(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190630
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20221219BHJP
H01L 33/14 20100101ALI20221219BHJP
H01S 5/32 20060101ALI20221219BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01S5/042 614
H01L33/14
H01S5/32
H01S5/343 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099064
(22)【出願日】2021-06-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、文部科学省、「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大矢 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】飯田 一喜
(72)【発明者】
【氏名】上山 智
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 勇
【テーマコード(参考)】
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
5F173AA23
5F173AF12
5F173AF78
5F173AG24
5F173AH22
5F173AJ04
5F173AJ13
5F173AP05
5F173AP13
5F173AP30
5F173AP62
5F173AR64
5F241AA24
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA67
5F241CA73
(57)【要約】
【課題】 p型のIII 族窒化物半導体の上にn型のIII 族窒化物半導体を成膜する場合に、p型のIII 族窒化物半導体を不活性化することを抑制する半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【解決手段】 半導体レーザー素子100の製造方法は、n型半導体層112の上に貫通孔120aを有するマスク120を形成する工程と、マスク120の貫通孔120aに露出するn型半導体層112の上に柱状半導体130を成長させる工程と、柱状半導体130と柱状半導体130との間の隙間を埋める埋込層140を形成する工程と、を有する。柱状半導体130を成長させる工程では、筒状p型半導体133を成長させる。埋込層140を形成する工程では、スパッタリングまたは蒸着により、柱状半導体130と柱状半導体130との間の隙間を埋めるn型の埋込層140を成長させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層を形成する工程と、
活性層を形成する工程と、
p型半導体層を形成する工程と、
トンネル接合部を形成する工程と、
第2のn型半導体層を形成する工程と、
を有し、
前記n型半導体層および前記活性層および前記p型半導体層および前記トンネル接合部および前記第2のn型半導体層は、
III 族窒化物半導体であり、
前記第2のn型半導体層を形成する工程では、
スパッタリングまたは蒸着により、n型のIII 族窒化物半導体を成長させること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法において、
前記n型半導体層の上に貫通孔を有するマスクを形成する工程と、
前記マスクの前記貫通孔に露出する前記n型半導体層の上に柱状半導体を成長させる工程と、
前記柱状半導体と前記柱状半導体との間の隙間を埋める埋込層を形成する工程と、
を有し、
前記柱状半導体を成長させる工程では、
p型のIII 族窒化物半導体を成長させ、
前記埋込層を形成する工程では、
スパッタリングまたは蒸着により、前記柱状半導体と前記柱状半導体との間の隙間を埋めるn型のIII 族窒化物半導体を成長させること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体発光素子の製造方法において、
前記p型のIII 族窒化物半導体をアニールするアニール工程を有し、
前記アニール工程の後に、
前記埋込層を形成する工程を実施すること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の半導体発光素子の製造方法において、
前記柱状半導体を成長させる工程では、
スパッタリングおよび蒸着とは異なる気相成長法により、前記柱状半導体をエピタキシャル成長させること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法において、
前記柱状半導体を成長させる工程では、
六角筒形状の活性層を形成し、
前記活性層の上に六角筒形状の前記p型のIII 族窒化物半導体を形成すること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体発光素子の製造方法において、
