカバー)16と、を有している。ベース12は、内カバー14と隙間を置いて対向する矩形状の底壁12aと、底壁12aの周縁に沿って立設された側壁12bとを有し、例えば、アルミニウム合金により一体に成形されている。側壁12bは、互いに対向する一対の長辺壁と互いに対向する一対の短辺壁とを含んでいる。側壁12bの上端面に、ほぼ矩形枠状の固定リブ12cが突設されている。
側壁12bの4つの角部の上面に、位置決めボスB1がそれぞれ突設されている。4つの位置決めボスB1の上面は、同一の高さ、同一平面に位置するように平面加工され、高さ基準面を構成している。
【0009】
内カバー14は、例えば、ステンレスにより矩形板状に形成されている。内カバー14は、その周縁部がねじ13により側壁12bの上面にねじ止めされ、固定リブ12cの内側に固定される。外カバー16は、例えば、アルミニウムにより矩形板状に形成されている。外カバー16は、内カバー14よりも僅かに大きな平面寸法に形成されている。外カバー16は、その周縁部が全周に亘って、ベース12の固定リブ12cに溶接され、ベース12に気密に固定される。気密に閉じられた筐体10には、空気よりも密度の低い低密度ガス、例えば、ヘリウム(He)が封入されている。
なお、筐体10の高さ(厚さ)H(図3参照)は、3.5インチHDD規格に従い、最大26.1mm以下に形成されている。
【0010】
筐体10内には、ディスク状の記録媒体として複数枚、例えば、10枚の磁気ディスク18、および磁気ディスク18を支持および回転させる駆動モータとしてのスピンドルモータ19が設けられている。スピンドルモータ19は、底壁12a上に配設されている。各磁気ディスク18は、例えば、直径96mm(3.5インチ)、厚さ0.5~0.635mmの円板状に形成され、非磁性体、例えば、ガラスあるいはアルミニウムからなる基板と、基板の上面(第1面)および下面(第2面)に形成された磁気記録層とを有している。本実施形態では、アルミニウムの基板を用いている。各磁気ディスク18は、スピンドルモータ19の後述するハブに互いに同軸的に嵌合されて、更に、クランプばね20によりクランプされている。これにより、磁気ディスク18は、ベース12の底壁12aと平行に位置した状態に支持されている。複数枚の磁気ディスク18は、スピンドルモータ19により所定の回転数で回転される。なお、磁気ディスク18の搭載枚数は、10枚に限らず、9枚以下、あるいは、11枚以上としてもよい。
【0011】
図1および図2に示すように、筐体10内には、磁気ディスク18に対して情報の記録、再生を行なう複数の磁気ヘッド17、および、これらの磁気ヘッド17を磁気ディスク18に対して移動自在に支持したアクチュエータアッセンブリ22が設けられている。また、筐体10内には、アクチュエータアッセンブリ22を回動および位置決めするボイスコイルモータ(VCM)24、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の最外周に移動した際、磁気ヘッド17を磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持するランプロード機構25、変換コネクタ等の電子部品が実装された基板ユニット(FPCユニット)21、およびスポイラ70が設けられている。
ベース12の底壁12aの外面には、プリント回路基板41がねじ止めされている。プリント回路基板41は、スピンドルモータ19の動作を制御するとともに、基板ユニット21を介してVCM24および磁気ヘッド17の動作を制御する制御部を構成している。
【0012】
図3は、図2の線E-Eに沿ったHDDの断面図である。一例では、スピンドルモータ19は、底壁12aにほぼ垂直に立設された枢軸60と、枢軸60の回りで回転自在に支持された円筒状の回転軸62と、回転軸62の周囲に同軸的に固定されたほぼ円筒形状のハブ64と、底壁12aに固定され回転軸62の周囲に配置された固定子コイルSCと、更に、ハブ64の内周面に取付けられ固定子コイルSCに対向した円筒状のマグネットMと、を有している。ハブ64は、枢軸60と同軸的に位置する外周面と、外周面の下端(底壁12a側の端)に一体に形成された環状のフランジ65とを有している。
【0013】
磁気ディスク18は、その内孔にハブ64が挿通された状態で、ハブ64の外周面に係合している。ハブ64の外周面に環状のスペーサリング66が装着され、隣合う2枚の磁気ディスク18間に挟まれている。複数の磁気ディスク18および複数のスペーサリング66は、ハブ64のフランジ65上に順に配置され、交互に重なった状態でハブ64に取付けられている。円盤状のクランプばね20がハブ64の上端に取付けられている。クランプばね20は、複数の磁気ディスク18の内周部およびスペーサリング66をフランジ65の側に押圧している。これにより、複数枚の磁気ディスク18が互いに所定の間隔を置いて積層状態に固定されている。10枚の磁気ディスク18は、回転軸62およびハブ64と一体に回転可能に支持されている。10枚の磁気ディスク18は、所定の間隔を置いて、互いに平行に、また、底壁12aとほぼ平行に支持されている。
【0014】
