(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190631
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 11/24 20060101AFI20221219BHJP
E01C 7/32 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
E01C11/24
E01C7/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099065
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】長野 龍平
(72)【発明者】
【氏名】杉本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】十河 潔司
(72)【発明者】
【氏名】日野 良太
(72)【発明者】
【氏名】光谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀夫
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AA03
2D051AA05
2D051AD07
2D051AF01
2D051AG01
(57)【要約】
【課題】降雨対策を可能としつつ継続的な暑熱対策も可能な、舗装構造を提供する。
【解決手段】湿潤舗装領域は、路面を形成する湿潤表層3と、前記湿潤表層の下方に設けられるとともに毛細管現象によって該湿潤表層に水分を供給可能な揚水層31と、を少なくとも有し、前記透水舗装領域は、路面を形成する透水表層2と、前記透水表層の下方に設けられるとともに該透水表層を浸透した水分を貯留することが可能な透水路盤層21と、を少なくとも有し、前記透水路盤層は接続部を介して前記揚水層と接続され、前記透水路盤層に貯留された水分は前記接続部を介して前記揚水層へと導水可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤舗装領域と透水舗装領域とを少なくとも有する舗装構造であって、
前記湿潤舗装領域は、
路面を形成する湿潤表層と、
前記湿潤表層の下方に設けられるとともに毛細管現象によって該湿潤表層に水分を供給可能な揚水層と、を少なくとも有し、
前記透水舗装領域は、
路面を形成する透水表層と、
前記透水表層の下方に設けられるとともに該透水表層を浸透した水分を貯留することが可能な透水路盤層と、を少なくとも有し、
前記透水路盤層は接続部を介して前記揚水層と接続され、
前記透水路盤層に貯留された水分は前記接続部を介して前記揚水層へと導水可能である
ことを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
前記透水路盤層には、
前記透水路盤層に貯留した水分が路床へ浸透することを可能にした透水領域と、
前記透水路盤層に貯留した水分が路床へ浸透することを不可能にした不透水領域と、が形成されている
請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
前記不透水領域における前記透水路盤層の底面の高さは、前記透水領域における前記透水路盤層の底面の高さよりも低い
請求項2に記載の舗装構造。
【請求項4】
前記接続部は、前記透水路盤層に貯留された水分を前記揚水層へと導水可能な導水部材を備え、
前記導水部材は、該導水部材の一方が前記揚水層に接続され、該導水部材の他方が前記透水路盤層の前記不透水領域に接続されている
請求項2又は3に記載の舗装構造。
【請求項5】
前記接続部は、前記透水路盤層に貯留された水分を前記揚水層へと導水可能な導水部材を備え、
前記導水部材は、
一方が前記揚水層に接続されて他方が前記透水路盤層の前記不透水領域に接続される底部導水部材と、
前記底部導水部材よりも上方に設けられるとともに、一方が前記揚水層に接続されて他方が前記透水路盤層の前記不透水領域に接続される上部導水部材と、から構成される
請求項2又は3に記載の舗装構造。
【請求項6】
前記上部導水部材の導水断面積は、前記底部導水部材の導水断面積よりも大きい
請求項5に記載の舗装構造。
【請求項7】
前記上部導水部材の流入口を閉塞可能な流入口閉塞手段を有し、
前記流入口閉塞手段は、前記透水路盤層における水分の貯留量に応じて、前記上部導水部材の流入口を開閉可能である
請求項5又は6に記載の舗装構造。
【請求項8】
前記導水部材には、栄養塩類を除去可能な水処理材が備えられている
請求項4乃至7のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項9】
