(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190543
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】嗅覚検査具、嗅覚検査キット、及び嗅覚検査具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61B10/00 X
A61B10/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098914
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正直
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制された嗅覚検査具を提供することである。
【解決手段】本発明は、基板と、前記基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、前記基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、前記カバーが、前記香料層と対向し、前記カバーの前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、嗅覚検査具を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、
前記基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、
前記カバーが、前記香料層と対向し、
前記カバーの前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具。
【請求項2】
前記カバーが、前記香料層に対向する位置に設けられた開口部と、前記開口部の全体を開閉可能に覆うフラップとを有し、
前記フラップの前記香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
請求項1に記載の嗅覚検査具。
【請求項3】
前記基板の表面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上によってコーティングされた、請求項1又は2に記載の嗅覚検査具。
【請求項4】
包装容器と、前記包装容器内に封入された基板とを備える嗅覚検査具であって、
前記基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、
前記包装容器における前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具。
【請求項5】
前記包装容器が、前記香料層に対向する位置に設けられた開口部と、前記開口部の全体を開閉可能に覆うフラップとを有し、
前記フラップの前記香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
請求項4に記載の嗅覚検査具。
【請求項6】
前記基板の表面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上によってコーティングされた、請求項4又は5に記載の嗅覚検査具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載された嗅覚検査具と、被筆記体とを備える、嗅覚検査キット。
【請求項8】
基板の表面に、香料成分を含む香料層を配置する香料層配置工程と、
カバーによって前記基板の表面を覆うカバー工程と、
を含み、
前記カバーが、前記香料層と対向し、
前記カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具の製造方法。
【請求項9】
基板の表面に、香料成分を含む香料層を配置する香料層配置工程と、
包装容器内に前記基板を封入する封入工程と、
を含み、
前記包装容器における前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嗅覚検査具、嗅覚検査キット、及び嗅覚検査具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嗅覚検査具は、様々なものが開発されており、例えば、マイクロカプセル化された香料成分を用いた嗅覚検査具が知られる(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者の検討の結果、嗅覚検査具の保存時に、香料成分が経時的に揮発等し、香料成分が意図しない箇所(例えば、嗅覚検査具のカバー等)に吸着する結果、嗅覚検査時ににおいが薄くなり得るという問題が見出された。かかる場合、嗅覚検査具による検査精度が損なわれ得る。
【0005】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制された嗅覚検査具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、香料成分を含む香料層を有する基板と、該基板を覆うカバー又は該基板を封入する包装容器と、を備える嗅覚検査具において、カバー又は包装容器の面のうち、該香料層と対向する面に含まれる構成成分を調整することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1) 基板と、前記基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、
前記基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、
前記カバーが、前記香料層と対向し、
前記カバーの前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具。
【0008】
(2) 前記カバーが、前記香料層に対向する位置に設けられた開口部と、前記開口部の全体を開閉可能に覆うフラップとを有し、
前記フラップの前記香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
(1)に記載の嗅覚検査具。
【0009】
