(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190554
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】バックストップ
(51)【国際特許分類】
B66C 23/92 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
B66C23/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098925
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】中司 健一
(72)【発明者】
【氏名】住本 宏治
(72)【発明者】
【氏名】宮 英司
(72)【発明者】
【氏名】前藤 鉄兵
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA05
3F205CA01
3F205CA09
3F205DA01
3F205KA10
(57)【要約】
【課題】スペーサと周囲の部材との干渉を防止することが可能なバックストップを提供する。
【解決手段】クレーン1のリヤ側ジブバックストップ60は、外筒60Aと、内筒60Bと、スペーサ70と、スペーサホルダ80と、ロック機構90とを有する。スペーサホルダ80はスペーサ70を揺動可能に軸支しており、ブーム16の起立時にリヤ側ジブバックストップ60が姿勢変更すると、スペーサ70が内筒60Bに嵌合しリヤ側ジブバックストップ60の収縮が阻止される。ロック機構90は、スペーサ70が内筒60Bの外周面から離間した状態でスペーサ70が揺動中心軸CT回りに揺動することを阻止するようにスペーサ70をロックすることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、前記機体に起伏可能に支持されるブームと、ストラットとを有し、前記ブームは、前記機体に回動可能に装着されるブーム基端部と、当該ブーム基端部とは反対側のブーム先端部であってストラット支持部と当該ストラット支持部の後方に配置されるバックストップ支持部とを含むブーム先端部とを含み、前記ストラットは、水平な基準回動中心軸回りに起伏方向に回動可能なように前記ブーム先端部の前記ストラット支持部に支持されるストラット基端部と、当該ストラット基端部とは反対側に配置されるストラット先端部と、前記ストラット基端部と前記ストラット先端部との間に配置されるバックストップ接続部とを含むクレーンに装着され、前記ブームと前記ストラットとの間に介在し前記ストラットを支えることが可能なバックストップであって、
前記基準回動中心軸と平行な第1回動中心軸回りに回動可能なように前記ストラットの前記バックストップ接続部に接続される外筒基端部と当該外筒基端部の反対側に配置される外筒先端部とを含む外筒と、
前記基準回動中心軸と平行な第2回動中心軸回りに回動可能なように前記ブーム先端部の前記バックストップ支持部に支持される内筒基端部と当該内筒基端部とは反対側に配置され前記外筒先端部を通じて前記外筒内に挿通される内筒先端部とを含む内筒であって、前記ブームに対する前記ストラットの前記基準回動中心軸回りの回動に伴って前記バックストップ支持部と前記バックストップ接続部との距離が変化することを許容するように前記外筒に対して軸方向に相対移動することが可能な内筒と、
前記軸方向に所定の寸法を有するとともに前記軸方向と直交する方向に沿って前記内筒の外周面に嵌合することが可能な半筒状の内周面を有するスペーサであって、当該スペーサの前記軸方向における両端部が前記外筒先端部および前記内筒基端部にそれぞれ当接することで前記外筒先端部が前記寸法に対応する距離よりも前記内筒基端部に近づくように前記バックストップが収縮することを阻止することが可能なスペーサと、
前記バックストップの前記外筒に装着され前記スペーサを前記軸方向と直交する揺動中心軸回りに揺動可能に支持するスペーサホルダであって、前記ブームが前記ストラットを支持した状態で前記機体に対して起立することに伴って前記スペーサが当該スペーサの自重で前記揺動中心軸回りに揺動し前記内筒に嵌合することが可能なように前記スペーサを支持するスペーサホルダと、
ロック状態とロック解除状態との間で状態変更可能なロック機構であって、前記ロック状態は前記スペーサが前記内筒の外周面から離間した状態で前記スペーサが前記揺動中心軸回りに揺動することを阻止するように前記スペーサをロックする状態であり、前記ロック解除状態は前記スペーサが前記揺動中心軸回りに揺動することを許容する状態であるロック機構と、
を備える、バックストップ。
【請求項2】
前記外筒および前記内筒は前記軸方向に沿って延びる中心線を有する円筒形状をそれぞれ有し、
前記スペーサホルダは、前記ブームが前記ストラットを支持し前記機体に対して倒伏した状態であるブーム倒伏状態において前記スペーサが前記中心線を通る鉛直面と交差し前記外筒に対して当該スペーサの自重によって前記揺動中心軸から垂れ下がった姿勢である垂下姿勢をとり、前記ブームが前記ブーム倒伏状態から前記機体に対して起立することに伴って前記垂下姿勢から前記スペーサが前記鉛直面に沿って前記内筒の外周面に近づくように、前記スペーサを前記揺動中心軸回りに揺動可能に支持し、
前記ロック機構は、前記スペーサが前記垂下姿勢よりも前記内筒の外周面から離れるように揺動し前記スペーサの外周面が前記外筒に対向した前記スペーサの前記外筒に対する姿勢である対向姿勢とされた前記スペーサと前記外筒とを互いに接続することで前記スペーサをロックする、請求項1に記載のバックストップ。
【請求項3】
前記スペーサホルダは、前記外筒に対して周方向に相対回転可能なように前記外筒に装着されており、
前記ロック機構は、前記スペーサが前記対向姿勢とされた状態で前記スペーサホルダが前記外筒に対して前記周方向に相対回転し前記スペーサが前記鉛直面から脱離した状態で、前記スペーサと前記外筒とを互いに接続することで前記スペーサをロックする、請求項2に記載のバックストップ。
【請求項4】
前記外筒は、
前記外筒基端部および前記外筒先端部を含み、前記スペーサホルダを支持するともに、前記内筒を内部に受け入れることが可能な円筒状の外筒本体と、
前記垂下姿勢における前記スペーサから見て前記スペーサホルダよりも遠い位置において前記外筒本体の外周面に配設された外筒固定部であって、前記軸方向と直交する方向に沿って第1ピン孔が形成されている外筒固定部と、
を有し、
前記スペーサは、
前記内筒の外周面に嵌合することが可能な内周面を含む半円筒状のスペーサ本体と、
前記スペーサ本体から前記軸方向に沿って延びるとともに前記スペーサホルダに前記揺動中心軸回りに揺動可能に接続されるスペーサ被支持部であって、当該スペーサ被支持部のうち前記揺動中心軸よりも前記スペーサ本体に近い部分には前記軸方向と直交する方向に沿って第2ピン孔が形成されているスペーサ被支持部と、
を有し、
前記ロック機構は、前記スペーサが前記対向姿勢とされた状態で前記第1ピン孔および前記第2ピン孔に順に挿入されることで前記スペーサの前記スペーサ被支持部と前記外筒の前記外筒固定部とを互いに接続し前記スペーサをロックするロックピンを含む、請求項3に記載のバックストップ。
【請求項5】
前記スペーサホルダは、
前記外筒に対して周方向に相対回転可能なように前記外筒の外周面に外嵌されるホルダ円筒部と、
当該ホルダ円筒部の外周面に配設され前記スペーサの前記スペーサ被支持部を前記揺動中心軸回りに揺動可能に支持するホルダ支持部と、
前記ホルダ円筒部の外周面のうち周方向において前記ホルダ支持部とは異なる位置において前記ホルダ円筒部から前記外筒基端部に向かって突出するように配置されるホルダ固定部であって、当該ホルダ固定部には前記軸方向と直交する方向に沿って第3ピン孔が形成されているホルダ固定部と、
を有し、
前記スペーサが前記垂下姿勢とされた状態で、前記ロックピンが前記第1ピン孔および前記第3ピン孔にそれぞれ挿入され当該ロックピンが前記スペーサホルダの前記ホルダ固定部と前記外筒の前記外筒固定部とを互いに接続することによって、前記ロックピンが前記スペーサを前記外筒の周方向において拘束するように前記外筒固定部の位置が設定されている、請求項4に記載のバックストップ。
【請求項6】
