(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190511
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】溶融ガラス供給装置、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 13/18 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
C03B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098870
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】板津 裕之
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕司
(57)【要約】
【課題】スリット状の流出口を有するノズルにおいて、溶融ガラスの失透の発生を抑えることを可能にした溶融ガラス供給装置、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法を提供する。
【解決手段】溶融ガラス供給装置11は、ノズル12と誘導加熱装置13とを備える。ノズル12は、溶融ガラスMGを流出する流出部12aを有する。ノズル12の流出部12aは、スリット状の流出口を有する。誘導加熱装置13は、ノズル12を誘導加熱する誘導加熱部14を有する。誘導加熱装置13の誘導加熱部14は、ノズル12の流出口の長さ方向に温度制御が可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを流出する流出部を有するノズルと、
前記ノズルを加熱する加熱部を有する加熱装置と、を備え、
前記ノズルの前記流出部は、スリット状の流出口を有し、
前記加熱装置は、前記流出口の長さ方向に温度制御が可能である、溶融ガラス供給装置。
【請求項2】
前記加熱装置が、前記ノズルを誘導加熱する誘導加熱部を有する誘導加熱装置である、請求項1に記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項3】
前記誘導加熱部は、前記流出口の長さ方向における前記流出部の両端部である第1端部及び第2端部の少なくとも一方を局所的に加熱する形状を有する、請求項2に記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項4】
前記誘導加熱装置は、前記第1端部を誘導加熱する第1誘導加熱部と、
前記第2端部を誘導加熱する第2誘導加熱部と、を備える、請求項3に記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項5】
前記誘導加熱部と前記流出部との間に耐火物を備える、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項6】
前記誘導加熱部は、前記流出部との間隔寸法が10mm以下となる部分を有する、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の溶融ガラス供給装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の溶融ガラス供給装置と、
前記溶融ガラス供給装置により供給された溶融ガラスからガラス物品を成形する成形装置と、を備える、ガラス物品の製造装置。
【請求項8】
前記成形装置は、前記溶融ガラスを圧延してガラス板を成形する一対の成形用ロールを備える、請求項7に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の溶融ガラス供給装置により供給された前記溶融ガラスからガラス物品を成形する成形工程を備える、ガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラス供給装置、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されるように、スリット状の流出口を有するノズルから供給される溶融ガラスからガラス板等のガラス物品を製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-088436号公報
【特許文献2】特開2017-095321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスリット状の流出口を有するノズルでは、流出口の長さ方向において異なる温度で溶融ガラスが流下する。溶融ガラスの温度は、例えば、流出口の長さ方向における中央部よりも端部で低くなる。そのため、例えば、ノズルの流出口の端部では、溶融ガラスの失透が発生し易い。
【0005】
