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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190601
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】剥離性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221219BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221219BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20221219BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/30 A
C09D5/00 Z
C09D133/06
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099004
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓治
(72)【発明者】
【氏名】水原 由郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓明
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AT00A
4F100EH46
4F100EJ38A
4F100EJ86
4F100JA07B
4F100JB04B
4F100JL14
4J038CG041
4J038CG141
4J038CH041
4J038MA14
4J038NA10
4J038PC08
4J100AL05P
4J100AL09Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA36
4J100DA47
4J100FA03
4J100FA28
4J100FA30
4J100JA03
4J100JA05
4J100JA38
4J100JA43
4J100JA46
4J100JA50
4J100JA51
(57)【要約】
【課題】基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、剥離力が小さく、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制された剥離性フィルムを提供する。
【解決手段】基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、
前記表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、
前記表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、前記アクリル系粘着剤を乾燥させた後、前記表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の前記表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下である、剥離性フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、
前記表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、
前記表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、前記アクリル系粘着剤を乾燥させた後、前記表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の前記表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下である、剥離性フィルム。
【請求項2】
前記変性アクリル系樹脂は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んでいる、請求項1に記載の剥離性フィルム。
【請求項3】
前記変性アクリル系樹脂は、下記一般式(II):
【化2】
[前記一般式(II)において、Raは、メチル基又は水素原子を示し、Rbは、-CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH3、-CH2CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH2CH3、-CH2CH2-CHOH-CH3、又は-CH2CH2CH2CH2OHを示す。]
で表される構成単位を含んでいる、請求項1又は2に記載の剥離性フィルム。
【請求項4】
前記変性アクリル系樹脂の重量平均分子量が、5×104~15×104である、請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離性フィルム。
【請求項5】
基材層上に表面層を有する剥離性フィルムの製造方法であって、
前記基材層上に、前記表面層を形成する工程を備えており、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、
前記表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、
前記表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、前記アクリル系粘着剤を乾燥させた後、前記表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の前記表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下である、剥離フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離性フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、電子基板などの製造工程や、繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程などの工業分野、さらには湿布、絆創膏などの医療分野などにおいて、剥離性フィルムが使用されている。
【0003】
このような剥離性フィルムとしては、例えば、表面保護フィルムや粘着テープなどとして使用されるものや、剥離ライナー、セパレータフィルムなどとして使用されるもの、半導体製品の製造工程(ダイシング、ダイボンディング、バックグラインドなど)で使用されるセパレータ、セラミックコンデンサ製造時の未焼成シート形成用キャリアーや複合材料製造時のキャリアー、保護材のセパレータフィルムなど様々なものが知られている。
【0004】
例えばシリコーン系剥離性フィルムは、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、及び電気絶縁性に優れており、剥離性フィルムとして広く用いられている。しかしながら、シリコーン系剥離性フィルムを使用する際、当該フィルムに貼られる物品にシリコーンが転写(移行)してしまう場合がある(この問題をシリコーン移行の問題ともいう)。そこで、シリコーン系剥離性フィルム中のシリコーンの組成を改良したり、シリコーン使用量を極力抑えたり、またはシリコーンを使わないことが検討されてきた。例えば、特許文献1では、ヒドロキシ基含有長鎖アルキルポリマーを用いた剥離フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-030795号公報
【特許文献2】特開2019-209528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された剥離フィルムは、剥離力が大きいという問題がある。
【0007】
また、シリコーン系剥離性フィルムによるシリコーン移行の問題と同様、剥離性フィルムの成分が物品の表面に移行し、剥離性フィルムを物品から剥離した後、物品の表面に剥離性フィルムの成分が残留すると、物品の表面が汚染されるという問題がある。物品表面の残留成分は、当該物品表面を汚染するだけでなく、その後に当該物品と接触した他の物品の表面の汚染にも繋がるため、特に、電子部品、電子基板などの精密機器の製造工程に使用される剥離性フィルムには、剥離性フィルムの成分が物品に移行し難い性能が要求される。
【0008】
例えば、特許文献2に記載された、基材層上に表面層を有する剥離フィルムは、剥離フィルムの成分が移行し難く、加熱前後の剥離力の差も小さいという優れた特性を備えている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載された剥離フィルムについて、本発明者がさらに検討を重ねたとこり、アクリル系粘着剤を用いた粘着テープを剥離フィルムの表面に付着させた後、当該粘着テープを剥離フィルムの表面から剥離すると、剥離フィルムの剥離力の変化が大きくなる場合があることを知得した。当該剥離力の変化が大きいことは、アクリル系粘着剤を用いた粘着テープの付着によって、剥離フィルムの成分が粘着テープに移行していることを示しているといえる。
【0010】
このような状況下、本発明は、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、剥離力が小さく、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制された剥離性フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、アクリル系粘着剤を乾燥させた後、表面層から乾燥後のアクリル系粘着剤を剥離した後の表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下である剥離性フィルムは、剥離力が小さく、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
項1. 基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、