筐体10の高さ(厚さ)Hは、HDD規格に従い、最大26.1mmに形成されている。各磁気ディスク18の板厚TDは、0.35mm以上、0.7mm以下に形成され、本実施形態では、0.635mmとしている。隣合う2枚の磁気ディスク18間の間隔、すなわち、スペーサリング66の板厚TS(軸方向の厚さ)は、1.2mm以上、1.5mm以下に形成され、本実施形態では、板厚TSが1.462mmのスペーサリング66を基準としている。スペーサリング66は、例えば、アルミニウムで形成されている。
上述したように、本実施形態によれば、10枚の磁気ディスク18および磁気ディスクの枚数よりも1枚少ない9枚のスペーサリング66が、スピンドルモータ19のハブ64の外周に積層配置されている。9枚のスペーサリングのうち、少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成されている。スペーサリング66の厚さは、最大のものと最小のものとの差が0.01mm以上、0.09mm以下に設定している。
【0015】
図4は、アクチュエータアッセンブリを示す斜視図である。図示のように、アクチュエータアッセンブリ22は、透孔26を有するアクチュエータブロック29と、透孔26内に設けられた軸受ユニット(ユニット軸受)28と、アクチュエータブロック29から延出する複数、例えば、11本のアーム32と、各アーム32に取付けられたサスペンションアッセンブリ(ヘッドジンバルアッセンブリ:HGAと称する場合もある)30と、サスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17と、を備えている。ベース12の底壁12aに支持シャフト(枢軸)31が立設されている。アクチュエータブロック29は、軸受ユニット28により、支持シャフト31の周りで、回動自在に支持されている。
【0016】
本実施形態において、アクチュエータブロック29および11本のアーム32はアルミニウム等により一体に成形され、いわゆるEブロックを構成している。アーム32は、例えば、細長い平板状に形成され、支持シャフト31と直交する方向に、アクチュエータブロック29から延出している。11本のアーム32は、互いに隙間を置いて、平行に設けられている。
アクチュエータアッセンブリ22は、アクチュエータブロック29からアーム32と反対の方向へ延出する支持フレーム33を有し、この支持フレーム33により、VCM24の一部を構成するボイスコイル39が支持されている。図1に示すように、ボイスコイル39は、ベース12上にその1つが固定された一対のヨーク37間に位置し、これらのヨーク37、および何れかのヨークに固定された磁石とともにVCM24を構成している。
【0017】
図4に示すように、アクチュエータアッセンブリ22は、それぞれ磁気ヘッド17を支持した20個のサスペンションアッセンブリ30を備えている。サスペンションアッセンブリ30は各アーム32の延出端32aにそれぞれ取付けられている。複数のサスペンションアッセンブリ30は、磁気ヘッド17を上向きに支持するアップヘッドサスペンションアッセンブリと、磁気ヘッド17を下向きに支持するダウンヘッドサスペンションアッセンブリと、を含んでいる。これらのアップヘッドサスペンションアッセンブリおよびダウンヘッドサスペンションアッセンブリは、同一構造のサスペンションアッセンブリ30を上下向きを変えて配置することにより構成される。
本実施形態では、図4において、最上部のアーム32にダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取付けられ、最下部のアーム32にアップヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。中間の9本のアーム32の各々には、アップヘッドサスペンションアッセンブリ30およびダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。
【0018】
サスペンションアッセンブリ30は、ほぼ矩形状のベースプレート38と、細長い板ばねからなるロードビーム42と、細長い帯状のフレキシャ(配線部材)40と、を有している。フレキシャ40は、変位自在なジンバル部を有し、このジンバル部に磁気ヘッド17が載置されている。ベースプレート38の基端部がアーム32の延出端32aの設置面(カシメ面)32b(図5参照)に固定され、例えば、かしめ止めされている。ロードビーム42は、その基端部がベースプレート38の端部に重ねて固定されている。ロードビーム42は、ベースプレート38から延出し、延出端に向かって先細に形成されている。ベースプレート38およびロードビーム42は、例えば、ステンレスにより形成されている。
ロードビーム42は、磁気ヘッド17を磁気ディスク18の表面に向けて付勢するばね力(反力)を生じている。また、ロードビーム42の先端からタブ46が突出している。タブ46は、後述するランプ80に係合可能であり、ランプ80と共にランプロード機構25を構成する。
【0019】