前記柱状半導体を成長させる工程では、
前記p型のIII 族窒化物半導体の上に六角筒形状のトンネル接合部を形成し、
前記トンネル接合部は、
前記p型のIII 族窒化物半導体と前記埋込層との間の位置に配置されていること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
III 族窒化物半導体層の上に貫通孔を有するマスクを形成する工程と、
前記マスクの前記貫通孔に露出する前記III 族窒化物半導体層の上に柱状半導体を成長させる工程と、
前記柱状半導体と前記柱状半導体との間の隙間を埋める埋込層を形成する工程と、
を有し、
前記柱状半導体を成長させる工程では、
p型のIII 族窒化物半導体を成長させ、
前記埋込層を形成する工程では、
スパッタリングまたは蒸着により、前記柱状半導体と前記柱状半導体との間の隙間を埋めるn型のIII 族窒化物半導体を成長させること
を含む半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、活性層において正孔と電子とが再結合することにより発光する。従来、活性層として平坦なシート状の井戸層が用いられてきた。近年、柱状などの3次元的構造を有する活性層について研究されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロッド120を有するロッド型発光素子が開示されている。ロッド120とロッド120との間の隙間をITO、IZO、ZnO、AZOのいずれかで埋め込むこととしている(特許文献1の段落[0052])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-332650号公報
【特許文献2】特開2020-77817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献2には、柱状半導体130の側面にトンネル接合を設ける技術が開示されている(特許文献2の段落[0063]-[0065])。p+層271とn+層272と備えるトンネル接合があるため、埋込層140をn型半導体層とすることができる旨が開示されている。
【0006】
特許文献2の筒状p型半導体133は、p型のIII 族窒化物半導体である。p型のIII 族窒化物半導体を活性化するためには、アニールを実施する。ここで、埋込層140を形成した後にアニールを実施する場合には、埋込層140が邪魔になりH2 が抜け出すことが困難である。一方、埋込層140を形成する前にアニールを実施する場合には、H2 が抜け出してp型のIII 族窒化物半導体を活性化することができる。しかし、n型の埋込層140を形成する際に、NH3 またはキャリアガスのH2 がp型のIII 族窒化物半導体に供給されることとなる。これにより、p型のIII 族窒化物半導体は不活性化してしまう。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、p型のIII 族窒化物半導体の上にn型のIII 族窒化物半導体を成膜する場合に、p型のIII 族窒化物半導体を不活性化することを抑制する半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様における半導体発光素子の製造方法は、n型半導体層を形成する工程と、活性層を形成する工程と、p型半導体層を形成する工程と、トンネル接合部を形成する工程と、第2のn型半導体層を形成する工程と、を有する。n型半導体層および活性層およびp型半導体層およびトンネル接合部および第2のn型半導体層は、III 族窒化物半導体である。第2のn型半導体層を形成する工程では、スパッタリングまたは蒸着により、n型のIII 族窒化物半導体を成長させる。
【0009】
この半導体発光素子の製造方法においては、第2のn型半導体層を形成する工程では、n型のIII 族窒化物半導体をスパッタリングまたは蒸着により成長させる。このため、活性化済みのp型のIII 族窒化物半導体を不活性化することを抑制することができる。このため、この製造方法により製造された半導体発光素子の電気抵抗は従来に比べて小さい。
【発明の効果】
【0010】
本明細書では、p型のIII 族窒化物半導体の上にn型のIII 族窒化物半導体を成膜する場合に、p型のIII 族窒化物半導体を不活性化することを抑制する半導体発光素子の製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の概略構成図である。
【
図2】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の柱状半導体130の内部構造を示す図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面を示す第1の断面図である。
【
図5】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その1)である。
【
図6】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その2)である。