本発明の目的は、スリット状の流出口を有するノズルにおいて、溶融ガラスの失透の発生を抑えることを可能にした溶融ガラス供給装置、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する溶融ガラス供給装置は、溶融ガラスを流出する流出部を有するノズルと、前記ノズルを加熱する加熱部を有する加熱装置と、を備え、前記ノズルの前記流出部は、スリット状の流出口を有し、前記加熱装置は、前記流出口の長さ方向に温度制御が可能である。この構成によれば、例えば、流出口の長さ方向における端部を加熱して流出口の長さ方向に温度制御をすることができ、流出口の端部における溶融ガラスの温度の低下を抑えることができる。これにより、溶融ガラスの失透の発生を抑えることができる。
【0007】
上記溶融ガラス供給装置において、前記加熱装置が、前記ノズルを誘導加熱する誘導加熱部を有する誘導加熱装置であってもよい。この構成によれば、スリット状の流出口を効率よく加熱することができる。
【0008】
上記溶融ガラス供給装置において、前記誘導加熱部は、前記流出口の長さ方向における前記流出部の両端部である第1端部及び第2端部の少なくとも一方を局所的に加熱する形状を有してもよい。この構成によれば、ノズルの流出部の上記端部を誘導加熱部により局所的に加熱することで、流出口の端部における溶融ガラスの温度の低下を抑えることができる。これにより、溶融ガラスの失透の発生を抑えることができる。
【0009】
上記溶融ガラス供給装置において、前記誘導加熱装置は、前記第1端部を誘導加熱する第1誘導加熱部と、前記第2端部を誘導加熱する第2誘導加熱部と、を備えてもよい。この構成によれば、ノズルの流出部の両端部をそれぞれ誘導加熱部により局所的に加熱することで、流出口の両端部における溶融ガラスの温度の低下を抑えることができる。
【0010】
上記溶融ガラス供給装置は、前記誘導加熱部と前記流出部との間に耐火物を備えてもよい。この構成によれば、例えば、ノズルの流出部の端部を耐火物により保温することができる。また、例えば、誘導加熱装置の誘導加熱部とノズルの流出部との間の間隔寸法を耐火物によって一定に保つことができる。
【0011】
上記溶融ガラス供給装置において、前記誘導加熱部は、前記流出部との間隔寸法が10mm以下となる部分を有してもよい。この構成によれば、誘導加熱部は、ノズルの流出部に近接した形状となるため、例えば、誘導加熱部を用いたノズルの加熱効率を高めることができる。
【0012】
ガラス物品の製造装置は、上記溶融ガラス供給装置と、前記溶融ガラス供給装置により供給された溶融ガラスからガラス物品を成形する成形装置と、を備える。
上記ガラス物品の製造装置において、前記成形装置は、前記溶融ガラスを圧延してガラス板を成形する一対の成形用ロールを備えてもよい。
【0013】
ガラス物品の製造方法は、上記溶融ガラス供給装置により供給された前記溶融ガラスからガラス物品を成形する成形工程を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スリット状の流出口を有するノズルにおいて、溶融ガラスの失透の発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における溶融ガラス供給装置を示す概略斜視図である。
【
図4】
図3の領域A1を拡大して示す断面図である。
【
図5】変更例の溶融ガラス供給装置を拡大して示す断面図である。
【
図6】変更例の溶融ガラス供給装置を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、溶融ガラス供給装置、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0017】
溶融ガラス供給装置は、ガラス物品を成形する設備の一部を構成する。本実施形態では、溶融ガラス供給装置をロールアウト成形法でガラス板を製造する用途に用いる場合を一例として説明する。
【0018】
<溶融ガラス供給装置の全体構成>
図1及び
図2に示すように、溶融ガラス供給装置11は、溶融ガラスMGが流通するノズル12と、ノズル12を誘導加熱する誘導加熱装置13とを備えている。溶融ガラス供給装置11は、図示を省略したフィーダーから溶融ガラスMGが流入されるように配置される。
【0019】
<ノズル12>
溶融ガラス供給装置11のノズル12は、溶融ガラスMGを流出する流出部12aを有している。ノズル12は、流出部12aよりも上流側となる上流部12bを有している。ノズル12の上流部12bは、溶融ガラスMGをノズル12に流入する流入管FPに接続される。
【0020】
図2及び
図3に示すように、溶融ガラス供給装置11におけるノズル12の流出部12aは、スリット状の流出口Hを有している。すなわち、流出口Hは、長さ方向と、長さ方向に直交する幅方向とを有している。図面では、流出口Hの長さ方向に沿った方向をX軸で示し、流出口Hの幅方向に沿った方向をY軸で示している。また、本実施形態の溶融ガラス供給装置11において、溶融ガラスMGが流下する方向は、Z軸に沿った鉛直方向である。ノズル12の流出口Hの最大長さ寸法は、例えば、ノズル12の流出口Hの最大幅寸法の1.5倍以上、50倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0021】
