(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190542
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】嗅覚検査具、嗅覚検査キット、及び嗅覚検査具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61B10/00 X
A61B10/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098913
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正直
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制された嗅覚検査具を提供することである。
【解決手段】本発明は、基板と、前記基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、前記基板の表面が、凹部を有し、前記凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを有し、前記凹部の表面が、第1の粘着層を有し、前記カバーが、前記凹部と対向する面に第2の粘着層を有し、同一の前記カプセルにおいて、その表面の少なくとも一部が前記第1の粘着層及び前記第2の粘着層に接着された、嗅覚検査具を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、
前記基板の表面が、凹部を有し、
前記凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを有し、
前記凹部の表面が、第1の粘着層を有し、
前記カバーが、前記凹部と対向する面に第2の粘着層を有し、
同一の前記カプセルにおいて、その表面の少なくとも一部が前記第1の粘着層及び前記第2の粘着層に接着された、
嗅覚検査具。
【請求項2】
前記カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、請求項1に記載の嗅覚検査具。
【請求項3】
前記凹部の深さが、前記カプセルの最大粒径よりも長い、請求項1又は2に記載の嗅覚検査具。
【請求項4】
前記カプセルが溶媒に分散された状態である、請求項1から3のいずれかに記載の嗅覚検査具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載された嗅覚検査具と、被筆記体とを備える、嗅覚検査キット。
【請求項6】
基板の表面に、第1の粘着層を有する凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを配置し、かつ、前記カプセルの表面の少なくとも一部を第1の粘着層に接着するカプセル配置工程と、
第2の粘着層を有するカバーによって前記基板の表面を覆い、かつ、前記第1の粘着層に接着された前記カプセルの表面の少なくとも一部を第2の粘着層に接着するカバー工程と、
を含む、嗅覚検査具の製造方法。
【請求項7】
前記カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記凹部形成工程がエンボス加工工程である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記凹部形成工程がホットメルト加工工程である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅覚検査具、嗅覚検査キット、及び嗅覚検査具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅覚検査具は、様々なものが開発されており、例えば、マイクロカプセル化された香料成分を用いた嗅覚検査具が知られる(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者の検討の結果、嗅覚検査具の保存時に、香料成分が経時的に揮発等し、香料成分が意図しない箇所(例えば、嗅覚検査具のカバー等)に吸着する結果、嗅覚検査時ににおいが薄くなり得るという問題が見出された。かかる場合、嗅覚検査具による検査精度が損なわれ得る。
【0005】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制された嗅覚検査具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、凹部を有する基板と、該基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具において、凹部の内部に香料成分を含むカプセルを入れ、かつ、カプセルやカバーの配置を調整することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1) 基板と、前記基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、
前記基板の表面が、凹部を有し、
前記凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを有し、
