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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190606
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】操船システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20221219BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20221219BHJP
   B63H 21/22 20060101ALI20221219BHJP
   B63H 25/00 20060101ALI20221219BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20221219BHJP
   B63H 25/24 20060101ALI20221219BHJP
   B63H 25/02 20060101ALI20221219BHJP
   B63H 5/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B63H20/00 803
B63H21/21
B63H21/22 Z
B63H25/00 C
B63H25/42 B
B63H25/24 Z
B63H25/02 A
B63H5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099010
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸平
(57)【要約】
【課題】3つ以上の船舶推進装置を備えるとともに、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進装置を用いない場合において、船舶を前進させる際の加速性を向上させることことが可能な操船システムおよび船舶を提供する。
【解決手段】この操船システム110では、第2制御部15(制御部)は、ジョイスティック13(操作部)に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない船外機12(船舶推進装置)のプロペラ25(推進力発生部)における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部を各々が含む、3つ以上の船舶推進装置と、
少なくとも前記船舶を前進および斜め前移動させる操作を受け付ける操作部と、
前記操作部に対する操作に基づいて、前記3つ以上の船舶推進装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない前記船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている、操船システム。
【請求項2】
前記3つ以上の船舶推進装置は、左舷側に配置される左舷船舶推進装置と、右舷側に配置される右舷船舶推進装置と、前記左舷船舶推進装置と前記右舷船舶推進装置との間に配置される中央船舶推進装置と、を含み、
前記制御部は、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない前記中央船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1に記載の操船システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記推進力発生部における前向きの推進力を一時的に発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載の操船システム。
【請求項4】
前記操作部は、ジョイスティックであり、
前記制御部は、前記ジョイスティックに対して前方に傾倒する操作が行われた場合に、前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記船舶が斜め前移動している状態において前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記前進加速アシスト制御を行わないように制御するとともに、
前記推進力発生部の推進力が発生していない状態において前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項6】
前記3つ以上の船舶推進装置は、左舷側に配置される左舷船舶推進装置と、右舷側に配置される右舷船舶推進装置と、前記左舷船舶推進装置と前記右舷船舶推進装置との間に配置される中央船舶推進装置と、を含み、
前記制御部は、
前記左舷船舶推進装置および前記右舷船舶推進装置の一方によって前記船舶が斜め前移動している状態において、前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記中央船舶推進装置を用いた前記前進加速アシスト制御を行わずに、前記左舷船舶推進装置および前記右舷船舶推進装置の両方によって、前記船舶を前進させるように制御するとともに、
前記推進力発生部の推進力が発生していない状態において、前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記左舷船舶推進装置および前記右舷船舶推進装置の両方に加えて、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない前記中央船舶推進装置によって、前記船舶を前進させるように、前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項5に記載の操船システム。
【請求項7】
前記制御部は、一時的に発生させた前記推進力発生部における前向きの推進力を推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項8】
前記制御部は、一時的に発生させた前記推進力発生部における前向きの推進力を所定の第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項7に記載の操船システム。
【請求項9】
前記制御部は、一時的に前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させる前記推進力発生部以外の複数の前記推進力発生部の平均の推進力を前記第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項8に記載の操船システム。
【請求項10】
前記3つ以上の船舶推進装置の各々の前記推進力発生部は、エンジンにより駆動するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項11】
前記船舶の左右方向に並ぶ5つの前記船舶推進装置を備えており、
前記制御部は、前記5つの船舶推進装置のうちの前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央の1つの前記船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項12】
前記操作部は、前記船舶を前進および斜め前移動させる操作に加えて、前記船舶を横移動させる操作も受け付けるように構成されており、
前記制御部は、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、前記操作部に対して横移動させる操作が行われた場合に前記推進力発生部における後向きの推進力を発生させる前記船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項13】
船体と、
前記船体に取り付けられる3つ以上の船舶推進装置と、を備える船舶であって、
前記3つ以上の船舶推進装置の各々は、
前記船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部を備え、
前記船体は、
少なくとも前記船舶を前進および斜め前移動させる操作を受け付ける操作部と、
前記操作部に対する操作に基づいて、前記3つ以上の船舶推進装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記3つ以上の船舶推進装置のうちの、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない前記船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている、船舶。
【請求項14】
前記3つ以上の船舶推進装置は、左舷側に配置される左舷船舶推進装置と、右舷側に配置される右舷船舶推進装置と、前記左舷船舶推進装置と前記右舷船舶推進装置との間に配置される中央船舶推進装置と、を含み、