図4に示すように、FPCユニット21は、L字形状に折り曲げられたほぼ矩形状のベース部21aと、ベース部21aの一側縁から延出した細長い帯状の中継部21bと、中継部21bの先端に連続して設けられた接合部21cと、を一体に有している。ベース部21a、中継部21b、および接合部21cは、フレキシブルプリント配線基板(FPC)により形成されている。フレキシブルプリント配線基板は、ポリイミド等の絶縁層と、この絶縁層上に形成され、複数の配線、接続パッド等を形成した導電層と、導電層を覆う保護層とを有している。
【0020】
ベース部21aの上に、図示しない変換コネクタ、複数のコンデンサ等の電子部品が実装され、図示しない配線に電気的に接続されている。ベース部21aに、補強板として機能する金属板が貼付されている。ベース部21aは、ベース12の底壁12a上に設置されている。中継部21bは、ベース部21aの側縁からアクチュエータアッセンブリ22のアクチュエータブロック29に向かって延びている。中継部21bの延出端に設けられた接合部21cは、アクチュエータブロック29の側面(設置面)とほぼ等しい高さおよび幅の矩形状に形成されている。接合部21cは、アルミニウム等で形成された裏打ち板を介して、アクチュエータブロック29の設置面に貼付され、更に、固定ねじ72により設置面にねじ止め固定されている。接合部21cに多数の接続パッドが設けられている。接合部21cには例えば1つのヘッドIC(ヘッドアンプ)67が実装され、このヘッドIC67は配線を介して接続パッドおよびベース部21aに接続されている。更に、接合部21cには、ボイスコイル39が接続された接続端子68が設けられている。
【0021】
各サスペンションアッセンブリ30のフレキシャ40は、磁気ヘッド17に電気的に接続された一端部と、アーム32の側縁に形成された溝を通ってアクチュエータブロック29まで延出した他端部と、他端部に設けられた接続端部(テール接続端子部)48cと、を有している。接続端部48cは、細長い矩形状に形成されている。接続端部48cには複数、例えば、13個の接続端子(接続パッド)51が設けられている。これらの接続端子51は、フレキシャ40の配線にそれぞれ接続されている。すなわち、フレキシャ40の複数の配線は、フレキシャ40のほぼ全長に亘って延び、一端は磁気ヘッド17に電気的に接続され、他端は、接続端子(接続パッド)51に接続されている。
20本のフレキシャ40の接続端部48cに設けられた接続端子51は、接合部21cの接続パッドに接合され、接続パッドを介して接合部21cの配線に電気的に接続されている。これにより、アクチュエータアッセンブリ22の20個の磁気ヘッド17は、それぞれフレキシャ40の配線、接続端部48c、FPCユニット21の接合部21c、中継部21bを通して、ベース部21aに電気的に接続される。
【0022】
上記のように構成されたアクチュエータアッセンブリ22をベース12上に組み込んだ状態において、支持シャフト31は、スピンドルモータ19のスピンドルとほぼ平行に立設される。各磁気ディスク18は2本のサスペンションアッセンブリ30間に位置する。HDDの動作時、2本のサスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の上面および下面にそれぞれ対向する。
図5は、ヘッドサスペンションアッセンブリ30および磁気ディスク18の配置関係を示す側面図である。図示のように、HDDの動作時、各磁気ディスク18は、ダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30とアップヘッドサスペンションアッセンブリ30との間に挟まれる。2本のサスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の上面および下面にそれぞれ対向する。図において、アーム32の先端部32aの設置面32bと磁気ディスク18の表面との間隔をZハイト(Z-height)と称する。本実施形態によれば、Zハイトが所定の設計値に対して±0.06mmの誤差範囲内に入るように、磁気ディスク18の設置高さが調整されている。
【0023】
次に、ランプロード機構25のランプ、およびランプと磁気ディスク18との配置関係について詳細に説明する。図6は、ランプロード機構のランプを示す斜視図、図7は、ランプの出入口(烏口)部分を模式的に示す側面図である。
ランプロード機構25は、ランプ80を備えている。図1に示したように、ランプ80は、ベース12の底壁12aに固定され、磁気ディスク18の周縁部近傍に位置している。HDDの非作動時、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の外周から外れて所定の停止位置に移動すると、サスペンションアッセンブリ30のタブ46はランプ80に乗り上げる。これにより、磁気ヘッド17は、磁気ディスク18から離間した位置に保持される。
【0024】
図6に示すように、ランプ80は、矩形板状に形成されたランプ本体82と、ランプ本体の一面上に突設された10個のガイドブロック84と、ランプ本体82の他面に突設された支持ブラケット85と、を有し、例えば、合成樹脂あるいは金属により一体に成形されている。支持ブラケット85をベース12に固定することにより、ランプ本体82は、ベースの底壁12aに対して、ほぼ垂直に立設した状態に配置される。