前記スペーサが前記ストラットと前記バックストップとの間の空間から脱離することで前記外筒が前記ストラットに重なるように配置されることを可能とするように、前記スペーサホルダの前記外筒に対する前記周方向における回転角度が設定されている、請求項3乃至5の何れか1項に記載のバックストップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに装着されるバックストップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クレーン本体と、当該クレーン本体に起伏方向に回動可能に支持されたブームと、当該ブームの先端部に起伏方向に回動可能に支持されたジブと、当該ジブの後側において前記ジブの基端部に起伏方向に回動可能に支持され前記ジブを後方から支持するストラットとを含むクレーンが開示されている。当該クレーンは、ストラットおよびジブがブームに対して後方に倒れることを防止するためのジブバックストップを更に含む。
【0003】
ジブバックストップは外筒と当該外筒に対して軸方向に相対移動可能な内筒とスペーサとを含み、内筒の外筒に対する相対移動によってジブバックストップが伸縮する。外筒の基端部はストラットに回動可能に支持されており、内筒の先端部はブームの先端部に回動可能に支持されている。スペーサは内筒の外周面に嵌合可能な形状を有しており、外筒の先端部に回動可能に支持されている。クレーンの組立時にブームおよびジブがクレーン本体に対して起立する際、この動きに連動してジブバックストップの姿勢が変化すると、スペーサが内筒の外周面に嵌合しジブバックストップが更に収縮することを阻止する。この結果、ジブバックストップがストラットを後方から支持し、ストラットおよびジブの更なる回動、すなわち、ストラットおよびジブの後方への倒れを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、クレーンの分解時や輸送時に、スペーサが振動や衝撃を受けて回動し周囲の部材と干渉すると、当該スペーサが損傷し、クレーンの作業時にバックストップがストラットを安定して支えることが困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、クレーンの組立分解時におけるスペーサと周囲の部材との干渉を防止することが可能なバックストップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供されるのは、機体と前記機体に起伏可能に支持されるブームとストラットとを含むクレーンに装着され、前記ブームと前記ストラットとの間に介在し前記ストラットを支えることが可能なバックストップである。前記ブームは、ブーム基端部と、ブーム先端部とを含む。前記ブーム基端部は、前記機体に回動可能に装着される。前記ブーム先端部は、前記ブーム基端部の反対側に配置され、ストラット支持部と当該ストラット支持部の後方に配置されるバックストップ支持部とを含む。前記ストラットは、ストラット基端部とストラット先端部とバックストップ接続部とを含む。前記ストラット基端部は、水平な基準回動中心軸回りに起伏方向に回動可能なように前記ブーム先端部の前記ストラット支持部に支持される。前記ストラット先端部は、前記ストラット基端部の反対側に配置される。前記バックストップ接続部は、前記ストラット基端部と前記ストラット先端部との間に配置される。前記バックストップは、外筒と、内筒と、スペーサと、スペーサホルダと、ロック機構とを含む。前記外筒は、前記基準回動中心軸と平行な第1回動中心軸回りに回動可能なように前記ストラットの前記バックストップ接続部に接続される外筒基端部と、当該外筒基端部の反対側に配置される外筒先端部とを含む。前記内筒は、前記基準回動中心軸と平行な第2回動中心軸回りに回動可能なように前記ブーム先端部の前記バックストップ支持部に支持される内筒基端部と、当該内筒基端部の反対側に配置され前記外筒先端部を通じて前記外筒内に挿通される内筒先端部とを含む。また、前記内筒は、前記ブームに対する前記ストラットの前記基準回動中心軸回りの回動に伴って前記バックストップ支持部と前記バックストップ接続部との距離が変化することを許容するように前記外筒に対して軸方向に相対移動する。前記スペーサは、前記軸方向に所定の寸法を有するとともに前記軸方向と直交する方向に沿って前記内筒の外周面に嵌合することが可能な半筒状の内周面を有する。当該スペーサの前記軸方向における両端部が前記外筒先端部および前記内筒基端部にそれぞれ当接すると、前記外筒先端部が前記寸法に対応する距離よりも前記内筒基端部に近づくように前記バックストップが収縮することを前記スペーサが阻止する。前記スペーサホルダは、前記バックストップの前記外筒に装着され前記スペーサを前記軸方向と直交する揺動中心軸回りに揺動可能に支持する。前記スペーサホルダは、前記ブームが前記ストラットを支持した状態で前記機体に対して起立することに伴って前記スペーサが当該スペーサの自重で前記揺動中心軸回りに揺動し前記内筒に嵌合することが可能なように前記スペーサを支持する。前記ロック機構は、ロック状態とロック解除状態との間で状態変更可能であって、前記ロック状態は前記スペーサが前記内筒の外周面から離間した状態で前記スペーサが前記揺動中心軸回りに揺動することを阻止するように前記スペーサをロックする状態であり、前記ロック解除状態は前記スペーサが前記揺動中心軸回りに揺動することを許容する状態である。
【0008】
本構成によれば、ロック機構をロック状態とすると、スペーサが内筒の外周面から離間した状態でスペーサが揺動中心軸回りに揺動することを阻止するように、ロック機構がスペーサをロックすることができる。このため、クレーンの組立分解時にスペーサが自由に動くことを阻止し、スペーサと周辺の部材との干渉およびこれに伴う破損を防止することができる。したがって、作業者はバックストップを含むクレーンの分解作業や輸送作業時に、スペーサの干渉、破損に注意する必要なく、作業を行うことができる。一方、クレーンの組立時には、ロック機構をロック解除状態とすることで、スペーサの揺動が可能となり、当該スペーサによってバックストップの長さを拘束することができる。
【0009】
前記外筒および前記内筒は前記軸方向に沿って延びる中心線を有する円筒形状をそれぞれ有し、前記スペーサホルダは、ブーム倒伏状態において前記スペーサが垂下姿勢をとり、前記ブームが前記ブーム倒伏状態から前記機体に対して起立することに伴って前記垂下姿勢から前記スペーサが前記外筒の中心線を通る鉛直面に沿って前記内筒の外周面に近づくように前記スペーサを前記揺動中心軸回りに揺動可能に支持し、前記ブーム倒伏状態は前記ブームが前記ストラットを支持し前記機体に対して倒伏した状態であり、前記垂下姿勢は、前記スペーサが前記中心線を通る鉛直面と交差し当該スペーサの自重によって前記揺動中心軸から垂れ下がった姿勢であり、前記ロック機構は、対向姿勢とされた前記スペーサと前記外筒とを互いに接続することで前記スペーサをロックし、前記対向姿勢は前記スペーサが前記垂下姿勢よりも前記内筒の外周面から離れるように揺動し前記スペーサの外周面が前記外筒に対向した前記スペーサの前記外筒に対する姿勢であることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、スペーサが内筒から離間し外筒に対向した状態でスペーサをロックすることができるため、輸送時の振動などによってスペーサが内筒に近づくことを防止することができる。また、ロック機構がスペーサをジブバックストップの中心線と直交する方向に延びる姿勢でロックする場合と比較して、バックストップをコンパクト化し輸送中にバックストップが占有するスペースを小さくすることができる。
【0011】
上記の構成において、前記スペーサホルダは、前記外筒に対して周方向に相対回転可能なように前記外筒に装着されており、前記ロック機構は、前記スペーサが前記対向姿勢とされた状態で前記スペーサホルダが前記外筒に対して前記周方向に相対回転し前記スペーサが前記鉛直面から脱離した状態で、前記スペーサと前記外筒とを互いに接続し前記スペーサをロックすることが望ましい。
【0012】
本構成によれば、作業者は、スペーサホルダを外筒に対して相対回転させることで、バックストップを通る鉛直面からスペーサが離れるように当該スペーサを移動させロックすることが可能となり、輸送中にスペーサがバックストップの直上または直下に位置する他の部材と干渉することを防止することができる。
