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特開2022-190548画像処理装置、制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190548
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/409 20060101AFI20221219BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H04N1/409
B41J29/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098919
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲也
【テーマコード(参考)】
2C061
5C077
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ04
2C061AR01
2C061AS02
2C061AS06
2C061CK02
5C077LL19
5C077MP07
5C077PP28
5C077PP80
5C077PQ08
5C077SS05
5C077SS06
5C077TT04
(57)【要約】
【課題】画像の見栄えを阻害しない状態でオーバーコートの描画部の視認性を確保する。
【解決手段】記録用紙に形成された画像上に印刷手段によりオーバーコートを転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理装置であって、前記オーバーコートに付加する線画を作成する描画手段と、前記線画を前記オーバーコートに付加する描画部に変換して、前記印刷手段において前記記録用紙に転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理手段と、を有し、前記描画部は、輪郭部と、前記輪郭部の内側領域とを含み、前記輪郭部は第1の光沢の画素で構成され、前記輪郭部の内側領域は、前記第1の光沢の画素と前記第1の光沢よりも高光沢の第2の光沢の画素が混在する混在パターン部として構成され、前記輪郭部の外側領域は前記第2の光沢の画素で構成される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙に形成された画像上に印刷手段によりオーバーコートを転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理装置であって、
前記オーバーコートに付加する線画を作成する描画手段と、
前記線画を前記オーバーコートに付加する描画部に変換して、前記印刷手段において前記記録用紙に転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理手段と、を有し、
前記描画部は、輪郭部と、前記輪郭部の内側領域とを含み、
前記輪郭部は第1の光沢の画素で構成され、
前記輪郭部の内側領域は、前記第1の光沢の画素と前記第1の光沢よりも高光沢の第2の光沢の画素が混在する混在パターン部として構成され、
前記輪郭部の外側領域は前記第2の光沢の画素で構成される、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、第1の線画と第2の線画が接している場合または重なっている場合は、前記第1の線画と前記第2の線画を1つの線画として描画部に変換し、前記第1の線画と前記第2の線画が離間している場合は、前記第1の線画との間隔が所定の画素以上になるように前記第2の線画を補正して描画部に変換することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、作成済みの第1の描画部に第1の線画が追加された場合、前記第1の描画部と前記第1の線画が重なっていない場合は前記第1の描画部と前記第1の線画の間隔が所定の画素以上になるように補正して描画部に変換し、前記第1の描画部と前記第1の線画が重なっている場合は、前記第1の描画部において前記第1の線画と重なる前記第1の線画の外側の領域に前記第2の光沢の画素からなる第2の輪郭部を形成して描画部に変換することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記混在パターン部を取り囲む輪郭部は、最小1画素の幅で構成され、前記混在パターン部は最小2画素で構成され、前記線画の幅は最小4画素で構成され、
前記所定の画素は、2画素であることを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記描画手段は、複数の線画の中から消去したい線画を選択可能、または、複数の作成済みの描画部の中から消去したい描画部を選択可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記混在パターン部は、前記第1の光沢の画素の割合が最大で40~75%、オーバーコート転写時の主走査方向および副走査方向に連続する画素は最頻値で3画素、平均値で5画素、最大値で40画素であり、
前記第2の光沢の画素の割合は60~25%、最頻値と平均値が2画素、最大値で25画素が連続するように、前記第1の光沢の画素と前記第2の光沢の画素が所定の割合で分散して配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記オーバーコート転写用データの前記描画部の光沢度が256階調で表され、階調が大きいほどオーバーコート転写時のエネルギーが大きくなり、
前記第1の光沢の画素は210~230階調の範囲にある第1の階調であり、前記第2の光沢の画素は80~180階調の範囲にある第2の階調であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の光沢の画素で転写されたオーバーコート面の光沢度は35以下、前記第2の光沢の画素で転写されたオーバーコート面の光沢度は50以上であり、前記第1の光沢の画素と前記第2の光沢の画素が混在する前記混在パターン部が転写されたオーバーコート面の光沢度は35~50であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
タッチパネルを更に有し、
前記描画手段は、前記タッチパネルへのユーザの操作に応じて、オーバーコートに付加する線画を作成することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記画像処理装置は、前記印刷手段を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記印刷手段を有する外部印刷装置に、前記画像処理手段により生成した前記オーバーコート転写用データを送信する送信手段を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
記録用紙に形成された画像上にオーバーコートを転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理装置の制御方法であって、
前記オーバーコートに付加する線画を作成するステップと、
前記線画を前記オーバーコートに付加する描画部に変換して、印刷装置において記録用紙に転写するためのオーバーコート転写用データを生成するステップと、を有し、