ガイドブロック84は、細長い直方体形状を有し、底壁12aとほぼ平行に延在している。10個のガイドブロック84は、磁気ディスク18の軸方向に所定の間隔を置いて並んで配置されている。各ガイドブロック84の磁気ディスク18側の一端に矩形状の凹所(切欠き)86が形成されている。図3および図7に示すように、ランプ80をベース12に設置した状態において、10枚の磁気ディスク18の外周縁部は、それぞれ対応するガイドブロックの凹所86内に隙間(ギャップ)を持って位置する。
【0025】
図6および図7に示すように、各ガイドブロック84は、ダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30のタブ46をガイドおよび支持する上ガイド面(第1ガイド面)Gaと、アップヘッドサスペンションアッセンブリ30のタブ46をガイドおよび支持する下ガイド面(第2ガイド面)Gbと、を有している。上ガイド面Gaおよび下ガイド面Gbは、互いに対向して位置しているとともに、ランプ本体82の一面に対してほぼ垂直に設けられている。
10個のガイドブロック84の上ガイド面Gaおよび下ガイド面Gbは、磁気ディスク18の軸方向に沿って所定の間隔をおいて並び、それぞれ対応するサスペンションアッセンブリ30の高さに合わせて配置されている。各ガイド面Ga、Gbは、磁気ディスク18の半径方向にほぼ沿って、磁気ディスク18の外周縁近傍まで延びているとともに、タブ54の移動経路上に配置されている。
【0026】
上ガイド面Gaは、磁気ディスク18の表面近傍(凹所86近傍)から磁気ディスク18から離れる方向、ここでは、上方に傾斜して延在し磁気ヘッド17を磁気ディスク上にロード、アンロードするための第1傾斜面87aと、第1傾斜面87aに続いて磁気ディスク表面とほぼ平行に延びる支持面87bと、支持面87bの他端からガイド面の終端まで傾斜して延びる第2傾斜面87cと、を有している。
同様に、下ガイド面Gbは、磁気ディスク18の表面近傍(凹所86近傍)から磁気ディスク18から離れる方向、ここでは、下方に傾斜して延在し磁気ヘッド17を磁気ディスク上にロード、アンロードするための第1傾斜面88aと、第1傾斜面88aに続いて磁気ディスク表面とほぼ平行に延びる支持面88bと、支持面88bの他端からガイド面の終端まで傾斜して延びる第2傾斜面88cと、を有している。
【0027】
図7に示すように、ディスク装置の動作衝撃耐力を決めるパラメータの一つであるランプ80と磁気ディスク18の表面との間のギャップBは、所定の値、例えば、0.275mm程度に設定されていることが望ましい。そのため、磁気ディスク18の設置高さは、磁気ディスク18の厚さ方向の中心軸線CDとランプ80の凹所86の高さ方向の中心軸線CRとが一致するように、あるいは、±0.06mmのずれ範囲内に入るように調整されている。
HDDによれば、VCM24によりアクチュエータアッセンブリ22を支持シャフト31の回りで回動させることにより、複数の磁気ヘッド17は、各磁気ディスク18の表面に対向した状態で、所望のシーク位置に移動される。HDDの非作動時、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の外周から外れて所定の停止位置に移動すると、複数のサスペンションアッセンブリ30のタブ46は、それぞれ対応するランプ80の上ガイド面Ga、下ガイド面Gbに乗り上げる。これにより、磁気ヘッド17は、ランプ80により、磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持される。
【0028】
次に、上記構成を有するHDDの製造方法について説明する。
上記HDDにおいて、磁気ディスク18の板厚およびスペーサリング66の板厚は、設計値からのずれが0であることが望ましいが、製造バラつきにより、面積の大きい磁気ディスクは±0.01mm程度、面積の小さいスペーサリングは±0.005mm程度のバラつきを許容せざるを得ない。しかし、搭載する磁気ディスクの枚数が増加するほど、積層する磁気ディスクやスペーサリングの厚さ寸法バラつきが累積されていくことになるため、上部の磁気ディスク程、ばらつきの影響が大きくなる。例えば、磁気ディスク18を10枚搭載する場合は、設計値に対して0.01mm厚い磁気ディスク、および設計値に対して0.005mm厚いスペーサリングが積層されたとすると、磁気ディスクの最上面の高さは設計値に対し、0.01×10+0.005×9=0.145mmのずれが生じることになる。
そこで、本実施形態に係るHDDおよびその製造方法においては、スペーサリングの厚さを調整することにより、磁気ディスクの高さずれの低減を図っている。
【0029】
図8は、HDDの製造工程を示すフローチャート、図9は、厚さの異なる3種類のスペーサリングを示す斜視図。、図10は、磁気ディスクを除いた状態の前記HDDの平面図、図11は、前記HDDのベースの平面図。