【0013】
上記の構成において、前記外筒は円筒状の外筒本体と外筒固定部とを含み、前記外筒本体は前記外筒基端部および前記外筒先端部を含み、前記スペーサホルダを支持するともに、前記内筒を内部に受け入れる。前記外筒固定部は、前記垂下姿勢における前記スペーサから見て前記スペーサホルダよりも遠い位置において前記外筒本体の外周面に配設され、当該外筒固定部には前記軸方向と直交する方向に沿って第1ピン孔が形成されており、前記スペーサは半円筒状のスペーサ本体とスペーサ被支持部とを含み、前記スペーサ本体は前記内筒の外周面に嵌合することが可能な内周面を含み、前記スペーサ被支持部は前記スペーサ本体から前記軸方向に延びるとともに前記スペーサホルダに前記揺動中心軸回りに揺動可能に支持され、当該スペーサ被支持部のうち前記揺動中心軸よりも前記スペーサ本体に近い部分には前記軸方向と直交する方向に沿って第2ピン孔が形成されており、前記ロック機構は、ロックピンを含み、当該ロックピンは前記スペーサが前記対向姿勢とされた状態で前記第1ピン孔および前記第2ピン孔に挿入されることで前記スペーサの前記スペーサ被支持部と前記外筒の前記外筒固定部とを互いに接続し前記スペーサをロックすることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、作業者は、スペーサ被支持部および外筒固定部にそれぞれ形成されたピン孔にロックピンを挿入することで、スペーサを対向姿勢で容易にロックすることができる。
【0015】
上記の構成において、前記スペーサホルダは、ホルダ円筒部とホルダ支持部とホルダ固定部とを含み、前記ホルダ円筒部は前記外筒に対して周方向に相対回転可能なように前記外筒の外周面に外嵌され、前記ホルダ支持部は前記ホルダ円筒部の外周面に配設され前記スペーサの前記スペーサ被支持部を前記揺動中心軸回りに揺動可能に支持し、前記ホルダ固定部は前記ホルダ円筒部の外周面のうち周方向において前記ホルダ支持部とは異なる位置において前記ホルダ円筒部から前記外筒基端部に向かって突出するように配置され、当該ホルダ固定部には前記軸方向と直交する方向に沿って第3ピン孔が形成されており、前記スペーサが前記垂下姿勢とされた状態で前記ロックピンが前記第1ピン孔および前記第3ピン孔にそれぞれ挿入され当該ロックピンが前記スペーサホルダの前記ホルダ固定部と前記外筒の前記外筒固定部とを互いに接続することによって前記ロックピンが前記スペーサを前記外筒の周方向において拘束するように、前記外筒固定部の位置が設定されていることが望ましい。
【0016】
本構成によれば、ロックピンがホルダ固定部と外筒固定部とを互いに接続することで、スペーサが周方向に移動することを阻止することができる。このため、クレーンの組立作業時にスペーサがバックストップの中心線を通る鉛直面から脱離することを抑止し、スペーサの内筒に対する嵌合不良の発生を防止することができる。
【0017】
上記の構成において、前記スペーサが前記ストラットと前記バックストップとの間の空間から脱離することで前記外筒が前記ストラットに重なるように配置されることを可能とするように、前記スペーサホルダの前記外筒に対する前記周方向における回転角度が設定されていることが望ましい。
【0018】
本構成によれば、クレーンの分解、輸送時に、スペーサの影響を受けずにバックストップをストラットに積載し両者を一体で移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、クレーンの組立分解時におけるスペーサと周囲の部材との干渉およびこれに伴う破損を防止することが可能なバックストップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクレーンの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るクレーンの下部ジブにストラットが載置された状態の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るクレーンの下部ジブにストラットが載置された状態の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るクレーンの下部ジブにストラットが載置された状態の拡大平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るクレーンの下部ジブにストラットが載置された状態のストラット周辺の拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るクレーンのバックストップの内筒にスペーサが嵌合する様子を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るクレーンのバックストップの内筒にスペーサが嵌合する様子を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るクレーンのバックストップの内筒にスペーサが嵌合する様子を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るクレーンのブームヘッドに下部ジブおよびストラットが接続される様子を示す側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るクレーンのブームヘッドに下部ジブおよびストラットが接続される様子を示す側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るクレーンの下部ジブに対してストラットが引き起こされる様子を示す側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいてストラットが引き起こされた様子を示す側面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいてフロント側バックストップが引き起こされる様子を示す拡大側面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいてリヤ側バックストップがブームヘッドに接続される様子を示す拡大側面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るクレーンのスペーサが格納姿勢から垂下姿勢に姿勢変更される様子を示す斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るクレーンのスペーサが格納姿勢から垂下姿勢に姿勢変更される様子を示す斜視図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係るクレーンのスペーサが格納姿勢から垂下姿勢に姿勢変更される様子を示す斜視図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係るクレーンのスペーサが格納姿勢から垂下姿勢に姿勢変更される様子を示す斜視図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいてブームガイラインの端部がブームに連結される様子を示す側面図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいて、ブームの起立に伴ってスペーサがバックストップの内筒に嵌合する様子を示す拡大側面図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいて、ブームの起立に伴ってスペーサがバックストップの内筒に嵌合する様子を示す拡大側面図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係るクレーンにおいて、ブームの起立に伴ってスペーサがバックストップの内筒に嵌合する様子を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン1(作業機械)の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るクレーン1の構造および組立方法を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係るクレーンの移動方向やバックストップの使用態様などを限定するものではない。