前記表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、
前記表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、前記アクリル系粘着剤を乾燥させた後、前記表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の前記表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下である、剥離性フィルム。
項2. 前記変性アクリル系樹脂は、少なくとも、下記一般式(I):
【化1】
(前記一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。)
で表される構成単位を含んでいる、項1に記載の剥離性フィルム。
項3. 前記変性アクリル系樹脂は、下記一般式(II):
【化2】
[前記一般式(II)において、Raは、メチル基又は水素原子を示し、Rbは、-CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH3、-CH2CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH2CH3、-CH2CH2-CHOH-CH3、又は-CH2CH2CH2CH2OHを示す。]
で表される構成単位を含んでいる、項1又は2に記載の剥離性フィルム。
項4. 前記変性アクリル系樹脂の重量平均分子量が、5×104~15×104である、項1~3のいずれか1項に記載の剥離性フィルム。
項5. 基材層上に表面層を有する剥離性フィルムの製造方法であって、
前記基材層上に、前記表面層を形成する工程を備えており、
前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、
前記樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、
前記表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、
前記表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、前記アクリル系粘着剤を乾燥させた後、前記表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の前記表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下である、剥離フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、剥離力が小さく、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制された剥離性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る剥離性フィルムは、基材層上に表面層を有する剥離性フィルムであって、前記表面層を形成する主成分が樹脂成分であり、樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂を含み、表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、アクリル系粘着剤を乾燥させた後、前記表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下であることを特徴とする。
【0015】
本実施形態に係る剥離性フィルムは、このような構成を備えていることにより、剥離力が小さく、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制されるという特性を発揮する。より具体的には、(1)当該剥離性フィルムの表面層に対して対象物(被着体)を貼り付け、その後に当該表面層と当該対象物との間で剥がした場合に、剥離力が小さく、さらに、(2)剥離性フィルムの表面層に含まれる成分が、アクリル系粘着剤を表面に有する被対象物の表面に移行し難いという特性も発揮する。本実施形態に係る剥離性フィルムは、これらの特性を有していることから、特に、電子部品、電子基板などの製造工程、繊維強化プラスチック等の熱硬化性樹脂部材の製造工程、さらには湿布、絆創膏などの医療分野などにおいて、好適に使用し得る。
【0016】
以下、本実施形態に係る剥離性フィルムについて詳述する。なお、本明細書において、数値範囲の「~」とは、以上と以下とを意味する。即ち、α~βという表記は、α以上β以下、或いは、β以上α以下を意味し、範囲としてα及びβを含む。また、「(メタ)アクリル」とは「アクリル又はメタクリル」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
【0017】
本実施形態に係る剥離性フィルムは、基材層と、該基材層の少なくとも一方側に表面層を有する積層フィルムである。
【0018】
〔基材層〕
基材層としては、樹脂を含有する層(例:樹脂製のフィルム)の他、紙、不織布、金属箔等の薄いシートが使用できる。基材層が例えば樹脂を含有する層である場合、当該樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂等を含有する層である。
【0019】
基材層が樹脂を含有する層である場合、上記樹脂の1種類のみを含有してもよいし、2種以上を組み合わせて含有してもよい。本実施形態の剥離性フィルムにおける基材層は、表面層の加工適性の観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種を主成分として含有する層であることが好ましく、表面層との密着性(表面層と基材層との間に別の層が介在する場合には当該別の層との密着性も)という観点から、ポリエステル樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種を主成分として含有する層であることがより好ましい。
【0020】
ここで、本発明及び本明細書において、主成分とは50質量%以上含まれる成分を意味し、主成分の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。なお、当該主成分の割合は、100質量%であってもよい。
【0021】
基材層には、後述する表面層と同様、添加剤が含まれていてもよい。添加剤の種類・成分については、後述する表面層の項目で説明するものと同じであり、ここでは説明を省略する。
【0022】
基材層は、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムのいずれにより構成される層であってもよい。加工適性、透明性及び寸法安定性の観点から、基材層は、二軸延伸フィルムにより構成される層であることが好ましい。
【0023】
基材層の厚みは、加工適性の観点から、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。基材層の厚みは、製品使用時のハンドリング性の観点から、好ましくは125μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。基材層の厚みは、マイクロメーター(JIS B-7502)を用いて、JIS C-2151に準拠して測定され、具体的には実施例に記載の方法によって測定される。
【0024】
基材層と、後述する表面層との密着性を高める目的で、所望により基材層の片面又は両面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、サンドブラスト処理若しくは溶剤処理等の凹凸化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、又はオゾン・紫外線照射処理等の表面酸化処理等が挙げられる。
【0025】
〔表面層〕
本実施形態の剥離性フィルムは、基材層上に表面層を有する。表面層は、剥離性フィルムに剥離性を付与するための層である。表面層は、基材層との間に接着剤層等の各層を介して基材層の上に形成されていてもよいが、表面層の主面が基材層の主面と接するように表面層が形成されていることが好ましい。
【0026】
本実施形態の剥離性フィルムは、表面層の全表面エネルギーAが、22mN/m以上29mN/m以下であり、かつ、表面層にアクリル系粘着剤を付着させ、アクリル系粘着剤を乾燥させた後、表面層から乾燥後の前記アクリル系粘着剤を剥離した後の前記表面層の全表面エネルギーBが、22mN/m以上29mN/m以下であることを特徴としている。すなわち、本実施形態の剥離性フィルムは、表面層にアクリル系粘着剤を付着させる前後における全表面エネルギーA,Bが、共に22~29mN/mという特定の範囲内に設定されていることにより、剥離力が小さく、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制されるという優れた効果を発揮する。表面層における全表面エネルギーA,Bの具体的な測定方法は、以下の通りであり、より具体的には実施例に記載の方法を採用する。
【0027】
〔全表面エネルギーの測定〕
常温(25℃)環境において、市販の接触角測定器(例えば、接触角測定器DMs-401(協和界面科学株式会社製))を用い、表面層の表面について、純水およびDIM(ジヨードメタン)の接触角を測定し、それぞれの接触角からOwens-Wendtの式により剥離性フィルムの表面層の全表面エネルギーを求める。表面層の全表面エネルギーは、後述の剥離試験前の全表面エネルギーAと、剥離試験(1回目)後の全表面エネルギーBをそれぞれする。
【0028】
〔剥離試験(剥離力の測定)〕
剥離フィルムを、幅80mm×長さ150mmの大きさに裁断する。次に、剥離フィルムの表面層の表面に、有機溶剤を含むアクリル系粘着剤(東洋モートン(株)製 オリバイン(登録商標)BPS6163、濃度37質量%、有機溶剤:酢酸エチル)を、マイヤーバー((株)安田精機製作所製 シャフト直径:6.35mmφ)を用いて、乾燥質量が4g/m2となるように塗工し、防爆型乾燥機の設定温度110℃で60秒間乾燥させた後、常温(25℃)環境にて1分放置冷却する。