前記制御部は、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない前記中央船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記制御部は、前記推進力発生部における前向きの推進力を一時的に発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13または14に記載の船舶。
【請求項16】
前記操作部は、ジョイスティックであり、
前記制御部は、前記ジョイスティックに対して前方に傾倒する操作が行われた場合に、前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13~15のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項17】
前記制御部は、
前記船舶が斜め前移動している状態において前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記前進加速アシスト制御を行わないように制御するとともに、
前記船舶が停止している状態において前記操作部に対して前記船舶を前進させる操作が行われた場合に、前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13~16のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項18】
前記制御部は、一時的に発生させた前記推進力発生部における前向きの推進力を推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13~17のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項19】
前記船舶の左右方向に並ぶ5つの前記船舶推進装置を備えており、
前記制御部は、前記5つの船舶推進装置のうちの前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央の1つの前記船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13~18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項20】
前記操作部は、前記船舶を前進および斜め前移動させる操作に加えて、前記船舶を横移動させる操作も受け付けるように構成されており、
前記制御部は、前記操作部に対して前記船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、前記操作部に対して横移動させる操作が行われた場合に前記推進力発生部における後向きの推進力を発生させる前記船舶推進装置の、前記推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前記前進加速アシスト制御を行うように構成されている、請求項13~19のいずれか1項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操船システムおよび船舶に関し、特に、3つ以上の船舶推進装置を備えた操船システムおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3つ以上の船舶推進装置を備えた操船システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、3つ以上の船舶推進機(船舶推進装置)を備えた操船システムが開示されている。上記特許文献1に記載の操船システムでは、操作部に対する操作に基づいて、制御部が3つ以上の船舶推進機を制御することによって、船舶を前進させること、および、船舶を斜め前移動させること等が可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-73700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には記載されていないが、上記特許文献1に記載のような従来の操船システムでは、船舶の左右のバランスを保つために、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に、3つ以上の船舶推進機(船舶推進装置)のうちの一部の船舶推進機を用いないように構成されている場合がある。たとえば、3つの船舶推進機を備える操船システムにおいて、船舶を前進させる際、船舶を斜め前移動させる際、および、前進と斜め前移動とを切り換える際のいずれの場合においても、中央の船舶推進機を用いずに、左舷側の船舶推進機および右舷側の船舶推進機の一方または両方が用いられる。すなわち、船舶の前進と斜め前移動とを切り換える間において、中央の船舶推進機を用いずに左舷側の船舶推進機および右舷側の船舶推進機の一方または両方のみを用いることにより、船舶の左右のバランスを保っている。しかしながら、船舶を前進させる際に、中央の船舶推進機を用いないので、3つ以上の船舶推進機を備えるような比較的大型の(質量の大きい)船舶においては、船舶を前進させる際の加速性が比較的小さくなる。このため、3つ以上の船舶推進機(船舶推進装置)を備えるとともに、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進機を用いない場合において、船舶を前進させる際の加速性を向上させたいという要望がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、3つ以上の船舶推進装置を備えるとともに、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進装置を用いない場合において、船舶を前進させる際の加速性を向上させることが可能な操船システムおよび船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による操船システムは、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部を各々が含む、3つ以上の船舶推進装置と、少なくとも船舶を前進および斜め前移動させる操作を受け付ける操作部と、操作部に対する操作に基づいて、3つ以上の船舶推進装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による操船システムでは、上記のように、制御部は、操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない船舶推進装置の推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いられない船舶推進装置の推進力発生部における前向きの推進力によりアシストされることによって、船舶を前進させる際の船舶の加速性を向上させることができる。すなわち、船舶を斜め前移動させる際に船舶の左右のバランスを保つために用いない船舶推進装置を、推進力発生部における前向きの推進力をアシストする船舶推進装置として用いることができる。また、3つ以上の船舶推進装置を備える構成において、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことができるので、船舶の左右のバランスを保ちつつ、船舶を前進させる際の加速性を向上させることができる。
【0009】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、3つ以上の船舶推進装置は、左舷側に配置される左舷船舶推進装置と、右舷側に配置される右舷船舶推進装置と、左舷船舶推進装置と右舷船舶推進装置との間に配置される中央船舶推進装置と、を含み、制御部は、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶を斜め前移動させる際に、中央船舶推進装置が用いられず、かつ、左舷船舶推進装置と右舷船舶推進装置とが用いられるので、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に、船舶の左右のバランスを容易に保つことができる。
【0010】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、推進力発生部における前向きの推進力を一時的に発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の前進方向への加速が行われ一定の速度に達した後、不要になった推進力発生部における前向きの推進力のアシストを終了させることができる。
【0011】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、操作部は、ジョイスティックであり、制御部は、ジョイスティックに対して前方に傾倒する操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティックを傾倒する方向と船舶が移動する方向とが前方で一致しているので、前進加速アシスト制御を行うための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。また、一般的に、ジョイスティックは、船舶を前進させる操作だけでなく、船舶を斜め前移動させる操作も直感的に分かり易い状態で行うことができるので、船舶を前進させる操作および船舶を斜め前移動させる操作に関連して前進加速アシスト制御を行う構成における操作部として、ジョイスティックは特に有効である。
