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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190538
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20221219BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L27/146 E
G06T1/00 400G
H01L27/146 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098908
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 功
(72)【発明者】
【氏名】樋元 健人
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓
(72)【発明者】
【氏名】多田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
【テーマコード(参考)】
4M118
5B047
【Fターム(参考)】
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA02
4M118CA14
4M118CB14
4M118CB20
4M118FB03
4M118FB09
4M118FB13
5B047AA25
5B047BB04
5B047BC01
5B047BC11
5B047CA19
(57)【要約】
【課題】活性層と下部電極との間の短絡の発生を抑制することが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、基板の上に配列された複数のフォトダイオードを有する検出装置であって、基板の表面に垂直な方向で、基板とフォトダイオードとの間に設けられた下部電極及び第1無機絶縁膜と、フォトダイオードの上に設けられた上部電極と、を有し、複数のフォトダイオードは、それぞれ、活性層と、活性層と下部電極との間に設けられた第1キャリア輸送層と、活性層と上部電極との間に設けられた第2キャリア輸送層とを有し、第1無機絶縁膜は、下部電極と第1キャリア輸送層との間に設けられ、少なくとも下部電極の外縁側の端部を覆う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に配列された複数のフォトダイオードを有する検出装置であって、
前記基板の表面に垂直な方向で、前記基板と前記フォトダイオードとの間に設けられた下部電極及び第1無機絶縁膜と、
前記フォトダイオードの上に設けられた上部電極と、を有し、
複数の前記フォトダイオードは、それぞれ、活性層と、前記活性層と前記下部電極との間に設けられた第1キャリア輸送層と、前記活性層と前記上部電極との間に設けられた第2キャリア輸送層とを有し、
前記第1無機絶縁膜は、前記下部電極と前記第1キャリア輸送層との間に設けられ、少なくとも前記下部電極の外縁側の端部を覆う
検出装置。
【請求項2】
前記第1無機絶縁膜は、前記下部電極の上面を覆うとともに、前記下部電極の上面と重なる領域に、少なくとも1つ以上の開口を有し、
前記第1キャリア輸送層は、前記第1無機絶縁膜の前記開口を介して前記下部電極と接続される
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記基板の上に設けられた複数のトランジスタと、
複数の前記トランジスタを覆う有機絶縁膜と、を有し、
前記フォトダイオードの前記下部電極は、前記有機絶縁膜の上に設けられ、前記有機絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して前記トランジスタと電気的に接続され、
前記第1無機絶縁膜は、前記コンタクトホールの開口端部に重なる位置で、前記下部電極を覆って設けられる
請求項1又は請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記下部電極及び前記第1無機絶縁膜は、前記コンタクトホールの底面及び内側面を覆って設けられる
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記有機絶縁膜の上に設けられた第2無機絶縁膜と、を有し、
前記基板に垂直な方向で、前記有機絶縁膜、前記第2無機絶縁膜、前記下部電極、前記第1無機絶縁膜、前記フォトダイオードの順に積層される
請求項3又は請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第1キャリア輸送層は、電子輸送層であり、
前記第2キャリア輸送層は、正孔輸送層である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1キャリア輸送層は、正孔輸送層であり、
前記第2キャリア輸送層は、電子輸送層である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋パターンや静脈パターンを検出可能な光センサが知られている(例えば、特許文献1)。このような光センサは、活性層として有機半導体材料が用いられた複数のフォトダイオードを有する。フォトダイオードは、下部電極と上部電極との間に配置され、例えば、下部電極、電子輸送層、活性層、正孔輸送層、上部電極の順に積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-32005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性層と下部電極との間に配置された電子輸送層(又は正孔輸送層)が薄く形成され、電子輸送層のカバレッジが不十分な領域では、活性層と下部電極との間の短絡が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、活性層と下部電極との間の短絡の発生を抑制することが可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の検出装置は、基板の上に配列された複数のフォトダイオードを有する検出装置であって、前記基板の表面に垂直な方向で、前記基板と前記フォトダイオードとの間に設けられた下部電極及び第1無機絶縁膜と、前記フォトダイオードの上に設けられた上部電極と、を有し、複数の前記フォトダイオードは、それぞれ、活性層と、前記活性層と前記下部電極との間に設けられた第1キャリア輸送層と、前記活性層と前記上部電極との間に設けられた第2キャリア輸送層とを有し、前記第1無機絶縁膜は、前記下部電極と前記第1キャリア輸送層との間に設けられ、少なくとも前記下部電極の外縁側の端部を覆う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、検出装置を示す回路図である。
