(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190639
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】燃料デブリの回収工法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/26 20060101AFI20221219BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G21C19/26 100
G21F9/30 531M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021121025
(22)【出願日】2021-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】504211142
【氏名又は名称】森重 晴雄
(71)【出願人】
【識別番号】520086210
【氏名又は名称】北村 康文
(71)【出願人】
【識別番号】520014051
【氏名又は名称】山敷 庸亮
(71)【出願人】
【識別番号】520086209
【氏名又は名称】森重 茂美
(71)【出願人】
【識別番号】515186770
【氏名又は名称】森重 晴貴
(72)【発明者】
【氏名】森重 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】北村 康文
(72)【発明者】
【氏名】山敷 庸亮
(72)【発明者】
【氏名】森重 晴貴
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料デブリの回収方法を提供する。
【解決手段】ダイヤモンド並みの硬さをもつ窒化ホウ素結晶をミラーのブラスト材として高圧蒸気に混ぜて燃料デブリ5に噴射し燃料デブリを切削する。中性子を効率よく吸収する質量数10のホウ素同位体を濃縮したホウ素を原料としたブラスト材と燃料デブリを切削する。使用するホウ素の結晶は大粒のものを選定し回収装置のフィルターに阻止し、燃料デブリの切削場所に留まるようにし、燃料デブリと水蒸気だけが保管容器に圧送されるようにする。格納容器外側から内側にアクセスするアクセス装置は蛇腹のようなフレキシブル構造体とし湾曲部に進むときは湾曲部分を加圧し進む構造とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素の結晶をブラストとして空気、窒素や水蒸気の高圧気体と混ぜて燃料デブリに噴射させ、燃料デブリを削りとると同時に燃料デブリから発生する中性子をその窒化ホウ素の結晶が吸収し、燃料デブリを常に臨界させないことを特徴とする燃料デブリの回収工法。
【請求項2】
回収装置から圧送された燃料デブリの粉体を効率よく保管容器に回収させる為に、二個の保管容器を直列し、前段の保管容器は液体窒素を保管容器外回りに配置した冷却コイル管に循環させ、溶媒を液体窒素とするクライオポンプにした上で高真空とし、後段の保管容器は液体ヘリウムを保管容器外回りに配置した冷却コイル管に循環させ、液体ヘリウムを溶媒とするクライオポンプとした上で超高真空とし、保管容器内の圧力と温度が燃料デブリ中の各物質の三相図で示される三重点以下までの低温低圧領域とし気相から固相に転じる昇華する環境に保ち、燃料デブリから生じた固体片だけでなく気体をも保管容器内で吸着させる。高真空となった前段の保管容器には燃料回収装置で粉体となった燃料デブリが圧送され、その大部分が前段の保管容器に吸収される。前段の保管容器に吸収されなかった物質が後段の保管容器に圧送されほとんどすべてが吸収される。
【請求項3】
ペデスタル内にアクセスするアクセス装置は中空断面を持つフレキシブルの構造体でアクセス路を進む過程で直線部を通過するときは構造体内部の下部加圧チューブをエアーまたは油圧で加圧し、直線棒状にし、下に折れ曲がった部分を通過するときには、構造体内部の上部加圧チューブを加圧し垂れ下がさせ、右に曲がるときは構造体内部の左側加圧チューブを加圧し右に湾曲させ、左に曲がるときは構造体内部の右側加圧チューブを加圧しながら左側に湾曲させ、構造体の発進元を押し込みながらアクセス路を進む構造体。
【請求項4】
放射性物質を飛散させないために境界部にある水を凍らせ、防護区画を形成させる。
【請求項5】
区画を作るために水が凍りにくい所には吸水性能の高い高分子材を水に添加し、水をゼル状にさせて一時的に水の流れを凍らせる。
【請求項6】
燃料デブリを回収する駆動系はエアー駆動系あるいはワイヤー駆動でシリンダーを膨張させたり収縮させたり配管内を圧送する系統とし電子制御を必要としない。
【請求項7】
燃料デブリを粉体にして圧送する。圧送する配管や保管容器の内面は窒化ホウ素でコーティングし、潤滑性能をよくするとともに輸送中や保管中に発生する中性子を吸収させる。
【請求項8】
輸送上、燃料デブリの粉体から発せられる放射線を低減するために二重鋼鈑円筒体で覆いその間に水を注入し、水、鋼鈑で放射線を減衰させる。
【請求項9】