前記描画部は、輪郭部と、前記輪郭部の内側領域とを含み、前記輪郭部は第1の光沢の画素で構成され、前記輪郭部の内側領域は、前記第1の光沢の画素と前記第1の光沢よりも高光沢の第2の光沢の画素が混在する混在パターン部として構成され、
前記輪郭部の外側領域は前記第2の光沢の画素で構成される、
ことを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から11のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるための、コンピュータで読み込み可能なプログラム。
【請求項14】
請求項12に記載の画像処理装置の制御方法をコンピュータで実行させるための、コンピュータで読み込み可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を形成し記録用紙に印刷するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、発熱させたサーマルヘッドをインクリボンに押圧してインクを固体から気体へ昇華させ記録用紙に転写する。インクリボンには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の昇華染料層およびオーバーコート(OC)層が配置されている。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の昇華染料層により形成されたカラー画像を、無色透明で一様な高光沢のOP層により保護して耐久性や耐水性に優れた仕上がりの印画媒体を生成する。
【0003】
サーマルプリンタでは、オーバーコート転写時の熱エネルギーを大きくする(オーバーコート転写用データの階調値を高くする)ことでインクリボンと接するオーバーコート面を粗化させ、低光沢の線画をオーバーコート面に形成する技術が知られている。高光沢の印画画像上に形成されたオーバーコート面の低光沢の線画は正対視ではカラー画像からの反射光量が多いため視認しにくいが、視認する角度を変えると、オーバーコート面の高光沢部と低光沢部の間で反射光量に違いが生じ、カラー画像の見栄えを阻害しない状態でオーバーコート面の線画が視認可能となる。
【0004】
特許文献1には、オーバーコート面の線画の視認性を確保するために、カラー印画を行う画像の線画の輪郭の内側領域にオーバーコートを転写しない技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-111951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、カラー印画を行う画像の線画の輪郭に低光沢のオーバーコート、輪郭の外側領域に高光沢のオーバーコートを形成し、輪郭の内側領域はオーバーコートが転写されない。このため、輪郭の内側領域の画像はオーバーコート面による保護が不十分となり、見栄えを阻害することがある。しかしながら、輪郭の内側領域に低光沢のオーバーコート面を形成すると、オーバーコート面の粗化によってインクリボンと接するオーバーコート面が増加し、インクリボンとの剥離性が悪くなり、オーバーコートの剥離不良を発生させる原因となる。さらに輪郭の内側領域に高光沢のオーバーコート面を形成した場合、輪郭領域の太さによって視認性が変化し、輪郭領域が細い場合は視認性が悪くなるため、画像の見栄えを阻害しない状態でオーバーコート面の線画の視認性を確保することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、画像の見栄えを阻害しない状態でオーバーコートの描画部の視認性を確保することができる技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記録用紙に形成された画像上に印刷手段によりオーバーコートを転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理装置であって、前記オーバーコートに付加する線画を作成する描画手段と、前記線画を前記オーバーコートに付加する描画部に変換して、前記印刷手段において前記記録用紙に転写するためのオーバーコート転写用データを生成する画像処理手段と、を有し、前記描画部は、輪郭部と、前記輪郭部の内側領域とを含み、前記輪郭部は第1の光沢の画素で構成され、前記輪郭部の内側領域は、前記第1の光沢の画素と前記第1の光沢よりも高光沢の第2の光沢の画素が混在する混在パターン部として構成され、前記輪郭部の外側領域は前記第2の光沢の画素で構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像の見栄えを阻害しない状態でオーバーコートの描画部の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態のプリンタおよびインクカセットの外観構成を示す斜視図。
図2】本実施形態のプリンタの内部構成を示すブロック図。
図3】本実施形態の記録用紙の断面図およびインクリボンの展開図。
図4】本実施形態のプリンタの印刷時の動作を説明する側断面図。
図5】本実施形態のプリンタの印刷時の処理手順を示すフローチャート。
図6】本実施形態のホスト機器の内部構成を示すブロック図。
図7】オーバーコートに描かれた線画を例示する図(a)、線画の一部を拡大した図(b)、(c)。
図8】線画をオーバーコートに描画部として付加するための画像変換処理の説明図。
図9】線画をオーバーコートに描画部として付加するための画像変換処理の説明図。
図10】線画をオーバーコートに描画部として付加するための画像変換処理の手順を示すフローチャート。
図11】本実施形態のオーバーコート転写時の階調と光沢度の関係、混在パターン部の画素割合を例示する図。
図12】本実施形態の記録用紙のサイズごとの混在パターン部を形成する方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態においては、画像処理装置と印刷装置(外部印刷装置)とが有線または無線により通信可能に接続されたシステムの例を説明する。画像処理装置は、オーバーコート面に付加する線画を作成する描画機能および線画を描画部に変換して描画部付きオーバーコートデータを生成する画像処理機能を有し、印刷装置に画像データおよび印刷設定情報を含む印刷指示などを出力するホスト機器である。ホスト機器は、例えば、スマートデバイスなどの情報処理端末やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置、あるいはデジタルカメラなどの撮像装置である。印刷装置は、熱転写または昇華型のサーマルプリンタである。なお、印刷装置が上記描画機能および画像処理機能を備えていてもよく、この場合は、画像処理装置ではなく印刷装置で描画部付きオーバーコートデータが生成される。
【0013】
なお、以下では、印刷装置を、熱転写または昇華型のサーマルプリンタに適用した例を説明するが、本発明はサーマルプリンタに限らず、他の形式のプリンタにも適用可能である。
【0014】
また、本発明はプリンタ単体に限らず、印刷機能を有する装置であれば、例えば複写機やファクシミリ、コンピュータシステム等に適用可能である。また、本発明の記録用紙は、紙の材質だけでなく、プラスチックフィルム等の他の材質からなるシート材をも含むものである。
【0015】
