(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190537
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】除電装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/00 20060101AFI20221219BHJP
B65H 7/00 20060101ALI20221219BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221219BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B65H5/00 A
B65H7/00
G03G21/00 530
B41J29/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098907
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 忠尚
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
3F048
3F101
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061CP04
2H270LA28
2H270LC02
2H270LC09
2H270LC10
2H270LC14
2H270LC19
2H270LC20
2H270SA18
2H270SC14
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA09
3F048CC03
3F048DA09
3F048DB11
3F048EA19
3F048EA20
3F048EB40
3F101AA09
3F101LA01
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】コストアップを招くことなく、かつメンテナンス間隔を長くすることが可能な除電装置を提供する。
【解決手段】除電装置は、搬送されてくるシートを除電する除電部と、除電部に搬送されてくるシートの情報を取得し、かつ除電部を制御する制御部と、を備えている。そして、制御部は、シートの情報が所定のシート種別である場合に除電部を稼働し、シートの情報が所定のシート種別よりも帯電し難い他のシート種別である場合に除電部を非稼動にする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくるシートを除電する除電部と、
前記除電部に搬送されてくるシートの情報を取得し、かつ前記除電部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記除電部にシートが搬送されてくる際、前記シートの情報が第1情報である場合に前記除電部を稼働し、前記シートの情報が前記第1情報よりもシートが帯電し難い第2情報である場合に前記除電部を非稼動にする、
ことを特徴とする除電装置。
【請求項2】
シートの搬送方向において前記除電部の上流側に配置され、シートの有無を検出するシート検出部を備え、
前記制御部は、前記除電部を稼働する場合、前記シート検出部がシートを検出したことに応じて前記除電部を稼働する、
ことを特徴とする請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
環境情報を検出する環境情報検出部を備え、
前記制御部は、前記シートの情報が前記第1情報である場合であっても、前記検出された環境情報に応じて前記除電部を非稼働にする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の除電装置。
【請求項4】
前記環境情報検出部は、前記環境情報として湿度を検出する湿度センサであり、
前記制御部は、前記シートの情報が前記第1情報である場合であっても、前記検出された湿度が設定閾値よりも大きい際に前記除電部を非稼働にする、
ことを特徴とする請求項3に記載の除電装置。
【請求項5】
前記除電部は、イオンを生成するイオン生成ユニットである、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の除電装置。
【請求項6】
搬送されてくるシートを除電する除電部と、
環境情報を検出する環境情報検出部と、
前記除電部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記除電部にシートが搬送されてくる際、前記検出した環境情報が第1環境情報である場合に前記除電部を稼働し、前記検出した環境情報が前記第1環境情報よりもシートが帯電し難い第2環境情報である場合に前記除電部を非稼動にする、
ことを特徴とする除電装置。
【請求項7】
シートを搬送するシート搬送部と、
シートに画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の除電装置と、を備え、
