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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190566
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098942
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 岳史
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB26
3H062CC01
3H062EE06
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】キャンの内側空間への異物の侵入を抑制できるとともに、弁室の冷媒圧力とキャンの内側空間の冷媒圧力との差圧に起因する動作不良や異音の発生を抑制できる電動弁を提供する。
【解決手段】電動弁1は、弁室13とキャン30の内側空間30eとを接続する冷媒通路Kを有している。冷媒通路Kは、ホルダー20の内側空間20eと、ホルダー20と弁体支持部材25との間に形成された第1環状溝28と、弁体支持部材25に形成され、弁室13と第1環状溝28とを接続する第1縦孔29と、ホルダー20と弁体支持部材25との間に形成され、第1環状溝28の内周縁とホルダー20の内側空間20eとを接続する隙間24と、を有している。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁口を有する弁本体と、前記弁口と向かい合って配置された弁体と、前記弁本体に取り付けられた円筒形状のホルダーと、前記ホルダーに接する面と前記弁室に臨む面とを有する弁体支持部材と、前記ホルダーに接合された円筒形状のキャンと、前記キャンの内側に配置され、前記弁体を駆動する駆動機構と、を有する電動弁であって、
前記電動弁が、前記弁室と前記キャンの内側空間とを接続する冷媒通路を有し、
前記冷媒通路が、
前記ホルダーの内側空間と、
前記ホルダーと前記弁体支持部材との間に形成された第1環状通路と、
前記弁体支持部材に形成され、前記弁室と前記第1環状通路とを接続する第1縦通路と、
前記ホルダーと前記弁体支持部材との間に形成され、前記第1環状通路の内周縁と前記ホルダーの内側空間とを接続する隙間と、を有していることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記駆動機構が、
前記ホルダーの内側に配置され、雌ねじが内周面に形成された円筒形状の案内部材と、
前記雌ねじと螺合される雄ねじが外周面に形成された駆動軸と、を有し、
前記冷媒通路が、
前記ホルダーと前記案内部材との間に形成された第2環状通路と、
前記案内部材に形成され、前記ホルダーの内側空間と前記第2環状通路とを接続する第2縦通路と、
前記ホルダーに形成され、前記第2環状通路と前記キャンの内側空間とを接続する横通路と、をさらに有している、請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記隙間が、前記駆動機構の遊びの大きさより小さい、請求項1または請求項2に記載の電動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁を開示している。特許文献1の電動弁は、弁本体と、弁体と、キャンと、ローターと、減速機構と、ねじ機構と、を有している。弁本体は、弁室と弁座とを有している。弁体は、弁室内で弁座と向かい合っている。キャンの内側には、ローターが配置されている。ローターの回転は、減速機構によって減速され、ねじ機構によって直線運動に変換されて、弁体に伝わる。電動弁は、弁室とキャンの内側空間とを接続する冷媒通路を有している。冷媒通路には、異物侵入防止部材が配置されている。異物侵入防止部材は、多孔質体や金網などのフィルターである。異物侵入防止部材は、冷媒に含まれる異物を捕らえ、弁室からキャンの内側空間に異物が侵入することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-275120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した電動弁において、異物侵入防止部材は冷媒通路での冷媒の速やかな流れを妨げ、弁室の冷媒圧力の変化がキャンの内側空間の冷媒に伝わるまでに比較的長い時間を要する。