サーマルプリンタは、インクが塗布されたインクリボン(インクシート)と記録用紙をサーマルヘッド(プリントヘッド)およびプラテンローラ(受け部材)により圧接し、サーマルヘッドに接した状態でインクリボンおよび記録用紙(プリントシート)を搬送し印刷が行われる。サーマルヘッドには、ライン状に複数の発熱素子(抵抗素子)が配列され、これらの発熱素子に選択的に通電することにより、インクリボンに塗布されているインクを記録用紙に転写し、記録用紙に印画が行われる。特に、フルカラー印刷を行う場合は、インクリボンに順に塗布されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インクを順に重ねてフルカラーの画像を形成し、画像上にオーバーコート(OC)を転写することも行われている。
【0016】
以下の説明において、「印刷」とは、画像処理装置からの印刷指示に基づいて印画を行い、印画された記録用紙を排出するまでの一連の全体動作を指すものとする。また、「印画」とは、印刷動作のうち、記録用紙に対してインクリボンに塗布されたインクおよびオーバーコートを熱転写して、記録用紙に画像を形成し画像上にオーバーコートを形成する動作を指すものとする。なお、モノクロ印刷の場合は、記録用紙はロール状であって、印画後に所定のサイズに切断されて排出されるものでもよい。
【0017】
<サーマルプリンタの構成>まず、図1を参照して、本実施形態のサーマルプリンタ(以下、プリンタ)の概略構成について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のプリンタ100およびインクカセット300の外観構成を示す斜視図であり、(a)は、上方から見た斜視図、図1(b)は、下方から見た斜視図である。
【0019】
プリンタ100は、プリンタ本体の上側および下側を覆う外装部材として上ケース101Aおよび下ケース101Bを含む。排出口101Cは、プリンタ100の1つの側面における上ケース101Aと下ケース101Bとの合わせ面には排出口101Cとなる開口を形成するスリット状の隙間が形成されている。印刷中に、排出口101Cから記録用紙113がプリンタ100の外部へ一時的に突出したり、印画が終了した記録用紙113が排出口101Cから排出されたりする。なお、図1では記録用紙113は不図示となっている。
【0020】
また、プリンタ100の別の側面には、カセットカバー101Dが開閉可能に設けられている。カセットカバー101Dは、シャシー110に設けられた開口であるカセット装着部111を開閉可能である。インクカセット300は、カセット装着部111を介してプリンタ100に対して挿抜可能である。インクカセット300は、カセットカバー101Dを開いた状態でカセット装着部111からプリンタ100の内部のカセット装着部111に矢印400で示される装着方向に装着可能であると共に、矢印400の方向とは反対方向にプリンタ100の外部に抜き出すことが可能である。カセットレバー101Fは、インクカセット300をプリンタ100の内部に保持すると共に、プリンタ100から取り外す際に操作される。
【0021】
インクカセット300には、長尺のインクリボン114が収納されており、印画時にプリンタ100から受ける動力により搬送される。インクカセット300の詳細は後述する。
【0022】
プリンタ100の底面には、トレイカバー101Eが開閉可能に設けられ、トレイカバー101Eを開いた状態にすることで、後述する用紙収納部117に規定の枚数の記録用紙113が装填可能となっている。用紙収納部117には、規定のサイズの記録用紙113がユーザによりセットされ、印刷時には、プリンタ100の不図示の給紙機構により、用紙収納部117から1枚だけ引き出される。記録用紙113には、図3で後述するインクリボン114に塗布されたイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インクおよびオーバーコートがサーマルヘッド116により転写され、フルカラーの印画が行われる。
【0023】
上ケース101Aの上面には、表示部102および操作部103が設けられている。また、プリンタ100の側面には外部接続端子104が設けられ、USBケーブルなどによりホスト機器と有線接続可能となっている。また、プリンタ100の内部には無線通信モジュールが設けられ、無線LANなどによりホスト機器と無線接続可能となっている。プリンタ100は、外部接続端子104や無線通信部により接続されたホスト機器から画像データを受信し、印刷動作を行うことが可能である。
【0024】
表示部102は、LEDなどの複数の発光素子を備え、プリンタ100の動作状態を発光色、点灯、点滅などで表示する。操作部103は、プリンタ100の電源のオン/オフなどの操作指示を受け付ける。プリンタ100が電源オン状態で、ホスト機器から画像データおよび印刷設定情報を含む印刷指示を受信すると、プリンタ100は印刷指示に従い印刷動作を開始する。
【0025】
次に、図2を参照して、本実施形態のプリンタ100の内部構成について説明する。図2は、本実施形態のプリンタ100の内部構成を示すブロック図である。
【0026】
制御部201は、後述するプリンタ100の各構成要素とデータの授受を行うインターフェース回路やプリンタ100の全体の動作を制御するための演算処理を行うCPUやMPUを備えるコントローラである。
【0027】
不揮発性メモリ202は、電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばフラッシュROMなどが用いられる。不揮発性メモリ202は、プリンタ100の制御用プログラムを格納し、制御部201は不揮発性メモリ202からプログラムを読み込んで、読み込んだプログラムに基づいてプリンタ100の各構成要素の制御を行う。
【0028】
ワークメモリ203は、RAMなどの揮発性メモリが用いられ、制御部201の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ202から読み出したプログラムなどを展開するワークエリアとして使用される。また、ワークメモリ203は、通信部211を介してホスト機器600から受信した画像転写用データ、オーバーコート転写用データおよび印刷設定情報を含む印刷指示などを一時的に保持する。
【0029】
ヘッド温度検出センサ204は、サーマルヘッド116の温度を検出し、検出結果を制御部201に出力する。環境温度検出センサ205は、プリンタ100の内部の温度を検出し、検出結果を制御部201に出力する。制御部201は、ヘッド温度検出センサ204および環境温度検出センサ205の検出結果に基づいて、サーマルヘッド116の温度補正やウェイト動作などの各種温度制御を行う。さらに、プリンタ100は、記録用紙113の給紙を検出する第1の用紙検出センサ206aと、記録用紙113の排紙を検出する第2の用紙検出センサ206bを備え、正確な用紙の位置制御が可能となっている。さらに、プリンタ100は、インクリボン114の位置を制御するためのマーカー114aを検出するリボン検出センサ207を備える。制御部201は、各センサにより検出された情報に基づき、プログラムを実行することによって、モータドライバ208に命令を出力し、用紙搬送モータ209とポジションチェンジモータ210を駆動制御する。
【0030】