前記除電部は、前記シート搬送部により搬送され、前記画像形成部により画像が形成されたシートを除電する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成部により画像が形成されたシートを排出する排出部と、
前記排出部により排出されたシートを積載する積載部と、を備え、
前記除電部は、シート搬送方向における前記排出部の下流側に配置され、前記排出部により排出されるシートを除電する、
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
搬送されてくるシートを除電する除電部を備え、
前記除電部は、前記除電部に搬送されてくるシートが第1シートである場合に稼働され、前記除電部に搬送されてくるシートが前記第1シートよりも帯電し難い第2シートである場合に非稼動にされる、
ことを特徴とする除電装置。
【請求項10】
搬送されてくるシートを除電する除電部を備え、
前記除電部は、前記除電部にシートが搬送されてくる際、当該装置が置かれた環境が第1環境である場合に稼働され、前記環境が前記第1環境よりも帯電し難い第2環境である場合に非稼動にされる、
ことを特徴とする除電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されてくるシートを除電する除電装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複写機、プリンタ、複合機等の画像形成装置で使用するシートには、紙、フィルム、OHPシート、PETシートを基材とした合成紙等、様々な種類がある。これらのシートは、使用する材料や製作工程によっても性質が異なるため、画像形成装置の内部で搬送されたり、画像が形成されたりする過程で帯電する程度も異なる。シートの帯電量が大きいと、例えばシートを排出して排出トレイ等に積載する際に、シート同士が綺麗に整列されない等の問題が発生する。このような問題を回避するため、シートの帯電量を所定の帯電量以下に除電することが望ましい。
【0003】
そのため、画像形成装置に、静電気を除電する除電装置と、シートの帯電量を検出する静電気センサとを設け、静電気センサの検出に基づいて除電装置で除電を行うものが提案されている(特許文献1参照)。また、除電装置としてイオンを発生させるイオン生成ユニットを備え、シートに画像が形成されたときの画像形成情報や設定された紙種情報に基づいて、イオン生成ユニットで発生させるイオン量を制御するものも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-001418号公報
【特許文献2】特開2014-206690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、除電装置を静電気センサの検出に基づき制御を行うため、静電気センサを設ける必要があり、その分、装置の構成が複雑化し、コストアップしてしまうという問題がある。また、上記特許文献2のものは、画像形成情報や紙種情報に基づいてイオン生成ユニットを制御しているが、イオン生成ユニットを稼働し続けている。即ち、シートの除電が必要ないような、例えばシートが一定値以上の坪量である普通紙を使用する場合や、シートが比較的帯電し難い多湿環境で画像形成装置が使用される場合でも、イオン生成ユニットを稼働し続けている。イオン生成ユニットは、高電圧を印加する電極間のコロナ放電により空気中の分子をイオン化させる原理で稼働する。このため、イオン生成ユニットを稼働し続けると、電極の消費により放電電極の寿命は短くなり、また、電極への酸化被膜の形成やごみの付着による性能劣化も進み易くなるため、メンテナンス間隔が短くなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、コストアップを招くことなく、かつメンテナンス間隔を長くすることが可能な除電装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、搬送されてくるシートを除電する除電部と、前記除電部に搬送されてくるシートの情報を取得し、かつ前記除電部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記除電部にシートが搬送されてくる際、前記シートの情報が第1情報である場合に前記除電部を稼働し、前記シートの情報が前記第1情報よりもシートが帯電し難い第2情報である場合に前記除電部を非稼動にする、ことを特徴とする除電装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、搬送されてくるシートを除電する除電部と、環境情報を検出する環境情報検出部と、前記除電部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記除電部にシートが搬送されてくる際、前記検出した環境情報が第1環境情報である場合に前記除電部を稼働し、前記検出した環境情報が前記第1環境情報よりもシートが帯電し難い第2環境情報である場合に前記除電部を非稼動にする、ことを特徴とする除電装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、搬送されてくるシートを除電する除電部を備え、前記除電部は、前記除電部に搬送されてくるシートが第1シートである場合に稼働され、前記除電部に搬送されてくるシートが前記第1シートよりも帯電し難い第2シートである場合に非稼動にされる、ことを特徴とする除電装置である。