図4図4は、複数の部分検出領域を示す回路図である。
図5図5は、センサ部の拡大概略構成図である。
図6図6は、図5のVI-VI’断面図である。
図7図7は、図6の第1コンタクトホール近傍の第1無機絶縁膜、下部電極、フォトダイオード及び上部電極の積層構造を拡大して示す拡大概略断面図である。
図8図8は、第1変形例に係る検出装置を示す断面図である。
図9図9は、第2変形例に係る検出装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。図1に示すように、検出装置1は、センサ基材21と、センサ部10と、ゲート線駆動回路15と、信号線選択回路16と、検出回路48と、制御回路122と、電源回路123と、第1光源基材51と、第2光源基材52と、第1光源53と、第2光源54と、を有する。第1光源基材51には、複数の第1光源53が設けられる。第2光源基材52には複数の第2光源54が設けられる。
【0011】
センサ基材21には、フレキシブルプリント基板71を介して制御基板121が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板71には、検出回路48が設けられている。制御基板121には、制御回路122及び電源回路123が設けられている。制御回路122は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路122は、センサ部10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ部10の検出動作を制御する。また、制御回路122は、第1光源53及び第2光源54に制御信号を供給して、第1光源53及び第2光源54の点灯又は非点灯を制御する。電源回路123は、センサ電源信号VDDSNS(図4参照)等の電圧信号をセンサ部10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に供給する。また、電源回路123は、電源電圧を第1光源53及び第2光源54に供給する。
【0012】
センサ基材21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ部10が有する複数のフォトダイオードPD(図4参照)が設けられた領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外周と、センサ基材21の端部との間の領域であり、複数のフォトダイオードPDが設けられない領域である。
【0013】
ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。具体的には、ゲート線駆動回路15は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線選択回路16は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられ、センサ部10と検出回路48との間に設けられる。
【0014】
なお、以下の説明において、第1方向Dxは、センサ基材21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、センサ基材21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。また、「平面視」とは、センサ基材21と垂直な方向から見た場合の位置関係をいう。
【0015】
複数の第1光源53は、第1光源基材51に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。複数の第2光源54は、第2光源基材52に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。第1光源基材51及び第2光源基材52は、それぞれ、制御基板121に設けられた端子部124、125を介して、制御回路122及び電源回路123と電気的に接続される。
【0016】
複数の第1光源53及び複数の第2光源54は、例えば、無機LED(Light Emitting Diode)や、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)等が用いられる。複数の第1光源53及び複数の第2光源54は、それぞれ異なる波長の第1光及び第2光を出射する。
【0017】
第1光源53から出射された第1光は、主に指等の被検出体の表面で反射されセンサ部10に入射する。これにより、センサ部10は、指等の表面の凹凸の形状を検出することで指紋を検出することができる。第2光源54から出射された第2光は、主に指等の内部で反射し又は指等を透過してセンサ部10に入射する。これにより、センサ部10は、指等の内部の生体に関する情報を検出できる。生体に関する情報とは、例えば、指や掌の脈波、脈拍、血管像等である。すなわち、検出装置1は、指紋を検出する指紋検出装置や、静脈などの血管パターンを検出する静脈検出装置として構成されてもよい。
【0018】
第1光は、500nm以上600nm以下、例えば550nm程度の波長を有し、第2光は、780nm以上950nm以下、例えば850nm程度の波長を有していてもよい。この場合、第1光は、青色又は緑色の可視光であり、第2光は、赤外光である。センサ部10は、第1光源53から出射された第1光に基づいて、指紋を検出することができる。第2光源54から出射された第2光は、指等の被検出体の内部で反射し又は指等を透過・吸収されてセンサ部10に入射する。これにより、センサ部10は、指等の内部の生体に関する情報として脈波や血管像(血管パターン)を検出できる。
