(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190550
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20221219BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20221219BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20221219BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20221219BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20221219BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20221219BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20221219BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
F27D17/00 104G
B01J20/04 C
B01J20/10 C
B01J20/34 H
B01D53/82
B01D53/96
B01D53/14 100
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098921
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】521260123
【氏名又は名称】權 龍祥
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】權 龍祥
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G066
4K056
【Fターム(参考)】
4D002BA03
4D002CA07
4D002CA13
4D002DA01
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA11
4D002DA16
4D002DA21
4D002DA22
4D002EA04
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB11
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA03
4D020BA04
4D020BA08
4D020BA09
4D020BB01
4D020BC01
4D020CA05
4D020CC01
4D020DA01
4D020DA03
4D020DB06
4G066AA11B
4G066AA27B
4G066AA30B
4G066CA35
4G066DA02
4G066DA03
4G066GA01
4G066GA16
4G066GA32
4K056AA08
4K056DB04
4K056FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より低温で二酸化炭素の吸収と分離を行う、汎用性の高い二酸化炭素回収装置の提供。
【解決手段】二酸化炭素吸収材を内蔵するケーシングを有する吸収ユニットを備え、ケーシングの一側に設けられ、吸収材に接続される第1配管と、二酸化炭素回収管と、第1配管に設けられ吸収材に大気を供給する第1状態と、吸収材を回収管に接続する第2状態とを切り替える切替バルブと、ケーシングの他側に設けられ、第1開閉バルブを有し吸収材と炉体とを接続する第2配管と、該配管に設けられる第1開閉バルブと、ケーシング内の吸収材内を通過し一端が炉体に接続され、他端が外部に開放される排気配管と、ケーシングにおいて排気配管に設けられる第2開閉バルブとを備える。二酸化炭素吸収時は、切替バルブを第1状態、第1開閉バルブを開状態、第2開閉バルブを閉状態とし、分離時は切替バルブを第2状態、第1開閉バルブを閉状態、第2開閉バルブを開状態とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に温度差により二酸化炭素を吸着・分離する二酸化炭素吸収材が配置された吸収ユニットを備える二酸化炭素回収装置であり、
前記ケーシングの一側に接続され、二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を含有する気体を供給する第1配管と、
前記ケーシングの他側に接続され、前記二酸化炭素吸収材を通過した気体を排出する第2配管と、
前記第1配管に接続され二酸化炭素を回収する回収管と、
前記二酸化炭素吸収材に気体を供給する第1状態と、前記二酸化炭素吸収材から分離される二酸化炭素を前記回収管を通じて回収する第2状態とを切り替える切替手段と、