前記導水部材は、地上部から出入りすることが可能な人孔又は側溝の中において交換可能に設置されている
請求項4乃至8のいずれかに記載の舗装構造。
【請求項10】
前記湿潤表層の下方には、該湿潤表層に水分を供給可能な導水シートと、該導水シートに水分を供給可能な給水配管が設けられている
請求項1乃至9のいずれかに記載の舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨対策を可能としつつ暑熱対策も可能な、舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポーラスアスファルト舗装の空隙に細粒材を充填し、舗装の下面に供給した水の毛細管現象により、路面を湿潤状態に保って水分の蒸発とともに路面温度の上昇を抑制する湿潤舗装がある。また、ポーラスアスファルト舗装の空隙を介して降雨時の雨水を路盤、路床へと浸透させる透水性舗装がある。そしてこれらは、互いに舗装構造や機能が異なる。
【0003】
上記したような、互いに舗装構造や機能の異なる湿潤舗装と透水性舗装とを、コンポジットしようとした発明がいくつか開示されている。例えば、特許文献1には、当該文献の
図1に示されるように、一方を開粒度アスファルトによる透水性舗装、他方を開粒度アスファルトの空隙に保水性セメントミルクを充填した保水性舗装から構成し、その下層構造を共通にして、ソイルセメントが配合された基層、その下層には保水性支柱、最下層には遮水層を設けた発明が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、当該文献の
図1に示されるように、不透水層の上層に骨材層、吸水材層を構成し、その上部に保水性ブロックと透水性ブロックとを織り交ぜて敷設した発明が開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、当該文献の
図1に示されるように、表層に保水性領域と透水性領域とを形成し、当該表層の下層に保水拡散層、さらにその下層に路盤を構成した発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-166207号公報
【特許文献2】特開2006-238447号公報
【特許文献3】特開2012-207433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したような従来の舗装構造は、表層部分に保水機能を有する領域と、透水機能を有する領域とを併せて備えているものの、表層より下の下層の舗装構造が共通となっている。したがって、特に、表層部分から透水させた雨水を十分かつスムーズに貯留させたり、豪雨時における大量の雨水を路床へと浸透させることができないという問題等を有しており、暑熱緩和効果が継続して得られない可能性が高い。
【0008】
すなわち、特許文献1に開示された発明においては、透水性舗装の基層が保水性舗装の基層と同じく毛細管作用を持たせたものであるため、豪雨時に十分な透水機能が得られない可能性がある。さらに、透水性舗装の下方にも保水性舗装と同様に遮水層を設けているので、貯留された雨水が無くなるまでに相当の時間を要し、再び豪雨があった際に雨水の貯留容量が少なく、透水性舗装の表面で雨水が表面排水されるといった問題がある。
【0009】
また特許文献2に開示された発明においても、透水性ブロックも保水性ブロックと同じく水分を補給するための吸水材層の上に敷設されているため、豪雨時に十分な透水機能が得られない可能性がある。さらに、透水性ブロックの下方にも保水性ブロックと同様に不透水層を設けているので、貯留された雨水が無くなるまでに相当の時間を要し、再び豪雨があった際に雨水の貯留容量が少なく、透水ブロックの表面で雨水が表面排水されるといった問題がある。
【0010】
また特許文献3に開示された発明においては、透水性領域も保水性領域と同じく雨水を保水するための保水拡散層の上に舗設されているため、豪雨時に十分な透水機能が得られない可能性がある。また、保水拡散層は
図1等に示されるように、非常に薄い層で構成されており、長時間、保水性領域へ水分を補給できるほどの十分な雨水の貯留量が確保されていない。
【0011】
そこで本発明は、上記した従来技術の種々の問題点に鑑み、降雨対策を可能としつつ継続的な暑熱対策も可能な、舗装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)に係る発明は、湿潤舗装領域と透水舗装領域とを少なくとも有する舗装構造であって、前記湿潤舗装領域は、路面を形成する湿潤表層と、前記湿潤表層の下方に設けられるとともに毛細管現象によって該湿潤表層に水分を供給可能な揚水層と、を少なくとも有し、前記透水舗装領域は、路面を形成する透水表層と、前記透水表層の下方に設けられるとともに該透水表層を浸透した水分を貯留することが可能な透水路盤層と、を少なくとも有し、前記透水路盤層は接続部を介して前記揚水層と接続され、前記透水路盤層に貯留された水分は前記接続部を介して前記揚水層へと導水可能であることを特徴とする舗装構造である。