【0010】
そして、本発明の一態様は、搬送されてくるシートを除電する除電部を備え、前記除電部は、前記除電部にシートが搬送されてくる際、当該装置が置かれた環境が第1環境である場合に稼働され、前記環境が前記第1環境よりも帯電し難い第2環境である場合に非稼動にされる、ことを特徴とする除電装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、コストアップを招くことなく、メンテナンス間隔を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る画像形成装置を示す概略図。
【
図2】本実施の形態に係る除電装置の構成を示すブロック図。
【
図3】第1の実施の形態に係る除電部の稼動制御を示すフローチャート。
【
図4】第2の実施の形態に係る除電部の稼動制御を示すフローチャート。
【
図5】シート情報と除電部の稼動・非稼動との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
[画像形成装置の構成]
以下、本発明を実施するための第1の実施の形態について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1に示すように、カラーレーザプリンタである画像形成装置100は、装置本体101を備えている。この装置本体101には、大まかに、シートSに画像を形成する画像形成部102と、画像形成部102にシートSを給送し、装置本体101の外部に排出するまで搬送するシート搬送部103と、除電装置30(
図2参照)とが設けられている。
【0014】
画像形成部102は、略水平方向に配置され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナー画像を形成する4つのプロセスステーション4Y,4M,4C,4Kを備えている。また、画像形成部102は、スキャナユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。
【0015】
ここでプロセスステーション4Y,4M,4C,4Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー像を担持すると共に不図示のステッピングモータにより駆動される像担持体である感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kを備えている。また、プロセスステーション4Y,4M,4C,4Kは帯電ローラ3Y,3M,3C,3K、現像部5Y,5M,5C,5K、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kを清掃するクリーナ部6Y,6M,6C,6Kを備えている。そして、これら帯電ローラ3Y,3M,3C,3K、現像部5Y,5M,5C,5K、クリーナ部6Y,6M,6C,6K等は感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの周囲に回転方向に沿ってそれぞれ配されている。
【0016】
また、画像形成部102は、中間転写ベルト7と、1次転写ローラ8Y,8M,8C,8Kと、2次転写外ローラ11aと、定着装置12とを備えている。中間転写ベルト7は、感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kの外周速度と同期して矢印に示す各プロセスステーション4Y,4M,4C,4Kの配列方向に沿って回転駆動される。この中間転写ベルト7は、駆動ローラ9a、2次転写内ローラ9b及び不図示のばねの付勢力によって中間転写ベルト7に適度な張力を与えるテンションローラ9cに張架されている。
【0017】
また、中間転写ベルト7は、内側には4個の、それぞれ感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kと共に中間転写ベルト7を挟持し、1次転写部を構成する1次転写ローラ8Y,8M,8C,8Kが配されている。なお、これら1次転写ローラ8Y,8M,8C,8Kは不図示の転写バイアス用電源に接続されている。また、2次転写内ローラ9bに対向するように2次転写外ローラ11aが配置されて、2次転写部11を構成している。この2次転写外ローラ11aは中間転写ベルト7の最下方の表面に当接すると共に、レジストレーションローラ対18により搬送されたシートSを中間転写ベルト7と共に挟持搬送する。
【0018】