ノズル12の流出口Hは、流出口Hの長さ方向の両端となる第1端部流出口H1a及び第2端部流出口H1bと、第1端部流出口H1aと第2端部流出口H1bとの間に位置する中間流出口H2とを有している。
【0022】
図3には、第1端部流出口H1aの最大幅寸法を第1端部幅寸法W1、第2端部流出口H1bの最大幅寸法を第2端部幅寸法W2、及び中間流出口H2の最大幅寸法を中間幅寸法W3として示している。第1端部幅寸法W1及び第2端部幅寸法W2の少なくとも一方は、中間幅寸法W3よりも大きいことが好ましい。この場合、第1端部流出口H1a及び第2端部流出口H1bの少なくとも一方における溶融ガラスMGの温度低下を抑えることができる。本実施形態では、第1端部幅寸法W1及び第2端部幅寸法W2のいずれも中間幅寸法W3よりも大きい。
【0023】
ノズル12は、例えば、白金、白金合金等の金属材料から構成されている。ノズル12は、流出口Hの長さ方向が水平方向に沿うように配置される。ノズル12の流出口Hからは、溶融ガラスMGが鉛直下方に流下する。
【0024】
<誘導加熱装置13>
図1~
図3に示すように、溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13は、ノズル12を誘導加熱する誘導加熱部14を有している。誘導加熱装置13は、ノズル12の流出口Hの長さ方向に温度制御が可能である。本実施形態の誘導加熱装置13は、流出口Hの長さ方向における端部を加熱することで、流出口Hの長さ方向における中央部に対して端部の温度を制御することができる。
【0025】
誘導加熱部14は、ノズル12にうず電流を発生させる誘導加熱コイルである。本実施形態の誘導加熱装置13は、第1誘導加熱部14aと第2誘導加熱部14bとを有している。第1誘導加熱部14aは、流出口Hの長さ方向における流出部12aの両端部のうち、第1端部E1を局所的に加熱する形状を有している。第2誘導加熱部14bは、流出口Hの長さ方向における流出部12aの両端部のうち、第2端部E2を局所的に加熱する形状を有している。
【0026】
図4には、
図3の領域A1を拡大して示している。
図4に示す断面図は、溶融ガラスMGの流れ方向に直交する断面図である。
図4に示すように、第1誘導加熱部14aは、流出部12aの第1端部E1との間隔寸法Dが10mm以下となる部分を有することが好ましい。第1誘導加熱部14aと、流出部12aの第1端部E1との間隔寸法Dは、3mm以上であることが好ましい。
【0027】
第2誘導加熱部14bは、流出部12aの第2端部E2との間隔寸法が10mm以下となる部分を有することが好ましい。第2誘導加熱部14bと、流出部12aの第2端部E2との間隔寸法は、3mm以上であることが好ましい。
【0028】
図1に示すように、誘導加熱装置13は、誘導加熱部14に電力を供給する高周波電源15を備えている。誘導加熱装置13は、高周波電源15と第1誘導加熱部14aとを電気的に接続する第1導電部16を有している。誘導加熱装置13は、高周波電源15と第2誘導加熱部14bとを電気的に接続する第2導電部17を有している。第1導電部16及び第2導電部17は、例えば、それぞれ第1誘導加熱部14a及び第2誘導加熱部14bからノズル12の側方に延びるように配置することができる。
【0029】
第1誘導加熱部14a及び第1導電部16は、中空構造を有している。第1誘導加熱部14a及び第1導電部16は、中空部に冷却媒体を流通することで冷却可能に構成されている。第2誘導加熱部14b及び第2導電部17についても、中空構造を有している。第2誘導加熱部14b及び第2導電部17についても、中空部に冷却媒体を流通することで冷却可能に構成されている。第1誘導加熱部14a及び第1導電部16、並びに第2誘導加熱部14b及び第2導電部17は、例えば、銅系金属等の導電性材料から構成することができる。
【0030】
誘導加熱装置13は、温度測定部を備えていてもよい。温度測定部は、ノズル12の第1端部E1及び第2端部E2の少なくとも一方の温度を測定する。温度測定部としては、例えば、熱電対、放射温度計等が挙げられる。温度測定部は、サーモグラフィを備えていてもよい。
【0031】
誘導加熱装置13は、温度制御部を備えていてもよい。温度制御部は、ノズル12の第1端部E1及び第2端部E2の少なくとも一方の温度を制御する。温度制御部は、温度測定部で測定した温度測定結果に基づいて、例えば、高周波電源15の出力をフィードバック制御する。温度制御部は、例えば、プロセッサ、メモリ、ソフトウェア、画像表示装置等により構成することができる。
【0032】
<ノズル12の周囲構造>
図1~
図3に示すように、溶融ガラス供給装置11は、ノズル12を取り囲む筐体18を備えている。溶融ガラス供給装置11の筐体18は、上壁18a、下壁18b、上壁18aと下壁18bとの間に設けられる周壁18cとを有する。
【0033】
ノズル12の外面と筐体18の内面との間には、耐火物19が配置されている。耐火物19としては、例えば、セメント系耐火物、電鋳煉瓦、デンス焼成煉瓦等が挙げられる。電鋳煉瓦としては、例えば、ジルコニア系電鋳煉瓦、アルミナ系電鋳煉瓦、アルミナ・ジルコニア系電鋳煉瓦、アルミナ・ジルコニア・シリカ系電鋳煉瓦等が挙げられる。デンス焼成煉瓦としては、デンスジルコン煉瓦、デンスクロム煉瓦等が挙げられる。