【0029】
次に、冷却後の粘着剤塗工面上に、幅100mm×長さ150mm、厚さ38μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)製 E5100)を重ね、質量2kgのローラーを2往復させることにより貼付し、貼付品を得る。次いで、当該貼付品に5KPaの荷重となるように錘を載せ、70℃で20時間静置し加熱処理をする。なお当該加熱処理には熱風乾燥機を使用する。加熱処理後は、23℃で湿度50%の環境下で30分静置し、測定用貼付品を得る。測定用貼付品は各サンプルにつき2枚作製する。
【0030】
次に、得られた測定用貼付品から、塗工端部を含まないようにして、幅25mm×長さ120mmに裁断して、測定試料とする。測定試料の上端20mmを剥離して掴み部とし、市販の剥離試験機(例えば、協和界面科学(株)製 粘着・皮膜剥離解析装置VP-2)にセットする。常温(25℃)環境において、1000mm/分の速度でT字ピール剥離試験を行い、100mmの長さを剥離してその際の剥離力を測定する。剥離は、各測定試料中の二軸延伸PETフィルムを剥がすことにより行う。この剥離試験は、例えば2回行うことができる。
【0031】
なお、全表面エネルギーの測定、剥離試験(剥離力の測定)に使用する機器や材料(例えば、アクリル系粘着剤)などが入手できない場合には、同等の代替品を使用して測定を行う。
【0032】
本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、表面層の全表面エネルギーAは、好ましくは23~28mN/m、より好ましくは24~27mN/m、さらに好ましくは25~27mN/mである。また、同様の観点から、表面層の全表面エネルギーBは、好ましくは23~28mN/m、より好ましくは24~27mN/mである。表面層の全表面エネルギーA,Bは、それぞれ、表面層を形成する樹脂成分の種類(例えば、後述の変性アクリル系樹脂のアルキル基の長さ、モノマー質量比、重量平均分子量など)、表面層の乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間など)によって調整することができる。
【0033】
本実施形態の剥離性フィルムは、T字ピール剥離力が非常に軽い(非常に低い)ものから適度に軽い(適度に低い)ものまで、使用用途に応じて適宜設定することができる。本実施形態の剥離性フィルムは、前記の〔剥離試験(剥離力の測定)〕に記載の測定方法によって測定される表面層の剥離力(1回目)は、好ましくは0.20~0.28N/25mmである。同様の観点から、表面層の剥離力(2回目)は、好ましくは0.20~0.28N/25mmである。
【0034】
表面層を形成する主成分は、樹脂成分である。また、当該樹脂成分は、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(以下、変性アクリル系樹脂(A)と表記することがある)を含む。すなわち、表面層は、変性アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物の硬化物によって構成されている。
【0035】
さらに、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、当該樹脂成分は、変性アクリル系樹脂(A)に加えて、必要に応じて、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及び架橋剤(D)などをさらに含んでいてもよい。すなわち、表面層は、樹脂成分としてアルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及び架橋剤(D)とを含む樹脂組成物の硬化物によって構成されていてもよい。以下、変性アクリル系樹脂(A)、前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及び架橋剤(D)について詳述する。
【0036】
<変性アクリル系樹脂(A)>
アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)は、主鎖であるアクリル系樹脂に対してアルキル基を側鎖として有する樹脂である。変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位(後述の単量体aにより形成される)を含んでいる。
【化3】
【0037】
一般式(I)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R2は、炭素数10~18のアルキル基を示す。
【0038】
一般式(I)において、アルキル基R2の炭素数は10~18である。炭素数が9未満になると一般的に変性アクリル系樹脂(A)に離形性を発現させることが難しい。また、炭素数が18を超えると結晶性が高くなること等により剥離力が高くなり過ぎて、剥離性フィルムとしての剥離性能が劣る。変性アクリル系樹脂(A)が炭素数10~18の長鎖アルキル基を有することにより、剥離性能は優れたものとなる。なお、剥離性能を良好にするために、一般式(I)のR2は直鎖のアルキル基であることが好ましい。また、R2の炭素数は、12~18が好ましく、12~14がより好ましい。R2は、炭素数12~18の直鎖アルキル基がさらに一層好ましく、炭素数12~14の直鎖アルキル基が特に好ましい。
【0039】
変性アクリル系樹脂(A)において、架橋性官能基(反応性官能基)としては、例えば、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、加水分解性シリル基等が挙げられる。架橋性官能基の数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。また、架橋性官能基は、1種単独で含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0040】
変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも、単量体として、前記一般式(I)で表される構成単位を形成する単量体a(1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と、炭素数10~18のアルキル基を有するアクリル系単量体)を重合させることにより得られる重合体である。変性アクリル系樹脂(A)は、単量体aとともに、さらに、後述の単量体b(1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と架橋性官能基を有する単量体)、単量体c(1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と炭素数1~9または19以上のアルキル基を有するアクリル系単量体)、及び単量体d(単量体a,b,cとは異なる単量体であって、単量体a,b,cのうち少なくとも1種と共重合可能な単量体)からなる群より選択された少なくとも1種の単量体を共重合させて得られる共重合体であってもよい。特に、少なくとも単量体a及び単量体bを共重合させて得られる共重合体は、変性アクリル系樹脂(A)として好ましい。
【0041】
[単量体a]
単量体aとしては、エステル部分が炭素数10~18の長鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。具体的には、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレートともいう)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレートともいう)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレートともいう)、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
変性アクリル系樹脂(A)における単量体aから導かれる構成単位の含有割合は、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、変性アクリル系樹脂(A)に含まれる構成単位の合計を100質量部として、好ましくは50~99.99質量部程度、より好ましくは70~99.9質量部程度、さらに好ましくは85~99.8質量部程度、さらに好ましくは85~99.5質量部である。単量体aは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
[単量体b]
単量体bは、1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合及び架橋性官能基を有する単量体である。単量体bは、架橋性官能基を有していることから、後述の架橋剤(D)を介して前記変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)などと好適に結合し、剥離性フィルムの加熱前後の剥離力の差を小さく、さらには表面層の成分の物品への移行を抑制することができる。
【0044】
架橋性官能基(反応性官能基)としては、例えば、カルボキシル基、イソシアノ基、エポキシ基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、加水分解性シリル基等が挙げられる。単量体bは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、単量体bにおいて、架橋性官能基の数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。また、架橋性官能基は、1種単独で含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0045】