定着装置12は中間転写ベルト7を介してシート上に形成されたトナー画像をシートSに定着させるものであり、シートSを加熱する定着ローラ13と、シートを定着ローラ13に圧接させる加圧ローラ14とを備えている。定着ローラ13は中空状に形成され、内部には不図示のヒータが内蔵されている。
【0019】
一方、画像形成装置100は、シートSを給送するシート給送部104と、シート給送部104により給送されたシートを搬送するシート搬送部103とを備えている。シート給送部104は、プリンタ本体下部に設けられ、シートを収納する給紙カセット15a,15b,15c,15dを備えている。また、シート給送部104は、給紙カセット15a,15b,15c,15dに収納されたシートSを給送するピックアップローラ17a,17b,17c,17dを備えている。
【0020】
シート搬送部103は、各ピックアップローラ17a,17b,17c,17dから給送されたシートSを搬送する搬送ローラ対20a,20b,20c,20dと、レジストレーション前ローラ対19と、レジストレーションローラ対18とを備えている。また、シート搬送部103は、定着装置12により画像が定着されたシートSを搬送して画像形成装置100の外部にある積載部としてのスタックトレイ24に排出する排出部としての排出ローラ対21を備えている。さらに、シート搬送部103は、再搬送部105を備えている。再搬送部105は、反転ローラ対22a,22bと、再搬送ローラ対23a,23b,23c,23dと、を備えている。
【0021】
除電装置30は、
図1及び
図2に示すように、排出ローラ対21のシート搬送方向の下流側に、シート検出部としてのシートの有無を検出するシート検出センサ28と、排出ローラ対21により搬送されてくるシートSを除電する除電部27と、を備えている。除電部27は、稼動されるとイオンを発生するイオン生成ユニットで構成され、矢印Dで示すようにスタックトレイ24に排出されて積載されるシートSに向けてイオンを照射する。
【0022】
また、除電装置30は、
図2に示すように、除電部27を制御可能であり、特に除電部27の稼働と非稼働とを制御する制御部120を備えている。この制御部120は、演算部としてのCPU120aと、記憶部としてのメモリ120bとを有している。また、制御部120は、操作パネル131から、或いは外部インターフェース132を介して不図示のコンピュータから、ユーザにより入力されたコピーや印刷のジョブを受付ける。このジョブにはシート種別やサイズに関する情報が含まれており、その中から少なくともシート種別に関する情報を取得し、メモリ120bにシート情報として格納する。なお、シート種別の情報は、給紙カセット15a~15dに関連付けられて予め設定されており、ジョブに含まれるシート情報として、何れの給紙カセットのシートを使用するかの情報であってもよい。
【0023】
また、この制御部120は、環境情報検出部としての湿度センサ121に電気的に接続され、湿度センサ121からの信号に基づき画像形成装置100(除電装置30)の環境情報の値として湿度を信号として受信する。なお、湿度センサ121は、除電装置30が配置された部位の湿度を検出するよりも、シートSがおかれる環境の湿度を検出する位置に配置されることが好ましいため、装置本体101の内部に配置されることが好ましい。
【0024】
[画像形成装置の画像形成動作]
次に、画像形成装置100の画像形成動作について説明する。不図示のコンピュータ等から画像信号がスキャナユニット1Y,1M,1C,1Kに入力されると、スキャナユニット1Y,1M,1C,1Kから画像信号に対応したレーザ光が各プロセスステーション4Y,4M,4C,4Kの感光体ドラム上に照射される。このとき感光体ドラム2Y,2M,2C,2Kは、帯電ローラ3Y,3M,3C,3Kにより表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、スキャナユニット1Y,1M,1C,1Kからレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。
【0025】
この後、この静電潜像を現像部5Y,5M,5C,5Kにより現像し、各プロセスステーション4Y,4M,4C,4Kの感光体ドラム上にイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー像を形成する。そして、4色のトナー像を1次転写ローラ8Y,8M,8C,8Kに印加した1次転写バイアスによって中間転写ベルト上に順次転写することにより、中間転写ベルト上にフルカラートナー像が形成される。なお、トナー像転写後、感光体ドラム表面に残ったトナーは、クリーナ部6Y,6M,6C,6Kによって除去される。
【0026】