図8に示すように、製造方法においては、始めに、スペーサリングの積層枚数n=1(1枚目)、磁気ディスク18の厚さの設計中心値からのずれΔS0=0を想定する(ST1)。スピンドルモータ19のハブ64のフランジ65の上面の高さを測定する(ST2)。一例では、図10に示すように、ベース12に設けられた4つの位置決めボスB1の上面の高さを基準として例えばレーザ変位計や静電容量変位計などの測定器でフランジ65の上面の高さを測定する。測定された高さと、設計中心値との差分(高さずれ)をt0 (プラスはハブ64がトップカバー側によっている場合とする)とし、スピンドルモータ19に紐づけして管理する。
本実施例の場合、t0は例えば-0.05mm以上、+0.05mm以下となるよう管理し、この範囲を超えるスピンドルモータは使用しない。
【0030】
次に、図8に示すように、積層する1枚目の磁気ディスク18の内周部の厚さを測定し、この測定された厚さと、設計中心値との差分(厚さずれ)をΔm1とする(ST3)。厚さを測定した後、磁気ディスク18をハブ64のフランジ65に積層する(ST4)。
スペーサリング66は、設計中心値が異なる2種類以上、例えば、3種類のスペーサリングを準備する。本実施形態では、図9に示すように、
Aランクのスペーサリング66(A):厚さTS1:1.452mm±0.005mm、Bランクのスペーサリング66(B):厚さTS2:1.462mm±0.005mm、Cランクのスペーサリング66(C):厚さTS3:1.472mm±0.005mm、
の厚さの異なる3種類のスペーサリングを用いる(TS1<TS2<TS3)。厚さの公差が±0.005mmであるため、A、B、Cランクに厚さが重複して属するスペーサリングはない。
なお、種類を見分けやすくするために、スペーサリング66にマークM、例えば、ドットを付しても良い。Aランクのスペーサリング66(A)は、1つドット、Bランクのスペーサリング66(B)は、2つドット、Cランクのスペーサリング66(C)は、3つドットが付されている。マークMは、ドットに限らず、バーコードなど種々選択可能である。
【0031】
次に、図8に示すように、スピンドルモータ19に紐づけした差分t0に積層した磁気ディスク18の差分Δm1を加算したものを1枚目の磁気ディスク18の表面の高さt1として算出する(ST5)。t1の大小に応じて、積層する1枚目のスペーサリング66のランクを決定する(ST6~ST10)。
t1<-0.01の場合(ST6)、Cランクのスペーサリング66(C)を選択する(ST8)。
-0.01≦t1≦0.01の場合(ST7)、Bランクのスペーサリング66(B)を選択する。
0.01<t1の場合(ST7)、Aランクのスペーサリング66(A)を選択する(ST10)。
選択した1枚目のスペーサリング66の厚さを測定し、設計中心値からの測定値のずれをΔS1とする(ST11)。測定後、スペーサリング66を1枚目の磁気ディスク18に積層配置する(ST12)。
【0032】
スペーサリング66の積層枚数nが9枚よりも少ない場合(ST13)、n=n+1を設定し(ST14)、工程(ST3)~(ST13)を繰り返し実行する。すなわち、引き続き、2枚目の磁気ディスク18をスペーサリング66に重ねて積層する。積層する前に磁気ディスク18の内周部の厚さを測定し、設計中心値からの測定値のずれをΔm2とする(ST3)。測定した2枚目の磁気ディスク18をスペーサリング66に重ねて積層する(ST4)。
2枚目のスペーサリングを積層する前に、2枚目の磁気ディスク18の上面の高さ(t2=t1+ΔS1+Δm2を算出する(ST5)。高さt2の大小に応じて、2枚目に積層するスペーサリングのランクを決定する(ST6~ST10)。
t2<-0.01の場合(ST6)、Cランクのスペーサリング66(C)を選択する(ST8)。
-0.01≦t2≦0.01の場合(ST7)、Bランクのスペーサリング66(B)を選択する。
0.01<t2の場合(ST7)、Aランクのスペーサリング66(A)を選択する(ST10)。
選択した2枚目のスペーサリング66の厚さを測定し、設計中心値からの測定値のずれをΔS2とする(ST11)。測定後、スペーサリング66を2枚目の磁気ディスク18に積層配置する(ST12)。
9枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリング66が積層されるまで上述した工程ST3~ST12を繰り返し実行する。9枚目のスペーサリング66が積層されると(ST13)、10枚目の磁気ディスク18がスペーサリング66に重ねて積層配置される(ST15)。その後、クランプばね20をハブ64に取り付け、このクランプばね20により10枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリング66を積層状態に保持する(ST16)。
【0033】
上述したように、本実施形態によれば、10枚の磁気ディスク18および磁気ディスクの枚数よりも1枚少ない9枚のスペーサリング66が、スピンドルモータ19のハブ64の外周に積層配置されている。9枚のスペーサリングのうち、少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成されている。スペーサリング66の厚さは、最大のものと最小のものとの差が0.01mm以上、0.09mm以下に設定している。