【0012】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶が斜め前移動している状態において操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行わないように制御するとともに、推進力発生部の推進力が発生していない状態において操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、斜め前移動状態から前進状態に切り換わる場合のように、一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことに支障が生じる可能性がある場合に、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを行わないことによって、一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことに支障が生じるのを抑止することができる。また、推進力発生部の推進力が発生していない状態から船舶を前進させる場合のように、推進力発生部における前向きの推進力のアシストが特に必要な場合に、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを効果的に行うことができる。
【0013】
この場合、好ましくは、3つ以上の船舶推進装置は、左舷側に配置される左舷船舶推進装置と、右舷側に配置される右舷船舶推進装置と、左舷船舶推進装置と右舷船舶推進装置との間に配置される中央船舶推進装置と、を含み、制御部は、左舷船舶推進装置および右舷船舶推進装置の一方によって船舶が斜め前移動している状態において、操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、中央船舶推進装置を用いた前進加速アシスト制御を行わずに、左舷船舶推進装置および右舷船舶推進装置の両方によって、船舶を前進させるように制御するとともに、推進力発生部の推進力が発生していない状態において、操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、左舷船舶推進装置および右舷船舶推進装置の両方に加えて、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央船舶推進装置によって、船舶を前進させるように、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、斜め前移動状態から前進状態に切り換わる場合のように、一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことに支障が生じる可能性がある場合に、中央船舶推進装置を用いた推進力発生部における前向きの推進力のアシストを行わず、かつ、左舷船舶推進装置および右舷船舶推進装置の両方によって船舶を前進させることによって、一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことに支障が生じるのを容易に抑止することができる。また、推進力発生部の推進力が発生していない状態から船舶を前進させる場合のように、推進力発生部における前向きの推進力のアシストが特に必要な場合に、左舷船舶推進装置および右舷船舶推進装置の両方に対してさらに中央船舶推進装置が加わることによって、船舶の左右方向の中央において推進力発生部における前向きの推進力のアシストを船舶の左右方向のバランスを低下させずに行うことができる。
【0014】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、一時的に発生させた推進力発生部における前向きの推進力を推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを比較的滑らかに終了させることができるので、一時的に発生させた推進力が急激に変化する場合と比較して、船舶の航行安定性を良好に保つことができる。
【0015】
この場合、好ましくは、制御部は、一時的に発生させた推進力発生部における前向きの推進力を所定の第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを終了する前に、船舶が一定の速度に達するまで船舶の前進方向への加速を十分に行いながら、船舶の航行安定性を良好に保つことができる。
【0016】
上記制御部が一時的に発生させた推進力発生部における前向きの推進力を所定の第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、一時的に推進力発生部における前向きの推進力を発生させる推進力発生部以外の複数の推進力発生部の平均の推進力を第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、一時的に推進力発生部における前向きの推進力を発生させる推進力発生部以外の複数の推進力発生部の平均の推進力に合わせて、一時的に発生させる推進力発生部における前向きの推進力を適切な大きさにすることができる。
【0017】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、3つ以上の船舶推進装置の各々の推進力発生部は、エンジンにより駆動するように構成されている。このように構成すれば、エンジンにより駆動する推進力発生部を各々が含む3つ以上の船舶推進装置を備える構成において、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保ちつつ、船舶を前進させる際の加速性を向上させることができる。
【0018】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、船舶の左右方向に並ぶ5つの船舶推進装置を備えており、制御部は、5つの船舶推進装置のうちの操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央の1つの船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、5つの船舶推進装置を備えるような大型の船舶においては、推進力発生部における前向きの推進力のアシストがない場合、船舶を前進させる際の加速性が特に小さくなるので、5つの船舶推進装置を備える構成は、船舶を前進させる際の加速性を向上させることが可能な構成に、効果的に適用することができる。
【0019】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、操作部は、船舶を前進および斜め前移動させる操作に加えて、船舶を横移動させる操作も受け付けるように構成されており、制御部は、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、操作部に対して横移動させる操作が行われた場合に推進力発生部における後向きの推進力を発生させる船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。ここで、3つ以上の船舶推進装置を備える操船システムでは、船舶を横移動させる場合、左舷側の船舶推進装置および右舷側の船舶推進装置の一方が、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるとともに、左舷側の船舶推進装置および右舷側の船舶推進装置の他方と、中央の船舶推進装置とが、推進力発生部における後向きの推進力を発生させる。すなわち、船舶の横移動と斜め前移動とを切り換える間において、左舷側の船舶推進装置および右舷側の船舶推進装置の一方の推進力発生部における前向きの推進力と、左舷側の船舶推進装置および右舷側の船舶推進装置の他方と中央の船舶推進装置との推進力発生部における後向きの推進力とを調整することにより、船舶の左右のバランスを保っている。したがって、上記のように構成すれば、船舶を斜め前移動させる際に加えて、船舶を横移動させる際にも、船舶の左右のバランスを保つことができるとともに、船舶を前進させる際に、船舶を斜め前移動させる際に船舶の左右のバランスを保つために用いず、かつ、船舶を横移動させる際に船舶のバランスを保つために推進力発生部における後向きの推進力を発生させる船舶推進装置を、推進力発生部における前向きの推進力をアシストする船舶推進装置として用いることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船舶は、船体と、船体に取り付けられる3つ以上の船舶推進装置と、を備える船舶であって、3つ以上の船舶推進装置の各々は、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部を備え、記船体は、少なくとも船舶を前進および斜め前移動させる操作を受け付ける操作部と、操作部に対する操作に基づいて、3つ以上の船舶推進装置を制御する制御部と、を備え、制御部は、操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、3つ以上の船舶推進装置のうちの、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている。