前記凹部の表面が、第1の粘着層を有し、
前記カバーが、前記凹部と対向する面に第2の粘着層を有し、
同一の前記カプセルにおいて、その表面の少なくとも一部が前記第1の粘着層及び前記第2の粘着層に接着された、
嗅覚検査具。
【0008】
(2) 前記カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、(1)に記載の嗅覚検査具。
【0009】
(3) 前記凹部の深さが、前記カプセルの最大粒径よりも長い、(1)又は(2)に記載の嗅覚検査具。
【0010】
(4) 前記カプセルが溶媒に分散された状態である、(1)から(3)のいずれかに記載の嗅覚検査具。
【0011】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載された嗅覚検査具と、被筆記体とを備える、嗅覚検査キット。
【0012】
(6) 基板の表面に、第1の粘着層を有する凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを配置し、かつ、前記カプセルの表面の少なくとも一部を第1の粘着層に接着するカプセル配置工程と、
第2の粘着層を有するカバーによって前記基板の表面を覆い、かつ、前記第1の粘着層に接着された前記カプセルの表面の少なくとも一部を第2の粘着層に接着するカバー工程と、
を含む、嗅覚検査具の製造方法。
【0013】
(7) 前記カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、(6)に記載の製造方法。
【0014】
(8) 前記凹部形成工程がエンボス加工工程である、(6)又は(7)に記載の製造方法。
【0015】
(9) 前記凹部形成工程がホットメルト加工工程である、(6)又は(7)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制された嗅覚検査具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の嗅覚検査具の一例を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の嗅覚検査具の一例を示す平面図及び断面図である。
【
図3】本発明の嗅覚検査具の一例を示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<嗅覚検査具>
本発明の嗅覚検査具は、基板と、該基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、
該基板の表面が、凹部を有し、
該凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを有し、
該凹部の表面が、第1の粘着層を有し、
該カバーが、該凹部と対向する面に第2の粘着層を有し、
同一の該カプセルにおいて、その表面の少なくとも一部が該第1の粘着層及び該第2の粘着層に接着されたものである。
【0020】
(嗅覚検査具の構成例)
以下、適宜図面を参照し、本発明の嗅覚検査具の構成例を説明する。
【0021】
図1に、本発明の一態様に係る嗅覚検査具(1)の外観斜視図を示す。
嗅覚検査具(1)は、基板(10)と、基板(10)の表面を覆うカバー(20)とを備え、基板(10)の表面が、凹部(11)を有し、凹部(11)の内部に、香料成分を含むカプセル(30)を有する。
カバー(20)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含んでいてもよい。
【0022】
図2に、本発明の一態様に係る嗅覚検査具(1)の図を示す。
図2(A)は、平面図であり、
図2(B)は
図2(A)のa-a’断面図である。ただし、
図2(A)においてはカバー(20)の記載を省略した。
【0023】
図2(B)の断面図に示すように、凹部(11)の表面は、第1の粘着層(12)を有する。
カバー(20)は、基板(10)と対向する面に第2の粘着層(21)を有し、凹部(11)の開口部を囲む基板(10)の表面に対して剥離可能に接着され、カプセル(30)を配置した凹部(11)を密閉する。
また、同一カプセル(30)において、その表面の少なくとも一部は、第1の粘着層(12)及び第2の粘着層(21)に接着する。ただし、凹部(11)に配置された全てのカプセルがこのように接着されていなくともよい。
【0024】
なお、
図2の凹部(11)は基板(10)そのものの表面を加工(エンボス加工等)することによって形成できる。
ただし、本発明における凹部はこのような形態に限定されず、
図3に示すような、基板の表面に接着された枠であってもよい。このような枠は、ホットメルト加工等によって形成できる。
図3においては、
図2に示される凹部(11)の代わりに、基板(10)の表面に設けられた枠が凹部(11)として形成されている。この場合、カバー(20)は、凹部(11)の開口部となる縁に剥離可能に接着され、カプセル(30)を配置した凹部(11)を密閉する。
【0025】
以下、本発明の嗅覚検査具の各部の詳細について説明する。
【0026】
(基板)
本発明の嗅覚検査具における基板は、凹部を有する点以外は、形状、大きさ、材質等について特に限定されない。
ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、通常、基板の材料としては無臭のものが採用され得る。
【0027】
基板の形状は、例えば、矩形(長方形、正方形等)、円形等であってもよい。
扱いやすさの観点から、基板の好ましい形状としては、名刺型(例えば、55mm×91mmの矩形)が挙げられる。
【0028】
基板の大きさは、特に限定されないが、例えば、内部にカプセルを保持可能な凹部を設けることができる程度の大きさであり得る。
【0029】
基板が矩形である場合、基板の縦及び横方向の寸法の下限は、好ましくは0.7cm以上、より好ましくは2.0cm以上である。
基板の縦及び横方向の寸法の上限は、好ましくは45.0cm以下、より好ましくは32.5cm以下である。
【0030】
基板が円形である場合、基板の直径の下限は、好ましくは1.0cm以上、より好ましくは3.0cm以上である。
基板の直径の上限は、好ましくは50.0cm以下、より好ましくは35.0cm以下である。
【0031】
基板の厚さの下限は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。
基板の厚さの上限は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
【0032】
基板の材質は、特に限定されないが、例えば、紙基材(カード台紙等)、樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等)等であってもよい。
【0033】
基板の表面は、カールやヨレ等がなく、平坦であることが好ましい。
【0034】
基板は、2面以上に折りたたまれた状態であってもよく、折りたたまれていない状態であってもよい。
基板が折りたたまれた状態である場合、いずれかの面を、基板を覆うカバーに設定してもよい。
【0035】
基板は、好ましくは、印刷適性、貼り合わせ特性、耐水性、酸素バリア性等を有する。
基板に所望の特性を付与する観点から、基板は、任意の樹脂層が形成されたものや、表面処理等が施されたものであってもよい。このような表面処理としては、アンカーコート剤等の塗布、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理(酸素ガス又は窒素ガス等を用いたプラズマ処理)、グロー放電処理、酸化処理(化学薬品等を用いた酸化処理)等が挙げられる。
【0036】
基板は、単層でもよく、2層以上の積層シートであってもよい。
【0037】
基板の表面や裏面には、目的に応じて、任意の方法で印刷が施されていてもよい。
例えば、基板の表面のうち凹部が設けられていない箇所に、被験者への注意事項、嗅覚検査への回答欄等を印刷してもよい。
【0038】
[基板の凹部]
基板には、その表面に凹部が設けられる。該凹部の内部には、香料成分を含むカプセルが保持される。また、保持された全て又は一部のカプセルは、その表面が、凹部の表面に設けられた第1の粘着層に接着される。
【0039】
凹部は、嗅覚検査に用いるための充分量のカプセルを入れることができれば、形状、大きさ等は特に限定されない。
【0040】
凹部の開口部の形状は、例えば、矩形(長方形、正方形等)、円形等であってもよい。
凹部の開口部と底部との径や形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
凹部の開口部の大きさは、特に限定されないが、例えば、嗅覚検査における充分量のカプセルを内部に保持可能な大きさであり得る。
【0042】
凹部の開口部の径(特に、最大径)の下限は、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上である。
凹部の開口部の径(特に、最大径)の上限は、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下である。
【0043】
凹部の深さの下限は、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。
凹部の深さの上限は、好ましくは250μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0044】
嗅覚検査具の保管時等において、香料成分を含むカプセルの破損等を防ぎやすくする観点から、凹部の深さは、香料成分を含むカプセルの最大粒径よりも長いことが好ましい。
例えば、凹部の深さは、香料成分を含むカプセルの最大粒径よりも、好ましくは1.7倍以上、より好ましくは2.5倍以上長い。
【0045】
カバーの第2の粘着層と、カプセルの表面の少なくとも一部とを接着しやすくする観点から、凹部の深さは、香料成分を含むカプセルの最大粒径の10倍以下とすることが好ましい。
【0046】
基板の表面に凹部を形成する方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。以下の方法は、いずれか、又は両方を組み合わせて採用し得る。
(方法1-1)基板そのものを加工して基板の表面に凹部を形成する方法。
(方法1-2)基板とは異なる凹部状の部材を基板表面に接着する方法。
【0047】