【0013】
上記(1)に係る発明によれば、降雨時の雨水を路床へと浸透させて透水舗装としての本来の機能を発揮させつつ、透水路盤層に貯留した雨水を利用して、晴天時においても継続的に湿潤舗装による冷却効果を得ることが可能である。特に、雨水を路床へ浸透させつつ雨水を貯留することが可能となっているため、次の降雨時までに、透水路盤層の貯留容量を十分に確保することができ、近年頻発する豪雨に効果的に機能させることが可能となっている。
【0014】
(2)に係る発明は、前記透水路盤層には、前記透水路盤層に貯留した水分が路床へ浸透することを可能にした透水領域と、前記透水路盤層に貯留した水分が路床へ浸透することを不可能にした不透水領域と、が形成されている上記(1)に記載の舗装構造である。
【0015】
上記(2)に係る発明によれば、透水路盤層から路床へと浸透する雨水の量を制限することが可能となり、より長時間、揚水層に導水して、湿潤表層に水分を供給することが可能となる。また、透水路盤層における透水領域と不透水領域の割合を、現状地盤の透水性や現場の排水設計に応じて設定することが可能となり、透水路盤層における雨水の貯留量を細かく調整することが可能となる。
【0016】
(3)に係る発明は、前記不透水領域における前記透水路盤層の底面の高さは、前記透水領域における前記透水路盤層の底面の高さよりも低い上記(2)に記載の舗装構造である。
【0017】
上記(3)に係る発明によれば、不透水領域に雨水を集めることができるとともに、所定量の雨水を路床に浸透させることなく貯留させることが可能となる。これにより、しばらくの間、降雨がなかったような場合においても、所定量の雨水を確実に貯留させ、継続して湿潤表層へと水分を供給することが可能となる。
【0018】
(4)に係る発明は、前記接続部は、前記透水路盤層に貯留された水分を前記揚水層へと導水可能な導水部材を備え、前記導水部材は、該導水部材の一方が前記揚水層に接続され、該導水部材の他方が前記透水路盤層の前記不透水領域に接続されている上記(2)又は(3)に記載の舗装構造である。
【0019】
上記(4)に係る発明によれば、例えば、湿潤舗装領域と透水舗装領域との間の地上部に、縁石や植栽帯などが構築されるような場合であっても、設置した導水部材を介して、透水路盤層に貯留された水分を揚水層へと確実に導水することが可能となる。また、導水部材を介することによって、晴天時においても透水路盤層に貯留された水分を継続的に揚水層へと導水することが可能となる。
【0020】
(5)に係る発明は、前記接続部は、前記透水路盤層に貯留された水分を前記揚水層へと導水可能な導水部材を備え、前記導水部材は、一方が前記揚水層に接続されて他方が前記透水路盤層の前記不透水領域に接続される底部導水部材と、前記底部導水部材よりも上方に設けられるとともに、一方が前記揚水層に接続されて他方が前記透水路盤層の前記不透水領域に接続される上部導水部材と、から構成される上記(2)又は(3)に記載の舗装構造である。
【0021】
上記(5)に係る発明によれば、湿潤舗装領域と透水舗装領域との間の地上部に、縁石や植栽帯などが構築されるような場合であっても、設置した底部導水部材と上部導水部材を介して、透水路盤層に貯留された水分を揚水層へと確実に導水することが可能となる。また、底部導水部材に加えて、さらにその上方に上部導水部材を設けることにより、透水路盤層に多くの雨水が貯留される状態となった場合には、上部導水部材からも揚水層へ雨水を導入することが可能となる。このような構成により、長雨や豪雨などによって路床への透水が間に合わず、透水路盤層の水位が上昇して透水舗装領域が冠水するような事態を防ぐことが可能となる。加えて、透水路盤層の水位が上昇してきた場合は、上部導水部材を介して透水路盤層と揚水層とで雨水を蓄えることができるので、豪雨対策機能を高めることが可能となる。
【0022】
(6)に係る発明は、前記上部導水部材の導水断面積は、前記底部導水部材の導水断面積よりも大きい上記(5)に記載の舗装構造である。
【0023】
上記(6)に係る発明によれば、上記(5)による効果に加えて、豪雨などで短時間に大量の降雨があり、透水路盤層に短時間で多くの雨水が貯留される状態となった場合に、素早く透水路盤層の貯留量を減じることが可能となり、透水舗装領域の透水機能を良好に維持させることができる。
【0024】