【0021】
この発明の第2の局面による船舶では、上記のように、制御部は、上記第1の局面による操船システムと同様の前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶を斜め前移動させる際に船舶の左右のバランスを保つために用いない船舶推進装置を、推進力発生部における前向きの推進力をアシストする船舶推進装置として用いることができる。また、上記第1の局面による操船システムと同様に、3つ以上の船舶推進装置を備える構成において、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことができるので、船舶の左右のバランスを保ちつつ、船舶を前進させる際の加速性を向上させることができる。
【0022】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、3つ以上の船舶推進装置は、左舷側に配置される左舷船舶推進装置と、右舷側に配置される右舷船舶推進装置と、左舷船舶推進装置と右舷船舶推進装置との間に配置される中央船舶推進装置と、を含み、制御部は、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶を斜め前移動させる際に、中央船舶推進装置が用いられず、かつ、左舷船舶推進装置と右舷船舶推進装置とが用いられるので、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に、船舶の左右のバランスを容易に保つことができる。
【0023】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、推進力発生部における前向きの推進力を一時的に発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶の前進方向への加速が行われ一定の速度に達した後、不要になった推進力発生部における前向きの推進力のアシストを終了させることができる。
【0024】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、操作部は、ジョイスティックであり、制御部は、ジョイスティックに対して前方に傾倒する操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティックを傾倒する方向と船舶が移動する方向とが前方で一致しているので、前進加速アシスト制御を行うための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。また、一般的に、ジョイスティックは、船舶を前進させる操作だけでなく、船舶を斜め前移動させる操作も直感的に分かり易い状態で行うことができるので、船舶を前進させる操作および船舶を斜め前移動させる操作に関連して前進加速アシスト制御を行う構成における操作部として、ジョイスティックは特に有効である。
【0025】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、船舶が斜め前移動している状態において操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行わないように制御するとともに、推進力発生部の推進力が発生していない状態において操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、斜め前移動状態から前進状態に切り換わる場合のように、一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことに支障が生じる可能性がある場合に、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを行わないことによって、一部の船舶推進装置を用いないことによって船舶の左右のバランスを保つことに支障が生じるのを抑止することができる。また、推進力発生部の推進力が発生していない状態から船舶を前進させる場合のように、推進力発生部における前向きの推進力のアシストが特に必要な場合に、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを効果的に行うことができる。
【0026】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、一時的に発生させた推進力発生部における前向きの推進力を推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、推進力発生部における前向きの推進力のアシストを比較的滑らかに終了させることができるので、一時的に発生させた推進力が急激に変化する場合と比較して、船舶の航行安定性を良好に保つことができる。
【0027】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、船舶の左右方向に並ぶ5つの船舶推進装置を備えており、制御部は、5つの船舶推進装置のうちの操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央の1つの船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、5つの船舶推進装置を備えるような大型の船舶においては、推進力発生部における前向きの推進力のアシストがない場合、船舶を前進させる際の加速性が特に小さくなるので、5つの船舶推進装置を備える構成は、船舶を前進させる際の加速性を向上させることが可能な構成に、効果的に適用することができる。
【0028】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、操作部は、船舶を前進および斜め前移動させる操作に加えて、船舶を横移動させる操作も受け付けるように構成されており、制御部は、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、操作部に対して横移動させる操作が行われた場合に推進力発生部における後向きの推進力を発生させる船舶推進装置の、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶を斜め前移動させる際に加えて、船舶を横移動させる際にも、船舶の左右のバランスを保つことができるとともに、船舶を前進させる際に、船舶を斜め前移動させる際に船舶の左右のバランスを保つために用いず、かつ、船舶を横移動させる際に船舶のバランスを保つために推進力発生部における後向きの推進力を発生させる船舶推進装置を、推進力発生部における前向きの推進力をアシストする船舶推進装置として用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記のように、3つ以上の船舶推進装置を備えるとともに、少なくとも船舶を斜め前移動させる際に一部の船舶推進装置を用いない場合において、船舶を前進させる際の加速性を向上させることが可能な操船システムおよび船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による船舶を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態による船外機を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態による操船システムの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態によるジョイスティックを示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による船舶における前進加速アシスト制御を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態による船舶の前進の状態、斜め前移動の状態および横移動の状態を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態による船舶の前進の状態と斜め前移動の状態との間の状態を説明するための1つ目の図である。
図8】本発明の一実施形態による船舶の斜め前移動の状態と横移動の状態の間の状態を説明するための2つ目の図である。
図9】本発明の一実施形態の第1変形例による船舶における前進加速アシスト制御を説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に第2変形例による船舶における前進加速アシスト制御を説明するための図である。
図11】本発明の一実施形態に第3変形例による船舶における前進加速アシスト制御を説明するための図である。