(方法1-1)を採用する場合、基板の材料としては加工可能な材料(好ましくは、紙単体、コート紙、含浸紙、天然若しくは合成樹脂(セルロース繊維や顔料を分散させたもの)、熱可塑性樹脂、加圧(加熱)成型可能な熱硬化樹脂、又はゴム等)が選択される。
【0048】
(方法1-1)を採用する場合、基板の加工方法は特に限定されないが、好ましい例として、エンボス加工、ホットメルト加工等が挙げられる。
エンボス加工を採用する場合、基板に型を押しつけることで、基板の表面に凹部を設けることができる。
ホットメルト加工を採用する場合、カプセルを配置しようとする部分を囲むように、ホットメルト樹脂によって、基板表面に枠(凹部に相当する。)を設けることができる。
【0049】
(方法1-2)を採用する場合、基板とは異なる凹部状の部材としては、凹部状に加工されたシート状等の部材を使用できる。部材の材料としては加工可能な材料(好ましくは、(方法1-1)におけるものと同様の材料、基材の抜き加工と底材との組み合わせ等)が選択される。
【0050】
(方法1-2)を採用する場合、基板とは異なる凹部状の部材は、1又は2以上を基板表面に接着してもよい。
また、1つの部材には、1又は2以上の凹部が設けられていてもよい。
【0051】
(方法1-2)を採用する場合、基板と、凹部状の部材との接着方法は特に限定されない。例えば、基板表面に接着層を設け、その上に凹部状の部材を載せる方法や、基板表面と凹部状の部材の底部とを接着剤で接着する方法等が挙げられる。
接着層や接着剤の成分は特に限定されないが、接着部の端からこれらの成分が溶出しないように、硬化型の接着剤や、香料成分の溶媒と相溶性が低いものが好ましい。
【0052】
(方法1-2)を採用する場合、基板とは異なる凹部状の部材の加工方法は特に限定されないが、好ましい例として、エンボス加工、ホットメルト加工等が挙げられる。
エンボス加工を採用する場合、部材に型を押しつけることで、基板の表面に凹部を設けることができる。
ホットメルト加工を採用する場合、カプセルを配置しようとする部分を囲むように、ホットメルト樹脂によって、部材表面に枠(凹部に相当する。)を設けることができる。
【0053】
ホットメルト樹脂としては、軟化点温度が好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下のものを好適に使用することができる。ホットメルト樹脂としては、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、スチレンブタジエンゴム系樹脂、ウレタンゴム系樹脂等の合成ゴム系等が挙げられる。
【0054】
[第1の粘着層]
凹部の表面は、第1の粘着層を有する。これにより、凹部とカプセルの表面の少なくとも一部とは、第1の粘着層を介して接着する。
【0055】
第1の粘着層の厚さは、好ましくは25~150μmである。
【0056】
第1の粘着層の形成方法や材料は特に限定されない。
第1の粘着層は、例えば、熱定着式のノンインパクトプリンタを用いて得られる感圧接着剤層であってもよく、再剥離可能な第1の粘着層(例えば、日本国特許第3701365号公報を参照。)であってもよい。
【0057】
第1の粘着層の材料としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、無臭の材料が好ましい。
【0058】
第1の粘着層は、凹部の表面の全体に設けてもよく、一部に設けてもよい。
充分量のカプセルの表面が凹部の表面に接着しやすくなる観点から、第1の粘着層は、少なくとも凹部の底部の全体に設けられることが好ましい。
【0059】
(香料成分を含むカプセル)
基板の表面の凹部の内部には、香料成分を含むカプセルが配置される。香料成分をこのようなカプセルとして調製することで、意図しない箇所への香料成分の吸着を抑制できる。
【0060】
凹部の内部に配置される、香料成分を含むカプセルの数は特に限定されず、香料成分の種類やにおいの強さ、カプセルの大きさ、凹部の大きさ等に応じて適宜設定できる。
例えば、凹部の内部に配置される、香料成分を含むカプセルの数は1個でもよく、2個以上でもよい。
香料成分を含むカプセルの数が1個である場合、その表面の少なくとも一部が、凹部の表面の第1の粘着層、及びカバーの第2の粘着層の両方と接着する。
香料成分を含むカプセルの数が2個以上である場合、全て又は一部のカプセルの表面の少なくとも一部が、凹部の表面の第1の粘着層、及びカバーの第2の粘着層の両方と接着する。
【0061】
香料成分を含むカプセルの形態は特に限定されないが、通常、香料(芯物質)のまわりに膜(壁物質)が形成された構造を有する。
【0062】
香料成分の種類は特に限定されないが、嗅覚検査に使用できる任意の成分を採用できる。香料成分は、通常、油溶性成分(オイル等)が使用され得る。
【0063】
香料成分は、天然香料であってもよく、合成香料であってもよい。香料成分は、1つの成分からなるものであってもよく、複数の成分からなるものであってもよい。
【0064】
香料成分としては、例えば、果物(柑橘類等)由来の成分、花(バラ等)由来の成分、木材(スギ、ヒノキ等)由来の成分、食品(カレー等)由来の成分、飲料(コーヒー等)由来の成分、合成化合物(メントール等)等が挙げられる。
【0065】