保管容器はメンテナンスをできるだけ省くために、蓋構造をやめ、燃料デブリを粉体で受け入れるようにしバルブにより開閉とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料デブリの回収に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日東日本大震災により福島第一原発1号機から3号機まで炉心溶融した燃料デブリを回収することが急務となっている。同時に燃料デブリを絶対に臨界させてはならない。
【先行技術文献】
【0003】
燃料デブリを臨界させない為に燃料デブリの周囲にホウ素を配置する計画である。しかしこのホウ素が直接、削り取ることはない。燃料デブリを遠隔ロボットで回収する研究が国内外で進められている。しかし燃料デブリから発せられる極めて高い放射線がロボットの中枢である集積回路を瞬間的に破壊してしまう。
【特許文献】
【0004】
当方から燃料デブリ回収に関わる特許は以下の通り申請し権利化している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は 窒化ホウ素などの硬いホウ素化合物をブラストとして空気や水蒸気などの高圧気体と混ぜて燃料デブリに噴射させ、燃料デブリを削りとり、その削り取った切削粉をその高圧気体の排気とともにあらかじめ液体窒素などの冷媒で冷却した保管容器に圧送し、燃料デブリを保管容器内に定着させながら、同時に燃料デブリから発生する中性子をそのホウ素化合物が吸収し、燃料デブリを常に臨界させないことを特徴とする燃料デブリの回収工法である。また格納容器周囲から格納容器内への迷路となる通路を進入する装置は中空断面をもつフレキシブルなホース構造とし、構造内面に埋め込んだ加圧チューブを加圧することにより先端部は首振りをしながら押し進む。また放射性物質を飛散させないために、燃料デブリ周囲の水を凍らせ防護区画を形成する。水が凍りにくいところは吸水材を用いてゲル状態に固めさらに凍らせ区画を作る。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料デブリに含まれるプルトニウムから自発核分裂により常時、中性子が発生している。炉心熔融した福島の各発電所の炉心から毎秒約1億個の中性子が発していると想定される。その1個でも連鎖反応に進めば、臨界し、核爆発に至る。現在、連鎖反応が進んでいないものの、回収の過程で連鎖反応が進む可能性があり、絶対にこの連鎖反応を阻止する必要がある。
【0007】
燃料デブリから極めて高い放射線が放出しており、ロボットの中枢である集積回路はロボットが炉心に近づくいなや、瞬時にこの集積回路が破壊され、集積回路をもつ機械は炉心に近づくことすらできない。
【0008】
燃料デブリから汚染水の元凶となっている大量の放射性物質が地下水を通じて、海洋に放出されている。早期に燃料デブリをとり除く必要がある。
【0009】
ロボットが近づくこともできないばかりか、作業員が炉心から離れたところでも被ばくし、許容される被ばく線量を短時間で超えてしまう。
【0010】
燃料デブリは大量のプルトニウムを含んでおり、微量であっても環境に放出されてはならない。
【0011】
燃料デブリは硬い材料と予想され、通常の切削装置では切削材料や取替頻度が問題となる。
【0012】
通常の保管容器ではシール部のメンテナンスが必要であるが、燃料デブリの保管容器はできるだけメンテナンスを要しない長期に安定した保管が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ダイヤモンド並みの硬さをもつ窒化ホウ素結晶を高圧蒸気に混ぜて燃料デブリに噴射し燃料デブリを切削する。
【0014】
中性子を効率よく吸収する質量数10のホウ素同位体を濃縮したホウ素を原料としたブラスト材と燃料デブリを切削する。
【0015】
使用するホウ素の結晶は大粒のものを選定し回収装置のフィルターに阻止し、燃料デブリの切削場所に留まるようにし、燃料デブリと水蒸気だけが保管容器に圧送されるようにする。
【発明の効果】
【0016】
燃料デブリを常に臨界させることなく安定した連続した回収が行え、保管においても大量に保管が行え、メンテナンスがほとんど要しない。
【0017】
迷路となっている格納容器の外から中への通路もアクセスできるようになる。
【0018】
燃料デブリの周囲の水を凍らせ防護区画を設けることができる。
【0019】
流速の早いところや水が浸入しにくいところは吸水材を水に添加し仮のゲル状のバリアを作り、凍らせ、その周囲に水を配置しさらに凍らせる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は燃料デブリを回収する工法のイメージ図である。
【0021】
【0022】
【0023】
【実施例0024】
燃料デブリの回収工法の概要を