【0034】
図4に示すように、上述した耐火物19は、誘導加熱装置13の誘導加熱部14と、ノズル12の流出部12aとの間にも配置されている。詳述すると、第1誘導加熱部14aと、流出部12aの第1端部E1との間には、耐火物19が配置されている。第2誘導加熱部14bと、流出部12aの第2端部E2との間には、耐火物19が配置されている。
【0035】
<ガラス物品の製造装置>
次に、ガラス物品の製造装置について説明する。
図1に示すように、ガラス物品の製造装置は、上述した溶融ガラス供給装置11と、溶融ガラス供給装置11により供給された溶融ガラスMGからガラス物品を成形する成形装置20とを備えている。本実施形態の成形装置20は、溶融ガラスMGからガラス板を成形する装置である。
【0036】
成形装置20は、ロールアウト成形法を用いてガラス板を成形する装置であり、一対の成形用ロールR1,R2を備えている。成形装置20は、一対の成形用ロールR1,R2により溶融ガラスMGを圧延して帯状のガラス板を成形する。ガラス物品の製造装置は、板ガラスを搬送する搬送装置、板ガラスを切断する切断装置等を備えていてもよい。
【0037】
<ガラス物品の製造方法、及び作用>
ガラス物品の製造方法は、上述した溶融ガラス供給装置11により供給された溶融ガラスMGからガラス物品を成形する成形工程を備えている。溶融ガラス供給装置11は、ノズル12の流出部12aにおけるスリット状の流出口Hから溶融ガラスMGを流出し、ノズル12の下方に配置された成形装置20の一対の成形用ロールR1,R2上に溶融ガラスMGを連続的に供給する。
【0038】
このとき、溶融ガラス供給装置11は、誘導加熱装置13を備えている。誘導加熱装置13の第1誘導加熱部14aは、流出部12aの第1端部E1を局所的に加熱する形状を有している。この構成によれば、ノズル12の流出部12aの第1端部E1を第1誘導加熱部14aにより局所的に加熱することで、第1端部流出口H1aにおける溶融ガラスMGの温度の低下を抑えることができる。これにより、第1端部流出口H1aにおける溶融ガラスMGの失透の発生を抑えることができる。
【0039】
また、誘導加熱装置13の第2誘導加熱部14bは、流出部12aの第2端部E2を局所的に加熱する形状を有している。この構成によれば、ノズル12の流出部12aの第2端部E2を第2誘導加熱部14bにより局所的に加熱することで、第2端部流出口H1bにおける溶融ガラスMGの温度の低下を抑えることができる。これにより、第2端部流出口H1bにおける溶融ガラスMGの失透の発生を抑えることができる。
【0040】
ガラス物品の製造方法で製造するガラス板としては、例えば、結晶性ガラス板が挙げられる。結晶性ガラスとしては、LAS(Li2O-Al2O3-SiO2)系結晶性ガラスが挙げられる。LAS系結晶性ガラスは、熱処理によりβ-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体が主結晶として析出するガラスである。すなわち、結晶性ガラス板を熱処理することで結晶化ガラス板を得ることができる。結晶化ガラス板は、例えば、調理器用トッププレート、厨房設備の天板等の装飾材、暖房器具の構成部材、防火窓等の耐熱性を必要とする用途に用いられる。
【0041】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)溶融ガラス供給装置11は、溶融ガラスMGを流出する流出部12aを有するノズル12と、ノズル12を加熱する誘導加熱部14を有する誘導加熱装置13とを備えている。誘導加熱装置13は、ノズル12の流出口Hの長さ方向に温度制御が可能である。この構成によれば、例えば、流出口Hの長さ方向における端部を加熱して流出口Hの長さ方向に温度制御することができ、流出口Hの端部における溶融ガラスMGの温度の低下を抑えることができる。これにより、溶融ガラスMGの失透の発生を抑えることができる。
【0042】
(2)本実施形態の溶融ガラス供給装置11は、ノズル12を誘導加熱する誘導加熱部14を有する誘導加熱装置13を備えている。この場合、スリット状の流出口Hを効率よく加熱することができる。
【0043】
(3)本実施形態の誘導加熱装置13は、例えば、第1誘導加熱部14aを有し、第1誘導加熱部14aは、ノズル12の第1端部E1を局所的に加熱する形状を有している。この場合、上述したように、流出口Hの両端部のうち、一端部である第1端部流出口H1aにおける溶融ガラスMGの温度を高めることができる。これにより、流出口Hの第1端部流出口H1aにおける溶融ガラスMGの温度の低下を抑えることができる。従って、スリット状の流出口Hを有するノズル12において、溶融ガラスMGの失透の発生を抑えることが可能となる。これにより、例えば、ガラス板等のガラス物品の歩留まりを向上させることができる。
【0044】