(3) 前記基板の表面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上によってコーティングされた、(1)又は(2)に記載の嗅覚検査具。
【0010】
(4) 包装容器と、前記包装容器内に封入された基板とを備える嗅覚検査具であって、
前記基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、
前記包装容器における前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具。
【0011】
(5) 前記包装容器が、前記香料層に対向する位置に設けられた開口部と、前記開口部の全体を開閉可能に覆うフラップとを有し、
前記フラップの前記香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
(4)に記載の嗅覚検査具。
【0012】
(6) 前記基板の表面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上によってコーティングされた、(4)又は(5)に記載の嗅覚検査具。
【0013】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載された嗅覚検査具と、被筆記体とを備える、嗅覚検査キット。
【0014】
(8) 基板の表面に、香料成分を含む香料層を配置する香料層配置工程と、
カバーによって前記基板の表面を覆うカバー工程と、
を含み、
前記カバーが、前記香料層と対向し、
前記カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具の製造方法。
【0015】
(9) 基板の表面に、香料成分を含む香料層を配置する香料層配置工程と、
包装容器内に前記基板を封入する封入工程と、
を含み、
前記包装容器における前記香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む、
嗅覚検査具の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制された嗅覚検査具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す外観斜視図である。
【
図4】本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す外観斜視図である。
【
図6】本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す断面図である。
【
図7】本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す外観斜視図である。
【
図8】本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<嗅覚検査具>
本発明の嗅覚検査具は、2つの態様に係る嗅覚検査具を包含する。
【0020】
本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具は、基板と、該基板の表面を覆うカバーとを備える嗅覚検査具であって、該基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、該カバーが、該香料層と対向し、該カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含むものである。
【0021】
本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具は、包装容器と、該包装容器内に封入された基板とを備える嗅覚検査具であって、該基板の表面が、香料成分を含む香料層を有し、該包装容器における該香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含むものである。
【0022】
<嗅覚検査具の構成例>
以下、適宜図面を参照し、本発明の嗅覚検査具の構成例を説明する。
【0023】
(第1の態様に係る嗅覚検査具の構成例)
図1に、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具(1)の外観斜視図を示す。
図2に、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具(1)の断面図を示す。
嗅覚検査具(1)は、基板(10)と、基板(10)の表面を覆うカバー(20)とを備える。
図2に示されるとおり、基板(10)の表面には、香料成分を含む香料層(30)が設けられており、かつ、該香料層(30)は、その表面の全体がカバー(20)と対向している。
カバー(20)における香料層(30)と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
【0024】
図2においては、基板(10)とカバー(20)との間に隙間があるが、基板(10)とカバー(20)とはその全体又は一部が密着していてもよい。
また、基板(10)とカバー(20)とは、
図2に示すような外周縁同士、又はその他の部位同士で接着されていてもよい。
【0025】
本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具(1)は、カバー(20)がフラップ(21)を備えていてもよい。
図3に、フラップ(21)を有する、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具(1)の外観斜視図を示す。
図4に、フラップ(21)を有する、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具(1)の断面図を示す。
フラップ(21)は、カバー(20)の表面に開けられた開口部(22)の全体を開閉可能に覆い、かつ、香料層(30)と対向する。したがって、フラップ(21)をめくることで、香料層(30)を露出させることができる。
【0026】
(第2の態様に係る嗅覚検査具の構成例)
図5に、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具(1’)の外観斜視図を示す。