そのため、弁室の冷媒圧力が急激に変化したとき、弁室の冷媒圧力とキャンの内側空間の冷媒圧力との差圧が大きくなる。これにより、弁体を動作させる際に、減速機構やねじ機構において動作不良や異音が生じることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、キャンの内側空間への異物の侵入を抑制できるとともに、弁室の冷媒圧力とキャンの内側空間の冷媒圧力との差圧に起因する動作不良や異音の発生を抑制できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁室および弁口を有する弁本体と、前記弁口と向かい合って配置された弁体と、前記弁本体に取り付けられた円筒形状のホルダーと、前記ホルダーに接する面と前記弁室に臨む面とを有する弁体支持部材と、前記ホルダーに接合された円筒形状のキャンと、前記キャンの内側に配置され、前記弁体を駆動する駆動機構と、を有する電動弁であって、前記電動弁が、前記弁室と前記キャンの内側空間とを接続する冷媒通路を有し、前記冷媒通路が、前記ホルダーの内側空間と、前記ホルダーと前記弁体支持部材との間に形成された第1環状通路と、前記弁体支持部材に形成され、前記弁室と前記第1環状通路とを接続する第1縦通路と、前記ホルダーと前記弁体支持部材との間に形成され、前記第1環状通路の内周縁と前記ホルダーの内側空間とを接続する隙間と、を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、電動弁が、弁室とキャンの内側空間とを接続する冷媒通路を有している。そして、冷媒通路が、ホルダーの内側空間と、ホルダーと弁体支持部材との間に形成された第1環状通路と、弁体支持部材に形成され、弁室と第1環状通路とを接続する第1縦通路と、ホルダーと弁体支持部材との間に形成され、第1環状通路の内周縁とホルダーの内側空間とを接続する隙間と、を有している。このようにしたことから、冷媒は、弁室から第1縦通路を介して第1環状通路に流れ込み、第1環状通路で周方向に流れる。第1環状通路において、冷媒に含まれる異物は、遠心力によって外周縁側に移動する。冷媒は、第1環状通路の内縁部からホルダーと弁体支持部材との隙間を介してホルダーの内側空間に流れる。このとき、冷媒に含まれる異物が第1環状通路の外周縁側に滞留し、第1環状通路の内周縁側にある、異物の少ない冷媒が前記隙間を介してホルダーの内側空間に流れる。そのため、電動弁では、冷媒通路にフィルターなどを設けることなく、キャンの内側空間への異物の侵入を抑制でき、弁室の冷媒圧力の変化を速やかにキャンの内側空間の冷媒に伝えることができる。したがって、電動弁は、弁室の冷媒圧力とキャンの内側空間の冷媒圧力との差圧に起因する動作不良や異音の発生を抑制できる。
【0008】
本発明において、前記駆動機構が、前記ホルダーの内側に配置され、雌ねじが内周面に形成された円筒形状の案内部材と、前記雌ねじと螺合される雄ねじが外周面に形成された駆動軸と、を有し、前記冷媒通路が、前記ホルダーと前記案内部材との間に形成された第2環状通路と、前記案内部材に形成され、前記ホルダーの内側空間と前記第2環状通路とを接続する第2縦通路と、前記ホルダーに形成され、前記第2環状通路と前記キャンの内側空間とを接続する横通路と、をさらに有している、ことが好ましい。このようにすることで、冷媒通路は、環状通路と縦通路を組み合わせた通路部分を2つ([1]第1環状通路と第1縦通路、[2]第2環状通路と第2縦通路)含む複雑な通路形状を備えている。そして、冷媒に含まれる異物は冷媒より比重が大きく、冷媒に比べて流動方向を変えにくい。そのため、冷媒通路において、冷媒の流れの向きが変わる箇所で異物を滞留させることができ、キャンの内側空間への異物の侵入をより抑制できる。
【0009】
本発明において、前記隙間が、前記駆動機構の遊びの大きさより小さいことが好ましい。このようにすることで、前記隙間において、駆動機構の動作に影響を及ぼすおそれのある異物の通過を規制し、異物による電動弁の動作不良を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャンの内側空間への異物の侵入を抑制できるとともに、弁室の冷媒圧力とキャンの内側空間の冷媒圧力との差圧に起因する動作不良や異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る電動弁の縦断面図である。