用紙搬送モータ209は、記録用紙113とインクリボン114を搬送駆動する。ポジションチェンジモータ210は、サーマルヘッド116を押圧位置または退避位置に移動したり、給紙ローラ121を上下に移動したりするように昇降機構や切替機構を駆動する。通信部211は、ホスト機器と通信可能に接続し、画像データおよび印刷設定情報を含む印刷指示を受信したり、各種のデータを送受信可能である。画像データ入力部212は、ホスト機器から受信した画像データを通信部211から受け取り、制御部201に出力する。制御部201は、ホスト機器から受信した画像データを画像処理部215に出力する。
【0031】
表示部102は、プリンタ100の動作状態をLEDの発光色や点滅、点灯などで表示する。操作部103は、電源スイッチその他のプリンタ100に対するユーザの操作指示を受け付ける操作部材である。また、通信部211は、ホスト機器から受信した印刷指示を制御部201に通知する。画像処理部215は、画像データ入力部212が受け取った画像データに対して各種の画像処理を行う。画像処理部215は、画像データのデコード処理、記録用紙に応じたリサイズ処理、画像補正処理などの各種画像処理を行い、画像処理が施された画像データから印画用の印刷データを生成する。
【0032】
ヘッドコントロールドライバ216は、サーマルヘッド116を制御する。画像処理部215で生成された印刷データはヘッドコントロールドライバ216に出力される。ヘッドコントロールドライバ216に入力された印刷データは、電気信号に変換され、サーマルヘッドの発熱体に出力される。発熱体では電気信号を熱エネルギーに変換して、インクリボン114に塗布されているインクが記録用紙113に転写される。
【0033】
次に、図3を参照して、記録用紙113およびインクリボン114の構成について説明する。
【0034】
図3(a)は、本実施形態の記録用紙の断面図である。記録用紙113は、受像層113a、基材層113b、粘着層113cおよび剥離層113dを含む4層構造である。受像層113aには、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インクやオーバーコート(OC)が転写される。基材層113bには、受像層113aおよび粘着層113cが塗工される。粘着層113cは、記録用紙の裏面に貼り付け可能なタック性を付与する。剥離層113d、粘着層113cが意図せず貼り付かないように粘着層113cをカバーする。
【0035】
図3(b)は、本実施形態のインクリボン114の展開図である。フルカラー印刷の場合、インクリボン114には、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インクが配列される。そして、記録用紙113に各インク色を重ねて印画を行うことによりフルカラーの画像を形成し、さらに画像上にオーバーコート(OC)面が形成される。各色インクの間には各色インクの先頭位置を検出するための黒帯状のマーカー114aが配置されており、イエロー(Y)面の先頭を示すマーカー114aは他の色と区別するため2本配置されている。本実施形態のインクリボンは、厚さ2~10数ミクロン程度のポリエチレンテフタレートフィルム等耐熱性の高いフィルムを基材としている。イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色インクはフィルム上に染料とバインダー、可塑剤、粘結剤等を混合して作製された昇華性インクを0.2~5μm程度の厚さに塗布される。無色透明のオーバーコート面はスチロース誘導体、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、バインダー等を0.5~5μm程度の厚さに塗布して形成されている。また、インクが塗布された面の反対側の面には、サーマルヘッドとの摩擦抵抗を小さくしインクリボンの走行を安定化させるための潤滑材や、サーマルヘッド表面を研磨清掃するための研磨剤などが塗布されている。
【0036】
次に、図4および図5を参照して、本実施形態のプリンタ100の印刷時の動作手順について説明する。
【0037】
図4は、本実施形態のプリンタ100の印刷時の動作を説明する側断面図であり、(a)は待機状態、(b)は給紙状態、(c)は印画開始状態、(d)は印画中、(e)は印画終了後、排紙動作前の状態、(f)は排紙動作後の状態をそれぞれ示している。図5は、本実施形態のプリンタ100の印刷時の動作手順を示すフローチャートである。
【0038】
ユーザによりインクカセット300がプリンタ100にセットされ、記録用紙113が用紙収納部117に収納され、操作部103により電源がオンされると、プリンタ100が待機状態となる。待機状態において、ホスト機器から画像データの受信を開始すると、表示部102のLEDが点滅し、データ読み込み状態を通知する。プリンタ100はプラテンローラ115およびサーマルヘッド116を有する。サーマルヘッド116はサーマルヘッド支持軸119に回動可能に支持され、コイルバネ118により図中時計回り方向に付勢される。サーマルヘッド116は、インクカセット300の装着時に干渉しないように、プラテンローラ115との距離が最大限広くなる位置に規制されている。
【0039】
次に、ホスト機器で印刷する画像データが指定され、印刷指示が行われると、プリンタ100はホスト機器から印刷指示を受信し、印刷動作を開始する(S101)。印刷動作を開始すると、プリンタ100は、サーマルヘッド116を、不図示のポジションチェンジモータ210の駆動力によりコイルバネ118の付勢力に抗してサーマルヘッド支持軸119を中心に図中反時計回りに回動させる。サーマルヘッド116は、図4(b)に示すように、図4(a)の待機位置とプラテンローラ115とニップする図4(d)の印画中位置の中間の位置へ移動する(S102)。サーマルヘッド116の移動が完了すると、プリンタ100は給紙動作を開始する(S103)。給紙動作を開始する際、プリンタ100に設けられた加圧板120は、不図示の付勢手段により給紙ローラ121側へ付勢されており、用紙収納部117に積載された記録用紙113を押し上げ給紙ローラ121へ押し付ける。給紙ローラ121は、図4(a)の待機位置では、記録用紙113から離間する位置に退避している。図4(b)の中間位置では、給紙ローラ121は記録用紙113に接触する位置まで、不図示のポジションチェンジモータ210の駆動力によって押し下げられる。このとき、給紙ローラ121は、不図示の用紙搬送モータ209の駆動力により図中反時計方向へ回転し、記録用紙113をサーマルヘッド116とプラテンローラ115を含む印画部に向けて搬送する。記録用紙113はプリンタ100の分離部122に当接し、最上部に積載された1枚の記録用紙113だけが搬送される。搬送された記録用紙113は第1の用紙検出センサ206aに検出され、給紙動作不良のないことが確認される。引き続き、給紙ローラ121により搬送された記録用紙113は、回動可能に支持された切替板123を上方に押すことにより図中時計方向へ回動させ、図中左方向へと進行し、搬送ローラ124と搬送従動ローラ125の間のニップ部へ突入する。搬送ローラ124には記録用紙113の裏面に突き当たる微小な突起が複数形成されており、記録用紙113に当接して正確に搬送することが可能となっている。搬送ローラ124は不図示の用紙搬送モータ209により駆動される。用紙搬送モータ209は、ステッピングモーターであり、正確な送り量の制御が可能となっている。第2の用紙検出センサ206bが記録用紙113を検出することで、記録用紙113が搬送ローラ124と搬送従動ローラ125の間のニップ部へ正しく搬送されているか確認される。記録用紙113が、搬送ローラ124と搬送従動ローラ125の間のニップ部へ搬送された後、給紙ローラ121はポジションチェンジモータ210の駆動力により図4(a)に示す待機位置へ移動する。用紙収納部117の次の記録用紙113が給紙ローラ121により誤って搬送されることを防止するためである。記録用紙113は、搬送ローラ124および搬送従動ローラ125により搬送が継続され、記録用紙113の後端部が第1の用紙検出センサ206aを通過し、所定量搬送され、切替板123の先端部を通過した後、搬送を停止する。次に、プリンタ100は記録用紙113を逆方向へ戻す方向へと搬送し、図4(c)に示す印画開始位置で停止する(S104)。このとき、記録用紙113の後端部は、切替板123の上側を通り、給紙ローラ121の下側を通過して、バッテリ126の下部を仕切り、バッテリ126を保持しているガイド壁127と用紙収納部壁128との間のスペースへと搬送される。用紙収納部壁128は、用紙収納部117に装填できる記録用紙113の枚数を制限する。