本実施形態によれば、フランジ65の高さずれ、および、磁気ディスク18の厚さのずれ、に応じて、最適な厚さのスペーサリングを選択し、積層配置している。これにより、1枚目に積層した磁気ディスク18の高さずれ(最大0.06mm)を超える高さずれを起こす磁気ディスクが生じることなく、10枚の磁気ディスク18を所望の高さ位置に積層配置することが可能となる。各サスペンションアッセンブリ30のZハイト、および、ランプ80に対する各磁気ディスク18の中心軸線CDの高さ位置、を所望の設計値の範囲内に収めることが可能となる。多数枚、例えば、10枚の磁気ディスク18を搭載している場合でも、磁気ヘッドの浮上変動が起きたり、ヘッドアクチュエータが正常なロード/アンロード動作を行えなくなるなどの不具合を生じることがなく、ディスク装置の大容量化を達成することが可能となる。
【0034】
次に、この発明の他の実施形態に係るHDDおよびその製造方法について説明する。以下に述べる他の実施形態において、前述した第1実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
(第2実施形態)
図7図8図10を参照して、第2実施形態に係るHDDの製造方法について説明する。
図7に示すように、磁気ヘッドがランプ80と磁気ディスク18との間を確実にロード/アンロード動作するためには、磁気ディスク18とランプ80との相対高さBの設計中心値からのずれが小さいことが望ましい。
前述した第1実施形態では、図8のt0として、モータのハブ64のフランジ65の高さの設計値からのずれを用いていたが、第2実施形態では、ランプ80の高さに対するフランジ65の高さのずれをt0として用いる。
詳細には、図10に示すように、ボスB1の上面を基準として、フランジ65の上面の3点、Z1、Z2、Z3でフランジ65の上面の高さを測定する。3点の高さによって形成される平面をランプ80の近傍位置(半径R2)まで延長した仮想点Zrの設計値からの高さずれを、t0として用いる。本実施例において、Z1、Z2、Z3は、それぞれスピンドルモータ19の中心軸周りの周方向に角度θ1=120°の等間隔を置いて配置されている。Z1、Z2、Z3は、それぞれ半径R1=14.5mmの位置に配置され、Zrは半径R2=46.6mmの位置に設定している。
ずれt0を用いて、図8に示す工程ST1~ST16を実行することにより、10枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリングがハブ64のフランジ65の上に積層配置される。
【0035】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、フランジ65の高さずれ、および、磁気ディスク18の厚さのずれ、に応じて、最適な厚さのスペーサリングを選択し、積層配置することにより、10枚の磁気ディスク18をランプ80に対して所望の高さ位置に積層配置することができる。更に、第2実施形態では、ハブ64の傾きによって発生するランプ80近傍位置での磁気ディスク18の高さずれも考慮できるため、より効果的な高さ調整を行うことができる。
【0036】
(第3実施形態)
図3図8を参照して、第3実施形態に係るHDDの製造方法について説明する。
図3に示したように、スピンドルモータ19のハブ64に積層された磁気ディスク18およびスペーサリング66は、クランプばね20により軸方向に押圧された状態で、ハブ64に固定される。例えば、厚さ0.635mmの磁気ディスク18を10枚積層する場合、200G程度の衝撃に対しても磁気ディスク18がずれることなく保持されるためには、約1200N程度の軸力を磁気ディスク18に印加する必要がある。この軸力により、ハブ64のフランジ65も僅かに変形し、搭載した磁気ディスク18の高さ位置が0.01mm程度変化する場合がある。このような変化は、磁気ディスクの高さずれの要因となる。
そこで、第3実施形態では、クランプばね20による荷重で生じるフランジ65のたわみ量Δhを予め別のサンプルを用いて求めておき、図8の工程ST2において、測定したt0からΔhを差し引く。以後、(t0-Δh)を基準として、図8に示す工程ST3~ST16を実行することにより、10枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリングがハブ64のフランジ65の上に積層配置される。
【0037】
上記第3実施形態によれば、クランプばね取付時の変形によるフランジ65の高さずれΔhを加味してスペーサリング66のランクを適切に選択することができ、クランプ後の磁気ディスクの高さをより効果的に調整することが可能となる。すなわち、クランプばねによるフランジの高さずれが、フランジと直接、接しない磁気ディスクの高さのずれとして伝播しないように、あるいは、磁気ディスクの高さずれが軽減されるように、高さ調整可能となる。
【0038】
(第4実施形態)
図7図8図11を参照して、第4実施形態に係るHDDの製造方法について説明する。
図7に示すように、磁気ヘッドがランプ80と磁気ディスク18との間を確実にロード/アンロード動作するためには、磁気ディスク18とランプ80との相対高さBの設計中心値からのずれが小さいことが望ましい。