前記二酸化炭素吸収材を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする、
二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素吸収材が、常温で二酸化炭素を吸収し、150~500℃の加熱により二酸化炭素を分離するものであり、
前記加熱手段が、前記二酸化炭素吸収材を150~500℃で加熱するものである、
請求項1記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素吸収材が、常温で二酸化炭素を吸収し、200~350℃の加熱により二酸化炭素を分離するものであり、
前記加熱手段が、前記二酸化炭素吸収材を200~350℃で加熱する、
請求項1記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記切替手段がバルブである、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記ケーシング内において、前記二酸化炭素吸収材の前記第1配管側に、前記気体の供給時に気体を分散して前記二酸化炭素吸収材に供給する金属製メッシュフィルタが配置されている、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記回収管は、上流側から、真空ポンプ及び圧縮機が設けられ、二酸化炭素を貯留する二酸化炭素回収容器に接続されている、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
二酸化炭素吸収材は、リチウムシリケート、ナトリウムフェライト等の固形物の吸収材である、
請求項1乃至6のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を含有する気体が、大気である、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
前記第2配管が加熱処理装置に接続される二酸化炭素回収装置であり、
前記加熱処理装置と前記吸収ユニットに接続され、前記加熱処理装置からの排気が通過する第3配管と、
前記第2配管から前記二酸化炭素吸収材を通過した気体が前記加熱処理装置に給気され、前記加熱処理装置の加熱により排出される排気が第3配管を通過する、
請求項1乃至8のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
前記第2配管に設けられる第1開閉バルブと、
前記第3配管に設けられる第2開閉バルブと、を備え、
二酸化炭素吸収時には、前記切替バルブを第1状態、前記第1開閉バルブを開状態、前記第2開閉バルブを閉状態とし、
二酸化炭素回収時には、前記切替バルブを第2状態、前記第1開閉バルブを閉状態、前記第2開閉バルブを開状態とする、
請求項9項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
前記第3配管は、一端が前記加熱処理装置に接続され、中間部分が前記ケーシング内を通過し、他端が外部に開放されている、
請求項9又は10記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項12】
前記吸収ユニットにおいて、前記二酸化炭素吸収材が前記ケーシング内に配置された第4配管内に配されていて、
前記第3配管は、一端が前記加熱処理装置に接続され、他端が前記ケーシングに接続されていて、
前記加熱処理装置からの排気が、前記ケーシング内の前記第4配管の外側の空間を通過する、
請求項9又は10記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項13】
前記ケーシング内に、第1吸収ユニットと第2吸収ユニットが並列に配置され、
前記第1吸収ユニットと第2吸収ユニットのいずれか一方を、前記切替バルブを第1状態、前記第1開閉バルブを開状態、前記第2開閉バルブを閉状態として、二酸化炭素吸収状態とし、
前記第1吸収ユニットと第2吸収ユニットのいずれか他方を、前記切替バルブを第2状態、前記第1開閉バルブを閉状態、前記第2開閉バルブを開状態として、二酸化炭素回収状態とする、
請求項9乃至12のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置が前記加熱処理装置に接続されている、
二酸化炭素回収システム。
【請求項15】
前記加熱処理装置が加熱炉である、
請求項14記載の二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収システムに関し、例えば加熱炉などの加熱処理装置やその他の装置などに接続して、二酸化炭素を回収するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素を回収する方法として、セラミックス吸収材などは600℃程度で吸収し、800℃程度の熱で分離回収することが知られている。そのような方法は、高温で吸収、分離するので、多大なエネルギーコストもかかり、例えば加熱炉の排気熱を利用する場合などでは高温の炉が必須となり、用途が極めて制限されている。そのため二酸化炭素を回収する多くの場合、大型プラントや大型設備でしか使用できず、汎用性がなく、また投資も大規模なものが必要となる。