【0040】
給紙動作が完了し、記録用紙113が印画開始位置で停止すると、インクリボン114のイエロー(Y)の頭出し動作が行われる(S105)。以下、リボン頭出し動作を説明する。図4(c)に示す印画開始位置まで記録用紙113の搬送が完了すると、インクカセット300に収納されているインクリボン114が引き出される。即ち、インクカセット300の巻取軸301の端部がプリンタ100の係合部と係合し、不図示の駆動機構により図中反時計回りに回動され、供給軸302に巻き回されているインクリボン114が引き出され巻取軸301に巻き取られる。図3に示したように、インクリボン114の各色インクの先頭にはマーカー114aが設けられており、イエロー(Y)の先頭にはマーカー114aが2本設けられている。プリンタ100は、反射式光学センサであるリボン検出センサ207により、インクリボン114に設けられたマーカー114aで反射光が遮られたことが検出されるとインクリボン114の巻き取りを停止し、頭出しを行う。イエロー(Y)の頭出しは、2本のマーカー114aが検出されたか否かにより判断される(S106)。イエロー(Y)の頭出し時に1本または所定時間内にマーカー114aが検出できなかった場合はインクカセット300の異常としてエラーを表す状態を表示部102に表示する(S107)。その後、サーマルヘッド116を図4(a)に示す待機位置へ移動し、印刷動作を終了する(S129)。
【0041】
イエロー(Y)の頭出しが完了すると、サーマルヘッド116を、サーマルヘッド支持軸119を中心に更に図中反時計回りに回動し、インクリボン114と記録用紙113をプラテンローラ115との間に狭持する印画位置へ移動する(S108)。サーマルヘッド116が印画位置に移動すると、図4(d)に示すように記録用紙113とインクリボン114はサーマルヘッド116とプラテンローラ115に狭持されたまま、排出口101Cに向けて搬送されながら、サーマルヘッド116により加熱されインクリボン114に塗布されたインクが記録用紙113に転写され、印画が行われる(S109)。印画中はインクリボン114と記録用紙113は同速度で搬送されるため、プリンタ100のインクリボン搬送機構には一定トルク以上の負荷が掛かるとスリップする後述するトルクリミッタが組み込まれている。
【0042】
インクリボン114と記録用紙113はサーマルヘッド116による加熱で印画が行われると、一定の距離の間、密着状態を保持したまま搬送され、その後互いに離間する方向へ搬送される。即ち、記録用紙113は搬送ローラ124により図中左方向へ搬送され、インクリボン114はサーマルヘッド116の剥離板129に摺動しながらインクカセット300のガイド軸303に向かって搬送される。インクリボン114はサーマルヘッド116による印画時の加熱により記録用紙113に貼り付いているが、剥離板129の位置まで搬送されて記録用紙113から引き剥がされる。記録用紙113に対してイエローの画像領域への印画が完了すると、プリンタ100の不図示の駆動機構がサーマルヘッド116を回動させ、図4(e)に示す位置に退避させる(S110)。その後、図4(c)に示す位置まで記録用紙113を印画動作とは逆方向に搬送させ、印画開始位置へ移動させる(S111)。以降、イエロー(Y)の印画動作と同様にインクリボン114を巻き取り搬送し、マーカー114aを検出することにより印画開始位置まで搬送して停止しマゼンダ(M)の印画を行う(S112~S115)。同様にマーカー114aを検出して頭出しを行い、シアン(C)およびオーバーコート(OC)の印画を行う(S116~S127)。オーバーコートの印画が終了すると、図4(e)に示すように、サーマルヘッド116を記録用紙113から退避させた後、記録用紙113を排出口101Cに向けて搬送し、記録用紙113の後端部が搬送ローラ124を通過すると排紙が完了する(S128)。図4(f)に示すように、排紙動作が完了すると、サーマルヘッド116を不図示の駆動機構により図4(a)に示す待機位置まで回動し、印刷動作を終了する(S129)。
【0043】
以上の手順により、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)の順にインクが重ねられて記録用紙113に転写される印画動作が完了する。
【0044】
本実施形態のプリンタ100は、図4(f)に示す排紙動作後の状態で記録用紙113が完全に装置外部へ排出しないように排紙動作を行う。つまり、図4(f)に示す排紙動作後の状態で、記録用紙113の後端部は、プリンタ100の内部に残っている。プリンタ100は携帯性の高い小型のモバイルプリンタで、印刷された記録用紙113をスタックする部材が設けられていない。さらにモバイルプリンタはユーザが手に持ったまま印画を行うユースケースも想定され、その場合、印刷された記録用紙113がプリンタ100から落下してしまうことも考えられる。そこで、本実施形態のプリンタ100は、搬送ローラ124の下流側に位置する下流上側用紙ガイド部材130に用紙押え板131を固定し、下流下側用紙ガイド部材132へと印刷された記録用紙113を軽微な力で押さえつけ、不用意な落下を防止している。次の印刷を行える状態にするには、ユーザにより印刷された記録用紙113を取り除く必要がある。第2の用紙検出センサ206bにより記録用紙113を検出し(S130)、記録用紙113の後端部がプリンタ100の内部に残っているならば、ユーザに記録用紙113を取り除くことを促すよう、表示部102にエラー表示を行う(S131)。その後も、第2の用紙検出センサ206bによる記録用紙113の検出を続け(S132)、印画動作が完了した記録用紙113が取り除かれたならば、図4(a)に示す待機状態へ移行し、次の印刷が可能になる(S133)。
【0045】
以上の手順を経て一連の印刷動作が終了となる。
【0046】
<ホスト機器の構成>図6を参照して、本実施形態のホスト機器の概略構成について説明する。
【0047】
図6はホスト機器600の構成を示すブロック図である。ホスト機器600は、制御部601、表示部/操作部602、不揮発性メモリ603、ワークメモリ604、画像処理部605および通信部606を備える。
【0048】
制御部601は、後述するホスト機器600の各構成要素とデータの授受を行うインターフェース回路やホスト機器600の全体の動作を制御するための演算処理を行うCPUやMPUを備えるコントローラである。制御部601は、後述する不揮発性メモリ603に格納されているプログラムを読み出して実行することによりホスト機器600の各構成要素を制御する。