カルボキシル基を有する単量体bとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸などが挙げられる。また、カルボキシル基を有する単量体bとして、N-(メタ)アクリロイル-p-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノサリチル酸等も挙げられる。また、カルボキシル基を有する単量体bとして、カルボキシル基含有(メタ)アクリレートも挙げられる。カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、1,4-ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、4-(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸等が挙げられる。
【0046】
イソシアノ基を有する単量体bとしては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどが挙げられ、また、ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等)をポリイシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等)と反応させて得られるものも挙げられる。
【0047】
エポキシ基を有する単量体bとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3-ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0048】
N-メチロール基又はN-アルコキシメチル基を有する単量体bとしては、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN-モノアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0049】
ヒドロキシ基を有する単量体bとしては、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが主に挙げられる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、ヒドロキシ基を有する単量体bとして、ヒドロキシスチレン等も挙げられる。
【0050】
アミノ基を有する単量体bとしては、第1級又は第2級アミノ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。第1級又は第2級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
チオール基を有する単量体bとしては、チオール基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。チオール基含有(メタ)アクリレートとしては、2-(メチルチオ)エチルメタクリレートが挙げられる。
【0052】
加水分解性シリル基を有する単量体bとしては、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシシラン、(メタ)アクリルオキシアルキルアルコキシアルキルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシアリルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
【0053】
単量体bとしては、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びヒドロキシスチレンからなる群より選択された少なくとも1種であり、さらに好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも1種である。
【0054】
単量体bが2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも1種である場合、変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも上記一般式(I)で表される構成単位を含むとともに、少なくとも下記一般式(II)で表される構成単位を含んでいる。
【化4】
【0055】
一般式(II)において、Raは、メチル基又は水素原子を示し、Rbは、-CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH3、-CH2CH2CH2OH、-CH2-CHOH-CH2CH3、-CH2CH2-CHOH-CH3、又は-CH2CH2CH2CH2OHを示す。
【0056】
変性アクリル系樹脂(A)が、単量体bから導かれる構成単位を含む場合、変性アクリル系樹脂(A)における単量体bから導かれる構成単位の含有割合は、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、変性アクリル系樹脂(A)に含まれる構成単位の合計を100質量部として、0.01~20質量部程度であることが好ましく、0.1~10質量程度であることがより好ましく、0.2~5質量程度であることがさらに好ましく、0.5~3質量部程度であることがさらに好ましく、0.8~1.5質量部程度であることが特に好ましい。変性アクリル系樹脂(A)が、単量体aから導かれる構成単位を含むだけでなく、単量体bから導かれる構成単位も含む場合、その一次構造はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0057】
[単量体c]
単量体cは、1分子中に、炭素-炭素不飽和二重結合と、炭素数1~9または19以上のアルキル基を有するアクリル系単量体である。単量体cは、例えば表面層に含まれるアルキル基の濃度を調整するために使用することができ、剥離性フィルムの加熱前後の剥離力の差を小さくし、さらには表面層の成分の物品への移行の抑制に貢献し得る。
【0058】
単量体cとしては、(メタ)アクリル酸誘導体が好適に挙げられる。(メタ)アクリル酸誘導体としては、下記一般式(III)で表される構成単位が導かれる単量体が好ましい。
【化5】
【0059】
一般式(III)において、R1は、メチル基又は水素原子を示し、R3は、炭素数1~9または19以上のアルキル基を示し、該アルキル基は、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、塩素原子、臭素原子、ケイ素原子等を含む変性アルキル基であってもよい。
【0060】
単量体cの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレートステアリル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。単量体cは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0061】
変性アクリル系樹脂(A)が、単量体cから導かれる構成単位を含む場合、変性アクリル系樹脂(A)における単量体cから導かれる構成単位の含有割合は、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、変性アクリル系樹脂(A)に含まれる構成単位の合計を100質量部として、0.01~20質量部程度であることが好ましく、0.1~10質量部程度であることがより好ましい。
【0062】
[単量体d]
単量体dは、単量体a,b,cとは異なる単量体であって、単量体a,b,cのうち少なくとも1種と共重合可能な単量体である。
【0063】
単量体dの具体的な例としては、(i’)芳香族ビニル単量体、(ii’)オレフィン系炭化水素単量体、(iii’)ビニルエステル単量体、(iv’)ビニルハライド単量体、(v’)ビニルエーテル単量体などが挙げられる。単量体dは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。単量体dは、例えば表面層に含まれる種々の官能基の濃度を調整するために使用することができ、剥離性フィルムの加熱前後の剥離力の差を小さく、さらには表面層の成分の物品への移行の抑制に貢献し得る。
【0064】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、一部の水素がフッ素置換されたスチレン類(例えば、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン等)などが挙げられる。
【0065】
オレフィン系炭化水素単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4-ペンタジエン等が挙げられる。
【0066】
ビニルエステル単量体としては、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0067】
ビニルハライド単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0068】
ビニルエーテル単量体としては、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
【0069】
変性アクリル系樹脂(A)が、単量体dから導かれる構成単位を含む場合、変性アクリル系樹脂(A)における単量体dから導かれる構成単位の含有割合は、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、変性アクリル系樹脂(A)に含まれる構成単位の合計を100質量部として、0.01~20質量部程度であることが好ましく、0.1~10質量部程度であることがより好ましい。
【0070】
本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、変性アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは5×104~15×104であり、より好ましくは6×104~14×104であり、さらに好ましくは8×104~12×104である。
【0071】