【0003】
また、二酸化炭素を短時間かつ低コストで分離することができるものとして、温度差によって二酸化炭素の吸収及び脱離が可能である二酸化炭素吸収材と、二酸化炭素吸収材に電磁波を照射する電磁波照射部と、を備える二酸化炭素分離装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、従来の技術では、二酸化炭素を吸収・分離する際、600℃程度で吸収し、800℃程度の熱で吸収・分離を行って二酸化炭素を回収するため、非常に高温での利用が必須となるため、多大なエネルギーコストもかかり、用途が極めて制限されるという課題がある。
【0006】
また、特許文献1の技術では、二酸化炭素の回収に電磁波を照射する電磁波照射部が必須となること、回収コストが高くなるという課題がある。
【0007】
そこで、発明者らは鋭意研究のすえ、電磁波を用いることなく、また従来よりも低い温度で二酸化炭素の吸収と分離を行える、汎用性の高い二酸化炭素回収装置を発明した。
【0008】
また、発明者らは、この二酸化炭素回収装置を加熱炉などの加熱処理装置に用いて、加熱処理装置の排熱を利用することで、省エネルギーを実現した二酸化炭素回収システムを発明した。
【0009】
例えば、
図8に示すように、二酸化炭素吸収材101を有する給気通路102を通じて大気などの気体から加熱炉103内に常温で導入し、その際に二酸化炭素を吸収し、加熱炉103を使用した際にでる200~300℃に熱せられた排気を用いて、排気通路104を通じて大気中に排気する過程で、200~300℃の空気で二酸化炭素吸収材101を加熱することで、排熱を利用して二酸化炭素を二酸化炭素吸収材101から二酸化炭素を分離する。
【0010】
つまり、二酸化炭素吸収材を使用し、加熱炉に一般的に用いられる給気通路と排気通路に組み込み、一連の流れとして、二酸化炭素の吸収、分離、回収を行うことで、回収のエネルギーコストを極めて低減でき、また吸収、分離温度を低下させたことで、プラントではなく、小型の加熱炉(小規模の加熱処理装置を含む)でも使用でき、汎用性が広がり、コストも低減できることに基づく。
【0011】
以上のように、本発明は、電磁波を用いることなく、従来よりも低い温度で二酸化炭素の吸収と分離を行える、汎用性の高い二酸化炭素回収装置を提供する。また、これに加熱処理装置を接続することで、加熱処理装置から排出される排気熱を利用して、二酸化炭素回収のエネルギーコストを低減できる二酸化炭素回収システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ケーシング内に温度差により二酸化炭素を吸着・分離する二酸化炭素吸収材が配置された吸収ユニットを備える二酸化炭素回収装置であり、前記ケーシングの一側に接続され、二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を含有する気体を供給する第1配管と、前記ケーシングの他側に接続され、前記二酸化炭素吸収材を通過した気体を排出する第2配管と、前記第1配管に接続され二酸化炭素を回収する回収管と、前記二酸化炭素吸収材に気体を供給する第1状態と、前記二酸化炭素吸収材から分離される二酸化炭素を前記回収管を通じて回収する第2状態とを切り替える切替手段と、前記二酸化炭素吸収材を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このようにすれば、電磁波を利用する電磁波照射部が必須でなく、汎用性の高い二酸化炭素回収装置を実現できる。ここで、二酸化炭素吸収材を加熱する加熱手段とは、例えば電気ヒータなどの加熱装置や、加熱処理装置などに接続した場合などの排気による排熱などが含まれる。また、切替手段は、バルブや弁などが含まれる。
【0014】
また、望ましくは、この二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素吸収材が、常温で二酸化炭素を吸収し、150~500℃の加熱により二酸化炭素を分離するものであり、前記加熱手段が、前記二酸化炭素吸収材を150~500℃で加熱するものである。
【0015】
このようにすれば、二酸化炭素吸収材が常温で二酸化炭素を吸収し、二酸化炭素吸収材を150~400℃で加熱することで、二酸化炭素を分離して回収することができる。これによって、より汎用性の高い二酸化炭素回収装置を実現できる。
【0016】