【0019】
又は、第1光は、600nm以上700nm以下、例えば660nm程度の波長を有し、第2光は、780nm以上900nm以下、例えば850nm程度の波長を有していてもよい。この場合、第1光源53から出射された第1光及び第2光源54から出射された第2光に基づいて、センサ部10は、生体に関する情報として、脈波、脈拍や血管像に加えて、血中酸素飽和度を検出することができる。このように、検出装置1は、第1光源53及び複数の第2光源54を有しているので、第1光に基づいた検出と、第2光に基づいた検出とを行うことで、種々の生体に関する情報を検出することができる。
【0020】
なお、図1に示す第1光源53及び第2光源54の配置は、あくまで一例であり適宜変更することができる。検出装置1は、光源として複数種類の光源(第1光源53と第2光源54)が設けられている。ただし、これに限定されず、光源は1種類であってもよい。例えば、第1光源基材51及び第2光源基材52のそれぞれに、複数の第1光源53及び複数の第2光源54が配置されていてもよい。また、第1光源53及び第2光源54が設けられる光源基材は1つ又は3つ以上であってもよい。あるいは、光源は、少なくとも1つ以上配置されていればよい。
【0021】
図2は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、検出装置1は、さらに検出制御部11と検出部40と、有する。検出制御部11の機能の一部又は全部は、制御回路122に含まれる。また、検出部40のうち、検出回路48以外の機能の一部又は全部は、制御回路122に含まれる。
【0022】
センサ部10は、複数のフォトダイオードPDを有する。センサ部10が有するフォトダイオードPDは、照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。また、センサ部10は、ゲート線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号Vgclにしたがって検出を行う。
【0023】
検出制御部11は、ゲート線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御部11は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号をゲート線駆動回路15に供給する。また、検出制御部11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。また、検出制御部11は、各種制御信号を第1光源53及び第2光源54に供給して、それぞれの点灯及び非点灯を制御する。
【0024】
ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線GCL(図3参照)を駆動する回路である。ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを順次又は同時に選択し、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに接続された複数のフォトダイオードPDを選択する。
【0025】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(図3参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御部11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された信号線SGLと検出回路48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、フォトダイオードPDの検出信号Vdetを検出部40に出力する。
【0026】
検出部40は、検出回路48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、記憶部46と、検出タイミング制御部47と、画像処理部49と、出力処理部50とを備える。検出タイミング制御部47は、検出制御部11から供給される制御信号に基づいて、検出回路48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、画像処理部49と、が同期して動作するように制御する。
【0027】
検出回路48は、例えばアナログフロントエンド回路(AFE、Analog Front End)である。検出回路48は、少なくとも検出信号増幅部42及びA/D変換部43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅部42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換部43は、検出信号増幅部42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0028】
信号処理部44は、検出回路48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理部44は、指が検出面に接触又は近接した場合に、検出回路48からの信号に基づいて指や掌の表面の凹凸を検出できる。また、信号処理部44は、検出回路48からの信号に基づいて生体に関する情報を検出できる。生体に関する情報は、例えば、指や掌の血管像、脈波、脈拍、血中酸素濃度等である。
【0029】
また、信号処理部44は、複数のフォトダイオードPDにより同時に検出された検出信号Vdet(生体に関する情報)を取得し、これらを平均化する処理を実行してもよい。この場合、検出部40は、ノイズや、指等の被検出体とセンサ部10との相対的な位置ずれに起因する測定誤差を抑制して、安定した検出が可能となる。
【0030】
記憶部46は、信号処理部44で演算された信号を一時的に保存する。記憶部46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0031】