【0022】
クレーン1は、上部旋回体12と、下部走行体14と、ブーム16と、ジブ18と、下部スプレッダ19Aと、上部スプレッダ19Bと、左右一対のブームガイライン20と、ガントリ21と、ブーム起伏ロープ22と、ブーム起伏ウインチ30と、主巻ウインチ34と、補巻ウインチ35と、カウンタウエイト40と、左右一対のブームバックストップ45とを備えている。更に、クレーン1は、主巻ロープ51と、補巻ロープ52と、主フック53と、補フック54と、左右一対のストラット55と、左右一対のリヤ側ジブガイライン56と、左右一対のフロント側ジブガイライン57と、左右一対のリヤ側ジブバックストップ60と、左右一対のフロント側ジブバックストップ61とを備えている。なお、以下の説明では、上記のように左右一対の部材については、左右の構造が同じであるため、左右一方の構造について説明する。
【0023】
上部旋回体12は、クレーン1のクレーン本体(機体)を構成し、上下方向に延びる旋回中心軸回りに旋回可能なように下部走行体14に支持されている。下部走行体14は地面Gなどの走行面を走行可能である。
【0024】
ブーム16は、上部旋回体12に起伏可能に支持されている。具体的に、ブーム16は、ブーム基端部16Pと、ブーム先端部16Qとを有する。ブーム基端部16Pは、上部旋回体12に水平なブーム回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に支持される。ブーム先端部16Qは、長手方向においてブーム基端部16Pとは反対側に配置される。本実施形態では、ブーム基端部16Pに備えられたブームフット16Sが、上部旋回体12の不図示の軸支部に回動可能に支持される。また、ブーム先端部16Qは、後記のジブ支持部161(ストラット支持部)および当該ジブ支持部161の後方に配置されるバックストップ支持部162を有する。なお、
図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、複数のブーム部材が互いに連結されることで構成される。ブーム16の構造はこれに限定されるものではなく、箱型構造や伸縮自在な構造などでもよい。ブーム16の背面には、左右一対のバックストップ45が支持されている。これらのバックストップ45は、ブーム16の起立姿勢(クレーン1の作業姿勢)において、上部旋回体12にそれぞれ当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
【0025】
ジブ18は、ブーム16のブーム先端部16Qに水平な回動中心軸回りに起伏方向に回動可能に支持される。ジブ18は、後記の下部ジブ18Aを含む。
【0026】
下部スプレッダ19Aは、ガントリ21の先端部に接続されており、不図示の下部シーブブロックを有する。下部シーブブロックには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
【0027】
上部スプレッダ19Bは、下部スプレッダ19Aの前方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ19Bは、ブームガイライン20を介してブーム先端部16Qに接続される。上部スプレッダ19Bは、不図示の上部シーブブロックを有する。上部シーブブロックには、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
【0028】
ブームガイライン20は、
図1の紙面と直交する左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。各ブームガイライン20の後端部は上部スプレッダ19Bに接続され、各ガイライン20の前端部はブーム先端部16Qに着脱可能に接続される。ブームガイライン20は、ガイリンク(金属製の板材)、ガイロープ、ガイワイヤ(金属製の線材)などのいずれの構造でもよい。
【0029】
ガントリ21は、ブーム16の後方において上部旋回体12に支持されている。
図1に示すように、ガントリ21は、上部旋回体12との間で略三角形を形成する2本の構造体(コンプレッションメンバ21A、テンションメンバ21B)から構成される。テンションメンバ21Bは、上部旋回体12の後端部から略鉛直上方に延びている。コンプレッションメンバ21Aは、テンションメンバ21Bの上端部と上部旋回体12の前側部分とを斜め方向に沿って接続する。ガントリ21は、ブーム16が起伏可能なように当該ブーム16を後方から支持する。
【0030】
ブーム起伏ロープ22は、ブーム起伏ウインチ30から引き出され、テンションメンバ21Bの先端部に配置されたシーブに掛けられた後、下部スプレッダ19Aの前記下部シーブブロックと上部スプレッダ19Bの前記上部シーブブロックとの間で複数回掛け回される。なお、前記下部シーブブロックおよび前記上部シーブブロックに掛け回された後のブーム起伏ロープ22の先端部は、ガントリ21の先端部(上端部)に固定される。
【0031】
ブーム起伏ウインチ30は、上部旋回体12に配置される。ブーム起伏ウインチ30は、ブーム起伏ロープ22の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ19Aの下部シーブブロックと上部スプレッダ19Bの上部シーブブロックとの間の距離を変化させ、ブーム16をガントリ21に対して相対的に回動させながらブーム16を起伏させる。
【0032】
主巻ウインチ34は、主巻ロープ51(
図1)による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この主巻について、ブーム16のブーム先端部16Qには不図示の主巻用ガイドシーブが回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブに隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブが幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用シーブブロックから垂下された主巻ロープ51には、吊り荷用の主フック53が連結されている。そして、主巻ウインチ34から引き出された主巻ロープ51が主巻用ガイドシーブに順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロックのシーブと、主フック53に設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。従って、主巻ウインチ34が主巻ロープ51の巻き取りや繰り出しを行うと、主フック53の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0033】
同様にして、補巻ウインチ35は、補巻ロープ52による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻について、ジブ18の先端部には不図示の補巻用ガイドシーブが回転可能に設けられ、さらに補巻用ガイドシーブに隣接する位置に複数の補巻用ポイントシーブが幅方向に配列された補巻用シーブブロックが設けられている。補巻用シーブブロックから垂下された補巻ロープ52には、吊り荷用の補フック54が連結されている。そして、補巻ウインチ35から引き出された補巻ロープ52がストラット55のシーブを介して補巻用ガイドシーブに順に掛けられ、かつ、補巻用シーブブロックのシーブと、補フック54に設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。そして、補巻ウインチ35が補巻ロープ52の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ52の末端に連結された吊荷用の補フック54が巻上げられ、または巻下げられる。
【0034】
また、カウンタウエイト40は上部旋回体12の後部に、クレーン1のバランスを調整するために積載されている。
【0035】
ストラット55は、ジブ18のジブ基端部18Pに起伏方向に回動可能に支持されている(