表面層中の変性アクリル系樹脂(A)の含有量は特に限定的ではないが、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、30質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、50質量部超えがさらに一層好ましく、55質量部以上が特に好ましい。また、表面層中の変性アクリル系樹脂(A)の含有量は、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対して98質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であることが特に好ましく、60質量部以下であることが特段好ましい。
【0072】
変性アクリル系樹脂(A)を得る方法としては、前述の単量体aおよび必要に応じて単量体b、単量体c、単量体dを、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の公知の重合方法で重合して得ることができる。
【0073】
重合時には、開始剤を用いてよい。開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等を用いることができる。なかでも重合の収率や分子量制御の容易さから、アゾ化合物が好ましく、アゾビスイソブチロニトリル (AIBN)がより好ましい。重合剤の使用量は、収率や分子量制御の容易さから、変性アクリル系樹脂(A)に含まれる構成単位の合計を100質量部として、0.01~3質量部が好ましく、0.05~2質量部が好ましく、0.1~1.5質量部がより好ましい。
【0074】
また、変性アクリル系樹脂(A)は、少なくとも単量体b(炭素-炭素不飽和二重結合及び架橋性官能基を有する単量体)を重合させて得られる重合体に対して、アルキル基をグラフト重合して得ても良い。すなわち、単量体bによって導かれる構成単位の前記架橋性官能基の一部または全部にアルキル基がグラフト重合した構造を備える重合体(以下、変性アクリル系樹脂(A’)と記載する)を、変性アクリル系樹脂(A)と同様に、単独もしくは変性アクリル系樹脂(A)と混合して用いることができる。
【0075】
変性アクリル系樹脂(A’)において、グラフト重合されたアルキル基の炭素数としては、好ましくは10~18程度、より好ましくは12~14程度が挙げられる。アルキル基をグラフト重合により導入する方法としては限定的ではなく、公知の導入方法が挙げられる。
【0076】
変性アクリル系樹脂(A’)においても、変性アクリル系樹脂(A)で例示した単量体bと同じものを好ましく用いることができる。単量体bの詳細については、前記の通りである。
【0077】
変性アクリル系樹脂(A’)は、単量体bとともに、さらに前記単量体c及び前記単量体dの少なくとも一方を共重合させた共重合体であってもよい。
【0078】
変性アクリル系樹脂(A’)においても、変性アクリル系樹脂(A)で例示した単量体c及び単量体dを好ましく用いることができる。単量体c及び単量体dの詳細については、前記の通りである。
【0079】
<樹脂(B)>
表面層を形成する樹脂成分は、変性アクリル系樹脂(A)とともに、必要に応じて、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)を含むことができる。
【0080】
表面層に当該樹脂(B)を含有することにより、変性アクリル系樹脂(A)との相溶性の違いを利用して、変性アクリル系樹脂(A)のアルキル基を表面に偏析させやすく、表面層の全表面エネルギーA,Bを所定範囲に設定して本実施形態の効果をより一層好適に発揮しやすくすることができる。
【0081】
樹脂(B)としては、特に限定されないが、好ましくはポリエステル樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。また、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂としては、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂として知られている公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂として、(i)多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物又は不乾性油脂肪酸等で変性したものである不転化性ポリエステル樹脂、(ii)二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性ポリエステル樹脂などが挙げられる。本実施形態において、ポリエステル樹脂(B)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0082】
ポリエステル樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、具体的には、二価アルコール、三価アルコール、四価以上の多価アルコールなどが挙げられる。二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。四価以上の多価アルコールとしては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等が挙げられる。これら多価アルコールは、一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
また、ポリエステル樹脂の原料として用いられる多塩基酸としては、具体的には、芳香族多塩基酸、脂肪族飽和多塩基酸、脂肪族不飽和多塩基酸、ディールス・アルダー反応による多塩基酸などが挙げられる。芳香族多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等が挙げられる。脂肪族飽和多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。脂肪族不飽和多塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。ディールス・アルダー反応による多塩基酸としては、シクロペンタジエン-無水マレイン酸付加物、テルペン-無水マレイン酸付加物、ロジン-無水マレイン酸付加物等が挙げられる。これら多塩基酸は一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
変性剤である不乾性油脂肪酸等としては、具体的には、オクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、またはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油、及びこれらの脂肪酸等が挙げられる。これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ポリエステル樹脂としても、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
また、アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0086】
変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)は、後述する架橋剤(D)と反応するために、反応性官能基を有することが好ましい。特に、当該反応性官能基としては、カルボキシル基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。樹脂(B)がヒドロキシ基を有する場合、その樹脂(B)の水酸基価は、5~500mgKOH/gであることが好ましく、10~300mgKOH/gであることがより好ましく、15~100mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0087】
樹脂(B)の数平均分子量は、500~30000程度であることが好ましく、1000~20000程度であることがより好ましい。樹脂(B)は、数平均分子量が上記範囲であることにより、表面層が架橋剤(D)で架橋されたときの網目構造が密になりやすく、アルキル成分及び架橋性官能基を有する変性アクリル系樹脂(A)の剥離面への偏析が起こりやすくなる。
【0088】
表面層中の樹脂(B)の含有量は限定的ではないが、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、2質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、40質量部以上であることが特段好ましい。また、同様の観点から、表面層を構成する樹脂(A)と樹脂(B)の合計を100質量部として、70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部未満がさらに一層好ましく、45質量部以下であることが特に好ましい。
【0089】
<(D)架橋剤>
表面層を形成する樹脂成分は、必要に応じて、変性アクリル系樹脂(A)及び樹脂(B)とともに、架橋剤(D)を含んでいる。架橋剤(D)は、変性アクリル系樹脂(A)同士、樹脂(B)同士、または変性アクリル系樹脂(A)と樹脂(B)とを架橋する機能を有する。架橋剤(D)を用いることにより、表面層の全表面エネルギーA,Bを所定範囲に設定して本実施形態の効果をより一層好適に発揮しやすくすることができる。
【0090】
本実施形態において、架橋剤(D)は、メラミン化合物が好適である。前記メラミン化合物は、アミノ基の水素原子が全てアルコキシアルキル基及びアルカノール基の少なくとも一方で置換された構造を有している。すなわち、前記メラミン化合物は、アルコキシアルキル基及びアルカノール基からなる群より選択された少なくとも1種のみをアミノ基の置換基として備えているともいえる。また、前記メラミン化合物は、トリアジン環に3つのアミノ基が結合した構成単位を有しており、本実施形態において、3つのアミノ基に結合する合計6つの置換基は、アルコキシアルキル基及びアルカノール基からなる群より選択された少なくとも1種のみであり、水素原子などの他の置換基を有していないともいえる。
【0091】
より具体的には、メラミン化合物は、下記一般式(IV)で表すことができる。
【化6】
【0092】