また、このトナー画像形成動作に並行して給紙カセット15a~15dのうちの制御部120で選択された給紙カセットに収容されたシートSは、その給紙カセットに対応するピックアップローラ17により給送が開始される。その給送されたシートSは、シート搬送部103における搬送ローラ対20a~20d及びレジストレーション前ローラ対19によってレジストレーションローラ対18に搬送され、斜行が補正される。この後、シートSは、レジストレーションローラ対18によりタイミングを合わされた後、2次転写部11に搬送される。そして、2次転写部11において、2次転写外ローラ11aに正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに、中間転写ベルト7上のフルカラートナー像が2次転写される。なお、中間転写ベルト7上の残トナーはクリーナ容器10に回収される。
【0027】
トナー像が転写された後、シートSは定着装置12に搬送され、定着ローラ13と加圧ローラ14とによって加熱、加圧されて表面にトナー像が定着される。この後、フルカラートナー像が定着されたシートSは排出ローラ対21によってスタックトレイ24に向けて排出される。なお、シートSの両面に画像を形成する場合には、片面に画像が形成されたシートSを再搬送部105の反転ローラ対22bによりシート搬送方向及び表裏を反転する。そして、再搬送ローラ対23a~23dにより、レジストレーションローラ対18に搬送する。その後、このレジストレーションローラ対18によって2次転写部11に搬送し、裏面である第2面にトナー像を転写する。そして、第2面にトナー像が転写されたシートSは定着装置12によりトナー像が定着された後、排出ローラ対21によってスタックトレイ24に排出される。なお、シートSに画像を定着した後、表面と裏面とを入れ替えてスタックトレイ24に排出する場合には、反転ローラ対22aによってシートSのシート搬送方向及び表裏を反転し、排出ローラ対21から排出する。
【0028】
[除電部の稼動制御]
ついで、本第1の実施の形態における除電部の稼動制御について
図1を参照しつつ
図2を用いて説明する。まず、画像形成装置100における画像形成の過程においてシートSが帯電する理由を説明する。上述の2次転写部11において、シートSに転写される可視画像を形成するトナーは負帯電している。一方、2次転写外ローラ11aは、図示しない転写高圧電源から高圧電圧が印加されているため、2次転写部11でシートSは正に帯電し、トナーがトナー画像としてシートSに転写される。この転写プロセスにより、シートSは帯電する。なお、ここではトナーが負帯電であるものとして説明したが、電子写真プロセスによっては異なる帯電状態を利用するものがある。しかし、シートSの帯電とトナーの帯電とを逆帯電としても、クーロン力を利用してシートSにトナー画像を転写することに関して変わりはなく、転写プロセスにおいてシートSは帯電する。また、上記転写プロセス以外でも、給紙カセット15a~15dから搬送されるときのシート同士の摺擦や剥離、また、上述の搬送動作中でのシートSと搬送路の部材との摩擦や剥離、或いはシートSと各々の搬送ローラとの摺擦や剥離でもシートSは帯電する。
【0029】
このように、シートSは、画像形成装置100で搬送されたり、トナー画像が転写されたりする際に帯電する。シートが大きく帯電すると、特にスタックトレイ24での不整合が発生するため、シートを除電する必要がある。本第1の実施の形態における除電装置30は、除電部27からイオンを発生させることで、帯電したシートSの電荷を中和させる機能を持つため、帯電したシートを除電する効果がある。以下に、その除電装置30の除電部27の稼動制御について説明する。
【0030】
まず、ユーザは、画像形成装置100を使用する際、サイズや紙種等のシートの情報を、給紙カセット15a~15dに関連付けて、操作パネル131或いは不図示のコンピュータから外部インターフェース132を介してメモリ120bに格納する。制御部120のCPU120aは、
図3に示すように除電部27の稼動制御を開始し、ユーザが操作パネル131或いは外部インターフェースを介して画像形成装置100に印刷やコピーの印刷ジョブを入力したことを受付ける(S1)。続いてCPU120aは、上述のようにメモリ120bに設定されたシート情報のうち、例えば印刷ジョブにより指定された給紙カセット15a~15dの情報から、シート種別の情報を取得する(S2)。
【0031】
ついで、上記取得したシート種別の情報が、所定のシート種別(第1情報)であるか否かを判定する(S3)。なお、この所定のシート種別とは、他の種別(第2情報)よりも帯電し易い種別であり、例えば普通紙のうちの坪量が所定量よりも大きいもの、コート紙のうちの坪量が所定量よりも大きいもの、合成紙、等である。
【0032】
ここで、一般的に、PETなどのプラスチック素材を使用したり、表面に加工をしたりしているシートは帯電し易い。つまり合成紙と呼ばれるアルミ蒸着紙や耐水紙と呼ばれるシートである。これらの合成紙のシートは、パルプで生成された普通紙やコート紙と比べて電気抵抗率が高い。また、普通紙やコート紙であっても、坪量によって帯電のし易さは異なる。一般的に薄紙になるほど電気抵抗率は上がる傾向があり、薄紙になるほど帯電し易い。
【0033】