図1に示す。燃料デブリ5は原子炉建屋1の中央にあるPCV2の底辺であるRPV3下の床に溶け落ちている。燃料デブリ5はPCV2に開いているスリーブ(X6)4から取り出す。燃料デブリ5を閉じ込めるためにPCV2内部を冷却窒素32で循環させ、零下に保ち、燃料デブリ5を氷6で閉じこめる。燃料デブリ回収装置7はコーン状の形をし、燃料デブリ5の上を氷6で固定される。燃料デブリ回収装置7には燃料デブリ5を粉砕する高圧気体を圧送する高圧圧送管28と粉砕された燃料デブリ粉体30を圧送する回収管29が接続されている。回収管29はPCV2の外側で燃料デブリ圧送管8に接続されている。燃料デブリ粉体30は圧送管8内を輸送される際に発生する強い放射線を減衰させる為に、燃料デブリ圧送管8は燃料デブリ遮蔽体9に囲まれている。燃料デブリ遮蔽体9は鋼製内側円筒体10と鋼製外側円筒体11からなり、現地設置後、注入弁12を開け外部から水を注入し遮蔽用水15を作る。遮蔽用水を1m張ると、回収管からの放射線は鋼材と水の減衰効果により1/1000以下に減衰される。燃料デブリ粉体30は圧送管8を通じて保管容器充填棟35に圧送される。保管容器充填棟16には保管容器34が3種類ある。第一保管容器18、第二保管容器19、逆洗用タンク20の3種類が直列に配管で繋がれている。燃料デブリ5を圧送する前に、第一保管容器18、第二保管容器19ともにオイルポンプ16、ターボ分子ポンプ17を用いて真空にする。さらに第一保管容器18には液体窒素21で冷却し真空度を上げ、高真空にする。第二保管容器19は液体ヘリウム22で冷却しさらに真空度を上げ超高真空にする。燃料デブリ圧送管8のバルブを開き、燃料デブリ圧送管8、回収管29、燃料デブリ回収装置7内を真空にする。この時、燃料デブリ回収装置7は掃除機の役割を果たし、燃料デブリ回収装置7内の水蒸気、剥離しやすい粉体が回収管29、燃料デブリ圧送管8を経て、第一保管容器18に圧送される。第一保管容器18は液体窒素21で冷却されているために、圧送された物質の大半、特に水蒸気は第一保管容器18内面に吸着される。第一保管容器18内に吸着されていなかった物質は液体ヘリウム22で冷却された第二保管容器19に輸送され、保管容器内面に吸収される。回収量が無くなると、燃料デブリ回収装置7の高圧圧送管28から高温高圧の蒸気と窒化ホウ素ブラスト31とを噴出させ、燃料デブリ5を粉砕させ、燃料デブリ粉体30を作る。この燃料デブリ粉体30は前記同様に第一保管容器18と第二保管容器19に吸収される。保管容器34が満水になると、逆洗を行う。燃料デブリ圧送管8のバルブを閉じ、第一保管容器18、第二保管容器19に高温蒸気23を循環させ、容器内の氷を溶かし、水を逆洗用タンク20に集める。その水を汚染水24として浄化装置に輸送する。逆洗が終わると燃料デブリを再開する。保管容器34が廃棄物で一杯になると、保管容器34を入れ替える。燃料デブリなどの廃棄物が一杯になった保管容器34は大型トレーラ33で保管庫に輸送される。
保管容器充填棟35は、燃料デブリ回収装置7に高温水ライン25、液体窒素ライン26、窒化ホウ素結晶ライン27を供給している。
図-2は燃料デブリ回収装置を示している。加熱ヒータ-36は周囲の氷を溶かし、スラスターノズル40から窒素ガス放出し水中内を移動する。それとは逆に液体窒素冷却管39は周囲の水を凍らせ、燃料デブリ回収装置を固定する。
図-3はアクセス装置のイメージ図である。アクセス装置41はベローズの構造で先端部に回収装置42に把持し送り出し装置43によってX6(4)からペデスタル48内に送り出される。X6通過前46はベローズ部下端分の加圧シリンダー49を加圧し棒状にし、X6通過後47は加圧を止め、自重で垂れ、次のアクセスに進む。
図-4は燃料デブリ5を燃料デブリ回収装置7で回収しているとき、放射性物質を飛散させない防護区画のイメージを示している。PCV2が第1防護区画51とする。しかしPCV2にキレツ54があるとき、キレツ部54に侵入してきた水蒸気が結露し、冷却され氷6となる。氷6が第1防護区画区51の一部となる。またペデスタル48内にたまった水50が冷却され、水面が氷6となる。この氷6が第2防護区画52となる。燃料デブリ回収装置7が周囲を凍らせ燃料デブリ5を閉じ込めた氷6が第3防護区画53となる。
1.原子炉建屋 16.燃料デブリ圧送 31.窒化ホウ素結晶ブラスト2.PCV 17.ターボ分子ポンプ 32.冷却窒素
3.RPV 18.第一保管容器 33.大型トレラー
4.X6 19.第二保管容器 34.保管容器
5.燃料デブリ 20.逆洗用タンク 35.保管容器充填棟
6.氷 21.液体窒素 36.加熱ヒーター
7.燃料デブリ回収装置 22.液体ヘリウム 37.噴射ノズル
8.燃料デブリ圧送管 23.高温蒸気 38.回収ノズル
9.燃料デブリ遮蔽体 24.汚染水 39.液体窒素冷却管
10.鋼製内側円筒体 25.高温水ライン 40.スラスターノズル
11.鋼製外側円筒体 26.液体窒素ライン 41.アクセス装置
12.注入弁 27.窒化ホウ素結晶ライン 42.回収装置
13.中性子検出装置 28.高圧圧送管 43.送り出し装置
14.窒化ホウ素コーティング 29.回収管 44.加圧中
15.遮蔽用水 30.燃料デブリ粉体 45.加圧なし
46.X6通過前
47.X6通過後
48.ペデスタル
49.加圧シリンダー
50.水
51.第1防護区画
52.第2防護区画
53.第3防護区画
54.格納容器のキレツ部
55.水