図2、
図3)。ストラット55は、ジブ18を後方から支える支柱として機能する。ストラット55の先端部(後記のストラット先端部55T)は、リヤ側ジブガイライン56によってブーム16の長手中央部に接続されているとともに、フロント側ジブガイライン57によってジブ18のジブ先端部18Qに接続されている。
【0036】
リヤ側ジブバックストップ60は、ストラット55とブーム16のブーム先端部16Q(後記のブームヘッド16T)を互いに接続する。すなわち、リヤ側ジブバックストップ60は、ブーム16とストラット55との間に介在しストラット55を支持することが可能である。また、フロント側ジブバックストップ61は、ストラット55とジブ18とを互いに接続する。すなわち、フロント側ジブバックストップ61は、ジブ18とストラット55との間に介在しジブ18を支持することが可能である。この結果、リヤ側ジブバックストップ60およびフロント側ジブバックストップ61は、クレーン1の作業中に、ストラット55およびジブ18が風などに煽られ、倒れることを防止する。これらのジブバックストップは、伸縮可能なシリンダ構造を有している。
【0037】
図2および
図3は、それぞれ、本実施形態に係るクレーン1の下部ジブ18Aにストラット55が載置された状態の側面図および拡大斜視図である。
図4および
図5は、本実施形態に係るクレーン1の下部ジブ18Aにストラット55が載置された状態の拡大平面図および拡大断面図である。
図5は、
図2の矢印V-V位置における断面に相当する。
【0038】
ブーム16は、その先端部に配置されたブームヘッド16Tを有する(
図9)。ブームヘッド16Tは、複数のブーム部材のうち最も先端部に配置される部材であり、前述のブーム先端部16Qを構成する。ブームヘッド16Tは、ジブ支持部161およびバックストップ支持部162を有する(
図9参照)。ブーム16が上部旋回体12に対して起立した場合、バックストップ支持部162はジブ支持部161の後方に配置される。なお、ブーム16が上部旋回体12に対して倒伏した場合、バックストップ支持部162はジブ支持部161の後方かつ上方に配置される。
【0039】
下部ジブ18A(
図2)は、ジブ18の基端部を構成する部材であって、ブーム16のブーム先端部16Qに着脱可能に装着される。クレーン1の組立分解時には、
図2に示すように、ジブ18の下部ジブ18Aがブーム16から脱離され、その上にストラット55が積載された状態で、下部ジブ18Aとストラット55とが一体で輸送可能とされている。この際、リヤ側ジブバックストップ60はストラット55上に保持され、フロント側ジブバックストップ61は下部ジブ18A上に保持される。
【0040】
ストラット55は、ストラット基端部55Sと、ストラット先端部55Tと、バックストップ接続部55Qと、バックストップ保持部55Rとを有する。
【0041】
ストラット基端部55Sは、ストラット55の基端部であって、水平な基準回動中心軸(CL)回りに起伏方向に回動可能なようにジブ基端部18Pを介してブーム先端部16Qに支持される。ストラット先端部55Tは、ストラット基端部55Sとは反対側に配置される、ストラット55の先端部である。バックストップ接続部55Qは、ストラット55の長手方向においてストラット基端部55Sとストラット先端部55Tとの間に配置される。具体的に、バックストップ接続部55Qは、ストラット55が下部ジブ18Aの上に積載された状態で、ストラット55の上面部かつストラット55の長手方向の略中央部に配置される。バックストップ接続部55Qは、リヤ側ジブバックストップ60の支点部60Sに接続され支点部60Sを回動可能に支持する。バックストップ保持部55Rは、バックストップ接続部55Qよりもストラット基端部55Sに近い位置に配置される。バックストップ保持部55Rは、リヤ側ジブバックストップ60の先端部60Tを着脱可能に保持する。
【0042】
リヤ側ジブバックストップ60(バックストップ)は、支点部60Sと、先端部60Tとを有する。支点部60Sは、リヤ側ジブバックストップ60の基端部であり、ストラット55に回動可能に支持される。先端部60Tは、リヤ側ジブバックストップ60のうち支点部60Sとは反対側の先端部であり、前述のブーム先端部16Qのバックストップ支持部162に回動可能に接続される。
図2乃至
図4において、リヤ側ジブバックストップ60が長く延びる方向(各図では前後方向)がリヤ側ジブバックストップ60の軸方向と称される。
【0043】
また、リヤ側ジブバックストップ60は、外筒60Aと、内筒60Bと、スペーサ70と、スペーサホルダ80と、ロック機構90とを有する。リヤ側ジブバックストップ60は、外筒60Aに対する内筒60Bの相対移動によって伸縮することができる。
【0044】
外筒60Aは、リヤ側ジブバックストップ60の軸方向に延びる中心線を有する円筒形状を有している。外筒60Aは、基準回動中心軸CLと平行な第1回動中心軸(C1)回りに回動可能なようにストラット55のバックストップ接続部55Qに支持される外筒基端部と、当該支点部60Sとは反対側に配置される外筒先端部とを含む。外筒60Aの外筒基端部は、リヤ側ジブバックストップ60の支点部60Sを構成する。
【0045】
内筒60Bは、リヤ側ジブバックストップ60の軸方向に延びる中心線(外筒60Aと同じ中心線)を有する円筒形状を有している。内筒60Bの外径は、外筒60Aの内径よりも僅かに小さく設定されている。内筒60Bは、基準回動中心軸CLと平行な第2回動中心軸C2回りに回動可能なようにバックストップ保持部55Rに支持される内筒基端部と、当該内筒基端部とは反対側に配置され外筒60Aの外筒先端部を通じて前記外筒60A内に挿通される内筒先端部とを含む。内筒60Bは、ブーム16に対するストラット55の基準回動中心軸CL回りの回動に伴ってバックストップ支持部162とバックストップ接続部55Qとの距離が変化することを許容するように外筒60Aに対して軸方向に相対移動することが可能である。内筒60Bの内筒基端部は、リヤ側ジブバックストップ60の先端部60Tを構成する。
【0046】
なお、
図2では、上述のようにリヤ側ジブバックストップ60の先端部60T(内筒基端部)がバックストップ保持部55Rに保持されているが、先端部60Tがバックストップ保持部55Rから脱離されると、ブーム先端部16Qのバックストップ支持部162に装着されることが可能である。
【0047】
スペーサ70は、リヤ側ジブバックストップ60の軸方向に沿って所定の寸法を有するとともに前記軸方向と直交する方向に沿って内筒60Bの外周面に嵌合することが可能な半筒状の内周面を有する(
図5~
図8参照)。そして、当該スペーサ70の前記軸方向における両端部が外筒60Aの外筒先端部および内筒60Bの内筒基端部にそれぞれ当接することで前記外筒先端部がスペーサ70の前記寸法に対応する距離よりも前記内筒基端部に近づくようにリヤ側ジブバックストップ60が収縮することをスペーサ70が阻止することが可能である。すなわち、スペーサ70は、ブーム16の起立状態においてリヤ側ジブバックストップ60が所定の長さ以下に収縮することを防止し、ストラット55およびジブ18の後方への煽りを防止する。なお、他の実施形態において、スペーサ70の軸方向における一端部は、外筒60Aの外筒先端部の代わりに、スペーサホルダ80の先端部に当接してもよい。この場合、当該スペーサホルダ80の先端部は、外筒60Aの外筒先端部の一部を構成するということができる。
【0048】
スペーサホルダ80は、リヤ側ジブバックストップ60の外筒60Aの先端部に装着される。スペーサホルダ80は、スペーサ70を前記軸方向と直交する揺動中心軸CT回りに揺動可能に支持する。詳しくは、スペーサホルダ80は、ブーム16がストラット55を支持した状態で上部旋回体12に対して起立することに伴って、スペーサ70が当該スペーサ70の自重で揺動中心軸CT回りに揺動し、内筒60Bに嵌合することが可能なようにスペーサ70を支持する。本実施形態では、スペーサホルダ80は、外筒60Aに対して周方向に相対回転可能なように外筒60Aに装着されている(支持されている)。
【0049】