【0049】
表示部/操作部602は、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示デバイスから構成される。表示部/操作部602は、ホーム画面、ウェブページ、メニュー画面、印刷対象の画像データ、手書き画面などを表示する。また、表示部/操作部602は、表示画面に一体的に構成され、表示画面に対するタッチ操作を検出可能なタッチパネルを含む。
【0050】
制御部601は、タッチパネルへの以下の操作あるいは状態を検出できる。
【0051】
タッチダウン:タッチパネルにタッチしていなかった指やスタイラスが新たにタッチパネルにタッチしたこと。
【0052】
タッチオン:タッチパネルを指やスタイラスでタッチしている状態であること。
【0053】
タッチムーブ:タッチパネルを指やスタイラスでタッチしたまま移動していること。
【0054】
タッチアップ:タッチパネルへタッチしていた指やスタイラスを離したこと(タッチの終了)。
【0055】
タッチオフ:タッチパネルに何もタッチしていない状態。
【0056】
そして、ホスト機器600で動作するアプリケーションなどにおいて、タッチパネルにおける入力座標と、表示画面上の表示座標とを対応付けることにより、ユーザが表示画面を直接的に操作可能であるかのようなGUIを構成することができる。なお、タッチパネルは、接触強度(押圧)を取得できるデバイスであってもよい。
【0057】
ユーザは、エディタのソフトウェアプログラムを使用して、タッチパネル上で指やスタイラスを用いてオーバーコート面に文字や絵などの線画を描くことができる。
【0058】
不揮発性メモリ603は、電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばフラッシュROMなどが用いられる。不揮発性メモリ603には、制御部601の動作用の定数、プログラム等が記憶される。ここでいう、プログラムとは、後述するフローチャートを実行するためのプログラムのことであり、プリンタ100を制御するためのプリンタ制御用のソフトウェアプログラム、オーバーコート面に線画を描くためのエディタのソフトウェアプログラムを含む。
【0059】
ワークメモリ604は、RAMなどの揮発性メモリが用いられ、制御部601の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ603から読み出したプログラムなどを展開するワークエリアとして使用される。また、ワークメモリ604は、通信部606を介してプリンタ100に送信する画像転写用データ、オーバーコート転写用データおよび印刷設定情報を含む印刷指示などを一時的に保持する。
【0060】
画像処理部605は、画像データに色変換処理や画素補正処理、フィルター処理などの各種の画像処理を施し画像転写用データを生成する処理、ユーザがエディタのソフトウェアプログラムにより作成した線画をオーバーコートに付加する描画部に変換する処理、描画部が付加されたオーバーコートデータを、プリンタ100のオーバーコート転写用データに変換する処理を行う。
【0061】
通信部606は、プリンタ100と有線方式または無線方式により通信可能に接続するインターフェースであり、プリンタ100に印刷用画像データや印刷指示を送信したり、プリンタ100から動作状態に関する情報を受信する。
【0062】
<画像変換処理の説明>次に、図7図10を参照して、本実施形態における線画をオーバーコートに描画部として付加するための画像変換処理について説明する。
【0063】
図7はユーザがオーバーコート面に描いた線画を例示する図(a)と線画の一部を拡大した図(b)、(c)である。図8および図9は、線画をオーバーコートに描画部として付加するための画像変換処理の説明図である。図10は、ユーザが作成した線画をオーバーコートに描画部として付加するための画像変換処理の手順を示すフローチャートである。なお、図10の処理は、不揮発性メモリ603に格納されたプログラムをワークメモリ604に展開し、制御部601が実行してホスト機器600の各構成要素を制御することにより実現される。また、図10の処理は、ホスト機器600のエディタのソフトウェアプログラムが起動されると開始される。
【0064】
S801では、制御部601は、ユーザが描画部を新規に作成するのか、作成済みの描画部を編集するのかを判定する。ここでの判定は、ユーザの選択操作に従う。つまり、ユーザはエディタのメニュー画面などで描画部を新規に作成するのか、作成済みの描画部を編集するのかを選択可能である。制御部601は、ユーザが描画部を新規に作成することを選択したと判定した場合は、処理をS802に進め、作成済みの描画部を編集することを選択したと判定した場合は、処理をS810に進める。
【0065】
S803では、制御部601は、ユーザが新規に描画部を作成する際の線幅を判定する。ここでの判定は、ユーザの選択操作に従う。つまり、ユーザは描画部を作成する際の線幅を選択可能である。
【0066】
S804では、制御部601は、ユーザが指やスタイラスを使用して描いた線画を表示部/操作部602に描画する。
【0067】
S805では、制御部601は、S804でユーザが作成した線画について、重なっている線があるか否かを判定する。制御部601は、S804で重なっている線があると判定した場合は、処理をS8051に進め、重なっている線がないと判定した場合は、処理をS806に進める。
【0068】
S8051では、制御部601は、S804で線が重なっている線画を補正する処理(補正処理1)を行う。
【0069】
S804でユーザが1本の線を描く処理は、タッチパネル上へのタッチダウンが検出された後、タッチオンまたはタッチムーブが検出されている状態でタッチアップが検出されるまで継続される。S804でユーザが線を描いている間は、S805においてユーザが描いた複数の線が重なっているか否かの判定、線が離れている場合は線の間隔が所定の画素以下であるか否かの判定が継続して実行される。そして、S805においてユーザが描いた複数の線が重なっている場合に、線の間隔が所定の画素以下であると判定される場合は、処理をS8051に進め、離れた線を適切に補正する処理を行う。この補正処理1の詳細については図8(b1)~(b3)で後述する。
【0070】
S806では、制御部601は、ユーザによる線画の作成が終了したか否かを判定する。ここでの判定は、ユーザによる明示的な操作または線画作成中に最後にタッチアップが検出されてから再度のタッチダウンが検出されないまま所定の時間が経過したことに基づいて行われる。制御部601は、ユーザによる線画の作成が終了したと判定した場合は、処理をS807に進め、ユーザによる線画の作成が終了したと判定しない場合は、処理をS804に戻す。
【0071】
S807では、制御部601は、S804でユーザが作成した線画の中に消去したい線があるか否かを判定する。ここでの判定は、ユーザの消去操作に従う。つまり、ユーザはエディタの消去ツールなどを使用して所望の線画を指定し消去することが可能である。制御部601は、S804でユーザが作成した線画の中に消去したい線があると判定した場合は、処理をS8052に進め、消去したい線がないと判定した場合は、処理をS808へ進める。
【0072】
S8052では、制御部601は、ユーザが消去対象として指定した線を消去する(消去処理1)。この消去処理1の詳細については図9(a1)~(a4)で後述する。
【0073】
S808では、制御部601は、ユーザが作成した線画をオーバーコートに付加する描画部に変換する処理を行う。