図6に、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具(1’)の断面図を示す。
嗅覚検査具(1’)は、包装容器(40)と、包装容器(40)の内部に封入された基板(10)とを備える。
図5及び6に示した包装容器(40)は袋状であり、通常1つの袋口部を有し、該袋口部から基板(10)が内部に封入される。
図6に示されるとおり、基板(10)の表面には、香料成分を含む香料層(30)が設けられており、かつ、該香料層(30)はその表面の全体が包装容器(40)の内層と対向している。
包装容器(40)における香料層(30)と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
【0027】
図6においては、基板(10)と包装容器(40)との間に隙間があるが、基板(10)と包装容器(40)とはその全体又は一部が密着していてもよい。
【0028】
本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具(1’)は、包装容器(40)がフラップ(41)を備えていてもよい。
図7に、フラップ(41)を有する、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具(1’)の外観斜視図を示す。
図8に、フラップ(41)を有する、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具(1’)の断面図を示す。
フラップ(41)は、包装容器(40)の表面に開けられた開口部(42)の全体を開閉可能に覆い、かつ、香料層(30)と対向する。したがって、フラップ(41)をめくることで、香料層(30)を露出させることができる。
【0029】
なお、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具において、包装容器の「袋口部」とは、基材を包装容器内に入れるための口部を意味し、包装容器の「開口部」とは、フラップにより閉じられ、包装容器の香料層に対向する位置に設けられた口部を意味する。
【0030】
<第1の態様に係る嗅覚検査具の詳細>
以下、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具の各部の詳細について説明する。
【0031】
(基板)
基板は、香料成分を含む香料層を備える点以外は、形状、大きさ、材質等について特に限定されない。
ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、通常、基板の材料としては無臭のものが採用され得る。
【0032】
基板の形状は、例えば、矩形(長方形、正方形等)、円形等であってもよい。
扱いやすさの観点から、基板の好ましい形状としては、名刺型(例えば、55mm×91mmの矩形)が挙げられる。
【0033】
基板の大きさは、特に限定されないが、その表面に嗅覚検査における充分量の香料成分を含む香料層を設けることができる程度の大きさであり得る。
【0034】
基板が矩形である場合、基板の縦及び横方向の寸法の下限は、好ましくは0.7cm以上、より好ましくは2.0cm以上である。
基板の縦及び横方向の寸法の上限は、好ましくは45.0cm以下、より好ましくは32.5cm以下である。
【0035】
基板が円形である場合、基板の直径の下限は、好ましくは1.0cm以上、より好ましくは3.0cm以上である。
基板の直径の上限は、好ましくは50.0cm以下、より好ましくは35.0cm以下である。
【0036】
基板の厚さの下限は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。
基板の厚さの上限は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
【0037】
基板の材質は、特に限定されないが、例えば、紙基材(カード台紙等)、樹脂(例えば、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等)等であってもよい。
【0038】
基板の表面は、カールやヨレ等がなく、平坦であることが好ましい。
【0039】
基板は、好ましくは、印刷適性、貼り合わせ特性、耐水性、酸素バリア性等を有する。
基板に所望の特性を付与する観点から、基板は、任意の樹脂層が形成されたものや、表面処理等が施されたものであってもよい。このような表面処理としては、アンカーコート剤等の塗布、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理(酸素ガス又は窒素ガス等を用いたプラズマ処理)、グロー放電処理、酸化処理(化学薬品等を用いた酸化処理)等が挙げられる。
【0040】
基板は、単層でもよく、2層以上の多層シートであってもよい。
【0041】
基板の表面や裏面には、目的に応じて、任意の方法で印刷が施されていてもよい。
例えば、基板の表面のうち香料層が設けられていない箇所に、被験者への注意事項、嗅覚検査への回答欄等を印刷してもよい。
【0042】
基板の表面のうち、その全体や香料成分を設ける面には、香料成分が吸着しにくい成分(例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上)によってコーティングを行ってもよく、行わなくともよい。
基板の表面をこのようにコーティングすることで、意図しない箇所への香料成分の吸着をより効率的に抑制できる。
コーティングは、基板の表面の一部(例えば、香料成分を含む香料層を配置していない面)に行ってもよい。または、コーティングは、基板の表面の全体に行ってもよく、かかる場合、香料成分を含む香料層を、コーティングの上に配置してもよい。
【0043】
(香料成分を含む香料層)
基板の表面の全体又は一部には、香料成分を含む香料層が配置される。香料層には、嗅覚検査に充分な程の量で香料成分が含まれる。なお、基板の外周縁がカバーと接合される場合は、基板の外周縁を除く部位の全体又は一部に香料層が配置される。
【0044】
香料層の厚さや質量は特に限定されず、含まれる香料成分の種類や量等に応じて適宜設定できる。