ロック機構90は、リヤ側ジブバックストップ60およびスペーサ70に着脱可能に装着され、ブーム16に対するストラット55の姿勢に関わらずスペーサ70が揺動中心軸CT回りに揺動することを阻止するようにスペーサ70をロックすることが可能な部材である。より詳しくは、ロック機構90は、ロック状態とロック解除状態との間で状態変更可能である。前記ロック状態は、スペーサ70が内筒60Bの外周面から離間した状態で、スペーサ70が揺動中心軸CT回りに揺動することを阻止するように、ロック機構90がスペーサ70をロックする状態である。また、前記ロック解除状態は、スペーサ70が揺動中心軸CT回りに揺動することを、ロック機構90が許容する状態である。なお、ロック機構90は、リヤ側ジブバックストップ60およびスペーサ70のうちの少なくとも一方に対して着脱可能であればよい。
【0050】
図6、
図7および
図8は、本実施形態に係るクレーン1のリヤ側ジブバックストップ60の内筒60Bにスペーサ70が嵌合する様子を示す斜視図である。次に、上記の各部材の詳細な構造を更に説明する。
【0051】
リヤ側ジブバックストップ60の外筒60Aは、外筒本体60Kと、外筒固定部60Hとを含む(
図18参照)。
【0052】
外筒本体60Kは、外筒60Aの本体部分であり、前記外筒基端部および前記外筒先端部を含む円筒部材である。外筒本体60Kは、スペーサホルダ80を支持するともに、内筒60Bを内部に受け入れることが可能である。
【0053】
外筒固定部60Hは、外筒本体60Kの外周面に配設された板状部であって、前記外周面から径方向に突出している。外筒固定部60Hには、リヤ側ジブバックストップ60の軸方向と直交する方向に沿って第1ピン孔60HSが形成されている。なお、外筒固定部60Hは、スペーサ70が後記の垂下姿勢とされた状態において、スペーサ70から見てスペーサホルダ80よりも遠い位置に配置されている(
図18参照)。
【0054】
また、スペーサ70は、スペーサ本体70Aと、スペーサ被支持部70Bとを含む(
図6)。
【0055】
スペーサ本体70Aは、スペーサ70の本体部分であって、内筒60Bの外周面に嵌合することが可能な内周面を含む半円筒状の部材である。
【0056】
スペーサ被支持部70Bは、スペーサ本体70Aから当該スペーサ本体70Aの長手方向(軸方向)に沿って延びるとともにスペーサホルダ80に揺動中心軸CT回りに揺動可能に接続(支持)される。本実施形態では、スペーサ被支持部70Bは互いに間隔をおいて配置される2枚の板材から構成されている。なお、当該スペーサ被支持部70Bの各板材のうち揺動中心軸CTよりもスペーサ本体70Aに近い部分には、前記軸方向と直交する方向に沿って第2ピン孔70T(
図6~
図8)がそれぞれ形成されている。
【0057】
また、スペーサホルダ80は、ホルダ円筒部81と、ホルダ固定部82と、ホルダ支持部83とを有する(
図6)。
【0058】
ホルダ円筒部81は、スペーサホルダ80の本体部分であって、外筒60A(外筒本体60K)に対して周方向に相対回転可能なように外筒60Aの外周面に外嵌される(支持される)。
【0059】
ホルダ支持部83は、ホルダ円筒部81の外周面に配設され、スペーサ70のスペーサ被支持部70Bを揺動中心軸CT回りに揺動可能に支持する。ホルダ支持部83は、前記外周面から径方向に突出している。
【0060】
ホルダ固定部82は、ホルダ円筒部81の外周面のうち周方向においてホルダ支持部83とは異なる位置において、ホルダ円筒部81から外筒60Aの外筒基端部に向かって軸方向に突出するように配置されている。当該ホルダ固定部82には、前記軸方向と直交する方向に沿って第3ピン孔82Sが形成されている。また、ホルダ固定部82は、作業者がスペーサホルダ80を回転させる際に把持することが可能であり、把持部として機能する。
【0061】
また、本実施形態では、ロック機構90は、固定ピンP1およびスプリングピンP2を含む(
図15参照)。これらのピンは、後記のようにスペーサ70またはスペーサホルダ80の位置、姿勢を拘束する(ロックする)機能を有している。固定ピンP1は、上記の第1ピン孔60HS、第2ピン孔70Tおよび第3ピン孔82S(
図16、
図18)に挿通されることが可能である。スプリングピンP2は、固定ピンP1の先端部に装着され、いわゆる抜け止めピンとして機能する。
【0062】
次に、
図6乃至
図8を参照して、スペーサ70の基本機能について説明する。
【0063】
クレーン1の分解、組立作業時、上部旋回体12に対するブーム16およびストラット55の起伏動作(相対的な姿勢変更)において、リヤ側ジブバックストップ60が先端部60T(第2回動中心軸C2)を支点として回動する。この際、
図6に示すように、外筒60Aに対する内筒60Bの突出量がスペーサ70の軸方向における寸法よりも大きな状態で、スペーサ70が、その自重によって鉛直下方に延びる姿勢から揺動中心軸CT回りに揺動し、スペーサ70のスペーサ本体70Aの円筒内周面が内筒60Bの外周面に近づいていく(
図7)。やがて、
図8に示すように、スペーサ70のスペーサ本体70Aが内筒60Bの外周面に嵌合した後、内筒60Bが外筒60Aに対して相対的に収縮すると、スペーサ本体70Aの先端部70A1が内筒60Bの基端部に形成されたフランジ部分に軸方向に沿って当接するとともに、スペーサ本体70Aの基端部70A2が外筒60Aの先端部に軸方向に沿って当接する。この結果、外筒60Aの先端部が更に内筒60Bの基端部側に近づくことが阻止され、リヤ側ジブバックストップ60の長さが固定される。したがって、
図1に示すように、リヤ側ジブバックストップ60が下方からストラット55を支持し、ストラット55およびジブ18の後方への煽りを防止することができる。なお、スペーサ70と内筒60Bとの嵌合について、スペーサ70の内周面と内筒60Bの外周面との間に所定の隙間が存在するものでもよい。
【0064】
次に、クレーン1の組立作業を通じて、上記のようにスペーサ70がリヤ側ジブバックストップ60の内筒60Bに嵌合する様子について更に説明する。
図9、
図10は、本実施形態に係るクレーン1のブームヘッド16Tに下部ジブ18Aおよびストラット55が接続される様子を示す側面図である。
図11は、クレーン1の下部ジブ18Aに対してストラット55が引き起こされる様子を示す側面図である。
図12は、クレーン1においてストラット55が引き起こされた様子を示す側面図である。
図13は、クレーン1においてフロント側ジブバックストップ61が引き起こされる様子を示す拡大側面図である。
図14は、クレーン1においてリヤ側ジブバックストップ60がブームヘッド16Tに接続される様子を示す拡大側面図である。
【0065】
クレーン1の組立作業では、一例として、
図2、
図3に示すように、ストラット55がジブ18の下部ジブ18A上に載置された状態で、トレーラなどの輸送車両によって作業現場に一体で搬入される。この際、
図3、
図5に示すように、リヤ側ジブバックストップ60の外筒60Aに対するスペーサホルダ80の回転機能によって、スペーサ70はストラット55と外筒60Aとの間の空間に対して左右外側に離間して配置されている。したがって、スペーサ70が邪魔にならず、リヤ側ジブバックストップ60をストラット55上に安定して積載することができる。
【0066】
図9に示すように、上記のトレーラから下部ジブ18Aおよびストラット55が補助吊り装置100(補助クレーン、相伴機)によって吊り上げられ、予め地面Gに設置されたブーム16のブームヘッド16Tに向かって移動される。なお、ブーム16のブームヘッド16Tは、サポートH(支持台)を介して地面G上に設置されている。
【0067】
やがて、
図10に示すように、下部ジブ18Aのジブフット18Sがブームヘッド16Tのジブ支持部161に位置合わせされると、両者に形成されたピン孔に不図示の連結ピンが挿入され、下部ジブ18Aがブーム16のブームヘッド16Tに回動可能に支持される。
【0068】
次に、作業者は、
図11に示すように、下部ジブ18Aの先端部に他のジブ部材(中間ジブ、上部ジブ)を連結しジブ18を組み立てる。また、作業者は、ストラット55の先端部にリヤ側ジブガイライン56およびフロント側ジブガイライン57の一端部をそれぞれ接続する。なお、フロント側ジブガイライン57の他端部は、ジブ18のジブ先端部18Qに固定される(
図1)。また、補助吊り装置100のロープを左右のストラット55のストラット被吊部55P(
図2~
図4)にそれぞれ接続する。そして、