座標抽出部45は、信号処理部44において指の接触又は近接が検出されたときに、指等の表面の凹凸の検出座標を求める論理回路である。また、座標抽出部45は、指や掌の血管の検出座標を求める論理回路である。画像処理部49は、センサ部10の各フォトダイオードPDから出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指等の表面の凹凸の形状を示す二次元情報及び指や掌の血管の形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出部45は、検出座標を算出せずにセンサ出力電圧Voとして検出信号Vdetを出力してもよい。また、座標抽出部45及び画像処理部49は、検出部40に含まれていない場合であってもよい。
【0032】
出力処理部50は、複数のフォトダイオードPDからの出力に基づいた処理を行う処理部として機能する。出力処理部50は、座標抽出部45が求めた検出座標、画像処理部49が生成した二次元情報等をセンサ出力電圧Voに含めるようにしてもよい。また、出力処理部50の機能は、他の構成(例えば、画像処理部49等)に統合されてもよい。
【0033】
次に、検出装置1の回路構成例について説明する。図3は、検出装置を示す回路図である。図3に示すように、センサ部10は、マトリクス状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。複数の部分検出領域PAAには、それぞれフォトダイオードPDが設けられている。
【0034】
ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)は、第2方向Dyに配列され、それぞれゲート線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を区別して説明する必要がない場合には、単にゲート線GCLと表す。また、図3では説明を分かりやすくするために、8本のゲート線GCLを示しているが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、M本(Mは8以上、例えばM=256)配列されていてもよい。
【0035】
信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAのフォトダイオードPDに接続される。また、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16及びリセット回路17に接続される。なお、以下の説明において、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)を区別して説明する必要がない場合には、単に信号線SGLと表す。
【0036】
また、説明を分かりやすくするために、12本の信号線SGLを示しているが、あくまで一例であり、信号線SGLは、N本(Nは12以上、例えばN=252)配列されていてもよい。また、センサの解像度は例えば508dpi(dot per inch)とされ、セル数は252×256とされる。また、図3では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ部10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。
【0037】
ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号を、制御回路122(図1参照)から受け取る。ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を時分割的に順次選択する。ゲート線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線GCLに接続された複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclが供給され、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0038】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線Loutと、第3スイッチング素子TrSと、を有する。複数の第3スイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれ検出回路48に接続される。
【0039】
ここで、信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)を第1信号線ブロックとし、信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれる第3スイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックの第3スイッチング素子TrSのゲートに接続される。
【0040】
制御回路122(図1参照)は、選択信号ASWを順次選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックでそれぞれ1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、検出装置1は、検出回路48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。なお、信号線選択回路16は、複数の信号線SGLを束ねて検出回路48に接続してもよい。
【0041】
図3に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrst及び第4スイッチング素子TrRを有する。第4スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数の第4スイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数の第4スイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0042】