図2図1の電動弁の一部を拡大した断面図である。
図3図1の電動弁が有する弁体支持部材の平面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁について、図1図4を参照して説明する。本実施例の電動弁1は、例えば、冷凍サイクル等において冷媒流量を調整するために使用される。
【0013】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁の縦断面図である。図2は、図1の電動弁の一部を拡大した断面図である。図3は、図1の電動弁が有する弁体支持部材の平面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施例に係る電動弁1は、弁本体10と、ホルダー20と、弁体支持部材25と、キャン30と、駆動機構40と、弁体70と、ステーターユニット80と、を有している。
【0015】
弁本体10は、直方体形状を有している。弁本体10は、弁室13と、弁室13に接続された弁口14と、を有している。弁本体10は、第1通路17と、第2通路18と、を有している。第1通路17の一端部は弁室13と接続され、第1通路17の他端部は弁本体10の左側面10aに開口している。第2通路18の一端部は弁口14を介して弁室13と接続され、第2通路18の他端部は弁本体10の右側面10bに開口している。弁本体10は、取付孔19を有している。取付孔19は、弁本体10の上面10cに開口している。取付孔19の内周面には、雌ねじが形成されている。取付孔19の底面19aには、弁室13が開口している。
【0016】
ホルダー20は、円筒形状を有している。ホルダー20の下部21の外周面には、雄ねじが形成されている。ホルダー20の雄ねじは、弁本体10の取付孔19の雌ねじに螺合される。ホルダー20は、弁本体10にねじ構造で取り付けられている。ホルダー20の上部22には、径方向に貫通する横孔23が形成されている。
【0017】
弁体支持部材25は、大径部26と、小径部27と、を一体的に有している。
【0018】
大径部26は円筒形状を有している。大径部26の上端面26aは、ホルダー20の下端面20bと接している。大径部26の上端面26aには、第1環状溝28が形成されている。第1環状溝28は、大径部26と同軸に配置されている。第1環状溝28は、ホルダー20と大径部26との間に形成された第1環状通路である。大径部26の下端面26bは、弁室13に臨んでいる。大径部26は、下端面26bから上方に延びる第1縦孔29を有している。第1縦孔29は、大径部26の軸方向と平行に配置されている。第1縦孔29の上端部は第1環状溝28と接続されている。第1縦孔29の下端部は、弁室13と接続されている。第1縦孔29は、大径部26に形成され、弁室13と第1環状溝28とを接続する第1縦通路である。大径部26の外周面には、下方を向く環状平面26fが形成されている。大径部26は、取付孔19側から弁室13に圧入されている。環状平面26fは、取付孔19の底面19aに当接されている。大径部26は、取付孔19の内側において、弁本体10とホルダー20との間に配置されている。
【0019】
小径部27は、円筒形状を有している。小径部27は、大径部26の上端面26aに同軸に接続されている。小径部27の外周面27cの径は、第1環状溝28の内側側面28dの径と同じである。小径部27の内周面の径は、大径部26の内周面の径と同じである。大径部26の内周面と小径部27の内周面とは、弁体支持孔25eを形成している。弁体支持孔25eの内側には、弁体70が配置される。弁体支持部材25は、弁体70を上下方向に移動可能に支持する。小径部27は、ホルダー20の内側に配置されている。小径部27の外周面27cの径は、ホルダー20の内周面20dの径よりわずかに小さい。小径部27の外周面27cとホルダー20の内周面20dとは、円環形状の隙間24を形成している。隙間24は、第1環状溝28の内周縁とホルダー20の内側空間20eとを接続している。なお、隙間24が第1環状溝28の内周縁とホルダー20の内側空間20eとを接続するものであれば、小径部27の外周面27cの径は第1環状溝28の内側側面28dの径と同じでなくてもよい。