(7)に係る発明は、前記上部導水部材の流入口を閉塞可能な流入口閉塞手段を有し、前記流入口閉塞手段は、前記透水路盤層における水分の貯留量に応じて、前記上部導水部材の流入口を開閉可能である上記(5)又は(6)に記載の舗装構造である。
【0025】
上記(7)に係る発明によれば、透水路盤層における水分の貯留量に応じて、上部導水部材の流入口を流入口閉塞手段によって開閉可能となっているので、透水路盤層に貯留された雨水が過剰に揚水層へと導水されることを防ぐことが可能となり、底部導水部材によって必要な量の水分を継続して湿潤表層へと供給することが可能となる。
【0026】
(8)に係る発明は、前記導水部材には、栄養塩類を除去可能な水処理材が備えられている上記(4)乃至(7)のいずれかに記載の舗装構造である。
【0027】
上記(8)に係る発明によれば、透水舗装領域を浸透して貯留された雨水を浄化して、湿潤舗装領域へと供給することが可能となる。
【0028】
(9)に係る発明は、前記導水部材は、地上部から出入りすることが可能な人孔又は側溝の中において交換可能に設置されている上記(4)乃至(8)のいずれかに記載の舗装構造である。
【0029】
上記(9)に係る発明によれば、導水部材の交換やメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0030】
(10)に係る発明は、前記湿潤表層の下方には、該湿潤表層に水分を供給可能な導水シートと、該導水シートに水分を供給可能な給水配管が設けられている上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の舗装構造である。
【0031】
上記(10)に係る発明によれば、例えば晴天日が続いて、透水路盤層に貯留した雨水が無くなってしまったような場合でも、給水配管に水道水などを給水して導水シートに水分を供給することにより、継続的に湿潤舗装領域を機能させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の舗装構造の一実施形態を示した標準断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図2】透水路盤層における透水領域及び不透水領域を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図3】接続部に底部導水部材を設けた実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図4】接続部に底部導水部材と上部導水部材とを設けた実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図5】透水路盤層の底面に傾斜を設けた実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図6】透水路盤層の底面に段差を設けた実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図7】上部導水部材の流入口に流入口閉塞手段を設けた実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図8】接続部の底部導水部材に水処理材を適用した実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【
図9】給水型の湿潤舗装を適用した実施形態を説明する断面図であって、(a)は各構成を示した断面図、(b)は降雨時の態様を示した断面図、(c)は晴天時の態様を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の舗装構造の各実施形態について説明する。
【0034】
(舗装構造の標準構造)
本発明の舗装構造の一実施形態を示した標準的な断面図として、
図1(a)には舗装構造1の各構成を示した断面図が、
図1(b)には降雨時の態様を示した断面図が、
図1(c)には晴天時の態様を示した断面図がそれぞれ図示されている。
【0035】
詳細に説明すると、本実施形態の舗装構造1は、湿潤舗装領域と透水舗装領域とから少なくとも構成されている。上記湿潤舗装領域は、路面を形成する湿潤表層3と、当該湿潤表層3の下方には、毛細管現象によって湿潤表層3に水分を供給可能な揚水層31が少なくとも設けられている。湿潤表層3としては、公知の保水性舗装などが適用可能であり、例えば、保水機能を有するブロック舗装や、アスファルト舗装の空隙に保水材を充填した舗装など、所謂湿潤舗装を利用することができる。
【0036】
また、本実施形態の揚水層31は、砂又は砂土嚢から構成されており、保持した水分を毛細管現象によって上方へと運び、湿潤表層3に水分を供給することが可能となっている。