一般式(IV)において、トリアジン環に結合した3つのアミノ基が有している合計6つの置換基Rは、それぞれ、アミノ基の水素原子が置換された基である。6つ置換基Rは、それぞれ独立に、アルコキシアルキル基又はアルカノール基である。また、nは、1以上の数であり、メラミン化合物の平均n量数を示している。
【0093】
アルコキシアルキル基とは、例えば、メトキシメチル基、1-エトキシエチル基などのC1-6アルキルオキシC1-6アルキル基を意味する。また、アルカノール基とは、例えば、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシ-n-プロピル基(-CH2-CHOH-CH3)、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル基など、直鎖状又は分岐状のアルキル基の末端のメチル基上の水素原子が、ヒドロキシ基で置換された基を意味する。ここでC1-6とは、炭素数が1~6を意味する。
【0094】
本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、メラミン化合物は、一般式(IV)において、6つの置換基Rのうち、少なくとも1つがアルコキシアルキル基であることが好ましく、3つ以上がアルコキシアルキル基であることがより好ましく、6つ全てがアルコキシアルキル基であることが特に好ましい。また、一般式(IV)において、6つの置換基Rのうち、アルカノール基は、5つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。なお、後述の実施例において、タイプFのメラミン化合物は、6つの置換基Rの全てがアルコキシアルキル基である。
【0095】
メラミン化合物において、アルコキシアルキル基の炭素数は2~5が好ましく、2がさらに好ましい。アルコキシアルキル基の好ましい具体例としては、プロポキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシメチル基などが挙げられ、これらの中でも特にメトキシメチル基が好ましい。また、アルカノール基の炭素数は1~3が好ましく、1がさらに好ましい。アルカノール基の好ましい具体例としては、プロパノール基(3-ヒドロキシプロピル基)、エチロール基(2-ヒドロキシエチル基)、メチロール基(ヒドロキシメチル基)などが挙げられ、これらの中でも特にメチロール基が好ましい。
【0096】
メラミン化合物の平均n量数としては、好ましくは1.0~3.0程度、より好ましくは1.1~2.0程度、さらに好ましくは1.2~1.5程度が挙げられる。架橋剤(D)は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0097】
本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、メラミン化合物は、一般式(V)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化7】
[ここでMeはメチル基を示す。]
【0098】
一般式(V)において、メラミン化合物の平均n量数は、前記の範囲である。
【0099】
なお、本実施形態において、表面層を形成する樹脂成分には、架橋剤(D)とは異なる他の架橋剤が含まれていてもよいが、当該樹脂成分に含まれる架橋剤は、架橋剤(D)のみであることが好ましい。
【0100】
他の架橋剤としては、限定的ではないが、例えば、前記メラミン化合物とは異なる多官能アミノ化合物、イソシアネート化合物(モノイソシアネート、ジイソシアネート、多官能イソシアネート等を包含する)、多官能エポキシ化合物、多官能金属化合物又はジアルデヒドなどが挙げられる。
【0101】
前記メラミン化合物とは異なる多官能アミノ化合物としては、尿素化合物、ベンゾグアナミン化合物、ジアミン類などが挙げられる。尿素化合物としては、アルキル化尿素化合物(例えば、日本カーバイド工業(株)製 ニカラックMX-270)が挙げられる。ベンゾグアナミン化合物としては、ベンゾグアナミン、メチル化ベンゾグアナミン等が挙げられる。ジアミン類としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジフェニルエチレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0102】
多官能イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリメチロールプロパン(TMP)アダクトTDI、TMPアダクトHDI、TMPアダクトIPDI 、TMPアダクトXDI等が挙げられる。
【0103】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0104】
多官能金属化合物としては、アルミキレート化合物、チタンキレート化合物、トリメトキシアルミニウム等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等が挙げられる。チタンキレート化合物としては、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシチタン等が挙げられる。
【0105】
表面層において、架橋剤(D)の含有量は、本実施形態の効果をより一層好適に発揮する観点から、変性アクリル系樹脂(A)及び変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)の合計100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、変性アクリル系樹脂(A)及び変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0106】
<その他の成分>
[添加剤]
表面層及び基材層には、それぞれ、主成分である樹脂成分に加えて、さらに、必要に応じて少なくとも1種の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、酸触媒、酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤及びアンチブロッキング剤等が挙げられる。このような添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で基材層及び表面層に添加してよい。少なくとも1種の添加剤を、基材層及び表面層のいずれかにのみ含有させてもよいし、基材層及び表面層の全ての層に含有させてもよい。また、基材層及び表面層は、互いに同一又は異なる添加剤を含有してよい。
【0107】
「酸触媒」は、架橋反応により塗膜の緻密性が向上し、オリゴマーの析出を抑制することができる。この架橋反応の酸触媒として、例えばパラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸nブチル、ベンゼンスルホン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸等の酸性触媒を好適に使用できる。酸触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸触媒の使用量は、表面層を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、酸触媒の使用量は、表面層を構成する樹脂成分100質量部に対して3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0108】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(一般名称:BHT)や、フェノール系、ヒンダードアミン系、ホスファイト系、ラクトン系及びトコフェロール系の酸化防止剤が挙げられる。具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシ)ベンゼン及びトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等を挙げることができる。
【0109】
「塩素吸収剤」としては、特に限定されないが、例えばステアリン酸カルシウム等の金属石鹸が挙げられる。
【0110】
「紫外線吸収剤」としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール(BASF製Tinuvin328等)、ベンゾフェノン(Cytec製Cysorb UV-531等)及びハイドロキシベンゾエート(Ferro製UV-CHEK-AM-340等)等が挙げられる。
【0111】
「可塑剤」としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸エステル、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール類、グリセリンなどが挙げられる。
【0112】
「難燃化剤」としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、ボレート及びアンチモン酸化物等が挙げられる。
【0113】
「帯電防止剤」としては、特に限定されないが、例えば、グリセリンモノエステル(グリセリンモノステアレート等)、及びエトキシル化された第二級アミン等が挙げられる。
【0114】
「着色剤」としては、各種有色染料や有色顔料、蛍光染料が挙げられる。
【0115】
「アンチブロッキング剤」は、ブロッキング防止のために添加され、核剤としての効果を発現しない限り特に限定されない。アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ、(合成)ゼオライト、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、石英、炭酸マグネシウム、硫酸パリウム及び二酸化チタン等の無機顔料、並びにポリスチレン、ポリアクリル系粒子、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系粒子、架橋ポリエチレン粒子、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、(架橋)メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、脂肪酸アミド及び脂肪酸グリセリンエステル化合物等の有機顔料が挙げられる。アンチブロッキング剤は、0.1μm~10μmの粒子径を有する顔料であることが好ましく、PMMA及びシリカ粒子が、耐ブロッキング性及び滑り性付与に優れるためより好ましい。例えば前述の基材層にこのような顔料を含有させることにより、基材層の表裏面の滑り性が向上し、ブロッキングを抑制することができる。