【0074】
S809では、制御部601は、S808で生成された、描画部付きオーバーコートデータを不揮発性メモリ603に記憶して、処理を終了する。
【0075】
一方、S802で作成済みの描画部を編集すると判定した場合、S810で、制御部601は、不揮発性メモリ603に記憶されている描画部付きオーバーコートデータを読み出す、
S811では、制御部601は、編集内容が線画の追加または作成済みの描画部を消去かを判定し、線画の追加と判定した場合は、処理をS812に進め、線画の追加ではなく、描画部の消去と判定した場合は、処理をS8111へ進める。ここでの判定は、ユーザの選択操作に従う。つまり、ユーザはエディタのメニュー画面などで線画を追加するのか、描画部を消去するのかを選択可能である。
【0076】
S8111では、制御部601は、ユーザが消去対象として指定した描画部を消去する処理を行う(消去処理2)。
【0077】
S812、S813では、制御部601は、ユーザにより指定された線幅またはデフォルトの線幅を設定し、ユーザが作成した線画を追加する。
【0078】
S814では、S813でユーザが線画を追加した結果、重なっている線があるか否かを判定する。制御部601は、S813で重なっている線があると判定した場合は、処理をS8141に進め、重なっている線がないと判定した場合は、処理をS815に進める。
【0079】
S8141では、制御部601は、S813で線が重なっている線画を補正する処理(補正処理1)を行う。
【0080】
S813でユーザが1本の線を描く処理は、タッチパネル上へのタッチダウンが検出された後、タッチオンまたはタッチムーブが検出されている状態でタッチアップが検出されるまで継続される。S813でユーザが線を描いている間は、S814においてユーザが描いた複数の線が重なっているか否かの判定、線が離れている場合は線の間隔が所定の画素以下であるか否かの判定が継続して実行される。そして、S814においてユーザが描いた複数の線が重なっている場合に、線の間隔が所定の画素以下であると判定される場合は、処理をS8141に進め、離れた線を適切に補正する処理を行う。この補正処理1の詳細については図8(b1)~(b3)で後述する。
【0081】
S815では、制御部601は、ユーザによる線画の追加が終了したか否かを判定する。ここでの判定は、ユーザによる明示的な操作または線画作成中に最後にタッチアップが検出されてから再度のタッチダウンが検出されないまま所定の時間が経過したことに基づいて行われる。制御部601は、ユーザによる線画の追加が終了したと判定した場合は、処理をS816に進め、線画の追加が終了したと判定しない場合は、処理をS813に戻す。
【0082】
S816では、制御部601は、S813でユーザが追加した線画の中に消去したい線があるか否かを判定する。ここでの判定は、ユーザの消去操作に従う。つまり、ユーザはエディタの消去ツールなどを使用して所望の線画を指定し消去することが可能である。制御部601は、S813でユーザが追加した線画の中に消去したい線があると判定した場合は、処理をS8161に進め、消去したい線がないと判定した場合は、処理をS817へ進める。
【0083】
S8161では、制御部601は、ユーザが消去対象として指定した線を消去する(消去処理1)。この消去処理1の詳細については図9(a1)~(a4)で後述する。
【0084】
S817では、制御部601は、S813でユーザが追加した線画が作成済みの描画部と接しているか、あるいは重なっているかを判定する。制御部601は、追加された線画が作成済みの描画部と接しているまたは重なっていると判定した場合は、処理をS8171に進め、接していないまたは重なっていないと判定した場合は、処理をS818に進める。
【0085】
S8171では、制御部601は、S813でユーザが追加した線画に重なっている作成済みの描画部の輪郭部および輪郭部の内側領域の画素データを消去し、消去した描画部における線画の輪郭部の外側領域に2画素分の高光沢領域を設定する処理を行う(補正処理2)。この補正処理2の詳細については図9(b1)~(b4)、(c1)~(c3)で後述する。
【0086】
S818では、制御部601は、ユーザが追加した線画を作成済みの描画部にマージするようにオーバーコートに付加する描画部に変換する処理を行い、処理をS809に進める。
【0087】
<変換処理の説明>次に、図10のS808、S818における線画を描画部に変換する処理について説明する。
【0088】
図7(a)はユーザがホスト機器600のタッチパネルに対して指やスタイラスでオーバーコート面に描いた線画700を例示している。図7(b)は線画700の一部の線701を拡大した図である。図7(c)は(b)の線画から変換された描画部705を例示している。
【0089】
図7(a)に示すように、ユーザは、ホスト機器600のタッチパネルに対して指やスタイラスでオーバーコート面に線画700を描くことができる。図7(b)に示す線701は、ユーザが所定の線幅で手書きで描いた文字や絵の一部である。702は線701の周囲の無描画領域である。図7(b)に示す線701は、図7(c)に示すように、第1の光沢(低光沢)の画素からなる輪郭部703と、輪郭部703の内側の領域の画素であって、第1の光沢の画素と、第1の光沢より高い第2の光沢(高光沢)の画素が混在した混在パターン部704と、を含む描画部705と、線画部705の外側の領域の画素からなる無描画部7021とに変換される。輪郭部703は、混在パターン部704を取り囲むことで線画700のエッジを強調し、オーバーコート面における描画部705の視認性を向上させる効果がある。混在パターン部704は、光沢を低下しつつ、オーバーコートの剥離不良が発生しないように高光沢画素と低光沢画素が適切な割合で分散、配置される。混在パターン部704を取り囲む輪郭部703は、最小1画素の幅で構成され、混在パターン部704は最小2画素の幅で構成されるため、線幅は最小4画素となる。輪郭部703の画素の幅を2画素以上にすると視認性は向上するが、線701の数が増加した場合にオーバーコートの剥離不良が発生しやすくなる。また、混在パターン部704が1画素以下にすると低光沢画素を配置することができないため、オーバーコート面における描画部705の視認性が低下する。
【0090】
図8(a1)~(a3)は、2本の線が接している場合の処理を説明する図であり、図8(a1)~(a2)は、タッチパネル上で描かれた線画、図8(a3)は、線画から変換された描画部を示している。図8(a1)~(a2)では、線805と線806が間隔を開けることなく接して配置されているため、図8(a3)に示すように1つの線画として描画部807に変換される。8071は輪郭部、8072は混在パターン部、8073は描画部の外側領域をそれぞれ示している。
【0091】
図8(b1)~(b3)は、2本の線が離れている場合の補正処理1(図10のS8051、S8141)を説明する図である。図8(b1)~(b2)は、タッチパネル上で描かれた線画、図8(b3)は、線画から変換された描画部を示している。図8(b1)~(b2)では、線808と線809が離れているため、線の間隔を判定される(図10のS805)。そして、線の間隔が2画素以下の場合は、2本の線が重なっていると判定され、図10のS8051の消去処理1を行い、線の間隔が2画素以上になるように後に描かれた線809の画素を補正する。図8(b2)に示すように後から描かれた線809の先に描かれた線808に近い画素に削除領域809aを設け、線809の削除領域809aに相当する画素のデータを消去し、図8(b3)に示すように線808と線809の間隔が2画素以上になるような個別の描画部810と描画部811に変換される。