【0045】
香料成分の種類は特に限定されないが、嗅覚検査に使用できる任意の成分を採用できる。香料成分は、通常、油溶性成分(オイル等)が使用され得る。
【0046】
香料成分は、天然香料であってもよく、合成香料であってもよい。香料成分は、1つの成分からなるものであってもよく、複数の成分からなるものであってもよい。
【0047】
香料成分としては、例えば、果物(柑橘類等)由来の成分、花(バラ等)由来の成分、木材(スギ、ヒノキ等)由来の成分、食品(カレー等)由来の成分、飲料(コーヒー等)由来の成分、合成化合物(メントール等)等が挙げられる。
【0048】
香料成分は、必要に応じて加工されたものであってもよい。加工された香料成分としては、例えば、カプセル化された香料成分等が挙げられる。
カプセルの形態は特に限定されないが、通常、香料(芯物質)のまわりに膜(壁物質)が形成された構造を有する。
カプセルの製造方法は、特に限定されないが、日本国特許3694409号公報に記載された方法を好ましく採用できる。
【0049】
香料成分を含む香料層は、任意の方法で、基板の表面に配置することができる。
具体的には、以下の方法が挙げられる。
(方法1)溶媒に分散された香料成分を噴霧等によって塗布する方法
(方法2)溶媒に分散された香料成分をスクリーン印刷等によって印刷する方法
(方法3)溶媒に分散された香料成分をディスペンサーによって配置する方法
【0050】
上記のいずれの方法においても、溶媒の種類は特に限定されない。
溶媒としては、香料成分との反応性が低いインキ(トルエン、メチルエチルケトン(МEK)、酢酸エチル、イソプロピルアルコール(IPA)等)、熱可塑性固形溶媒(ワックス、ポリビニルアルコール(ポバール)、高沸点脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸等)等)等が挙げられる。
【0051】
上記のいずれの方法においても、適宜乾燥や固化等させることで、基板の表面に保持された香料層が得られる。
【0052】
上記(方法3)について、ディスペンサーを用いた方法としては、日本国特許第5874169号公報、日本国特許第5982737号公報等に記載された方法を好ましく採用できる。
【0053】
(基板の表面を覆うカバー)
基板の表面を覆うカバーは、所定の樹脂を含み、基板表面の少なくとも一部又は全体に配置され、基板の表面の香料層の全体を覆う可撓性を有するシート状の部材である。
【0054】
基板の表面を覆うカバーは、香料層と対向する面にエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
カバーがこのような樹脂成分を含むことで、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制される。したがって、該カバーを備える本発明によれば、嗅覚検査において充分なにおいを生じる嗅覚検査具が得られる。
【0055】
本発明において「意図しない箇所への香料成分の吸着」とは、香料成分が配置された部分(基板の表面)以外の、嗅覚検査具内の任意の部分(例えば、嗅覚検査具のカバー等)への香料成分の吸着を意味する。
このような吸着が生じることにより、嗅覚検査時に、香料成分のにおいが薄くなるため、嗅覚検査具による嗅覚障害の検査精度が損なわれ得る。
【0056】
本発明において意図しない箇所への香料成分の吸着が生じたかどうかは、香料成分が配置された部分(基板の表面)以外の、嗅覚検査具内の任意の部分(例えば、嗅覚検査具のカバー等)の質量を、香料成分の配置前後において測定することで特定できる。
例えば、香料成分の配置後の嗅覚検査具のカバーの質量が、香料成分の配置前の嗅覚検査具のカバーの質量よりも大きい場合、意図しない箇所への香料成分の吸着が生じたものと判断できる。
【0057】
基板の表面を覆うカバーは、好ましくは、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上からなる。
【0058】
エチレン-ビニルアルコール共重合体としては特に限定されないが、エチレン含有率が25mol%以上50mol%以下であることが好ましい。
【0059】
ポリアクリロニトリルとしては特に限定されないが、アクリロニトリル含有率が75mol%であることが好ましい。
ポリアクリロニトリルには、アクリル酸メチルが25%mol%以下含まれていてもよい。
【0060】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)のいずれであってもよい。
【0061】
環状オレフィンポリマーとは、環状オレフィンモノマーを開環重合した後、2重結合を水素添加することによって得られる重合体である。
環状オレフィンモノマーとしては、ノルボルネン等が挙げられる。
【0062】
環状オレフィンコポリマーとは、環状オレフィンモノマーと、α-オレフィンとの付加重合体である。
環状オレフィンモノマーとしては、ノルボルネン等が挙げられる。
α-オレフィンとしては、炭素原子数3以上20以下のα-オレフィン(ヘキセン、オクテン、及びデセン等)が挙げられる。
【0063】
ポリエステルとは、多価カルボン酸とポリアルコールとを、脱水縮合してエステル結合させることによって得られる重合体である。
ポリエステルとしては、非結晶性ポリエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、テレフタル酸等が挙げられる。
ポリアルコールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0064】
カバーに含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量は、特に限定されない。
カバーに含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の下限は、カバーの質量全体に対して、好ましくは70質量%以上である。
カバーに含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の上限は、カバーの質量全体に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下である。