また、より望ましくは、この二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素吸収材が、常温で二酸化炭素を吸収し、200~350℃の加熱により二酸化炭素を分離するものであり、前記加熱手段が、前記二酸化炭素吸収材を200~350℃で加熱する。この場合、200℃~とすることで二酸化炭素の分離が促進され、また~350℃とすることで加熱温度がさらに低くなるため、さらに汎用性の高い二酸化炭素回収装置となる。
【0017】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記切替手段がバルブである。
【0018】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記ケーシング内において、前記二酸化炭素吸収材の前記第1配管側に、前記気体の供給時に気体を分散して前記二酸化炭素吸収材に供給する金属製メッシュフィルタが配置されている。このようにすれば、気体の供給時に気体を分散して二酸化炭素吸収材に導入させることができる。
【0019】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記回収管が、上流側から真空ポンプ及び圧縮機が設けられ、二酸化炭素を貯留する二酸化炭素回収容器に接続されている。このようにすれば、高圧縮状態で二酸化炭素を回収、貯留ができる。
【0020】
また、この二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素吸収材が、リチウムシリケート、ナトリウムフェライト等の固形物の吸収材である。
【0021】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記二酸化炭素吸収材に二酸化炭素を含有する気体が大気である。
【0022】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記第2配管が加熱処理装置に接続される二酸化炭素回収装置であり、前記加熱処理装置と前記吸収ユニットに接続され、前記加熱処理装置からの排気が通過する第3配管と、前記第2配管から前記二酸化炭素吸収材を通過した気体が前記加熱処理装置に給気され、前記加熱処理装置の加熱により排出される排気が第3配管を通過する。
【0023】
このようにすれば、二酸化炭素回収装置に加熱処理装置などを接続した場合に、加熱処理装置等の排気の排熱を二酸化炭素吸収材の加熱に利用して二酸化炭素を分離することで、回収エネルギーコストを抑制できる。
【0024】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記第2配管に設けられる第1開閉バルブと、前記第3配管に設けられる第2開閉バルブとを備え、二酸化炭素吸収時には、前記切替バルブを第1状態、前記第1開閉バルブを開状態、前記第2開閉バルブを閉状態とし、二酸化炭素回収時には、前記切替バルブを第2状態、前記第1開閉バルブを閉状態、前記第2開閉バルブを開状態とする。
【0025】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記第3配管が、一端が前記加熱処理装置に接続され、中間部分が前記ケーシング内を通過し、他端が外部に開放されている。このようにすれば、加熱処理装置からの排気が第3配管を通過し、ケーシング内を通過する際に、二酸化炭素吸収材を加熱する。
【0026】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記吸収ユニットにおいて、前記二酸化炭素吸収材が前記ケーシング内に配置された第4配管内に配されていて、前記第3配管は、一端が前記加熱処理装置に接続され、他端が前記ケーシングに接続されていて、前記加熱処理装置からの排気が、前記ケーシング内の前記第4配管の外側の空間を通過する構成とすることもできる。このようにすれば、二酸化炭素吸収材が配置された第4配管の外側の空間を、加熱処理装置からの排気が通過することで、二酸化炭素吸収材を加熱する。
【0027】
また、この二酸化炭素回収装置は、前記ケーシング内に、第1吸収ユニットと第2吸収ユニットが並列に配置され、前記第1吸収ユニットと第2吸収ユニットのいずれか一方を、前記切替バルブを第1状態、前記第1開閉バルブを開状態、前記第2開閉バルブを閉状態として、二酸化炭素吸収状態とし、前記第1吸収ユニットと第2吸収ユニットのいずれか他方を、前記切替バルブを第2状態、前記第1開閉バルブを閉状態、前記第2開閉バルブを開状態として、二酸化炭素回収状態とする。
【0028】
このようにすれば、2つの吸収ユニットを用いることで、例えば、第1吸収ユニットで二酸化炭素を回収しながら、第2吸収ユニットで二酸化炭素を分離できる。また、第1吸収ユニットの二酸化炭素吸収材が二酸化炭素の吸収が飽和状態になった場合は、第1吸収ユニットと第2吸収ユニットを逆転させて運用することで、第1吸収ユニットに吸収された二酸化炭素を回収できる。これらを交互に切り替えることで、二酸化炭素の回収を効率よく行うことができる。
【0029】