【0020】
キャン30は、上端部が塞がれかつ下端部が開口した円筒形状を有している。キャン30の下端部は、円環板形状の接合部材35の外周縁に接合されている。接合部材35の内側にはホルダー20の上部が配置されている。接合部材35の内周縁は、ホルダー20に接合されている。キャン30は、接合部材35を介してホルダー20に間接的に接合されている。キャン30は、直接的にホルダー20に接合されていてもよい。
【0021】
駆動機構40は、弁体70を上下方向に移動させる。駆動機構40は、マグネットローター41と、遊星歯車機構50と、案内部材60と、駆動軸65と、ボール68と、を有している。
【0022】
マグネットローター41は、円筒形状を有している。マグネットローター41の外周面には、N極とS極とが周方向に交互に配置されている。マグネットローター41の外径は、キャン30の内径より小さい。マグネットローター41は、キャン30の内側に回転可能に配置されている。マグネットローター41の上端部には、円板形状の連結部材42が接合されている。連結部材42は、マグネットローター41の上端部を塞いでいる。連結部材42の中央をローター軸43が貫通している。マグネットローター41は、連結部材42を介してローター軸43に連結されている。
【0023】
遊星歯車機構50は、マグネットローター41の内側に配置されている。遊星歯車機構50は、歯車ケース51と、固定リング歯車52と、太陽歯車53と、複数の遊星歯車54と、キャリア55と、出力歯車56と、出力軸57と、を有している。歯車ケース51は、円筒形状を有している。歯車ケース51は、ホルダー20の上端部に同軸に接合されている。固定リング歯車52は、内歯車である。固定リング歯車52は、歯車ケース51の上端部に固定されている。太陽歯車53は、連結部材42と同軸に配置されている。太陽歯車53は、連結部材42と一体化されている。太陽歯車53をローター軸43が貫通している。太陽歯車53は、マグネットローター41および連結部材42とともに回転される。複数の遊星歯車54は、固定リング歯車52と太陽歯車53との間に配置されている。キャリア55は、円板形状を有している。キャリア55の中央をローター軸43が貫通している。キャリア55は、ローター軸43を中心として回転可能である。キャリア55は、複数の支持軸55aを有している。複数の支持軸55aは、複数の遊星歯車54を回転自在に支持する。出力歯車56は、有底円筒形状を有している。出力歯車56は内歯車である。出力歯車56と太陽歯車53との間に複数の遊星歯車54が配置されている。出力軸57は、円柱形状を有している。出力軸57の上部は、出力歯車56の底部に形成された孔に固定されている。出力軸57の下部には、上下方向に延びるスリット57aが形成されている。太陽歯車53の回転は、固定リング歯車52、複数の遊星歯車54、キャリア55および出力歯車56によって減速されて、出力軸57に伝達される。
【0024】
案内部材60は、円筒形状を有している。案内部材60は、ホルダー20の上部22の内側に嵌合されている。案内部材60の内周面の下部には、雌ねじ60fが形成されている。案内部材60の内側には、出力軸57が配置されている。案内部材60は、出力軸57を回転可能に支持している。案内部材60の外周面には、第2環状溝61が形成されている。第2環状溝61は、案内部材60と同軸に配置されている。第2環状溝61は、ホルダー20の横孔23と接続されている。第2環状溝61は、ホルダー20と案内部材60との間に形成された第2環状通路である。横孔23は、ホルダー20に形成され、第2環状溝61とキャン30の内側空間30eとを接続する横通路である。案内部材60の下端面60bは、ホルダー20の内側空間20eに臨んでいる。案内部材60は、下端面60bから上方に延びる第2縦孔62を有している。第2縦孔62は、案内部材60の軸方向と平行に配置されている。第2縦孔62の上端部は、第2環状溝61と接続されている。第2縦孔62の下端部は、ホルダー20の内側空間20eと接続されている。第2縦孔62は、横孔23に対してホルダー20の軸周りに180度ずれた位置に配置されている。第2縦孔62は、案内部材60に形成され、ホルダー20の内側空間20eと第2環状溝61とを接続する第2縦通路である。
【0025】