制御回路122は、リセット信号RST2をリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数の第4スイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路123は、基準信号COMを基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Ca(図4参照)に基準信号COMが供給される。
【0043】
図4は、複数の部分検出領域を示す回路図である。なお、図4では、検出回路48の回路構成も併せて示している。図4に示すように、部分検出領域PAAは、フォトダイオードPDと、容量素子Caと、第1スイッチング素子Trとを含む。容量素子Caは、フォトダイオードPDに形成される容量(センサ容量)であり、等価的にフォトダイオードPDと並列に接続される。
【0044】
図4では、複数のゲート線GCLのうち、第2方向Dyに並ぶ2つのゲート線GCL(m)、GCL(m+1)を示す。また、複数の信号線SGLのうち、第1方向Dxに並ぶ2つの信号線SGL(n)、SGL(n+1)を示す。部分検出領域PAAは、ゲート線GCLと信号線SGLとで囲まれた領域である。
【0045】
第1スイッチング素子Trは、フォトダイオードPDに対応して設けられる。第1スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。
【0046】
第1方向Dxに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのゲートは、ゲート線GCLに接続される。第2方向Dyに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのソースは、信号線SGLに接続される。第1スイッチング素子Trのドレインは、フォトダイオードPDのカソード及び容量素子Caに接続される。
【0047】
フォトダイオードPDのアノードには、電源回路123からセンサ電源信号VDDSNSが供給される。また、信号線SGL及び容量素子Caには、電源回路123から、信号線SGL及び容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給される。
【0048】
部分検出領域PAAに光が照射されると、フォトダイオードPDには光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。第1スイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLは、信号線選択回路16の第3スイッチング素子TrSを介して検出回路48に接続される。これにより、検出装置1は、部分検出領域PAAごとに、又はブロック単位PAGごとにフォトダイオードPDに照射される光の光量に応じた信号を検出できる。
【0049】
検出回路48は、読み出し期間にスイッチSSWがオンになり、信号線SGLと接続される。検出回路48の検出信号増幅部42は、信号線SGLから供給された電流の変動を電圧の変動に変換して増幅する。検出信号増幅部42の非反転入力部(+)には、固定された電位を有する基準電位(Vref)が入力され、反転入力端子(-)には、信号線SGLが接続される。実施形態では、基準電位(Vref)電圧として基準信号COMと同じ信号が入力される。信号処理部44(図2参照)は、光が照射された場合の検出信号Vdetと、光が照射されていない場合の検出信号Vdetとの差分をセンサ出力電圧Voとして演算する。また、検出信号増幅部42は、容量素子Cb及びリセットスイッチRSWを有する。リセット期間においてリセットスイッチRSWがオンになり、容量素子Cbの電荷がリセットされる。
【0050】
次に、フォトダイオードPDの構成について説明する。図5は、センサ部の拡大概略構成図である。図5に示すように、フォトダイオードPDは、バックプレーンBPに形成される。バックプレーンBPは、フォトダイオードPDを駆動するための駆動回路基板であり、アレイ基板あるいはアクティブマトリクス基板とも呼ばれる。
【0051】
バックプレーンBPは、センサ基材21と、センサ基材21に形成された第1スイッチング素子Tr等の各種トランジスタと、ゲート線GCL、信号線SGL等の各種配線を含む。
【0052】
第1スイッチング素子Trは、半導体層61、ソース電極62、ドレイン電極63及びゲート電極64を有する。半導体層61は、ゲート線GCLに沿って延在し、平面視でゲート電極64と交差して設けられる。ゲート電極64は、ゲート線GCLと接続され、ゲート線GCLと直交する方向に延在する。半導体層61の一端側は第2コンタクトホールCH2を介してソース電極62と接続される。ソース電極62は、第1コンタクトホールCH1を介してフォトダイオードPDと電気的に接続される。半導体層61の他端側は第3コンタクトホールCH3を介してドレイン電極63と接続される。ドレイン電極63は、信号線SGLと接続される。
【0053】
なお、図5に示す第1スイッチング素子Trの構成、配置は、あくまで一例であり、適宜変更することができる。
【0054】
図6は、図5のVI-VI’断面図である。図6に示すように、検出装置1は、センサ基材21と、第1スイッチング素子Trと、有機絶縁膜94と、下部電極23と、第1無機絶縁膜95と、フォトダイオードPD(図6では活性層31のみ示す)と、上部電極24と、封止膜96とを有する。
【0055】
センサ基材21は、絶縁性の基材であり、例えば、ガラスや樹脂材料が用いられる。センサ基材21は、平板状に限定されず、曲面を有していてもよい。この場合、センサ基材21は、フィルム状の樹脂であってもよい。
【0056】
なお、本明細書において、センサ基材21の表面に垂直な方向において、センサ基材21からフォトダイオードPDに向かう方向を「上側」又は単に「上」とする。また、フォトダイオードPDからセンサ基材21に向かう方向を「下側」又は単に「下」とする。
【0057】