図12】本発明の一実施形態に第4変形例による船舶における前進加速アシスト制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1図8を参照して、本発明の一実施形態による操船システム110および船舶100の構成について説明する。操船システム110は、船舶100を操縦(操船)するためのシステムである。操船システム110は、船舶100に設けられている。なお、図中のFWDおよびBWDは、それぞれ、船舶100の前方および後方を示している。
【0033】
(船舶の全体構成)
図1に示すように、船舶100は、船体10と、船外機20と、を備える。船外機20は、船体10の後方のトランサムに取り付けられている。船外機20は、船体10に3つ以上(実施形態では5つ)取り付けられている。すなわち、船体10は、5つの船外機20の推力を必要とする比較的大型の(質量の大きい)船体である。なお、船外機20は、特許請求の範囲の「船舶推進装置」の一例である。
【0034】
5つの船外機20は、左舷側に配置された左舷船外機20aおよび左舷船外機20bと、右舷側に配置された右舷船外機20dおよび右舷船外機20eと、左舷船外機20bと右舷船外機20dとの間に配置された中央船外機20cと、を含む。5つの船外機20は、船舶100の左右方向に並んでいる。具体的には、左舷船外機20aと、左舷船外機20bと、中央船外機20cと、右舷船外機20dと、右舷船外機20eとが、この順に、左舷側から右舷側に向かって並んでいる。5つの船外機20は、中央船外機20cを中央として、船舶100の左右方向に対称となるように配置されている。なお、左舷船外機20aおよび左舷船外機20bは、特許請求の範囲の「左舷船舶推進装置」の一例である。また、右舷船外機20dおよび右舷船外機20eは、特許請求の範囲の「右舷船舶推進装置」の一例である。また、中央船外機20cは、特許請求の範囲の「中央船舶推進装置」の一例である。
【0035】
(船外機の構成)
図2に示すように、5つの船外機20の各々は、エンジン21と、ドライブシャフト22と、ギア部23と、プロペラシャフト24と、プロペラ25と、を備える。エンジン21は駆動力を発生させる内燃機関である。エンジン21の駆動力は、ドライブシャフト22と、ギア部23と、プロペラシャフト24とを介してプロペラ25に伝達される。プロペラ25は、伝達されたエンジン21の駆動力により、水中において回転することにより推力(船舶100を推進するための推進力)を発生させる。すなわち、5つの船外機20の各々のプロペラ25は、エンジン21により駆動するように構成されている。なお、プロペラ25は、特許請求の範囲の「推進力発生部」の一例である。
【0036】
図3に示すように、5つの船外機20の各々は、スロットルアクチュエータ26を含む。スロットルアクチュエータ26は、エンジン21(図2参照)のスロットル開度を制御するように構成されている。これにより、プロペラ25を駆動させるエンジン21の回転数が調整されるので、船舶100(図1参照)の推進力が調整される。
【0037】
5つの船外機20の各々は、シフト状態を切り換えるシフトアクチュエータ27を備える。シフトアクチュエータ27は、ギア部23(図2参照)の噛み合いを切り換えることにより、前進状態(シフトイン状態)と、後進状態(シフトイン状態)と、ニュートラル状態(シフトアウト状態)と、を切り換えるように構成されている。前進状態は、プロペラ25(図2参照)において前向きの推進力を発生させるようにエンジン21(図2参照)の駆動力をプロペラ25に伝達する状態である。後進状態は、プロペラ25において後向きの推進力を発生させるようにエンジン21の駆動力をプロペラ25に伝達する状態である。ニュートラル状態は、エンジン21の駆動力をプロペラ25に伝達しない状態である。
【0038】
図2に示すように、5つの船外機20の各々は、ステアリング装置28を備える。船外機20の各々は、ステアリング装置28により、船体10に対して、左右方向に回動される。これにより、プロペラ25の左右方向の向きが調整されるので、船体10を推進するための推進力の向きが調整される。
【0039】
(船体の構成)
図3に示すように、船体10は、船舶100(図1参照)を操縦するための操作を受け付ける操作部として、リモートコントローラ11と、ステアリングホイール12と、ジョイスティック13と、を含む。なお、ジョイスティック13は、特許請求の範囲の「操作部」の一例である。
【0040】
リモートコントローラ11は、レバーが設けられており、レバーが操作されることにより、プロペラ25の推進力(プロペラ25の回転数)の調整と、シフト状態(前進状態、後進状態、ニュートラル状態)の切り換えとが行われる。また、ステアリングホイール12は回動可能に構成されており、ステアリングホイール12が回動されることにより、プロペラ25の向きが調整される。これにより、リモートコントローラ11に対する操作とステアリングホイール12に対する操作との組み合わせにより、船舶100(図1参照)の並進移動(船体10(図1参照)の向きを維持したまま、前進、後進、横移動、斜め移動)や旋回等を行うことができる。
【0041】
図4に示すように、ジョイスティック13は、台座13aと、レバー部13bと、を含む。レバー部13bは、台座13aに対して傾倒および回動が可能なように取り付けられている。レバー部13bは、ユーザにより操作されていない状態では、中立位置に自動的に復帰するように、ばね等の付勢部材により付勢されている。なお、中立位置では、レバー部13bが直立した状態かつ回動されていない状態となっている。
【0042】
ジョイスティック13に対する操作は、レバー部13bを傾倒する操作と、レバー部13bを傾倒かつ回動する操作と、レバー部13bを回動する操作との3つに大別される。ジョイスティック13は、船舶100(図1参照)を並進移動(前進、後進、横移動(右移動、左移動)、斜め移動(斜め前移動、斜め後移動))させる操作、船舶100を旋回(右旋回、左旋回)させる操作、および、船舶100を回頭(右回頭、左回頭)させる操作を受け付けるように構成されている。
【0043】
レバー部13bを傾倒する操作は、船舶100(図1参照)を並進移動させるための操作である。すなわち、レバー部13bを傾倒する操作が行われると、レバー部13bの傾倒量に応じて、プロペラ25(図2参照)の推進力(プロペラ25の回転数)が調整されるとともに、レバー部13bの傾倒方向に応じて、プロペラ25における推進力の向き(前進状態または後進状態)およびプロペラ25の向きが調整される。
【0044】
レバー部13bを傾倒かつ回動する操作は、船舶100(図1参照)を旋回させるための操作である。すなわち、レバー部13bを傾倒かつ回動する操作が行われると、船舶100が旋回するように、レバー部13bの傾倒量に応じて、プロペラ25(図2参照)の推進力(プロペラ25の回転数)が調整されるとともに、レバー部13bの傾倒方向、回動方向および回動量に応じて、プロペラ25における推進力の向き(前進状態または後進状態)およびプロペラ25の向きが調整される。
【0045】
レバー部13bを回動する操作は、船舶100(図1参照)を回頭(船体10(図1参照)の向きをその場で変更)させるための操作である。すなわち、レバー部13bを回動する操作が行われると、船舶100が回頭するように、レバー部13bの回動量に応じて、プロペラ25(図2参照)の推進力(プロペラ25の回転数)が調整されるとともに、レバー部13bの回動方向に応じて、プロペラ25の向きが調整される。なお、以下の説明において、説明の便宜上、「レバー部13bを傾倒する操作」を「ジョイスティック13を傾倒する操作」と呼ぶ場合がある。
【0046】
図3に示すように、船体10は、第1制御部14と、第2制御部15と、制御切換部16と、を備える。第1制御部14、第2制御部15および制御切換部16は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む回路基板である。なお、第2制御部15は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0047】
第1制御部14は、リモートコントローラ11およびステアリングホイール12に対する操作に基づいて、5つの船外機20を制御する。具体的には、第1制御部14は、リモートコントローラ11およびステアリングホイール12に対する操作に基づいて、5つの船外機20の各々の、プロペラ25の推進力(プロペラ25の回転数)の調整、シフト状態の切り換え、および、プロペラ25の向きの調整のために、それぞれ、スロットルアクチュエータ26、ステアリング装置28およびシフトアクチュエータ27を制御するように構成されている。
【0048】
また、第2制御部15は、ジョイスティック13に対する操作に基づいて、5つの船外機20を制御する。具体的には、第2制御部15は、ジョイスティック13に対する操作に基づいて、5つの船外機20の各々の、プロペラ25の推進力(プロペラ25の回転数)の調整、シフト状態の切り換え、および、プロペラ25の向きの調整のために、それぞれ、スロットルアクチュエータ26、ステアリング装置28およびシフトアクチュエータ27を制御するように構成されている。