図12に示すように、補助吊り装置100によってストラット55をブームヘッド16T側に引き起こすとともに、
図13の矢印で示すように、フロント側ジブバックストップ61を支点部61Sを支点として引き起こし、フロント側ジブバックストップ61の先端部61Tをストラット55に設けられた接続箇所に接続する。
【0069】
次に、作業者は、
図14に示すように、リヤ側ジブバックストップ60の先端部60Tをストラット55のバックストップ保持部55R(
図2)から取り外し、支点部60Sを支点としてリヤ側ジブバックストップ60を後方に回動させ、先端部60Tをブームヘッド16Tのバックストップ支持部162に不図示のピンで接続する。この結果、リヤ側ジブバックストップ60の先端部60Tが第2回動中心軸C2(
図20参照)を中心として回動可能なようにバックストップ支持部162に支持される。ストラット55は、リヤ側ジブバックストップ60およびフロント側ジブバックストップ61を介してブーム16(ブームヘッド16T)およびジブ18(下部ジブ18A)に支持される。
【0070】
図15~
図18は、本実施形態に係るクレーン1のスペーサ70が格納姿勢から垂下姿勢に姿勢変更される様子を示す斜視図である。
【0071】
図14に示される状態(輸送時も同様)では、
図15に示すように、スペーサ70(スペーサ本体70A)の外周面が外筒60Aに対向するように、スペーサ70が揺動中心軸CT回りに裏返しに回動された姿勢とされている(対向姿勢)。また、スペーサ70の第2ピン孔70Tと外筒60Aの外筒固定部60Hに形成された第1ピン孔60HS(
図18)とに固定ピンP1が挿通されており、更に固定ピンP1の先端部にスプリングピンP2が装着されていることで、スペーサ70の揺動中心軸CT回りの揺動ならびにスペーサホルダ80の外筒60Aに対する周方向の相対移動(回転)がそれぞれ阻止されている(スペーサ70の格納姿勢、ロック機構90のロック状態)。特に、本実施形態では、
図15に示すように、スペーサ70の2枚のスペーサ被支持部70Bの間に、外筒60Aの外筒固定部60Hが挟まれるように挿入され、各第2ピン孔70T(
図7、
図8)と第1ピン孔60HS(
図8)とに固定ピンP1が挿通される。このため、スペーサ70をより安定して固定することができる。なお、スペーサ70の固定方法は本実施形態に限定されるものではなく、たとえばスペーサ被支持部70Bは1枚の部材であってもよい。
【0072】
そこで、
図14、
図15の状態において、作業者はスプリングピンP2および固定ピンP1を順に取り外し、
図16の矢印で示すようにスペーサ70を揺動中心軸CT回りに下方に揺動させる。すなわち、スペーサ70がスペーサホルダ80に対してぶら下がった状態となる。なお、この状態では、スペーサ70はスペーサホルダ80から左右方向外側に向かって延びているため、作業者は
図17に示すように、スペーサ70を保持したスペーサホルダ80を外筒60Aに対して左右内側に相対的に回転させる。この結果、スペーサ70は、
図18に示すように、リヤ側ジブバックストップ60の中心を通る鉛直面と交わるように(前記鉛直面にスペーサ70の中心線が含まれるように)配置される。この際、スペーサ70は、外筒60Aの鉛直下方に配置される(スペーサ70の垂下姿勢、ロック機構90のロック解除状態)。
【0073】
次に、作業者は、先ほど取り外した固定ピンP1を外筒固定部60Hの第1ピン孔60HSとホルダ固定部82の第3ピン孔82Sとに順に挿通する。そして、固定ピンP1の先端部にスプリングピンP2を装着し、固定ピンP1の抜けを防止する。この結果、スペーサホルダ80の外筒60Aに対する回転が阻止されることで、スペーサ70が左右に移動することが防止されながら揺動中心軸CT回りに揺動することができる。このように、本実施形態では、クレーン1の作業時と分解・輸送時との間で固定ピンP1およびスプリングピンP2を共通して使用することができる。
【0074】
図19は、本実施形態に係るクレーン1においてリヤ側ジブガイライン56がブーム16に連結される様子を示す側面図である。上記のようにスペーサ70の準備が完了すると、作業者は、リヤ側ジブガイライン56の他端部を補助吊り装置100によって吊り上げながらブーム16の背面に設けられたガイライン連結部16Hに連結する。
【0075】
図20乃至
図22は、本発明の一実施形態に係るクレーン1において、ブーム16の起立に伴ってスペーサ70がリヤ側ジブバックストップ60の内筒60Bに嵌合する様子を示す拡大側面図である。
【0076】
図19の状態から、作業者は、
図1のブーム起伏ウインチ30によってブーム起伏ロープ22を巻き取ることで、ブーム16を起立させる。この結果、
図20、
図21および
図22に示すように、ブーム16のブームヘッド16T、下部ジブ18Aおよびストラット55が姿勢変更する。この際、リヤ側ジブバックストップ60の支点部60Sおよび先端部60Tがそれぞれ第1回動中心軸C1および第2回動中心軸C2回りに回動しながら、リヤ側ジブバックストップ60の内筒60Bが外筒60Aに対して相対移動し、リヤ側ジブバックストップ60が伸縮する。
【0077】
図20、
図21においてリヤ側ジブバックストップ60の外筒60Aに対してスペーサホルダ80を介して垂れ下がったスペーサ70は、
図22に示すようにリヤ側ジブバックストップ60の姿勢が斜め後方に向かって延びるように変化することに対応して、スペーサ70の自重によって内筒60Bに上方から嵌合する(
図6~
図8参照)。この結果、スペーサ70がリヤ側ジブバックストップ60の更なる収縮を阻止し、ブーム16に対してストラット55が予め設定された姿勢に保持される。したがって、リヤ側ジブバックストップ60がフロント側ジブバックストップ61と協同して、ストラット55およびジブ18の後方への倒れ、煽りを防止することができる。
【0078】
なお、クレーン1を分解する際には、上記とは逆の工程が順に実行される。この際、
図22の姿勢からブーム16が倒伏する際に、リヤ側ジブバックストップ60が斜め後方に延びる姿勢から鉛直上方に延びる姿勢を経て斜め前方に延びる姿勢(
図21)とされる過程で、スペーサ70はその自重によって揺動中心軸CT回りに揺動しながらリヤ側ジブバックストップ60の内筒60Bから脱離し、内筒60Bから離れた位置でスペーサホルダ80から垂れ下がった姿勢(垂下姿勢)に戻ることができる。
【0079】
以上のように、本実施形態では、ロック機構をロック状態とすると、スペーサ70が内筒60Bの外周面から離間した状態でスペーサ70が揺動中心軸CT回りに揺動することを阻止するように、ロック機構90(固定ピンP1、スプリングピンP2)がスペーサ70をロックすることができる。このため、クレーン1の組立分解時やリヤ側ジブバックストップ60を含む部材の輸送時に、スペーサ70が自由に動くことを阻止し、スペーサ70と周辺の部材との干渉を防止することができる。この結果、スペーサ70や周辺の部材の破損を防止することができる。したがって、作業者はリヤ側ジブバックストップ60を含むクレーン1の分解、輸送作業において、スペーサ70の干渉、破損に注意する必要なく作業を行うことができるため、作業性をアップすることができる。一方、クレーン1の組立時には、ロック機構90をロック解除状態とすることで、スペーサ70の揺動が可能となり、当該スペーサ70によってリヤ側ジブバックストップ60の長さを拘束することができる。
【0080】
特に、本実施形態では、スペーサ70が完全な円筒形状ではなく、半円筒(半筒)形状からなり、リヤ側ジブバックストップ60の軸方向と直交する方向に沿って内筒60Bの外周面に嵌合することができる。このため、完全な円筒形状を有する他のスペーサを軸方向に沿って内筒60Bに外嵌する場合のように、スペーサ70の装着時にリヤ側ジブバックストップ60をストラット55から取り外す必要がなく、スペーサ70を容易に着脱することができる。
【0081】