香料成分を含むカプセルの膜を構成する成分としては、水溶性高分子(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、キチン、キトサン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等)、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等が挙げられる。
【0066】
香料成分を含むカプセルの粒径、形状等は特に限定されない。
【0067】
香料成分を含むカプセルの最大粒径の下限は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上である。
香料成分を含むカプセルの最大粒径の上限は、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下である。
香料成分を含むカプセルの最大粒径は、マイクロスコープ観察やレーザ回折式粒度分布によって特定する。
【0068】
香料成分を含むカプセルの平均粒径の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。
香料成分を含むカプセルの平均粒径の上限は、好ましくは20μm以下、より好ましくは12.5μm以下である。
香料成分を含むカプセルの平均粒径は、マイクロスコープ観察やレーザ回折式粒度分布によって特定する。
【0069】
香料成分を含むカプセルの形状は、例えば、球体、楕円体、円盤等であり得る。
【0070】
香料成分を含むカプセルは、粉末状、ワックス状、ゲル状等であり得る。
【0071】
香料成分を含むカプセルの製造方法は、特に限定されないが、日本国特許3694409号公報に記載された方法を好ましく採用できる。
具体的には、以下の方法が挙げられる。
(方法2-1)高分子重合反応(界面重合法、in situ重合等)を芯物質の表面で起こし製膜化する化学的方法
(方法2-2)壁物質となる高分子を芯物質表面に付着させる物理化学的方法(複合コアセルベーション法、単純コアセルベーション法、界面沈殿法等)
(方法2-3)機械による物理的方法(噴霧乾燥法、乾式混合法等)
【0072】
上記の方法で得られた香料成分を含むカプセルは、必要に応じて、洗浄、乾燥、篩い分け等を行ってもよい。
【0073】
香料成分を含むカプセルを凹部内に保持しやすくするため、例えば、該カプセルは、溶媒に分散させてもよい。
溶媒としては、インキ、UV硬化溶媒(イソシアネートモノマー、ダイマーを中心とするプレポリマー溶媒等)、熱可塑性固形溶媒(ワックス、ポバール、高沸点脂肪酸等)等が挙げられる。
【0074】
香料成分を含むカプセルは、任意の方法で、基板の表面の凹部の内部に配置することができる。ただし、カプセルを破損させにくい方法を採用することが好ましい。
具体的には、以下の方法が挙げられる。ただし、いずれの方法を採用する場合であっても、同一のカプセルの表面が、第1の粘着層及び第2の粘着層の両方と接着できるように、同一カプセルの少なくとも一部の表面が溶媒の液面から露出し、かつ、凹部の内部に接触するように調整する。
(方法3-1)溶媒に分散された香料成分を含むカプセルを噴霧等によって塗布する方法
(方法3-2)溶媒に分散された香料成分を含むカプセルをスクリーン印刷等によって印刷する方法
(方法3-3)溶媒に分散された香料成分を含むカプセルをディスペンサーによって配置する方法
【0075】
ディスペンサーを用いた方法としては、日本国特許第5874169号公報、日本国特許第5982737号公報等に記載された方法を好ましく採用できる。
【0076】
溶媒に分散された香料成分を含むカプセルは、基板の表面の凹部の内部に配置された後、適宜乾燥や固化等させることで基板の表面の凹部の内部に保持される。
【0077】
(基板の表面を覆うカバー)
基板の表面を覆うカバーは、基板表面の少なくとも一部又は全体に配置され、基板の表面の凹部の開口部の全体を覆う可撓性を有するシート状の部材である。
カバーにおける凹部と対向する面は、第2の粘着層を有し、該第2の粘着層と、凹部内のカプセルの表面の少なくとも一部とが接着する。
【0078】
基板がカバーに覆われた状態の本発明の嗅覚検査具においては、凹部に保持された同一のカプセルの表面の少なくとも一部が第1の粘着層及び第2の粘着層に接着されている。
かかる状態で、嗅覚検査具のカバーを剥がすと、カプセルに対し、第1の粘着層及び第2の粘着層からの2方向の外力が生じ、その結果、カプセルが破壊され、においが生じる。
したがって、本発明によれば、香料成分をカプセルとして調製することによって意図しない箇所への香料成分の吸着を抑制しつつ、嗅覚検査の際には充分なにおいを生じる嗅覚検査具が得られる。
【0079】
本発明において「意図しない箇所への香料成分の吸着」とは、香料成分が配置された部分(基板の表面の凹部内)以外の、嗅覚検査具内の任意の部分(例えば、嗅覚検査具のカバー等)への香料成分の吸着を意味する。
このような吸着が生じることにより、嗅覚検査時に、香料成分のにおいが薄くなるため、嗅覚検査具による嗅覚障害の検査精度が損なわれ得る。
【0080】
本発明において意図しない箇所への香料成分の吸着が生じたかどうかは、香料成分が配置された部分(基板の表面の凹部内)以外の、嗅覚検査具内の任意の部分(例えば、嗅覚検査具のカバー等)の質量を、香料成分の配置前後において測定することで特定できる。