本発明にかかる二酸化炭素回収システムは、請求項9乃至13のいずれか1項記載の二酸化炭素回収装置が前記加熱処理装置に接続されていることを特徴とする。
【0030】
このようにすれば、加熱処理装置に気体が供給される際に、二酸化炭素吸収材に二酸化炭素が吸収され、二酸化炭素分離時には、加熱処理装置の排気の熱を利用して、二酸化炭素吸収材を加熱し、二酸化炭素吸収材から二酸化炭素を分離させ、回収することができる。これにより、回収のエネルギーコストを低減できる。
【0031】
また、この二酸化炭素回収システムは、前記加熱処理装置が加熱炉である。このようにすれば、加熱炉の排気の排熱を加熱に利用できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、電磁波を用いることなく、従来よりも低い温度で二酸化炭素の吸収と分離を行える汎用性の高い二酸化炭素回収装置となる。また、これに加熱処理装置を接続することで、加熱処理装置から排出される排気熱を利用して、二酸化炭素回収のエネルギーコストを低減できる二酸化炭素回収システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】(a)(b)は加熱炉に用いられる、本発明に係る二酸化炭素回収システムの概略構成を示し、(a)は平面断面図,(b)は正面図である。
【
図2】(a)(b)は前記二酸化炭素回収システムの動作説明図で、(a)は加熱炉への給気時の状態を、(b)は加熱炉からの排気時の状態をそれぞれ示す。
【
図3】2つの吸収ユニットを有する変形例を正面から見た状態を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図4】2つの吸収ユニットを有する変形例を下面から見た状態を示し、(a)は下面図、(b)は斜視図である。
【
図5】2つの吸収ユニットを有する変形例の動作説明図で、(a)は一方のユニットの動作時を示し,(b)は他方のユニットの動作時を示す。
【
図6】自立型とした場合の加熱炉と回収システムとの関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0035】
<第1実施形態>
図1は、二酸化炭素回収装置に加熱炉を接続した二酸化炭素回収システムの概略構成を示し(a)は平面断面図、(b)は正面図である。
図1(a)(b)に示すように、二酸化炭素回収システムAにおいて、二酸化炭素回収装置1は、吸収ユニット5を備え、この吸収ユニット5のケーシング4の中心を排気配管2が貫通し、それの外側に環状の二酸化炭素吸収材3が配置されている。
【0036】
二酸化炭素吸収材3は、常温で二酸化炭素を吸収し、200~300℃程度の加熱により分離する固形物の吸収材(例えば、リチウムシリケート、ナトリウムフェライト等の固形物の吸収材)で、この二酸化炭素回収システムAは、二酸化炭素回収装置1に、加熱処理装置、例えば加熱炉の炉体8が接続されたものである(
図6及び
図7参照)。
【0037】
より具体的には、二酸化炭素吸収材3は、空気中の二酸化炭素を吸収するもので、設置可能な量で対象となる空間の二酸化炭素濃度を制御可能な二酸化炭素の吸収速度を有し、二酸化炭素吸収後、加熱により再度二酸化炭素を吸収できる再生が可能なものであればよく、その種類は特に限定されない。
【0038】
例えば、Li2ZrO3、LiFeO2、LiNiO2、Li2TiO3、Li2SiO3、Li4SiO4等リチウム系複合酸化物や、ナトリウムフェライト等であればよい。特に、水溶性を示す4価のリチウムシリケートと炭酸カリウムからなる二酸化炭素吸収材は、通常の室内環境において二酸化炭素吸収速度が非常に早く、好適である。
【0039】
また、二酸化炭素吸収材3の形状は、二酸化炭素濃度制御を行う空気がスムーズに流通でき、ケーシング4内に内包できる形状、たとえばペレット状や、フィルタ形状に形成されていればよい。
【0040】
そして、ケーシング4の一側には、切替バルブ6を有し大気(給気)を二酸化炭素吸収材3に導入する第1配管7を有し、他側には、二酸化炭素吸収材3を通過した大気を加熱炉の炉体8に供給する、第1開閉バルブ9を有する第2配管10が接続されている。二酸化炭素吸収材3の第1配管7側には、給気時に大気を吸収材に分散して導入できるように金属製メッシュフィルタ11が配置されている。
【0041】
排気配管2は、一端が第2開閉バルブ12を介して炉体8(具体的には、炉内排気管)に接続され、他端が外部に開放されている。この第2開閉バルブ12は、二酸化炭素分離時には、開状態とされ、炉体8内からの排気が排気配管2を流れることで、排熱によって二酸化炭素吸収材3を加熱し、二酸化炭素吸収材3から二酸化炭素を分離させる。
【0042】
切替バルブ6は、導入される大気を二酸化炭素吸収材3に流す第1状態と、二酸化炭素吸収材3から分離した二酸化炭素を、真空ポンプ13、圧縮機14、二酸化炭素回収容器であるタンク15を順に有する回収管16に流す第2状態とを選択的に取り得るようになっている。第1の状態では、導入された大気が二酸化炭素吸収材3内に導入され、第2の状態では、二酸化炭素吸収材3から分離した二酸化炭素が、回収管16に流れる。