駆動軸65は、円柱部66と、平板部67と、を有している。平板部67は、円柱部66の上端部に接続されている。円柱部66と平板部67とは、一体的に形成されている。円柱部66の外周面には、雄ねじ66fが形成されている。円柱部66の雄ねじ66fは、案内部材60の雌ねじ60fと螺合される。平板部67は、出力軸57のスリット57aに上下方向に移動可能に配置されている。駆動軸65は、出力軸57によって回転され、ねじ送り作用によって上下方向に移動する。ボール68は、駆動軸65と弁体70のボール受け部74との間に配置されている。
【0026】
隙間24の大きさは、遊星歯車機構50の遊びの大きさ、および、案内部材60の雌ねじ60fと駆動軸65の雄ねじ66fとの遊びの大きさより小さい。
【0027】
弁体70は、ステム71と、弁部72と、ばね受け部73と、ボール受け部74と、を有している。ステム71は、円柱形状を有している。ステム71は、弁体支持部材25の弁体支持孔25eに配置されている。ステム71は、弁体支持部材25によって上下方向に移動可能に支持されている。弁部72は、ステム71の下端部に接続されている。弁部72は、円環形状を有している。弁部72は、ステム71の外周面から径方向外方に突出している。弁部72は、弁口14と上下方向に向かい合って配置されている。ばね受け部73は、円柱形状を有している。ばね受け部73は、ステム71の上端部に接合されている。ばね受け部73は、径方向外方に突出するフランジ部73aを有している。ボール受け部74は、円形の平板部と、平板部の下面に接続された凸部と、を有している。ボール受け部74は、平板部がボール68に接し、凸部がばね受け部73に形成された孔に嵌合されている。ばね受け部73のフランジ部73aと弁体支持部材25の小径部27との間には、開弁ばね75が配置されている。開弁ばね75は、圧縮コイルばねである。開弁ばね75は、弁体70(フランジ部73a)を上方に押している。弁体70は、弁部72が弁口14に対して進退することにより、弁口14の開口面積を無段階に変更する。弁体70は、弁口14を閉じてもよい(すなわち、開口面積を0としてもよい)。
【0028】
ステーターユニット80は、ステーター90と、カバー95と、を有している。ステーター90は、円筒形状を有している。ステーター90の内側にキャン30が配置される。カバー95は、ステーター90を収容している。ステーターユニット80は、マグネットローター41とともにステッピングモーターを構成する。
【0029】
電動弁1は、弁室13とキャン30の内側空間30eとを接続する冷媒通路Kを有している。冷媒通路Kは、弁室13側から順番に接続された、第1縦孔29と、第1環状溝28と、隙間24と、ホルダー20の内側空間20eと、第2縦孔62と、第2環状溝61と、横孔23と、を有している。
【0030】
電動弁1において、弁口14、ホルダー20、弁体支持部材25、キャン30、マグネットローター41、連結部材42、ローター軸43、出力軸57、案内部材60、駆動軸65、弁体70、ステーター90は、それぞれの中心軸が一致している。
【0031】
次に、電動弁1の動作について説明する。
【0032】
電動弁1において、ステーター90のコイルに電流を流して、マグネットローター41を一方向に回転させる。マグネットローター41の回転は、遊星歯車機構50を介して駆動軸65に伝達される。駆動軸65と案内部材60とのねじ送り作用により、駆動軸65が下方に移動する。駆動軸65によって弁体70が下方に押され、弁口14の開口面積が小さくなる。
【0033】
電動弁1において、ステーター90のコイルに電流を流して、マグネットローター41を他方向に回転させる。マグネットローター41の回転は、遊星歯車機構50を介して駆動軸65に伝達される。駆動軸65と案内部材60とのねじ送り作用により、駆動軸65が上方に移動する。開弁ばね75によって弁体70が上方に押され、弁口14の開口面積が大きくなる。
【0034】
電動弁1は、弁室13および弁口14を有する弁本体10と、弁口14と向かい合って配置された弁体70と、弁本体10に取り付けられた円筒形状のホルダー20と、ホルダー20に接する上端面26aと弁室13に臨む下端面26bとを有する弁体支持部材25と、ホルダー20に接合された円筒形状のキャン30と、キャン30の内側に配置され、弁体70を駆動する駆動機構40と、を有している。電動弁1は、弁室13とキャン30の内側空間30eとを接続する冷媒通路Kを有している。冷媒通路Kは、ホルダー20の内側空間20eと、ホルダー20と弁体支持部材25との間に形成された第1環状溝28と、弁体支持部材25に形成され、弁室13と第1環状溝28とを接続する第1縦孔29と、ホルダー20と弁体支持部材25との間に形成され、第1環状溝28の内周縁とホルダー20の内側空間20eとを接続する隙間24と、を有している。