【0065】
カバーは、単層であってもよく、多層であってもよい。
【0066】
カバーが多層である場合、基板側の層(内層)に、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上が含まれることが好ましい。
カバーの内層に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の下限は、カバーの内層全体に対して、好ましくは70質量%以上である。
カバーの内層に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の上限は、カバーの内層全体に対して、好ましくは100質量%以下である。
【0067】
カバーは、基板の表面に固設されていてもよく、固設されていなくともよい。接合部には、両面テープ等を用いることができる。
カバーと基板とは、ヒートシールやラミネートによって接着されていてもよい。
カバーにおいて、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む層を基板側の層(内層)に設けると、ヒートシールを行うこともできる。
【0068】
接合部の位置は特に限定されないが、基板表面の香料層が設けられた部分以外の任意の部分や、カバーにおける香料層と対向する面以外の任意の部分が挙げられる。
加工のしやすさの観点等から、接合部は、カバーの外周縁や基板の外周縁であることが好ましい。
【0069】
カバーは、好ましくは、基板の表面のうち香料層が設けられた面において、香料層が設けられた部分以外の箇所に、香料層が外気に触れないよう固設される。このように固設する方法としては、例えば、香料層の外周縁や基板の縁全体に接着剤を付け、基板とカバーとを貼り合わせる方法等が挙げられる。
カバーがこのように固設されることで、嗅覚検査具の外側へ香料成分が揮発することを防ぐので、基材やカバーに香料成分が吸着することを防ぎつつ、嗅覚検査において充分なにおいを生じる嗅覚検査具がより得られやすくなる。
【0070】
カバーには、貼り合わせ特性、酸素バリア性、水蒸気バリア性を付与する観点から、表面処理が施されていてもよい。
表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV処理等が挙げられる。
【0071】
カバーの厚さは特に限定されない。
カバーの厚さの下限は、好ましくは7μm以上、より好ましくは15μm以上である。
カバーの厚さの上限は、好ましくは150μm以下、より好ましくは55μm以下である。
【0072】
カバーの形状は特に限定されないが、基板の形状等に応じて適宜設定できる。
カバーの形状としては、例えば、矩形、円形等が挙げられる。
【0073】
カバーの大きさは、基板の表面の香料層の全体を覆う大きさであれば特に限定されない。通常、カバーは、基板の表面の香料層よりも広い面を有する。
【0074】
香料成分の揮発を防ぐ観点から、カバーの基板側の面のうち香料層と対向していない部位には、剥離層を設け、カバーを基板から剥離可能に接着することが好ましい。
剥離層の成分としては、基板から剥離しやすいものであれば特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、界面活性剤等が挙げられる。
【0075】
カバーの基板(香料層)と対向する側とは反対側の面(カバーの基板側とは反対の面)には任意の処理を行ってもよく、行わなくともよい。
カバーの基板側とは反対の面に対する処理としては、印刷処理、剥離きっかけ加工等が挙げられる。例えば、カバーの基板側とは反対の面には、使用方法、QRコード(登録商標)、バーコード等の表示を印刷又は点字を形成してもよい。
【0076】
[フラップ]
カバーは、その表面に、開口部と、該開口部の全体を開閉可能に覆うフラップとを有していてもよい。カバーにフラップを設ける場合、フラップは、香料層と対向するように配置され、かつ、香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
嗅覚検査がこのようなフラップを有していると、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制されるだけではなく、香料層を簡単に露出させることができ、被験者が嗅覚検査を容易に実施しやすくなる。
【0077】
カバーがフラップを備える場合、カバーの開口部の周縁のうち、香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含むことが好ましい。
かかる態様によれば、意図しない箇所への香料成分の吸着をより効果的に抑制できる。
【0078】
本発明において「フラップが開口部の全体を開閉可能に覆う」とは、フラップが開口部の全体を覆うように、かつ、剥離可能に固設されていることを意味する。したがって、フラップの大きさは、通常、開口部と同形であるか、開口部の全体よりも大きく設定される。
【0079】
フラップと開口部とを剥離可能に固設する方法としては特に限定されないが、開口部の外周縁に剥離可能な接着剤(シリコーン樹脂、イージーピール熱シール樹脂、弱粘着樹脂等)を付け、フラップを貼り合わせる方法等が挙げられる。
イージーピール熱シール樹脂としては、市販のイージーピールフィルムを使用でき、例えば、商品名「CMPS」(四国トーセロ株式会社製)、商品名「トレファンCF」(東レフィルム加工株式会社製)、商品名「DIFAREN」(DIC株式会社製)、商品名「VМX」(ジェイフィルム株式会社製)等が挙げられる。
弱粘着樹脂としては、剥離強度が弱粘着である市販の樹脂を使用でき、例えば、アクリル系粘着剤、エラストマー系粘着剤等が挙げられる。
【0080】
開口部の大きさや形状は特に限定されず、香料層の大きさや形状等に応じて選択できる。
開口部の大きさや形状は、通常、香料層の一部又は全体が露出するように設定される。
【0081】
開口部は、カバーの表面の一部を、任意の手段(エッチング加工、彫刻抜き刃加工、レーザー加工等)で切り抜くことで得られる。
【0082】
フラップは、香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む点以外は特に限定されない。