従って、取得したシート種別の情報が、所定のシート種別(第1シート)である場合は(S3のYES)、まず、シートSの通紙(搬送)を開始する(S5)。その後、シートSが定着装置12を通過して、シートSの先端がシート検出センサ28に到達すると、シート検出センサ28がONされる(S6)。
【0034】
そして、制御部120は、シート検出センサ28がONされると、除電部27によりイオンの生成(出力)を開始し、イオンを排出ローラ対21から排出されるシートSに向けて照射する(S7)。換言すると、排紙口に配置されたシート検出センサ28にシートSの先端が到達したタイミングで、除電部27からイオンの放出が開始される。その後、次のシートSに画像形成を行う印刷ジョブ(以下、単に「次の印刷ジョブ」という)があるか否かを判定し(S8)、次の印刷ジョブがある場合には(S8のYES)、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S9)、ステップS3に戻る。また、次の印刷ジョブがない場合には(S8のNO)、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S10)、本制御を終了する。
【0035】
一方、ステップS3において、取得したシート種別の情報が、所定のシート種別でない場合(第1シートより帯電し難い第2シートである場合)は(S3のNO)、単にシートSの通紙(搬送)を行う(S4)。つまり、このシートSが帯電し難い(帯電量が低い)ものであるので、除電部27を非稼動のままにする。その後は同様に、次の印刷ジョブがあるか否かを判定し(S8)、次の印刷ジョブがある場合には(S8のYES)、例えば稼動してから所定時間が経過したことに基づき、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S9)、ステップS3に戻る。また、次の印刷ジョブがない場合には(S8のNO)、同様に例えば稼動してから所定時間が経過したことに基づき、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S10)、本制御を終了する。
【0036】
以上説明したように、本第1の実施の形態においては、除電が必要なシートSに対しては除電部27を稼動することができ、特にスタックトレイ24に排出されるシートSが不整合となることの低減を図ることができる。一方、除電が不要なシートSに対しては除電部27を非稼動にすることができ、除電部27の寿命を長くしたり、性能劣化を低減したりすることができ、メンテンナス間隔を長くすることができる。このため、除電部27の長寿命化と、除電性能の両立が可能にし、除電部27が長寿命化するため、ランニングコストも低減できる。そして、静電気センサのような高価で複雑な構成を用いることなく、シート情報(シート種別)に応じて除電部27の稼動と非稼動とを制御できるので、コストアップを招くことを防止できる。
【0037】
また、シート検出センサ28を設けて、除電部27を稼働する場合には、シート検出センサ28によってシートSを検出したことに応じて除電部27を稼働する。これにより、シートSが除電部27に搬送されてきたときだけ除電部27を稼働することができ、除電部27の長寿命化を図ることができる。
【0038】
また、ユーザから印刷ジョブが送られる度に、上述の制御を行うことで、画像形成装置100において印刷ジョブが複数同時に実行されても、各印刷ジョブにおいて適切な除電部27の稼働と非稼働とを選択できる。従って、除電部27を不要に稼働することなく、各印刷ジョブを実行することができる。
【0039】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について
図4及び
図5を用いて説明する。なお、本第2の実施の形態の説明においては、上記第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
シートSは、シート種別や坪量により異なった電気抵抗率を持ち、シートの電気抵抗率は、シートの含有水分量によっても変動するので、シートの帯電量は湿度の影響によって変化する。即ち、シートの電気抵抗率は、低湿であるほど大きくなるため、低湿環境であるほどシートSの帯電量が大きくなりやすい。そこで、本第2の実施の形態では、シート種別の情報だけでなく、画像形成装置100(除電装置30)が置かれた湿度の情報も用いることで、さらに適切に除電部27の稼働と非稼働とを制御するものである。
【0041】
詳細には、
図4に示すように、制御部120のCPU120aは、除電部27の稼動制御を開始し、ユーザが操作パネル131或いは外部インターフェースを介して画像形成装置100に印刷やコピーの印刷ジョブを入力したことを受付ける(S1)。続いてCPU120aは、上述のようにメモリ120bに設定されたシート情報のうち、例えば印刷ジョブにより指定された給紙カセット15a~15dの情報から、シート種別の情報を取得する(S2)。
【0042】
ついで、上記取得したシート種別の情報が、所定のシート種別(第1情報)であるか否かを判定する(S3)。本第2の実施の形態において、所定のシート種別は、