【0043】
よって、加熱炉の炉体8への給気時には、
図2(a)に示すように、切替バルブ6は第1状態とされ、第1開閉バルブ9は開状態とされ、第2開閉バルブ12は閉状態とされる。
【0044】
これにより、第1配管7を通じて導入された大気が、二酸化炭素吸収材3を通過し、通過後の大気は第2配管10を通じて、加熱炉の炉体8内に供給される。大気が二酸化炭素吸収材3を通過している際に、二酸化炭素が二酸化炭素吸収材3に吸収され、大気から除かれる。
【0045】
一定時間経過すると、二酸化炭素吸収材3に二酸化炭素が十分吸収され、蓄積されるので、二酸化炭素吸収材3から二酸化炭素を分離し回収する作業に移ることになる。このとき、
図2(b)に示すように、切替バルブ6は第2状態とされ、第1開閉バルブ9は閉状態とされ、第2開閉バルブ12は開状態とされる。
【0046】
これにより、加熱炉の炉体8内から加熱された排気が排気配管2を通じて、外部に排出され、その排出される際に、ケーシング4内を排気が通過するとき、排気配管2周囲に配置されている二酸化炭素吸収材3を加熱し、二酸化炭素吸収材3から二酸化炭素を分離させる。
【0047】
この分離した二酸化炭素は、真空ポンプ13の駆動により、第1配管7を通じて回収管16に排出され、圧縮機14にて圧縮されて、高濃度二酸化炭素としてタンク15に貯留される。このタンク15に貯留された二酸化炭素は各種用途に利用される。
【0048】
よって、排熱を利用することで、エネルギーを無駄に使うことなく、二酸化炭素の回収がなされる。
【0049】
<第2実施形態>
前記した第1実施形態では、二酸化炭素回収装置1が吸収ユニット5を1つ備えた二酸化炭素回収システムAであるが、
図3に示すように、二酸化炭素回収装置50が第1及び第2吸収ユニット50A,50Bを2つ備えた二酸化炭素回収システムBとすることも可能である。この場合には、大気導入側の配管構成は、吸収ユニット50A,50Bのいずれに給気するかを切り替える切替バルブ21を有する。
【0050】
そして、二酸化炭素吸収材に給気する主管22a及び主管22aから分岐して二酸化炭素吸収材(吸収ユニット50A,50B)に給気する分岐管22b,22bを有する第1配管22と、各吸収ユニット50A,50Bの排気配管に接続される第1排気管23とを備える。また、第1配管22の主管22aには、回収管に接続される継手24aを有する配管24の両端が接続され、配管24の、主管22a付近には開閉バルブ25,25が設けられている。
【0051】
炉体8側の配管構成は、炉体8に接続される継手31を有し端部が吸収ユニット50A,50B(二酸化炭素吸収材)に接続されている主配管32aと、主配管32aから分岐して延び吸収ユニット50A,50B(二酸化炭素吸収材)に接続される2つの分岐管32b,32bとを有する第2配管32と、主配管32aの両端部付近及び分岐管32b,32bに設けられている開閉バルブ33,33,33,33とを有する。また、開閉バルブ34を有し炉体8内を各吸収ユニット50A,50Bの排気配管に接続する第2排気管35を備える。
【0052】
二酸化炭素吸収時には、切替バルブ21を第1状態、第1開閉バルブ33を開状態、第2開閉バルブ25を閉状態とする一方、二酸化炭素分離時には、切替バルブ21を第2状態、第1開閉バルブ33を閉状態、第2開閉バルブ25を開状態とするものである。
【0053】
よって、吸収ユニット50A,50Bの一方が、二酸化炭素を吸収している際には、他方の吸収ユニット50A,50Bが二酸化炭素を分離し、二酸化炭素を回収することになる。
【0054】
<その他の実施形態>
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記の実施形態では、炉体8の排気が配管を通じてケーシング内の二酸化炭素吸収材を加熱しているが、二酸化炭素吸収材を別の配管内に配置する構成とし、炉体8の排気がケーシング内の配管外を通過する構成とすることも可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 二酸化炭素回収装置
2 排気配管
3 二酸化炭素吸収材
4 ケーシング
5 吸収ユニット
6 切替バルブ
7 第1配管
8 炉体
9 第1開閉バルブ
10 第2配管
11 メッシュフィルタ
12 第2開閉バルブ
13 真空ポンプ
14 圧縮機
15 タンク
16 回収管
21 切替バルブ
22 第1配管
22a 主管
22b 分岐管
23 第1排気管
24 配管
24a 継手
25 開閉バルブ
31 継手
32a 主配管
32b 分岐管
33 開閉バルブ
34 開閉バルブ
35 第2排気管
50 二酸化炭素回収装置
50A 吸収ユニット
50B 吸収ユニット
A 二酸化炭素回収システム
B 二酸化炭素回収システム