例えば、香料成分の配置後の嗅覚検査具のカバーの質量が、香料成分の配置前の嗅覚検査具のカバーの質量よりも大きい場合、意図しない箇所への香料成分の吸着が生じたものと判断できる。
【0081】
基板の表面を覆うカバーは、好ましくは、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。カバーにこのような樹脂が含まれていると、嗅覚検査具の保管中にカプセルが破損した場合、カバーへの香料成分の吸着が抑制され、本発明の効果が得られやすい。
基板の表面を覆うカバーは、より好ましくは、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上からなる。
【0082】
エチレン-ビニルアルコール共重合体としては特に限定されないが、エチレン含有率が25mol%以上50mol%以下であることが好ましい。
【0083】
ポリアクリロニトリルとしては特に限定されないが、アクリロニトリル含有率が75mol%以上であることが好ましい。
ポリアクリロニトリルには、アクリル酸メチルが25%mol%以下含まれていてもよい。
【0084】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)のいずれであってもよい。
【0085】
環状オレフィンポリマーとは、環状オレフィンモノマーを開環重合した後、2重結合を水素添加することによって得られる重合体である。
環状オレフィンモノマーとしては、ノルボルネン等が挙げられる。
【0086】
環状オレフィンコポリマーとは、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとの付加重合体である。
環状オレフィンモノマーとしては、ノルボルネン等が挙げられる。
α-オレフィンとしては、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィン(ヘキセン、オクテン、及びデセン等)が挙げられる。
【0087】
ポリエステルとは、多価カルボン酸とポリアルコールとを、脱水縮合してエステル結合させることによって得られる重合体である。
ポリエステルとしては、非結晶性ポリエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、テレフタル酸等が挙げられる。
ポリアルコールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0088】
カバーに含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量は、特に限定されない。
カバーに含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の下限は、カバーの質量全体に対して、好ましくは70質量%以上である。
カバーに含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の上限は、カバーの質量全体に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下である。
【0089】
カバーは、第2の粘着層以外の接合部を介して基板に固設されていてもよく、固設されていなくともよい。接合部には、両面テープ等を用いることができる。
カバーと基板とは、ヒートシールやラミネートによって接着されていてもよい。
【0090】
接合部の位置は特に限定されないが、基板表面の凹部以外の任意の部分や、カバーにおける凹部と対向する面以外の任意の部分が挙げられる。
加工のしやすさの観点等から、接合部は、凹部の開口部の縁や、基板の外周縁であることが好ましい。
【0091】
カバーには、貼り合わせ特性、酸素バリア性、水蒸気バリア性を付与する観点から、表面処理が施されていてもよい。
表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV処理等が挙げられる。
【0092】
カバーの厚さは特に限定されない。なお、本発明において「カバーの厚さ」とは、第2の粘着層の厚さを含む厚さを意味する。
カバーの厚さの下限は、好ましくは7μm以上、より好ましくは15μm以上である。
カバーの厚さの上限は、好ましくは150μm以下、より好ましくは55μm以下である。
【0093】
カバーの形状は特に限定されないが、基板の形状等に応じて適宜設定できる。
カバーの形状としては、例えば、矩形、円形等が挙げられる。
【0094】
カバーの大きさは、基板の表面の凹部の開口部の全体を覆う大きさであれば特に限定されない。通常、カバーは、基板の表面の凹部の開口部よりも広い面を有する。
【0095】
[第2の粘着層]
カバーにおける凹部と対向する面は、第2の粘着層を有する。これにより、カバーとカプセルの表面の少なくとも一部とは、第2の粘着層を介して接着する。
【0096】
第2の粘着層の厚さは、好ましくは25~150μmである。
【0097】
嗅覚検査時は、嗅覚検査具のカバーを剥離することで、第2の粘着層がカプセルの表面から剥がれる際にカプセルが破壊される結果、香気成分からのにおいが生じる。