【0116】
また、本実施形態において、電気部品等に悪影響を及ぼさないように、表面層にシリコーン化合物を実質的に含有しないことが好ましい。なお、シリコーン化合物を実質的に含有しないとは、シリコーン化合物の量が、好ましくは、500μg/g以下、より好ましくは、100μg/g以下のことをいう。
【0117】
表面層の厚みは、剥離性を高めやすい観点から、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.1μm以上である。表面層の厚みは、ポリマー成分の基材層への移行の観点から、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。表面層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)(例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製「HT7700型」)を用いて観測され、具体的には実施例に記載の方法によって測定される。
【0118】
〔表面層の作製方法〕
表面層は、基材層上に、表面層を形成する樹脂成分を積層することにより形成することができる。表面層の作製方法の好適な態様として、変性アクリル系樹脂(A)、さらには、必要に応じて、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、架橋剤(D)、その他の成分等と、少なくとも1種の溶媒とを含有する塗工液を基材層の上に塗工し、塗工により得られた塗工層から溶媒を除去することにより形成される。また、変性アクリル系樹脂(A)に加えて、樹脂(B)を含む場合には、変性アクリル系樹脂(A)と樹脂(B)とを架橋させ、且つ、前記塗工により得られた塗工層から溶媒を除去することにより形成される。
【0119】
前記溶媒としては、上記塗工液中の溶媒以外の成分を溶解及び/又は均一に分散させることができれば特に限定されない。前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)及び酢酸エチル等のケトン/エステル系の有機溶媒、並びにn-ヘプタン及びメチルシクロへキサン等の脂肪族炭化水素等の有機溶媒が挙げられる。溶媒の沸点は、塗工液のハンドリング性と剥離性フィルムの製造効率を高めやすい観点から、好ましくは10~150℃であり、より好ましくは20~120℃である。溶媒は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0120】
塗工液中の溶媒以外の成分の濃度(いわゆる、溶媒を除去した後に表面層に残る固形分成分の濃度であり、例えば、変性アクリル系樹脂(A)、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及び架橋剤(D)、さらには必要に応じて配合されるその他の成分の合計濃度)は、限定的ではないが、塗工液の安定性及び塗工適性の観点から、塗工液の総量に対して1~24質量%であることが好ましく、1~19質量%であることがより好ましく、2~14質量%であることがさらに好ましく、2~10質量%が特に好ましい。塗工方法は特に限定されず、例えば、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、ダイコータ、カーテンコータ、又は印刷機等を用いた方法が挙げられる。
【0121】
塗工層中の前記樹脂(A)と前記樹脂(B)とを架橋させる方法としては、前記架橋剤(D)の存在下、塗工層を加熱することが挙げられる。例えば、塗工層に熱風を当てて加熱する方法、及び塗工層を赤外線等の電磁波で加熱すること、等が挙げられる。
塗工層から溶媒を除去する方法は、溶媒を揮発させることができれば特に限定されない。なお、溶媒を除去するとは、溶媒を完全に取り除くことのみを意味するのではなく、層が形成される程度に溶媒を取り除くことも含む。溶媒を除去する方法としては、例えば塗工層に風を当てて乾燥させる方法、及び塗工層を加熱することにより乾燥させる方法、等が挙げられる。
【0122】
溶媒除去と架橋反応の促進を両立しやすい観点から、風による乾燥温度、又は加熱温度は、70~180℃が好ましく、120~170℃がより好ましい。また、乾燥時間又は加熱時間は、10~300秒が好ましく、15~90秒がより好ましく、20~50秒がよりさらに好ましい。特に、表面層の全表面エネルギーA,Bを所定範囲に設定して本実施形態の効果をより一層好適に発揮しやすくする観点から、乾燥温度(加熱温度)は、150~165℃の高温であることが好ましく、乾燥時間は10~50秒程度が好ましい。
【0123】
本実施形態の剥離性フィルムは、延伸されても延伸されなくてもよいが、良好な軽い剥離性を得やすい観点から、表面層は無延伸であることが好ましい。
【0124】
〔剥離性フィルム表面の粗面化〕
本実施形態において、剥離性フィルムの表面に、剥離性フィルムとして用いる場合の貼り合わせ等に支障が無い範囲で、巻き適性を向上させる微細な表面粗さを付与してもよい。剥離性フィルム表面に微細な凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法等、及び公知の各種粗面化方法を採用することができる。
【0125】
〔剥離性フィルムの厚み〕
剥離性フィルムの厚みは、剥離性フィルムとしての取り扱い性の観点から、好ましくは18μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。剥離性フィルムの厚みは、剥離性フィルムとしての取り扱い性の観点から、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。本実施形態の剥離性フィルムの厚みはマイクロメーター(JIS B-7502)を用いて、JIS C-2151に準拠して測定される。
【0126】
本実施形態の剥離性フィルムは、良好な剥離性を有すると共に、アクリル系粘着剤に対する剥離性フィルムの成分の移行が好適に抑制されるため、剥離用のフィルムとして優れている。本実施形態の剥離性フィルムは、工業分野及び医療分野などにおいて広く使用することができ、例えば、表面保護フィルム及び粘着テープ等に使用する剥離フィルム、剥離ライナー又はセパレータフィルム、半導体製品製造時に使用される工程(ダイシング、ダイボンディング、バックグラインド)テープのセパレータフィルム、セラミックコンデンサ製造時の未焼成シート形成用キャリアーならびに複合材料製造時のキャリアー、保護材のセパレータフィルム等として好適に使用される。本実施形態の剥離性フィルムは、テープ又はシート;電気機器、電子機器、ウェアラブル機器、医療機器及び建材等の樹脂部材;上記半導体製品製造時の工程において製造される中間部材;各種電気部品(ハードディスク、モータ、コネクタ、スイッチ等);上記キャリアーとして使用する場合のその対象物;ドライフィルムレジスト;等の被着体に対し貼り付けて使用される。なお、上述の被着体が接着剤層(一例として、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系の感圧性接着剤層)を有する場合、本実施形態の剥離性フィルムの表面層と当該接着剤層とが貼り合わされるように本実施形態の剥離性フィルムが被着体に対して貼り付けて使用されてもよい。本実施形態の剥離性フィルムを対象物に貼り付ける方法は、特に限定されない。本実施形態の剥離性フィルムは対象物に、例えば、貼り付ける面積に応じて剥離性フィルムを適宜切断して貼り付けてもよいし、本実施形態の剥離性フィルムもそれを貼り付ける対象物もそれぞれロール状に捲回されている場合はロールツーロールで貼り合わせてもよい。
【実施例0127】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0128】
〔測定方法及び評価方法〕
実施例及び比較例における、各種測定方法及び評価方法は、次のとおりである。
【0129】
〔表面層の厚み〕
試料を切り出し後、試料表面にOsコーティングを施し、樹脂包埋した。次にダイヤモンドナイフ装着のウルトラミクロトームでトリミング・面出し及び超薄切片作製後、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行なった。
切片作成装置:ウルトラミクロトーム(ライカ株式会社製LEICA EM UC7)
ナイフ;DIATOME社製ULTRADRY
観察装置:TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製HT7700型)
加速電圧:100kV
写真倍率:×300,000倍
【0130】
〔基材層及び剥離性フィルムの厚み〕
剥離性フィルム及び基材層の厚みは、マイクロメーター(JIS B-7502)を用いて、JIS C-2151に準拠して測定した。
【0131】
〔全表面エネルギーの測定〕
常温(25℃)環境において、接触角測定器DMs-401(協和界面科学株式会社製)を用い、表面層の表面について、純水およびDIM(ジヨードメタン)の接触角を測定し、それぞれの接触角からOwens-Wendtの式により剥離性フィルムの表面層の全表面エネルギーを求めた。表面層の全表面エネルギーは、後述の剥離試験前の全表面エネルギーAと、剥離試験(1回目)後の全表面エネルギーBをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0132】
〔剥離試験(剥離力の測定)〕