【
図7】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その3)である。
【
図8】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その4)である。
【
図9】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その5)である。
【
図10】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その6)である。
【
図11】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その7)である。
【
図12】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その8)である。
【
図13】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その9)である。
【
図14】第1の実施形態の半導体レーザー素子100の製造方法を説明するための図(その10)である。
【
図15】第2の実施形態のLED200の概略構成図である。
【
図16】埋込層をスパッタリングにより成膜したサンプル1の発光状態を示す写真である。
【
図17】埋込層をMOCVD法により成膜したサンプル2の発光状態を示す写真である。
【
図18】駆動電流と駆動電圧との間の電流電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、半導体発光素子を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。本明細書において、半導体発光素子は、LEDとレーザーダイオード(LD)とを含む。また、後述する半導体発光素子の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってもよい場合がある。そして、それぞれの図における各層の厚みの比は、概念的に示したものであり、実際の厚みの比を示しているわけではない。
【0013】
(第1の実施形態)
1.半導体発光素子
図1は、第1の実施形態の半導体レーザー素子100の概略構成図である。
図2は、第1の実施形態の半導体レーザー素子100の概略構成を示す斜視図である。半導体レーザー素子100は、
図2の矢印A1の向きに光を往復させてレーザーを発振させるレーザーダイオード(LD)である。
図2に示すように、柱状半導体130は、正方格子状に配置されている。また、後述するように、半導体レーザー素子100は、3次元形状の活性層を有する。
【0014】
半導体レーザー素子100は、基板110と、マスク120と、柱状半導体130と、埋込層140と、絶縁膜150と、カソード電極N1と、アノード電極P1と、パッド電極P2と、を有する。
【0015】
基板110は、マスク120と、柱状半導体130と、埋込層140と、絶縁膜150と、アノード電極P1と、パッド電極P2と、を支持するためのものである。基板110は、導電性基材111と、n型半導体層112と、を有する。導電性基材111は、n型半導体層112と、それより上層の半導体層等と、を支持する。導電性基材111は、例えば、GaN基板である。n型半導体層112は、柱状半導体130を成長させるための下地層である。
【0016】
マスク120は、表面から半導体がエピタキシャル成長しない材料である。後述するように、マスク120には、貫通孔があいている。マスク120は、透明絶縁膜であるとよい。この場合には、マスク120は、光をほとんど吸収しない。電流は、マスク120を介さず、柱状半導体130に好適に流れる。マスク120の材質として例えば、SiO2 、SiNx、Al2 O3 が挙げられる。
【0017】
柱状半導体130は、柱状のIII 族窒化物半導体である。柱状半導体130は、マスク120の開口部に露出する半導体の表面から選択成長させた半導体である。柱状半導体130は、六角柱形状をしている。柱状半導体130における中心軸方向に垂直な断面は、正六角形または扁平形状の六角形である。
【0018】
埋込層140は、柱状半導体130と柱状半導体130との間の隙間を埋め込むための層である。埋込層140は、柱状半導体130を覆っている。埋込層140の材料は、例えば、n型GaNである。埋込層140のSi濃度は、例えば、1×1017cm-3以上1×1021cm-3以下である。埋込層140の膜厚は、例えば、0.5μm以上10μm以下である。好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。さらに好ましくは、1μm以上3μm以下である。
【0019】
絶縁膜150は、リッジ形成時に柱状半導体130がエッチングされることにより露出したn型半導体層とパッド電極P2とを絶縁するための膜である。また、絶縁膜150は、基板110とパッド電極P2とを絶縁する。そのため、絶縁膜150は、基板110の上面と埋込層140等の半導体層の周囲とを覆っている。