図5に示す例えば普通紙A、コート紙A、合成紙であり、それ以外の所定のシート種別とは別のシート種別(第2情報)は、例えば普通紙B、コート紙Bである。なお、普通紙Aは、普通紙の中で坪量がM
1[g/m
2](例えば60[g/m
2])以下のものであり、反対に、普通紙Bは、普通紙の中で坪量がM
1[g/m
2]よりも大きいものである。また、コート紙Aは、コート紙の中で坪量がM
2[g/m
2]以下のものであり、反対に、コート紙Bは、コート紙の中で坪量がM
2[g/m
2]よりも大きいものである。
【0043】
上述したように合成紙は、普通紙やコート紙に比べて電気抵抗率が高くて帯電し易いため、所定のシート種別である。また、普通紙で坪量がM1[g/m2]以下の普通紙Aと、コート紙で坪量がM2[g/m2]以下のコート紙Aとは、薄紙であり、電気抵抗率が高くて帯電し易いため、所定のシート種別である。反対に、普通紙で坪量がM1[g/m2]より大きい普通紙Bと、コート紙で坪量がM2[g/m2]より大きいコート紙Bとは、薄紙ではなく、電気抵抗率が低くて帯電し難いため、所定のシート種別とは別のシート種別である。
【0044】
上記ステップS2で取得したシート種別の情報が、所定のシート種別(第1シート)である場合は(S3のYES)、ステップ11に進む。すると、シート種別が例えば普通紙A又はコート紙Aで、かつ湿度センサ121により検出された湿度が設定閾値H[%](例えば20[%])以下であるか否かを判定する(S11)。なお、環境情報としての湿度が設定閾値以下である場合は、環境情報が第1環境情報であり、環境情報としての湿度が設定閾値よりも大きい場合は、環境情報が第1環境情報よりも停電し難い第2環境情報であることになる。
【0045】
具体的には、高湿であれば、シートの通紙や積載に対して、画像形成装置100の実使用上課題となるほどの帯電量にならないため、普通紙Aやコート紙Aの場合は、湿度に応じて適切に除電装置の稼働と非稼働とを制御する。普通紙Aやコート紙Aの場合、湿度が設定閾値H[%]以下であれば帯電し易く、湿度が設定閾値H[%]より大きければ帯電し難く、実使用上課題となるほどの帯電量にならない。
【0046】
そこで、シート種別が合成紙である場合、或いは、普通紙A又はコート紙Aで湿度が設定閾値H以下である場合は(S11のYES)、まず、シートSの通紙(搬送)を開始する(S5)。その後、シートSが定着装置12を通過して、シートSの先端がシート検出センサ28に到達すると、シート検出センサ28がONされる(S6)。
【0047】
そして、制御部120は、シート検出センサ28がONされると、除電部27によりイオンの生成(出力)を開始し、イオンを排出ローラ対21から排出されるシートSに向けて照射する(S7)。換言すると、排紙口に配置されたシート検出センサ28にシートSの先端が到達したタイミングで、除電部27からイオンの放出が開始される。その後、次の印刷ジョブがあるか否かを判定し(S8)、次の印刷ジョブがある場合には(S8のYES)、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S9)、ステップS3に戻る。また、次の印刷ジョブがない場合には(S8のNO)、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S10)、本制御を終了する。
【0048】
一方、ステップS3において、取得したシート種別の情報が、所定のシート種別でない場合、つまり普通紙B又はコート紙B(第2シート)である場合は(S3のNO)、単にシートSの通紙(搬送)を行う(S4)。また、取得したシート種別の情報が、所定のシート種別であっても(S3のYES)、シート種別が合成紙でない場合、或いは、普通紙A又はコート紙Aで湿度が設定閾値H以下でない場合は(S11のNO)、単にシートSの通紙(搬送)を行う(S4)。即ち、このシートSが帯電し難い(帯電量が低い)ものであるので、除電部27を非稼動のままにする。その後は同様に、次の印刷ジョブがあるか否かを判定し(S8)、次の印刷ジョブがある場合には(S8のYES)、例えば稼動してから所定時間が経過したことに基づき、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S9)、ステップS3に戻る。また、次の印刷ジョブがない場合には(S8のNO)、同様に例えば稼動してから所定時間が経過したことに基づき、除電部27のイオンの生成(出力)を停止し(S10)、本制御を終了する。
【0049】