【0037】
透水舗装領域は、路面を形成する透水表層2と、当該透水表層2の下方には、透水表層2を浸透した水分を貯留することが可能な透水路盤層21が少なくとも設けられている。本実施形態の透水表層2は、開粒度のアスファルト舗装を使用しているが、透水機能を有するものであれば、適宜、公知の舗装材を利用することが可能である。
【0038】
また、本実施形態の透水路盤層21は、厚さ250mmとし、粒径50~150mmの割栗石と、間詰め材として5号砕石(粒径13~20mm)を敷き均したものとなっている。このような構成により、透水表層2を浸透してきた水分を透水路盤層21内に貯留することが可能となっており、ある程度の時間を経て、路床へと水分を浸透させることが可能となっている。なお、透水路盤層21の構成材料は上記した粒度に必ずしも限定されるものではなく、降雨によって透水表層2を浸透してきた雨水をスムーズに浸透させ、貯留することができる粒度であれば、適宜調整することが可能である。
【0039】
図1(a)に示されるように、上記した透水路盤層21と揚水層31は、接続部を介して接続されており、透水路盤層21に貯留された水分は接続部を介して揚水層31へと導水することが可能となっている。本実施形態では、通水性のあるシート60を介して導水可能に構成されている。
【0040】
なお、必ずしもシート状のものに限定されものではなく、ナイロン製やプラスチック製、金属製などのスクリーンを設置するようにしてもよい。また、揚水層31に砂土嚢を使用した場合は、揚水層31の形状を維持しやすく、砂の流出も抑えられるので、シート60は必ずしも必須ではない。
【0041】
次に、本実施形態の舗装構造における機能について説明する。
図1(b)に示されるように、降雨時の雨水は透水表層2を浸透し、透水路盤層21に浸透しながら雨水が路盤材の空隙に貯留されることとなる。貯留された雨水は、図中の破線矢印によって示されるように、徐々に路床へと浸透して、透水舗装として機能を発揮する。その一方、透水路盤層21に貯留された雨水は、接続部を介して揚水層31へと導水され、当該揚水層31において保水される。
【0042】
なお、本実施形態では、
図1の各図に示されるように、揚水層31と不図示の雨水排水設備とを繋ぐ雨水排水配管6が設けられており、豪雨など、大量の雨水の流入に伴って揚水層31が許容する保水量を超えた場合は、雨水排水配管6を介して排水することが可能となっている。
【0043】
そして、
図1(c)に示されるように、晴天時等には、透水路盤層21に貯留された雨水を利用し、揚水層31に保持された雨水を毛細管現象によって上方へと運び、湿潤表層3に水分を供給することが可能となる。
【0044】
以上のような本実施形態の構成によって、降雨時の雨水を路床へと浸透させて透水舗装としての本来の機能を発揮させつつ、貯留した雨水を利用して、晴天時においても継続的に湿潤舗装による冷却効果を得ることが可能である。特に、上記したように、本実施形態の透水舗装は、雨水を路床へ浸透させつつ貯留することが可能となっているため、次の降雨時までに、透水路盤層21の貯留容量を十分に確保することができ、近年頻発する豪雨に効果的に機能させることが可能となっている。また、
図1等に示されるように、本実施形態の舗装構造は、湿潤舗装領域及び透水舗装領域ともに、それぞれ路床を構築した上で揚水層31及び透水路盤層21が構築されている。すなわち、一般道路でいうところの路床、路盤を備えた断面構造を有しているため、舗装面における車両の通行が十分に可能となっている。
【0045】
(変形例1)
次に、
図2には、前述した実施形態の変形例が図示されている。すなわち、
図2(a)に示されるように、透水路盤層21の底面の一部に、遮水シート42を設置して、透水路盤層21に貯留した水分が路床へ浸透することを不可能にした不透水領域と、透水可能な透水シート41を設置して、透水路盤層21に貯留した水分が路床へ浸透することを可能にした透水領域とを形成している。
【0046】
このような構成とすることで、
図1(b)に示されるように、透水路盤層21から路床へと浸透する雨水の量を制限することが可能となり、より長時間、揚水層31に導水して、湿潤表層3に水分を供給することが可能となる。また、透水路盤層21の底面における、遮水シート42と透水シート41の敷設割合を、現状地盤の透水性や現場の排水設計に応じて設定することにより、透水路盤層21における雨水の貯留量を細かく調整することが可能となる。加えて、遮水シート42と透水シート41とを併用することにより、晴天時に揚水層31へ導水する雨水を透水路盤層21に確保しつつ、豪雨時には雨水の一部を路床へ浸透させて路面が冠水することを防ぐことが可能となる。また、透水領域に透水シート41を設置することで、路床土が透水路盤層21に浸入することを効果的に防ぎ、透水機能や貯水容量の経年低下を抑制することが可能となる。