【0020】
カソード電極N1は、基板110の上に形成されている。
【0021】
アノード電極P1は、埋込層140の上に形成されている。アノード電極P1は、埋込層140以外のその他の半導体に形成されていてもよい。
【0022】
パッド電極P2は、アノード電極P1の上に形成されている。
【0023】
2.柱状半導体
2-1.柱状半導体の配列
図1および
図2に示すように、複数の柱状半導体130は、一定のピッチ間隔で周期的に配置されている。
【0024】
柱状半導体130の高さは、例えば、0.25μm以上5μm以下である。柱状半導体130の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。ここで、径とは、中心軸方向に垂直な断面における六角形の向かい合う頂点間の距離である。六角形に長辺がある場合には、長辺方向の距離である。柱状半導体130の第1のピッチ間隔J1は、例えば、0.27μm以上5μm以下である。これらの数値は例示であり、上記以外の数値であってもよい。
【0025】
2-2.柱状半導体の内部構造
図3は、第1の実施形態の半導体レーザー素子100の柱状半導体130の内部構造を示す図である。n型半導体層112の一部は、マスク120の貫通孔120aに露出している。n型半導体層112は、例えば、n型GaN層またはn型AlGaN層である。これらは例示であり、上記以外の構造であってもよい。
【0026】
柱状半導体130は、柱状n型半導体131と、活性層132と、筒状p型半導体133と、トンネル接合部134と、を有する。
【0027】
柱状n型半導体131の側面は、m面である。または、m面に近い面である。m面は非極性面である。そのため、活性層132において、ピエゾ分極による発光効率の低下がほとんどない。
【0028】
柱状n型半導体131は、六角柱形状の六角柱部である。六角柱の側面はm面である。六角柱の上端面はc面である。この六角柱の軸方向に垂直な断面は、正六角形または扁平形状の六角形である。柱状n型半導体131は、第1面131aと第2面131bとを有する。第1面131aはマスク120の貫通孔120aの露出面の形状である。第2面131bは六角形である。第2面131bは、第1面131aの反対側の面である。第1面131aは、n型半導体層112と対面しているとともに接触している。第2面131bは、活性層132と対面しているとともに接触している。柱状n型半導体131は、マスク120の貫通孔120aに露出しているn型半導体層112を起点に柱状に選択成長させた半導体層である。柱状n型半導体131は、実際には、横方向にも成長する。そのため、柱状n型半導体131の太さは、マスク120の貫通孔120aの開口幅よりもやや大きい。柱状n型半導体131は、例えば、n型GaN層である。
【0029】
活性層132は、柱状n型半導体131を覆っている。活性層132は、六角柱形状の柱状n型半導体131の外周に沿って形成されている。そのため、活性層132は、六角筒形状を備える。活性層132は、例えば、1個以上5個以下の井戸層と、井戸層を挟む障壁層と、を有する。基板110の板面はc面である。活性層132の井戸層はm面に沿って形成されている。このため、活性層132の井戸層は、基板110の板面にほぼ垂直に配置されている。例えば、井戸層はInGaN層であり、障壁層はAlGaInN層である。
【0030】
筒状p型半導体133は、六角筒形状を備える活性層132の外周に沿って形成されている。そのため、筒状p型半導体133は、六角筒形状を備える。筒状p型半導体133は、活性層132と直接に接触するが、柱状n型半導体131と直接には接触していない。また、筒状p型半導体133は、トンネル接合部134と接触している。筒状p型半導体133は、例えば、p型GaN層である。
【0031】
トンネル接合部134は、筒状p型半導体133の外周に沿って形成されている。トンネル接合部134は、筒状p型半導体133と埋込層140との間の位置に配置されている。トンネル接合部134は、六角筒形状を備える。トンネル接合部134は、p+層134aとn+層134bとを有する。p+層134aは内側の層であり、n+層134bは外側の層である。p+層134aは筒状p型半導体133に接触している。n+層134bは埋込層140に接触している。
【0032】
p+層134aの膜厚は、1nm以上50nm以下である。好ましくは、1nm以上25nm以下である。n+層134bの膜厚は、1nm以上50nm以下である。好ましくは、1nm以上25nm以下である。p+層134aのMg濃度は1×1020cm-3以上50×1020cm-3以下である。n+層134bのSi濃度は1×1020cm-3以上50×1020cm-3以下である。
【0033】
2-3.断面形状
図4は、
図3のIV-IV断面を示す断面図である。
図4は、柱状半導体130における基板110の板面に平行な断面を示している。
図4に示すように、柱状半導体130における軸方向に垂直な断面の形状は、正六角形である。そして、六角柱形状の柱状半導体130の内側から、柱状n型半導体131と、活性層132と、筒状p型半導体133と、が配置されている。
【0034】
3.半導体発光素子の製造方法