図11に示すように、ベース12の底壁12aの内面に、ランプ80の設置面Zbが形成されている。設置面Zbは、機械加工により高精度に形成されるが、その場合でも、高さ方向に±0.03mm程度の加工バラつきは避けられない。そこで、第4実施形態では、ボスB1の上面を基準としてランプの設置面Zbの高さを測定し、設計中心値からの測定値のずれΔZbを算出する。図8の工程ST2において、測定したt0からΔZbを差し引く。以後、(t0-ΔZb)を基準として、図8に示す工程ST3~ST16を実行することにより、10枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリングがハブ64のフランジ65の上に積層配置される。
【0039】
上記第4実施形態によれば、ランプ設置面の高さずれΔZbを差し引くことにより、ランプ設置面の高さずれの影響を低減させるように、スペーサリング66の厚さを選択し、磁気ディスク高さ位置を最適に調整することが可能となる。
【0040】
(第5実施形態)
図8図11を参照して、第5実施形態に係るHDDの製造方法について説明する。
図11に示すように、ベース12の底壁12aの内面に、ヘッドアクチュエータ22の設置面Zpが形成されている。この設置面Zpには、アクチュエータブロックを回転自裁に支持するための枢軸31が設置される。設置面Zpは、機械加工により高精度に形成されるが、その場合でも、高さ方向に±0.03mm程度の加工バラつきは避けられない。
設置面Zpの高さが設計値からずれていると、アクチュエータアッセンブリ22およびサスペンションアッセンブリ30の高さ位置にずれが生じる。サスペンションアッセンブリ30の高さ位置のずれは、Zハイトのずれとなり、磁気ヘッドの浮上変動の要因となる。そのため、Zハイトの設計中心値からのずれは小さいことが望ましい。
そこで、第5実施形態によれば、ボスB1の上面を基準としてヘッドアクチュエータの設置面Zpの高さを測定し、設計中心値からの測定値のずれΔZpを算出する。図8の工程ST2において、測定したt0からΔZpを差し引く。以後、(t0-ΔZp)を基準として、図8に示す工程ST3~ST16を実行することにより、10枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリングがハブ64のフランジ65の上に積層配置される。
【0041】
上記第5実施形態によれば、アクチュエータの設置面Zpの高さずれ、すなわち、サスペンションアッセンブリ30の高さずれ(ΔZp)を加味してスペーサリング66のランクを適切に選択することができ、磁気ディスクの高さ位置、およびZハイトをより効果的に調整することが可能となる。すなわち、設置面Zpの高さずれが、フランジと直接、接しない磁気ディスクの高さのずれとして伝播しないように、あるいは、磁気ディスクの高さずれが軽減されるように、高さ調整可能となる。
【0042】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態に係るHDDの製造方法を示すフローチャートである。
前述した第1ないし第5実施形態では、スピンドルモータのフランジの高さずれt0、磁気ディスク18の厚さずれΔm、スペーサリング66の厚さずれΔsをHDDの製造工程で順次測定しながら磁気ディスクおよびスペーサリングを積層する方法としている。
これに対して、第6実施形態によれば、スピンドルモータのフランジ65の高さずれt0、各磁気ディスク18の厚さずれΔm、各スペーサリング66の厚さΔsを、予め、部品単位で測定し、測定値を個体毎またはロット平均値として紐づけして保存しておき、製造時に、各測定値をデータとして用いている。
図12に示すように、始めに、フランジの高さずれt0を読み出し(ST1)、続いて、1枚目の磁気ディスクの厚さずれΔm1を読み出す(ST2)。次いで、1枚目の磁気ディスクをフランジ65の上に積層した後(ST4)、1枚目の磁気ディスク上面の高さずれ(t1=t0+Δm1)を算出する(ST5)。
算出したずれt1の大小に応じて、最適なスペーサリング66を選択し、選択されたスペーサリングの厚さずれΔs1のデータを読み出す(ST~ST11)。
【0043】
スペーサリング66の積層枚数nが9枚よりも少ない場合(ST13)、n=n+1を設定し(ST14)、工程(ST3)~(ST13)を繰り返し実行する。すなわち、引き続き、2枚目の磁気ディスク18をスペーサリング66に重ねて積層する。積層した後、2枚目の磁気ディスク18の厚さずれΔm2を読み出し、2枚目の磁気ディスク18の上面の高さ(t2=t1+ΔS1+Δm2)を算出する(ST5)。高さt2の大小に応じて、2枚目に積層するスペーサリングのランクを決定する(ST6~ST10)。
選択した2枚目のスペーサリング66の厚さずれΔS2を読み出した後(ST11)、スペーサリング66を2枚目の磁気ディスク18に積層配置する(ST12)。
9枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリング66が積層されるまで上述した工程ST3~ST12を繰り返し実行する。9枚目のスペーサリング66が積層されると(ST13)、10枚目の磁気ディスク18がスペーサリング66に重ねて積層配置される(ST15)。その後、クランプばね20をハブ64に取り付け、このクランプばね20により10枚の磁気ディスク18および9枚のスペーサリング66を積層状態に保持する(ST16)。
このような第6実施形態に係る製造方法によれば、工程ごとにずれ量を測定する方法に比較して、製造効率の向上を図ることが可能となる。
【0044】
(第7実施形態)
図13A図13B図13Cは、それぞれ第7実施形態に係るHDDの製造方法において、Z-ハイトずれと高さ調整との関係を模式的に示す図である。
第7実施形態によれば、積層する全てのスペーサリング66について厚さランク選択を行うのではなく、数回のみスペーサリングの厚さランクの選択を行い、他のスペーサリングは厚さ中心ランク、例えば、Bランクのスペーサリングを用いる。
例えば、積層する磁気ディスクが10枚、磁気ディスク厚さの平均値が設計中心値+0.005mm(5μm)、フランジ65の高さずれが+0.04mm(40μm)である場合、スペーサリング66のランク選択を行わずに(A.高さ調整無し)磁気ディスクおよびスペーサリングを積層すると、図13Aに示すように、10枚目の磁気ディスクを積層した際に生じる高さずれは+0.09mmとなる。
こに対して、本実施形態によれば、図13Bに示すように、例えば、1枚目と2枚目の磁気ディスクの間に積層するスペーサリング66を、厚さが設計中心値に対して-0.05mmのランクのスペーサリングを選択して積層する。この場合、スペーサリング66ののランク選択1回のみでも、10枚目の磁気ディスクの上面の積層高さずれを+0.05mmに抑えることができる。
【0045】
更に、スペーサリング66のランク選択を3回に増やした場合、図13Cに示すように、例えば、1枚目と2枚目の磁気ディスクの間、4枚目と5枚目の磁気ディスクの間、7枚目と8枚目の磁気ディスクの間に挿入するスペーサリング66を厚さ設計中心値に対して-0.02mmのランクのスペーサリングを選択することにより、10枚目の磁気ディスクの上面の積層高さずれを+0.04mmに抑えることができる。
上記のように、第7実施形態によれば、数回のみスペーサリングの厚さランクの選択を行い、他のスペーサリングは厚さ中心ランク、例えば、Bランクのスペーサリングを用いることにより、磁気ディスクの高さずれを低減することができるとともに、磁気ディスクの積層設備を簡略化し製造効率の向上を図ることが可能となる。
【0046】
以上のように、前述した実施形態に係るHDDによれば、フランジ65の高さずれ、および、磁気ディスク18の厚さのずれ、に応じて、最適な厚さのスペーサリングを選択し、積層配置している。複数枚の磁気ディスク18および磁気ディスクの枚数よりも1枚少ないスペーサリング66が、スピンドルモータ19のハブ64の外周に積層配置されている。複数枚のスペーサリングのうち、少なくとも1枚のスペーサリングは、他のスペーサリングと異なる厚さに形成されている。スペーサリング66の厚さは、最大のものと最小のものとの差が0.01mm以上、0.09mm以下に設定している。
これにより、前述した実施形態によれば、積層配置される磁気ディスクの高さずれを低減することが可能なディスク装置およびその製造方法を提供することができる。
【0047】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
上述した実施形態において、磁気ディスクの設置枚数は、10枚に限らず、11枚以上としてもよい。磁気ディスクの厚さは、0.635mmあるいは0.5mmに限らず、必要に応じて、種々変更可能である。同様に、磁気ディスクの直径は、96mmに限らず、例えば、95mmあるいは97mmとしてもよい。磁気ディスクの形成材料は、アルミニウムに限らず、ガラス等でもよい。スペーサリングの形成材料もアルミニウムに限らず、例えば、チタン、ステンレス、ガラス等でもよい。
筐体のベースのランプ設置面、アクチュエータの設置面、およびフランジの高さ測定、磁気ディスク厚の測定、スペーサリング厚の測定は、部品毎に事前に実施しておいてその測定値を使用しても良い。磁気ディスクの厚さは個々の厚さではなくロット平均値やカセットごとの平均値を用いてもよい。さらに、磁気ディスクの積層高さずれや、ランプ設置面、アクチュエータ設置面の高さずれに応じて、異なる高さのランプやアクチュエータを使用したり、ランプやアクチュエータの高さを調整してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…筺体、12…ベース、12a…底壁、12b…側壁、17…磁気ヘッド、
18…磁気ディスク、19…スピンドルモータ、22…アクチュエータアッセンブリ、
25…ランプロード機構、30…サスペンションアッセンブリ、32…アーム、
64…ハブ、65…フランジ、66、66(A)、66(B)、66(C)…スペーサリング、80…ランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C