好ましくは、フラップは、香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上からなる。
【0083】
(第1の態様に係る嗅覚検査具の保存)
本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具は、製造後、香料成分の分解等を防ぐ観点から、包装容器に封入してもよい。このような包装容器は、光や紫外線等を遮断できるものであれば、材料や形状等は特に限定されない。
【0084】
包装容器としては、アルミニウム製のパウチ、小箱等が挙げられる。ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、無臭の材料から得られるものが好ましい。
【0085】
本発明の嗅覚検査具によれば、製造後、25℃で2年以上保存した場合であっても、意図しない箇所への香気成分の吸着が抑制されている。
【0086】
<第2の態様に係る嗅覚検査具の詳細>
以下、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具の各部の詳細について説明する。
【0087】
(基板)
基板の構成は、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具におけるものと同様の構成を採用できる。
【0088】
(香料成分を含む香料層)
香料層の構成は、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具におけるものと同様の構成を採用できる。
【0089】
(包装容器)
包装容器は、所定の樹脂を含み、かつ、その内部に基板を封入するものである。本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具は、香料層を有する基板が包装容器内に封入されることにより、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制されるだけではなく、香気成分の分解等を防ぐこともできる。
【0090】
包装容器は、その内部に基板の全体を入れることができ、香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含むものであれば特に限定されない。
エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルは、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具におけるものと同様の樹脂を使用できる。
【0091】
包装容器の構成としては、揮発性成分を含む医薬品等の保存に使用され得るもの(パウチ袋等)を好ましく使用できる。
香料成分の分解等を防ぐ観点から、包装容器は、通常、基板から光や紫外線等を遮断できる構成が採用される。
【0092】
包装容器の形状は特に限定されず、袋状、小箱状等が挙げられる。
【0093】
包装容器の大きさは特に限定されず、内部に入れる基板の大きさ等に応じて設定できる。
【0094】
包装容器に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量は、特に限定されない。
包装容器に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の下限は、包装容器の質量全体に対して、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
包装容器に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の上限は、包装容器の質量全体に対して、好ましくは100質量%以下である。
【0095】
包装容器は、単層若しくは多層のフィルムを含むもの、又は、単層若しくは多層のフィルムからなるものであってもよい。
【0096】
包装容器を構成するフィルムの厚さは特に限定されない。
フィルムの厚さの下限は、フィルムが単層である場合、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上である。
フィルムの厚さの上限は、フィルムが単層である場合、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下である。
フィルムの厚さの下限は、フィルムが多層である場合、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。
フィルムの厚さの上限は、フィルムが多層である場合、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下である。
【0097】
包装容器は、例えば、単層若しくは多層のフィルムを2枚重ね、基板を入れるための袋口部以外を、接着剤を用いて貼り合わせることで得られる。
ただし、この態様において、フィルムの内層のうち、香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含むことを要する。
この態様において、フィルムの内層のうち、香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上のみからなることが好ましい。
【0098】
多層フィルムにおける層の数は特に限定されず、2層以上(例えば、3層)であり得る。
【0099】
多層フィルムの層のうち、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む層以外の層に含まれる成分としては特に限定されない。ただし、嗅覚検査を阻害しない観点から、無臭の材料が好ましい。
多層フィルムの層に含まれる成分としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、ステンレス等)、樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン等)、不織布、紙等が挙げられる。
【0100】
例えば、多層フィルムが3層である場合、好ましい態様は、内層、中間層、及び外層がそれぞれ、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む層、アルミニウムを含む層、及びポリエステルを含む層である。