3-1.基板準備工程
図5に示すように、基板110を準備する。基板110は、導電性基材111の上に、n型半導体層112の順で積層したものである。
【0035】
3-2.マスク形成工程
図6に示すように、基板110のn型半導体層112の上にマスク120を形成する。つまり、III 族窒化物半導体層の上に貫通孔120aを有するマスク120を形成する。このために、スパッタリングまたはCVDを用いればよい。
【0036】
図7に示すように、マスク120にn型半導体層112を露出させる複数の貫通孔120aを形成する。そのために、フォトリソグラフィまたはナノインプリント技術を用いればよい。貫通孔120aの径は、例えば、100nm以上500nm以下である。
【0037】
図8は、マスク120の貫通孔120aの配列を示す図である。
図8は、基板110の板面に垂直な方向から基板110を視た図である。
図8には、参考のために、柱状半導体130の形状が破線で描かれている。
図8に示すように、マスク120の貫通孔120aが円形で正方格子状に配列されている。マスク120の開口部の貫通孔120aは基板110およびn型半導体層112に対して平面格子状に配置されている。格子配列は結晶構造制限定理に示されている配列が好ましい。平面格子は、例えば、斜方格子、六角格子、正方格子、矩形格子、平行体格子である。III 族窒化物半導体はウルツ鉱構造である。このため、六角格子、正方格子、矩形格子が好ましい。
【0038】
なお、マスク120の貫通孔120aの形状を変えることで、柱状半導体130の形状を制御することができる。貫通孔120aの形状が円形の場合には、正六角形に近い断面形状を有する柱状半導体130を形成することができる。貫通孔120aの形状がオーバル形状の場合には、扁平形状に近い断面形状を有する柱状半導体130を形成することができる。
【0039】
3-3.柱状半導体形成工程
図9に示すように、マスク120の貫通孔120aの下に露出しているn型半導体層112を起点にして、六角柱形状の柱状半導体130を選択的にエピタキシャル成長させる。そのために、公知の選択成長の技術を用いればよい。このように半導体層を選択成長させる場合に、m面がファセットとして表出しやすい。
【0040】
例えば、MOCVD法により半導体をエピタキシャル成長させる。基板温度は、例えば、1100℃以上1200℃以下である。炉内の圧力は、例えば、1kPa以上100kPa以下である。
【0041】
前述したように、マスク120の貫通孔120aが円形形状であるため、断面が正六角形に近い六角柱形状の柱状n型半導体131が成長する。次に、柱状n型半導体131の上に六角筒形状の活性層132を成長させる。次に、活性層132の上に六角筒形状の筒状p型半導体133を成長させる。次に、筒状p型半導体133の上に六角筒形状のトンネル接合部134を形成する。このようにして、柱状n型半導体131、活性層132、筒状p型半導体133、トンネル接合部134を形成する。
【0042】
柱状半導体130を成長させるために、例えば、MOCVD炉の内部で半導体を成膜する。
【0043】
3-4.アニール工程
次に、アニールを実施することにより筒状p型半導体133を活性化させる。筒状p型半導体133の上にはトンネル接合部134が形成されているが、その膜厚は十分に薄い。したがって、トンネル接合部134があるにもかかわらず、アニールにより、筒状p型半導体133からH2 が抜け出ることができる。この段階において、筒状p型半導体133は十分に活性化している。このアニール工程の後に、後述する埋込層形成工程を実施する。このアニール工程はMOCVD炉内またはMOCVD炉から取り出した後に別の装置の内部で実施してもよい。
【0044】
3-5.埋込層形成工程
図10に示すように、柱状半導体130と柱状半導体130との間の隙間を埋める埋込層140を形成する。このために、半導体を成長させた基板110をMOCVD炉から取り出す。取り出した基板110をスパッタリング装置の内部に入れる。そして、スパッタリングにより、柱状半導体130同士の隙間に埋込層140を形成する。スパッタリングの際に、Siを添加して、n型のIII 族窒化物半導体を成長させる。
【0045】
スパッタリングでは、NH3 およびH2 は不要である。このため、活性化させた筒状p型半導体133が不活性化するおそれはない。
【0046】
3-6.アノード電極形成工程およびリッジ部形成工程
図11に示すように、埋込層140の上にアノード電極P1を形成する。また、リッジ部を形成する。すなわち、
図11に示すように、3列の柱状半導体130を残し、その外側の柱状半導体130を除去する。
【0047】
3-7.絶縁膜形成工程
図12に示すように、絶縁膜150を形成する。基板110のn型半導体層112の上と、埋込層140の周囲と、に絶縁膜150を形成する。
【0048】
3-8.パッド電極形成工程
図13に示すように、アノード電極P1の上にパッド電極P2を形成する。絶縁膜150を介して埋込層140の周囲にパッド電極P2を形成する。
【0049】
3-9.研磨工程
図14に示すように、基板110における半導体形成面の反対側の面を研磨する。これにより、基板110の導電性基材111の厚みが薄くなる。