センサ基材21の上にアンダーコート膜91が設けられる。アンダーコート膜91は、例えば、絶縁膜91a、91bを有する2層積層構造である。アンダーコート膜91は、例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等の無機絶縁膜で形成される。なお、アンダーコート膜91の構成は、図6に示すものに限定されない。例えば、アンダーコート膜91は、単層膜あるいは3層以上積層されていてもよい。
【0058】
遮光膜65は、絶縁膜91aの上に設けられる。遮光膜65は、半導体層61とセンサ基材21との間に設けられる。本実施形態の検出装置1(フォトダイオードPD)は、下面受光型の光センサであり、指等の被検出体の表面で反射された光は、センサ基材21の下面側からフォトダイオードPDに入射する。遮光膜65により、半導体層61のチャネル領域へのセンサ基材21側からの光の侵入を抑制することができる。
【0059】
第1スイッチング素子Tr(トランジスタ)は、センサ基材21の上に設けられる。半導体層61は、アンダーコート膜91の上に設けられる。半導体層61は、例えば、ポリシリコンが用いられる。ただし、半導体層61は、これに限定されず、微結晶酸化物半導体、アモルファス酸化物半導体、低温ポリシリコン等であってもよい。第1スイッチング素子Trとして、n型TFTのみ示しているが、p型TFTを同時に形成しても良い。
【0060】
ゲート絶縁膜92は、半導体層61を覆ってアンダーコート膜91の上に設けられる。ゲート絶縁膜92は、例えばシリコン酸化膜等の無機絶縁膜である。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜92の上に設けられる。図6に示す例では、第1スイッチング素子Trは、トップゲート構造である。ただし、これに限定されず、第1スイッチング素子Trは、ボトムゲート構造でもよく、半導体層61の上側及び下側の両方にゲート電極64が設けられたデュアルゲート構造でもよい。
【0061】
層間絶縁膜93は、ゲート電極64を覆ってゲート絶縁膜92の上に設けられる。層間絶縁膜93は、例えば、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との積層構造を有する。ソース電極62及びドレイン電極63は、層間絶縁膜93の上に設けられる。ソース電極62は、ゲート絶縁膜92及び層間絶縁膜93に設けられた第2コンタクトホールCH2を介して、半導体層61のソース領域に接続される。ドレイン電極63は、ゲート絶縁膜92及び層間絶縁膜93に設けられた第3コンタクトホールCH3を介して、半導体層61のドレイン領域に接続される。
【0062】
有機絶縁膜94は、第1スイッチング素子Trのソース電極62及びドレイン電極63を覆って層間絶縁膜93の上に設けられる。有機絶縁膜94は、有機平坦化膜であり、CVD等により形成される無機絶縁材料に比べ、配線段差のカバレッジ性や、表面の平坦性に優れる。
【0063】
フォトダイオードPDは、有機絶縁膜94の上に設けられる。下部電極23及び第1無機絶縁膜95は、センサ基材21の表面に垂直な方向で、センサ基材21及び有機絶縁膜94と、フォトダイオードPDとの間に設けられる。
【0064】
より詳細には、下部電極23は、有機絶縁膜94の上に設けられるとともに、有機絶縁膜94に形成された第1コンタクトホールCH1の底面で、第1スイッチング素子Trのソース電極62と接続される。下部電極23は、フォトダイオードPDのカソード電極であり、例えば、ITO(Indiumu Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性を有する導電材料で形成される。複数の下部電極23は、部分検出領域PAA(フォトダイオードPD)ごとに離隔して配置される。また、フォトダイオードPDは、平面視で下部電極23よりも大きい面積を有しており、下部電極23の上面及び外縁側の端部23eを覆う。
【0065】
第1無機絶縁膜95は、下部電極23を覆って有機絶縁膜94の上に設けられる。第1無機絶縁膜95は、例えばシリコン窒化膜や、酸化アルミニウム膜等の材料が用いられる。第1無機絶縁膜95は、下部電極23の上面を覆うとともに、下部電極23の上面と重なる領域に、少なくとも1つ以上の開口(第1開口OP1及び第2開口OP2)を有する。フォトダイオードPDは、第1開口OP1及び第2開口OP2を介して下部電極23と電気的に接続される。なお、第1無機絶縁膜95に設けられた第1開口OP1及び第2開口OP2の数は2つに限定されない。第1無機絶縁膜95には、少なくとも1つの開口が設けられていればよく、あるいは、3つ以上の開口が設けられていてもよい。
【0066】
第1無機絶縁膜95は、平面視で下部電極23よりも大きい面積を有しており、少なくとも下部電極23の外縁側の端部23eを覆う。第1無機絶縁膜95は、フォトダイオードPDと重なる領域に設けられ、下部電極23と重ならない領域では、有機絶縁膜94とフォトダイオードPDとの間に設けられる。これにより、第1無機絶縁膜95は、有機絶縁膜94からフォトダイオードPDへの水分の侵入を抑制するバリア膜としても機能する。
【0067】
また、第1無機絶縁膜95は、第1コンタクトホールCH1の内部にも形成される。下部電極23及び第1無機絶縁膜95は、第1コンタクトホールCH1の内側面及び底面に積層される。第1コンタクトホールCH1の内側面では、有機絶縁膜94、下部電極23及び第1無機絶縁膜95の順に積層される。第1コンタクトホールCH1の底面では、ソース電極62、下部電極23及び第1無機絶縁膜95の順に積層される。第1無機絶縁膜95は、第1コンタクトホールCH1の開口端部に重なる位置で、下部電極23の角部23tを覆って設けられる。
【0068】
また、上部電極24は、フォトダイオードPDの上に設けられる。上部電極24は、フォトダイオードPDのアノード電極であり、複数の部分検出領域PAA(フォトダイオードPD)に亘って連続して形成される。上部電極24は、例えば、銀(Ag)等の金属材料が用いられ、反射電極として機能する。
【0069】
封止膜96は、上部電極24の上に設けられる。封止膜96は、シリコン窒化膜や酸化アルミニウム膜などの無機膜、あるいはアクリルなどの樹脂膜が用いられる。封止膜96は、単層に限定されず、上記の無機膜及び樹脂膜を組み合わせた2層以上の積層膜であってもよい。封止膜96によりフォトダイオードPDは良好に封止され、上面側からの水分の侵入を抑制することができる。