【0049】
制御切換部16は、第1制御部14によって5つの船外機20が制御される状態と、第2制御部15によって5つの船外機20が制御される状態と、を切り換えるように構成されている。具体的には、図4に示すように、ジョイスティック13の台座13aには、ジョイスティックモードスイッチ13cが設けられている。制御切換部16は、ジョイスティックモードスイッチ13cが押下されることにより、第1制御部14によって、ジョイスティック13に対する操作を受け付ける、かつ、リモートコントローラ11およびステアリングホイール12に対する操作を受け付けない状態(ジョイスティックモード)と、ジョイスティック13に対する操作を受け付けない、かつ、リモートコントローラ11およびステアリングホイール12に対する操作を受け付ける状態と、を切り換えるように構成されている。
【0050】
(前進加速アシスト制御)
上述したように、船体10は、比較的大型の(質量の大きい)船体であるので、船舶100を前進させる際の加速性が比較的小さくなる(加速が比較的鈍くなる)。このため、何らかの方法により、船舶100を前進させる際の加速性を向上させたい。
【0051】
したがって、図5に示すように、本実施形態では、第2制御部15(図3参照)は、ジョイスティック13(図4参照)に対して船舶100を前進させる操作(ジョイスティック13に対して前方に傾倒する操作)が行われた場合に、5つの船外機20のうちの中央の1つの中央船外機20cの、プロペラ25(図2参照)における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている。なお、中央船外機20cは、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、ジョイスティック13に対して横移動させる操作が行われた場合にプロペラ25における後向きの推進力を発生させる船外機20である。また、中央船外機20cは、ジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合でも、後述する前進加速アシスト制御が行われる条件を満たさない限り用いられない。
【0052】
具体的には、図6(A)に示すように、後述する前進加速アシスト制御が行われる条件を満たさず、かつ、船舶100の前進時(ジョイスティック13が前方に傾倒されている状態)(以下、「通常の船舶100の前進時」と呼ぶ場合がある)において、5つの船外機20のうち、中央船外機20cがニュートラル状態で、かつ、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eが前進状態になるように5つの船外機20が制御されている。また、図6(B)に示すように、船舶100の斜め前移動時(ジョイスティック13が右斜め前方に傾倒されている状態)において、5つの船外機20のうち、中央船外機20cがニュートラル状態で、かつ、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eのうちの一方(図6(B)に示す例では、左舷船外機20a、20b)が前進状態で他方(図6(B)に示す例では、右舷船外機20d、20e)がニュートラル状態となるように5つの船外機20が制御されている。また、図6(C)に示すように、船舶100の横移動時(ジョイスティック13が右方に傾倒されている状態)において、5つの船外機20のうち、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eのうちの一方が前進状態で、かつ、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eのうちの他方と、中央船外機20cとが、後進状態となるように5つの船外機20が制御されている。
【0053】
すなわち、通常の船舶100の前進時および船舶100の斜め前移動時において、中央船外機20cはニュートラル状態である(プロペラ25における推進力が発生していない)。また、船舶100の横移動時において、中央船外機20cは後進状態である(プロペラ25における後向きの推進力が発生している)。なお、図6(B)および図6(C)では、斜め前移動および横移動が、それぞれ、右斜め前移動および右移動である例を示したが、斜め前移動および横移動が、それぞれ、左斜め前移動および左移動の場合は、図6(B)および図6(C)で示した例に対して左右が逆になる。
【0054】
また、図7および図8に示すように、通常の船舶100の前進時の状態(図7(A)および図8(A)の状態)と、船舶100の斜め前移動時の状態(図7(D)および図8(D)の状態)との間の状態(図7(B)、図7(C)、図8(B)および図8(D))においては、中央船外機20cがニュートラル状態で、かつ、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eのうちの両方が前進状態となるように5つの船外機20が制御されている。すなわち、本実施形態では、第2制御部15は、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの一方によって船舶100が斜め前移動している状態において、ジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、中央船外機20cを用いた後述する前進加速アシスト制御を行わずに、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの両方によって、船舶100を前進させるように制御するように構成されている。なお、図7および図8は、それぞれ、船舶100の斜め前移動時の状態から通常の船舶100の前進時の状態に変化する場合の5つの船外機20の状態、および、通常の船舶100の前進時の状態から船舶100の斜め前移動時の状態に変化する場合の5つの船外機20の状態を示している。
【0055】
このように、通常の船舶100の前進時の状態と斜め前移動時の状態との間の任意の状態が、左舷船外機20a、20bの推進力と右舷船外機20d、20eの推進力とのバランスを調整することにより実現されている。すなわち、左舷船外機20a、20bの推進力と右舷船外機20d、20eの推進力とのバランスを調整することによって、船舶100の左右のバランスが保たれている。しかしながら、中央船外機20cは、船舶100の左右のバランスを保つために、船舶100を前進させる操作が行われた場合の多くで、ニュートラル状態となっている。
【0056】
そこで、図5(A)および図5(B)に示すように、船舶100の前進時のうち、5つの船外機20の全てがニュートラル状態(ジョイスティック13が中立位置に位置する状態)から船舶100を前進させる場合(ジョイスティック13が前方に傾倒された場合)(前進加速アシスト制御が行われる条件)に限って、通常の船舶100の前進時および船舶100の斜め前移動時においてニュートラル状態であり、かつ、船舶100の横移動時において後進状態である中央船外機20cを前進状態にして、前進状態である左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの推進力をアシストするように、5つの船外機20が制御される。すなわち、本実施形態では、第2制御部15は、プロペラ25の推進力が発生していない状態において、ジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの両方に加えて、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央船外機20cによって、船舶100を前進させるように、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。なお、船外機20の全てがニュートラル状態から船舶100を前進させる場合には、左舷船外機20a、20bの推進力と右舷船外機20d、20eの推進力とが均等に発生するので、船舶100の左右のバランスは低下しにくい。
【0057】
なお、本実施形態では、第2制御部15(図3参照)は、プロペラ25(図2参照)における前向きの推進力を一時的に発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。詳細には、図5(A)、図5(B)に示すように、第2制御部15は、一時的に発生させたプロペラ25における前向きの推進力を所定の第1時間(たとえば、数秒間)だけ一定の状態(図5(B)の状態)で維持した後に推進力がゼロになるまで所定の第2時間(たとえば、数秒間~数十秒間)で(図5(B)、図5(C)および図5(C)に示すように)徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。また、図5(B)に示すように、第2制御部15は、一時的にプロペラ25における前向きの推進力を発生させるプロペラ25(中央船外機20cのプロペラ25)以外の複数のプロペラ25(左舷船外機20a、20b、および、右舷船外機20d、20eの各々のプロペラ25)の平均の推進力を第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。