【0050】
3-10.カソード電極形成工程
次に、基板110における半導体形成面の反対側にカソード電極N1を形成する。
【0051】
3-11.その他の工程
その他の工程を実施してもよい。
【0052】
4.第1の実施形態の効果
第1の実施形態では、n型半導体である埋込層140をスパッタリングにより形成する。このため、p型半導体を形成した後にNH3 およびH2 をp型半導体の表面に供給するおそれがない。つまり、水素原子をp型半導体に供給することにより、p型半導体が不活性化するおそれがない。したがって、n型半導体で埋め込んだ埋込層140は十分に活性化している。このように、第1の実施形態では、水素原子を含むガスを筒状p型半導体133に供給することなく、柱状半導体130同士の隙間をn型III 族窒化物半導体により埋めることができる。
【0053】
5.変形例
5-1.蒸着
埋込層140を蒸着により形成してもよい。
【0054】
5-2.スパッタリングのタイミング
トンネル接合部134のp+層134aを形成した後に、n+層134bおよび埋込層140をスパッタリングにより形成してもよい。
【0055】
5-3.気相成長法
柱状半導体130を成長させる工程では、MOCVD法以外の気相成長法を用いてもよい。その場合には、スパッタリングおよび蒸着とは異なる気相成長法により、柱状半導体をエピタキシャル成長させる。
【0056】
5-4.導電性酸化物層
埋込層140とアノード電極P1との間に導電性酸化物層を配置してもよい。導電性酸化物層は、例えば、ITO、IZO等の透明導電性酸化物からなる層であるとよい。また、アノード電極P1が導電性酸化物層であってもよい。
【0057】
5-5.柱状半導体の配列および凸形状部の配列
複数の柱状半導体130の配列がハニカム状であってもよい。ただし、半導体レーザー素子100をレーザー素子として用いる場合には、複数の柱状半導体130の配列は正方格子であるとよい。コヒーレント光を発生しやすいからである。
【0058】
5-6.マスクパターン
マスクの開口部の形状は円形以外であってもよい。例えば、六角形である。この場合であっても、柱状n型半導体131は六角柱形状に成長する。
【0059】
5-7.柱状半導体の組成
第1の実施形態では、柱状n型半導体131はn型GaN層であり、活性層132の井戸層はInGaN層であり、活性層132の障壁層はAlGaN層であり、筒状p型半導体133はp型GaN層である。これらは例示であり、その他のIII 族窒化物半導体であってもよい。
【0060】
5-8.領域
図3に示すように、半導体レーザー素子100がレーザーダイオードである場合には、半導体レーザー素子100は導波領域R1と伝導領域R2とを有する。導波領域R1は、レーザー発振および活性層132へのキャリアの注入に用いられる領域である。伝導領域R2は、電流を流すとともに光を閉じ込める領域である。
【0061】
5-9.積層構造
第1の実施形態では、積層順によらずp型半導体を活性化することができる。このため、p型半導体の柱状半導体を形成してもよい。この場合には、平坦なn型半導体層を形成し、その上に平坦なトンネル結合部を形成し、その上に平坦なp型半導体を形成し、マスクを用いて、その上に柱状のp型半導体と筒状の活性層を形成する。埋込層としてn型半導体を形成すればよい。この場合の半導体の形成順序は、第1の実施形態と逆になる。
【0062】
5-10.反射層
半導体レーザー素子100は、基板110におけるマスク層120の反対側の裏面に、反射層を有していてもよい。
【0063】
5-11.電子障壁層
活性層132の外側に電子障壁層を形成してもよい。電子障壁層の材質は、例えば、AlGaInNである。
【0064】
5-12.カソード電極の位置
カソード電極は、基板110のn型半導体層112の上に形成されていてもよい。その場合には、導電性基材111の代わりに絶縁性基材を用いてよい。基材は、例えば、サファイア基板である。
【0065】
5-13.矩形格子
柱状半導体130は、正方格子の代わりに矩形格子の格子点の位置に配置されていてもよい。
【0066】
5-14.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0067】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。
【0068】
1.LED
図15は、第2の実施形態のLED200の概略構成図である。LED200は、基板210と、n型半導体層220と、発光層230と、p型半導体層240と、トンネル接合部250と、n型半導体層260と、アノード電極P3と、カソード電極N3と、を有する。
【0069】
基板210の側から順に、基板210と、n型半導体層220と、発光層230と、p型半導体層240と、トンネル接合部250と、n型半導体層260と、が積層されている。
【0070】
n型半導体層220は、カソード電極N3に接触している。n型半導体層260は、アノード電極P3に接触している。
【0071】
2.LEDの製造方法
トンネル接合部250をMOCVD法により製造した後に、n型半導体層260をスパッタリングにより製造すればよい。