(4)溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13は、ノズル12の第1端部E1を誘導加熱する第1誘導加熱部14aと、ノズル12の第2端部E2を誘導加熱する第2誘導加熱部14bとを備えていることが好ましい。この場合、ノズル12の流出部12aの第1端部E1及び第2端部E2を局所的に加熱することで、流出口Hの両端部である第1端部流出口H1a及び第2端部流出口H1bにおける溶融ガラスMGの温度の低下を抑えることができる。従って、スリット状の流出口Hを有するノズル12において、溶融ガラスMGの失透の発生をより抑えることが可能となる。
【0045】
(5)溶融ガラス供給装置11は、誘導加熱部14と流出部12aとの間に耐火物19を備えていることが好ましい。この場合、例えば、ノズル12の流出部12aの端部を耐火物19により保温することができる。また、例えば、誘導加熱装置13の誘導加熱部14とノズル12の流出部12aとの間の間隔寸法を耐火物19によって一定に保つことができる。
【0046】
(6)溶融ガラス供給装置11の誘導加熱部14は、流出部12aとの間隔寸法が10mm以下となる形状を有することが好ましい。この場合、誘導加熱部14は、流出部12aに近接した形状となるため、例えば、誘導加熱部14を用いたノズル12の加熱効率を高めることができる。従って、溶融ガラスMGの供給において、例えば、エネルギー消費を抑えることができる。
【0047】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13において、第1誘導加熱部14a及び第2誘導加熱部14bのいずれか一方を省略することもできる。
・上記実施形態の誘導加熱装置13における誘導加熱部14の断面形状は、円形状であるが、例えば、楕円形状、多角形状等に変更することもできる。例えば、
図5に示す誘導加熱部14は、断面形状が四角形状の角パイプにより構成されている。
【0049】
・溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13において、第1誘導加熱部14a及び第2誘導加熱部14bの少なくとも一方は、水平方向に沿って複数に分割されていてもよい。例えば、
図6に示す誘導加熱部14は、水平方向に沿って二分割された形状を有している。
【0050】
・溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13において、第1誘導加熱部14a及び第2誘導加熱部14bの少なくとも一方を溶融ガラスMGの流れ方向に沿って複数段となるように配置することもできる。
【0051】
・溶融ガラス供給装置11のノズル12は、ノズル12内の流路が鉛直方向に沿って溶融ガラスMGを流下するように配置されているが、ノズル12内の流路が鉛直方向に対して傾斜して溶融ガラスMGを流下するように配置されていてもよい。
【0052】
・溶融ガラス供給装置11において、誘導加熱装置13の誘導加熱部14と、ノズル12の流出部12aとの間に配置される耐火物19を省略することもできる。
・溶融ガラス供給装置11において、ノズル12の外面と筐体18の内面との間に配置される耐火物19の少なくとも一部を省略することもできる。例えば、溶融ガラス供給装置11において、誘導加熱装置13の誘導加熱部14と、ノズル12の流出部12aとの間のみに耐火物19を配置することもできる。
【0053】
・溶融ガラス供給装置11において、筐体18を省略することもできる。
・上記実施形態の溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13を、誘導加熱以外の加熱方法を用いた加熱装置に変更することもできる。誘導加熱以外の加熱方法を用いた加熱装置としては、例えば、抵抗加熱を用いた加熱装置等が挙げられる。
【0054】
・上記実施形態の溶融ガラス供給装置11の誘導加熱装置13は、ノズル12の流出口Hの端部を加熱するように構成されているが、これに限定されない。誘導加熱装置13をノズル12の流出口Hの長さ方向において、温度が低下し易く失透の発生し易い箇所を加熱するように変更することもできる。
【0055】
・溶融ガラス供給装置11をロールアウト成形法以外の成形法で成形されるガラス板の製造に適用してもよい。例えば、上記成形装置20を溶融ガラス供給装置11のノズル12から溶融ガラスMGが流下される板状の成形型と、成形型上で成形されたガラス板を引き取る引取装置とを備える成形装置に変更してもよい。
【0056】
・溶融ガラス供給装置11を結晶性ガラス以外のガラス板の製造に用いてもよい。結晶性ガラス板以外のガラス板としては、例えば、無アルカリガラス、アルカリ成分を含むガラスが挙げられる。また、溶融ガラス供給装置11を、板ガラス以外のガラス物品の製造に用いてもよい。板ガラス以外のガラス物品としては、例えば、ガラスゴブ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
11…溶融ガラス供給装置
12…ノズル
12a…流出部
13…誘導加熱装置
14…誘導加熱部
14a…第1誘導加熱部
14b…第2誘導加熱部
19…耐火物
20…成形装置
D…間隔寸法
E1…第1端部
E2…第2端部
H…流出口
MG…溶融ガラス
R1,R2…成形用ロール