【0058】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、ジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない船外機20のプロペラ25における前向きの推進力を発生させるように制御する前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いられない船外機20のプロペラ25における前向きの推進力によりアシストされることによって、船舶100を前進させる際の船舶100の加速性を向上させることができる。すなわち、船舶100を斜め前移動させる際に船舶100の左右のバランスを保つために用いない船外機20を、プロペラ25における前向きの推進力をアシストする船外機20として用いることができる。また、3つ以上の船外機20を備える構成において、少なくとも船舶100を斜め前移動させる際に一部の船外機20を用いないことによって船舶100の左右のバランスを保つことができるので、船舶100の左右のバランスを保ちつつ、船舶100を前進させる際の加速性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、3つ以上の船外機20は、左舷側に配置される左舷船外機20a、20bと、右舷側に配置される右舷船外機20d、20eと、左舷船外機20a、20bと右舷船外機20d、20eとの間に配置される中央船外機20cと、を含む。そして、第2制御部15は、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央船外機20cの、プロペラ25における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、船舶100を斜め前移動させる際に、中央船外機20cが用いられず、かつ、左舷船外機20a、20bと右舷船外機20d、20eとが用いられるので、少なくとも船舶100を斜め前移動させる際に、船舶100の左右のバランスを容易に保つことができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、プロペラ25における前向きの推進力を一時的に発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、船舶100の前進方向への加速が行われ一定の速度に達した後、不要になったプロペラ25における前向きの推進力のアシストを終了させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、ジョイスティック13に対して前方に傾倒する操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、ジョイスティック13を傾倒する方向と船舶100が移動する方向とが前方で一致しているので、前進加速アシスト制御を行うための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。また、ジョイスティック13は、船舶100を前進させる操作だけでなく、船舶100を斜め前移動させる操作も直感的に分かり易い状態で行うことができるので、船舶100を前進させる操作および船舶100を斜め前移動させる操作に関連して前進加速アシスト制御を行う構成における(特許請求の範囲の)「操作部」として、ジョイスティック13は特に有効である。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、船舶100が斜め前移動している状態においてジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行わないように制御するように構成されている。また、第2制御部15は、プロペラ25の推進力が発生していない状態においてジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、斜め前移動状態から前進状態に切り換わる場合のように、一部の船外機20を用いないことによって船舶100の左右のバランスを保つことに支障が生じる可能性がある場合に、プロペラ25における前向きの推進力のアシストを行わないことによって、一部の船外機20を用いないことによって船舶100の左右のバランスを保つことに支障が生じるのを抑止することができる。また、プロペラ25の推進力が発生していない状態から船舶100を前進させる場合のように、プロペラ25における前向きの推進力のアシストが特に必要な場合に、プロペラ25における前向きの推進力のアシストを効果的に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの一方によって船舶100が斜め前移動している状態において、ジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、中央船外機20cを用いた前進加速アシスト制御を行わずに、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの両方によって、船舶100を前進させるように制御するように構成されている。また、第2制御部15は、プロペラ25の推進力が発生していない状態において、ジョイスティック13に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの両方に加えて、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央船外機20cによって、船舶100を前進させるように、前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、斜め前移動状態から前進状態に切り換わる場合のように、一部の船外機20を用いないことによって船舶100の左右のバランスを保つことに支障が生じる可能性がある場合に、中央船外機20cを用いたプロペラ25における前向きの推進力のアシストを行わず、かつ、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの両方によって船舶100を前進させることによって、一部の船外機20を用いないことによって船舶100の左右のバランスを保つことに支障が生じるのを容易に抑止することができる。また、プロペラ25の推進力が発生していない状態から船舶100を前進させる場合のように、プロペラ25における前向きの推進力のアシストが特に必要な場合に、左舷船外機20a、20bおよび右舷船外機20d、20eの両方に対してさらに中央船外機20cが加わることによって、船舶100の左右方向の中央においてプロペラ25における前向きの推進力のアシストを船舶100の左右方向のバランスを低下させずに行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、一時的に発生させたプロペラ25における前向きの推進力を推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、プロペラ25における前向きの推進力のアシストを比較的滑らかに終了させることができるので、一時的に発生させた推進力が急激に変化する場合と比較して、船舶100の航行安定性を良好に保つことができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、一時的に発生させたプロペラ25における前向きの推進力を所定の第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、プロペラ25における前向きの推進力のアシストを終了する前に、船舶100が一定の速度に達するまで船舶100の前進方向への加速を十分に行いながら、船舶100の航行安定性を良好に保つことができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部15は、一時的にプロペラ25における前向きの推進力を発生させるプロペラ25以外の複数のプロペラ25の平均の推進力を第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、一時的にプロペラ25における前向きの推進力を発生させるプロペラ25以外の複数のプロペラ25の平均の推進力に合わせて、一時的に発生させるプロペラ25における前向きの推進力を適切な大きさにすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、3つ以上の船外機20の各々のプロペラ25は、エンジン21により駆動するように構成されている。これにより、エンジン21により駆動するプロペラ25を各々が含む3つ以上の船外機20を備える構成において、少なくとも船舶100を斜め前移動させる際に一部の船外機20を用いないことによって船舶100の左右のバランスを保ちつつ、船舶100を前進させる際の加速性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、操船システム110(船舶100)は、船舶100の左右方向に並ぶ5つの船外機20を備えている。