【0035】
このようにしたことから、弁室13に導入された冷媒は、弁室13から第1縦孔29を介して第1環状溝28に流れ込み、第1環状溝28で周方向に流れる。第1環状溝28において、冷媒に含まれる異物は、遠心力によって外周縁側に移動する。冷媒は、第1環状溝28の内縁部から隙間24を介してホルダー20の内側空間20eに流れる。このとき、冷媒に含まれる異物が第1環状溝28の外周縁側に滞留し、第1環状溝28の内周縁側にある、異物の少ない冷媒が隙間24を介してホルダー20の内側空間20eに流れる。そのため、電動弁1では、冷媒通路Kにフィルターなどを設けることなく、キャン30の内側空間30eへの異物の侵入を抑制でき、弁室13の冷媒圧力の変化を速やかにキャン30の内側空間30eの冷媒に伝えることができる。したがって、電動弁1は、弁室13の冷媒圧力とキャン30の内側空間30eの冷媒圧力との差圧に起因する動作不良や異音の発生を抑制できる。
【0036】
また、駆動機構40が、ホルダー20の内側に配置され、雌ねじ60fが内周面に形成された円筒形状の案内部材60と、雌ねじ60fと螺合される雄ねじ66fが外周面に形成された駆動軸65と、を有している。冷媒通路Kが、ホルダー20と案内部材60との間に形成された第2環状溝61と、案内部材60に形成され、ホルダー20の内側空間20eと第2環状溝61とを接続する第2縦孔62と、ホルダー20に形成され、第2環状溝61とキャン30の内側空間30eとを接続する横孔23と、をさらに有している。このようにすることで、冷媒通路Kは、環状通路と縦通路を組み合わせた通路部分を2つ([1]第1環状溝28と第1縦孔29、[2]第2環状溝61と第2縦孔62)含む複雑な通路形状を備える。そして、冷媒に含まれる異物は冷媒より比重が大きく、冷媒に比べて流動方向を変えにくい。そのため、冷媒通路Kにおいて、冷媒の流れの向きが変わる箇所で異物を滞留させることができ、キャン30の内側空間30eへの異物の侵入をより抑制できる。
【0037】
また、隙間24が、駆動機構40(遊星歯車機構50、案内部材60と駆動軸65とのねじ機構)の遊びの大きさより小さい。このようにすることで、隙間24において、駆動機構40の動作に影響を及ぼすおそれのある異物の通過を規制し、異物による電動弁1の動作不良を抑制できる。
【0038】
上述した電動弁1は、マグネットローター41の回転を遊星歯車機構50で減速して駆動軸65に伝えるものであった。電動弁1は、マグネットローター41の回転を直接的に駆動軸65に伝える直動式の構成を有するものであってもよい。
【0039】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…電動弁、10…弁本体、10a…左側面、10b…右側面、10c…上面、13…弁室、14…弁口、17…第1通路、18…第2通路、19…取付孔、19a…底面、20…ホルダー、20b…下端面、20d…内周面、20e…内側空間、21…下部、22…上部、23…横孔、24…隙間、25…弁体支持部材、25e…弁体支持孔、26…大径部、26a…上端面、26b…下端面、26f…環状平面、27…小径部、27c…外周面、28…第1環状溝、28d…内側側面、29…第1縦孔、30…キャン、30e…内側空間、35…接合部材、40…駆動機構、41…マグネットローター、42…連結部材、43…ローター軸、50…遊星歯車機構、51…歯車ケース、52…固定リング歯車、53…太陽歯車、54…遊星歯車、55…キャリア、55a…支持軸、56…出力歯車、57…出力軸、57a…スリット、60…案内部材、60b…下端面、60f…雌ねじ、61…第2環状溝、62…第2縦孔、65…駆動軸、66…円柱部、66f…雄ねじ、67…平板部、68…ボール、70…弁体、71…ステム、72…弁部、73…ばね受け部、73a…フランジ部、74…ボール受け部、75…開弁ばね、80…ステーターユニット、90…ステーター、95…カバー、K…冷媒通路

図1
図2
図3
図4