【0072】
この製造方法は、n型半導体層を形成する工程と、n型半導体層の上に活性層を形成する工程と、活性層の上にp型半導体層を形成する工程と、p型半導体層の上にトンネル接合部を形成する工程と、トンネル接合部の上に第2のn型半導体層を形成する工程と、を有する。n型半導体層および活性層およびp型半導体層およびトンネル接合部および第2のn型半導体層は、III 族窒化物半導体である。第2のn型半導体層を形成する工程では、スパッタリングまたは蒸着により、n型のIII 族窒化物半導体を成長させる。
【0073】
3.第2の実施形態の効果
第1の実施形態と同様に、p型半導体層240が不活性化することを抑制することができる。
【0074】
4.変形例
第1の実施形態の変形例と組み合わせてよい。
【0075】
(実験)
1.サンプルの作製
LEDを製造した。サンプル1は、n型半導体層220からトンネル接合部250までをMOCVD法により成長させ、n型半導体層260をスパッタリングにより製造した。サンプル2は、n型半導体層220からn型半導体層260までをMOCVD法により製造した。それ以外の半導体層等の構造は、サンプル1およびサンプル2で共通である。
【0076】
2.発光パターン
図16は、埋込層をスパッタリングにより成膜したサンプル1の発光状態を示す写真である。
図16に示すように、スパッタリングにより成膜した埋込層を有する場合には、面内に均一に発光する。
【0077】
図17は、埋込層をMOCVD法により成膜したサンプル2の発光状態を示す写真である。
図17に示すように、MOCVD法により成膜した埋込層を有する場合には、輝点がまばらに存在し、均一に発光しない。
【0078】
3.駆動電圧
図18は、駆動電流と駆動電圧との間の電流電圧特性を示すグラフである。
図18に示すように、スパッタリングにより成膜した埋込層140を有するサンプルの駆動電圧Vfは、MOCVD法により成膜した埋込層を有するサンプルの駆動電圧Vfよりも1V程度低い。これは、スパッタリングにより形成したn型半導体層260の下のp型半導体が活性化しているのに対して、MOCVD法により成膜したn型半導体層260の下のp型半導体が不活性化しているためであると考えられる。
【0079】
(付記)
第1の態様における半導体発光素子の製造方法は、n型半導体層を形成する工程と、活性層を形成する工程と、p型半導体層を形成する工程と、トンネル接合部を形成する工程と、第2のn型半導体層を形成する工程と、を有する。n型半導体層および活性層およびp型半導体層およびトンネル接合部および第2のn型半導体層は、III 族窒化物半導体である。第2のn型半導体層を形成する工程では、スパッタリングまたは蒸着により、n型のIII 族窒化物半導体を成長させる。
【0080】
第2の態様における半導体発光素子の製造方法は、n型半導体層の上に貫通孔を有するマスクを形成する工程と、マスクの貫通孔に露出するn型半導体層の上に柱状半導体を成長させる工程と、柱状半導体と柱状半導体との間の隙間を埋める埋込層を形成する工程と、を有する。柱状半導体を成長させる工程では、p型のIII 族窒化物半導体を成長させる。埋込層を形成する工程では、スパッタリングまたは蒸着により、柱状半導体と柱状半導体との間の隙間を埋めるn型のIII 族窒化物半導体を成長させる。
【0081】
第3の態様における半導体発光素子の製造方法は、p型のIII 族窒化物半導体をアニールするアニール工程を有する。アニール工程の後に、埋込層を形成する工程を実施する。
【0082】
第4の態様における半導体発光素子の製造方法においては、柱状半導体を成長させる工程では、スパッタリングおよび蒸着とは異なる気相成長法により、柱状半導体をエピタキシャル成長させる。
【0083】
第5の態様における半導体発光素子の製造方法においては、柱状半導体を成長させる工程では、六角筒形状の活性層を形成し、活性層の上に六角筒形状のp型のIII 族窒化物半導体を形成する。
【0084】
第6の態様における半導体発光素子の製造方法においては、柱状半導体を成長させる工程では、p型のIII 族窒化物半導体の上に六角筒形状のトンネル接合部を形成する。トンネル接合部は、p型のIII 族窒化物半導体と埋込層との間の位置に配置されている。
【0085】
第7の態様における半導体発光素子の製造方法は、III 族窒化物半導体層の上に貫通孔を有するマスクを形成する工程と、マスクの貫通孔に露出するIII 族窒化物半導体層の上に柱状半導体を成長させる工程と、柱状半導体と柱状半導体との間の隙間を埋める埋込層を形成する工程と、を有する。柱状半導体を成長させる工程では、p型のIII 族窒化物半導体を成長させる。埋込層を形成する工程では、スパッタリングまたは蒸着により、柱状半導体と柱状半導体との間の隙間を埋めるn型のIII 族窒化物半導体を成長させる。
【符号の説明】
【0086】
100…半導体レーザー素子
110…基板
111…導電性基材
112…n型半導体層
120…マスク
130…柱状半導体
131…柱状n型半導体
132…活性層
133…筒状p型半導体
134…トンネル接合部
140…埋込層
N1…カソード電極
P1…アノード電極