実施例及び比較例で得られた剥離フィルムを、幅80mm×長さ150mmの大きさに裁断した。次に、剥離フィルムの表面層の表面に、有機溶剤を含むアクリル系粘着剤(東洋モートン(株)製 オリバイン(登録商標)BPS6163、濃度37質量%、有機溶剤:酢酸エチル)を、マイヤーバー((株)安田精機製作所製 シャフト直径:6.35mmφ)を用いて、乾燥質量が4g/m2となるように塗工し、防爆型乾燥機の設定温度110℃で60秒間乾燥させた後、室温にて1分放置冷却した。
【0133】
次に、冷却後の粘着剤塗工面上に、幅100mm×長さ150mm、厚さ38μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)製 E5100)を重ね、質量2kgのローラーを2往復させることにより貼付し、貼付品を得た。次いで、当該貼付品に5KPaの荷重となるように錘を載せ、70℃で20時間静置し加熱処理をした。なお当該加熱処理には熱風乾燥機を使用した。加熱処理後は、23℃で湿度50%の環境下で30分静置し、測定用貼付品を得た。測定用貼付品は各サンプルにつき2枚作製した。
【0134】
次に、得られた測定用貼付品から、塗工端部を含まないようにして、幅25mm×長さ120mmに裁断して、測定試料とした。測定試料の上端20mmを剥離して掴み部とし、剥離試験機(協和界面科学(株)製 粘着・皮膜剥離解析装置VP-2)にセットした。常温(25℃)環境において、1000mm/分の速度でT字ピール剥離試験を行い、100mmの長さを剥離してその際の剥離力を測定した。剥離は、各測定試料中の二軸延伸PETフィルムを剥がすことにより行った。この剥離試験を2回行い、1回目と2回目の剥離力を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
〔表面層の強度)〕
表面層の強度は、剥離フィルムの表面を一定条件にて擦過し傷の入り具合を評価した。具体的には、摩擦摩耗試験機(トライボギアTYPE:14 新東化学株式会社製)、30mm平面圧子に日本薬局方ガーゼを装着、荷重100g、テーブル移動速度100mm/minの条件で剥離フィルムの表面層を10往復擦過処理し、光学顕微鏡(VHX-2000 株式会社KEYENCE製)×20倍、反射モードで表面を観察し、1cm辺りの傷が0本を〇、1~4本を△、5本以上を×と評価した。
【0136】
〔剥離試験後の表面層の目視評価)〕
剥離試験後の表面層の目視評価は、剥離試験前サンプルの表面と剥離試験(1回目)後の表面を比較観察することで行った。具体的には、光干渉式非接触表面形状測定機として、日立ハイテク社製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を使用した。フィルムを20cm四方程度の任意の大きさに切り出し、シワを十分に伸ばした状態で、静電密着板などを利用して測定ステージにセットした。WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、10倍対物レンズを用いて、一視野あたり(470.92μm×353.16μm)の観察を行い、剥離試験(1回目)後のサンプルの表面に欠損が見られない場合を〇、欠損が見られるが欠損面積が5%未満を△、欠損面積が5%以上を×と評価した。
【0137】
<実施例1>
攪拌機、窒素導入管、温度計及び冷却管を備えた1リットルのフラスコに、単量体aとしてラウリルアクリレート(LA)98質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部、トルエン100質量部、酢酸エチル100質量部を添加した。次に、前記フラスコ内において、窒素気流下、80℃で2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル1.0質量部を加えた上で2時間重合を行い、アルキルアクリレート-HEA共重合体(以下、「変性アクリル系樹脂(A)」という)含有溶液(固形分30質量%)を得た。得られた変性アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は10.0万であった。
また、樹脂(B)であるポリエステル樹脂αとしてバイロンM802(東洋紡績社製、数平均分子量(Mn):3×103、水酸基価:37mgKOH/g 固形分70質量%)、前述の一般式(V)で示されるメラミン架橋剤(D)(後述のタイプF)としてニカラックMW-30MLF(日本カーバイド工業株式会社製、平均1.3量体 98質量%)、酸触媒(E)としてドライヤー900(日立化成株式会社製 パラトルエンスルホン酸 50質量%)を、それぞれ用意した。
次に、変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、変性アクリル系樹脂(A)とは異なる樹脂(B)、及びメラミン架橋剤(D)を、トルエン:メチルエチルケトン(MEK)=30:70(質量比)の混合溶媒に混合し攪拌した後、さらに酸触媒(E)を混合し攪拌した。ここで、前記変性アクリル系樹脂(A)含有溶液、樹脂(B)、メラミン架橋剤(D)、及び酸触媒(E)について、それぞれ固形分換算で、前記変性アクリル系樹脂(A)56質量部、前記ポリエステル樹脂44質量部、前記メラミン架橋剤6質量部、前記酸触媒(E)0.7質量部となるように混合し攪拌した。これにより、固形分濃度4.4質量%、酸触媒濃度0.03質量%の塗工液1を得た。
次に、基材層として、厚さ38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(二軸延伸PETフィルム、東洋紡株式会社製「E5100」)を用意した。
次いで、マイヤーバー(株式会社安田精機製作所製シャフト直径:6.35mmφ、ROD No.4)を用いて、当該基材層の上に前記塗工液1を塗工し、防爆型乾燥機中160℃で30秒間乾燥させた。これにより、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する実施例1の剥離性フィルムを得た。
【0138】
<実施例2>
変性アクリル系樹脂(A)の製造において、単量体aとしてラウリルアクリレート(LA)96質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)4質量部を用い、重量平均分子量が9.0万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する実施例2の剥離性フィルムを得た。
【0139】
<実施例3>
変性アクリル系樹脂(A)の製造において、単量体aとしてラウリルアクリレート(LA)92質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)8質量部を用い、重量平均分子量が10.4万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する実施例3の剥離性フィルムを得た。
【0140】
<実施例4>
重合反応温度を65℃にすることによって、重量平均分子量が14.0万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する実施例4の剥離性フィルムを得た。
【0141】
<比較例1>
変性アクリル系樹脂(A)の製造において、単量体aとしてラウリルアクリレート(LA)99質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部を用い、重量平均分子量が10.8万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例1の剥離性フィルムを得た。
【0142】
<比較例2>
表面層の形成において、塗工液の乾燥温度を「160℃」から「140℃」に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例2の剥離性フィルムを得た。
【0143】
<比較例3>
重合反応温度を85℃にすることによって、重量平均分子量が8.1万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、比較例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例3の剥離性フィルムを得た。
【0144】
<比較例4>
重合反応温度を80℃にすることによって、重量平均分子量が10.0万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、比較例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例4の剥離性フィルムを得た。
【0145】
<比較例5>
表面層の形成において、塗工液の乾燥温度を「160℃」から「140℃」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例5の剥離性フィルムを得た。
【0146】
<比較例6>
変性アクリル系樹脂(A)の製造において、単量体aとしてステアリルアクリレート(LA)99質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部を用い、重量平均分子量が11.5万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例6の剥離性フィルムを得た。
【0147】
<比較例7>
変性アクリル系樹脂(A)の製造において、単量体aとしてイソデシルステアリルアクリレート(LA)99質量部、単量体bとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)1質量部を用い、重量平均分子量が10.9万の変性アクリル系樹脂(A)を得たこと以外は、実施例1と同様にして、基材層及び表面層(表面層の厚み:0.2μm)を有する比較例7の剥離性フィルムを得た。
【0148】
<比較例8>
実施例1において、表面層を形成せずに、基材層(二軸延伸PETフィルム)を比較例8の剥離性フィルムとした。
【0149】
<比較例9>
厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(PP、王子エフテックス(株)製「アルファンE-200N」)を比較例9の剥離性フィルムとした。
【0150】
【表1】