そして、第2制御部15は、5つの船外機20のうちのジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いない中央の1つの船外機20(中央船外機20c)の、プロペラ25における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、5つの船外機20を備えるような大型の船舶100においては、プロペラ25における前向きの推進力のアシストがない場合、船舶100を前進させる際の加速性が特に小さくなるので、5つの船外機20を備える構成は、船舶100を前進させる際の加速性を向上させることが可能な構成に、効果的に適用することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、ジョイスティック13は、船舶100を前進および斜め前移動させる操作に加えて、船舶100を横移動させる操作も受け付けるように構成されている。そして、第2制御部15は、ジョイスティック13に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、ジョイスティック13に対して横移動させる操作が行われた場合にプロペラ25における後向きの推進力を発生させる船外機20の、プロペラ25における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている。これにより、船舶100を斜め前移動させる際に加えて、船舶100を横移動させる際にも、船舶100の左右のバランスを保つことができるとともに、船舶100を前進させる際に、船舶100を斜め前移動させる際に船舶100の左右のバランスを保つために用いず、かつ、船舶100を横移動させる際に船舶100のバランスを保つためにプロペラ25における後向きの推進力を発生させる船外機20を、プロペラ25における前向きの推進力をアシストする船外機20として用いることができる。
【0071】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0072】
たとえば、上記実施形態では、第2制御部15(制御部)が、ジョイスティック13(操作部)に対して船舶100を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、ジョイスティック13(操作部)に対して横移動させる操作が行われた場合にプロペラ25(推進力発生部)における後向きの推進力を発生させる船外機20(船舶推進装置)の、プロペラ25(推進力発生部)における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、操作部に対して船舶を斜め前移動させる操作が行われた場合には用いず、かつ、操作部に対して横移動させる操作が行われた場合に推進力発生部における後向きの推進力を発生させない船舶推進装置が、推進力発生部における前向きの推進力を発生させるように前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、5つの船外機20(船舶推進装置)を備える船舶100において、前進加速アシスト制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図9に示す第1変形例のように、船体210と3つの船外機20(船舶推進装置)とを備える船舶200において、前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよいし、図10に示す第2変形例のように、船体310と4つの船外機20(船舶推進装置)とを備える船舶300において、前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよいし、図11に示す第3変形例のように、船体410と6つの船外機20(船舶推進装置)とを備える船舶400において、前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよいし、図示しないが、7つ以上の船舶推進装置を備える船舶において、前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、3つ以上の船外機20(船舶推進装置)の各々のプロペラ25(推進力発生部)は、エンジン21により駆動するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3つ以上の船舶推進装置の各々の推進力発生部は、電動モータにより駆動するように構成されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、第2制御部15(制御部)が、一時的にプロペラ25(推進力発生部)における前向きの推進力を発生させるプロペラ25(推進力発生部)以外の複数のプロペラ25(推進力発生部)の平均の推進力を第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、一時的に推進力発生部における前向きの推進力を発生させる推進力発生部以外の複数の推進力発生部の平均の推進力以外の推進力を第1時間だけ一定の状態で維持した後に推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよい。また、制御部が、一時的に発生させた推進力を一定の状態で維持せずに、直ぐに推進力がゼロになるまで徐々に小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよい。また、制御部が、一時的に発生させた推進力を推進力がゼロになるまで直ぐに小さくするように前進加速アシスト制御を行うように構成されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、船舶100の前進時、斜め前移動時、等において、2つの左舷船舶推進装置(左舷船外機20a、20b)がセットで用いられるとともに、2つの右舷船舶推進装置(右舷船外機20d、20e)がセットで用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図12に示す第4変形例のように、2つの左舷船舶推進装置のうちの1つのみで用いられるとともに、2つの右舷船舶推進装置のうちの1つのみで用いられるように構成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第2制御部15(制御部)が、船舶100が斜め前移動している状態においてジョイスティック13(操作部)に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行わないように制御するとともに、第2制御部15(制御部)が、プロペラ25(推進力発生部)の推進力が発生していない状態においてジョイスティック13(操作部)に対して船舶100を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、船舶が斜め前移動している状態において操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行うように制御するように構成されていてもよいし、制御部が、推進力発生部の推進力が発生していない状態において操作部に対して船舶を前進させる操作が行われた場合に、前進加速アシスト制御を行わないように制御するように構成されていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「操作部」として「ジョイスティック」を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも船舶を前進および斜め前移動させる操作を受け付けることが可能であれば、特許請求の範囲の「操作部」として「ジョイスティック」以外の操作部を適用してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「船舶推進装置」として、「船外機」を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特許請求の範囲の「船舶推進装置」として、「船内機」や「船内外機」を適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10、210、310、410 船体
13 ジョイスティック(操作部)
15 第2制御部(制御部)
20 船外機(船舶推進装置)
20a、20b 左舷船外機(左舷船舶推進装置)
20c 中央船外機(中央船舶推進装置)
20d、20e 右舷船外機(右舷船舶推進装置)
25 プロペラ(推進力発生部)
100、200、300、400 船舶
110 操船システム
図1
図2
図3
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図6
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図12