【0092】
図9(a1)~(a4)は、線画の線の一部を消去する消去処理1(図10のS8052、S8161)または作成済みの描画部の一部を消去する消去処理2(図10のS8052、S8161)を説明する図である。図9(a1)~(a3)は、タッチパネル上で描かれた線画または作成済みの描画部、図9(a4)は、線画から変換された描画部を示している。図9(a1)に示すように線または作成済みの描画部912、913から、ユーザが線または作成済みの描画部913を消去したい場合、図9(a2)に示すように画面上で線または作成済みの描画部913を選択して削除を実行すると、図9(b3)に示すように線913または作成済みの描画部が削除される。線または作成済みの描画部913が削除された後、図9(b4)に示すように線912が描画部に変換されるか、作成済みの描画部912だけが残る。
【0093】
図9(b1)~(b4)は、作成済みの描画部914に線915が接している場合の処理(図10のS8171)を説明する図である。図9(b1)~(a3)は、作成済みの描画部に追加された線画、図9(b4)は、作成済みの描画部および追加されたに線画から変換された描画部を示している。図9(b1)に示す作成済みの描画部914に対して、図9(b2)に示すように追加された線915は、図9(b3)に示すように作成済みの描画部914に近い画素に削除領域915aが設けられ、図9(b4)に示すように、線915の削除領域915aに相当する画素のデータが消去され、作成済みの描画部914との間隔が2画素以上となるような描画部917に変換される。
【0094】
図9(c1)~(c3)は、描画部918に線919が重なっている場合の処理(図10のS8171)を説明する図である。図9(c1)~(c2)は、作成済みの描画部に追加された線画、図9(c3)は、作成済みの描画部および追加されたに線画から変換された描画部を示している。図9(c1)に示すように作成済みの描画部918に追加した線919が重なっている場合、図9(c2)に示すように描画部918において線919と重なっている線919の周囲に高光沢の画素からなる第2の輪郭部918aを形成して個別の描画部920と描画部921に変換される。これにより、図9(c3)のように作成済みの描画部920の上に描画部921が配置され、低光沢の画素の過剰な連続を防ぐことができる。
【0095】
線画同士または作成済みの描画部と線画の間隔を開けるのは、低光沢画素の連続箇所をできるだけ少なくし、オーバーコートの剥離不良を低減するためである。
【0096】
<本実施形態のオーバーコート転写時の階調と光沢度、混在パターン部の画素割合、形成方法>次に、図11および図12を参照して、本実施形態のオーバーコート転写時の階調と光沢度、混在パターン部の画素の割合について説明する。
【0097】
図11(a)はオーバーコート転写時の階調と光沢度の関係を例示している。オーバーコート転写時の階調は256階調で表され、階調が大きいほどオーバーコート転写時のエネルギーが大きくなる。描画部が付加されたオーバーコート転写時の階調は、輪郭部の外側領域と、輪郭部の内側領域の混在パターン部の高光沢の画素1101が約80~180階調の範囲、輪郭部と、混在パターン部の低光沢の画素1102が約210~230階調の範囲となる。また、210~230階調で転写されたオーバーコート面の光沢度は35以下、80~180階調で転写されたオーバーコート面の光沢度は50以上であり、混在パターン部が転写されたオーバーコート面の光沢度は35~50である。
【0098】
図11(b)は混在パターン部における低光沢の画素の割合と光沢度の関係を例示している。混在パターン部の低光沢の画素1102の割合1104は、最大で40~75%であり、反対に、高光沢の画素1101の割合は最大で60~25%となる。また、混在パターン部において連続して配置可能な低光沢の画素1102は、主走査方向および副走査方向に最頻値で3画素、平均値で5画素、最大値で40画素である。同様に、混在パターン部において連続して配置可能な高光沢の画素1101は、最頻値と平均値で2画素、最大値で25画素である。混在パターン部の高光沢の画素1101と低光沢の画素1102は分散して配置される。図11(c)は混在パターン部の配置例を示している。混在パターン部1104は適切な割合と分布、連続性で、低光沢の画素と高光沢の画素が配置される。例えば、混在パターン部の一部の領域1106は高光沢の画素1101を主走査方向に2画素連続して配置し、副走査方向に7画素連続して配置した例である。また、例えば、混在パターン部の一部の領域1107は低光沢の画素1102を主走査方向に2画素連続して配置し、副走査方向に9画素連続して配置した例である。このように、低光沢の画素1102または高光沢の画素1101を任意のサイズの矩形の単位ブロックとして適切な割合、分布、連続性を持つように配置することで、オーバーコート面の粗化過多によるオーバーコートの剥離不良を発生させないで、描画部の視認性を確保したオーバーコートを転写することが可能になる。
【0099】
図12は、本実施形態の記録用紙のサイズごとの混在パターン部を形成する方法を説明する図である。
【0100】
描画部が付加されたオーバーコートを転写する場合、記録用紙113のサイズごとに予め作成された混在パターン部が使用され、記録用紙113に合わせて混在パターン部として使用する領域を変化させる。図12(a)は、記録用紙113がCサイズ(1211)、Lサイズ(1212)、Pサイズ(1213)の場合の混在パターン部1201の使用領域を例示している。図12(b)は、記録用紙113がPサイズに対応する描画部の混在パターン部を使用して転写した例を示している。記録用紙113がPサイズに対応する描画部の混在パターン部のベースプレーン1202に、図12(a)の混在パターン部を配置し、線画から変換された輪郭部1221と輪郭部1221の外側領域1223を除く領域を切り取ることで、ベースプレーンの混在パターン部1222を露出させてオーバーコートの描画部が形成される。
【0101】
[他の実施形態]
本発明は、各実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークや記憶媒体を介してシステムや装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータの1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能である。また、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0102】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0103】
100…サーマルプリンタ、102…表示部、201…制御部、211…通信部、213…画像処理部、600…ホスト機器、601…制御部、602…表示部/操作部、605…画像処理部、606…通信部
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
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図10
図11
図12