被験者は、このように生じたにおいに基づき、嗅覚検査を行うことができる。
【0098】
第2の粘着層の形成方法や材料は特に限定されない。
第2の粘着層は、例えば、熱定着式のノンインパクトプリンタを用いて得られる感圧接着剤層であってもよく、再剥離可能な第2の粘着層(例えば、日本国特許第3701365号公報を参照。)であってもよい。
【0099】
第2の粘着層の材料としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。これらのうち、気密性や粘着完全性を重視する場合は、アクリル系粘着剤が好ましい。ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、無臭の材料が好ましい。
【0100】
カバーの基板(凹部)と対向する側の面(カバーの基板側の面)のうち、基板の凹部と対向していない部位には、第2の粘着層を設けてもよく、設けなくともよい。
【0101】
カバーを基板から剥離しやすくする観点から、カバーの基板側の面のうち基板の凹部と対向していない部位には、第2の粘着層を設けなくてもよく、又は、第2の粘着層とは異なる剥離層を設けて基板と剥離可能に接着してもよい。
【0102】
香料成分の揮発を防ぐ観点から、カバーの基板側の面のうち、基板の凹部と対向していない部位に第2の粘着層を設けない場合、嗅覚検査具の全体を包装容器(包装袋等)内に密閉して保存することが好ましい。
かかる態様の嗅覚検査具は、粘着剤の使用量や接着工程の負担を低減し得るため、製造コスト等を抑えることができる。
【0103】
香料成分の揮発を防ぐ観点から、カバーの基板側の面のうち基板の凹部と対向していない部位には、第2の粘着層とは異なる剥離層を設け、カバーを基板から剥離可能に接着することが好ましい。
剥離層の成分としては、基板から剥離しやすいものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、界面活性剤等が挙げられる。
【0104】
カバーの基板(凹部)と対向する側とは反対側の面(カバーの基板側とは反対の面)には任意の処理を行ってもよく、行わなくともよい。
カバーの基板側とは反対の面に対する処理としては、印刷処理、剥離きっかけ加工等が挙げられる。例えば、カバーの基板側とは反対の面には、使用方法、QRコード(登録商標)、バーコード等の表示を印刷又は点字を形成してもよい。
【0105】
(嗅覚検査具の保存)
本発明の嗅覚検査具は、製造後、香料成分の分解等を防ぐ観点から、包装容器に封入してもよい。このような包装容器は、光や紫外線等を遮断できるものであれば、材料や形状等は特に限定されない。
【0106】
包装容器としては、アルミニウム製のパウチ、小箱等が挙げられる。ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、無臭の材料から得られるものが好ましい。
【0107】
本発明の嗅覚検査具によれば、製造後、25℃で2年以上保存した場合であっても、意図しない箇所への香気成分の吸着が抑制されている。
【0108】
<嗅覚検査キット>
本発明は、本発明の嗅覚検査具と、被筆記体とを備える、嗅覚検査キットも包含する。
【0109】
本発明において「被筆記体」とは、筆記具(ペン等)を用いて筆記される対象を意味する。
被筆記体には、嗅覚検査に関する被験者の回答等を記入することができる。
被筆記体には、嗅覚検査に関する選択肢(例えば、においの種類に関する正解を含む複数の選択肢)や注意事項等が予め印刷されていてもよい。
【0110】
被筆記体は、本発明の嗅覚検査具と一体であってもよく、別体であってもよい。
【0111】
被筆記体の材料等は特に限定されないが、筆記を妨げない観点から、通常は紙が採用され得る。
【0112】
<嗅覚検査具の製造方法>
本発明は、嗅覚検査具の製造方法も包含する。
本発明の嗅覚検査具の製造方法は、
基板の表面に、第1の粘着層を有する凹部を形成する凹部形成工程と、
該凹部の内部に、香料成分を含むカプセルを配置し、かつ、該カプセルの表面の少なくとも一部を第1の粘着層に接着するカプセル配置工程と、
第2の粘着層を有するカバーによって該基板の表面を覆い、かつ、該第1の粘着層に接着された該カプセルの表面の少なくとも一部を第2の粘着層に接着するカバー工程と、を含む。
【0113】
本発明の嗅覚検査具の製造方法における各種構成は、上述のものを採用できる。
【0114】
<嗅覚検査具を用いた嗅覚検査方法>
以下に、本発明の嗅覚検査具を用いた嗅覚検査方法の好ましい一例を挙げる。
(1)被験者又は医療従事者が包装容器から嗅覚検査具を取り出す。
(2)被験者又は医療従事者が嗅覚検査具のカバーを剥がすことでカプセルを破壊し、香気成分からのにおいを生じさせる。
(3)被験者が、嗅覚検査具(主に基板の凹部)に鼻を近づけ、においをかぐ。
(4)被験者が、被筆記体に記載された選択肢に基づき、回答する。
【実施例0115】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0116】
<嗅覚検査具の作製>
以下の方法で、嗅覚検査具を作製した。なお、本例における嗅覚検査具は、
図2に示される構造を有する嗅覚検査具に相当する。
【0117】