【0070】
次に、第1無機絶縁膜95、下部電極23、フォトダイオードPD及び上部電極24の詳細な積層構成について説明する。図7は、図6の第1コンタクトホール近傍の第1無機絶縁膜、下部電極、フォトダイオード及び上部電極の積層構造を拡大して示す拡大概略断面図である。図7に示すように、フォトダイオードPDは、活性層31と、活性層31と下部電極23との間に設けられた電子輸送層32(第1キャリア輸送層)と、活性層31と上部電極24との間に設けられた正孔輸送層33(第2キャリア輸送層)と、を有する。
【0071】
検出装置1は、センサ基材21に垂直な方向で、有機絶縁膜94、下部電極23、第1無機絶縁膜95、電子輸送層32、活性層31、正孔輸送層33、上部電極24の順に積層される。
【0072】
電子輸送層32は、酢酸亜鉛(Zinc Acetate)、エトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)、ポリエチレンイミン(PEI)等の材料を用いて塗布形成される。電子輸送層32は、単層であり、その厚さは、例えば30nm以下程度である。
【0073】
活性層31は、p型有機半導体とn型有機半導体との混合物が用いられる。p型有機半導体として、例えばPMDPP3T(poly((2,5-bis(2-hexyldecyl)-2,3,5,6-tetrahydro-3,6-dioxopyrrolo(3,4-c)pyrrole-1,4-diyl)-alt-(3′,3′′-dimethyl-2,2′:5′,2′′-terthiophene)-5,5′′-diyl))が挙げられる。また、n型有機半導体として、例えばPC61BM([6,6]-phenyl C61-butyric acid methyl ester)が挙げられる。活性層31の厚さは、例えば100nm以上500nm以下程度、好ましくは350nm程度である。
【0074】
正孔輸送層33は、例えば、酸化タングステン(WO)や酸化モリブデン(MoOx)等の酸化金属層である。正孔輸送層33は、蒸着膜あるいはスパッタ膜で形成され、その厚さは、例えば30nm以下程度である。
【0075】
下部電極23の厚さは、例えば50nm程度である。上部電極24の厚さは、例えば100nm以下程度である。すなわち、電子輸送層32及び正孔輸送層33のそれぞれの厚さは、活性層31よりも薄く、かつ、下部電極23及び上部電極24の厚さよりも薄い。言い換えると、下部電極23及び上部電極24のそれぞれの厚さは、活性層31よりも薄く、電子輸送層32及び正孔輸送層33よりも厚い。
【0076】
なお、電子輸送層32、活性層31及び正孔輸送層33の材料、製法はあくまで一例であり、他の材料、製法であってもよい。例えば、電子輸送層32は、酸化亜鉛(ZnO)や酸化チタン(TiO)等の材料を用いた蒸着膜あるいはスパッタ膜であってもよい。また、正孔輸送層33は、酸化ニッケル(NiO)等の材料を用いた蒸着膜あるいはスパッタ膜であってもよく、又は、正孔輸送層33は、酸化バナジウム(V)や酸化タングステン(WO)等のナノ粒子インク、あるいはPEDOT:PSS等の材料を用いて塗布形成されてもよい。
【0077】
第1無機絶縁膜95は、下部電極23と電子輸送層32との間に設けられる。電子輸送層32は、第1無機絶縁膜95の上に設けられ、第1無機絶縁膜95の第1開口OP1及び第2開口OP2と重なる領域で下部電極23と接続される。上述したように、第1無機絶縁膜95は、下部電極23の外縁側の端部23eを覆う。また、第1無機絶縁膜95は、第1コンタクトホールCH1の開口端部に重なる位置で、下部電極23の角部23tを覆って設けられる。これにより、下部電極23の角部23tと重なる位置32s1や、下部電極23の外縁側の端部23eと重なる位置32s2で、電子輸送層32の厚さが薄く形成され、あるいは電子輸送層32の段切れが生じた場合であっても、第1無機絶縁膜95により、活性層31と下部電極23との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0078】
また、下部電極23と第1無機絶縁膜95とで形成される段差と重なる位置32s3、より具体的には、第1無機絶縁膜95の第1開口OP1及び第2開口OP2の開口端部で、電子輸送層32の厚さが薄く形成され、あるいは段切れが生じる場合がある。この場合であっても第1無機絶縁膜95が下部電極23を覆って設けられているので、活性層31と下部電極23との間の短絡の発生を抑制することができる。また、第1無機絶縁膜95は、第1コンタクトホールCH1の内側面及び底面を覆って設けられる。これにより、第1コンタクトホールCH1の内部で電子輸送層32の厚さが薄く形成され、あるいは段切れが生じた場合であっても、活性層31と下部電極23との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0079】
なお、第1無機絶縁膜95は、複数のフォトダイオードPDごとに設けられていてもよいし、複数のフォトダイオードPDに亘って表示領域AA全面に連続して形成されていてもよい。また、図6及び図7に示す断面図では理解を容易にするために、下部電極23の外縁側の端部23eや角部23t、及び、第1開口OP1及び第2開口OP2の開口端部で形成される段差について、それぞれ角部を有するように強調して示している。ただし、図6及び図7はあくまで模式的に示したものであり、下部電極23の外縁側の端部23eや角部23t及び各段差は、テーパー状に形成されていてもよい。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の検出装置1は、基板(センサ基材21)の上に配列された複数のフォトダイオードPDを有する検出装置1であって、センサ基材21の表面に垂直な方向で、センサ基材21とフォトダイオードPDとの間に設けられた下部電極23及び第1無機絶縁膜95と、フォトダイオードPDの上に設けられた上部電極24と、を有する。複数のフォトダイオードPDは、それぞれ、活性層31と、活性層31と下部電極23との間に設けられた第1キャリア輸送層(電子輸送層32)と、活性層31と上部電極24との間に設けられた第2キャリア輸送層(正孔輸送層33)とを有する。第1無機絶縁膜95は、下部電極23と第1キャリア輸送層(電子輸送層32)との間に設けられ、少なくとも下部電極23の外縁側の端部23eを覆う。