また、本実施形態では、スペーサホルダ80は、ブーム倒伏状態においてスペーサ70が垂下姿勢をとり、ブーム16が前記ブーム倒伏状態から上部旋回体12に対して起立することに伴ってスペーサ70が前記垂下姿勢からリヤ側ジブバックストップ60の中心線を通る鉛直面に沿って内筒60Bの外周面に近づくように、スペーサ70を揺動中心軸CT回りに揺動可能に支持している。前記ブーム倒伏状態は、ブーム16がストラット55を支持し上部旋回体12に対して倒伏した状態である。また、前記垂下姿勢は、スペーサ70が前記鉛直面と交差し外筒60Aに対して当該スペーサ70の自重によって揺動中心軸CTから垂れ下がった、スペーサ70の外筒60Aに対する姿勢である。また、ロック機構90は、対向姿勢とされたスペーサ70と外筒60Aとを互いに接続することでスペーサ70をロックする。前記対向姿勢は、スペーサ70が前記垂下姿勢よりも内筒60Bの外周面から離れるように揺動しスペーサ70の外周面が外筒60Aに対向した、スペーサ70の外筒60Aに対する姿勢である。
【0082】
このような構成によれば、スペーサ70を内筒60Bから離間させた姿勢でロックすることができるため、輸送時の振動などによってスペーサ70が外筒60Aおよび内筒60Bに近づくことを防止することができる。また、スペーサ70がリヤ側ジブバックストップ60の中心線と略直交する方向に延びる姿勢でロックされる場合と比較して、リヤ側ジブバックストップ60がコンパクトになり、輸送中にリヤ側ジブバックストップ60が占有するスペースを小さくすることができる。
【0083】
更に、本実施形態では、スペーサホルダ80は、外筒60Aに対して周方向に相対回転可能なように外筒60Aに装着されており、ロック機構90は、スペーサ70が前記対向姿勢とされた状態でスペーサホルダ80が外筒60Aに対して周方向に相対回転しスペーサ70が前記鉛直面から脱離した状態で、スペーサ70と外筒60Aとを互いに接続することでスペーサ70をロックする。
【0084】
このような構成によれば、スペーサ70が外筒60Aに対向するように折りたたまれた状態で、リヤ側ジブバックストップ60を通る鉛直面から脱離されるため、スペーサ70が輸送中にリヤ側ジブバックストップ60の直上または直下に位置する他の部材と干渉することが防止される。
【0085】
また、本実施形態では、ロック機構90は、スペーサ70が前記対向姿勢とされた状態で前記第1ピン孔および前記第2ピン孔に順に挿入されることでスペーサ70のスペーサ被支持部70Bと外筒60Aの外筒固定部60Hとを互いに接続しスペーサ70をロックする固定ピンP1(ロックピン)を含む。
【0086】
このような構成によれば、スペーサ被支持部70Bおよび外筒固定部60Hにそれぞれ形成されたピン孔に固定ピンP1を挿入することで、スペーサ70を対向姿勢で容易にロックすることができる。
【0087】
また、本実施形態では、スペーサ70が前記垂下姿勢とされた状態で、固定ピンP1が第1ピン孔60HSおよび第3ピン孔82Sにそれぞれ挿入され当該固定ピンP1がスペーサホルダ80のホルダ固定部82と外筒60Aの外筒固定部60Hとを互いに接続することによって、固定ピンP1がスペーサ70を外筒60Aの周方向において拘束するように外筒固定部60Hの位置が設定されている。
【0088】
このような構成によれば、ホルダ固定部82と外筒固定部60Hとを固定ピンP1によって接続することで、スペーサ70が周方向に移動することを容易に阻止することができる。このため、クレーン1の組立作業時にスペーサ70がリヤ側ジブバックストップ60の中心線を通る鉛直面から脱離することを抑止し、スペーサ70の内筒60Bに対する嵌合不良の発生を防止することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、スペーサホルダ80において、ホルダ固定部82とホルダ支持部83とが周方向において異なる位置に配置されているため、スペーサホルダ80が外筒60Aに対して相対回転することに伴って、スペーサ被支持部70Bと外筒固定部60Hとが対向する状態と、ホルダ固定部82と外筒固定部60Hとが対向する状態とが切り換わる、換言すれば、第1ピン孔60HSおよび第2ピン孔70Tに固定ピンP1を挿通可能な状態と、第1ピン孔60HSと第3ピン孔82Sとに固定ピンP1を挿通可能な状態とが切り換わる。更に換言すれば、スペーサ70が内筒60Bに嵌合可能なスペーサ70の垂下姿勢(嵌合可能姿勢)と、スペーサ70が内筒60Bから待避し外筒60Aに対向する対向姿勢をとりつつストラット55と外筒60Aとの間の空間から脱離した姿勢(格納姿勢)とを切換えることができる。
【0090】
そして、本実施形態では、スペーサ70をストラット55とリヤ側ジブバックストップ60との間の空間から脱離させ外筒60Aがストラット55に重なるように配置されることを可能とするように、スペーサホルダ80の外筒60Aに対する周方向における回転角度が設定されている。
【0091】
このような構成によれば、クレーン1の作業時にはスペーサ70がリヤ側ジブバックストップ60の内筒60Bの直下に位置することでリヤ側ジブバックストップ60の長さを規制することができる一方、スペーサ70を支持するスペーサホルダ80を回転させることで、分解、輸送時には、リヤ側ジブバックストップ60をストラット55に積載し、両者を一体で移動させることが可能となる。特に、リヤ側ジブバックストップ60が支点部60Sを支点として折りたたまれた際に、スペーサ70が邪魔になることなくリヤ側ジブバックストップ60の先端部60Tをストラット55のバックストップ保持部55Rに装着することが可能となるため、輸送中にリヤ側ジブバックストップ60がストラット55から脱落することを安定して防止することができる。
【0092】
以上、本発明の一実施形態に係るリヤ側ジブバックストップ60(バックストップ)を含むクレーン1について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
【0093】
(1)上記の実施形態では、スペーサ70が装着されるバックストップとして、ストラット55を支持するリヤ側ジブバックストップ60を用いて説明したが、本発明は、他のストラットに備えられるバックストップにも適用可能である。この場合、ストラット55は1本の態様に限定されず、クレーン1は、フロントストラット、リアストラットのように2本のストラットを有するものでもよい。また、ストラット55はジブ18のジブ基端部18Pに回動可能に軸支されるものに限定されない。ストラット55は、ブーム16のブーム先端部16Q(ブームヘッド16T)に直接回動可能に軸支されるものでもよい。なお、上記の実施形態においても、ストラット55は、ジブ基端部18P、ジブ支持部161を介してブーム16のブーム先端部16Qに間接的に回動可能に軸支されている。
【0094】
(2)また、上記の実施形態では、スペーサホルダ80が外筒60Aに対して相対回転可能な態様にて説明したが、スペーサホルダ80は外筒60Aに固定されたものでもよい。この場合、スペーサホルダ80は外筒60Aの一部でもよい。
【0095】
(3)また、上記の実施形態では、
図1に示すクレーン1を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構造を備えたクレーンにも適用可能である。すなわち、本発明が適用されるクレーンは、ガントリ21の代わりにラチスマストや箱マストなどを備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 クレーン
100 補助吊り装置
12 上部旋回体
14 下部走行体
16 ブーム
161 ジブ支持部
162 バックストップ支持部
16H ガイライン連結部
16P ブーム基端部
16Q ブーム先端部
16S ブームフット
16T ブームヘッド
18 ジブ
18A 下部ジブ
55 ストラット
55Q バックストップ接続部
55P ストラット被吊部
55R バックストップ保持部
55S ストラット基端部
55T ストラット先端部
56 リヤ側ジブガイライン
57 フロント側ジブガイライン
60 リヤ側ジブバックストップ
60A 外筒
60B 内筒
60H 外筒固定部
60K 外筒本体
60S 支点部
60T 先端部
61 フロント側ジブバックストップ
70 スペーサ
70A スペーサ本体
70B スペーサ被支持部
70S スペーサ支点部
70T スペーサ孔部
80 スペーサホルダ
81 ホルダ円筒部
82 ホルダ固定部
82S 孔部
83 ホルダ支持部
90 ロック機構
C1 第1回動中心軸
C2 第2回動中心軸
CL 基準中心軸
CT 揺動中心軸
G 地面
H サポート
P1 固定ピン
P2 スプリングピン