以上説明したように、本第2の実施の形態においては、シート種別だけでなく、環境情報である湿度にも応じて、除電が必要なシートSに対しては除電部27を稼動する。これにより、シートSが帯電し易いシートであっても、特にスタックトレイ24に排出されるシートSが不整合となることの低減を図ることができる。一方、シート種別だけでなく、環境情報である湿度にも応じて、除電が不要なシートSに対しては除電部27を非稼動にする。これにより、除電部27の寿命を長くしたり、性能劣化を低減したりすることができ、メンテンナス間隔を長くすることができる。このため、シートの帯電量が大きくなる条件下のみ除電部27を稼働させ、除電部27の長寿命化と、除電性能の両立を可能にし、除電部27が長寿命化するため、ランニングコストも低減できる。そして、静電気センサのような高価で複雑な構成を用いることなく、シート情報(シート種別)に応じて除電部27の稼動と非稼動とを制御できるので、簡易な構成でコストアップを招くことを防止できる。
【0050】
なお、これ以外の第2の実施の形態における構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるの、その説明を省略する。
【0051】
[他の実施の形態の可能性]
なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態においては、除電部27を排出ローラ対21のシート搬送方向の下流側で、所謂排出口の付近に配置したものを説明した。しかしながら、これに限らず、画像形成装置100におけるシートを搬送する搬送路に対してイオンを照射できるような位置であれば、除電部をどのような位置に配置してもよい。特に、シート給送部104から給送されるシートや、シート搬送部103を搬送されるシートを除電することで、搬送路を形成するガイドとの静電気による貼り付きを低減し、紙詰まりの低減を図ることができる。また、このように除電部を画像形成装置100の内部に配置する場合、除電部のシート搬送方向の上流側にシート検出センサを配置し、そのセンサの信号をトリガーとして除電部の稼働と非稼動とを制御することが考えられる。これにより、除電部の稼働時間を必要な時間のみにすることができ、長寿命化を図ることができる。
【0052】
また、本第1及び第2の実施の形態においては、画像形成装置100において除電部27を1箇所だけに配置したものを説明したが、これに限らず、複数箇所に配置しても構わない。
【0053】
また、本第1及び第2の実施の形態においては、画像形成装置100が画像を形成したシートSをスタックトレイ24に排出して積載するものを説明した。しかしながら、これに限らず、画像形成装置100のシート搬送方向の下流側に、シートSに対して処理を施す、所謂フィニッシャ、製本装置、閉じ装置、穴開け装置等のシート処理装置を配置したものでもよい。この場合、除電部は、シート処理装置の搬送路に対して、或いはシート処理装置の排出口に対して設けることが考えられる。そして、このようなシート処理装置に除電装置を備える場合、シート処理装置に制御部を備えず、画像形成装置100の制御部120によって、シート処理装置に配された除電部の稼動と非稼動とを制御するようにしてもよい。要するに、除電装置30として制御部を必ずしも備えてなくても構わない。
【0054】
また、本第1及び第2の実施の形態においては、シートの情報が所定のシート種別である場合に第1情報、所定のシート種別とは異なる他のシート種別である場合に第2情報であるものとして説明した。しかしながら、これに限らず、シートの情報にはシート種別だけでなく、サイズ情報などが含まれていても良く、つまり第1情報と第2情報とは、例えばシート種別とシートサイズとの一方の違い、或いはそれ両方の違いによって区別されてもよい。
【0055】
また、本第2の実施の形態においては、シート情報におけるシート種別が所定のシート種別(第1情報)である普通紙Aやコート紙Aである場合にあって、湿度が設定閾値H以下の場合に除電部27を稼働するものを説明した。しかしながら、これに限らず、どのようなシートでも、湿度が設定閾値H以下である場合に除電部27を稼働し、湿度が設定閾値Hよりも大きい場合に除電部を非稼働にするものでもよい。換言すると、除電部27にシートが搬送されてくる際、除電装置30が置かれた環境が第1環境である場合に除電部27が稼働され、環境が第1環境よりも帯電し難い第2環境である場合に除電部27が非稼動にされるものでもよい。本第2の実施の形態の例示では、第1環境(第1環境情報)として湿度が設定閾値H以下であり、第2環境(第2環境情報)として湿度が設定閾値Hよりも大きいものであるが、これに限らない。第1環境(第1環境情報)や第2環境(第2環境情報)として、例えば温度と湿度との複合的な関係で設定された閾値によって定義されてもよい。
【0056】
また、本第1及び第2の実施の形態においては、画像形成装置100が、フルカラーレーザプリンタであるものを説明したが、これに限らず、モノクロレーザプリンタ、カラーやモノクロの複合機、FAX等であっても構わない。
【0057】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0058】
21…排出ローラ対(排出部)/24…スタックトレイ(積載部)/27…除電部/28…シート検出センサ(シート検出部)/30…除電装置/100…画像形成装置/102…画像形成部/103…シート搬送部/120…制御部/121…湿度センサ(環境情報検出部)/H…設定閾値/S…シート