【0047】
(変形例2)
次に、
図3には、前述した実施形態の変形例が図示されている。すなわち、
図3(a)に示されるように、接続部には、透水路盤層21に貯留された水分を揚水層31へと導水可能な導水部材50が設けられ、当該導水部材50の一方が揚水層31に接続され、他方が透水路盤層21の不透水領域(図示遮水シート42の設置領域)に接続されている。
【0048】
このような構成とすることで、例えば、湿潤舗装領域と透水舗装領域との間の地上部に、縁石や植栽帯などが構築されるような場合であっても、
図3(b)及び(c)に図示されるように、設置した導水部材50を介して、透水路盤層21に貯留された水分を揚水層31へと確実に導水することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態では、導水部材50として内径40mmの硬質ビニル管を使用しているが、必ずしもこのような仕様のものに限定されるものではない。例えば、導水部材50の設置箇所数や、湿潤舗装領域の面積、透水舗装領域の面積などに応じ、湿潤舗装を正常に機能させるために必要な導水量を確保できるよう適宜変更することが可能である。
【0050】
(変形例3)
次に、
図4には、前述した実施形態の変形例が図示されている。すなわち、
図4(a)に示されるように、接続部には、透水路盤層21に貯留された水分を揚水層31へと導水可能であるとともに、一方が揚水層31に接続されて他方が透水路盤層21の不透水領域(図示遮水シート42の設置領域)に接続される底部導水部材51と、当該底部導水部材51よりも上方に設けられるとともに、一方が揚水層31に接続されて他方が透水路盤層21の不透水領域(図示遮水シート42の設置領域)に接続される上部導水部材52とが設けられている。
【0051】
このような構成とすることで、例えば、湿潤舗装領域と透水舗装領域との間の地上部に、縁石や植栽帯などが構築されるような場合であっても、
図4(b)及び(c)に図示されるように、設置した底部導水部材51と上部導水部材52を介して、透水路盤層21に貯留された水分を揚水層31へと確実に導水することが可能となる。
【0052】
また、底部導水部材51に加えて、さらにその上方に上部導水部材52を設けることにより、
図4(b)に示された降雨時の態様からわかるように、透水路盤層21に多くの雨水が貯留される状態となった場合には、上部導水部材52からも揚水層31へ雨水が導入されることとなり、素早く揚水層31へ雨水を供給することが可能となる。
【0053】
特に、豪雨などによって降雨量が多くなり、路床への透水が間に合わないような場合は、上部導水部材52によって揚水層31、さらには当該揚水層31を介して雨水排水配管6へ雨水を排水することが可能となり、透水舗装領域の透水機能を良好に維持させることができる。
【0054】
本実施形態では、
図4(a)に示されるように、上部導水部材52の導水断面積を、底部導水部材51の導水断面積よりも大きくしている。このような構成とすることで、豪雨などで、透水路盤層21に多くの雨水が貯留される状態となった場合に、素早く透水路盤層21の貯留量を減じることが可能となり、透水舗装領域の透水機能を良好に維持させることができる。
【0055】
(変形例4)
次に、
図4及び
図5、
図6には、前述した実施形態の変形例が図示されている。すなわち、
図4(a)及び
図5(a)に示されるように透水路盤層21の底面に傾斜を形成することや、
図6(a)に示されるように透水路盤層21の底面に段差を形成することにより、不透水領域(図示遮水シート42の設置領域)における透水路盤層21の底面の高さを、透水領域(図示透水シート41の設置領域)における透水路盤層21の底面の高さよりも低くなるように構成している。
【0056】
このような構成とすることで、
図4~6の(c)に示されるように、不透水領域(図示遮水シート42の設置領域)に雨水を集めることができるとともに、所定量の雨水を路床に浸透させることなく貯留させることが可能となる。これにより、しばらくの間、降雨がなかったような場合においても、所定量の雨水を確実に貯留させ、継続して湿潤表層3へと水分を供給することが可能となる。
【0057】
(変形例5)
次に、
図7には、前述した実施形態の変形例が図示されている。すなわち、
図7(a)に示されるように、上部導水部材52の流入口を閉塞可能な流入口閉塞手段8を設け、透水路盤層21における水分の貯留量に応じて、上部導水部材52の流入口を開閉可能に構成している。
【0058】
より詳細に説明すると、