【0081】
これによれば、検出装置1は、下部電極23の外縁側の端部23eと重なる位置32s2で、電子輸送層32の厚さが薄く形成され、あるいは電子輸送層32の段切れが生じた場合であっても、第1無機絶縁膜95により、活性層31と下部電極23との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0082】
(第1変形例)
上述した実施形態では、フォトダイオードPDは、センサ基材21に垂直な方向で、センサ基材21側から電子輸送層32、活性層31及び正孔輸送層33の順に積層され、下面受光型の光センサとして構成される例について説明した。ただし、これに限定されず、検出装置1Aは、上面受光型の光センサにも適用可能である。
【0083】
図8は、第1変形例に係る検出装置を示す断面図である。図8に示すように、第1変形例の検出装置1Aは、上述した実施形態と比べて、フォトダイオードPDの積層順が逆になっている。具体的には、フォトダイオードPDの正孔輸送層33(第1キャリア輸送層)は、活性層31と下部電極23との間に設けられる。電子輸送層32(第2キャリア輸送層)は、活性層31と上部電極24との間に設けられる。すなわち、検出装置1Aは、センサ基材21に垂直な方向で、有機絶縁膜94、下部電極23、第1無機絶縁膜95、正孔輸送層33(第1キャリア輸送層)、活性層31、電子輸送層32(第2キャリア輸送層)、上部電極24の順に積層される。
【0084】
検出装置1Aは、上面受光型の光センサであり、上部電極24は、ITOやIZO等の透光性を有する導電材料で形成される。また、下部電極23は、例えば、銀(Ag)等の金属材料が用いられ、反射電極として機能する。
【0085】
第1変形例において、第1無機絶縁膜95は、下部電極23と正孔輸送層33との間に設けられる。正孔輸送層33は、第1無機絶縁膜95の第1開口OP1及び第2開口OP2と重なる領域で下部電極23と接続される。上述した実施形態と同様に、第1無機絶縁膜95は、下部電極23の外縁側の端部23eを覆う。また、第1無機絶縁膜95は、第1コンタクトホールCH1の開口端部に重なる位置で、下部電極23の角部23tを覆って設けられる。これにより、下部電極23の角部23tと重なる位置33s1や、下部電極23の外縁側の端部23eと重なる位置33s2で、正孔輸送層33の厚さが薄く形成され、あるいは正孔輸送層33の段切れが生じた場合であっても、第1無機絶縁膜95により、活性層31と下部電極23との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0086】
また、下部電極23と第1無機絶縁膜95とで形成される段差と重なる位置33s3、より具体的には、第1無機絶縁膜95の第1開口OP1及び第2開口OP2の開口端部で、正孔輸送層33の厚さが薄く形成され、段切れが生じる場合がある。この場合であっても第1無機絶縁膜95が下部電極23を覆って設けられているので、活性層31と下部電極23との間の短絡の発生を抑制することができる。
【0087】
(第2変形例)
図9は、第2変形例に係る検出装置を示す断面図である。図9に示すように、第2変形例に係る検出装置1Bは、さらに第2無機絶縁膜97を有する。第2無機絶縁膜97は、有機絶縁膜94の上に設けられる。第2無機絶縁膜97は、フォトダイオードPDと重なる領域に設けられ、少なくとも、平面視で下部電極23よりも大きい面積を有して形成される。下部電極23は、第2無機絶縁膜97の上に設けられる。第1コンタクトホールCH1の底面では第2無機絶縁膜97に第3開口OP3が設けられており、下部電極23は、第3開口OP3を介してソース電極62と接続される。また、第1無機絶縁膜95は、少なくとも下部電極23の外縁側の端部23eを覆って第2無機絶縁膜97の上に設けられる。
【0088】
第2無機絶縁膜97は、前述の第1無機絶縁膜95と同様の膜種を用いることができる。例えば例えばシリコン窒化膜や、酸化アルミニウム膜等の材料が用いられる。
【0089】
より詳細には、下部電極23と重なる領域では、センサ基材21に垂直な方向で、有機絶縁膜94、第2無機絶縁膜97、下部電極23、第1無機絶縁膜95、フォトダイオードPDの順に積層される。第2無機絶縁膜97は、第1コンタクトホールCH1の内部にも形成される。第1コンタクトホールCH1の内側面では、有機絶縁膜94、第2無機絶縁膜97、下部電極23及び第1無機絶縁膜95の順に積層される。第1コンタクトホールCH1の底面では第3開口OP3と重なる領域で、ソース電極62、下部電極23及び第1無機絶縁膜95の順に積層される。
【0090】
下部電極23と重ならない領域では、第2無機絶縁膜97は有機絶縁膜94と第1無機絶縁膜95との間に設けられる。つまり、下部電極23と重ならない領域では、有機絶縁膜94、第2無機絶縁膜97、第1無機絶縁膜95、フォトダイオードPDの順に積層される。これにより、第1無機絶縁膜95及び第2無機絶縁膜97は、有機絶縁膜94からフォトダイオードPDへの水分の侵入を良好に抑制することができる。
【0091】
なお、第1無機絶縁膜95及び第2無機絶縁膜97は、複数のフォトダイオードPDごとに設けられていてもよいし、複数のフォトダイオードPDに亘って表示領域AA全面に連続して形成されていてもよい。
【0092】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0093】
1、1A、1B 検出装置
10 センサ部
11 検出制御部
15 ゲート線駆動回路
16 信号線選択回路
21 センサ基材
23 下部電極
24 上部電極
31 活性層
32 電子輸送層
33 正孔輸送層
40 検出部
48 検出回路
94 有機絶縁膜
95 第1無機絶縁膜
96 封止膜
97 第2無機絶縁膜
CH1 第1コンタクトホール
PD フォトダイオード
AA 検出領域
GA 周辺領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9