(カプセルの準備)
日本国特許第3694409号公報に記載された方法に準じて、以下の方法に基づき、香料成分を含むカプセルを準備した。
(1)香料成分を、25質量%水溶性高分子水溶液で乳化し、香料を5~10μmの油滴として乳化分散させ、乳化液を得た。
香料成分としては、市販の香料(メントール、バラ由来香料、コーヒー由来香料、柑橘オイル、カレー由来香料、木材由来香料のいずれか)を用いた。
水溶性高分子としては、アラビアゴムを用いた。
香料成分と、水溶性高分子水溶液との混合比(質量比)は、香料成分:水溶性高分子水溶液=1:7に設定した。
(2)得られた乳化液に、10質量%メラミンプレポリマー水溶液を混合し、pHを7.5~7.8の範囲に調整しながら硬化触媒を滴下し、ゲルを得た。
香料成分と、メラミンプレポリマー水溶液との混合比(質量比)は、香料成分:メラミンプレポリマー水溶液=5:1に設定した。
硬化触媒としては、グルタルアルデヒドを用いた。
(3)ゲルを、45℃で60分加熱し、香料成分の油滴(芯物質)の周囲に膜(壁物質)を形成させた。
得られたカプセルをアセトンで洗浄し、乾燥させた後、篩にかけ、香料成分を含むカプセルを粉末(平均粒径10μm)として得た。
(4)カプセルを溶媒に分散させ、カプセル含有分散液を調整した。
カプセルと、溶媒との混合比(質量比)は、カプセル:溶媒=1:6に設定した。
溶媒としては、イソプロピルアルコールを用いた。
【0118】
(基板の準備)
基板として、紙基材(市販のカード台紙、縦5.5cm×横9.1cm×厚さ0.2mm)を準備した。
該カード台紙の片面の全体に、第1の粘着層、及び離型層をこの順で設けた。
第1の粘着層の成分としては、アクリル系粘着剤を使用した。第1の粘着層の厚さは35μmに設定した。
離型層の成分としては、シリコーン系離型剤を使用した。
【0119】
(凹部形成工程)
上記基板をエンボス加工し、縦0.5cm×横0.5cm×深さ0.1mmの5×5マスの凹部を設けた。
【0120】
(カプセル配置工程)
基板の離型層を剥がし、第1の粘着層を露出させた。
次いで、ホットメルトディスペンサーによって、凹部の内部に、カプセル含有分散液を70μlずつ充填して液面を均一にならした後、60℃で5分静置し乾燥させた。
カプセル含有分散液は、凹部から流出しないように凹部の内部全体に行き渡らせ、カプセル含有分散液の液面が、凹部側壁の最上部の高さと近接するように調整した。
上記の操作により、香料成分を含むカプセルを、その表面の少なくとも一部が第1の粘着層に接着するように凹部の内部に配置した。
目視により、凹部の内部のカプセルの表面の一部が露出していることを確認した。
なお、本工程で凹部の内部に入れた各香料成分の量は、正常な嗅覚を有する者であれば、強いにおいを感じる程度の量である。
【0121】
(カバー工程)
香料成分を含むカプセルを凹部の内部に配置した後、第2の粘着層を有するカバー(縦4cm×横4cm×厚さ0.14mm)によって基板の表面全体を覆った。
具体的には、カバーの第2の粘着層を基板の凹部と対向する面に配置して凹部の縁とカバーとを接着し、次いで、カバーの第2の粘着層とカプセルの表面の少なくとも一部とを圧着によって接着し、本発明の要件を満たす嗅覚検査具を得た。
カプセルの一部について、その表面の少なくとも一部が第1の粘着層及び第2の粘着層の両方に接着されていることを確認した。
【0122】
カバーとしては、表基材と第2の粘着層とからなるものを使用した。これらの詳細は、以下の表1のとおりである。
【0123】
【0124】
表1中、各略記の詳細は以下のとおりである。
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン含有率=25~50mol%)
PAN:ポリアクリロニトリル(アクリロニトリル含有率=75mol%)
COC:環状オレフィン系樹脂(エチレンとシクロオレフィンとの共重合体)
PET:非結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステルに相当する)
PE:低密度ポリエチレン樹脂
【0125】
(被筆記体)
上記で得られた嗅覚検査具には、基板の表面の一部に市販のメモ紙を貼り付けた。本例において、該メモ紙は被筆記体に相当する。
【0126】
<嗅覚検査試験>
以下の方法で、上記で得られた嗅覚検査具を用いて嗅覚検査試験を行った。
【0127】
上記で得られた嗅覚検査具を、それぞれ、25℃で1年保存した。
次いで、同一のモニター(正常な嗅覚を有する。)に、各嗅覚検査具のカバーを剥がさせ、下記基準に基づく各香料成分のにおいの強さを被筆記体に記入させた。その結果を表2に示す。
【0128】
(香料成分のにおいの強さの評価基準)
◎:香料成分のにおいを強く感じる。
○:香料成分のにおいを感じるが、「◎」ほどの強さではない。
×:香料成分のにおいを弱く感じるか、又は、香料成分のにおいを感じない。
【0129】
【0130】
上記の結果のとおり、本発明の要件を満たす嗅覚検査具によれば、1年間の保存後であっても、香料成分のにおいが強く残っており、好ましく嗅覚検査に使用できることがわかった。
【0131】
なお、異なるモニター10名(それぞれ、正常な嗅覚を有する。)によって同様に嗅覚検査試験を行ったが、上記同様の評価結果が得られた。