図7(a)に示されるように、上部導水部材52の流入口の周辺に所定のスペースを形成するために通水可能なスクリーン81を設け、当該所定のスペースに浮力を有する流入口閉塞手段8を設置している。
【0059】
そして、降雨などにより、透水路盤層21における水分の貯留量が所定量を超えると、
図7(b)に示されるように流入口閉塞手段8が上方へ移動し、上部導水部材52の流入口が開放されて、貯留された雨水が揚水層31へと導水される。
【0060】
一方、
図7(c)に示されるように、透水路盤層21における水分の貯留量が所定量以下になると、流入口閉塞手段8が下方へ移動し、上部導水部材52の流入口が閉鎖されるように構成されている。
【0061】
このような構成とすることで、透水路盤層21に貯留された雨水が、過剰に揚水層31へと導水されることを防ぐことが可能となり、底部導水部材51によって徐々に必要な量の水分を継続して湿潤表層3へと供給することが可能となる。
【0062】
(変形例6)
次に、
図8には、前述した実施形態の変形例が図示されており、
図8(b)は、
図8(a)の平面図である。すなわち、
図8(b)に示されるように、底部導水部材51が所定間隔で複数設けられ、当該底部導水部材51の内部には栄養塩類を除去可能な水処理材が備えられている。水処理材としては、関東ロームの造粒物、牡蠣殻、マグネシウム、アルミニウム、石灰石、活性炭、木質炭化物、ゼオライトなどを単独、もしくは複合して使用することが可能である。このような構成とすることで、透水舗装領域を浸透して貯留された雨水を浄化して、湿潤舗装領域へと供給することが可能となる。
【0063】
(変形例7)
次に、
図9には、前述した実施形態の変形例が図示されている。すなわち、湿潤表層3の下方に導水シート32と、当該導水シート32へ水分を供給可能な給水配管33とを設けることが可能である。このように構成することにより、例えば晴天日が続いて、透水路盤層21に貯留した雨水が無くなってしまったような場合でも、給水配管33に水道水などを給水して導水シート32に水分を供給することにより、継続的に湿潤舗装領域を機能させることが可能となる。
【0064】
なお、透水路盤層21に不図示の観測井戸を設け、雨水の貯留量に応じて給水配管33への給水制御を手動又は自動で行うようにしてもよい。このような構成により、貯留された雨水を効率的に利用して給水にかかるコストを抑制しつつ、湿潤舗装領域の機能を継続的に維持することが可能となる。
【0065】
また、
図9は透水舗装領域を車道とし、湿潤舗装領域を歩道等にした実施形態が示されているが、このような構成により、晴天時において歩道等の路面温度を冷却することが可能となり、歩行者やペット、車椅子利用者等に対する暑熱対策として効果を得ることができる。なお、湿潤舗装領域としては上記歩道に限定されるものではなく、公園や建築外構、駐車場などに適用することが可能である。
【0066】
以上、
図1に示された実施形態や、
図2~9に示された各変形例について説明した。これらは互いに組み合わせて実施することも可能である。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明の舗装構造は、前述した実施形態や各変形例に必ずしも限定されるものではなく、以下の変更が可能である。
【0068】
例えば、接続部に地上部からアクセス可能な人孔やU字形等の側溝を設け、これらの中に前述した導水部材50や底部導水部材51、上部導水部材52を設けるようにすることも可能である。このような構成とすることで、各導水部材の交換やメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0069】
また、前述した導水部材50や底部導水部材51、上部導水部材52は、適宜選択することが可能であり、塩ビ管やフレキシブルなホース、繊維素材が編み込まれた導水管、不織布と組みひも等からなる導水マット等が利用可能である。すなわち、各導水部材は、重力に従って水を運ぶものに限定されるものではなく、毛細管現象を利用して導水するものも利用が可能である。
【0070】
以上、本発明の実施形態及び各変形例などについて説明したが、本発明の範囲は、上記した実施形態等の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態等に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 舗装構造
2 透水表層
3 湿潤表層
6 雨水排水配管
8 流入口閉塞手段
21 透水路盤
31 揚水層
32 導水シート
33 給水配管
42 遮水シート
50 導水部材
51 底部導水部材
52 上部導水部材
60 シート
81 スクリーン