【0101】
多層フィルムの内層に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の下限は、内層の質量全体に対して、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
多層フィルムの内層に含まれるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上の含有量の上限は、内層の質量全体に対して、好ましくは100質量%以下である。
【0102】
[フラップ]
包装容器は、その表面に、開口部と、該開口部の全体を開閉可能に覆うフラップとを有していてもよい。包装容器にフラップを設ける場合、フラップは、香料層と対向するように配置され、かつ、香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
嗅覚検査がこのようなフラップを有していると、意図しない箇所への香料成分の吸着が抑制されるだけではなく、香料層を簡単に露出させることができ、被験者が嗅覚検査を容易に実施しやすくなる。
【0103】
開口部やフラップの構成は、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具におけるものと同様の構成を採用できる。
【0104】
包装容器がフラップを備える場合、包装容器の開口部の周縁のうち、香料層と対向する面は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含むことが好ましい。
かかる態様によれば、意図しない箇所への香料成分の吸着をより効果的に抑制できる。
【0105】
(包装容器内への基板の封入)
包装容器の袋口部から、基板全体を包装容器の中に入れること等により、包装容器内へ基板を封入できる。
基板を入れた後、包装容器の袋口部を任意の手段(接着剤等)によって閉じ、基板を密封することが好ましい。
【0106】
(第2の態様に係る嗅覚検査具の保存)
本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具によれば、製造後、25℃で2年以上保存した場合であっても、意図しない箇所への香気成分の吸着が抑制されている。
【0107】
<嗅覚検査キット>
本発明は、本発明の嗅覚検査具と、被筆記体とを備える、嗅覚検査キットも包含する。
【0108】
本発明において「被筆記体」とは、筆記具(ペン等)を用いて筆記される対象を意味する。
被筆記体には、嗅覚検査に関する被験者の回答等を記入することができる。
被筆記体には、嗅覚検査に関する選択肢(例えば、においの種類に関する正解を含む複数の選択肢)や注意事項等が予め印刷されていてもよい。
【0109】
被筆記体は、本発明の嗅覚検査具と一体であってもよく、別体であってもよい。
【0110】
被筆記体の材料等は特に限定されないが、筆記を妨げない観点から、通常は紙が採用され得る。
【0111】
<嗅覚検査具の製造方法>
本発明は、嗅覚検査具の製造方法も包含する。
【0112】
本発明の第1の態様に係る製造方法は、
基板の表面に、香料成分を含む香料層を配置する香料層配置工程と、
カバーによって該基板の表面を覆うカバー工程と、
を含み、
該カバーが、該香料層と対向し、
該カバーが、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
【0113】
本発明の第2の態様に係る製造方法は、
基板の表面に、香料成分を含む香料層を配置する香料層配置工程と、
包装容器内に該基板を封入する封入工程と、
を含み、
該包装容器における該香料層と対向する面が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、環状オレフィン系樹脂、及びポリエステルからなる群から選択される1以上を含む。
【0114】
本発明の嗅覚検査具の製造方法における各種構成は、上述のものを採用できる。
【0115】
<嗅覚検査具を用いた嗅覚検査方法>
以下に、本発明の嗅覚検査具を用いた嗅覚検査方法の好ましい一例を挙げる。
【0116】
本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具を用いた例は以下のとおりである。
(1)被験者又は医療従事者がカバーを剥がすか、又はフラップをめくることで、基板表面の香料層を露出させる。
(2)被験者が、香料層に鼻を近づけ、においをかぐ。
(3)被験者が、被筆記体に記載された選択肢に基づき、回答する。
【0117】
本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具を用いた例は以下のとおりである。
(1)被験者又は医療従事者が包装容器の外周縁を切り取るか、又はフラップをめくることで、基板表面の香料層を露出させる。
(2)被験者が、香料層に鼻を近づけ、においをかぐ。
(3)被験者が、被筆記体に記載された選択肢に基づき、回答する。
【実施例0118】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0119】
<嗅覚検査具の作製-1>
以下の方法で、本発明の第1の態様に係る嗅覚検査具を作製した。なお、本例における嗅覚検査具は、
図3に示される構造を有する嗅覚検査具に相当する。
【0120】
(香料成分の準備)
香料成分を、25質量%水溶性高分子水溶液で乳化し、香料を5~10μmの油滴として乳化分散させ、香料成分を乳化液として調製した。
香料成分としては、市販の香料(メントール、バラ由来香料、コーヒー由来香料、柑橘オイル、カレー由来香料、木材由来香料のいずれか)を用いた。
水溶性高分子としては、アラビアゴムを用いた。
香料成分と、水溶性高分子水溶液との混合比(質量比)は、香料成分:水溶性高分子水溶液=1:7に設定した。
【0121】
(基板の準備)
基板として、紙基材(市販のカード台紙、縦5.5cm×横9.1cm×厚さ0.2mm)を準備した。
【0122】
(カバーの準備)
カバーとして、表1に示す表基材のいずれかからなるもの(縦4cm×横4cm×厚さ0.14mm)を使用した。
【0123】
【0124】
表1中、各略記の詳細は以下のとおりである。
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン含有率=25~50mol%)
PAN:ポリアクリロニトリル(アクリロニトリル含有率=75mol%)
COC:環状オレフィン系樹脂(エチレンとシクロオレフィンとの共重合体)
PET:非結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステルに相当する)
PE:低密度ポリエチレン樹脂
【0125】
また、本例で使用したカバーは、開口部(縦4.0cm×横6.0cm)と、かつ、該開口部の全体を開閉可能に覆うフラップ(4.0cm×横1.8cm)を有する。
フラップの材料は、各カバーの材料として用いた表基材と同様である。
開口部の縁全体に接着剤を塗布し、開口部全体を覆うようにフラップを貼り合わせ、開口部の縁全体とフラップとを剥離可能に接着した。なお、接着剤としてはアクリル系接着剤(商品名「オリバイン(商標)BPS 5448」、トーヨーケム社製)を用いた。
【0126】
(香料層配置工程)
香料成分を含む乳化液を、エアブラシを用いて、基板の片面の一部に噴霧した。噴霧量は、乾燥重量として1mgに設定した。
噴霧後、60℃で15分静置し、乳化液を乾燥させ、香料層を得た。
なお、本工程で得られた香料層に含まれる各香料成分の量は、正常な嗅覚を有する者であれば、強いにおいを感じる程度の量である。
【0127】
(カバー工程)
基板の縁全体に接着剤を塗布し、カバーの縁全体と接着させ、基板の表面全体をカバーで覆った。
ただし、カバーのフラップが、香料層と対向するように調整した。これにより、フラップを剥がすと、開口部から香料層が露出する。
以上の操作により、本発明の要件を満たす嗅覚検査具を得た。
【0128】
(被筆記体)
上記で得られた嗅覚検査具には、香料層と対向する面とは反対側のカバーの表面(カバーの外層)の一部に、市販のメモ紙を貼り付けた。本例において、該メモ紙は被筆記体に相当する。
【0129】
<嗅覚検査試験-1>
以下の方法で、上記<嗅覚検査具の作製-1>で得られた嗅覚検査具を用いて嗅覚検査試験を行った。
【0130】
上記で得られた嗅覚検査具を、それぞれ、25℃で1年保存した。
次いで、同一のモニター(正常な嗅覚を有する。)に、各嗅覚検査具のフラップを剥がさせ、下記基準に基づく各香料成分のにおいの強さを被筆記体に記入させた。その結果を表2に示す。
【0131】
(香料成分のにおいの強さの評価基準)
◎:香料成分のにおいを強く感じる。
○:香料成分のにおいを感じるが、「◎」ほどの強さではない。
×:香料成分のにおいを弱く感じるか、又は、香料成分のにおいを感じない。
【0132】
【0133】
上記の結果のとおり、本発明の要件を満たす嗅覚検査具によれば、1年間の保存後であっても、香料成分のにおいが強く残っており、好ましく嗅覚検査に使用できることがわかった。
【0134】
なお、異なるモニター10名(それぞれ、正常な嗅覚を有する。)によって同様に嗅覚検査試験を行ったが、上記同様の評価結果が得られた。
【0135】
<嗅覚検査具の作製-2>
以下の方法で、本発明の第2の態様に係る嗅覚検査具を作製した。なお、本例における嗅覚検査具は、
図7に示される構造を有する嗅覚検査具に相当する。
【0136】
(香料成分の準備)
上記<嗅覚検査具の作製-1>と同様に、香料成分を乳化液として調製した。
【0137】
(基板の準備)
上記<嗅覚検査具の作製-1>と同様に、基板を準備した。
【0138】
(包装容器の準備)
包装容器として、表3に示す層構成を有する多層フィルムから得られた袋(多層フィルムの厚さ約45μm)を使用した。これらの袋は、同一構成を有する2枚の四角形の多層フィルムを重ね、3辺を接着剤で貼り合わせたものである。
各袋において、「内層」が袋の内側に配置され、「外層」が袋の外側に配置される。「中間層」は「内層」及び「外層」の間に配置される。
【0139】
【0140】
表3中の各略記の詳細は、上記<嗅覚検査具の作製-1>と同様である。
【0141】
また、本例で使用した包装容器は、その片面に、開口部(縦4.0cm×横6.0cm)と、かつ、該開口部の全体を開閉可能に覆うフラップ(縦4.0cm×横1.8cm)を有する。
フラップの材料は、各包装容器の内層と同様である。
開口部の縁全体に接着剤を塗布し、開口部全体を覆うようにフラップを貼り合わせ、開口部の縁全体とフラップとを剥離可能に接着した。なお、接着剤としてはアクリル系接着剤(商品名「オリバイン(商標)BPS 5448」、トーヨーケム株式会社製)を用いた。
【0142】
(香料層配置工程)
上記<嗅覚検査具の作製-1>と同様に、香料成分を含む乳化液を、基板の片面の一部に噴霧した後に乾燥させ、香料層を得た。
【0143】
(封入工程)
基板を包装容器内に入れた後、包装容器の袋口部を密封した。これにより、基板が、包装容器の内層に接した状態で、包装容器内に封入された。
ただし、包装容器のフラップが、香料層と対向するように調整した。これにより、フラップを剥がすと、開口部から香料層が露出する。
以上の操作により、本発明の要件を満たす嗅覚検査具を得た。
【0144】
(被筆記体)
上記で得られた嗅覚検査具には、香料層と対向する面とは反対側の包装容器の表面(包装容器の外層)の一部に、市販のメモ紙を貼り付けた。本例において、該メモ紙は被筆記体に相当する。
【0145】
<嗅覚検査試験-2>
以下の方法で、上記<嗅覚検査具の作製-2>で得られた嗅覚検査具を用いて嗅覚検査試験を行った。
【0146】
上記で得られた嗅覚検査具を、それぞれ、25℃で1年保存した。
次いで、同一のモニター(正常な嗅覚を有する。)に、各嗅覚検査具のフラップを剥がさせ、上記<嗅覚検査試験-1>と同様の基準に基づく各香料成分のにおいの強さを被筆記体に記入させた。その結果を表4に示す。
【0147】
【0148】
上記の結果のとおり、本発明の要件を満たす嗅覚検査具によれば、1年間の保存後であっても、香料成分のにおいが強く残っており、好ましく嗅覚検査に使用できることがわかった。
【0149】
なお、異なるモニター10名(それぞれ、正常な嗅覚を有する。)によって同様に嗅覚検査試験を行ったが、上記同様の評価結果が得られた。